六感で味わう自然

 

たやすく倒れ低温回避=17

2011/1/10 月曜日

 

エゾユズリハ。葉柄の濃い赤が特徴。雪から出たばかりで少し葉がよれよれになっている。この葉は新芽が出るとほとんど落ちてしまう
秋に実ったばかりのツルシキミの実

 この季節、東京に旅行するといいお天気のことが多い。風は冷たいがよく晴れている。「やれやれ。東京がこのいいお天気では、弘前は大変だな」と思って帰宅すると、大当たり。第一の仕事が雪掻(か)きという羽目になる。
 日本海側の地域に大雪が降る冬型の気圧配置になると、東京など太平洋側の地域は好天になる。冬のこの対照的な天気の分布は、世界でほかに類例の無いほどはっきりしたものだ。
 これは、日本の自然環境の最も重要な要素のひとつである。たとえば、日本のブナ林は大きく太平洋型と日本海型に分けられるが、日本海型のブナ林は、冬型の気圧配置の場合に雪の降る確率が50%以上の地域に分布することが知られている。
 日本海型のブナ林の第一の特徴は、チシマザサ(ネマガリタケ)が生えることだが、冬でも葉を落とさない常緑で小型の低木が生えることも大事な特徴だ。
 日本海型ブナ林に生える常緑の小低木は、広葉樹のヒメアオキ、ヒメモチ、エゾユズリハ、ハイイヌツゲ、ツルシキミ、それに針葉樹のハイイヌガヤの6種類である。
 これらは、どれも太平洋側の地域に近縁の植物を持っている。ヒメアオキに対してはアオキ、ヒメモチにはモチノキ、エゾユズリハにはユズリハとヒメユズリハ、ハイイヌツゲにはイヌツゲ、ツルシキミにはミヤマシキミ、ハイイヌガヤにはイヌガヤが対応する。太平洋側の種も常緑だがどれも直立する幹を持ち、日本海側の種より大型である。ユズリハなどは大木になる。さらに面白いのは、太平洋側の種は、ブナ林のある冷温帯ではなく、もう一段階暖かい暖温帯のシイノキやカシノキの林、つまり照葉樹林にあることだ。
 日本海側のブナ林にある常緑低木は、どれも、幹は細くしなやかで地面を這(は)い、そこから斜めに立ち上がる。これは、雪が降ったらたやすくその下に倒れるように適応した形だと言われている。深い雪の下であれば低温から守られて、冬でも葉をつけていられる。だから、冬寒い冷温帯に生えられるのだ。
 このような植物の分布の違いは、文化にも反映する。
 お正月のお飾りには広くユズリハが飾られるが、暖温帯の植物であるユズリハは、北東北には生育できない。しかし、深い雪が小低木を冬の低温から守ってくれる北東北日本海側のブナ林にはエゾユズリハがあるので、お飾りに使うことができる。
 それに対して、深い雪が降らない北東北の太平洋側のブナ林には、常緑の低木は生えられないから、お飾りにユズリハもエゾユズリハもつけられないのである。
 お正月には、センリョウ、マンリョウ、ナンテンなど青い実と赤い実をつける植物がよく飾られるが、これも北東北にはない。そのかわり、日本海側の地域ではツルシキミの実を飾る風習があるようだ。
 ツルシキミ(ミヤマシキミも)は有毒植物だが、いわゆるお樒(しきみ)とは関係のないミカン科の植物で、秋おそくに茎の先に赤い実をつけ、この実は春、雪が消えてもまだついている。エゾユズリハにしても、ツルシキミにしてもお飾り用に雪の下から掘ってくるのは大変だろうと思ったら、雪の降る前に採って蓄えておくらしい。
 そんなことを考えながらマーケットを歩いていたら、「成り実」という名でツルシキミを売っていた。これは便利である。しかし、よくよく見たら、葉や実が大きく、茎が太い。どうもミヤマシキミである。西日本の暖かいところから運んできたのだろう。隙間流通だろうか、どこにも商売のタネはあるものだ。
(白神マタギ舎ガイド・牧田肇)

