日曜随想

 

「ふるさと自慢」質の違う魅力の認め合う機会

2020/2/23 日曜日

 

 先日、青森市で行われたフォーラムに招かれ、青森出身の紀行作家・山内史子さんらとともに「青森・函館ふるさと自慢」という対談をさせてもらった。ふるさと自慢は、北海道新幹線開業の前後には盛んに企画され、語り尽くされた感もあったので、今回は我々なりに互いの経験を踏まえて、少し踏み込んだ内容にしようと話し合い登壇した。山内さんから青森県は、太宰治や寺山修司の出身地、さらには吉田松陰が津軽を訪れたことなど、玄人好みの著名人に縁のある土地、との自慢が語られた。対する私は函館・道南が、黒船来航や戊辰戦争など大きく時代が動いた舞台であったこと、そして函館空港が街から近く、市電やロープウェイなど観光するための交通手段が充実していることを自慢として挙げた。
 さらに、二つの地域に住む人々が互いをどのように見ているかという話題に触れ、青森県の人たちは函館にキラキラとした華やかさを感じ、いつも訪ねてみたいという憧れを持っていると聞くが、函館・道南から見た青森県は、どんよりとした田舎くさい北国というイメージがある、と失礼を承知で話した。アラフィフ世代のパネラー同士で顔を突き合わせ、そう思っていた若き頃の自分たちに思いを馳(は)せたのだが、山内さんは世界各国を旅した経験を切り口に故郷の奥深さをさらに強調。私は青森側にいる数多くの友人たちとの繋(つな)がりを契機に、魅力の質が違うことに気付かされたことを述べた。
 ファストフードとスローフード。海峡を挟んだ函館・道南と青森県、それぞれの魅力の違いを例えるならば、こうした言葉を想像してみてはいかがだろうか。ファストフードは、いつでも誰でも容易にアクセスでき、親しみやすさがある。函館・道南は空港の近さや見どころが比較的集まっていることなどからもそう言える。一方の青森県はスローフード。函館のそれとは真逆で、そこに踏み入るまでに少し勇気や覚悟はいるが、気に入ってしまえば、どんどんそこに引き込まれるものがある。また、そこにたどり着くまでに時間と労力を要するが奥は深い。
 海峡を挟んで縄文の昔から交流があったとされ、よく似た文化を数多く持つ両地域が、魅力の作られ方ではこれほど見事に異なるのかと改めて感じた。
 では、この二つを再び掛け合わせることで新たな化学反応も起き得るのではないか。ぜひ次の世代へ期待をかけたい。
 ただしその前に、なぜか思春期に生じる、青森県に対するこちら側からの侮った見方をぜひとも払拭(ふっしょく)しておかねばなるまい。茶の間で無料動画サイトに夢中になっている小学生の甥(おい)っ子や姪(めい)っ子の姿を見ながら、この子らの世代にユーモア路線で面白い青森県を伝えるのも一計ではないかと密(ひそ)かに感じている。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)

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「気ままな旅」橿原市・大和しうるわし

2020/2/16 日曜日

 

 2020年1月早々、新元号「令和」の出典となった万葉集の故地・甘樫丘(あまかしのおか)と、伝説の第一代神武(じんむ)天皇が御祭神となっている橿原(かしはら)神宮を訪ねた。
 37年ほど前、万葉学者、犬養孝(いぬかいたかし)先生(当時甲南(こうなん)女子大学教授)と奈良県明日香(あすか)村の万葉故地を巡る、特別授業に参加した。巡行の出発点は甘樫丘。豊浦(とゆら)バス停から甘樫丘展望台まで徒歩で10分。
 頂上(148メートル)は360度のパノラマが広がる。西に畝傍(うねび)山(199メートル)、北に耳成(みみなし)山(140メートル)、東に香具(かぐ)山(152メートル)の大和三山、その間に藤原京跡。東南に飛鳥坐(あすかにいます)神社の丘、飛鳥寺、飛鳥宮跡(きゅうせき)。飛鳥川が明日香の里を通り甘樫丘の裾を巻いて北西へ。古代史のロマンを彷彿(ほうふつ)させる景観が点在している。
 とりわけ奈良盆地に浮かぶ大和三山の不思議な感動は、筆舌に尽くしがたい。三山の山容と微妙な位置関係に、男女の三角関係を重ね合わせた次の歌が何よりその感動を深める。
 香具山は/畝傍を惜(を)しと/耳梨(みみなし)と/相争(あいあらそ)ひき/神代(かみよ)より/かくになるらし/古(いにしへ)も/然(しか)にあれこそ/うつせみも/妻を/争ふらしき   中大兄(なかのおおえの)皇子(巻一・13)
 甘樫丘に立つのは3回目。来る度(たび)に感動が増していく。ちなみに近鉄橿原神宮前駅西口から豊浦バス停まで、タクシーを使えば7分で着く。
 さて大和三山の中で畝傍山は199メートルと最も高く雄々しい。田の畝(うね)に似た尾根が緩やかで美しいので、畝傍と名付けられたという。日本書紀では畝傍山の東南麓、橿原宮で日向国(ひむかのくに)から東征した神日本磐余彦尊(かむやまといわれびこのみこと)が第一代神武天皇として即位(52歳)、享年127歳で畝傍山東北陵に葬られたと記す。ただし考古学的検証がなく異常な長寿により、神武天皇の実在は通常疑問視される。
 橿原宮(かしはらのみや)が神武天皇の後、荒廃したため、神武天皇陵の場所は不明になった。今の天皇陵の場所は畝傍山に最も近い場所で、江戸時代に選定された。神社を橿原宮址(あと)に創建したのは1890(明治23)年になってから。橿原神宮は1940(昭和15)年に宮域を拡張・整備している。その橿原神宮を今初めて訪ねる。
 近鉄畝傍御陵前駅から直進6分、丁字路交差点に出る。右手横に畝傍山東北陵、左手300メートル奥に橿原神宮がある。まずは東北陵へ。森に囲まれた参道を5分歩くと畝傍山北麓と向き合う御陵に着く。静寂で凛(りん)とした佇(たたず)まいだ。
 他方、畝傍山を挟んで、御陵と反対側に鎮座する橿原神宮は数多(あまた)の出店が立ち並び、参拝者がひっきりなしに往来する。史実を超えた建国の祖神(神武さん)として敬慕されている証左であろう。最も重要な祭礼、「紀元祭」は毎年2月11日、建国記念の日に行われる。
 大和は国のまほろば、始まりである。そんな想(おも)いがますます強くなる。
(東北女子大学家政学部教授 船水周)

