’22弘前市長選 検証桜田市政

 

2022/3/16 水曜日

 

 任期満了に伴う弘前市長選の告示が4月3日に迫った。1期4年の桜田市政を検証する。

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新中核病院=1

 

新中核病院の開院に伴い解体される弘前病院の診療棟(写真上)と病院再編に伴い63年の歴史に幕を下ろす弘前市立病院

 桜田宏市長が掲げる市政3本柱「くらし」「いのち」「ひと」の中で「いのち」を大切にする施策の一つに位置付けられる新中核病院の整備事業。4年前の市長選で桜田氏は、県の提案を踏まえ、弘前市立病院と国立病院機構弘前病院を統合し、機構が運営を行う再編案に取り組む考えを表明。県の再編案は津軽地域保健医療圏の2次救急医療体制の疲弊を解消し、医師不足の中でも効率良く地域医療を提供するという先を見据えた構想であり、再編案を推す姿勢は、結果として市長選の勝敗を分ける要因の一つにもなった。
 2018年4月の桜田市長就任後、事業の動きはせきを切ったように加速。約半年後の10月には県、国立病院機構、弘前大学、市との4者で基本協定を締結し、整備計画で掲げた「22年早期の開設」に向けて順調に進んだ。関係者は「将来の圏域の地域医療を考えると(新病院への)統合は最良の選択」と評価する。
 「弘前総合医療センター(仮称)」として生まれ変わる新中核病院は4月1日に開院する。救急科をはじめとした4診療科を新たに加えた計25診療科を設け、病床数442床を備える。当初計画の総整備費は約126億円。このうち建物整備に県が30億円、市が20億円を負担し、市は運営費として年2億5000万円を22年度から40年間にわたり補助していく。
 新中核病院は圏域の地域医療を担う中心的役割として期待される一方、課題も浮かぶ。2次救急医療の強化を図るために新設された救急科の常勤医は、開院時点で確保できているのが1人。もともと地域には救急医が少なく、新中核病院の院長となる大熊洋揮弘前病院長は「増員していきたい。今後地域で育てていくことが課題」との認識を持つ。
 ある医療関係者は「新病院の規模に対して救急医1人体制は少ないと考えるが、これまでの体制に比べると救急車の受け入れがスムーズになり、各診療科の医師の業務削減になることは確か」と期待を示す。平日日中の2次救急医療に関しては「新病院が軌道に乗れば2次救急は医療センターと健生病院が、3次救急は大学病院と、機能的なすみ分けが可能になるので期待は大きい」とも話す。
 市医師会の澤田美彦会長は開業医の立場から「2病院が分かれているよりも、医療センターとして1カ所に集約された方が救急患者の対応をお願いする時に素早く判断できる。高度な医療を提供できるし、患者さんにとってもいいはず」と医療の集約がかかりつけ医の判断や患者の治療に好影響をもたらすと説く。
 常勤医が少ない診療科を支える力として、研修医にも期待が掛かる。開院初年度となる22年度の臨床研修先として新中核病院を第1希望に選んだ研修医は募集定員を満たした。2年目以降も継続して多くの研修医を呼び込める病院となり、医師となった暁には、そのまま地域に残ってもらえるように努めることも課題と言える。
 新中核病院誕生に伴い、市立病院は63年の歴史に幕を下ろす。前身である市国民健康保険津軽病院時代から総合病院として市民に寄り添ってきた存在がなくなることに不安の声も上がる中で、代わって新中核病院が圏域住民の命を守る地域医療の拠点として浸透していくことが求められる。市関係者は「自分たちの病院だと思ってもらうことが大事」と強調する。

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農業=2

2022/3/17 木曜日

 

リンゴ生産に関わるアルバイトで葉取り作業を行う市職員=2021年10月、弘前市折笠

 昨年発表された2019年の市町村別農業産出額が約460億円に上り、6年連続で東北1位を堅持した弘前市。このうち、同じく6年連続で全国1位となった果実の産出額は394億円。主要果実としてそれをけん引するリンゴは日本一の生産量を誇り、20、21年の販売環境も他県産や競合果実の不作などから高値基調を維持している。
 農政に詳しい弘前大学農学生命科学部の成田拓未准教授は、好調なリンゴ販売における市の貢献度について「市内には独自のノウハウを持つ農協や商系業者が多く、市がそこに介入するのは難しい部分がある」と説明し、農政の課題は別のところにあると強調する。「今の産地を20年後も維持できるのか。少子高齢化が進む中、新規就農者の確保・育成や省力化・軽労化をいかに支援するかが問われている」と指摘する。
 20年の農林センサスによると、市内の農家数は10年の6538戸から20年は4687戸と約3割も減少。20年までの10年間で平均年齢は約2歳上昇して63・8歳と高齢化が進む一方、市のアンケートでは約7割の農家が後継者不足に悩んでいる。成田准教授は「市はこうした現実を直視した上でさまざまな事業で試行錯誤しており、この4年間で官民の垣根を越えた交流・協働の場が増えた印象がある」との見方を示す。
 21年10月に開始した市職員兼業によるリンゴ生産アルバイトは、全国初の試みだったことから対外的に注目を集めた。職員32人が農家24人の下で葉取りや収穫などに従事。この成果は、つがる弘前農協や市内企業で兼業制度の導入を検討する動きにつながったほか、熊本県あさぎり町は市の事例を参考に農業の兼業制度を採用した。
 新規就農者向けの事業では、市が県や管内の農協など10団体を巻き込んで協議会を組織し、非農家出身の就農希望者を総合的にサポートする「農業里親研修事業」を20年度に創設。21年に研修生第1号が誕生するなど、成果が表れ始めている。
 障害者の社会参画と農業の働き手確保の両立を目指す「農福連携」には19年度から本腰を入れる。黒星病対策の一つである耕種的防除や、近年減少傾向にある有袋栽培での試行を重ね、今年度中に障害者の適性に合った農作業の絞り込みが終了。22年度はマニュアル化を図り、農福連携に取り組む農家を補助する事業に役立てる計画だ。
 「一見目立たない事業の中にも、農家のニーズに応えようとする姿勢が垣間見える」と話すのは、ある生産者団体の男性職員。一例として挙げるのが、桜田宏市長が18年4月の就任後、初の補正予算で着手した、畑周辺の作業道のコンクリート化を補助する農作業省力化・効率化対策事業。
 実際この事業には想定を上回る数の応募があり、需要に応える形で内容を拡充しながら今年度まで継続している。男性職員は「農家から『リンゴに力を入れてもらっている』という声を聞くことも多い。農業に関する事業の数や予算はこの4年で増えたように映る」と市農政の印象を語る。
 これらの対策について、成田准教授は「他の果樹産地に比べ、着手するタイミングはやや遅かった」と問題点を指摘する一方、その背景について「労働力の減り方が他地域より比較的緩やかなことで出遅れた部分はある」と補足する。
 しかし、農林センサスの各種データは生産基盤が確実に弱体化していく現状を伝えており、事業の効果は表れていると言えるのか。「数字だけを見れば惨たんたる状況に思えるが、今やっている事業にはそれぞれ意味がある。今後はこれらの成果やノウハウを広く共有する場をいかにつくるかが次の課題となる」と総括した。

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