’22弘前市長選 対決の構図

 

2022/3/10 木曜日

 

 任期満了に伴い4月3日告示、10日投開票の日程で行われる弘前市長選。選挙戦まで残り1カ月を切り、現職に新人3人が挑む構図が見えてきた。同市長選で4氏が争うのは2006年以来となる。支持層が複雑に絡み合い混戦が予想される中、各陣営の動きを追う。

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桜田宏氏=1

 

政経セミナーに集まった支持者とあいさつを交わす桜田氏(左)=2021年11月28日、弘前市のフォルトーナ

 「4年間で築き上げてきた市民との協力、信頼関係を基盤に、同じ目標を持って心を一つにするという『一味同心』により、お互いの呼吸と歩幅を合わせ、常に並走してまいりたい」
 迫る弘前市長選を前に、市議会定例会初日の2月18日、再選を目指す現職桜田宏氏(62)は施政方針演説で決意をにじませた。
 桜田氏は昨年11月28日、後援会主催の政経セミナーの席上、市民を前に初めて出馬を明言。その後、昨年12月の市議会定例会では「(次期市長も)桜田市長しかいない」とする与党議員の要請に応じる形でかじ取りの継続に強い意欲を見せた。
 市議会では昨年5月、新会派「櫻鳴会」が発足。改選前から連携関係にあった会派「弘新会」「滄洸会」と無所属1人が合流し、当時の最大会派と並ぶ議員7人が一つの会派を結成した。市長選まで1年を切るタイミングで、与党的立場を取る議員が桜田市長を支える姿勢をより明確化させた格好だ。
 桜田氏は昨年10月の衆院選で、自民党県連3区支部長の木村次郎氏の応援マイクを要所で握り、関係をより緊密にした。翌月の桜田氏のセミナーでは、来賓で自民党県連3区支部本部長の阿部広悦県議が「選挙で借りた恩は選挙でお返しする」と声を張り上げ、津軽地域で強い影響力を持つ木村派との良好な関係を印象付けた。
 年が明けて2月には、開設準備が進む桜田氏の後援会事務所に、桜田陣営のみに贈った木村氏による必勝祈願のため書きが飾られ、桜田陣営の選対本部長には木村次郎後援会連合会会長の澤田美彦市医師会会長が就任。事務所には、桜田氏が心血を注いで進めてきた広域連携の成果であるかのように、近隣首長のため書きが続々と届いた。
 3人が出馬した2018年4月の前回選、新人の桜田氏は4万4603票を獲得。3選を目指した当時の現職葛西憲之氏を大差で破り初当選を果たした。
 今回は、現職の桜田氏に市政刷新を掲げる新人3人が挑む構図が濃厚。唯一50代で副市長の経験もある山本昇氏(51)、市職員として農林、土木分野といった現場を踏み同じく副市長経験のある蛯名正樹氏(67)、直前まで立憲民主党県連共同代表を務め非自民票の受け皿を狙う山内崇氏(66)が名乗りを上げた。4氏の支持基盤は複雑に絡み合い、陣営は「今回は状況が違う」と危機感をにじませる。
 これまでに市上水道部職員が加入する全水道弘前水道労働組合が桜田氏の推薦を決定したほか、市医師連盟は現職の応援を決めている。一方で、市役所内は、市職員関係者が3人出馬する状況に支持動向は割れる。前回桜田氏を支持した観光関係者や実績を評価する医療関係者からは「支援したい」との声が聞かれるものの、各業界は今回選が4氏の混戦状態にあることで、自主投票を決める団体もあり、陣営は「厳しい選挙。足を止めれば負ける」と支持固めに汗を流す。
 桜田市政は4年間で、家庭系ごみ指定袋制度導入を公約通り中止し、ごみの減量化・資源化で成果を上げた。最重点の新中核病院は開院が4月に迫り、同病院を取り巻く周辺道路やバス路線などの整備も着実に進む。任期後半は新型コロナウイルス対策として、医療機関の多い同市の強みを生かし、市内医療機関で個別接種できる体制を構築。学校教育環境も普通教室冷房設置率は100%で、トイレ洋式便器設置率も県内10市でトップの実績だ。
 選対本部長の澤田氏は、桜田氏の性格を「剛毅木訥(ごうきぼくとつ)」と評し、この4年間について「アピールが下手」と苦笑いしながらも「いい取り組みをしてきた」と言い切る。
 1期目に築いた基盤を生かし、2期目の公約には「健康都市弘前の実現」を掲げる桜田氏。コロナ禍の状況を見極めながら、公務の合間を縫って懸命に支持固めに奔走する。

