日曜随想

 

「日本アニメ百年(10)」テレビアニメの台頭(3)

2018/11/18 日曜日

 

 さてここで、先に日本アニメの基礎を築いたと述べました、手塚治虫が創設した虫プロダクションですが、末期になると経営難に陥り1973年に経営破綻します。労働争議が大変激しかったようです。この経営難の頃に虫プロダクションから独立して、あるアニメスタジオが誕生します。有限会社サンライズスタジオです。1972年のことでした。
 自己資金が不足していたことで、当時関係があった株式会社東北新社に資金提供を仰ぎます。共同出資という形で株式会社創映社を設立し、企画や営業面を創映社が、制作をサンライズ側が行う形で活動を開始します。その後、利益分配金などの金銭面の不満が噴出し、1976年サンライズは独立します。そして、1979年、安彦良和や富野喜幸(現・由悠季)ら元虫プロに所属していた外部の人間を企画参加させて、現在もまだシリーズ化されているモンスターアニメが誕生します。ご存じの方が多いでしょう「機動戦士ガンダム」です。
 当初は「宇宙戦艦ヤマト」の大ヒットを受けて、年齢層を上げて設定し、宇宙戦争に巻き込まれた子供たちが協力しながら生き延びるストーリーでしたが、スポンサーの強い意向によりロボットが登場する原案へと変化しました。ロボットの出入りのために大型宇宙ステーションのアイデアを、アメリカのオニール博士のスペースシリンダー計画から拝借して脚本が生まれました。ロボットアニメが好調な時代で、スポンサーの意向もこれ以上強くならずに現実的なリアル路線が決定します。大筋の設定の基底には「十五少年漂流記」の要素も入っていたそうです。キャラクターの構築にも、それまでにない屈折した性格が盛り込まれました。キャラクターデザインは弘前ではもうかなり有名になりました元弘前大学に在学していた安彦良和が担当します。最初の発表から39年たった現在でも新作を制作しています。
 このアニメにより業界初のリアルな設定のプラモデルを販売した玩具メーカーバンダイが大成功を収め、大変な収入を上げるという副作用まで現れます。当時「ガンプラ」と呼ばれた現象はテレビニュースにもたびたび登場しました。一時は年間売り上げが100億円に達していたという噂(うわさ)まで現れました。サンライズスタジオはこの後、このバンダイに吸収合併され1994年、バンダイの資本下に入ります。その後テレビゲームメーカーのナムコが経営統合されて2007年以降サンライズスタジオは、漫画原作アニメ、ライトノベル原作アニメ、テレビゲーム原作アニメの3本立てで制作を行っていました。現在は低年齢層アニメは株式会社バンダイナムコピクチャーズが、高年齢層向けがサンライズというように分業しています。以下、次回に続く。
(弘前大学教育学部教授 石川 善朗)

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気ままな旅「後藤新平の故郷・水沢を歩く」

2018/11/11 日曜日

 

 10月下旬のある朝、かねてより計画していた、岩手県奥州市水沢の後藤新平記念館へ鉄路の日帰り旅行を決行する。
 新青森駅を8時37分に出た「はやぶさ12号」は9時42分、盛岡駅に到着。トイレを済ませ、10時6分発、JR東北本線701系普通一ノ関行きに乗り込む。目指すは水沢駅。2両編成の列車は盛岡駅を出て途中13駅で停車をくり返す。乗客のたわいないおしゃべり、車窓を流れる小春日和の風景を楽しみながら、11時10分過ぎ、水沢駅に着く。
 平屋建ての小さな駅舎は、至ってシンプル。昔の停車場といってよい。後藤新平記念館は東北自動車道経由で過去に2度訪れている。3度も記念館に足を運ぶのは、新平の魅力に取り憑(つ)かれている証左であろう。ただし、今回の鉄路(ローカル線)の旅ほど、ゆったりとした、豊かな気持ちになれたことはない。
 水沢駅西口から後藤新平記念館まで徒歩で15分。駅通り右側を10分進むと、交差点の左向こうにホテル・ルートインが見える。さらに1分進み、交差する大手通りの角を右折。2分ほどで赤茶色の奥州市役所に着く。この市役所(正門)の交差点を基点として、左斜めに後藤伯記念公民館・後藤新平記念館、市役所右隣に後藤新平旧宅がある。いずれも市役所から1~2分で行ける距離にある。
 後藤新平記念館は、後藤伯公民館の裏側に隣接する。コンパクトな造りと白い石壁が重厚な佇(たたず)まいを感じさせる。玄関で靴を脱ぎ、吹き抜けの広場に上がる。中央に後藤新平の蝋(ろう)人形が立ち、足元にゆかりの資料が陳列。正面の壁には年譜や肖像画が掲げられている。
 1階、2階の展示室を約1時間かけて回る。医者、行政官、台湾民政長官、満鉄総裁、鉄道院総裁、逓信・内務・外務大臣、拓殖大学学長、東京市長、帝都復興院総裁、東京放送局(現NHK)総裁、少年団日本連盟総裁等、様々な要職につき、辣腕を振るう姿が浮かぶ。常識や目先の利益(私利私欲)に囚(とら)われない、科学調査と公共精神に裏打ちされた、国際的視野を持つ政治家の顔があった。
 後藤は大風呂敷と揶揄(やゆ)されたが、残した業績はものすごい。1929年に72歳で亡くなり90年を迎えるが、今に通用する仕事ばかり。東京駅、墨田川の橋、山下公園、環状道路、新幹線、赤い郵便ポスト等、枚挙に暇(いとま)がない。とても100年以上も前の発想(案)とは思えない。
 今また、後藤新平が輝く時代になろうとしている。科学調査・先見性、自治・公共精神を重視した、都市づくり、行政改革、人づくりへの再評価である。後藤はいう。「ビスマルクはかく言えり、『一に金、二に金、三に金』と。我は言う、『一に人、二に人、三に人』と」
 類い希な政治家、後藤新平にますます魅力を感じ、畏敬の念を抱く。
(東北女子大学家政学部教授 船水周)

