日曜随想

 

「日本アニメ百年・完」テレビアニメの台頭(10)

2019/9/8 日曜日

 

 さて、東北地方にはほとんどないアニメスタジオですが、宮城県には誘致企業として東京に本社があり、その分社のようなサテライトスタジオがあります。しかし、青森県のイーゲルネストのように本社が地元である数少ないスタジオが、福島県いわき市にも存在します。「スタジオダブ」と言います。
 もともと代表者が虫プロダクションのアニメーター出身で、虫プロダクションの混乱期にサンライズスタジオの独立に伴って移籍したようです。しばらくしてから地元に帰り、地元でアニメの依頼仕事を請け負うようになっていき、そのうちにスタジオ設立となったようです。その経緯から主にサンライズの仕事をしながら、その他、幾つかの大手スタジオの仕事も請け負ったようです。現在では東京やアジア数カ国にスタジオを持ち、デジタル化を推進しているようです。現在でも、数多くの作品に名前を連ねています。
 アニメスタジオは圧倒的に関東、関西に多く、一部東海、北陸、九州が有名ですが、数少ないながらも東北で頑張っているスタジオもまた存在します。前回お話しした弘前市のアニメスタジオ・イーゲルネストも、規模はそれほど大きくはないですが、技術力は評価されているようですし、仕上げ仕事だけではなく、原画制作にも幅を広げています。地元弘前市で30年以上仕事を続けていられるのですからぜひ皆さんで応援していただきたいと思います。なお、イーゲルネストのアニメーション部門を別名で「スタジオOM青森ワークス」と呼ぶ場合もあります。最近、劇場公開された「機動戦士ガンダムNT」のエンドクレジットでは「スタジオOM青森ワークス」となっていました。これは現在一番新しいガンダムシリーズなので、仕事内容によって二つの名前を使い分けているようです。両者は同じ母体のようですから、名前が違っても組織は同じだと思います。イーゲルネストに改名する前の名前がスタジオOM青森ワークスで社名変更していても二つの名前が存在するということです。「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」劇場版のエンドクレジットではイーゲルネストです。
 日本におけるアニメーション制作の初めから、100年間の時間経過に伴って起きたことをいろいろと書いてきましたこの拙文も、102年の今年に、最後として地元のアニメスタジオのことを記して閉じたいと思います。ここ最近、地元弘前市では、アニメ「ふらいんぐうぃっち」の主舞台として描かれたり、観光アイコンとして「桜ミク」が登場したりして、アニメの素材が市の中で大変大きくなってきています。これを機会に今までアニメと聞いて敬遠してきた方々も、ぜひ鑑賞してみてはいかがでしょうか?
(弘前大学教育学部教授 石川 善朗)

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「気ままな旅」高岡市・越中万葉を感じたい

2019/9/1 日曜日

 

 富山県高岡市伏木(ふしき)は奈良や飛鳥(あすか)と共に万葉故地、越中(えっちゅう)万葉の中心地だった。越中万葉は、万葉集の代表歌人で編纂(へんさん)者とされる大伴家持(おおとものやかもち)が29歳で越中国守(現在の県知事相当)として赴任し、奈良の都へ帰るまでの5年間(746~751年)に越中国の風土や四季、言語をモチーフに詠んだ223首(関連歌を合わせて337首)に由来する。越中万葉の地・伏木を訪ねたい思いが令和最初の夏に実現した。
 8月9日、新青森6時17分発東北新幹線はやぶさ4号に乗車。大宮で9時9分発北陸新幹線はくたか555号に乗り換える。高崎、軽井沢、長野、富山と過ぎ、11時34分新高岡駅着(金沢駅まで14分)。ここから城端(じょうはな)線で高岡駅へ接続される。オレンジ色のディーゼルカー(2両編成)に乗り、3分で高岡駅に着く。この日の目的は二つ。伏木の万葉歴史館見学と越中国庁跡とされる勝興(しょうこう)寺周辺の散策である。
 駅ビルで軽く食事を済ませ、高岡13時47分発氷見(ひみ)線ワンマン・ディーゼルカー(2両編成)で伏木へ向かう。車窓を眺めながら12分で伏木駅到着。まずタクシーで高台にある万葉歴史館へ。通常は徒歩25分らしいが、6分で着いた。
 歴史館の見所は、家持が好んだ花や鳥を歌と対比させた最新映像装置で鑑賞できるメディアボックス、越中国と万葉集の関わりを紹介したグラフィックパネル・万葉集古写本(桂本)、展示品、越中の自然を詠んだ「二上山賦(ふたがみやまのふ)」「立山賦(たちやまのふ)」の歌碑である。(家持は長歌を漢詩文の「賦(ふ)」<叙述描写>と称した)
 歴史館見学後、今度は徒歩で伏木駅方面へ下っていく。途中に越中国庁跡・現勝興寺、家持が住んだ越中国守館跡・現気象資料館がある。この地で詠んだ家持の歌。
 「馬並(な)めて(並べて)いざうち行(ゆ)かな渋谿(しぶたに)の清き磯廻(いそみ)に寄する波見に」「もののふの八十娘子(やそをとめ)らが汲(く)みまがふ寺井(てらゐ)の上の堅香子(かたかご)(カタクリ)の花」「新しき年の初めはいや年に雪踏み平(なら)し常かくにもが(いつもこうして集まりたい)」「東風(あゆのかぜ)いたく吹くらし奈呉(なご)の海人(あま)の釣する小舟漕(をぶねこ)ぎ隠る見ゆ」
 翌10日は、家持が訪れる度に絶賛した渋谿の磯(いそ)・雨晴(あまはらし)海岸へ行ってみた。昨日同様氷見線で高岡駅から雨晴駅まで20分。ここは冬晴れの海越しに望む3000メートル級の白い立山連峰の眺めが絶景といわれる。この日はあいにく猛暑日。富山湾にそそり立つ雄大な連峰は雲に隠れて見えない。絵はがきを手に家持が見たであろう情景を想像してみる。「立山(たちやま)に降り置ける雪を常夏に見れども飽かず神(かむ)からならし(きっと神の山だからであろう)」
 万葉集の1割を占める家持の歌473首の半数近くは越中国で詠まれた。家持は越中国の自然や風物に触れた折々の感動を歌に詠み、万葉集に収めた。大伴家持が越中国守になって生まれた越中万葉。いにしえの越中国をもっと感じたい。
(東北女子大学家政学部教授 船水周)