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山本昇氏=2

2022/3/11 金曜日

 

事務所開きで必勝を期す山本氏(右から2人目)=2022年2月26日、弘前市の後援会事務所

 「弘前市は今、元気がない。市民の意見を聞き、力を結集して新しい弘前、新しい時代に向かって進みたい」
 昨年12月10日に現職の対抗馬としていち早く名乗りを上げたNPO法人代表で前副市長の山本昇氏(51)は翌11日、街頭で早速マイクを握り、声を張り上げた。「年齢やしがらみにとらわれない新しい発想で時代を切り開くことが必要」と市政刷新を強く訴えた。
 「閉塞(へいそく)感が続き、新型コロナウイルス対策をはじめ市民に施策が届いていないと感じていた。何とかしたいと思った」と出馬を決意した理由を語る。
 県庁職員を経て、葛西憲之前市長時代に市職員となり、2016年から約2年にわたって副市長を務め葛西市政を支えてきた。前回市長選で葛西氏が新人の桜田宏氏に敗れた後は副市長を辞し、NPO法人など民間の立場から障害者とその家族らの支援に携わってきた。立候補を表明している4氏の中で唯一の50代、5児の父でもある。陣営関係者は「豊富な行政経験と若さが強み」と強調する。
 選挙初挑戦となるだけに、出馬を表明して以降、「市民の意見を聞きたい」と市政の課題について市民と語り合う「対話会」を開催してきた。つじ立ちや少人数での対話会を連日のように行う。対話会はリモートで実施することもあるなどコロナ対策を講じつつ、若者・女性層への浸透を目指しインターネット交流サイト(SNS)や動画も積極的に活用する。
 今年に入り候補者が4人となる混戦模様が報じられるも「挑戦者として市民の声を丁寧に聞いていきたい」とスタイルは変えず、約3カ月の活動を通じて「現状に対する不満と将来への不安を感じる声が大きくなっている」と地域の感触を確かめながら地道な活動で支持拡大を図る。
 掲げた「新しい弘前」のビジョンは(1)若い力を伸ばし活かす弘前(2)女性がキラキラ輝く弘前(3)多世代が活躍する弘前-の3点。緊急対策として「市民が求めるコロナ対策の徹底」「コロナで落ち込んだ地域経済の復興」「誰一人置き去りにしない社会福祉の充実」を挙げ、政策では子どもや福祉などの施策を充実させて独自色を出す構えだ。
 山本氏を支持する市OBは「行政の経験が長く、副市長時代にはさまざまな施策立案に関わってきた。安定した行政手腕がある」と実行力に期待する。
 山本氏の後援会顧問には、副市長時代に二人三脚で取り組んできた葛西氏が就任。2月26日の事務所開きでは葛西氏が「閉塞感漂う時代を切り開いていくためには若い突破力が必要。(山本氏は)全国できらきら光る若い知事、市長に肩を並べて弘前を導くと確信する。何としても勝ち抜こう」と拳を突き上げ、会場に集結した弘前高校時代の同級生や、若手経営者らが必勝を期した。
 過去の市長選投票率は、2006年55・57%、10年58・06%、14年38・35%、18年53・40%。4人による争いが濃厚な今回、複数の関係者が「4人は拮抗(きっこう)しており、当選ラインは3万票前後か」との見方を示す中、陣営は「投票率は55~58%を想定しているが(浮動票獲得のためにも)市長選への関心の高まりを期待したい。投票率アップが最も重要だ」と強調。「若さを生かして、草の根の活動を広げて勝ちにつなげたい」と力を込める。
 4月10日の投票日まで1カ月を切る中、「候補の中で運動量は一番多いのでは」とするも「政党に属さず大きな組織もない。基礎票が見込めない中、楽観視はできず非常に厳しい戦い」と気を引き締める。
 山本氏は「弘前の将来を考える上でこれからの10年間は正念場。コロナで時代も変わり人口も減る。若い人たちが何とかしようという思いを持ち、選んでもらえる弘前にしたい。若さと実行力で先頭に立って取り組む」と決意を新たにする。

