’22参院選あおもり 暮らしと政治

 

2022/6/28 火曜日

 

 7月10日投開票の参院選。新型コロナウイルスや物価高などで県民の暮らしに対する不安が高まっている。有権者は本県の現状や課題について、何を思っているのか。参院選の争点を踏まえながら取り上げる。

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物価高

 

買い求めやすい価格を売りにする弁当店「きむら屋」をはじめ、物価高を価格転嫁できずに苦慮している事業者は多い(写真はイメージです)

 「打撃が来ている。かといって料金は上げられない」。ここ最近の物価高に、弘前市土手町の弘前東栄ホテルの木村知紀専務取締役(52)はため息を漏らす。同社は本業である宿泊業に加えて、居酒屋「津軽郷土料理の店 あば」や弁当店「きむら屋」などを運営しており、原材料費などの高騰により幅広く影響を受けている。
 ロシアのウクライナ侵攻が始まってから「値上げ傾向が加速した感じはある。なんとなく世界の市場が変わってきたような気がする」と木村専務。食材の仕入れ値は1割弱ほど、弁当の包装資材の値段は従前から1個当たり50~60円も上がった。「リネンも軒並み上がっている」。シーツの洗濯料金は1枚につき20~30円上昇しているという。
 「(価格を)ここぞと上げればいいのか…。お客さんは安い物を求めているし、かといって原価が上がると、利益は少なくなっている」。特に弁当は消費者の手に取りやすい「リーズナブル」な価格を掲げるだけに、容易に値上げに踏み切れない。
 市内に適用された新型コロナウイルスの感染拡大に伴うまん延防止等重点措置が明けて以降、幸いなことにホテルには徐々に客足が戻ってきている。「飲食関係も会合が増えてきているし、テークアウトも好調を維持している」。しかし、「物価が高いとバランスが悪い。薄利になってしまう」と対応に苦慮する。
 同様の悩みを持つ企業は少なくない。
 民間信用調査会社「帝国データバンク」が6月3~6日にインターネット上で実施したアンケートで原材料価格や円安進行に伴うコストの上昇を、企業が十分転嫁できていない実態が浮き彫りになった。
 製品・サービス価格への反映はコスト上昇分の4割強にとどまり、「全く価格転嫁できていない」とする回答も約15%に上ったという。
 多くの市民に利用されている弘前市駅前町の虹のマート内で「海産食品ハマダ」「おかずやハマダ」などを営む「Do(ドゥ)」の浜田健三代表取締役(67)は、これ以上仕入れ値が上昇すれば「価格転嫁せざるを得ない」と打ち明ける。
 「うちは大手と違って価格抑制力がないので自然と(価格は)高くなる。高くなると消費量が落ち、売れなくなる」と渋い表情を浮かべる。
 政府はウクライナ危機などに伴う物価高に対応するため、「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げ、6月21日に初会合を開いた。物価高対策は7月10日投開票を迎える参院選の争点の一つだ。
 木村専務は「物が高くなるには必ず理由がある。高くなったからお金をくださいではなく、物にしても、燃料にしても安定して買えるよう、効果的な政策を打ち出してもらいたい」と政治に要望した。

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観光振興

2022/6/30 木曜日

 

コロナ禍で打撃を受けた観光業の再起に向け、観光施策の在り方が問われる(写真は弘前市の津軽藩ねぷた村)

