’22参院選あおもり 余波

 

2022/7/12 火曜日

 

 10日投開票の参院選で本県選挙区は立民現職が国政で本県唯一の野党議席を死守し、自民は衆参議席独占を逃した。選挙戦を振り返り、県政界への影響を探る。

 

 

 

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立民=上

 

緩やかな野党連携が田名部(左から3人目)を再選に導いた=10日午後8時10分ごろ、青森市

 「野党連携がうまくいった。(政策合意の)形をつくるよりも、匡代さんを勝たせなければという機運が高まった」
 立憲民主党県連の幹部は、参院選で立民現職の田名部匡代(53)の再選を後押ししたのは、推薦した社民党や連合青森、自主支援を決めた共産党や市民団体だったと強調した。
 6年前の参院選では、野党が全国32の1人区すべてで統一候補を擁立。本県も県内4野党の統一候補として田名部が出馬し、初当選を果たした。
 今回は昨秋の衆院選が尾を引き、立民と共産の間で連携協議が難航。両党本部の決定を待つ地方組織は方向性を示せずにいた。しかし、公示まで3週間を切るタイミングで状況が変化。共産が本県での候補者擁立を見送り、同党県委員会は田名部の自主支援を決定。社民も田名部の推薦を決めた。形作られたのは政策合意のない緩やかな連携だったが、自民候補に6万票余りの差をつけて勝利した。
 立民県連副代表の今博は「匡代さんだからこそ、今回の野党連携ができた。候補者次第で天下の自民にも勝てる」と、田名部本人の人柄や実績が野党の結集軸になったと分析。6年前の共闘態勢で田名部を支えた経験も各政党、団体で生きたと考察する。
 社民県連代表の今村修は「青森県選挙区を事実上の(自民との)1対1の構図に整える努力をした結果」と評価。「野党が一つになって力を発揮できるこうした関係を今後も続けていきたい」と、野党躍進に向けた連携継続を期待する。
 共産県委員会委員長の畑中孝之も今後の野党連携に前向きだ。「各党が力を付けつつ、今の小選挙区制度や参院選のような定数1の選挙の中で政治を変えるためには野党が共闘する必要がある」と述べ、「政党として個々の政策が違うのは当然だが、県民の暮らしを守る上で大きな一致点をつくり、共に戦うべき」と強調する。
 野党連携が円滑に進んだのは、田名部にとって最大の支援団体である連合青森が「非共産」の立場でありながら、「野党連携には関与しない」(会長の塩谷進)との姿勢を貫いたことも大きく影響した。
 今回の参院選では方向性の異なる政党、組織が田名部を中心に力を発揮した。しかし、立民県連の筆頭副代表で選対本部長を務めた田名部定男は今後を見据え「他の野党2党とどう関係を構築していくかは党の課題になる」とし、連合青森との関係についても「(エネルギー問題など)不一致課題について勇気をもって議論を進めないと将来がない」と危機感を示す。
 社会民主主義フォーラム青森事務次長の斉藤憲雄は「立民は結党から日が浅く、組織基盤がまだ弱い。そこがこれからの課題の一つになるだろう」と話す。連携により野党議席を死守したが、地方議員数は圧倒的な人数を擁する自民と比べると脆弱(ぜいじゃく)であることは言うまでもない。立民県連としての組織力強化が喫緊の課題となっている。

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自民=中

2022/7/13 水曜日

 

