日曜随想

 

「停電災害の教訓」 情報を『見える化』する

2018/10/14 日曜日

 

 9月6日未明に起きた北海道胆振東部地震では、私の住む函館でも震度5弱の揺れを感じた。地震の直後から北海道全域が停電となり、わが家に電気が戻るまで27時間、函館市の全域が復旧するまでには42時間近くを要した。長時間の停電は、弘前周辺でも東日本大震災の際、さらには27年前の台風19号による被災の時に経験した方も多いだろう。今回、あらためて電力に頼る社会の脆さを痛感するとともに、時代ごとのニーズに即した災害への備えや教訓が必要だと感じた。
 函館や札幌など都市部の観光地では、多くの外国人を含む旅行客が震災に遭遇した。交通機関や宿泊で難題を抱える旅行者にとって、連絡や情報収集のためにはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が頼みの綱だったが、スマートフォンの充電切れが彼らの差し迫った問題だった。しかしながらスマホをどこで充電できるか、という情報が不足していた。これは旅行者のみならず、この街で暮らす私たちにとっても同じで、今や家庭の電話は停電の際に使用できないものが多く、高齢者など災害弱者ほど、携帯やスマホが命綱になっていた。もちろん各所に避難所は設置したのだが、限られた自家発電の環境では、ここで充電できるとの広報はしなかったようだ。それゆえに断片的な情報を手がかりに、充電のため遠方まで赴いたという人もかなりいたようだ。コンビニ等でも買える充電アダプターさえあれば、自家用車のシガーソケットから簡単に充電できるので、本当はご近所同士で身近にもっと助け合うこともできたはずである。
 さて、誰もが一番欲しかった情報は、もちろん停電復旧の見通しである。しかし電力会社からの情報はほとんどなかった。こうしたなか発災当日の夕方、地域コミュニティーFM放送がリスナーからの情報で、ある地区で停電が復旧したことを伝えた。これを聞き、私は自分の所も復旧が近いと察した。だが土地勘のない人にとっては、それがどの場所なのかがわからない。このことに限らずいろいろな情報は、地図の上に示され見えるものにすることで、誰もがわかりやすく、より価値の高い情報になったはずだ。SNSにより積極的に情報収集し、自治体の持つマンパワーを活用して、停電復旧の状況を「情報が見える」状態にする努力が必要だったと感じる。地図情報システムといった過剰なものは全く必要ない。白地図に復旧状況を色鉛筆で塗り分け、それを時間毎にデジカメで撮り、SNSにアップしさえすればよい。何を示しているかを明確にすれば、多言語対応でなくとも外国人にも役立つはずだ。
 機転を利かせて「情報を見える化」すること。今回うまくいかなかったことこそ、ぜひ教訓にしたいものだ。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)

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「日本アニメ百年(9)」テレビアニメの台頭(2)

2018/10/7 日曜日

 

 プロダクションアイジーは元々、1987年にテレビアニメ『赤い光弾ジリオン』をタツノコプロが制作した時のプロジェクト班に集合したスタッフ達を、制作完成後に解散させることを惜しみ、制作プロデューサーとしてプロジェクトを率いた石川光久が、後藤隆幸率いるアニメ集団「鐘夢」を合併して、京都アニメーションからの援助を受けて、「有限会社アイジータツノコ」を同年12月に設立したものです。出資者は、石川、後藤と京都アニメーションの代表、およびタツノコプロなどでした。そして「有限会社アイジータツノコ」を設立した後に93年、「有限会社プロダクション・アイジー」に変更しました。
 設立からしばらくは各種のアニメ関連の仕事を制作してきましたが、いよいよ押井守監督の劇場映画作品「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」を制作し、日本のみならずアメリカでもヒットし、全米のビデオレンタルのトップになることができました。このことにより日本国内だけでなく海外での知名度も高まり、企業としての規模も拡大します。なお、このアニメはこの後、アメリカで映画「マトリックス 3部作」設定の元として監督のウオシャウスキー兄弟が取り上げたことで、さらに知名度が上がりました。10年後に第2作「イノセンス」が制作され、相当難解な内容でしたが、制作にはスタジオジブリが資金提供からアニメーターの動員まで幅広く協力し、プロデューサーもスタジオジブリの鈴木敏夫が共同就任したようです。キャンペーンにも積極的に鈴木が参加し、宮崎監督の後押しもあったそうですが、同時期のスタジオジブリ作品のプロモーションにも良くない影響が出たそうです。衛星放送でも神山健治監督でテレビ版が制作されてシリーズ化されました。このテレビ版もまた日本のアニメの実力を発揮し、世界的に有名になりました。全米のCATVの視聴率1位を記録したようです。近年では「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」自体がハリウッドで実写化もされました。
 98年に増資して「株式会社プロダクション・アイジー」と変更されます。アイジーとは石川、後藤両名の頭文字です。テレビシリーズは主に子会社のジーベックが制作し、プロダクション・アイジーは劇場用アニメ映画の制作を主としていましたが、2001年より子会社が担っていたテレビシリーズの元請制作にも進出しました。制作したアニメには有名な作品が数多くあります。「精霊の守り人」「図書館戦争」などは実写化されていますし、「進撃の巨人」や「銀河英雄伝説」「新世紀エヴァンゲリオン」では制作協力で参加しています。「スカイ・クロラ」などもあります。
(弘前大学教育学部教授 石川善朗)

