日曜随想

 

秋の季語「季節感の贅沢」

2018/11/4 日曜日

 

 紅葉の美しい季節である。青森の紅葉は、赤も黄色も本当に美しい。「紅葉狩り」などと風流にお金をかけて出かけなくても、近所のお宅や通勤時、職場でも十分に楽しめるほどだ。
 青森で暮らしてから身に着けた秋の風物詩に「芋煮」がある。山形や宮城、福島など南東北では一般的な秋の行事で、河原に石のかまどを作って、その年取れた里芋を肉や野菜と煮て食べる。岩手では芋の子汁というらしい。地域によって一緒に入れるのは牛肉か豚肉か、味噌味か醤油味かなどの違いがあることで知られている。(秋田では、里芋よりも新米で作った「たんぽ」がメインになるらしい)。それを山形出身のお隣さんに教えてもらってから、我が家は必ず秋になれば「芋煮」を作る。日本全国の方言を地図にした『日本言語地図』では、芋といえば何芋を指すのかという調査があって、里芋を指す地域とじゃがいもを指す地域、さつまいもを指す地域があることが知られているが、東北は「芋」といえば里芋を指す。また、俳句でも実は、単なる「芋」は里芋を指す秋の季語で、また「じゃがいも」も「さつまいも」も秋の季語となっている。
 農村の秋をイメージすると誰もが納得できるだろう「案山子」や「稲架」「苅田」のほかに、空を飛ぶ「雁」や、「鶴来る」などという季語も秋のものだ。津軽では、10月には白鳥が北の国からやってくる。今年も寒気が南下するという天気予報と共に、白鳥の声を聴いた。白鳥が鳴く声を、津軽の子供なら真似できるのは、珍しくない。しかし、私は津軽に来るまで、白鳥が何と言って鳴くのかなど、全く持って知らなかった。
 旬の食べ物が季語になることはよくあり、長野県で育った私にとって当たり前のものは、実家の山で採れる松茸である(山の場所は跡取しか知らないので、弟だけが知っているのだが…)。
 反対に、確かに秋の季語と言われているけれど、腑に落ちない、なぜなのだろう? と思うものには、「かまきり」があった。しかし、津軽で暮らした今は、そうだろう! とわかるようになった。子供が小さい頃、かまきりやその餌となる虫を捕まえるために、いろいろな草原にでかけた。その折に、地域の方たちから、雪の多い年はかまきりの卵は高いところに産み付けられるという言い伝えを聞いた。これぞまさに雪国の生活の知恵とうなずいた。生活の中にこの虫の季節が織り込まれていることの裏付けなのだろう。
 日本は四季がはっきりしているとはいえ、こんなに身近に、これほど風雅な贅沢が、津軽では毎日の日常の中に様々、散りばめられているのだ。何と豊かな暮らしだろう。思い直す今日この頃である。
(弘前学院大学文学部教授 今村かほる)

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「良い遺伝子をオン!」じょっぱりが幸運をつかむ

2018/10/28 日曜日

 

 人とのめぐり合いが運命を変えることは枚挙にいとまがない。この弘前においても平凡な出会いから、後の自分の仕事に大きな功績を残した人がいる。その人は、弘前市の造り酒屋「六花酒造」の代表取締役北村裕志社長。居酒屋で親しくなったサラリーマンとの出会いからビッグな話をものにした。
 「六花酒造」の代表銘柄は日本酒「じょっぱり」。“大吟醸じょっぱり”は2018年全国新酒鑑評会にて金賞を獲得している。また世界最大規模の市販酒のコンクールIWCで純米大吟醸華想いが3度目の金賞を受賞した。
 “じょっぱり”は津軽の方言で頑固者や意地っ張りを意味する。が、筆者が弘前に赴任して4度お会いしたが、社長である北村氏からは頑固者と言うよりは、人の話をじっくり聞かれ、感情豊かなメリハリの利いた話しぶりからは、むしろさわやかな印象が感じられた。
 さて北村社長によると、それは新宿駅ガード下の居酒屋で大手出版社の役員との偶然な出会いであったという。何度か飲み交わすだけの間柄だったということであるが、その人が後に北村氏の社長就任を大いに喜び、“刎頚の友”への贈り物ということで、まさに雲の上の存在思われた現代詩人、相田みつを氏とのコラボの話を実現した。青天の霹靂とはこのことか、北村社長はつくづく人間関係の大切さ、素晴しさを痛感したという。
 筑波大学名誉教授、村上和雄氏によると、いい出会いをしたとき、自身に化学反応が起こり、良い遺伝子がオフからオンに変わり、今までにない自分へと変わる。そして人間の思いや心の働きというものに、想像以上に大きな影響与える、ということである。村上教授はいい遺伝子を活発化するためには、強い志や使命感をもつこと。喜び、笑い、感動、前向きな気持ちが大切という。
 40歳の時、東京営業担当を任せられた北村社長は以後10年間、販路拡張の強い使命に燃え、北海道を除く日本中を1300シーシーのライトバンに乗って走り回った。誰に対しても屈託ないさわやかな笑顔で接し、刎頚の友へは臆することなく感動を顕わにされていたに違いない。そしてきっと刎頚の友も親近感を抱きアイスブレイク(※氷が解けるように緊張を和らげ話しやすい雰囲気を作ること)状態となってしまった。その結果、途轍もない果報へと結びついたと思われる。
 近年、お米とリンゴ果汁のリキュールをリニューアルした。このリンゴ果汁と米麹との不思議なマッチングが、若者や観光客の嗜好を引き寄せているときく。さて、ここにまたどんな新しい出会いが生まれることだろうか、マッチングによって作られるゆえ、アイスでなくホットな出会いを期待したい。
(弘前医療福祉大学短期大学部教授 牛田泰正)

