未来を築こう 私たちとSDGs

 

食品ロスをなくそう=8

2022/3/28 月曜日

 

弘前市が作成したキャンペーンで使用している啓発チラシやポップ。協力スーパーの要望も取り入れさまざまな形や大きさを用意し工夫している

 「コンビニやスーパーでは、手前に並ぶ商品から取ろう」。弘前市が市内のスーパー約30店舗と協力して昨年末から今月31日まで、食品ロスに取り組むキャンペーンを展開している。
 食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。農林水産省によると、日本の食品ロスの量は2019年度推計値で年間570万トン、1人当たりでは年間約45キロとされる。これは毎日茶わん1杯分のご飯を捨てているのとほぼ同じ量だ。
 一般的にスーパーなどの商品陳列棚には、賞味期限の近いものが手前に並んでいる。消費者の多くが商品を奥から取りがちだが、すぐに食べる商品の場合は手前から取ること、これも「飢餓をゼロに」「つくる責任 使う責任」というSDGs(持続可能な開発目標)に掲げられる目標に、誰でも簡単に協力できる取り組みだ。
 市は昨年3~4月、食品ロスと、スーパーとの協力企画の第1弾として、商品を手前から取る行動を消費者に促すキャンペーンを実施した。26店舗が生鮮品や乳製品、賞味期限や消費期限が短い商品の売り場に、市が作成した啓発ポップやポスターなどを掲示し、食品ロスの削減を呼び掛けた。
 キャンペーンの効果について市がアンケートを実施した結果、実際に廃棄量が減った店舗や、廃棄量が減少していると感じている店舗があり、一定の効果が得られた。啓発ポスターなどを今後も「利用したいと思う」と答えた店舗は約9割を占めた。
 「キャンペーンの効果」(複数回答可)では「従業員等の意識が変わった」「感覚的に廃棄量が減った」「計測実績で廃棄量が減った」といった回答がある一方で、「分からない」「効果はなかった」との回答も一定数あった。
 「計測実績で廃棄量が減った」と答えたある店舗では、牛乳やヨーグルトなどの乳製品など冷蔵が必要で日持ちがしない「日配品」の廃棄率が前年同月比で減少していた。
 効果的だった啓発ポップ等のメッセージ(複数回答可)については、「手前から買うも立派な貢献」が最も多く、次いで「賞味期限は『おいしく食べられる』目安です」「なくそう食品ロス」の順で、直接的な訴えが行動につながったようだ。
 キャンペーン導入の「業務作業への影響」は「特になかった」92%、「良い効果があった」8%で、啓発活動による業務への支障は見られなかった。効果的なキャンペーンの時期については、お盆や年末を挙げる店舗が多かった。
 今後も「食品ロス削減」をテーマにした啓発ポップを利用していきたいかの質問には85%が「利用したいと思う」とした。「行政と一緒に取り組んでいることをPRできる」「会社の方針と合致している」「食品ロスの削減につながっている」「地道な啓発が必要」などを理由としている。
 市はアンケート結果を踏まえ、要望の多い年末年始に合わせて、キャンペーンの第2弾を実施。要望を受け、ポスターの大きさや掲示物など、改善しながら効果的な啓発方法を探っている。
 市は「キャンペーンの一番の狙いは消費者の意識が変わること。コロナ禍であっても、すぐ食べるものは手前からという簡単にできる身近な行動や取り組みも地球を救うことにつながっている」とし、今後も民間企業や市民と協働で、ごみ削減に向けた取り組みを強化していく考えだ。

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子育て世帯支援成果=7

2022/1/12 水曜日

 