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「戦争と国際交流」インバウンドってなんだんづ

2019/8/25 日曜日

 

 例年8月になると、マスコミは決まって戦後の話として、被災の話に終始します。何せ戦後の教育はポツダム宣言受諾を公表した日を終戦の日、連合国を国際連合と教えていますから、独立の日なんかはありません。
 30年ほど前にミクロネシア連邦ポンペイ島で調査した際、病院長や長老がきちんとした日本語を話すことに驚いた。日本は1914年から敗戦まで現地人を超える日本人を滞在させ、週10時間の日本語教育を実施していました。
 現在、現地の公用語は英語ですが、ポンペイ語が共通語です。
 ポンペイの大学の売店でポンペイ語―英語の辞書を見つけたので購入し、調べてみたら、日本語由来は227語ありました。issohping(一升瓶)、kadorsingko(蚊取り線香)、umepwosi(梅干し)等々。
 現地の人は優しく、調査時の昼食には自宅を開放し、若い者に木登りをさせてヤシの実を振る舞ってくれました。(土間に豚が…)
 当時の調査で大活躍したのが、インスタントカメラです。今では考えられませんが一方的に撮影して親切を押し付けるのである。相手は当然親切に応えなければいけないので、農作物とか思いのままでした。
 日本に対する印象を長老に聞くと、アメリカは、金はくれるが、仕事はくれない。日本は、仕事をくれた…と。
 namaiki、pakehro、pakking等の言葉もあるので信じていいかどうか悩むところです。
 戦争をしないために、国際交流は欠かせません。
 さて、政府は金も、人もないのか外国人に来てもらって、お金を落としてもらい、働いてもらう都合のいいことを考えたようです。黙々と働く東北の若い者は必要ないと言って海外へ労働力を求め、イギリスがEU離脱を決めたとたん、見切りをつけた有能な企業がどうしたんでしょうか。単純労働は、老人も、外国人も。ロボットが肩代わりするまでの、その場しのぎです。
 外国人との交流にどうしても必要なのは、相手に対するリスペクトと自分のかだくらさ(アイデンティティー)だと考えます。業者に乗せられて優しさと笑顔なんてことを真に受けてはいけません。笑顔は相手の社会や意見を確認しリスペクトしてからです。
 ディープな東北を売り出したいなら、かだくらさは欠かせません。怖そうな親父(おやじ)に恐る恐る話しかけて、にこっとされるとたまりません。せめて、相手の挨拶(あいさつ)と感謝の言葉を、できればブンガワンソロのような歌を一つ。それにしてもポンペイの学生たちの“蛍の光”は元気で哀愁は一つも感じなかった。
(弘前学院大学看護学部教授 三上聖治)

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「盂蘭盆会」お盆の帰省に思う

2019/8/18 日曜日

 