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「気ままな旅」盛岡・原敬記念館を再訪する

2018/9/30 日曜日

 

 9月半ばをすぎた日曜の朝、久しぶりに大鰐ICから東北自動車道に入り、盛岡へ向かった。盛岡は何度行っても飽きない、不思議な魅力をもつ街である。
 その魅力を因数分解すると、次の5項目にまとめることができる。「日帰りできる適度な距離と時間」「お土産豊富なサービスエリア」「変化と起伏に富む車窓の風景」「整備された歴史・文化遺産(施設)とアクセスの利便性」「ご当地グルメが気軽に味わえる鉄板の食文化」。
 このうち、旅の共通項として、私は「歴史・文化遺産(施設)」の項目を必ず取り入れている。しかも、興味、関心が向く対象にだけ、限られた時間と意識を集中的に注ぎ込む。それが自分に思わぬ気付きや発見、躍動感をもたらすからだ。
 今回の盛岡行きは、原敬記念館を再訪し、原敬という人物を知るためである。今や幕末に生まれ、疾風怒濤(しっぷうどとう)の明治、大正時代を生き抜いた、平民宰相・原敬の生涯や功績を知る人は数少ない。歴史教科書、書籍等から窺い知ることも限られている。まして原のものの見方や考え方、生き方の真実は知る由もない。
 対して、世の中はフェイクニュース(虚偽発言)が飛び交い、混沌(こんとん)としている。何を信じてよいかわからぬ状況である。平成の世が終わりに近づく今こそ、原敬の真実の姿に心底学びたくなった。
 盛岡ICから車で約15分も走ると、原敬記念館(盛岡市本宮4丁目)に着く。正門に続く通路を真っ直ぐ進むと左手に生家、右手に記念館が見えてくる。まず生家(当時の5分の1程度)にあがる。続いて庭、池、東屋を巡る。程なく記念館の玄関が現れる。玄関の右横に建つ碑(岩手山をイメージした自然石)は、原が座右の銘にした「宝積(ほうじゃく)」の自筆文字が刻まれ、威風堂々の様相を呈する。
 碑文によれば、「宝積」には「人に尽くして見返りを求めない」「人を守りて己を守らず」の意味があるという。原の信念や行動にブレがなかったのは、「宝積」を己の生き方(実践)の指針にしていたからであろう。館内の4つのコーナー(「若き日の原敬」「官僚時代」「新聞界から総理」「原敬の遺品」)に展示されている、ゆかりの資料がどれもみな「宝積」に帰着するのが、その証左である。
 若き日の不如意な暮らし、苦学、流転の経験(辛酸)が原の類い希な人間性と才幹を磨き、総理大臣まで上り詰める原動力になったのは間違いない。藩閥と無縁の政党内閣を組織し高等教育機関の整備、選挙法改正等に尽力した原だが、現実的な政治姿勢や政党運営はジャーナリズムに批判されることが多かったという。時代の空気が許さなかったのだろう。
 原は一人の青年の凶行により、志半ばで突然亡くなった。理と情を調和させ、「宝積」の生き方を実践し続けた、平民宰相・原敬により一層畏敬の念を抱く。
(東北女子大学家政学部教授 船水周)

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「心のこもった言葉」お尻痛くなったべ?

