日曜随想

 

「消滅の危機言語」方言の伝承は知恵の継承

2016/9/25 日曜日

 

 中央教育審議会の「国語ワーキンググループにおいて、東日本大震災以降続けてきた「方言の力」による地域の復興に対する東北各地での取り組みが、取り上げられた。審議の取りまとめとして報告された中に「地域の言語文化に関する学習の充実」として取り上げられた。
 そこには、○我が国には、長い歴史の中で形成されてきた多様な方言が各地域に存在する。しかし、近年の社会状況の大きな変化に伴って、共通語の浸透が進み、その伝統的な特徴を失いつつある。そのような中、東日本大震災における被災や避難に伴い消滅の危機と考えられる被災地の方言に関し、方言の力を活用した復興の取組が進むなど、地域の生活や文化を支える言葉としての重要性が再認識されている。○方言や民話など地域が育んできた言語文化を地域の一員として継承していく態度の育成が求められており、そのためには、地域の言語文化を調べたり、地域の人たちによる民話の語りを聞いたり、方言を用いた劇を行ったりする機会を充実することなどが考えられる―と述べられた。
 長く行われてきた方言の撲滅や矯正の教育を受けてきた世代からすれば、隔世の感があるのではないだろうか。学校教育で共通語ではなく、方言を教えるなんてと驚く方もいるだろう。しかし、今は方言を継承していくために努力が必要な時代なのである。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)によれば、今、世界の言語のうち今世紀末までに残っている言語は10%程度だという予想がある。日本には消滅の危機にある言語や方言が八つある。アイヌ語や琉球諸方言、鹿児島の奄美方言、東京都の八丈方言である。
 なぜ方言がなくなってはいけないのだろうか?これまで標準語や共通語を使えることのために教育してきたのではないのか?答えの一つに言葉には、その地域の伝統や文化、価値観、生活そのものの記録が含まれていることがあげられる。五輪招致の際の「おもてなし」も有名になったが、「もったいない」という言葉は世界的に見ても珍しい表現で、他言語に類似の単語が見つからないとされている。日本語の価値観を表す単語と言えるだろうまた。「しばれる」と言う方言には、この地域の生活の中で重要な、凍って腫れるような感覚の寒さという皮膚感覚やその派生としての危険性や生業のための判断につながる価値観を含んでいる。
 考え方を変えてみよう。グローバル化の中で全世界が英語を使うようにする、つまり日本語を捨てれば、もっと良い社会になるだろうか?そんなことはないことはすぐにわかる。方言もそうだ。共通語があれば事足りるわけではない。学校で方言を教える、それは方言が持つ地域の知恵の総体の継承である。それは地域を支える人材の育成をすることである。
(弘前学院大学文学部教授今村かほる)

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「次の食材は何か」外食産業をサポートするJF

2016/9/18 日曜日

 

 今回、筆者は県内の農畜水産生産者に見逃せない必見の情報を伝えたい。日本フードサービス協会(通称JF・ジェフ)は1974年に設立。外食産業のサポーターであり続け、2014年には創立40周年を迎えた。加盟社は正会員、賛助会員合わせて800社を数え、外食産業関連で最大規模の組織である。
 この協会創設の以前から関与され、創立後まもなくして事務局長に、そして20数年後に専務理事となられ、業界を牽引されてきたのが加藤一隆氏(現顧問・理事)。ジェフは飲食店業界のチェーン化を目指した企業が集い、企業同士で協力し合いながら個々の成長を目指している。とはいえ創業者同士の集まりであり、誰もが一国一城の主である。自己主張が強い。加藤氏は彼らを陰で支え、四方八方目配り、気配り、心配りをされ、今日までまとめてこられてきた。
 ジェフは「外食産業ジェフ厚生年金基金」「全国外食産業ジェフ健康保険組合」の設立など外食産業を様々な角度からサポートする。92年には『全国共通食事券ジェフグルメカード』をスタート。95年に外食産業の研究機関「日本フードサービス学会」を設立。Ο―157対策としては衛生管理の徹底と食材の安全確認を促し発生予防に周知を図ってきた。消費税の引き上げ問題にも取り組み、その後もBSE(牛海綿状脳症)、食品の偽装や虚偽表示、残留農薬問題、04年には鳥インフルエンザ発生など食の安全性が揺らぐ出来事が立て続けに起こった。健康志向・本物志向・手作り志向・グルメ志向など多様な価値観が生まれ、この40年間課題の種が尽きることがなかった。加藤氏はこれらの問題を業界企業リーダーと連携を取り、仕切ってこられた。
 加藤氏は03年、外食企業と農畜水産業を結ぶ「JFフードサービスバイヤーズ商談会」をスタートさせ、外食産業と農畜水産業の連携強化に力を入れられた。商談会では農畜水産業と会員企業の交流を促し、食材調達をサポートするさまざまな取り組みを行われている。この11月も山梨県の食材を紹介する講演とパネルディスカッションを開催される。参加者は大手外食企業社長と有名レストランシェフである。このバイヤーズ商談会は毎年行われ、八戸ではすでに数回開催されているが津軽での開催はいまだない。
 さて先日筆者が青森ねぶたの見学にお連れした際の話である。加藤氏はいまや日本きっての農政ロビイスト。海外へ少なくても年4回、多い時は米国だけで十数回渡られる。世界を股に掛けられる商談のスケールは桁が違う。実は加藤氏は青森ニンニクに加え世界へ紹介できる第二第三の産品を探されている何しろ決断が早く行動が早い。その猛迫に追いつける情熱ある生産者を求められている。
(弘前医療福祉大学短期大学部教授 牛田泰正)