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秋の季語「季節感の贅沢」

2018/11/4 日曜日

 

 紅葉の美しい季節である。青森の紅葉は、赤も黄色も本当に美しい。「紅葉狩り」などと風流にお金をかけて出かけなくても、近所のお宅や通勤時、職場でも十分に楽しめるほどだ。
 青森で暮らしてから身に着けた秋の風物詩に「芋煮」がある。山形や宮城、福島など南東北では一般的な秋の行事で、河原に石のかまどを作って、その年取れた里芋を肉や野菜と煮て食べる。岩手では芋の子汁というらしい。地域によって一緒に入れるのは牛肉か豚肉か、味噌味か醤油味かなどの違いがあることで知られている。(秋田では、里芋よりも新米で作った「たんぽ」がメインになるらしい)。それを山形出身のお隣さんに教えてもらってから、我が家は必ず秋になれば「芋煮」を作る。日本全国の方言を地図にした『日本言語地図』では、芋といえば何芋を指すのかという調査があって、里芋を指す地域とじゃがいもを指す地域、さつまいもを指す地域があることが知られているが、東北は「芋」といえば里芋を指す。また、俳句でも実は、単なる「芋」は里芋を指す秋の季語で、また「じゃがいも」も「さつまいも」も秋の季語となっている。
 農村の秋をイメージすると誰もが納得できるだろう「案山子」や「稲架」「苅田」のほかに、空を飛ぶ「雁」や、「鶴来る」などという季語も秋のものだ。津軽では、10月には白鳥が北の国からやってくる。今年も寒気が南下するという天気予報と共に、白鳥の声を聴いた。白鳥が鳴く声を、津軽の子供なら真似できるのは、珍しくない。しかし、私は津軽に来るまで、白鳥が何と言って鳴くのかなど、全く持って知らなかった。
 旬の食べ物が季語になることはよくあり、長野県で育った私にとって当たり前のものは、実家の山で採れる松茸である(山の場所は跡取しか知らないので、弟だけが知っているのだが…)。
 反対に、確かに秋の季語と言われているけれど、腑に落ちない、なぜなのだろう? と思うものには、「かまきり」があった。しかし、津軽で暮らした今は、そうだろう! とわかるようになった。子供が小さい頃、かまきりやその餌となる虫を捕まえるために、いろいろな草原にでかけた。その折に、地域の方たちから、雪の多い年はかまきりの卵は高いところに産み付けられるという言い伝えを聞いた。これぞまさに雪国の生活の知恵とうなずいた。生活の中にこの虫の季節が織り込まれていることの裏付けなのだろう。
 日本は四季がはっきりしているとはいえ、こんなに身近に、これほど風雅な贅沢が、津軽では毎日の日常の中に様々、散りばめられているのだ。何と豊かな暮らしだろう。思い直す今日この頃である。
(弘前学院大学文学部教授 今村かほる)

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「良い遺伝子をオン!」じょっぱりが幸運をつかむ

2018/10/28 日曜日

 

