’22弘前市長選 市民の選択

 

2022/4/12 火曜日

 

  任期満了に伴う弘前市長選は4氏による激戦を制して現職の桜田氏が再選を果たした。激戦となった選挙戦を振り返り、今後の課題を検証する。

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再選を果たした桜田氏=上

 

選挙戦最終日の最後の訴えに臨む桜田氏(右)の隣で、マイクを握り支持を呼び掛ける木村氏=9日、市中央広場

 「弘前市発展のため、健康都市の実現を目指す。今暮らしている、ここで暮らせる弘前をつくる」
 弘前市長選の投開票から一夜明けた11日午前8時ごろ、再選を果たした桜田宏氏は「まずは市民にお礼をしたい。原点に返る」との思いで、1期目の出馬を決めた後に初めてつじ立ちした土手町の市まちなか情報センター前で、2期目への決意を語った。
 今回の選挙戦は「市政刷新」を掲げた副市長経験者2氏と元立憲民主党県連代表が名乗りを上げ、16年ぶりの4氏による激戦だった。市民の選択は市政の「継続」で、桜田氏に軍配が上がったが、選挙後の他3陣営からは「市民からの現職への批判は多かった」「手応えを感じていた」との声が漏れた。実際に3氏の得票合計4万6286票は、桜田氏の得票2万8676票を上回った。
 桜田氏は「投票いただいた方の期待に応え、別な方に投票された方にもご理解いただけるような市政運営をしていきたい。丁寧な説明に努めていく」と今回の結果を謙虚に受け止め、2期目に臨む姿勢を示した。
 桜田氏は市職員を経て4年前の前回選で新中核病院の早期整備などを掲げ、当時の現職葛西憲之氏に大差をつけて初当選。この4年間では、新中核病院「弘前総合医療センター」が開業にこぎ着けたことや、家庭系ごみ指定袋制度導入を公約通り中止しごみの減量化・資源化など公約を守り、成果を上げた。
 選挙戦では昨年11月の政経セミナーでいち早く名乗りを上げ、支援する市民や市役所OBらが陣営を固めた。市職員関係者が3人出馬する状況に市役所関係者の支持動向は分かれたが、全水道弘前水道労働組合が推薦を決定。実績を評価する形で市医師連盟も応援した。
 ただ陣営が「厳しい選挙戦だった」と語るように、コロナ禍で集会などを開けないこともあり桜田氏は「誠実に取り組んでいる部分を理解されず批判を受けた点が非常に苦しかった」と選挙戦を振り返る。
 選挙戦に臨む4氏の顔触れがそろった頃、陣営は「足を止めれば負ける」と支持固めに汗を流し、桜田氏も公務の合間を縫って企業や支持者を回り「他の候補を意識せずやるべきこと、実現できることをお話しした」と直接対話して実績や考え方の浸透を図った。
 市議会では与党会派櫻鳴会を中心に9人が後押し。木村次郎衆院議員は3月の総決起大会で「政治家の矜持(きょうじ)として、(自身の)次の選挙よりも次の世代を考えて行動する政治家でありたい」と語り、全面的な支持を表明。木村派の重鎮阿部広悦県議(南郡区選出)も第一声に駆け付け「木村次郎の戦いでもある」と声を張り上げ、近隣首長も桜田氏の実績を強調して回った。
 ある市議は「木村代議士の全面支援表明で後押しの風が吹いた」と語り、桜田氏勝利への追い風となったことを確信する。
 今回選では、市議会内の支援動向も割れた。4氏にはそれぞれ支持を明確にする市議がおり、今後の市議会運営への影響が懸念される。桜田氏以外の3候補を応援した市議数は桜田氏の支援人数を上回り、市議の一人は「今後の議会運営への影響は少なからずある」と眉をひそめる。
 保守系が乱立した選挙とあって、自民党市議9人の支持は蛯名氏6人、桜田氏2人、山本氏1人に割れた。今夏の参院選が迫り、支援する市議団の結成などの態勢構築を控える中、不安材料を残した形だ。
 市議会与党会派の一人は「なるべくしこりは残したくない」とし、桜田氏は「(1期目は)説明が足りなかった部分もあり反省もある。市民のため市発展のため議会の調整も丁寧にやっていきたい」との考えを強調する。
 「市民生活を第一に」との政治理念の下、「健康都市弘前の実現」を掲げる桜田氏のリーダーとしての真価が問われる2期目がスタートした。
 当選から一夜明けた11日、街頭演説で桜田氏は「粉骨砕身の覚悟で臨む」と声を張り上げた。

