津軽開業 第3部 2次交通等(2010・6・1~6・10)

 

バス業界=1

2010/6/1 火曜日

 

10分置きに運行される100円バス。市民はもちろん、観光客の利用も想定される

 「新青森駅に降りた人も青森県内だけを見るわけではない」。秋田県大館市に本社を置く秋北バス(太田吉信社長)は5月、大鰐町に青森営業所を開設、本県での貸し切りバス事業を開始した。12月の東北新幹線全線開業をにらんだ動き。太田社長は進出に当たって「地元バス会社にとっては寝耳に水かもしれない」と前置きしつつ、広域観光に対する強い思いを口にした。
 秋田、岩手両県にも拠点を持つ同社は北東北の情報を集約し、大手旅行代理店などに広域的な提案ができる―と自負。既に情報収集を兼ね、県内自治体や観光協会へのあいさつ回りを始めている。
 その一方で「開業効果はそれほど長く続かないのでは」(小畑保彦経営管理部副部長)と、同社の将来予測はシビアだ。新青森駅開業に過大な期待は抱いていない。ただ2015年予定の新函館駅開業、近年目立つ航空路線の廃止などを念頭に、小畑副部長は「道内から北東北や本州、その逆など、今後も広域観光の需要はあるはず」と将来を見据えている。
  ◇    ◇
 広域に手を広げる秋北バスに対し、津軽を中心に運行69年の歴史を持つ弘南バス(本社弘前市、山口健六社長)は地元に密着した商品が多い。路線バスや10分置きに走る100円バス、白神ライン直通バスなどは観光客の利用も想定され、同社も「開業効果でプラスアルファの利用が見込める」とみている。
 ただバス路線は慣れない人には分かりにくい。工藤清乗合部長は「バス事業者は宣伝が苦手で…」と反省を込めつつ語り、開業までの課題の一つに効果的な情報発信を掲げる。
 大々的な宣伝はJRの得意分野。JRの開業キャンペーン関連商品が高速バス事業に影響を与えるのでは、という懸念もある。工藤部長は「われわれは地元で地道なPRを続けるしかない」と地元密着姿勢を貫く考えだ。
  ◇    ◇
 同社が現在PRに力を入れているのが新たな観光バス「太宰治と津軽鉄道の旅」号。開業日から連日運行予定で、新青森駅を出発、斜陽館や津軽鉄道乗車など奥津軽の人気スポットを回り、夕方にJR弘前駅に到着する。
 提案したのは県中南地域県民局地域支援室の山谷良文室長。八戸開業時の新幹線乗客数などを調べて企画、弘前着を夕方にすることで同地への宿泊や翌日の交通機関の需要も取り込もうと工夫した。山谷室長は「開業に伴う中南地域の利益を最大化したい。せっかくのビジネスチャンス。弘南バスにもぜひ生かしてほしい」と地域の事業者に奮起を促す。
  ◇    ◇
 開業日が12月4日に決定、県内では受け入れ準備が急がれる。第3部ではバスや私鉄、タクシーなど交通事業者の思惑、開業をにらんだ取り組みを取材し今後の課題を探る
(東北新幹線全線開業取材班)

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タクシー業界=2

2010/6/4 金曜日

 

JR弘前駅前のタクシープール。今夏からは、規定の条件をクリアした乗務員だけが乗り入れられる

 12月4日の東北新幹線全線開業に向け、タクシー業界は、観光案内などに対応する認定乗務員の育成や定額制の導入でサービス充実に取り組む。しかし、地域別の取り組みが目立っており、全県的な広域観光への対応が課題だ。
 青森市タクシー協会(下山南平会長)は2008年度から、加盟各社が推薦する乗務員を観光ガイドタクシー認定乗務員として育
成しているほか、県タクシー協会弘前支部(下山清司支部長)は8月をめどに、JR弘前駅のタクシープール乗り入れを支部認定の優良乗務員に限る方針。
 認定乗務員を育成する背景には、人柄など個々人の魅力を付加価値とし、リピーターを生みたいとの思惑があるが、取り組みの認知度は十分とは言えない。青森市協会の認定を受けた乗務員の一人も「研修や試験に苦労したが、お呼びが一切かからない」と苦笑いし、PRの徹底が課題となっている。
  ◇    ◇  
 誘客策として期待される認定乗務員だが、全国で類似例が多く、本県で十分効果を発揮するか不確定だ。
 「さわやか信州観光ガイドタクシー」を07年から全県的に導入して注目された長野県タクシー協会は「バージョンアップが常に求められている」(上沢英雄常務理事)と話す。認定乗務員は3年ごとに更新が義務付けられ、最新の観光知識を得ることや接客術の向上に研さんを重ねる。
 長野県では観光ガイドタクシーを同じ客が3日間にわたって利用し、広域観光を楽しむケースもみられ、同県協会は「タクシーは法律上営業区域が限られるが、全県的な取り組みなので加盟各社が円滑に連携できる」(同)と利点を説明する。
 本県の場合、地域別の取り組みにとどまっており、県タクシー協会会長も務める青森市協会の下山会長は「広域観光に対応したいが、県協会の予算では厳しい。行政の後押しが欲しい」と吐露する。
  ◇    ◇  
 乗務員の資質向上を図る一方、運賃の優遇策は呼び水として極めて重要。弘前市の北星交通は青森市の東北新幹線新青森駅から弘前市、西目屋村を結ぶ乗り合いタクシー「北星はやぶさ便」を新幹線開業日から運行する。料金は通常の3分の1程度で、1人3000~5000円の4段階を設定。新幹線沿線から外れた弘前市、西目屋村、世界自然遺産の白神山地への誘客を狙う。
 青森市協会は、新青森駅から同市中心街までの数ルートを定額1500円で運行するため、近く東北運輸局に申請する。夏場、新青森駅―現青森駅間(約5キロ)の所要時間は約9分で、1630円かかるが、冬場は道路事情が悪く、料金がかさむと想定されるためだ。しかし、新幹線開業の12月から1年間限定のため、その後の一手が求められる。