 人とのめぐり合いが運命を変えることは枚挙にいとまがない。この弘前においても平凡な出会いから、後の自分の仕事に大きな功績を残した人がいる。その人は、弘前市の造り酒屋「六花酒造」の代表取締役北村裕志社長。居酒屋で親しくなったサラリーマンとの出会いからビッグな話をものにした。
 「六花酒造」の代表銘柄は日本酒「じょっぱり」。“大吟醸じょっぱり”は2018年全国新酒鑑評会にて金賞を獲得している。また世界最大規模の市販酒のコンクールIWCで純米大吟醸華想いが3度目の金賞を受賞した。
 “じょっぱり”は津軽の方言で頑固者や意地っ張りを意味する。が、筆者が弘前に赴任して4度お会いしたが、社長である北村氏からは頑固者と言うよりは、人の話をじっくり聞かれ、感情豊かなメリハリの利いた話しぶりからは、むしろさわやかな印象が感じられた。
 さて北村社長によると、それは新宿駅ガード下の居酒屋で大手出版社の役員との偶然な出会いであったという。何度か飲み交わすだけの間柄だったということであるが、その人が後に北村氏の社長就任を大いに喜び、“刎頚の友”への贈り物ということで、まさに雲の上の存在思われた現代詩人、相田みつを氏とのコラボの話を実現した。青天の霹靂とはこのことか、北村社長はつくづく人間関係の大切さ、素晴しさを痛感したという。
 筑波大学名誉教授、村上和雄氏によると、いい出会いをしたとき、自身に化学反応が起こり、良い遺伝子がオフからオンに変わり、今までにない自分へと変わる。そして人間の思いや心の働きというものに、想像以上に大きな影響与える、ということである。村上教授はいい遺伝子を活発化するためには、強い志や使命感をもつこと。喜び、笑い、感動、前向きな気持ちが大切という。
 40歳の時、東京営業担当を任せられた北村社長は以後10年間、販路拡張の強い使命に燃え、北海道を除く日本中を1300シーシーのライトバンに乗って走り回った。誰に対しても屈託ないさわやかな笑顔で接し、刎頚の友へは臆することなく感動を顕わにされていたに違いない。そしてきっと刎頚の友も親近感を抱きアイスブレイク(※氷が解けるように緊張を和らげ話しやすい雰囲気を作ること)状態となってしまった。その結果、途轍もない果報へと結びついたと思われる。
 近年、お米とリンゴ果汁のリキュールをリニューアルした。このリンゴ果汁と米麹との不思議なマッチングが、若者や観光客の嗜好を引き寄せているときく。さて、ここにまたどんな新しい出会いが生まれることだろうか、マッチングによって作られるゆえ、アイスでなくホットな出会いを期待したい。
(弘前医療福祉大学短期大学部教授 牛田泰正)

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モルディブの意地か「他国支配を拒絶し自立へ」

2018/10/21 日曜日

 

 比較的詳しく世界の歴史や地理を学ぶわが国においても、地球温暖化問題に関心を有する人や、マリンスポーツ好きの人などを除けば、モルディブ(共和国)のことを知っている人は多くはないだろう。スリランカ西方のインド洋に位置し、200ほどの島からなる人口40万人弱の島国だが、この島国の平均海抜は2・4メートルで、地球温暖化による海面上昇とサンゴ礁の死滅で、南太平洋上の島国と同様に、国土の水没が危惧されている。また、常夏で遠浅のエメラルドグリーンの海が広がる島々には、多くの国から若者たちが訪れている。
 主要産業は観光で、GDPも世界160位程度の小さな島国が、昨今、世界的に関心を集めることとなったのは、アジアと中東を結ぶインド洋上の戦略的位置にあるからにほかならない。だからこそ、中国は「一帯一路」政策上の拠点として進出を図ってきたのだ。私は、中国の「一帯一路」政策全てを否定するわけではない。巨大な貿易経済圏を構築し、各国が相互に利益を享受できるものであれば批判は当たらないだろう。しかし、この構想は、実際には中国の軍事的進出を伴うものであり、以前、スリランカの事例で述べたように、経済的・財政的支援に名を借りた「新植民地主義」的な政策であることは疑い得ない。モルディブも過去数年にわたり、中国の「支援」でインフラ整備を行ってきたが、それは中国の軍事拠点化されることと表裏一体の関係だった。同時に汚職がはびこるのも他国同様であった。
 こうした中、先月23日、大統領選挙が行われ、親中国派の現職大統領が敗れ、野党候補が当選した。野党陣営を徹底的に弾圧し、批判的なメディアの締め付けが強化される中での選挙であり、与党大統領派の勝利は確実と思われたが、モルディブ民衆は中国の露骨な進出=支配を拒絶したのである。中国にハンバントタ港の99カ年租借といった事実上の植民地支配を認めたスリランカでも新大統領の下で「脱中国」が叫ばれ、マレーシアでも中国支配を拒否するマハティール氏が首相になった。モルディブもこうした動きの一つとして考えられよう。
 しかし、こうした途上国が経済的発展を目指そうとする時、必要なのはやはり金=マネーである。例えば、南太平洋の島国の多くが中国に頼るしか「選択肢」はないというのも現実だろう。だからこそ、日本など、自由・民主主義、自立を価値観とする国こそがこれらの国々を支援していく必要があるのは言うまでもない。日本政府は最近、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマーのインド洋沿岸3国の港湾整備支援を決定した。ヒモ付きでない経済・財政支援こそがこれらの国々の民主主義の進展と自立を支援することとなり、その成果が期待される。
(青森大学名誉教授 末永洋一)

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