日曜随想

 

「住民参加で対策を」灯油問題からみえるもの

2019/1/13 日曜日

 

 昨年11月下旬、東北経産局主催の灯油問題懇談会があった。消費者と供給側が意見交換するもので、私も「学識経験者」という立場で参加している。会の中心課題は、可能な限り安価で安定的に灯油を消費者に供給できるかであるが、この時点では、原油価格が高止まりで、灯油価格も高い水準にあったので、消費者は大変懸念していた。もっとも、その後、米中「貿易摩擦」に端を発した世界経済の先行き不安などで原油需要が減少し、随分と安くなっているのは確かである。
 こうした課題とともに議論されたのが供給体制である。灯油を購買する場所でもあるサービスステーション(SS)の数が全国的に減少し、「SS過疎」(1自治体にSSが3カ所以下しかない状態)が深刻化しているため、ガソリンや灯油の供給が懸念されているのだ。資源エネルギー庁は昨年11月、大規模災害時の製油所機能の維持や、給油所(SS)が非常時でも給油を継続できる体制の整備などを急ぐことにしたが、平時でも、石油製品の供給が容易ではない事態が顕在化していると言えよう。
 SSの減少(SS過疎の進行)は、少子高齢化と自動車の燃費向上などの構造的要因と、商品の差別化が困難で価格競争が激化し、収益率が低下していることが要因で、1994年度には6千余あったSSが、2017年度にはほぼ半数にまで減少し、今後はさらに減少していくことは必至の状況だ。灯油などを扱う揮発油販売業者数も同様な傾向にある。
 こうした中で、ガソリンや灯油を消費者に日常的に確実に届けるためのいくつかの方策が提案されている。一つは、過疎地は都市部に比べ人口や家屋の密度が低いことから、安全水準を都市部より低くすることで設備コストを下げ、収益性を向上させるというもの、二つ目は、IT技術を積極的に活用し、人手不足を克服するとともに業務の効率化を実現しようというもの、三つ目は、SSを「地域のサービス拠点・総合エネルギー拠点」として再編する計画で、LPガス・スタンド、自動車整備場、簡易郵便局や宅配ボックスの設置、地域の物産販売・観光サービス提供の場など、日常生活に関わる物販とサービスを総合的に行うとともに、災害時の拠点化も図るものである。また、これとは別に、タンクローリー車を派遣して給油する「どこでもスタンド」の実証実験も一部地域で開始された。
 これらは依然として構想や実証実験の段階に過ぎない。しかし、SS過疎が我々の日常生活を脅かす懸念がある時、我々は予め何らかの方策を講じておく必要があろう。その際、自治体、地域住民、供給業者などが課題解決のための協議体を構成し、地域の実情に適した方策を可能なところから実践していくことが求められているのは言うまでもなかろう。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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「りんご娘」20年目のご当地アイドル

2019/1/6 日曜日

 

 2019年の初頭に当たり、ぜひ話題に挙げておきたいのは、ご当地アイドルグループ「りんご娘」だ。今年で結成から20年目を迎えるそうで、いまや青森県での認知度はほぼ100%だという。
 2000年にボランティアで始まった弘前アクターズスクールプロジェクトから誕生。同年、2人のメンバーによるシングル曲をリリースし、これまでに19枚のシングルを世に出した。まもなく3枚目のアルバムがリリース予定である。県内での活躍はもとより、近年は全国メディアに登場する機会も増えている。
 20歳前後のメンバーの顔ぶれをみると分かるとおり、りんご娘は世代交代を重ねて、そのグループ名と楽曲が受け継がれてきたものだ。スポーツのクラブチームのようでもあり、後継を担う世代の「アルプスおとめ」などのグループのメンバーも控えている。
 全国ではこの20年ほどで、1000組を超えるご当地アイドルグループが誕生したとされるが、そのほとんどはメンバーの入れ替えなどを経たとしても、短期間で解散あるいは活動を休止している。こうしたなかりんご娘は、あのAKB48をも凌ぐ、息の長い活動を続けている。全国のご当地アイドルグループのなかでは、まさにトップランナーなのだ。
 中央に進出し、メジャーでヒットすれば、莫大な利益と名声がもたらされるアイドルの世界。そうしたなかで、あえて地元への強いこだわりを貫いてきたリンゴミュージックの代表・樋川新一さんらの慧眼があってこその20年。まさに大切に手をかけ育てられるリンゴのように、メンバーたちは才能を開花させてきた。もちろん活動の継続を後押ししてきたのは多くのファンや協力者に他ならない。しかもそれは、中央でのアイドル展開の縮小版とは異なる、経済の論理だけでは語り尽くせない、街の底力に支えられてきたものとも思える。それゆえに簡単に真似のできるものではないのだ。
 音楽性についての論評は、他に機会を譲るが、もはや当初より掲げる農業活性化アイドルに留まらず、地域全体を元気づける役割をも担っていることは間違いない。無料動画サイトで見られるりんご娘のミュージックビデオは、街をアピールする格好の素材である。と同時に、地元の人たちにこそ見て欲しいもの。さらに弘前を離れて暮らす人にもぜひ薦めて欲しいのだ。洗練された楽曲やダンスが展開する舞台は、街並みや桜の美しい情景。。それはいろいろな世代の人たちに対して、率直にこの街の魅力を訴えかけてくれる。長年の経験やノウハウの蓄積が生んだ集大成ともいえるクオリティーだ。
 今年は初の全国ツアーもあるそうで、20年目のりんご娘に注目し、ますますの活躍を願っている。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)