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蛯名正樹氏=3

2022/3/12 土曜日

 

後援会事務所開きに出席した支持者とあいさつを交わす蛯名氏(中央)=2月23日、弘前市の後援会事務所

 「必ず勝利し、将来にわたり活力と活気あふれる弘前にしたい」
 2月23日、弘前市長選に出馬する前副市長で前市議の蛯名正樹氏(67)は、地元の弘前市青山の後援会事務所で自らの決意に熱を込めた。
 事務所内外には約70人の支持者が集まった。市議会の清野一栄議長はじめ党や会派を超えた市議9人も駆け付け、共に必勝を期した。
 2018年4月の前回選で、3選を目指す葛西憲之氏との事実上の一騎打ちを大差で制した現職桜田宏氏だが、当時の選挙戦では多くの市議が葛西氏を支援した。
 この状況は桜田市政下の市議会にも影響を及ぼし、市側が提案した更新時期を迎える市民会館の指定管理者を地元業者グループから市外業者主体のグループに変更する議案や、議会選出監査委員選任の人事案は否決に。与党会派と共産党会派を除く市議有志が提出した「議会選出の監査委員を置かない市監査委員条例一部改正案」が可決された。この4年間、議会のパワーバランスが「反市長」に傾きつつある不安定な状態が続いた。
 昨秋には多くの市議から「行政と議会が対話できない状況が続くのは市の発展につながらない」と不満が噴出。市長選が迫る中、「(市のことを考えれば)先に出馬表明した現職か山本昇氏か、どちらかにくみするのは難しい」との声が漏れた。こうした中で、第三の候補を模索する動きが市議の間で活発化。最終的に現職対抗馬として白羽の矢が立ったのが蛯名氏だった。
 「市職員としての現場感覚にたけ、副市長、市議とあらゆる立場を経験し人望も厚い」と評される蛯名氏。議会との関係性については「真に市長と議会とが車の両輪と言えるようにしたい」との思いを表明し、前回選で葛西氏を支持した市議を含め、党や会派を超えて広く支持を集める。
 事務所開きでは清野議長があいさつに立ち「気持ちを一つに皆さまの真心を頂きたい」と結束を呼び掛けた。
 支持する市議は「首長選はより身近な選挙。地元の声やしがらみもある。立場上積極的には動けない」と個々の事情は絡むものの、自民党籍のある市議のうち大多数の6人が蛯名氏支持を明確にする。後援会組織を中心に、支持する市議が積極的に汗を流す。
 保守分裂の様相を呈している今回の選挙戦。党や団体が同じであれば支援者が重複することもある、いわば身内同士が票を奪い合う状況にもある。今夏には国政選挙を控えることもあり、自民党のある市議は「影響が懸念される」との見方を示すほど、選挙戦はし烈さを増している。
 蛯名氏は「市民が心穏やかに、生きがいを持ち、安心して暮らせる、活力ある活気あふれる弘前の実現を目指したい」と訴える。政策には新型コロナウイルス対策はもちろんのこと、農林業振興を筆頭に、地域経済、福祉と子育て、植物・ペットとの共生など七つの柱を掲げる。リーダーとしての心構えを問われると「自ら早期に決断、情報発信し、職員が十二分に能力を発揮できる制度と環境の充実を目指したい」と力を込めた。
 年が明けた1月14日に出馬を表明。スタートは出遅れたものの、2月17日には市議を辞職して選挙戦への活動を加速させ、精力的に街頭演説や市内でのあいさつ回りを重ねている。
 市職員経験者3人が出馬を予定する今回は市職員の支持も割れるが、市職員労働組合連合会は蛯名氏推薦を決定。市職員時代に道路維持課長や農林部長などを歴任した経験や唯一の弘前南高校出身者ということを生かしながら懸命に浸透を図る。
 4人による混戦が予想される中、蛯名氏は「行政と議会の両方の立場から市政を見てきた経験を弘前のために生かしたい。最後までしっかりとやるだけ」と奔走する。

