日曜随想

 

「アート悶々23」池田亮司展

2022/5/15 日曜日

 

 弘前れんが倉庫美術館で池田亮司展を観(み)た。会期(8月28日まで)が残っており、内容について書くのはネタバレになってしまうから避けたほうが良いと通常は考えるところであるが、こういったちっぽけな考え方など意味を成さないと感じさせるほど圧巻の展示であった。
 美術館に入ると、受付の所からピカピカと点滅し強弱の光を放っているものが見えた。光を放っていたのは「point of no return」という作品だ。光の量に圧倒された。例えとしてはどうかと思うが、綿菓子製造器にザラメ砂糖を入れると放射状に砂糖の糸が出てくるように、この作品から光が質量を持って飛び出してくるのである。光は粒であり波でもあるそうだが、この作品の光は粒であった。以前観たことのある彫刻家アニッシュ・カプーアの作品のことも思い出した。その作品は、穴に光を吸収する塗料が塗ってあって、そこを覗(のぞ)くと闇に吸い込まれるような感覚になるのであるが、「point of no return」は光を放出しているのでこれとは対照的である。にもかかわらず、しばらく観ているとなぜか吸い込まれるような感覚になった。不思議でかっこいい作品だと思った。
 展示室1から展示室2へ向かう途中の細長い通路には「date flux[n。1]」があった。というより、空間自体が作品となっていた。天井のプロジェクターに次々と映し出される数字やアルファベットなどのデジタル的なイメージと音に囲まれた空間の中を通り抜け、次の部屋に着いた。
 吹き抜けの大空間、展示室3には本展示のメインであろう「date-verse3」があった。大きな画面と音の大迫力に圧倒された。具体的な数字、記号や実写の映像など様々(さまざま)なイメージが目まぐるしく次から次に現れてきた。「原子核の内部から宇宙まで、ミクロとマクロの視点を行き来する壮大な旅」(解説文より)に引き込まれた。この美術館の大空間と一体化した、ここでしか観られないまさにサイト・スペシフィックな作品となっていた。
 この後もレーザーで空間にドローイングする「exp#1~4」や、作家の思考がストレートかつシンプルに現れている平面作品「grid system[n。2-a~d]」(この作品が展覧会に深みをもたらしたのではないか。個人的にはこの展覧会の出品作品の中では特にこの作品と「point of no return」が好きだ)など、充実した内容の展覧会であったし、とにかく楽しめた。
 池田氏は雑誌のインタビューで、自身の職業をコンポーザーだと語っている。様々な科学的データを収集し、それらを素材に音や映像を制作し、空間と時間のコンポジションを行っているのだという。また、本展について池田氏は「意味や答えを求めないで自由に楽しんで欲しい」と語っている。潔いではないか。
(弘前大学教育学部教授 塚本悦雄)

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「報道の使命」権力に懐柔されることなかれ

2022/5/8 日曜日

 

 ロシアによるウクライナ侵攻が止まらない。当世、侵略戦争はいかなる理由を並べても人道的に許されるものではない。現代の戦争はネットを駆使し、無人機による爆撃なども多用するハイテク戦だ。一方で、ロシア国内で自国民に対しては、情報統制などを伴う旧来のプロパガンダ(政治宣伝)によって戦争を正当化する。為政者が報道や言論を制することで、意のままに戦争をも成し遂げられるということだ。
 翻って現在の日本はどうか?「国境なき記者団」という団体が行う世界報道自由度ランキングで、日本は安倍政権以来、順位下落の一途。先頃発表された本年の結果は180カ国中71位とまた順位を下げた。G7のなかではダントツの最下位である。順位の数字はあくまで参考程度に考えるべきだが、11年前には先進各国を押しのけ、11位だったことを顧みれば、相当に危機的な状況だ。自身の経験でも、空虚な首相会見や国政に対する論説の希薄さなどを考えれば合点がいき、報道側の責任によるところも大いにあろう。
 こうしたなか、ウクライナ侵攻を追い風に、政権与党が「憲法改正」を声高に唱え、大手紙や放送メディアが好意的に乗じる。それどころか首相経験者が軽々に核兵器の保有を口にするほどで、ロシア情勢を他人事(ひとごと)としてはいられない。
 近頃、憲法改正に関する世論調査がよく報じられる。必要が不要をわずかに上回る、と大々的に報じるものの、本来はどこをどう変えるのかという各々の詳細な案を示すことなく問われても回答は難しいはずであり、多数派はもちろん「どちらともいえない」となる。そもそも、まず国民が政権に望むことを問えば、経済対策や社会保障、政治と金の疑惑解明などが上位となり、改憲の要望は極めて少数であるといえる。
 憲法は、第99条で為政者に対して憲法を尊重し擁護する義務を課している。権力の暴走を防ぐことが憲法の大きな役割だからだ。第二次大戦での苦い経験を受けての条文であろう。つまり、為政者による恣意(しい)的な改正を許してしまえば、権力を縛っていた足かせが取り払われる改悪が危惧される。
 いま衆議院の憲法審査会で議論されているのは、憲法改正の国民投票に伴うCM広告規制の是非だ。大手紙にとっては系列放送局の広告料収入という甘いアメに関わることでもある。アメとムチによる大手紙の懐柔は東京オリパラで図らずも露見したが、憲法改正は多くの国民にとって、それどころではない。
 甘いアメの後には、必ずやムチが飛ぶ。これは先の大戦で先輩記者たちが実体験したことではないか。
 だからこそ今、報道に携わる人間たちには、権力としっかり対峙(たいじ)すべきことを肝に銘じて欲しいと思う。
(オフィス「オリゾンテ」代表 田村昌弘)