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「日本アニメ百年(11)」テレビアニメの台頭(4)

2018/12/30 日曜日

 

 今回は、三つのスタジオをご紹介します。まず1980年代初頭、関西で当時学生だった数人の仲間が、あるイベントのオープニングアニメを制作したことから、そのままアニメの制作を続けることになりました。その後、プロになることを決めたことから、最初の企画を制作することになります。それは劇場用長編アニメ「王立宇宙軍 オネアミスの翼」87年公開です。このアニメの制作のために制作会社として「ガイナックス」というスタジオを設立します。出資はバンダイに頼んだようです。このアニメの完成と同時にガイナックスは解散するはずでしたが、諸般の事情で継続することとなり、その後、1990年放送開始のTVアニメ「ふしぎの海のナディア」をグループ・タック、世映動画と共同制作して大ヒットさせます。
 力をつけたガイナックスは、次に社会現象にまでなったTVアニメの「新世紀エヴァンゲリオン」を竜の子プロダクションと共同制作します。この95年放送開始のTVアニメはご存じの方も多いでしょう。各種メディアに登場しました。難解な内容だったので科学的考察を含めて解説するための書籍まで出版されました。後に劇場版も制作され、主題曲の「残酷な天使のテーゼ」は今でもカラオケで歌い継がれています。
 その後のガイナックスは2015年頃まで盛んにアニメの制作に関わりますが、最近では目立った活動はありません。金銭的なトラブルもあったようです。07年には新世紀エヴァンゲリオンの監督であった庵野秀明が退社し、自身のスタジオ「カラー」を設立します。この後、庵野はTVアニメのリメイクとして完全劇場用アニメの「ヱヴァンゲリヲン新劇場版‥序」を制作し、さらにその後2作の続編を作ります。これらも大ヒットしました。実写映画の「シン・ゴジラ」も制作しています。これからますます活躍が期待されます。
 ここで少しさかのぼって1992年にガイナックスから数人が退社し、新しいスタジオが誕生しました。「株式会社GONZO」です。98年にはフルデジタルアニメである「青の6号」を制作し、大変な評判となります。新しい表現の3次元表現と2次元表現の融合を行って制作されました非常に先進的な表現でした
 GONZOはこの後、「HELLSING」や「フルメタル・パニック!」「カレイドスター」「巌窟王」「アフロサムライ」などの制作を行います。特に2011年の「ラストエグザイルー銀翼のファム」などは3次元と2次元の融合表現がかなり洗練されています。しかし、現在ではこのGONZOも社員が次々と独立して一部の制作人員が残っている縮小状態です。是非復活を期待したいところです。
(弘前大学教育学部教授 石川善朗)

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気ままな旅「東京・深川で芭蕉を想う」

2018/12/23 日曜日

 