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雨緑樹と夏緑樹の落葉=18

2011/1/24 月曜日

 

 
写真上は海南島のゴム園。平たく見えるところがゴム園。まわりの高く見える樹林はゴム園を寒さから守るための防風林。写真下はゴム園の内部。このゴム園では、林床に茶を植えて多重栽培を行っている
 
寒さで黄色く変色したゴムの葉(右下)とすっかり葉を落としてしまったゴム園

 前々回の落葉のところで、乾季と雨季のある地域の落葉について触れた。今回はその話である。
 教科書で勉強して、乾季に落葉して雨季に葉をつける熱帯の「雨緑樹」と、冬に落葉し夏緑の葉をつける温帯の「夏緑樹」とはまったく別の生活をしているのだと思っていた。ところがそうではなかった。
 中国に海南島という島がある。現在は島一つで海南省である。この島の北半は亜熱帯の降水量の多い気候だが、南部は乾季雨季のある熱帯の気候を持っている。一九八〇年代の初頭に、この島に何回も行く機会があった。
 話は飛ぶが、天然ゴムは重要な戦略物資である。ゴムは石油からも作られるけれど、ゴムの大変大事な性質である摩擦力は天然ゴムを加えなければ得られないのだそうである。
 摩擦力がもっとも要求されるゴム製品はタイヤである。タイヤは航空機や自動車の必需品。航空機や自動車は戦争の必需品。だから、天然ゴムがなければ戦争はできない。
 ゴム(パラゴム)はアマゾン川流域の熱帯雨林の原産。移植されて東南アジアが現在の主生産地になっている。中国の海南省や雲南省は亜熱帯といった方がいいようなぎりぎりの栽培北限である。中国は、その限界地域で工夫を重ねてゴムを自国内で調達できるように努力してきた。
 生産はとても困難である。雲南省や海南省は、かなり緯度が高いので、冬季には寒波が襲ってくることがある。そうするとゴムの木は幹が破裂して枯れてしまったりする。それを防ぐための、基本的な調査に参加して、三冬を海南島で過ごしたのである。
 そのときに知ったのだが、ゴムをはじめ多くの熱帯植物にとって、摂氏5度というのが耐えられる低温の限界らしい。それを割り込むと熱帯植物は枯れてしまうものが多い。
 その前に、最低気温が10度を割り込むと、ゴムの木は一斉に落葉する。われわれが過ごした三冬で最低気温が5度を割り込んだことは一度もなかったが、10度を割り込むことは何回もあった。すると、ゴムの木はさっと薄く紅葉したようになり、数日の間に大部分の葉が落ちてしまう。これはもちろん熱帯樹のゴムにとってはアクシデントで、寒さの影響の少なかったゴム園は葉をたくさん残している。
 こういう状況になったときに、気温その他の気象条件やゴム園の様子の地域差を見るため、海南省の北部から南部まで何回も観測・観察旅行をした。
 島の北部から南部まで150キロぐらいある。当然北の方が低温で、南に行くにつれ気温は上がって暖かくなる。では、ゴム園の落葉は北の方がずっとひどいかと言えば必ずしもそうではない。南の地域にすっかり落葉したゴム園がたくさんあるのである。
 はてと思って考えた。そこで熱帯の樹木は乾季に落葉することを思い出した。ゴムもそうなのである。そして、海南島の南部の気候は雨季と乾季を持ち、熱帯の雨季は温帯で言えば夏、乾季は冬に相当する期間なのである。
 海南島南部のゴムの木は、乾季つまり冬のおとずれとともに落葉する態勢に入る。でも、乾燥がそれほどひどくなく、寒波の影響が少なければ、葉をつけたまま冬が越せる。そこへ、たまたま寒波がやってくると、どっと葉を落としてしまう。北部は乾燥が強くないので、寒波の影響が少なければゴムは葉を落とさない。
 植物が熱帯雨林から周辺に分布を広げたとき、まず乾季のある地域に入り、その悪条件に耐えるために落葉という性質を獲得した。これが雨緑樹の始まりである。
 さらに分布を広げて乾季と冬が重なる地域に達したとき、落葉の性質は低温に耐えるためにも役立ち、特段の乾季がなくかわりに厳しい寒さのある温帯北部に達したものが夏緑樹として広い分布地域を獲得したに違いない。
(白神マタギ舎ガイド・牧田肇)