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「折々の思い」一寸先は闇である

2022/5/1 日曜日

 

 目指すべき目標が持てる時代は幸せである。なぜなら、それが達成できなければ、反省して再挑戦したり方法を工夫したり、志と努力次第で前へ進んでいける可能性があるからだ。失敗しても立ち上がってやり直す。こうした統一感の下で国は威信を、人々は尊厳をかけて自由を謳歌(おうか)してきた。背景には、平和や経済の安定がもたらす安全、安心があった。
 だが時代は変化した。ただ単に目標を実現するだけでは評価されなくなった。実現する内容の新しさや便利性、スピードなどの付加価値を求めるようになったからだ。さらにいえば、実現しても利益が見込めない目標は、評価が得られない。費用対効果の良いことが前提で、それが万事に幅をきかせる。他方で少子・高齢化の現象が社会を縮小させ、国力を削(そ)ぎ続ける。未来投資という必要なムダを担保する余裕が失われている。
 こうした状況に追い討ちをかけたのが、コロナ禍とウクライナ侵攻である。この二大事件は世界中を震撼(しんかん)させ、人々の恐怖と不安を増幅した。二つの事件の共通項は、突然起こり急速に拡大していること、多くの人命が奪われ健康が阻害され続けていること、未(いま)だに出口が見えないことである。特に2月24日が起点のウクライナ侵攻について、メディアは、罪のない民間人が攻撃を受けて犠牲になったニュースを連日報じている。
 もちろん編集された報道が、全て正しく伝えられているわけではないだろう。そうだとしても、それを見聞きするたびに悲しみや寂しさ、行き場のない怒りや恐怖の感情で胸が締め付けられる。地下シェルターに身を隠し、毎日を送る老若男女。ずっと太陽を見ていない。一日も早く戦争が終わってほしい。そう話す少女。こうした映像を見ると息が詰まる。耐えがたい拷問のように思う。どんな理由にせよ、他人の命や自由、幸せを不当に奪う戦争が、許されていいはずがない。
 新世紀になって20年あまり。この間、天変地異をはじめ原発事故、疫病や戦争など、物事の見方や考え方を一変させる衝撃度の強い事象が続出した。それまでは既存の秩序が機能し、多少問題が起きても想定内に収まっていた。安全神話が生まれた所以(ゆえん)である。それが幻想であり、微妙なバランスで保たれていた事実を20年の歴史は如実に物語っている。
 小林秀雄は「鏡としての歴史」を信じ、鏡に自分の姿が映るように、歴史を読んで自己を発見する大切さを説いた(『学生との対話』新潮社)。小林の顰(ひそ)みに倣えば、歴史には変化し消滅する事象と人間が絡み合っている。鏡に映るごとく自己を発見するには、自分で歴史事象を調べ、想像し認識するしか手はない。予測不可能な時代は傍観者的立場ではなく、常に自分の問題として思考を進めたい。昔の人も知っていた、一寸先は闇である。
(柴田学園大学特任教授 船水周)

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「観桜会への想い」ほこりとがやがや

2022/4/24 日曜日

 

