日曜随想

 

「津軽料理遺産」田植え時の甘い赤飯

2018/5/13 日曜日

 

 連休が明けると、田に水が引かれ、そろそろ田植えの季節がやってくる。水面をなでる春風がおこすさざ波を見ていると、不思議と気持ちが落ち着く。私の家は旧尾上町にあるが、土地を探す際に条件としたのは、「見渡す限り田か畑で、当分周囲に家が建ちそうもないところ」であった。今の家に住んで30年を超えたが、お陰様で、今でも見渡す限り田と畑が広がっており、毎年、贅沢な景色を堪能している。
 田植えといえば思い出すのが、甘い赤飯である。父方の実家は浪岡(旧女鹿沢村)にあった。名字も福田なので、代々農家だったのだろう。農地改革までは、村に13カ所も農地を持ち、小作人も使って、手広く農業をやっていたようだが、私には、祖父母が小さな畑を耕していた記憶しかない。
 しかし母は、田植え時に手伝いに行き、休憩中に、手伝いに来てくれていた方々に、甘い赤飯を配った経験があるという。津軽の赤飯は、農作業の休憩中に取る、おやつのようなものだったという。私には、田植えをした記憶はないが、我が家の赤飯の味は、ずっと覚えている。幼い頃に食べた味は、生涯忘れないのかもしれない。
 いろいろ調べてみると、津軽の赤飯の特徴は「甘い」「もち米を使う」「しとり(昆布だし、酒、砂糖、塩等を混ぜたもの)で味付ける」である。もち米の配分も、味付けも、家庭によって様々だが、この三つが基本らしい。まだ、砂糖が高価だった頃、お祭りやお盆、あるいは田植えの時期に、集まった人に対して、もてなしの心を「甘い」味に宿らせたと言われている。甘い赤飯は、津軽料理遺産にも認定されている。皆さんはご存じだろうか。
 数年前、秘密の県民ショーでも、青森の赤飯が取り上げられていて、他県のタレントさんは驚いていたが、私も夫の実家で甘い赤飯の話をして、驚かれたことがある。夫の実家(秋田県能代市)でお盆に作る赤飯は、小豆の入ったうっすらピンク色のご飯で、それにごま塩をかけて食す。ほとんど味がない。私には、とうてい赤飯とは認められないものであるが、皆美味しいと食べている。所変われば…である。
 甘い赤飯が作られているのは、北海道と青森県、そしてなぜか山梨県らしい。青森県では、いなり寿司も茶碗蒸しも甘い。しかし、砂糖の消費量は全国36番目で、けして甘い物好きというわけでもないらしい。
 スーパーの惣菜コーナーやコンビニで、ご飯のおかずが賄える便利な時代になったが、年を取ったせいか、幼い頃に食べた味が、無性に恋しくなる。津軽料理遺産のレシピを見ながら、順番に作ってみようか。
 今年の田植え、まだどこかで、甘い赤飯は配られるのだろうか。
 (弘前医療福祉大学教授 小玉有子)

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「東南アジアと独裁」中国の〝影〟が見え隠れ

2018/5/6 日曜日

 

 古い話だが、筆者の学生時代、フィリピンのマルコス政権やインドネシアのスカルノ政権などを「開発独裁」と称していた。これらの国々は第2次大戦後に独立を果たしたものの、長期にわたる植民地支配もあり、経済的な自立は困難な状況にあった。。経済的自立と発展のためには、外国からの支援を含め資源を「有効」に活用することが必要であり、政治的には中央集権的な「独裁」もやむを得ないということであった。もっとも、マルコスもスカルノも、結局は私利私欲に溺れ、国と国民の発展と繁栄をないがしろにしたため、哀れな末路を辿らざるを得なかったのはよく知られた事実だろう。
 ところで、最近の国際情勢、特に東南アジア諸国の政治的動向には気になることがある。民主的選挙を通じて選ばれたはずの政権が「独裁」的政権へと傾斜しつつあり、しかも、背後に大国・中国の陰がみられることだ。カンボジア、フィリピン、タイ、マレーシアなどがその典型である。
 カンボジアは、独立以後も幾多の困難に見舞われ、特に、ポルポト政権の恐怖政治の下で何百万人もの自国民が虐殺されたが、このポルポト政権を倒したのが現在まで30年余にわたるフン・セン政権である。この政権は当初、わが国も含めた先進諸国の支援の下で民主主義国家の建設を進めてきていた。しかし、政権が長期化するにつれて次第に独裁的傾向を強め、これに反対する野党を解散させるなどの暴挙を繰り広げているのだ。少々事情は違うものの、フィリピンのドゥテルテ政権にも同様の傾向が見て取れる。
 ドゥテルテ氏は2016年に民主的な大統領選挙で当選したが、その後、麻薬撲滅作戦などでは、人を人とは思わぬ強権的手法を繰り広げているのはよく知られている。タイにおいてはクーデターで誕生した軍事政権が依然として政権を掌握し、反対派への弾圧を強めている。マレーシアでも首相の個人的思惑で有力野党の活動を完全に停止させている。
 このように、東南アジア諸国で「独裁」的政権が生み出されてきている理由として、グローバリゼーション下で経済的格差が拡大し、同時に汚職も蔓延するなどの政治的不満と混乱が続いている中では民衆もある程度までは強権による「解決」を望んでいるということもあろう。しかし、同時に、わが国や欧米が求める民主主義や自由、人権を無視しても、経済大国となった中国が「支援してくれる」という事実があることは明らかだ。これらの国々には、口うるさく理念を説く国よりも、まずは経済的支援をしてくれる中国の方がよほど好ましい存在と思われているのが現実なのだろう。もちろん、中国の経済的支援は単にそれだけに留まらず、やがては「政治的」支配も狙っていることも明らかだが、残念だが、理念はカネの力には及ばないのかも知れない。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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「世界料理学会」料理人たちの手作りイベント

