五所川原市長選 検証佐々木市政

 

2022/6/7 火曜日

 

  五所川原市長選(12日告示、19日投開票)は現職佐々木孝昌氏(68)、新人川村拓也氏(55)が立候補を表明している。現市政を検証し課題を探る。

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金木と市浦=上

 

4月29日にグランドオープンした産直メロス(右)には斜陽館(左奥)への来訪者も足を運んでいる=5月上旬、五所川原市金木町

 平成時代中期、全国各地で行われた「平成の(大)合併」。現・五所川原市は2005年3月、五所川原市、金木町、市浦村の旧3市町村により発足した。それから20年近い年月が経過したが、3地区の一体感醸成と各地区の均衡した発展はいまだ途上にある。
 そもそも平成の合併は、人口減少や少子高齢化が加速する中で、地方自治体の行財政基盤の確立を図ろうと総務省が推進した。国側が円滑な合併を促そうと特例措置で誘導したこともあり、西北地域でも合併話が急ぎ足で進展。一時は金木町、市浦村、中里町、小泊村の4市町が「十三湖町」発足でまとまりかけたが、諸問題から土壇場で破談。最終的に金木町と市浦村が五所川原市との合併に向かった経緯がある。
 特例措置の代表的なものは、まちづくりや地域振興に利用できる有利な地方債・合併特例債。五所川原市では五所川原地区中心市街地整備事業、旧市役所老朽化を受けた新市役所建設などに活用されてきた印象も強く、金木、市浦両地区で「合併の恩恵とは」といった不満が鬱積(うっせき)した一因との指摘もある。
 この4月、金木地区の旧マディニーが産直メロスとして新装オープンした。地場の新鮮食材や工芸品、土産物が購入できて来客の好評を得ているが、どこか冷めた視線の住民もいる。市民団体代表の角田周さん(69)は「結局、観光客相手にやっているところがある」と指摘し「一体感どころか若い人が金木から出ていき、五所川原に吸われる一方。この4年間もそこは変わらない」と嘆いた。
 市浦地区では現在、23年度完成へ浴室とトレーニング室を備えた健康増進施設の建設計画が進行中。旧市浦村時代に建設された海洋療法体験施設の改修を断念し、善後策として浮上した実質的な後継施設。身の丈に合った規模で住民の需要に応える道を選んだ。市長選に立候補を予定している現新2氏は、それぞれ市浦の水産振興も訴えている。
 十三漁業協同組合員の60代シジミ漁師は「五所川原から距離もあり旧村長選のようには盛り上がらないが、水産関係の公約を比べて良い方に入れるつもり」と話した。

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行財政運営=中

2022/6/8 水曜日

 

雪に埋もれた五所川原市。2021年度は例年より多額の除排雪経費を要した=1月下旬、同市蓮沼

 2005年の市町村合併以降、健全な行財政運営に腐心し続けてきた五所川原市。平山誠敏前市長(06~18年)の任期中には、予算不足で財源の裏付けのない「カラ財源」に陥り、事務事業の見直しや人件費カットで乗り切った時期もあった。
 22年度一般会計当初予算を近隣市と比較すると、同市の自主財源比率は24・7%で、県都青森市の34・9%や中南地域の中心市・弘前市の34・4%を下回り、市税収入の構成比も16・2%と、青森市の27・5%、弘前市の24・9%に及ばない。それでいて西北地域の中心自治体であり、医療機能再編などエリア全体の問題に主導的に対処せざるを得ない立場にある。
 佐々木孝昌市長は前回市長選で思い切った行財政改革の断行を訴えた通り、使命を終えたと判断した事業を廃止する一方で、子育て支援策などを重視する「スクラップ・アンド・ビルド」を徹底。市債総残高もピークの約554億円(17年度)から50億円近く減らした。ただ新市役所庁舎建設などを終えたタイミングから「最近は大型建設事業がないから当然」(市浦地区の58歳漁業男性)との声も聞かれる。
 経営者出身らしい手腕を発揮したのは、意外な資金源の発掘。20年には、つがる西北五広域連合の構成6市町と県による「ふるさと市町村圏基金」のメリットが薄れたことに着目。これを廃止したことで市に返還された約2億5500万円は、財政調整基金(財調)に積み立てた。
 大手ポータルサイトの活用などでふるさと納税も成功し、19年度に県内で首位に立った後も堅調に増加を続けている。20年にはエルム付近の市有地を約2億2000万円で民間に売却し、売却益を公共施設等整備基金に組み入れた。一時期停滞していた漆川工業団地の分譲も完了した。
 財調の年度末残高は18年度の5億8145万9755円から21年度は11億6275万4781円となり、この3年でほぼ倍増した。21年度は豪雪に対応するため取り崩しを余儀なくされたため、20年度比で微増してはいるが、適正規模とされる17億円には届かない。
 こうしたやり繰りは、財政面で一定程度余裕が出始める25年度を見通したものではあるが、人口5万都市の限界感も漂う。市財政課担当者は「結局、緊張感のある行財政運営の継続に尽きる」とした。

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福祉と産業=下・完

2022/6/9 木曜日

 

現市長の就任から4年、各政策分野で試行錯誤が続く(写真は五所川原市役所)

 任期1期目の佐々木孝昌市長は、県への率直な意見や独自政策で注目を集めたが賛否が分かれる判断もあった。分野別に振り返る。
 【福祉】前回市長選で小中学校の学校給食無償化を公約。財源不足で2019年度は一部補助とし20年度に実現した。小中学生医療費も無償化。期間限定で子宝祝金の第1、2子への拡充にも取り組むが、人口減少を阻むには至らない。
 今回の市長選では新人川村拓也氏も子育て支援を重視。幼児教育・保育料の完全無償化を最重点公約に掲げ、給食無償化の手続き簡素化もうたっている。「ばらまき合戦は困る」(市OB)との不安はあるが、12歳を筆頭に3児を育てる母親(39)は「前より子育て環境は良い。充実に向けた論戦も歓迎」と話す。
 【農業】スマート農業の環境整備、施設園芸の参入応援などを講じたが市長の任期後半に始まった取り組みが多く、事業の性質上、すぐ成果が出ないものもある。わら焼き防止対策では21年度から稲わらロール活用を試験中。「何年かけてもわら焼きをなくす」との一戸治孝副市長の思いがにじむが、同年度分で流通したのは製作数の半数で試行錯誤は続く。「すき込み支援に注力すべき」(ベテラン農家)との声もある。
 約137ヘクタールを経営する豊心ファームの境谷一智代表取締役(47)は「スマート農業の環境整備や米価下落対策はいいが、区画整備は途上だし基幹産業と叫ぶ割に農家の要望に反応が薄い。有利な支援が財政難で消えたまま」と指摘。「10年先を見据え、市の農業をどのようなカラーにするか示してほしい」と注文した。
 【商工・観光】独自の新型コロナウイルス禍対策で21年度、事業者向けの感染症対策設備導入支援補助金を交付。利用店に安心して使える店の目安・認証ステッカーを配り一定の成果を残したが、類似の県事業と競合した可能性があり、1700件分の予算に対し利用は587件だった。
 今夏3年ぶりに開かれる五所川原立佞武多。大型立佞武多は昨夏完成した「暫(しばらく)」を新作とみなして扱う。コロナ禍で制作ペースが変容し、制作経験のある職員も減り「市の新作は中型だけ同然。今後の祭りはどうなるのか」と疑義を抱く運行団体関係者も。ただし「コロナ下で、祭りに過度の予算を費やすべきでないのかも」(五所川原地区の60代主婦)と話す市民もいる。

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