日曜随想

 

「弘前地方の林檎酒」ハイカラで酒好きな津軽衆

2018/1/21 日曜日

 

 今年は、大正七年に弘前公園で観桜会が始まり、ちょうど百周年という節目。むかし拾い集めた弘前新聞などの記事をみていると、まさに「酒なくて なんの己が桜かな」と、酒と観桜会は切ることのできない、深い仲だったと再認識。
 観桜会のカフェーで、提供できるお酒の量が制限されたり、何盃呑んでも酔わないは、水割りの酒だからさと滑稽噺。
 そんな経済統制の時勢に、太宰が呑んでいたのが、『津軽』に登場の林檎酒。
 実のところ、アルコール度数が低いために、あんまり酔えないと、津軽の地元のオドらには不評だったらしいけどね。といった、消えた林檎酒にまつわった地方史を覗くのも、一興かと思います。
 林檎酒に興味を持った切っ掛けとは、屋号が菱万の、松木合資会社のラベルに出会ったこと。二枚の葉の真ん中に赤いリンゴを据え、「Pure Cider」と大書の表記は、なんとも素晴らしくお洒落。
 これで気がついたのが、サイダーとはシードルと同じなんじゃないかってね。
 シュワシュワ~と、清涼飲料水の印象があるサイダーも、英国ではリンゴ果汁を低温発酵させたり、発泡のものとか、さまざまなモノを示す言葉だそうです。
 醸造元の松木とは、弘前市松森町にあり、出自が千年村松木平なので、松木姓を名乗ったと、『ここに人ありき』第三巻に収録されているので、紹介します。
 これは昭和四十三年五月から四十五年に渡り、陸奥新報に連載された第一期に執筆「埋もれている郷土の先覚者列伝」を副題とするように、社会や人々のために尽くした、声なき先覚者の偉業を掘り起こして、記録に留めようとした労作。
 「本県におけるりんご酒、りんごブランデーの創始者」で、「製品がどのようなものであったのかわからない」の、幻のラベルなんだもん、一目惚れですっ!
 吉田元の『津軽のリンゴ酒』と云う論文もあって、これが実によく整理されていますから、ご一読をお薦めしますよ。
 この中に、松木淳一のリンゴ酒醸造も書かれていて、「創立間もない大阪高等工業学校の醸造科に学び、坪井仙太郎教授に師事して在学中の明治32年から35年頃にかけてリンゴ酒の試醸を行った」と。そして、明治四十年の「林檎酒賣出し」の新聞広告も紹介しています。
 醸造高は、明治四十一年の八十四石が最高だったそうですが、市内の十八軒の清酒がなんと、一万五千二百九十九石。 リンゴ酒は微々たるもので、どの程度広まったものかと、心配しちゃいます。
 昭和二年、かつての県立工業試験場に醸造部が出来たとき、松木は紙上で「嘗ては林檎酒の醸造を以て有名であつた」と、すでに過去の出来事のようでしょ。
 生産はともかく、昭和十四年十月までは出荷していた資料も見つけましたし、まだ酔い潰れる訳にはいきませんなぁ。
(元弘前図書館長 宮川慎一郎)

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「方言札の思い出」後世への宝

2018/1/14 日曜日

 

 十二月のある日、鹿児島市で行われたかごしま弁フェスティバルに招かれて鹿児島を訪れた。かつては鹿児島の人と青森の人が出会ったら、ことばが通じなくて困ったので、お互い謡曲の言葉を使って意思の疎通を図った。だから、全国どこででも通じる標準語・共通語が必要であると、国語の教科書にも例として挙げられてきたほどの方言差があるところだ。
 現在、鹿児島では市内と周辺地域とでは様子が異なるところもあるが、アクセントやイントネーションはかなり方言的な要素を残している一方で、特に市内では単語や文法は共通語化が進んでいる。若い世代の方言色は薄くなってきていると言える。そんな中で行われているかごしま弁フェスティバルは、プロもアマチュアも関係なく、鹿児島弁を使った演劇や紙芝居、歌、詩や遊びのような文化的なものもあればコントや寸劇などのお笑いもあり、演じる方も観る方も、とにかく地域の人々が楽しむお祭りの二日間である。また、方言土産の定番のひとつである方言ハガキ・方言てぬぐい、新しいところでは方言で作るLINEスタンプや、方言クリアファイル・石で作った方言ペーパーウエイトなどの販売など、方言グッズの販売も盛んだった。方言が商売になる熱気のすごさを感じた。地域の人が方言に寄せる関心は、大きな力だ。
 私は、医療や福祉の現場で方言が通じない問題や、方言が現場ではどのような活用のされ方をしているのかについて講演を行った。その中で、かつてこの地域で、方言撲滅のための道具として用いられた「方言札」という首から下げる木札のことを話した。標準語を身に付けるために、学校で方言を使った子の首に下げさせ、方言を使った罰として用いられていた。すると聴衆の一人が、自分も下げたことがあると体験を語ってくれた。方言札を首からかけたままでいるのが嫌なので、周りの友達が方言を使わないか見張っていて使ったらすぐにその子の首にかけたことなど、懐かしいと思えないでもないが、少年時代の苦い思い出だそうだ。しかし、それでも方言は残った。
 実は鹿児島に行く前、札幌で、ユネスコにより「絶滅の危機にある言語」として大変深刻な状態にあるとアイヌ語のサミットに参加した。自分たちの文化であるアイヌ語を若い世代も話せるようにするためにどのような努力をしているかその様子を学んだが、残念ながらこちらの現実は大変厳しいと言える。
 各地の生活にあった生活の知恵そのものを含んだことばを失うことは、大きな文化的な損失である。アイヌ語も鹿児島弁も津軽弁も南部弁も、博物館に展示されていないけれど、後世に受け継ぐべきかけがえのない宝なのである。
(弘前学院大学文学部教授 今村かほる)