 「月日は百代(はくたい)の過客(くわかく)にして、行きかふ年もまた旅人なり」―松尾芭(ば)蕉(しょう)『おくのほそ道』冒頭の一文である。人生を旅に見立て、俳諧(はいかい)一筋に生き抜いた芭蕉の理想の生き方がここに示されている。
 『おくのほそ道』は、元禄(げんろく)2(1689)年3月27日、江戸・深川を出発し、東北・北陸を巡り、9月6日、美濃国(みのくに)(岐阜)・大垣を出発するまでを書いた150日間の紀行文である。旅の出来事や折々に詠んだ句をもとに後日、創作した。歩いた総距離は2400キロに及んだ。
 学生時代、古文にさほど興味がなかった筆者も、この『おくのほそ道』だけは、心を惹(ひ)かれた。他の文学作品に比べて、断然わかりやすかったからだ。何よりも芭蕉の訪ねた場所が時系列で現れ、エピソードを詠んだ句がそれに融合し、情景が浮かび上がってくるのがいい。
 本紙連載中の「気ままな旅」は、この紀行文を淵源(えげん)とする。大学卒業後も『おくのほそ道』に惹かれ、今もって名所巡りを続けるのはその証しである。
 たとえば、深川、千住、日光、白河の関、塩竈(しおがま)神社、松島、石巻、平泉、天童、立石寺(りゅうしゃくじ)、最上川、酒田、象潟(きさがた)、金沢、永平寺、大垣など。同じ場所を数回訪れたことも珍しくない。特に深川は『おくのほそ道』出発の地である。さらに芭蕉という俳号も深川に移り住んでから使用している。もともとの俳号は、中国の詩人李白に由来する「桃青」(李に対する桃、白に対する青)である。門人の李下(りか)に贈られたバショウの株が家の周りに生い茂ったことで、その家が芭蕉庵(あん)と呼ばれるようになり、やがて「芭蕉」と号した。
 筆者は時々芭蕉に惹かれて、(東京都)江東区芭蕉記念館を訪れる。都営大江戸線森下駅から徒歩5分。「記念館」前のバショウが目印。館内は『おくのほそ道』をはじめ、芭蕉関係の資料が閲覧できる。また館外の庭園は芭蕉の句に詠まれた草木が植えられ、築山には芭蕉庵を模した祠(ほこら)や句碑が点在する。深川芭蕉庵で詠んだ次の3句が当時を彷彿(ほうふつ)させる。
  草の戸も住み替る代ぞひなの家
  ふる池や蛙(かわず)飛こむ水の音
  川上とこの川下や月の友
 「記念館」の裏口を出ると、目の前に隅田川、右横に新大橋が現れる。堤防沿いの小道を左へ3分程歩いて間もなく、芭蕉庵史跡展望庭園に行き着く。ここは隅田川と小名木(おなぎ)川に挟まれた一角で、二つの川が一望できる。芭蕉の原風景であり、創作のモチーフになっている。芭蕉はこの深川に約14年間住み続けた。芭蕉庵は俳諧の活動拠点であり、人生のクライマックスを演出した聖地である。
 元禄7(1694)年5月11日、芭蕉は旅の途中で亡くなる。享年51歳。
  旅に病んで夢は枯れ野をかけ廻(めぐ)る
 「庭園」に鎮座する芭蕉像は、隅田川を眺めて何を想っているのだろう――。
(東北女子大学家政学部教授 船水周)

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これからの日本語「多様化する地域社会」

2018/12/16 日曜日

 

 来年4月から大幅に外国人労働者を受け入れる法案が可決した。これまで日本は外国人材の受け入れについて、日系人を中心とした定住者や日本人の配偶者、特別な能力(大学教授や芸能人など、平成29年からは介護士も含む)を持つ人材や、開発途上国への国際協力を目的とした技能実習、留学生のアルバイトなどといった厳しい制約を保ってきた。自国民の雇用を守ってきたと言い換えてもよいだろう。
 外国人看護師・介護福祉士候補者を受け入れてきたEPA(経済連携協定)においても、平成20年のインドネシアにはじまり、その後、フィリピン、ベトナムと続いて次々と受け入れてきたが、その説明はあくまで「労働力不足への対応ではなく、2国間の経済活動の連携の強化の観点から」「特例的に行う」という説明を繰り返してきた。しかし、ここにきて急に人手不足と言い出したので、みなが感じていた現実味とは別に、説明が唐突な感じは否めないだろう。
 実態として、今、私たちの暮らす社会はさまざまな人々と共に暮らす社会である。地域社会で暮らすには、ごみの出し方、挨拶の仕方、雪の片付け方など実に細々としたきまりや暗黙のルールに従わなければならないこともたくさんある。地域の人間にはあまりにあたりまえと思われているから明文化されずにいることも多い。そういう細々したことは、日本に暮らすことになった外国の人々が、仕事をするために必要かどうかということ以前に、地域で暮らしていくために必要なことだ。その知識やルールの共有は、外国人だけでなく、たとえ日本人であっても他地域から来た人間には難しいのだ。
 また、この先の私たちのコミュニケーションを考えるとき、気になることの一つは敬語の運用だ。敬語は他の言語にないわけではないが、日本語の特徴と言える。先日、参加した沖縄県の宮古島で行われた消滅の危機にある言語・方言サミットでも、話題になったことの一つは、若い人に方言を継承していくには、方言の敬語を間違えても、とがめないことが大切だということだった。人間関係を円滑に保つ一方で、間違えると人間関係を壊す要因ともなるため、若い世代ほど敬語が苦手という意識がある。
 ますます多様化することが予想されている地域生活の中で、地域を一緒に作っていく仲間である外国人留学生や労働者に、私たちはどんなコミュニケーションを望ましいと考えるのだろうか。ですやますを中心としたもっと簡単な敬語に私たちも一緒に切り替えるのか、彼らには日本人のような敬語を求めないのか、私たちの人間関係維持機能である敬語は、付き合い方のバロメーターと言える。
(弘前学院大学文学部教授 今村かほる)

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