 今年も、お盆に合わせて息子が帰省し、家族全員で、夫の実家と私の実家にお墓参りに行って来ました。結婚以来欠かしたことがない年中行事です。若い頃は、面倒だと思ったり、お盆休みに旅行に行く友人がうらやましかったりしたものですが、年を重ねるうちに、お盆という行事は、生きている人のためでもあるのだと考えるようになりました。いつもはなかなか会えない家族親族が集まり、近況を語り、無事を喜び合い、故人の思い出話をする。核家族、独居老人が増えた現在だからこそ、大事にしたい時間だと思います。
 お盆は、正式には盂蘭盆会(うらぼんえ)と言い、夏に祖先の霊を祀(まつ)る行事です。しかし、仏教発祥のインドにこの行事はありません。インドでは輪廻(りんね)転生の考えが浸透しているため、先祖を供養する習慣がないのだそうです。お盆とは、仏教古来の考え方ではなく、日本に仏教が渡って来た際に、仏教の考え方と日本古来の祖先崇拝の考え方が混じり合って、日本独自の民俗行事となったと考えられています。
 元々は旧暦の7月15日を中心としたものだったそうですが、現在は8月15日が一般的になっています。13日の朝には盆棚を作り、盆花や季節の果物、野菜などの供物をお供えし、夕方には、先祖や亡くなった人たちの霊が道に迷わず帰って来ることができるように、盆提灯(ちょうちん)を灯(とも)し、庭先に迎え火として麻幹(おがら)を焚(た)きます。霊をお迎えするまでに、お墓参りをしておいた方が良いとされています。14、15日は霊が家にとどまり、16日の夜帰って行きます。今度は送り火を焚き、霊を送り出します。京都の大文字焼きは、「五山の送り火」といい、これも、お迎えした先祖の霊を送る送り火です。(20日までお盆という方もいます)
 家族が亡くなって初めて迎える盆を、新盆または初盆といい、通常よりも早く、1~7日に盆棚を作ったり、故人と親しかった人や親類を招いて、僧侶に棚経をあげてもらって、盛大に供養したりする地方もあるようです。家族を亡くして寂しくなった方を、元気づける良い機会にもなっていると思います。
 また、私の幼少期には、お盆の間は精進料理を添え、家族も同じものを食べる習慣がありましたが、近年はたまに帰省する息子・娘・孫のために、ご馳走(ちそう)が並ぶ家が多いようです。
 今日、長い盆休みを終え、息子は仕事に戻り、私たちも日常に戻ります。次会えるのは正月休みです。両親・祖父母も同じ思いで、私たちや孫の来訪を待ちわびていたのだと思います。
 お盆同様、仏教の法事法要、神道の式年祭、キリスト教の追悼ミサ等、さまざまな行事は、故人を偲(しの)ぶとともに、生きている人同士の繋(つな)がりを、確認する場でもあるのかもしれません。
 (弘前医療福祉大学教授 小玉有子)

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「ホルムズ危機」エネルギー自給の向上を

2019/8/11 日曜日

 

 「ホルムズ海峡はわが国の生命線である」(菅義偉官房長官)。わが国の産業や国民生活を支えている原油や液化天然ガス(LNG)のほとんど全てが輸入であり、原油の80%、LNGの20%が、年間1800隻に及ぶタンカーで、中東諸国からこのホルムズ海峡を通航して運ばれてきているという事実を語ったものである。わが国のみならず、日量1800万の原油と年間8000万トンを超えるLNGがこの海峡を通過して世界各地に運ばれており、世界の「生命線」といっても過言ではない。
 地政学的に極めて重要な位置にあるこの海峡で、昨年来、アメリカがイランに政治的・軍事的圧力を強化している中で、わが国のタンカーを含む6隻の船舶が何者かに攻撃され、米国の無人偵察機をイランが撃墜するなど、「一触即発」の危機が急速に高まっている。。いつ何時、「わが国の生命線」が途絶されてもおかしくない状態が続いていると言えよう。
 1973年、第4次中東戦争をきっかけに、中東諸国が原油価格を大幅に引き上げたことで世界経済が大混乱に陥った「石油危機」が起こった。わが国では「トイレットペーパー騒動」や「洗剤パニック」などが起きたことを記憶している人もいるだろうが、当時のわが国は石炭から石油へのエネルギー転換を図っていた時であり、産業・経済に与えた打撃は極めて大きく、多くの失業者が出るなど極めて深刻な事態となった。
 その後も、この地域の政情不安が原油供給を途絶させる事態が起こっているが、わが国ではこの経験を踏まえ、エネルギー、特に電力については、省エネや節電とともに、燃料備蓄の強化やエネルギーの多様化と調達先の多極化を行ってきた。その中で選択されたのが、火力発電の効率化と原子力発電だった。また、8年前の原発事故以降は、再生可能エネルギーの拡大もされてきた。しかし、電力は僅(わず)かに9%程度の自給でしかなく、輸入燃料に頼る火力発電が80%以上を占めているのが現状だ。ホルムズ海峡の危機は直ちにわが国に重大な危機をもたらすことは火を見るよりも明らかだろう。
 こうした時、わが国が実行しなければならないのは、エネルギーの自給率を向上させることであろう。そのためには、再生可能エネルギーの普及拡大は勿(もち)論(ろん)であるが、この自然任せの不安定なエネルギーを補うためにはベースロード電源としての原子力はやはり必要である。再生可能エネルギーと原子力を組み合わせることでエネルギー自給率の向上を図ることがホルムズ海峡危機への備えではなかろうか。その場合、再生可能エネルギーは、国民に巨額な負担を負わせている賦課金に頼らず、技術力を向上させること、原子力は「福島事故」を教訓とし、安全性の向上が大前提であるのは当然である。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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