2018/9/23 日曜日

 

 この夏、足を骨折して不自由で辛い生活を送っている。何が不自由かと言えば、とにかく普通にできていたことができなくなったことである。歩くことはもちろんだが、立ったり座ったりも簡単にはできないので、トイレに行くことさえもなるべくしないようにしたいと考えるほどだ。しかし、仕事はなかなか休めないので、痛いながら出勤したところ、学生たちの反応が様々で面白かった。「先生、何しちゃったの?」と大笑いする学生、ちょっと離れて立ち止まる学生、見ないふりをする学生、「大丈夫ですか?」と心配してくれる学生、何も言わずに車椅子を押してくれる学生、人それぞれに感じるところがあるのだろう。
 その中で、いかにも若者だと感じたのは、「先生、どうしたらいいかわからないから、何すればいいか言って」と言われたことだった。そう、経験しなければわからないことはたくさんあり、彼らにとって、助けようという気持ちはあっても、何をどうすればいいのかわからないから、具体的に教えてくれたらそれをしたいという、率直な気持ちだ。そこで、私は迷惑をかけるからという考えを捨て、なるべく「ちょっと助けてくれるかな?」と学生に声をかけることにした。
 ちょっと手助けしてもらうだけで、かなりできることに広がりができるものだ。例えば、車椅子や松葉杖では手前に引くドアを開けることや、ほんの少しの段差を越えることも難しい。こうしたお願いをしたことで、移動できるようになった。ドアを開ける、それだけのことだが、大きな助けになるのだ。目の前に助けを必要とする人がいて、それを自分と関係ないことのように片付けるような若者にはなってほしくない。
 そうした生活の中で、病院で学生と違い、さすがプロと思える出来事があった。整形外科がいつでも・どこの病院でも混んでいることはみなさん、よくご承知だろう。2時間待ちもざらだ。待ちくたびれて辟易としている高齢の患者さんに、その病院の看護師長さんが「お尻痛くなったベ? どこの病院さ行けばいいべな?」と声をかけたのだ。その場の空気がぱっと変わった。長く待たせている患者さんを心配し、かつユーモアたっぷりに気遣う様子に、周りの人たちも同じように看護師長さんの労りを感じた。たったひとことの声かけだが、心のこもったその言葉は、人を癒やす大きな力となった。
 津軽には、こどばなさけ(言葉情け)という言い方があるということを、『病む人の津軽ことば』の中で横浜礼子氏が紹介しているが、まさにそのことばによるケアだ。これは人間にしかできないケアなのだろうと感じた。若者がここまでになるにはまだまだ経験が必要だ!
(弘前学院大学文学部教授 今村かほる)

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「脳は不思議」「ボーッとすること」のすすめ

2018/9/16 日曜日

 

 「何ボーッとしているんだ」「ボーッとしてないで、さっさと仕事(勉強)しなさい」子どもや家族に対して、あるいは職場の同僚に対して、あなたも一度は言ったことがある言葉だと思います。「ボーッとしている」という言葉からは、ネガティブでやる気がないイメージを受けますが、はたしてそうなのでしょうか。今回は「ボーッとすること」について考えてみましょう。 
 医学や脳科学の進歩により、脳の働きについても、いろいろなことがわかってきました。ワシントン大学医学部のレイクル教授らの研究では、何か考えたり、仕事をしたりしているときと、ボーッとしているときの脳の働きを比較すると、ボーッとしている時の方が、記憶に関する部位や価値判断に関する部位が活発に働いていたという結果が出ています。
 脳血流シンチグラフィという検査では、脳のどこにたくさん血液が流れていて、どんな機能を司る部位が活発に働いているかがわかるそうです。そのため、多くの研究者が、大量のデータから脳の働きについて研究をしています。中には、意識的に活動しているときに比べて、ボーッとしているときの方が、脳は15倍も多くのエネルギーを使っているという報告もありました。でも、血液には限りがありますから、血流の総量は、何かしているときも、何もしていないときも、大きく変わることはありません。何かしているときは、そのために必要な部位に血流が集中して活発に働き、他の部位の働きは逆に鈍くなっている可能性があります。ご飯を食べた後、胃のあたりに血流が集中するので、眠くなってしまうのと同じです。
 ボーッとしているということは、脳のいたるところに満遍なく血流がいきわたり、普段あまり使ってない部分も働いているということです。ですから、ボーッとしているときに、「あっ、気が付いちゃった」「そういう手があったか」「これおもしろそう」というように、急にひらめいたりするわけです。そういえば、ビジネスマンの研修に、座禅や瞑想などのプログラムが組み込まれているのも、無になって、脳を元気にするためなのかもしれませんね。
 脳は不思議がいっぱいです。脳科学者によれば、そのほとんどが、まだ良くわかっていないとも言われています。科学でいろいろなことがわかってくると、今までのあたりまえが、覆ってしまうこともあるかもしれません。
 あなたも時々ボーッとする時間を作って、普段あまり使われていない脳の部分を元気にしてみませんか。子どもがボーッとしていたら、たまには見て見ぬふりをしてあげましょう。ちなみに、ボーッとすることは、寝ることではないので、ご注意ください。
 (弘前医療福祉大学教授 小玉有子)

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