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冬の里山歩きを楽しむ=19

2011/2/7 月曜日

 

 
上から、キブシ・ツノハシバミ・ヤマハンノキ
 
左から、クロモジ・マルバマンサク・タムシバ

 現実問題として冬はお客さまがいらっしゃらないから、ガイドは冬眠状態になる。クマは冬眠の間絶食だけれど、人間であるガイドは仕事が冬眠でも身体は起きているから、ものを食べなければならない。
 ここで困ったことが二つある。もちろん第一は収入がないのに食費がかかること。もう一つは太ってしまうことだ。これもかなり深刻で、春になって身体は重いは筋肉はなまっているは、では仕事にならない。
 そこで、せっせとウオーキングをする。せっかくだから町ではなく、里山を歩く。雪が積もっているから、カンジキを履き、コナギ(マタギの雪杖(つえ))をついて。これが楽しい。
 山や森の雪景色を楽しむ。雪の上についたテン、ウサギ、タヌキ、リス、カモシカなど、いろんな動物の足跡を見る。冬の早い時分ならクマの足跡だってある。木の葉が落ちているので、いろいろな小鳥の姿が夏より楽に見られる。だから双眼鏡は欠かせない。
 そして何より、木の冬芽を見るのが面白い。葉や花が種類によって違っているように、冬芽も種類によって違っている。でもその違いは葉や花よりずっと微妙で、慣れていないから初めはなんの木だかなかなか分らない。残ってついている葉や枝の格好などから夏の姿を想像して、「あ、これはあの木だ」と分かったときは楽しい。
 まだ固いけれどすっかり整った蕾(つぼみ)が見られる木も多い。多くの樹木は、夏過ぎには、もう次の年の蕾ができている。小さかったり、地味な色と格好をしているから気づかないだけである。花芽と葉芽が分かれているものははっきり形の違いが分かるし、ブナやサクラのように花と葉が一つの芽に入っているものも、中に花を持っている芽は葉だけの芽よりあきらかに大きいから、慣れるとすぐに分かる。
 もちろん、蕾ができているといっても冬の間は小さいままで、暖かくなってから膨らんでくるものも多い。しかし、冬の初めにはすでに蕾がかなり大きくなってはっきり分かる植物もたくさんある。今回はこういうものを選んだ。
 キブシはこの中では最も早く花芽ができるのではないかと思う。8月になればこのように蕾の連なった花ぶさができている。冬になると蕾を残して葉は落ちてしまう。蕾は、春、葉が開いたあとで膨らみ出して、6月ごろ地味な緑色の花が咲く。
 ツノハシバミとヤマハンノキも花ぶさを作るが、花ぶさになるのは雄の花だけである(キブシは雄雌別の株で、両方とも花ぶさになる)雌の花は雄の花よりずっと少なく、雄の花の花ぶさの付け根に小さく咲く。
 マルバマンサクとクロモジは小さな丸い蕾をつける。クロモジは真ん中の尖(とが)った葉芽の両脇に先の尖った丸い蕾がころんと二つつくのがまことに可愛い。マルバマンサクも丸い蕾が二つ並んでつく。これが3月になるとほかの木に先駆けて咲き出すのである。写真で、蕾のそばにもっと大きな黒いものが見えるが、これは以前ご紹介した虫こぶ、マンサクメイガフシの枯れ残り。
 モクレンの仲間のタムシバの蕾はふかふかの毛に包まれている。モクレンの仲間はもともと熱帯に本拠を置くから、冬の寒さから身を守る方策なのだろう。同じモクレンの仲間でも、冬芽の中で葉にしっかりとくるまれているホウノキの蕾には毛がない。
 で、体重。毎日1~2時間(雪の深さによってことなる)歩いて、食事は原則1食にして、やっと現状維持である。きびしい。
(白神マタギ舎ガイド・牧田肇)