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「ジョンブル魂」ブレグジットの行く末

2020/2/9 日曜日

 

 グリニッジ標準時2020年1月31日午後11時に、1993年に誕生したEUに初めて離脱国が出現しました。ご承知のようにイギリスである。
 2016年に国民投票によって離脱派が勝って方向性が示され、昨年の12月12日の総選挙で保守党が圧勝し離脱が決まりました。
 イギリスと言えば日本人が議会制民主主義や、文学、自然科学の手本としてきた国である。
 ポンドをずっと使い続けて来たことからも分かるように、EUに積極的に参加したようには思われないが、ドイツ、フランスに次ぐ経済大国でもある。離脱賛成、反対を年代や地域で見ると、イングランドでは地方の高年齢層に離脱賛成の保守派が優位であった。
 彼らはEUに対して多額の拠出金を出しているのに言いたいことも言えないし、残留のメリットが見えないとするジョンブル魂を持った在りし日の大英帝国を懐かしむ人々のようにも思われる。彼らにとってイギリスは、19世紀には陸と人口の4分の1以上を占めた大国だったのですから現状に我慢ならないのでしょう。
 わが国とイギリスの関わりは1600年のウィリアム・アダムスが最初のようである。幕末には武器商人として倒幕派を支援し(武器はどちらにも売っていたが)、高島炭鉱開発に力を入れたトーマス・グラバーが有名である。彼は1863年に長州藩が清国経由でイギリスへ送り込んだ伊藤博文をはじめとする長州五傑のバックアップをしたばかりでなく、65年には薩摩藩を支援し、蒸気船で20名ほどの薩摩の若者をイギリスへ送り込んだ明治政府にとっての功労者である。旅行家として「日本奥地紀行」を出版したイザベラ・バードもイギリス人である。
 私たちの世代にとってのイギリスは、スポーツカーのロータス、高級車のロールスロイス、ファッションのバーバリー、音楽ではザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、クイーン、エルトン・ジョンん? 彼は爵位を持ってましたネ。そう、イギリスはいまだに貴族が爵位を持っている社会です。職業でも階級が存在し、ポッシュアクセントと呼ばれる上流階級とコックニーアクセントと呼ばれる労働者階級で、話せば素性が分かる社会のようです。日本の「麿」はどこかへ飛んで行きましたが。
 イギリスにはカントリーと呼ばれる四つの国があり、言語も割合は低いもののそれぞれの言語が存在するとのことです。年末までにEU離脱交渉が実現しないとイギリスにとって不利益どころか国の分断にもなりかねません。
 EUという壮大な試みにほころびが見え始めました。
 ジョンブルの腹のくくりどころです。
(弘前学院大学看護学部教授 三上聖治)

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「LGBTQ」制服は着たくない

2020/2/2 日曜日

 

