日曜随想

 

「日本アニメ百年⑫」テレビアニメの台頭⑤

2019/2/10 日曜日

 

 さて今回はTVアニメの始まりの頃に戻ります。手塚治虫が生み出した「鉄腕アトム」の成功により、当時存在した各テレビ局がこぞってアニメ制作を行おうとします。しかし、どこのアニメ制作会社もそれぞれのTV各局の依頼で手いっぱいの状態でした。後発だったTBSはアニメ放送を行いたい希望はあっても、発注依頼したい制作会社が無く、傘下のアニメ制作会社の設立に動いたようです。アニメが制作できる会社がほとんど存在しない時代でした。
 そのためTBSが目をつけた会社が、人形劇団として大人気だった「人形劇団ひとみ座」。この劇団はご年配の方ならよくご存じの人形劇「ひょっこりひょうたん島」や「伊賀の影丸」をTV制作していました。ここの映像部門の責任者を独立させて新会社設立に動きます。人形劇もアニメも似たようなものだとTBS側に説得されたそうです。ここで初期の日本アニメ界にあって、現在でもその名前がご年配の方なら知っている、多くのアニメを生み出した会社が誕生します。
 1964年「株式会社 東京ムービー」がTBSの出資を受けて設立されます。当初は手塚治虫原作の「ビッグX」を制作しますが、もともと人形劇出身ですからうまくいかず大赤字になります。倒産の危機も別のTV制作会社に助けられたようです。この反省から東映動画などから人材を引き抜き、別にアニメ制作会社を作り、東京ムービーは企画に専念し新たな会社は制作とした体制になります。その後は「オバケのQ太郎」「パーマン」「巨人の星」「怪物くん」「アタックNo1」「天才バカボン」「ルパン三世パート1、パート2」「ど根性ガエル」などが生み出されます。どれも名前ぐらいは聞いたことがあるものばかりでしょう。
 1976年委託先を解消し、営業部門として「株式会社 東京ムービー新社」を、東京ムービーは制作を担当するようになります。そして「じゃりン子チエ」「キャッツアイパート1、パート2」「名探偵コナン」などを制作した後に劇場版アニメ「NEMO/ニモ」で大失敗します。これによりセガエンタープライゼスの資本傘下となり、2000年に「株式会社トムス・エンタテインメント」に商号変更され現在に至ります。
 この年にさらに分かれた会社があります。「ufotable」(ユーフォーテーブル)です。2019年現在ではTVアニメや劇場版の「Fate/Stay night UBW、HF」、「Fate/Zero」のシリーズで若者に絶大な人気を博しています。このように東京ムービーから始まった流れは、TV黎明期から紆余曲折を経ながら現在まで50年以上にわたり連綿と続いています。
 以下、次回に続く
(弘前大学教育学部教授 石川善朗)

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「気ままな旅」魅力満載の街・両国を歩く

2019/2/3 日曜日

 

 両国の言葉から誰もが抱くイメージは、やはり相撲であろう。両国は相撲の風物がそこかしこにあり、他にはない風情が伝わってくる。両国の魅力が相撲の「聖地」にあることはまちがいない。
 だが、両国は相撲に留まらない、文学・歴史・文化に満ちた空間でもある。論より証拠。とにかく実際に両国へ足を運び、自分で歩いてみるとよくわかる。
 それでは、両国をぶらぶら歩いて作成した私のお薦めコースを三つ紹介する
(1)国技館通りコース:JR両国駅―江戸東京博物館―旧安田庭園―横網町公園(東京都慰霊堂・復興記念館)―国技館
(2)京葉道路コース:JR両国駅―回向院―両国橋―吉良邸跡―芥川龍之介文学碑―勝海舟生誕地(両国公園)
(3)北斎通りコース:江戸東京博物館―北斎美術館・津軽家上屋敷跡(緑町公園)
 どのコースにも相撲部屋が点在する。散策はJR両国駅江戸東京博物館隅田川・両国橋をランドマーク(目印)にすると迷わない順路の詳細は次のとおり
 初めに国技館通りコース両国の玄関JR総武線両国駅西口。ホームから階段を下りていくと、壁一面に掲示された歴代横綱の肖像や手形に圧倒される。駅前には力相撲の石像、相撲グッズが並ぶ。駅を出ると威容を誇る国技館が鎮座し、後方に江戸東京博物館(徒歩5分)が聳(そび)え立つ左横へ2分歩くと旧安田庭園(西門)につく。庭園の心字池を回遊して東門を出ると横網町公園が目の前にある
 次に京葉道路コース。両国駅西口から国技館通りを左へ2分歩くと回向院(鼠小僧(ねずみこぞう)次郎吉の墓等)に突き当たる。途中、歩道には横綱のブロンズ像や手形が数基設置されている。回向院を基準に京葉道路を右へ2分歩くと両国橋に、左へ2分歩くと吉良邸跡・本所松阪町公園につく。吉良邸跡に近い(徒歩1分)両国小学校に芥川龍之介文学碑、隣の両国公園に勝海舟生誕地碑(幕末絵巻)がある。
 最後に北斎通りコース。江戸東京博物館(都営大江戸線両国駅A3出口)前から北斎通りを5分(250メートル)歩くと、緑町公園につくここは津軽家上屋敷跡で現在は公園と北斎美術館になっている。
 かつて両国は武蔵(むさし)国と下総(しもうさ)国の国境であった。隅田川に架かる両国橋の呼称はこの二つの国に由来する。江戸幕府が両国地区を開発・防災上重視して寛文元(1661)年に架橋した。江戸東京博物館には当時を偲(しの)ぶ旧両国橋ジオラマが展示されているまたすみだに生まれ、生涯すみだで過ごした葛飾北斎は隅田川、両国橋をモチーフに多くの名品を描いた。すみだ北斎美術館でそれが鑑賞できる。
 両国は魅力に溢(あふ)れた街である。両国を歩くたびに何かを発見する。街全体が、江戸東京の歴史・文化・生活を知るテーマパークになっている。百聞は一見にしかず。是非お試しあれ!
(東北女子大学家政学部教授 船水周)