2018/4/29 日曜日

 

 先日、函館でバル街と世界料理学会を開催した。双方とも筆者が仲間とともに運営を手がける催しだ。バル街は函館が発祥で全国に拡がったもの。そしてこの世界料理学会は、函館が日本で唯一、定期的に開催している“料理学会”なのである。料理学会とは、研究者の集まりではなく、料理人が自身の料理論や哲学、仕事をする土地の風土、さらには最新の調理技法などを壇上で披露しあうイベントだ。スペインのサン・セバスチャンで産声をあげ、その後、各国の主要都市で開催され、美食の世界では一大ムーブメントになった。なかには国を挙げて、世界中のトップシェフたちをこぞって招くほど大規模なものも過去にはあった。日本では2009年、2月に開催した東京での催しに続き、そのわずか2カ月後に函館で私たちの第1回目を開催した。東京のものは実に盛大だったが、それ以降は開催の話を聞かない。私たちは一年半毎に、これまで7回開催してきた。
 世界?学会?、その壮大なネーミングゆえ、当初は知人からさえも笑われた。大きなスポンサーはないので、登壇する料理人を招待する条件は最低限の旅費と滞在費のみ。誰もがノーギャラで特別扱い無しというのがルール。登壇してくれる料理人を探し、知り合いの伝手を頼りに打診。料理人による料理人のための料理学会をやるから、と説明してなんとか口説き落とした。運営は料理人と市民による手作りそのもの。いまもそのことだけは全く変わらない。前夜にはバル街を楽しんでもらい、会期中は壇上での発表や議論を通して、様々な世代やジャンルの異なる料理人たちの交流が始まる。
 続ける中で変わったことは、最初に招いた料理人たちが次々に知り合いを紹介してくれたこと。いまでは星付きガイド本や世界のトップランキングにも登場する人たちが発表の機会を求めて、名乗りを挙げてくれるようになった。今回は、弘前観光宣伝大使も務める三國清三さんや、京都の老舗料亭「菊乃井」の村田吉弘さんにも登壇いただいた。
 また発表テーマが今回は「山菜」だったので、料理人ではないが西目屋村の工藤茂樹さんに、マタギ文化における山菜の扱い方や自然との関わり方を語ってもらった。参加者たちは興味津々で工藤さんの話に聞き入っていた。
 次回の8回目は、10周年の料理学会となる。今回、明け方まで続いた打ち上げの席で、各地から集った料理人たちは車座になり次回に向けた議論を始めた。十人十色の意見ではあったが、確認できたことは、東京ではなく、函館だったからこそ続いてきたオンリーワンの料理学会をこれからも、というものだった。
 料理人のみならず一般の参加も大歓迎だ。来年秋の開催に乞うご期待。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)

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「日本アニメ百年⑤」戦後のアニメ②

2018/4/22 日曜日

 