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動物の生活を読み取る=20

2011/2/28 月曜日

 

 
写真左はタヌキ(左側)とウサギ(右側)の足跡。タヌキは画面下から上に、ウサギは上から下に向かっている。写真右はカモシカ。画面下から上に向かっている
 
写真左は栗鼠。画面上から下に向かっている。写真右はヤマドリ

 シートンの「動物記」は多くの方がご存知だろう。最近でこそあまり頻繁には読まないけれど、小学校の高学年以来わたくしの生涯の愛読書である。
 「動物記」には、いろんな自然観察の楽しさが書かれている。足跡の観察(アニマルトラッキング)もそのひとつ。足跡をたどるスリリングで楽しい観察の記録や物語がたくさん出てくる。もっとも有名なのは、「サンドヒル牡(お)鹿(じか)の足跡」だろう。一人の若者が、足跡を頼りに何年もかけて大きな角を持つ一頭の牡鹿を追跡し、ついに射程に捉(とら)えるが、撃たずに逃がしてやるという感動的な物語である。手負いにした鹿を足跡を頼りに追跡して、しとめるという話も別の物語の挿話として入っている。鹿の役になった者の足跡を、ハンター役の者が追いかけてゆくというゲームのやり方も紹介されている。
 そんな物語に読みふけって、子供のころから足跡を見たりたどったりするのは好きだった。この楽しみを味わうのにもってこいなのが雪上ウォーキングだ。
 わたくしのウォーキングコースで最も多く見られるのはホンドテンの足跡である。これについては次回に詳しく書きたいので、今回はパス。
 次に目につくのは、トウホクノウサギの足跡だ。この冬、最初のころはどういうわけかほとんど見られなかったので心配していたのだが、1月に入ってからはたくさん見られるようになった。
 ご存知の方も多いと思うが、ウサギの足跡は前肢(あし)と後(あと)肢(あし)が2本ずつセットになっている。大きな方が後肢で、小さな方が前肢。ウサギが歩くときはまず前肢をついて、その外側前方に後肢をつく。だから、ワンセットの足跡の、後肢の方向が進行方向である。ゆっくり歩くときは前後の足の間隔が狭いが、スピードが上がると後肢がずっと前に出て前後の間隔が開く。
 リス(ホンドリス)の足跡はずっと小さいが、前肢と後肢の関係はウサギと同じである。リスの足跡は小さくて目につきにくいけれども、数からするとウサギよりずっと多い。リスは木登りが上手だから、もっぱら木の上だけで生活しているように思われるが、足跡の数からするとかなり地上に降りて生活していることが多いようである。
 テン・ウサギ・リスの足跡が直線的なのに対して、タヌキの足跡はくねくねと曲がっていることが多い。それに、足跡の間隔がどれよりも狭い。あっちこっちに寄り道してちょこちょこ歩いている雰囲気である。これはわたくしの思い込みにすぎないのだが、直線的な足跡をつける動物が、ほかの動物を獲物あるいは敵として意識している感じなのに対して、寄り道ばかりしているタヌキはほかの動物にはかまわず、自分のやりたいように歩いている感じがする。
 ヤマドリも曲がった足跡をつける。ヤマドリやキジは、鳥なのにもっぱら歩いて生活し、危急存亡の時だけ飛ぶらしい。新雪が深く積もったときなど、胸で雪を押し分けて歩くのか、大蛇がのたくったような溝を雪の上につけて歩いている。その溝をのぞいてみると、鳥の足跡がついているので、ヤマドリだとしれるのである。
 これら小さな動物たちに対して、カモシカはふたつの蹄(ひずめ)の跡がくっきりついた深い足跡をつける。カモシカが雪の中を歩くのを見たことがある。軍隊の儀(ぎ)仗(じょう)兵(へい)のように抜きあげた前肢をまっすぐ前に伸ばしてから踏み込む。だから、四肢の足跡がくっきりと等間隔で残る。ただ、疾走するときはウサギと同じように後肢が前に出る形になる。
(白神マタギ舎ガイド・牧田肇)