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「津軽の正月料理」なつかしい我が家の味

2018/1/7 日曜日

 

 明けましておめでとうございます。今年初の日曜随想。皆さんは、年越しお正月を、どのように過ごされただろう。ちゃんと正月料理は食べただろうか。
 ここ十数年で、我が家で年越しに食べたメニューは、すき焼き、カニ鍋、ホタテフライ、カキフライ等、「正月料理」から「食べたいもの」に変わった。おせち料理も、元旦のお雑煮も作らなくなった。楽でいいような気もする一方、これでいいのだろうかと考えることもある。地方毎に、その土地ならではの味があり、方言があって、帰省する人々を、温かく迎えてきたはずなのに、このままでは、津軽らしいお正月、津軽の正月料理は、年々忘れさられてしまうかもしれない。
 そこで、昔の我が家の年越し料理の定番を、母と一緒に思い出してみた。「鱈の昆布〆、鱈の子和え、いくらの生姜醤油漬け、なます、きんぴら牛蒡、煮しめ」は、毎年欠かさず作っていた。鱈も鮭も、大きなものを一尾買い求め、二十代前半には、自分でさばいて調理していた。今でもできるだろうか。我が家の煮しめは、私の父方の実家に代々伝わるもので、非常に手間はかかるが、味はなかなかのものであった。祖父から母に、母から私に伝授された。何年も食べていないが、味は覚えている。
 準備する食材は、鳥もも肉、つぶ、ふき、竹の子、さもだし、角こんにゃく、油揚げ、凍み豆腐で、大根や芋類は入れない。山菜は、塩漬けよりは水煮が良い。食材は、すべて一口大に切っておく。こんにゃくは縦半分に切ってから、薄切りにする。出汁用には、煮干しではなく焼き干しを準備する。
 作り方は、
(1)焼き干しで、濃いめの出汁をとる。
(2)鶏肉を、酒-砂糖-味醂-醤油できりっと濃いめに味付け、汁を残して鶏肉だけあげボール等に取っておく。
(3)同じ汁につぶを入れ、調味料を足しながら、同じように煮あげる。
(4)ここで人参用に少量汁をとっておく
(5)つぶを煮た汁に、出汁と調味料を加え、ふきを煮て、具だけ上げる。
(6)同じ鍋で同様に、竹の子、角こんにゃく、さもだし、油揚げの順に、一品ずつ煮る。最後に凍み豆腐を煮て、汁を吸い取る。すべて別々に取っておく。
(7)人参用にとっておいた汁に出汁を足し、醤油ではなく塩を使用して、人参が鮮やかな色に仕上がるように煮て、具だけあげる。人参は他の食材に味を移すので、同じ鍋を使用しない。
(8)最後に、大きな容器に、汁を切って具だけすべて入れ、ざっくり混ぜて、少しおいて味をなじませる。
 時間はかかるが、興味がある方は、ぜひ一度作ってみて欲しい。私も、今年の年末には作ってみようと思う。
 (弘前医療福祉大学教授 小玉有子)

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「〝小池劇場〟の終焉」人気取り政治屋の奸策

2017/12/24 日曜日

 