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「断捨離できない」価値のないものあるもの

2019/1/27 日曜日

 

 子どもが小さい頃、「○○って何?」とか、「○○って、どうして?」とよく聞かれた。その当時は、仕事と子育ての両立に必死で、なかなか子どもの質問を楽しむ余裕がなかったが、今になっては、そうしたひと言ずつが宝物だったと思える。
 そうした思い出も心に残っているが、実際に物が取ってあるという思い出も多い。初めて切った子ども髪の毛、初めて履いた靴、初めて描いてくれた親の顔の絵などなど、数えればきりがない。お雛様などはトイレットペーパーの芯でできたものから紙粘土のもの、折り紙のものなど複数あって、毎年、飾っている。
 思い出は心の中にあるし、どうしても取っておきたかったら写真に撮っておけばいいのかもしれない。しかし、それでもなかなか捨てられない。逆に今、世の中は断捨離ブームだ。「断捨離」は2009年にやましたひでこ氏が著した『新・片づけ術「断捨離」』(マガジンハウス刊)で示された、モノへの執着を捨て不要なモノを減らすことで生活の質の向上や心の平穏などを得ようとする考え方だ。執着するものがなかったら、確かに楽なのだろう。その点で「就活」ならぬ人生の最後を準備・整理する「終活」という考え方も広まってきている中、子どものものを捨てることに罪悪感や痛みすら感じて捨てられない自分がいる。子離れしていない親なのではないかと、落ち込むこともある。場所を取るので結局自分のものを捨てることになっている。
 しかしだ、実は他人から見れば何の価値もないもののように思えるものを、ものすごい価値のように感じて蒐集する人がいる。私の周りにも、趣味の領域を越え、第二の研究のようになっている研究者もいる。例えば高名な日本語史の研究者が集めた箸袋、使用済み切符などの例だ。同じ路線、同じ駅の切符であっても、ひとつとして同じではないのだそうだ。それをまとめた書籍も作ったほどだから尊敬する。
 それとは比べ物にならないが、自分のものを捨ててでも子どものものを残したい私の価値観が役に立ったこともある。私の研究する方言や社会とことばについて考える社会言語学について、実は子どもの質問に答えるところから着想したことも多い。日本に方言っていくつあるの? なんて質問の答えは、教科書には書いていない。子どもの無限の想像力、恐るべしだ。そこではたと考えた。では、教科書に方言って、これまでどんなものだと書いてきたのか、また、どういうものだと書いてほしいのだろう? それを調べるために教科書研究を始めた。しかし、全ての教科書を集めた図書館はないことがすぐにわかった。捨てられるものにこそ真実が隠されていたのにもったいない。
(弘前学院大学文学部教授 今村かほる)

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「タムラファーム」世界が認める日本のシードル

2019/1/20 日曜日

 