 さて、ここで東映動画のアニメーター達の中で偉大な人物を2人ご紹介いたします。
 まず一人は森康二です。東映動画株式会社の創立メンバーでした。東京美術学校(現・東京芸大)建築科を卒業後、前述した日動に入社し、政岡憲三に師事します。ここで自らの才能を開花させたのでしょう。そのまま会社が東映に移り、数々のアニメーション作成に携わります。児童向けアニメーション制作の第一人者として大変多くの作品を残しました。年配の方なら耳にしたことがある作品ばかりです。さらに後進の指導にも熱心で、高畑勲や宮崎駿、大塚康生らの数々のアニメーターを育てます。海外でもこの業界で、日本アニメーター屈指の実力者として大変有名な方です。
 次に大塚康生です。大変ユニークな経歴で、高卒で山口県庁に入庁しますが、その後上京し、なんと当時の麻薬取締官事務所に勤めます。英語や中国語に堪能だったそうで、活躍なさったようですが体を壊し退所します。どうやら元々絵が好きだったことから転身し、座って仕事をするアニメーターとして東映動画に入社したようです。東映動画アニメーター養成コースの第1期生でした。その後に森康二に師事し、東映動画のアニメーターとして活躍します。後年、宮崎駿が入社した当時は直属の上司として指導します。人に指導することが大変にうまい方だと言われています。その後、宮崎とは「太陽の王子ホルスの大冒険」「ルパン三世カリオストロの城」「未来少年コナン」など数々の作品で共に作業します。。日本アニメーション界の伝説的な方です。
 北山清太郎を祖とし、その弟子達の繋(つな)がりが戦後まで進み、いよいよ現在まで続く日本アニメーションの広がりが始まります。また、東映動画で画期的な技術が生まれます。元々アメリカのディズニー社で開発されたものですが、乾式複写機を用いたコピートレース装置です。それまでアニメーションの原画から動きのある絵を描くには熟練のトレーサーと言われる人たちの作業が不可欠でした。セルロイドのフィルムに書き写さねば動画になりません。膨大な量のトレース作業が人海戦術で行われます。このトレーサーの育成に時間と手間がかかります。アニメーションの制作コストの高騰を招いた原因です。これが、この装置で一気に解決の道へと進みます。東映動画はアメリカのコピー機を取り寄せて、ディズニー社のものより大幅に改良した装置を作り上げます。こうしたことは日本の得意とするところです。1日で30人分のトレース作業が一気に行える技術が出来ました。日本の商業アニメーション界の体制がその後の活躍に向けていよいよ整ってきました。そして手塚治虫の登場です。
 以下、次回に続く
(弘前大学教育学部教授 石川 善朗)

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「ロングセラーの秘密」愛と真実(まこと)の商を守る

2018/4/15 日曜日

 

 以前に紹介した「築地銀だこ」佐瀬守男社長の講演を聞いた某聴講者が、まだ食したことのなかった「銀だこ」をどうしても食べたくなり、主催者が用意した夕食も取らず、幕張から銀座までタクシーを走らせた、と書いたが、実はその人は弘前から参加されたラグノオささき(木村公保代表取締役社長)の前社長であった佐々木周平氏である。ラグノオささきは、明治17年に弘前市百石町に小さな駄菓子屋から始まり、子達が店の前で楽しげに、にぎやかにはしゃぐとても明るい店だったと聞く。
 実は創業者の佐々木繁氏も以前紹介した多くの創業者同様に、商業界主催の「箱根ゼミ」に参加されていた。そこで数々の経営ノウハウ、考え方を学ばれたという。その教えを会社に持ち帰り、社歌にもつづり、経営理念として残している。その一節にはこう書かれている。「愛と真実(まこと)の商売を守る」と。これは商業界の教えである「嘘と隠し事はだめだ」という教え、「損得より先に善意を考えよう」「愛と真実で適正利潤を確保せよ」に通じる。
 繁氏は「箱根ゼミ」で知ったご当地商品「うなぎパイ」の成功に刺激を受け、看板商品である「丸ごとパイ」を青森版として開発した。また繁氏は教育にも熱心に取り組まれた。2代目周平氏はチェーン理論の根幹である「数こそ力なり」を、そして現社長木村氏は商品管理の在り方を学ばれた。周平氏はチェーン理論を実践し、多店舗化を推し進め、多くの業種業態を手掛けたが、バブルがはじけ、多くの店舗の閉店を余儀なくされた。そこで次期社長木村氏は、閉店の悔しさをばねとして、攻めの姿勢を守りの姿勢に変えた。セミナーで学んだ製造管理の教えを生かし、無駄をなくし、品質を落とさず、ラグノオささきの原点である菓子業に専念。そして、それからの躍進が実に目覚ましい。
 初代、先代から培われた先取の精神を引き継ぎ、木村氏は売り場での顧客ニーズを次から次へと開発した。“土産にも持っていける包装されているパイがほしい”と聞けば現場と一緒になって具現化し、結果としてラグノオは「気になるリンゴ」「旅さち」そして「いのち(アップル)」「森のショコラ」「パティシエのりんごスティック」でそれぞれ第24、第25、第26回と続けて全国菓子大博覧会「金賞」を受賞した。また2年前より、全国の有名高級菓子を販売している東京の高級スーパー数社からの要望で共同開発も進んでいる。
 ラグノオささきの原点、そして学びが、まさにここにある。駄菓子屋からショップへ、子達からファミリーへ、単なる生産工場から、リンゴ大国の文化を全国へ発信する生産拠点へと、時代とともに変化しているが、真実(まこと)のあるコンセプトは、けっして揺らぐことなく、変わらない。
(弘前医療福祉大学短期大学部教授 牛田泰正)

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