斉藤の落選を受け、頭を下げる江渡(左)。大敗を喫し、態勢の立て直しが急務となっている

 10日午後8時、田名部匡代の当選確実が報じられると、青森市の事務所に詰め掛けた自民党の国会議員、県議らの表情が一斉に曇った。重苦しい空気が流れる事務所のテレビには、喜びに沸く相手陣営の様子がしばらく流れ続け、笑顔でインタビューを受ける田名部の映像を県連幹部がじっと見詰めた。「完敗だ」。無言の議員たちの背中を見て県連関係者は率直な思いを口にした。
 自民県連が斉藤直飛人を党員党友投票で選んだのは今年2月。本来、県連は昨夏までには候補を定め、少なくとも1年かけて戦いに臨む算段だった。しかし、選定に向けた公募は、有力な候補になり得る人物がいなければ始められなかった。県連は当初、昨年亡くなった元参院議員の山崎力の次女で外ケ浜町長の山崎結子、知事の三村申吾らに出馬を打診したが、いずれも断られた。そこで県連会長の江渡聡徳が急きょ「白羽の矢」を立てたのが斉藤だった。
 2月の党員党友投票で多くの支持を得た斉藤は早速、ほぼ休むことなく県内全域であいさつ回りに奔走。同僚県議らが音頭を取り、津軽地域では小まめに集会も開いた。ただ、選挙まで半年もない短い期間で全県的な浸透は難しかった。
 斉藤を支えた自民組織にもほころびが見えた。大勝が「至上命題」だった弘前市を含む衆院本県3区。弘前市は4月の市長選で保守が分裂。同じく五所川原市も6月の市長選で保守が割れた。両市とも市長選で盛り上がった反動で、参院選はムードが低調になった感は拭えず、田名部に軍配が上がった。
 県連は参院選に向け、昨年から着々と準備を進めてはいた。昨秋の衆院選前後、かつて田名部を支援していた無所属県議の山田知(八戸市区)、木明和人(上北郡区)が自民入りし、過去に除名処分を受けた福士直治(東郡区)も自民に復帰させた。県議の人数を増やすことで党勢拡大を目指したが、“起爆剤”とはならなかった。
 候補全員が当選した衆院選に続いて連勝し、完全なる“王国”を築き上げようとした自民だが、失敗に終わった。「衆院選での大勝を受け、『自民だけに勝たせるわけにはいけない』という作用が県民に働いたのではないか」と県連幹事長の清水悦郎は推測する。
 江渡は「候補の知名度不足が一番大きい。目標としていた自民支持層の8割を固めることができなかった」と述べた上で、こう振り返る。「弘前、五所川原の市長選がなければ、津軽が思いっきり“燃えた”と思う。そうすれば雰囲気は違ったはず。だが、選挙に『たら、れば』はない。結果がすべて」
 来年には県議選や知事選が控える。自民王国内で「午後8時当確」を許した波紋は今後広がる可能性がある。すでに県連内部には幹部の責任を指摘する声も出ている。県連は19日に役員会を開き、参院選を検証する予定だ。(文中敬称略)

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県政界の行方=下・完

2022/7/14 木曜日

 

青森市の選挙事務所で当選した田名部の映像を見つめる自民県連幹部ら。参院選での大敗は今後の県政界に影響を及ぼしかねない

 10日投開票の参院選本県選挙区は、立憲民主党の田名部匡代が自民党候補に約6万票差で勝利し、野党の緩やかな連携が脅威であることを証明した。県議選、知事選といった統一地方選を来年に控え、立民は参院選大勝の勢いを、党勢拡大につなげたい考えだ。一方の自民は議席奪還に失敗し、次戦に課題を残した。統一地方選は顔ぶれや構図が異なるため、参院選の勝敗が及ぼす影響は限定的という見方もあるが、今後、与野党による勢力争い激化の“火種”となる可能性も秘める。
 立民県連代表代行の升田世喜男は「ここからが(立民の)反転攻勢だ」と語気を強める。「来年の統一地方選、そして年内の青森市議選で同志を増やすことは当然だ」と意気込み、今回の参院選を契機とした足元固めを狙う。
 県連代表の田名部は自身の参院選再選が党勢拡大の追い風になるとの見方には慎重。「党勢をどう伸ばすかは毎回の(選挙の)課題で、簡単ではない。党活動を地道にやるしかない」と述べ、統一地方選に向け「現職の当選はもとより、候補者擁立にすぐさま動きたい。県内でまだ少ない女性議員を増やすことにも取り組みたい」と体制づくりを急ぐ。
 統一地方選での立民躍進を期待する声がある一方、厳しい見方もある。
 県連関係者は「田名部再選は党勢の弾みにはなるが、票の行方は地方議員と国政では違う。市議は人に(票が)付き、県議・国会議員は政党に付く。統一地方選はそう簡単にはいかないのでは」と冷静に分析した。立民県連幹部の一人も「個人対個人の戦いなら候補者次第で勝てるが、政党対政党だと組織力で勝てない。野党連携ができないのも痛手だ」と語った。
 自民県連幹部の複数は、参院選の結果が統一地方選に及ぼす影響は「ない」と断言する。県連会長の江渡聡徳は県議選を念頭に「どの議員も後援会が必死になって(支持を)固めてくる。対抗して出ようとする新人は少ないはずだ」と推測する。筆頭副会長の阿部広悦は知事選を含め「参院選は田名部対自民の戦いだった。選挙が変われば状況は変わる」と強調した。
 だが、ある自民県議は「これだけ差がつけば野党は勢いづく。当然、候補者選びに走るのではないか」と危惧する。別の自民県議は「自民はそれほどの力を持っていないと野党は知った」とし、「党の力は当てにならないことがよく分かった。ふんどしを締め直さないと」と引き締めた。
 参院選では知名度の高い田名部が相手と分かっていながら、候補選定が遅れて短期決戦となり、組織が「上滑り」(自民県議)した格好だ。候補の選考委員会を取り仕切った滝沢求は「短期決戦となったが、われわれも斉藤(直飛人)も重々承知して、戦いを進めてきた。でも、届かなかったことを重く受け止めている」。県連は統一地方選に向け、早急な戦略の練り直しを迫られそうだ。(文中敬称略)

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