新型コロナの影響で、各種イベントの実施に赤信号が灯(とも)るようになってから間もなく1年になる。密になるもの、飲食を伴うものはとりわけ慎重にならざるを得ず、私たちが手掛ける飲み食べ歩きイベント「バル街」も開催が難しい状況だ。
バル街は函館が発祥で全国に拡がり、弘前や青森、五所川原でも開催されてきた。1日限りで多くの人々が街に集い、マップを手に街歩きを楽しみ、自由に店を選んで巡る。見知らぬ者同士が気軽に触れ合うこともできる。それゆえに、飲食しながらの親密な会話が避けられない。バル街の他にも、はしご酒やドリンクラリーが数多くあり、平川や板柳のはしご酒も人気が高い。こうしたイベントは全国で500近くもある。
コロナ禍の今、再開した時の新たな可能性を探ってみようと、私たちは各地の飲み食べ歩きイベントの関係者への聞き取りを始めている。イベント運営組織の中心は商工会議所や商工会、または商店街やまちづくり系の三セク会社などで、公共的団体が裏方を務める場合が多いようだ。函館や弘前のように飲食店主などの有志が運営を担っているものはむしろ少数である。バル街を手本にするものは、年2回開催で5枚つづりチケットのスタイルが定番になっている。現時点での開催状況は、やはり休止が多数を占めるが、対策した上で開催する例も意外に多い。またテークアウト型への転換や会期の延長など、工夫を凝らして行うものも見られる。
函館のバル街はやむを得ず休止を選択した。飲食店を潤すことを目的にするならば、店に客足が向くように、持ち帰りメニューでの実施や会期を延ばして密集を避けるという選択肢もあった。しかし参加者と参加店そして主催する私たち自身が共に楽しまないことには、イベント自体が成立しない。運営を担う私たち自身が楽しめるからこそ、コストを極小にでき、多くの参加者が集うスケールメリットを生かすことで、行政からの補助金など公金を当てにせずとも、チケット代金を財源として実施できるのだ。これこそが私たちが掲げたバル街のポリシーとでもいうべきものなのだ。
県内をはじめ、全国各地で私たちのバル街を手本にしてくれた人たちの多くは、こうしたポリシーを尊重してくれ、今はコロナ後の開催に向けてじっと備えをしているようだ。
飲み食べ歩きイベントの主催者同士で、どこか気持ちが通じ合う関係でいられるのは、うれしいことであり、また図らずも開催困難な中でポリシーを再確認する機会ができた。
各地で参加を心待ちにしてくれるファンも多いことだろう。そうした渇望感をバネに、コロナが収束した際には、運営する側の一人として、バル街を楽しみたいと願っている。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)