 少し前まで、巷(ちまた)ではある替え歌が流行っていた。最も重要なフレーズを紹介する。「小池に嵌(はま)まってさあ大変・・」。
 お分かりの通り童謡「どんぐりころころ」の替え歌であるが元歌と替え歌の決定的違いは元歌はどんぐりが自分の意とは無関係に坂を転げ落ち、池に嵌まった(落ちた)のであるが、替え歌で「小池」に嵌まった(だまされた)のは、主義主張もなく唯々議員になりたい一心で、自ら「小池」に飛び込んだ人々だ。小池百合子氏の「カリスマ性」と「風」に希望を託したのだが「風」が吹くこともなく、希望が「絶望」になるのにはほとんど時間を要しなかった。さらに言えば、そもそも、小池氏に「カリスマ性」を感じた有権者は果たしていたのかが不明である。
 20年以上前にもなろうか、一時期流行した言葉に「カリスマ」があった。ちょっと有名になれば「カリスマ」を枕詞に、カリスマ店員、カリスマ美容師など様々な「カリスマ」が出現した。そう言えば、観光庁も「観光カリスマ」なるものを認定していたが、今はどうなっているのだろうかもちろんある意味、こうした他愛ない使い方なら何の害もない。
 しかし政治の世界でいう「カリスマ」には、M・ウェーバーを引き合いに出さずとも、もっと真剣な意味合いが求められるはずだ。一時の「風」に乗って人気が出たからと言って自らが「カリスマ性」を有していると思い違いをすれば、惨めな結果しか残らないのは当然で、それに嵌まる人の見識が疑われるだけだ。
 さて小池氏とは一体いかなる「政治家」なのだろうか。東京都知事に当選してすでに1年半、この間、東京都が抱える課題を一つでも解決したのであろうか。安全と安心を取り違え、都民に巨額な損害を与えた(それでも東京都は財政破たんしないのだから大したものだが)豊洲移転問題、他県にまで迷惑をかけた東京五輪会場の根拠なき見直しなど、都政を引っ掻き回した末に、今度は希望の党を立ち上げ、パンダを利用してまで宣伝効果を上げようとした。衆議院選挙では、最後の最後まで出馬するか否かを明らかにせず、しだいに旗色が悪くなると「出馬するとは一度も言っていない」と開き直る。挙句の果て、希望の党が完全に敗北した途端、「都政に専念する」として、2か月足らずで代表を辞任した。都政を投げ出してきた人間が首相の地位に就ける可能性がなくなった途端に都政へ舞い戻った。2年半後の知事選も危ういとみてのことであるのはおおよそ察しが付く。結局は、小池氏も人気取りだけのパフォーマンスに明け暮れるポピュリスト政治屋でしかなく、信条信念に基づき、国民・都民のために政治を行う人物ではないことは明らかだ。「カリスマ性」の欠片もない人物に2度も嵌まられるほど国民は甘くはないはずだ。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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「マグ女の活躍」カタチは二の次、まず行動

2017/12/17 日曜日

 

 昨年の北海道新幹線開業を契機に、青森県と南北海道が連携して対外的に地域の魅力をアピールする機会が増えた。行政や観光協会、そして民間など取り組み主体はさまざまだが、中でも異彩を放つのは「津軽海峡マグロ女子会」だろう。
 紙面やニュースでその名をご存じの方も多いと思う。いささか奇抜なネーミングに驚く向きもあろうが、津軽海峡を泳ぐ回遊魚マグロのように、立ち止まることなく活動する、たくましく、しなやかな女性達、との触れ込みに偽りはない。
 昨年から始まった「マグ女のセイカン博覧会」では、メンバーたちが各々の地元でまち歩きや生活体験などのおもてなし小旅行を企画し、二カ月間にわたって実施。評判は上々だった。
 マグロ女子会は自発的な女性たちの集まりで、決して行政がお膳立てしたものではない。ミドル世代中心で皆が地元愛にあふれていて、とにかく個性的だ。なにより北海道と青森県がつながり、県内では大間、むつ、青森、五所川原など、なかなか集まることさえ難しいほどさまざまな地域にメンバーがそろっている。
 津軽海峡は、動物分布がここで変わるといわれるほど、いにしえより越境の難所だった。人類はそれを海底トンネルで克服し、悲願の新幹線も通った。両岸はちょうどジグソーパズルの凹凸のような複雑な地形で向き合う。それゆえに豊かな風土に恵まれ、自然景観や生活風習など多彩な魅力を数多く有する。
 青函トンネルの開通から来年でちょうど三十年になる。この間、道県を挙げて壮大な構想を掲げ、この圏域の連携に取り組んできたが、望むべき成果があがったとは言い難い。組織は次々に作られ、会議は頻繁に持たれるが、現場での取り組みにまで踏み込めるものは多くない。新幹線開業後でさえ、その傾向はあまり変わらない。公的サイドの従来的思考や慣例では、この地形的特性や距離感を克服するのは容易なことではないのだ。
 他方、今般のマグロ女子会の活躍をみると、カタチは二の次にして、まずは行動に移すことだという。やってみなけりゃ何も始まらないというスタンスが功を奏したわけだ。その行動を支えるのは、メンバー各々の多様な魅力を持つ地元への愛着である。それを女子会という緩やかなつながりを活かして、互いが刺激し合い、発信力や瞬発力をも養っていく流れができたのではなかろうか。そうしたやり方がこの圏域の特徴を活かすのに、みごとマッチしたものといえよう。
 このマグロ女子会を手本に、北海道小樽周辺の後志(しりべし)地方では「しり女」が誕生。またフグにちなんだ関門海峡フク女子会「フク女」も始動したそうで、地域系女子会が続々増えそうな兆しがあり、今後も注目していきたい。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)

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