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レンタカー業界=3

2010/6/5 土曜日

 

 東北新幹線の全線開通まで約7カ月となった先月、新青森駅前で「レンタカーステーション」の地鎮祭が行われた。日産レンタカー青森など県内4社が約4000平方メートルの敷地に共同で事務所を開設。4社合わせて200台を配備する計画だ。
 経営は各社独立だが、土地の賃料を4社で分担。自社に車の空きがない場合は他の3社を紹介することにしており、車の稼働率を高められるという。
 同社の伊藤一隆専務は、新規出店を決めた理由を「開業で観光客は間違いなく増える。少なくとも新幹線が函館へ延びるまで5年間は2、3割の売り上げ増になる」と言い切る
  ◇    ◇
 新幹線開通に注ぐレンタカー業界の視線は熱い。ビジネス客や観光客からの需要を見込んで新青森駅に7社、七戸十和田駅に2社以上が出店を予定、または検討中とされる。
 そのうちの1社、トヨタレンタリース青森は、特に新幹線駅周辺のレンタカー店としては「全国一の規模」(小笠原要助専務)を新青森駅前に計画する。
 地上3階建てで、200台を配備。2~3年後には年4億円の売り上げを見込む。昨年度まで東北地方の空港前に立地する店舗の中でトップの売り上げを誇った同社青森空港店の年3億円を優に超える数字だ。
 強気の姿勢には、八戸開業での成功体験がある。同社は八戸開業に合わせ、八戸駅前に東口店を開設。同社の既存店と徒歩7分程度の近距離にあるが、「既存店は地元客、東口店は県外客」とすみ分けがなされ、売り上げは右肩上がりを続けている。同駅前には8店が軒を連ねるようになり、2次交通の中で「一人勝ち」とも言われた。
 小笠原専務は「レンタカー事業はまだまだ伸びる。車に対する国民の意識が『所有』から『レンタル』へと変化してきていることに加え、少人数で自由に行動する旅行が好まれるようになったためだ。十和田湖や恐山、白神山地など、点在する観光地に安く移動できるレンタカーは旅行者ニーズにマッチしている」と言う。
  ◇    ◇
 レンタカーを成長産業と見込み、12時間当たり2525円と格安で貸し出す全国展開のフランチャイズ店が青森市内にも現れた。そのうち1店は新青森駅近くに構える。既存店は「店舗ネットワークがぜい弱で、利用客にとっては(車の)乗り捨てができない面もある。脅威は感じない」と静観するが、青森地域社会研究所の高山貢専務は「競争激化は必至。サービスの多様化で対抗せざるを得ないはず」とみる。
 現に自社ホームページでお勧めを紹介したり、地元ホテルと連携して観光コースづくりを検討するなど、ライバル社と差別化を図る動きが始まっている。

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弘南鉄道=4

2010/6/10 木曜日

 