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モルディブの意地か「他国支配を拒絶し自立へ」

2018/10/21 日曜日

 

 比較的詳しく世界の歴史や地理を学ぶわが国においても、地球温暖化問題に関心を有する人や、マリンスポーツ好きの人などを除けば、モルディブ(共和国)のことを知っている人は多くはないだろう。スリランカ西方のインド洋に位置し、200ほどの島からなる人口40万人弱の島国だが、この島国の平均海抜は2・4メートルで、地球温暖化による海面上昇とサンゴ礁の死滅で、南太平洋上の島国と同様に、国土の水没が危惧されている。また、常夏で遠浅のエメラルドグリーンの海が広がる島々には、多くの国から若者たちが訪れている。
 主要産業は観光で、GDPも世界160位程度の小さな島国が、昨今、世界的に関心を集めることとなったのは、アジアと中東を結ぶインド洋上の戦略的位置にあるからにほかならない。だからこそ、中国は「一帯一路」政策上の拠点として進出を図ってきたのだ。私は、中国の「一帯一路」政策全てを否定するわけではない。巨大な貿易経済圏を構築し、各国が相互に利益を享受できるものであれば批判は当たらないだろう。しかし、この構想は、実際には中国の軍事的進出を伴うものであり、以前、スリランカの事例で述べたように、経済的・財政的支援に名を借りた「新植民地主義」的な政策であることは疑い得ない。モルディブも過去数年にわたり、中国の「支援」でインフラ整備を行ってきたが、それは中国の軍事拠点化されることと表裏一体の関係だった。同時に汚職がはびこるのも他国同様であった。
 こうした中、先月23日、大統領選挙が行われ、親中国派の現職大統領が敗れ、野党候補が当選した。野党陣営を徹底的に弾圧し、批判的なメディアの締め付けが強化される中での選挙であり、与党大統領派の勝利は確実と思われたが、モルディブ民衆は中国の露骨な進出=支配を拒絶したのである。中国にハンバントタ港の99カ年租借といった事実上の植民地支配を認めたスリランカでも新大統領の下で「脱中国」が叫ばれ、マレーシアでも中国支配を拒否するマハティール氏が首相になった。モルディブもこうした動きの一つとして考えられよう。
 しかし、こうした途上国が経済的発展を目指そうとする時、必要なのはやはり金=マネーである。例えば、南太平洋の島国の多くが中国に頼るしか「選択肢」はないというのも現実だろう。だからこそ、日本など、自由・民主主義、自立を価値観とする国こそがこれらの国々を支援していく必要があるのは言うまでもない。日本政府は最近、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマーのインド洋沿岸3国の港湾整備支援を決定した。ヒモ付きでない経済・財政支援こそがこれらの国々の民主主義の進展と自立を支援することとなり、その成果が期待される。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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「停電災害の教訓」 情報を『見える化』する

2018/10/14 日曜日

 