 「新型コロナウイルスの感染者数が高止まりし、観光客はまだ旅行することに対してこわごわとした気持ちがあると思う。政府がいろいろと観光施策を打ち出してはいるが、地方まで効果が波及するのは当分先になるだろう」
 弘前市の民間観光施設「津軽藩ねぷた村」の中村元彦理事長は、団体ツアーに限定した海外からの観光客受け入れ再開や、7月中に全国展開される見込みの「県民割」といった国の観光施策の実効性について、コロナ下の旅行者心理を踏まえ「どの程度浸透するかは未知数」と不安をのぞかせる。
 修学旅行の受け入れを再開するなど、客足は緩やかに戻りつつある。それでも「まだコロナ前の6割ほど」と苦しい状況に変わりはなく、「観光地として自信を持って『おいでください』とは言いづらい状況が続く」と葛藤を口にする。
 主に県内周遊の旅行商品を企画・販売する青森市の旅行会社「また旅くらぶ」は、感染対策とコスト抑制の両立が目下の悩み。
 「移動中の密を避けるため、バス車内の座席間隔を確保しなければならない。乗客数が減ると1人当たりのバス代は当然高くなるが、常連客が多いため簡単に値上げに踏み切れない」と高木まゆみ代表取締役。観光庁の事業を活用したインバウンド(訪日外国人旅行者)向けの旅行商品造成に挑戦するなど、コロナ禍でも懸命に試行錯誤を重ねる中、「全般的に旅行代金がどうしても高くなることがネック。今は人件費などを削って代金を抑えているが…」と価格転嫁の難しさに直面している。
 「コロナ後に売り上げは9割落ちた。打撃を受けた観光業の一翼を担ってきたのに、われわれには飲食業や宿泊業に対するような手厚い補償制度はない」と憤るのは、弘前市の貸し切りバス業者「ビッグ・ウイング」の中嶋大己代表取締役。同じバス業者でも公共交通網を支える事業者には補助制度があるが、「そういった事業者はもともとが大きな会社で、うちのような中小企業は見過ごされている。コロナが明けても客足が完全に戻る保証はなく、体力を削られ続ける中で不安が募る」と窮状を明かす。
 弘前観光コンベンション協会の白戸大吾事務局長は、世界経済フォーラムが発表した旅行・観光ランキングで日本が首位になったことを挙げ、「インバウンドの足をいかに地方まで広げるかが課題になっていく」と指摘。感染症対策や物価高への行政支援を前提に、「各種の観光施策を使ってもらうためにも、国が『もう旅行をしても大丈夫ですよ』と国民へメッセージを伝えることが大事では」とした。

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子育て世代の声

2022/7/1 金曜日

 

子育て世帯をめぐる国の政策について、当事者からは厳しい声が聞かれる(写真は本文と直接関係ありません)

 人口減少対策が叫ばれる中、子どもを産み育てていく環境がどれだけ整っているか。子育て世代の30~40代に聞くと、現状は芳しくない。産後の不安を取り除くケアや育ち盛りの子を抱える世帯への支援に、不十分さを指摘する声は少なくない。現在の物価高は育児計画や世帯の将来設計にも影を落としており、親たちは「子どもたちに向いた政策」を求めている。
 弘前市の鹿内絵理さん(32)は昨年5月に第1子を出産。産後は妊娠高血圧症候群の経過不良や睡眠不足などに悩まされ、「宿泊型の産後ケアなど、子を産んでからの支援が欲しかった」と振り返る。今年5月から職場復帰したが「親を頼って何とか成り立っている。弘前は託児などで頼れる環境があるのでいいが、同じサービスを受けられない地域は大変だと思う。自分もこれ以上子どもが増えると無理」という。「仕事と育児を両立したい思いはあるが、そこへのサービスや支援は足りないように感じる」との不満もある。政治への期待については「市町村の中であれば期待できる部分はあるが、国までになると声を上げることで変わるような実感や希望はない」と話す。
 小学3年~中学3年の4人を育てる同市の竹内洋介さん(41)は、目下の物価高に頭を抱える。「子どもたちは食べ盛り。食材の品質を落としてやりくりしなければいけない状況」という。「賃金が良くならない中、生活に掛かるお金だけが増えている。政治で何とかしてほしい」としつつも「年金も当てにできず、国には期待できない。死ぬまで働ける仕事に就くような人生設計をしなければ」と展望する。子が望めば大学まで進学させたいが「今の状況が続くようなら厳しい」とうなだれる。「例えば多子世帯に対して光熱費の補助や所得税の減税を認めてもいいのでは。今の政治は子育て世帯に優しいと思えない」と口にする一方で「これまでの政権を選んできた自分たちの責任でもある」とも考えている。ウクライナ情勢を踏まえたこの国の安全保障や電力不足とエネルギー問題などが争点に挙げられる今回の参院選。「フェーズが変わったような印象。この選挙が一つの転換点になるのでは」と重要視している。
 同じく同市で1~9歳の5人を育てる女性(36)も現行の子育て支援に不満を持っている。「国は少子化対策をいろいろやろうとしているが、多子世帯が恩恵を受けていない」と指摘。今年10月からの児童手当見直しで所得制限が設けられることについても「世帯で分けるのではなく子ども一人ひとりを平等に見るべき。子どものためを考えた政策をやってほしい」と話す。「今の国のやり方は少子化を進めているのでは」とも。「政治には全然期待していない。とりあえず生活でいっぱいいっぱい」

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