五所川原こども宅食おすそわけ便で事前申し込み不要のパントリーを利用する人々
今年度も定期開催されている、いとか学園の子ども食堂

 「地球上の誰一人取り残さない」を目標とするSDGs(持続可能な開発目標)。新型コロナウイルス禍で少なからぬ子育て世帯の家計が逼迫(ひっぱく)する中、五所川原市では市社会福祉協議会(乗田孝一会長)と地域の福祉関係者や市民らが手を携え、18歳以下の子どもと同居する世帯を対象とした「五所川原こども宅食おすそわけ便」を展開。この1年間で着実に成果を示しつつある。
 趣旨に賛同した団体や個人からの寄付を活用する形で食品や日用品を用意。これを(1)申し込みによる自宅への配達(2)申し込みによる市内各地の福祉施設での受領(3)申し込み不要のパントリー-の三つの方式で「お裾分け」している。2020年12月にスタートして以来、おおむね隔月ペースで実施。第6回(21年10月)までに延べ1605世帯が利用した。このほか地域や内容を特化した特別開催も喜ばれている。
 回を重ねるうちに一つの成果が見えてきた。市社協は「関わり合いを子育て世帯と重ねる中で、例えば『おむつ代が掛かる』といった、具体的な困り事が可視化され、次のアクションにつながる」とする。
 一方で「物資は寄付、人員はボランティアが基本。長く継続していくためには裾野を広げる必要がある」とも。大規模団体との連携強化や、農業の盛んな地域性を生かし持続可能性を高めたい考え。市社協の平山博文事務局長は「まだつながれていない対象者は多い。真に必要な物を必要な人に届けていきたい」と強調する。
 また、市内と近隣地域では幾つかの団体が子ども食堂を運営。地域の保護者らに歓迎されている。このうち、五所川原システム合同会社(同市田町)の民間学童保育施設「いとか学園」は18年夏以降、月1回土曜日に開催。21年度は「青森旬の食育」を年間テーマに掲げ、食材に関する「調べ学習」も展開している。
 21年12月のお題は「カボチャ」。弘果弘前中央青果(弘前市)お薦めの「栗こかぼちゃ」や下北地域特産「一球入魂かぼちゃ」の特徴などを児童が説明。そのカボチャも入った「冬至カレー」に保護者数人も含め約30人が舌鼓を打った後、茶と菓子も堪能した。
 もともと同学園では地域交流や世代間交流を大きな目的の一つとしていたが、ここ最近はコロナ禍のため、実質的に学童とその保護者が参加する内容となっている。交流再開をにらみつつ、県産食材通販サイトの収益金の一部を必要経費に充当したり、政府備蓄米を活用したりと、工夫しながら地道に歩み続けている。
 自らも厨房(ちゅうぼう)に立つ水島康雄園長は「母子家庭の利用も少なくなく、朝早くからお弁当を作らねばならないところで、無料の食事提供をするのはいいことだと思う」と説明。食育の機能についても「夏場になると、子どもたちが野菜を切るなど調理体験もしている。来年度は余らざるを得ない食材を活用するようなこともしたい」と話した。
 このように子育て世帯が利用できる支援の幅が広がりゆく現状について、平山事務局長は「親によってはおしゃべりを楽しみたい人もいる。人前に出るのが苦手な人もいる。介護サービスのように複数のメニューの中から自分に合ったものを選べるようになっていくのもいいのでは」とした。

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「偏見」認識が出発点=6

2022/1/8 土曜日

 