 9月6日未明に起きた北海道胆振東部地震では、私の住む函館でも震度5弱の揺れを感じた。地震の直後から北海道全域が停電となり、わが家に電気が戻るまで27時間、函館市の全域が復旧するまでには42時間近くを要した。長時間の停電は、弘前周辺でも東日本大震災の際、さらには27年前の台風19号による被災の時に経験した方も多いだろう。今回、あらためて電力に頼る社会の脆さを痛感するとともに、時代ごとのニーズに即した災害への備えや教訓が必要だと感じた。
 函館や札幌など都市部の観光地では、多くの外国人を含む旅行客が震災に遭遇した。交通機関や宿泊で難題を抱える旅行者にとって、連絡や情報収集のためにはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が頼みの綱だったが、スマートフォンの充電切れが彼らの差し迫った問題だった。しかしながらスマホをどこで充電できるか、という情報が不足していた。これは旅行者のみならず、この街で暮らす私たちにとっても同じで、今や家庭の電話は停電の際に使用できないものが多く、高齢者など災害弱者ほど、携帯やスマホが命綱になっていた。もちろん各所に避難所は設置したのだが、限られた自家発電の環境では、ここで充電できるとの広報はしなかったようだ。それゆえに断片的な情報を手がかりに、充電のため遠方まで赴いたという人もかなりいたようだ。コンビニ等でも買える充電アダプターさえあれば、自家用車のシガーソケットから簡単に充電できるので、本当はご近所同士で身近にもっと助け合うこともできたはずである。
 さて、誰もが一番欲しかった情報は、もちろん停電復旧の見通しである。しかし電力会社からの情報はほとんどなかった。こうしたなか発災当日の夕方、地域コミュニティーFM放送がリスナーからの情報で、ある地区で停電が復旧したことを伝えた。これを聞き、私は自分の所も復旧が近いと察した。だが土地勘のない人にとっては、それがどの場所なのかがわからない。このことに限らずいろいろな情報は、地図の上に示され見えるものにすることで、誰もがわかりやすく、より価値の高い情報になったはずだ。SNSにより積極的に情報収集し、自治体の持つマンパワーを活用して、停電復旧の状況を「情報が見える」状態にする努力が必要だったと感じる。地図情報システムといった過剰なものは全く必要ない。白地図に復旧状況を色鉛筆で塗り分け、それを時間毎にデジカメで撮り、SNSにアップしさえすればよい。何を示しているかを明確にすれば、多言語対応でなくとも外国人にも役立つはずだ。
 機転を利かせて「情報を見える化」すること。今回うまくいかなかったことこそ、ぜひ教訓にしたいものだ。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)

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「日本アニメ百年(9)」テレビアニメの台頭(2)

2018/10/7 日曜日

 

 プロダクションアイジーは元々、1987年にテレビアニメ『赤い光弾ジリオン』をタツノコプロが制作した時のプロジェクト班に集合したスタッフ達を、制作完成後に解散させることを惜しみ、制作プロデューサーとしてプロジェクトを率いた石川光久が、後藤隆幸率いるアニメ集団「鐘夢」を合併して、京都アニメーションからの援助を受けて、「有限会社アイジータツノコ」を同年12月に設立したものです。出資者は、石川、後藤と京都アニメーションの代表、およびタツノコプロなどでした。そして「有限会社アイジータツノコ」を設立した後に93年、「有限会社プロダクション・アイジー」に変更しました。
 設立からしばらくは各種のアニメ関連の仕事を制作してきましたが、いよいよ押井守監督の劇場映画作品「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」を制作し、日本のみならずアメリカでもヒットし、全米のビデオレンタルのトップになることができました。このことにより日本国内だけでなく海外での知名度も高まり、企業としての規模も拡大します。なお、このアニメはこの後、アメリカで映画「マトリックス 3部作」設定の元として監督のウオシャウスキー兄弟が取り上げたことで、さらに知名度が上がりました。10年後に第2作「イノセンス」が制作され、相当難解な内容でしたが、制作にはスタジオジブリが資金提供からアニメーターの動員まで幅広く協力し、プロデューサーもスタジオジブリの鈴木敏夫が共同就任したようです。キャンペーンにも積極的に鈴木が参加し、宮崎監督の後押しもあったそうですが、同時期のスタジオジブリ作品のプロモーションにも良くない影響が出たそうです。衛星放送でも神山健治監督でテレビ版が制作されてシリーズ化されました。このテレビ版もまた日本のアニメの実力を発揮し、世界的に有名になりました。全米のCATVの視聴率1位を記録したようです。近年では「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」自体がハリウッドで実写化もされました。
 98年に増資して「株式会社プロダクション・アイジー」と変更されます。アイジーとは石川、後藤両名の頭文字です。テレビシリーズは主に子会社のジーベックが制作し、プロダクション・アイジーは劇場用アニメ映画の制作を主としていましたが、2001年より子会社が担っていたテレビシリーズの元請制作にも進出しました。制作したアニメには有名な作品が数多くあります。「精霊の守り人」「図書館戦争」などは実写化されていますし、「進撃の巨人」や「銀河英雄伝説」「新世紀エヴァンゲリオン」では制作協力で参加しています。「スカイ・クロラ」などもあります。
 以下、次回に続く
(弘前大学教育学部教授 石川 善朗)

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