 「LGBTQ」という言葉を、街中やメディアでよく見聞きするようになりました。Lesbian(レズビアン=女性で、女性が好き)、Gay(ゲイ=男性で、男性が好き)、Bisexual(バイセクシュアル=男性と女性のどちらも好きになれる)、Transgender(トランスジェンダー=出生時の性別と異なる性別で生きようとする人)の頭文字をつなげて、LGBTと表しています。そこに、Questioning(クエスチョニング)の頭文字を加えて、LGBTQと表されるようになりました。クエスチョニングとは、自身の性自認(自分の性を何と考えるか)や性的指向(どんな性を好きになるか)が定まっていない、もしくは意図的に定めていない状態を指します。例えば、自分は「男性でも女性でもない」「男性でも女性でもある」「男性と女性の中間くらい」と感じていたり、「7割男性で、残りの3割が女性」「今は男性が好きだけど、女性が好きだった時期もあった」等、複雑な感覚を持っていたりします。
 そんな人は少数派で、自分の周りにはいない、テレビの中だけの話と思われがちですが、日本でも、結構な割合で存在していると言われています。さまざまな機関が調査していますが、2018年1月に発表された電通の調査結果では、LGBTQの割合は8・9%と公表されました。11人に1人と知って、少し驚きました。その後、国立社会保障・人口問題研究所が19年1月に発表した結果は3・3%となっていましたので、30人に1人の割合となります。それでも、小中学校の1クラスに1人いても不思議ではない割合です。LGBTQの方たちは、私たちの身近にも存在するということです。
 私はカウンセラーという仕事柄、LGBTQの方とお話をする機会が結構あります。「何が一番大変でしたか」と質問すると、多くの方が制服の話をします。自分の心は男なのに、スカートをはかなければならないのは、屈辱的だったとか、男が着るものを強要され、自分には選択の余地がないことが悲しかったとか、制服を着なければならなかった中高校生時代、毎日がつらかったとおっしゃいます。現役の生徒でも、そういう悩みを抱えている子は少なくありません。制服やユニホームは、ユニセックス(男性、女性の区別のない)なデザインを取り入れ、個人の意思でスカートとズボン、制服の色を選択できるようになったら、それだけでもLGBTQの方たちの問題は少し軽減されるかもしれません。
 LGBTQへの支援や理解を表明するレインボーリボンというバッジがあります。授業でLGBTQについて発表してくれた学生に勧められ、私もつけています。多様な特性や価値が認められ、普通に話せるようになったらいいですね。
(弘前医療福祉大学教授 小玉有子)

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「COP25と化石賞」今は石炭火力が必要だ

2020/1/26 日曜日

 

 昨年12月初め、スペイン・マドリードで第25回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP25)が開催された。南米チリで開催される予定であったが、政情不安で急遽(きゅうきょ)、開催地が変更されたものだ。この会議は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス削減の国際的ルール「パリ協定」がスタートする2020年を前に、国別の削減目標の引き上げを目指すものだったが、2日間もの会期延長にも拘(かか)わらず、目的を達成することなく終わった。
 こうした中、わが国の報道で目立ったのは、気候変動、今や気候危機とまで言われるようになった事態を前に、スウェーデンの少女・グレタさんの活動とグテーレス国連事務総長の発言、そして、それとは対象的に、わが国が「化石賞」を2度にわたって「授与」されたことだろうか。1度目は、梶山経産相が、石炭火力を今後も使用していくと発言した時、2度目は、COP25開催に合わせ、EUなどが温室効果ガス削減を華々しく喧伝(けんでん)している中、小泉環境相が、わが国は温室効果ガス排出を着実に削減しているが、石炭火力の廃止と温室効果ガス排出削減の上積みを明確にしなかった時である。そのため、わが国が石炭火力を使用することが世界の動きに逆行するかのごとくに決めつけられたのである。
 化石賞は、NGO「気候変動ネットワーク」が自己の価値観(偏見)に基づいて「贈呈」するもので、この団体は、各国の経済・産業やエネルギー安全保障などには全く関心がなく、原子力発電にも反対し、温室効果ガスを出すことが犯罪であるとするので、気にする必要はないのかもしれない。しかし、わが国は、今現在は石炭火力を使わざるを得ないが、高効率石炭火力であり、温室効果ガス排出は以前に比べて大きく削減していること、途上国は、経済の発展と国民生活の向上のために今後も使い続ける必要があり、その際、わが国は先進国として、実用化に基礎づけられた技術移転をしていく義務と責任があることなどを説明すべきであり、「受賞」を断固として拒否すべきだったのである。
 気候危機や地球温暖化の大きな原因である温室効果ガス排出を極力削減していくことが必要なのは、トランプ大統領など一部の懐疑論者を除き、大方のコンセンサスとなっている。しかし、わが国が今現在は石炭火力を使わざるを得ないのは、供給が不安定でしかも国民に多大な経済的負担を強いている再生可能エネルギーを急速に拡大することは不可能であり、原子力発電も依然として多くが停止状態にあるからである。それでも石炭火力を全廃しろというなら、ドイツのように、再エネ先進国を自称して国民に多大な負担をかける一方で、CO2を大量に排出する褐炭火力に依然として依拠していることに「頬かむり」するしかないだろう。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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