「ジェンダー平等は男性の生きづらさの改善にもつながるもの」と語る高橋部長

 女性は男性より家事、育児、介護に向いていると考えてしまう。男性が涙を流したり弱音を吐いたりすることは恥ずかしいことだと感じてしまう-。
 人は誰でも思い込みや偏見「アンコンシャス(無意識の)・バイアス」を持って生きている。それまでの経験則や「一般的」な社会常識に照らした自分なりの「解釈」であり、すべてが問題となるわけではない。
 一方でSDGs(持続可能な開発目標)に掲げられる目標「ジェンダー平等の実現」を目指すには、社会に潜むさまざまな「アンコンシャス・バイアス」を認識し、改善することが求められている。
 県は2021年3月、「県男女共同参画に関する意識調査」報告書をまとめた。県民2000人を対象に、家庭生活など八つの場を男女平等と認識しているかを質問。学校教育や地域活動の場は平等とする回答が多かった一方、職場や政治、社会通念の場は男性優位とする回答が多く、社会全体で見ると「やや男性優位」「男性優位」とした回答は77・6%に上った。
 「どのような人の中にも、無意識の偏見や思い込みはある。自分にも必ずあると意識することがスタート。仮に指摘されたら自分への攻撃や否定と感じる前に、自分と異なる視点の意味を客観的に考えなければ、意識のアップデートにつながらない」
 そう語るのは、県男女共同参画センター(青森市)の高橋一枝部長だ。SDGsでは政治や経済、研究などあらゆる場の男女平等を目指すが、高橋部長は県内における女性議員の少なさを例に、社会に存在するアンコンシャス・バイアスを指摘する。
 「そもそも女性が議員に立候補しないから女性議員が少ないとも言われる。しかし女性が議員に立候補するまでのハードルが、さまざまなバイアスによって男性より高く設定されていることを認識してほしい」
 現状は人前に出て意見を述べる女性が「生意気、でしゃばり」とされる空気(無意識のバイアス)が残っており、地方に行くほどこの空気は強くなる。男性議員に強く問われない「家庭と仕事の両立」の課題がある上、人前に出ようとする女性を周囲が「善意」で引き留める場合もある。
 高橋部長は「私自身、昔PTA役員になった際、知り合いの女性から『目立たず子どもと一緒に過ごす時間を増やした方がいい』と親切心で助言されたことがある」と振り返り、「目立たない『女性の賢い生き方』というのも一つのバイアスではないか」と話す。
 しかし女性の視点を生かした政策や女性が働きやすい環境を実現しなければ、少子化改善も含め、持続可能な社会実現につながらない。より多くの人にジェンダーに関する認識のずれや無意識のバイアスに気付いてもらう機会をつくろうと同センターは今年度、男女共同参画研修に関する講師派遣を無料で行う新たな取り組みを開始した。
 自治体では東北町から全職員を対象とした講座依頼があり、1年近い産休・育休が発生する可能性のある女性の登用の仕方に対する質問もあったという。これに対し、高橋部長は「家庭でも組織でも、誰かに役割を固定化させるのはリスクマネジメントの観点からも避けるべき」と発想の転換を促す。
 「女性だけでなく、男性も病気などで長期休暇が必要なこともある。誰かが一時的に抜けても他の誰かがカバーできるよう仕事を分担し合い、『自分が休んでも大丈夫』と思える体制を目指す方が男女ともに生産性を維持できるはず」
 性別に「らしさ」を固定化したことで、分かりやすく利便性を維持できた時代から世界が変わろうとしている。高橋部長は「ジェンダー平等を通し、多くの人が生きやすくなる社会が実現できれば」と期待を寄せる。

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◎海洋ごみ影響学ぼう=5

2022/1/7 金曜日

 

ごみが漂う海の現状を再現したビニールプールから、魚やごみを釣り上げる園児ら=昨年12月13日、木の実こども園

 三方を海で囲まれ、海洋ごみの問題が深刻化する本県にとって、SDGs(持続可能な開発目標)の14番目に掲げられた「海の豊かさを守ろう」は重要な目標の一つ。教育現場では豊かな資源を守り、未来へとつなげる動きが広がっている。「子どもたちと一緒に知り、学びたい」。弘前市の東北栄養専門学校(上野順子校長)の2年生8人は昨年12月、食育活動の一環で、園児らと一緒に世界共通の課題に向き合った。
 地球の約70%を占める海は、多くの種類の生き物が生息する豊かな生態系の源で、たくさんの恵みをもたらす。だが、人々が生活で出すプラスチックごみによって汚染が進み、今の状態が続けば、2050年までには魚の量を超えるとの試算が示された。
 プラスチックは半永久的に海を漂う。中でも5ミリ以下の小さなプラスチック片である「マイクロプラスチック」は、魚が餌と間違えて食べてしまうことにより、人間を含めた生態系全体への悪影響が問題視されている。
 海洋ごみの約80%が街から流れてくるものといわれている。同校では海洋ごみの削減に向け、食育の視点から活動に取り組む。活動は、子どもを対象に、市内の幼稚園など3園で行う栄養指導実習で行われ、学生8人がSDGsを盛り込んだテーマに挑戦した。
 「おさかなさんをたすけよう!!」。企画したリーダーの小林凪希沙(なぎさ)さん(19)は「今話題になっていて、子どもたちが日常で取り組める目標であり、かつ食育にもつながると思った」と話す。
 食と深く関係する海と海の資源(魚)を守り伝えようと、メンバーたちは、ごみが漂う海をビニールプールで再現し、ごみが魚や人に及ぼす影響についてペープサート(紙人形劇)映像を制作するなどして、分かりやすい表現方法を追求した。シナリオを担当した八木橋美幸さん(46)は「子どもたちにも理解できるように、マイクロプラスチックを『小さな小さなプラスチック』と説明や映像を付け加えるなど、最後まで表現方法を模索し続けた」と試行錯誤した様子を語った。加えて、子どもたちへの意識付けや今後の行動につなげようと、再現した海からごみを釣り上げるなどする体験を盛り込んだ。
 木の実こども園の熊谷璃乃ちゃん(6)は「魚のために、海に遊びに行ったらごみを拾う」と決意し、柴田幼稚園の田中翠晴(すばる)ちゃん(6)は「ごみをきちんと捨てて、魚を助けたい」と真剣な表情を見せた。
 実習を終えて小山内桜子さん(20)は「制作から発表まで約3カ月間、難しい挑戦だった。気付かされたことも多く、何気ない行動の重要性を実感した」と話した。春からSDGsのメニューを展開する会社に勤める八木橋さんは「実習がSDGsについて考えるきっかけになった。他の16目標も含め、今後も学び続けていきたい」と決意を新たにした。
 指導した同校の岡本由美子教諭は「食育もSDGsも日々の積み重ねが大事。子どもたちを通して学生たちの意識も変化し、(自分たちに)何ができるかを考えるようになった。社会に出ても考え続けてほしい」と話す。