弘南鉄道で試験実施しているサイクルトレイン

 5月21日、弘南鉄道大鰐線で乗務員の車内案内が流れた。「大鰐線の電車は通常、赤帯と青帯の元東急7000系が運用されておりますが、本日は国内初のステンレスカーの元東急6000系での運行となります」
 この日は全国各地の旅行エージェントを対象にした特別電車で、大鰐町と弘前市中心部を結ぶ大鰐線が観光コースとなった。車内案内は歴史を交えながら沿線や駅周辺の見ど
ころを伝え、乗客が興味深そうに耳を傾けた。
 元東急6000系は鉄道愛好家の注目を集めている。1960年に登場し、かつて都会を走っていた電車は津軽の地で余生を送っている。現存する中で唯一走行可能とあって、愛好家が費用を出し合い貸し切り運行することもある。今年は5月末までにラッセル車を含め10本貸し切り運行され、昨年の16本を上回るペースだ。
  ◇    ◇
 ただ沿線住民の利用は、年々減少を続けている。大鰐線は74年の約390万人がピークで、2008年は約75万人だった。12月の新幹線開業を控え、新たな観光客のもてなしについて模索する動きが出てきた。サイクルトレインもその一つ。
 車内に自転車を持ち込み、駅を出てから周辺の魅力を自転車で巡ることができる。5月から試験的に実施し、今のところ持ち込み可能なのは有人駅の中央弘前、津軽大沢、大鰐の3駅で、利用できる時間帯は朝夕のラッシュ時を避けた日中に限っている。弘前市は無人駅でも自転車持ち込みに対応できる仕組みを検討中で、観光ツールとして期待されている。
 同鉄道の桜庭博巳総務課長は「車内案内は観光客に良くても、普段利用する乗客は耳障りかもしれない。貸し切りで走らせることができればいいが、費用が掛かる」とし、すみ分けを課題に挙げた。サイクルトレインについては「休日を中心に利用されている。5月は約30台の利用があり、一般客の苦情はない」と手応えを語り、実施する方向で詰めている。
  ◇    ◇
 NPO法人弘前こどもコミュニティ・ぴーぷるは、2年前から同鉄道沿線の子供たちと一緒に活性化へさまざまな取り組みを進めている。八栁角弥事務局長は「新幹線はビジネスチャンスだが、それより住民が利用しやすい仕組みをつくっていくことが大事」と語る。
 全国には、子供たちがおもちゃで遊びながら公共交通機関の利用方法を学べる電車、サイクルトレインに特化して自転車の固定金
具を設けた車両などがあり、電車の個性を磨き誘客につなげている。それらの取り組みは、地域の足を守ろうとする市民運動によ
るものが大きいという。
 八栁事務局長は「やるからには徹底したいし、やるべきことはたくさんある。活性化の仕掛けを市民レベルで考えたい。すべては未来を担う子供たちのため」としている。

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津軽鉄道=5

 

観光客だけでなく乗客一人ひとりに声を掛け、ファンも多いトレインアテンダント

 「さてもみなさんおききあれ 津軽鉄道おもしろや」。津軽鉄道(澤田長二郎社長)全線開業80周年を記念して作られた歌「津軽鉄道各驛停車」は、軽快に五所川原市と中泊町を結ぶ沿線約20キロの魅力を紹介する。作詞したのは、八戸市の版画家藤田健次さん。手ぬぐいも作り、「津鉄は宝物」と熱い思いを語る。
 少子高齢化や中心商店街衰退から乗客が減少し、存続の危機だった津軽鉄道。2006年に結成された津軽鉄道サポーターズクラブを中心に、全国のファンが列車を活用したイベントや商品開発を仕掛け、乗客数アップに協力している。
 また昨年から、奥津軽トレインアテンダント7人が車内で奥津軽をPR。津軽弁の温かいもてなしは着実にファンをつくり、昨年は作家太宰治生誕100年イベントもあって、年間32万1000人が乗車。35年ぶりの利用数増につなげた。
  ◇    ◇
 同社は1930年全線開通し、当時からの走るストーブ列車は現在、海外からも団体客が来る一番人気の列車だ。このほか風鈴列車や鈴虫列車といったイベント列車を運行。また、ピンバッジや酒など乗車記念となる関連商品も人気だ。
 津軽鉄道サポーターズクラブや津鉄応援直売会などは、列車内や列車で行く沿線のイベント、駅舎を活用したイベントを一年中企画する。地域の足を守るだけでなく、地域活性化の核になっている。
 一見華やかな津軽鉄道だが、利用者数は74年の257万人以降下降を続け、08年は30万人に。昨年盛り返したが、利用者増はまだまだ課題だ。
  ◇    ◇
 同社は東北新幹線全線開業に向け、一番人気のストーブ列車とJRの乗り継ぎをスムーズにしようと、ダイヤ改正をにらむ。
 同社の舘山広一運輸課長は「団体はツアーバスが主体だが、最近増えた個人客は鉄道の乗り継ぎが多い。ニーズの強化が課題」とし「ダイヤが決まらないうちは動けない」とJRの動向を注視する。
 同社は08年から、降車駅まで車を回送する「津軽鉄道レールライド」を行っている。PR不足で利用は年30件以下と振るわないが、舘山課長は「立佞武多の時期、混雑する市街地へ行くのに沿線駐車場に車を止め、津鉄で入るパーク・アンド・ライドもいい」と新サービスを模索する。
 毎日、列車で乗客と接する奥津軽トレインアテンダントは、ソフト面の強化を挙げる。「また来たいと思えるような声掛けをしたい」と笑顔を見せた。

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