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6割強の“市政刷新”票=中

2022/4/13 水曜日

 

敗戦の弁を述べる(右から)山本、蛯名、山内の各氏=10日

 「うそだ」「まだ横一線では。早まったのでは」
 弘前市長選の開票が始まってから約30分が経過した10日午後9時45分ごろ、ラジオで現職桜田宏氏の当確が伝えられると、山本昇氏陣営の事務所は重苦しい雰囲気に包まれた。
 選挙戦最終日のヒロロ前の街頭演説は聴衆約300人が駆けつけ、山本氏は「手応えがあった」と自信をのぞかせていた。後援会顧問を務めた前市長の葛西憲之氏は「最後の3日間は特に勢いが出て、仕事をしてくれという市民の思い、仕事をさせてくれという本人の思いがシンクロした」と選挙戦を振り返った。
 山本陣営は政治家や政党の手厚い支援を受ける他候補とは違い、政策に共感したという民間のボランティアが中心。選挙事務所内は若い世代や女性の姿も目立ち、草の根活動で“同志”を増やしていった。
 敗因について複数の陣営幹部は、現職批判票が割れたことを指摘し「対立候補を結集できなかったことが大きい」と口をそろえる一方で、陣営は「われわれ素人でも選挙ができるし善戦できる。一つの可能性を示せたと思いたい」とした。
 「真面目なだけでは選挙に勝てないのか」。蛯名正樹氏陣営の盛秀人後援会長は結果をかみしめた。
 4候補の中で、最も多い11人の市議が支援。行政手腕はもちろんのこと、市議としての実績を評価し、支援に回った市議は多い。
 一方で、選挙戦終盤になっても、市民からは「副市長経験者が2人。共に行政手腕にたけているという。誰に投票しようか」との声も聞かれた。出馬表明の遅れが響き、浸透し切れなかった。
 開票結果を受け蛯名氏は「市民の風を感じた面もあったが投票行動に結び付かなかった」とし、陣営も「真面目で実直、誠実。蛯名さんの良さが伝え切れなかった」と歯がゆさを語った。
 葛西前市長の下で副市長を務めた山本氏と蛯名氏。ふたを開ければ、山本氏の得票は1万9739票、蛯名氏は1万5004票。2氏の合計は桜田氏の得票を上回り、関係者は「市政刷新に賛同する保守支持層を分け合ってしまった。共倒れ」「木村次郎代議士が付いている現職に勝つためには一本化が必要か」と嘆く。ただ、ある議員は「市長はチーム戦にたけた人が向いている」と話し、今回の選挙戦での一本化の難しさを指摘した。
 「知名度抜群で街頭演説もうまい。さすがだね」。山内崇氏の街頭演説を聴いていた農業男性はこうつぶやいた。
 立憲民主党と共産党の支援が見込まれた弁護士の小田切達氏が立候補を検討したものの健康上の理由で断念。相談を受けていた山内氏は急きょその意思を引き継いで出馬に踏み切った。
 だが、出馬表明したのは今年2月に入ってから。陣営は「知名度、(山内氏の)基礎票もあり選挙には慣れているが時間がなかった」と漏らし、「『市民派』という点で他候補と支持がかぶった面もあるのでは」と分析する。
 10日の敗戦の弁で山内氏は「選挙は終わったが、この地域の現状が改善されたわけではない」と地域の現状を危惧した。
 立民県連をつくり、組織、人を育ててきた。市長選出馬に当たり、同党を離党した山内氏だが、関係者は「人間関係が崩れることはない。先のことは分からないが、今後も助言を仰ぎたい」と話した。
 選挙期間中、各陣営は「盛り上がっていない」「静かな選挙だ」と口にしており、今回は16年ぶりの4氏が争う激戦となったにもかかわらず、投票率は53・33%で横ばい。山本氏支持者の一人は「敗因は投票率」とし、蛯名氏を支持する議員も「選挙戦に対する市民の反応はいま一つだった」と話す。
 5割近くの有権者が棄権し、6割強が市政刷新を掲げる候補者に票を投じた。市民の市政への関心をどう高め、批判票をどうくみ取るかが、2期目の桜田市政に課せられた。