 子供の頃のかんごかい(観桜会)は何か恐ろしい所でした。賀田御門跡の坂から四の丸興行地区辺りになると、ぎゅうぎゅうで身動きが取れません。当時の大本営発表によると、1日の入園者数が60万人と新聞に報じられたこともありました。スリだ、喧嘩(けんか)だ、酔っ払いが濠(ほり)に落ちたと聞くと気が気ではありません。
 坂を下ると、最初に目につくのが、見世物小屋の蛇女(へびおんな)のおどろおどろしい看板でした。隣がお化け屋敷で呼び込みの掛け声がまた凄(すさ)まじい。
 亀甲門の方へ向かうと「カッパ天国」のホッとする看板、親に尋ねても子供は入れない所と一言。次は桶仕様のオートバイ、その奥が空中ブランコや猛獣使いのサーカス。入場料が高かったのか、入ったのは一度だけ。臭かった記憶しかありません。
 さて、花見の食べ物と言えば、ガサエビ(シャコ)、ガニ(トゲクリガニ)、台湾バナナでした。衛生上や安全面で甲殻類は締め出されてしまいました。バナナは花見時期だけ食べた記憶があります。
 なぜか大きくなっても卵を産むことがない方のヒヨコ、必ず逃げ出すミドリガメが子供向けに売っていました。
 「年年歳歳(ねんねんさいさい)花相似たり、歳歳年年人同じからず」と言われますが、花も毎年同じではありません。“千住の茂ちゃん”こと石川茂雄弘前大教授に「公園の職員はさくら切るバカうめ切らぬバカ、ということわざを知らないのではないか」と言われた公園管理事務所(現・市公園緑地課)の初代所長、工藤長政さんはテレビ論争の後に引退したとのことですが、結果は明らかです。(津軽衆は寡黙なんです)
 工藤さんの功績は、桜管理に関する弘前方式の礎の確立以外に、公園への車の乗り入れ禁止(あれぇ守られなくなったような)、ぼったくり出店の排除など、公園管理者として桜以外にも尽力されたようです。
 因(ちな)みに、中学校長時代の石川教授には、修学旅行の際、バスガイドの説明に解説とチャチャが多かった記憶があります。
 2011年の大雪で倒木した「二の丸大枝垂れ」の再生で、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介された樹木医・小林勝さんも春で退職されたとのこと。桜も完全復活、技術的な後継者も育っていますが、工藤さんのような剛腕が振るえる環境は整っているでしょうか。
 さて、今年の“かんごかい”は昨年同様、検温、連絡先の記入、リストバンド、一方通行、酒販売なし、飲食は定められた場所、出店は大幅減少、受付は13カ所、うち公園入口9カ所は午前6時30分から午後8時までです。中濠観光舟、西濠ボートは3年ぶりの復活で、さて祭りの雰囲気は? おでん、アイスや花も、ほこりや、がやがやがなくて・・いいか。
(弘前学院大学看護学部教授 三上聖治)

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「継続のヒント」付箋紙を上手に活用しよう

2022/4/17 日曜日

 

 前回は「やる気スイッチ」の話をしました。今回は「継続するためのヒント」について話していきます。春は、やらなければならないことが多すぎて、やる気を維持するのが難しくなることも多いでしょう。「時間が足りない」「仕事が多すぎる」「疲れがたまっている」と言い訳を繰り返しながら、たまっていく仕事に焦りを感じていませんか。ちょっと休憩とスマホを見ていたら、1時間以上経っていて、やることも忘れて自己嫌悪、といったことがないように、継続するためのヒントをご紹介したいと思います。
 やることが多すぎて、仕事がなかなか片付かない方には、頭の中を整理することをお勧めします。頭の中のゴチャゴチャを「見える化」しましょう。まず、気になっていることを、紙に書き出してみます。付箋紙に一つずつ書き出すのがお勧めです。次に、それを片付ける方法や時間をメモしましょう。
・冬物を収納→日曜の午後にやる。
・メールの返信→夜まとめて返す。
・水曜締め切りの原稿→火曜日の夕 方書く。水曜午後見直して送る。
付箋紙なら、優先順にどこかに貼っておいて、終わったら剥がしていきます。付箋紙の数が減ることで、気持ちが軽くなりますよ。
 予定通りに仕事を終えられないと、かえってイライラするという方には、複数のプランを準備することをお勧めします。例えば、冬物の収納なら、(1)日曜の午後やる。(2)連休の初日にやる。(3)ハンガーにかけたまま布をかけ秋まで放置する。というふうに、想定外のことが起きても計画通りにやれるように、プランニングしておくことで、ストレスを少なくできます。
 また、自分が決めたプランの開始日や締め切りを、カレンダーや手帳に書き込んでおくのも効果的です。
 毎日の仕事終わりに、あしたの予定をメモしておくのもいいでしょう。これも「見える化」の一つですが、予定がわかっているだけで、計画的に仕事ができたり、気分がスッキリしたりすることもあります。
 そのほかにも、一日の中で仕事が中断したら、再開した時に最初にやることをメモしておく習慣も、継続の役に立ちます。せっかく気持ちが乗ってきたと思ったら、タイミング悪く上司に声を掛けられてしまったり、家族から別な用事を頼まれてしまったりすることがありますよね。「再開時に○○する」「今すぐ○○する」という簡単なメモがあるだけで、作業が再開しやすくなります。
 義務感で仕事をしていると楽しくないという方には、やっぱりご褒美がお勧めです。「これが終わったら○○できる」「これが終わったら○○を食べよう」と思うだけで、「快追求」の行動スイッチが入り頑張れますね。
(弘前医療福祉大学教授 小玉有子)

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