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「私も加害者なのか?」沖縄に向き合う難しさ

2016/9/11 日曜日

 

 「安倍晋三さん、本土にお住いの皆さん、加害者はあなたたちです。しっかりと沖縄に向き合ってください」。
 ご存じのとおり、これは6月19日、沖縄県那覇市で、元米海兵隊員で軍属の男に暴行・殺害された20歳の女性を追悼する集会で、女子大生が発した言葉である。私もテレビでこの集会の様子を見ていたが、この事件に対する人々の強い怒りや憤りを感じるとともに、夢と希望にあふれていたであろう20歳の女性が屈強な米軍属に殺害されたことにやり場のない憤りを強く感じていた。しかし、冒頭の発言を耳にした時、この女性の言わんとすることは理解できなくはないものの、何とも言えない悲しさと違和感も同時に感じたのは確かであった。「私も米軍属と同じ加害者なのだろうか」と。
 沖縄県は日本国土面積の0・6%にしか過ぎないにもかかわらず、わが国に駐留する米軍基地の70%以上が集中している。同県に駐留する米兵の数も圧倒的に多く、これに比例するかのように、米軍関係者による犯罪も他の46都道府県に比べ、多いのも確かだ「本土に住んでいる」私たちもよく知っている事実でありこうした事件が起こされる度に心を痛めている人も多いだろう。本土の人間もその度「沖縄に向き合って」いるのだ。
 私は数度、沖縄を旅行し民間人を巻き込んだ絶望的な地上戦が繰り広げられ、多くの人々が犠牲になった事実を繰り返し記憶に留めようとしてきたつもりだ。また歴史を振り返り薩摩藩による支配、明治政府による沖縄県編入、長期にわたる米軍占領下に置かれたことなど、3度の「琉球処分」が沖縄県民を苦しめたことも理解してきたつもりでいたが、「向き合い方」が不足しているのだろうか。
 そうなると、やはり、この集会と発言にある種の政治性を感じざるを得ないのは私だけではあるまい。集会は追悼集会である以上に沖縄から米軍基地を撤去することを求める集会なのだ。この悲しい事件も米軍基地があり米軍兵士・軍属がいるから起こったので、基地を撤去しなければならないと言うことなのだろう。しかし、それは余りに短絡的であり、事件の政治的利用ではなかろうか。
 米軍の沖縄駐留は日米安全保障に基づくもので、わが国の平和と安定を考える時、沖縄県が地政的・戦略的に重要な位置にあり、それ故、米軍基地が多く置かれてきたのが歴史的事実だろう。だからこそ、わが国の平和と安定を考える時、私たちは沖縄に向かい合ってきたつもりなのだ。それでも「向き合っていない」とされた時、私たちの在り方は否定されることになるだろう。蛇足だが、明治期になっても八重山諸島に残存していた悪税・人頭税の廃止をいち早く訴え、沖縄の人に向き合ったのは、青森の笹森儀助であったことも付け加えておこう。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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「囲碁の魅力の拡大」教え子との人生二度の出会い

2016/9/4 日曜日

 