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山内崇氏=4・完

2022/3/13 日曜日

 

小田切氏(左)と共に会見に臨み、出馬を表明する山内氏=2月23日、弘前市内

 「無所属の一市民として、『市民党』として出馬する。一人ひとりの声を大切に、政治生命を懸けて向かう」
 前立憲民主党県連共同代表の山内崇氏(66)は、2月23日の弘前市長選出馬会見で並々ならぬ決意をこう口にした。長年、立民の看板を背負い、県組織をけん引してきた山内氏の同党離党と市長選への挑戦は周囲に衝撃を与えた。「(選挙までの)期間も短く非常に大きな決断だった」(山内氏)。
 市長選をめぐり、2019年の参院選本県選挙区に立民公認の野党統一候補として出馬した元県弁護士会会長の小田切達氏が「市民の生活の底上げが必要」との思いで出馬を検討。2月10日に健康上の理由で断念した際、小田切氏は取材に対し「悔いが残る」と胸の内を明かした。
 こうした中で、小田切氏から出馬への思いを託された山内氏が出馬会見に臨んだ。同席した小田切氏は「山内さんに市民を守るリーダーシップを期待し一緒に戦いたい」と全面的な支持を表明した。
 山内氏の市長選出馬に選挙関係者からは「激戦は予想していたが、これまでにない大激戦だ」「知名度もあり一定の基礎票を持つ。あらゆる選挙を経験する山内氏出馬による影響は大きい」との声が漏れた。
 小田切氏は、出馬会見の前日、選挙期間中に政治活動が認められる確認団体「弘前市に新しい風を起こす会」を創設。これまでに山内氏と「憲法を暮らしに活(い)かす市政」「格差と貧困の是正」など5項目で政策合意した。
 ある議員は山内氏の市長選出馬について「国政と同じ構図とはいえないが、先に立候補した3人が同じ土俵と見る向きがある中で、離党したとはいえ国政野党、革新系の非自民の受け皿になるだろう」との見方を示す。
 市長選をめぐり立民と共産は、山内氏について「自主支援」とする方向で最終調整を図っている。確認団体が勝手連的な役割を果たす母体となり、賛同する市民が結集し両党が後方支援に回る構図が浮かび上がる。
 山内氏は旧相馬村出身で立教大卒。県職員を経て、1995年の県議選で初当選し4期務めた。その後、知事選に1度、衆院選に3度出馬。長年、山内氏を知る関係者はその人柄を「一見こわもてだが、温かく、本気で政治を考えている。頼りになるおやじのような存在」と評する。
 昨年10月の衆院選本県3区には、立民公認候補として出馬。敗れはしたものの、非自民の受け皿として党を超えた支持を集め、弘前市内で約3万票を獲得した。ただ、山内氏は「離党して臨む今回は党を超えて『現状を何とかしてほしい』という声に対する受け皿になる」と話す。
 基本理念には(1)ゆとりを持って暮らせる弘前(2)経済的に自立した足腰の強い弘前(3)子どもや若者が希望を持てる弘前(4)地域の社会基盤を守り抜く弘前(5)誰ひとり見捨てない弘前-の5項目を掲げる。新型コロナウイルス対策をはじめ、小中学校の給食費無償化や、除排雪の強化、奨学金返還支援制度の創設といった政策の実現に力を注ぐ考えだ。
 2月に入ってからの出馬表明と出遅れたものの、幾度と選挙を重ねているだけに、陣営は「知名度は抜群。全力で挑む」と奔走する。今回はこれまで背負ってきた党の看板を下ろし、無所属「市民党」を掲げての出馬。過去の国政選挙とはスタイルが異なり、「不特定多数の有権者に訴える空中戦ではなく、一人ひとりの声を聞く草の根活動にこだわる」構えだ。
 山内氏は選挙活動で市内を回る中で「不安と厳しさが増していると感じている。(コロナ禍にある今は)平常時ではなく非常時。行政として十分な情報提供や手当ての必要性を痛感している」といい、「生活に不安を抱え、厳しさを増す市民のため戦い抜く」と決意をにじませる。

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