 きっかけは前職での商談中の一言であった。〝長野のリンゴのほうがおいしい〟と。収穫の時期、熟度の違いが味の違いの要因と考えられるが、この言葉が癇に障り、〝よし、いっちょ自分で日本一おいしいリンゴを作ってみせる〟と思い起業した。タムラファーム代表取締役田村昌司、30歳の時である。いきなり3ヘクタールからのスタートであった。借金をして自分を追い込んだ。田村氏はこれを自然体という。取材中何度か自然体という言葉を口にした。そして次に述べる商品作りにまでこの思いは通じている。
 田村氏が大切にしていることは、リンゴの持つ自然な力を導き出すこと。自社農園では、土作りに力を入れており、肥料は天然ミネラル豊富な自家特製有機質肥料。更に、採光空間を限りなく贅沢にとるなど、リンゴに日光が十分当たるよう、木と木の間隔を広くとって植えている。そして最大のこだわりは、完熟する一歩手前の段階まで収穫しないこと。こうすることで果肉が緻密で糖度の高いリンゴができ、そのこだわりが認められた結果が、数々の受賞に繋がった。シードル分野では、国際コンクールでポムドール賞(最高賞)を2度連続受賞、日本のシードルが初めて世界に認められた。また、紅玉をふんだんに使用したアップルパイは、各メディアで取り上げられ、日経新聞におけるアップルパイランキングでベストテンに選ばれている。まさに自然な力がなした業と言えるだろう。
 さて、この会社の凄いと思われる特徴はリンゴ作りから、加工食品の製造、そして販売まで自社で完結していること。これにはここまで成功に導いた社長の粘り強い性格が一因する。起業3年目の1991年、いわゆる「りんご台風」で、収穫前にほぼ全て落果した。ようやく売れる体制ができた時だった。田村氏はこのとき嘆くことはせず、「ピンチはチャンス!」と思い、いち早く加工品ルートを確保。落ちたリンゴをジュースにして販売した。このことで何とか生計がたてられた。今でこそ生産から加工、販売することを、6次産業というが、実際の話は、必死に生活していくための手段であった。これも自然体ということか。
 アップルパイの話であるが、リンゴの酸味と自然の甘味を味わっていただきたいという思いからシナモンを使わず、着色料も使わず、しっかりした歯ごたえを残し、香りとジューシーな食感を最大限に引き出したという。ここにおいても自然体。素材そのものの味わいを前面に出している。2013年に発売。そして前述のベストテンに選ばれた。取材最後に6次化での成功の秘訣は、と聞くと、「人との出会いを大切にして、築いた信頼、そして消費者を裏切らないこと」取材の最後に社長はきっぱりと結ばれた。
(弘前医療福祉大学短期大学部教授 牛田泰正)

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「住民参加で対策を」灯油問題からみえるもの

2019/1/13 日曜日

 

 昨年11月下旬、東北経産局主催の灯油問題懇談会があった。消費者と供給側が意見交換するもので、私も「学識経験者」という立場で参加している。会の中心課題は、可能な限り安価で安定的に灯油を消費者に供給できるかであるが、この時点では、原油価格が高止まりで、灯油価格も高い水準にあったので、消費者は大変懸念していた。もっとも、その後、米中「貿易摩擦」に端を発した世界経済の先行き不安などで原油需要が減少し、随分と安くなっているのは確かである。
 こうした課題とともに議論されたのが供給体制である。灯油を購買する場所でもあるサービスステーション(SS)の数が全国的に減少し、「SS過疎」(1自治体にSSが3カ所以下しかない状態)が深刻化しているため、ガソリンや灯油の供給が懸念されているのだ。資源エネルギー庁は昨年11月、大規模災害時の製油所機能の維持や、給油所(SS)が非常時でも給油を継続できる体制の整備などを急ぐことにしたが、平時でも、石油製品の供給が容易ではない事態が顕在化していると言えよう。
 SSの減少(SS過疎の進行)は、少子高齢化と自動車の燃費向上などの構造的要因と、商品の差別化が困難で価格競争が激化し、収益率が低下していることが要因で、1994年度には6千余あったSSが、2017年度にはほぼ半数にまで減少し、今後はさらに減少していくことは必至の状況だ。灯油などを扱う揮発油販売業者数も同様な傾向にある。
 こうした中で、ガソリンや灯油を消費者に日常的に確実に届けるためのいくつかの方策が提案されている。一つは、過疎地は都市部に比べ人口や家屋の密度が低いことから、安全水準を都市部より低くすることで設備コストを下げ、収益性を向上させるというもの、二つ目は、IT技術を積極的に活用し、人手不足を克服するとともに業務の効率化を実現しようというもの、三つ目は、SSを「地域のサービス拠点・総合エネルギー拠点」として再編する計画で、LPガス・スタンド、自動車整備場、簡易郵便局や宅配ボックスの設置、地域の物産販売・観光サービス提供の場など、日常生活に関わる物販とサービスを総合的に行うとともに、災害時の拠点化も図るものである。また、これとは別に、タンクローリー車を派遣して給油する「どこでもスタンド」の実証実験も一部地域で開始された。
 これらは依然として構想や実証実験の段階に過ぎない。しかし、SS過疎が我々の日常生活を脅かす懸念がある時、我々は予め何らかの方策を講じておく必要があろう。その際、自治体、地域住民、供給業者などが課題解決のための協議体を構成し、地域の実情に適した方策を可能なところから実践していくことが求められているのは言うまでもなかろう。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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