 初夏、教え子から1枚のはがきが届いた。招待状である。陸奥新報創刊70周年記念・ひろさき囲碁感謝祭~超一流棋士の集い~への来賓としての出席。教師冥利(みょうり)である。弘前市では初となる囲碁の大型イベントである。彼は主催者の実行委員長として活躍しており、奥様は台湾出身のプロ囲碁棋士である。
 出場棋士も素晴らしい。弘前市出身の工藤紀夫九段はじめ、羽根直樹九段、小松英樹九段、秋山次郎九段、吉原由香里六段、千崎学九段(将棋)など錚錚(そうそう)たる顔ぶれである。この事業は、弘前市才能育成提案事業も兼ねており、囲碁は児童の認知発達に好影響を与えることが証明されており脳の活性化につながる。
 現在、教え子の古川元(33)は、アマ全国大会準優勝はじめ青森県名誉最強位・王座を毎年のように続けており、弘前、青森、五所川原、黒石に囲碁教室を開いている。地道な活動を積み上げ、弘前発で地域活性化に結びつけている点が誠に立派である。しかし、再会までの歳月は実に長かった。
 私が受け持ったのは小学校4年生(10)の1年間。少年は、当時から囲碁が好きで3年後、中学校を中退して上京した。深夜バスの見送りに出かけた。両親と3人の出発であったが、両親とはそれが最後となった。はじめの頃は、電話でよく話したり、年賀状も毎年来ていた。数年も過ぎる頃には音信不通となりたまに、心の片隅に今頃どうしているのか気になるときがあった。
 数年前、偶然、県囲碁大会の新聞記事が目にとまり、写真が同じ名前の人であった。昔の面影はかすかにあったがだいぶ表情も変わっていた。その後電話で話し、喜びを話したが会うことはなかった。現在は青森に戻り働いているが、両親については、本人の帰省を確認して2カ月後に母が亡くなり、その2年後に父親も亡くなったという本当に辛いお話であった。
 その1年後、また県囲碁チャンピオンになったという記事を見た。お祝いの電話をしたところ、ぜひ一度会いたいということで、自宅で会うことにしたわけである。自分では、20年ぶりに教え子が訪ねてくることは、稀有(けう)な出来事である。
 教師という仕事柄、教師は、いつまでも受け持った子ども、指導した子どもを忘れない。そして、彼らの記事やその後の生活を聞いたとき本当にうれしいものである。それが、何も偉くなくてもかまわない。元気でがんばっていればいいのだ。
 いつの日か両親のお墓にその事を報告したいと思っている。きっと天国から元くん一家の活躍と弘前市のますますの発展を祈っていることでしょう。囲碁大会には、両親の代わりとして出席し心から声援を送る所存である。
(黒石幼稚園園長 山内孝行)

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「旅する人びと」遊動生活時代の能力を使う

2016/8/28 日曜日

 

 お盆ほどではないが新幹線も飛行機も混んでいる目立つのは子供たちの姿だ空港では初めての一人旅なのだろう、緊張した面持ちで搭乗を待つ小学生が目につく。そうかと思えば青森の親戚を訪ねた帰りだろうか、少し慣れた様子で外を眺めたり写真を撮ったりしている子供もいる。今の君たちには周りのものすべてが刺激的に映っているんだよねと、私も自分自身の体験を重ねて眺めている。
 そもそも人はなぜ旅をしたくなるのだろうか。それは私たち人間が四百万年に渡る歴史のほとんどの時間を遊動生活者として生きてきたことと深く関係している、と先史学者の西田正規さんはいう。人間は移動によって常に新しい環境に出会い、刻々と変わる膨大な量の情報を処理する能力を発達させてきたのだと『人類史のなかの定住革命(2007年)』。
 確かに野生の動植物を採るには観察力、状況を見きわめる判断力、自然に対する膨大な知識、そして思考と行動を結びつける力が不可欠だ。私たちが毎日同じような環境の中にいて退屈するのは、その能力が十分に使われないからで、何か新しいこと、新しい情報を求める欲求がわきあがってくるという訳だ。してみると、旅をしたくなったり、旅をして五感が目覚める感覚を覚えたりするのは、身体に刻まれた人類史のなせるわざか。
 遊動生活時代に人びとが移動する契機は、狩猟採集という経済活動に伴って、動植物の分布や季節性に合わせた必然的なものである。しかし現代で狩猟採集生活をしている人びとの事例からは、単に経済的な要因だけでなく、居住地が汚れたとか、災害があったなどの場合にも移動が頻繁におこることが知られている。また集団のメンバー間にいざこざがあった場合にも、当事者が移動することによって、解決がはかられる。つまり移動することは、人が不快さや危険から逃れ、人間関係の危機に対処するための重要な方法でもあるのである。遊動生活のやりかたを基準にすると、1万年前に始まった定住生活で、われわれ人間がどれほどおおくの変更を生み出さなければならなかったかが想像できる。西田さんによれば、遊動生活では必要なかったトイレトレーニングや掃除の習慣なども、定住生活には不可欠の文化的対処である。
 西田さんの話は、人類史における農耕と定住の起源を考えるうえで画期的なのだが、先史学研究者ではない私たちにも周りの世界を違った目で見る手がかりをくれる。定住は人間の当たり前の暮らし方でしょ、という「常識」を逆に見ることで人間がこの1万年の間にどんな文化や制度を作り出してきたかを浮き彫りにするからだ。そして旅をしたいという個々人の欲求が、現代では観光という産業にもなることを不思議に思うのである。
(弘前大学人文社会科学部教授 杉山祐子)

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