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桜田市政2期目の課題=下・完

2022/4/14 木曜日

 

健康づくりのまちなか拠点へと生まれ変わる旧弘前市立病院

 「これからの4年間、市長として市民の幸せのため、弘前市発展のため、全身全霊最善を尽くしたい」
 当選から一夜明けた11日、当選証書を受け取った桜田宏氏は、公約に掲げた「健康都市弘前の実現」に向けた決意を口にした。
 市長選告示直前の本紙世論調査で、新市長に優先してほしい政策は「医療・福祉の充実」が52・3%で最多。「子育て・教育環境の充実」「中心市街地活性化」なども上位に並んだ。
 街頭演説で桜田氏は「すべての子どもに公平で良質な医療を提供する」と力を込めた。家計を圧迫する突発的な子ども医療費を、所得制限なしで高校生まで無償化する方針は、多くの市民に支持された。
 この方針について市幹部の一人は「1億6000万~2億2000万円があれば可能だ」と試算。「市民が望む施策であればすぐに動きだすだろう。国や県の制度が整い、市も一緒に進めていくのが理想だが、まず市独自の施策を行いながら、国や県の制度整備を要望していく形になるだろう」とみる。
 公約の目玉の一つが、市立病院と旧第一大成小学校跡地に保健センターの機能や市医師会看護学校などを集約して市民の健康づくりを推進する「健康づくりまちなか拠点整備」。40億~70億円程度の予算を見込む大型事業となる。土手町やJR弘前駅などに近い好立地を生かし、学生や健診を受けた市民らが中心市街地を往来するといった新たな人流を生み出す施設としたい考えだ。
 医療関係者は「健康というテーマは若い人にはインパクトが小さいが、街も協力することで学生や健診を受けた人が『健康ランチ』を食べに土手町に行くという流れをつくることも可能」とみており、中心市街地の商業者も「人の流れが変われば商売も変わる。健康を意識した商売を考えようか」と期待する。
 ただ、実現には不安要素もある。
 1期目では、市民会館の指定管理者を更新するに当たり、地元業者グループから市外業者主体のグループに変更する議案や、議会選出監査委員を選任する人事案が否決され、逆に市議有志が提出した「議会選出の監査委員を置かない市監査委員条例一部改正案」が可決されるなど、議会のパワーバランスが「反市長」に傾きつつある不安定な状態が続いた。
 選挙後、現職以外の候補を応援した市議は「しこりを残そうとは思わない。地方議会に与党も野党もない。市民のために動くだけ」とノーサイドの考えを示しながらも、1期目については、議会に対する「説明不足」と批判。別の候補を支援した市議も「市民が選んだということはしっかり受け止める」と前置きした上で「例えば健康づくりのまちなか拠点は大型事業。市民や議会への説明や経過報告はすべき」と注文を付けた。
 清野一栄議長は今市長選を「市発展を思いそれぞれ行動した結果」と評価しつつ「これまでわだかまりを持ってきたつもりはないが相談、報告のスタンスをこれまでよりも多くし、しっかりとした議会対策を望む」と求めた。
 再選は「健康都市弘前」の公約に対する市民の期待感の表れとみていい。一方で、市議の過半数が現職以外の候補を推したのも事実で、市議会からは「影響は少なからずある」との声も聞こえる。1期目で指摘された説明不足や情報発信不足を改めなければ、「少数与党」の厳しい議会対応を強いられることになる。
 選挙戦では立候補した4候補全員が、新型コロナウイルス対策を喫緊の課題に挙げた。桜田氏を応援した医療関係者の一人は「コロナ禍の中で、地域経済の回復と感染対策は第一。並行して公約実現に向けて動く必要があり、課題は山積しているはず」と指摘する。
 「市民のため、市民とともに歩む、市民第一の精神」でまい進を誓う桜田氏。真価が問われるのはこれからだ。

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