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冬毛は真っ黄色に変化=21

2011/3/14 月曜日

 

 
テンの足跡(左)と糞(右)
 
夏毛のテン

 前回ふれたように、冬の山のウオーキングで見かける雪の上の動物の足跡で、最も多いのはテン(ホンドテン)である。
 テンは足が二つずつ並んだ特徴的な足跡をつけるからすぐわかる。夏の河原を歩いていても、いろいろなところにテンの糞(ふん)が落ちている。テンはずいぶんたくさんいるらしい。
 これには、最近の自然保護、特に動物保護の運動の結果、毛皮を着るのがトレンディでなくなったことが大いに影響しているようだ。昔は、毛皮を売るために、冬になるとテンやキツネを盛んに罠(わな)で捕ったと聞く。そのせいか、白神山地には、今日キツネは少ない。足跡を見かけたことがない。
 すると、木登りも得意なテンは冬の白神では、最強の肉食獣ということになる。なにしろ、日本には大型のネコ科の肉食獣はいないし、ヤマネコ類も、絶滅危惧種として西表島と対馬にいるだけだ。オオカミは滅んでしまった。ツキノワグマはもともと雑食だし、冬は冬眠している。
 数年前の初夏、マタギの工藤光治さんと一緒に暗門渓谷を歩いていたことがある。すると、工藤さんが「あ、テンコだ」といった。20~30メートル前方、テンが谷の側から遊歩道を横切って、斜面を登っていった。あっという間に見えなくなったけれど、テンのしなやかな体の黄色、斜面に咲き乱れるタニウツギのピンク、草木の葉の柔らかい緑色、しっとりと雨気をはらんだ空気の肌触りまで、ありありと思い出すことができる。
 その次は、岩木川上流の大川で出会った。河原に立っていたら、一緒にいた学生が、「あ、あれなんだろう」といった。対岸を黄色い動物が下流からぴょんぴょん跳ねてやってくる。テンだ。
 流れの幅は15メートルぐらい。雪解けで水かさが多かったので流れの音が大きく、それがわれわれの気配を消してくれたのだろうと思うが、それにしてもテンとしては大間抜けな話である。
 われわれの真正面までやってきて、さらにその辺をあちらへ行ったり、引き返したり、斜面を登ったり下ったりしている。そっとカメラを出して、ちゃんと焦点を合わせて、何枚も撮影したが、全く気づかない。私は、シャッターチャンスに恵まれない方だけれど、このときばかりはテンがヤブに入ってしまうまで思う存分写真が撮れた。
 それが、ここに掲載した写真。足の先と顔が黒いのは、夏毛の特徴。毛皮としては、黒い毛がなくなって真っ黄色な冬毛に変わらないと高く売れなかったという。顔の黒い部分が最後まで残るので、テンを捕るのは「メガネが取れてから」と言ったそうだ。
 数年前、やはり冬にウオーキングに行ったら、雪の上にウサギが倒れていた。近寄ってみたら、頭がなくなっている。その割にはあたりが血まみれというわけではない。雪が堅かったので、足跡があまりついていず、下手人がよくわからない。工藤光治さんにうかがったところ、言下に「それはテンだ」と言われた。
 テンは、ウサギを捕るとまず頭を噛(か)み取って食べてしまうのだそうである。普通、肉食獣は獲物の内臓から食べるものだと思い込んでいたら、テンは違うらしい。「昔はそういうウサギをよくいただいて来たもんだよ」と言われた。次の日に行ったら、もう本体もなくなっていた。雪の上に点々と小さな血の跡があった。前日拾えばよかったのに、惜しいことをした。惜しいといえば、そのときカメラを持っていなかったので撮影できなかった。こっちがもっと惜しかった。
(白神マタギ舎ガイド・牧田肇)

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