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剪定枝から和紙作り=4

2022/1/5 水曜日

 

リンゴの剪定枝を原料とする和紙で作ったねぷたなどの試作品。ラベルなど印刷物としての応用も見込んでいる
リンゴの剪定枝で作った和紙の試作品

 本県が全国一の生産量を誇るリンゴ。その生産過程で生じる剪定枝(せんていし)は年間約15万トンに上る。一部は燃料として再利用されるが、多くは使い道のないまま焼却処分されているのが現状だ。この剪定枝に着目し、和紙作りに生かす取り組みが弘前市で進んでいる。有志によってひろさき産学官連携フォーラム内に設置された「りんご/さくら和紙研究会」が、リンゴと並び同市を象徴する桜の剪定枝を用いた和紙作りも併せ、原料化のコストダウンと商品開発に挑戦中。廃棄物の有効活用に期待が掛かる。
 「きっかけは新型コロナウイルス禍のマスク不足。和紙で作ったマスクに関する報道を目にして、弘前でも同じことができないかと思い付いたのが始まり」。そう語るのは、同研究会事務局で弘前大学研究・イノベーション推進機構の山科則之特任助教。山科特任助教によると、弘前藩は4代藩主・津軽信政の時代から和紙作りに取り組み、和紙の原料となる楮(こうぞ)を栽培していたが、度重なる飢饉(ききん)などにより産業として定着しなかったという。このため、「例えばねぷたに使う和紙も本県産のものではなく、そうした背景も踏まえ地元産の和紙が作れないかと考えた」と振り返る。
 同研究会は2020年10月、同大や県産業技術センター弘前工業研究所、県内外の印刷会社の代表者らで発足。リンゴ剪定枝の活性炭などを研究する同大教育学部の廣瀬孝准教授が代表を務め、同月に和紙作りがスタート。リンゴの剪定枝は同市の津軽ゆめりんごファームから、桜は弘前公園の剪定枝を市公園緑地課から提供してもらい、三菱製紙八戸工場の協力で和紙の原料となるパルプを製作した。これらのパルプを基に、紙すきの伝統が残る同市相馬地区の紙すき体験施設「紙漉の里」で昨年3月までに試作品を完成させた。
 廣瀬准教授は「和紙作りと並行し、需要の見込みも知る必要がある」とし、手始めに商品開発に着手。民工芸品を制作する同市の観光施設「津軽藩ねぷた村」に協力を依頼し、小型の扇ねぷたや金魚ねぷた、津軽凧(だこ)などを試作した。和紙の試作品は繊維質により表面にやや凹凸があり、淡い薄茶色で、どこか温かみを感じさせる風合い。同施設助役で県伝統工芸士の檜山和大さんは「手すきと機械で製紙された和紙の2種類を使ったが、手すきの方は染料の浸透性や筆の乗りが良かった。商品化しても問題ないクオリティー」と、その完成度を評価する。
 さらに研究会メンバーである同市のアサヒ印刷の協力の下、市内の民間企業に声を掛け、既存品のリンゴジュースやシードル、日本酒のラベル、御朱印の台紙、名刺なども試作した。昨年12月には、これらを携え、SDGs(持続可能な開発目標)関連の取り組みや製品を紹介する東京都での大規模展示会「SDGsウイークエキスポ」に出展。廣瀬准教授は「10以上の企業から『和紙を使ってみたい』『サンプルが欲しい』と要望があった」と手応えを語る。
 量産化に向けては課題もある。「リンゴの剪定枝を使った試作品は400キロの枝に対し、製紙できた和紙は80キロ程度。来年度以降はこの効率を上げ、コストダウンを図りたい」と山科特任助教。研究会では22年度、紙すき体験を組み込んだ旅行商品の造成など新たな目標も掲げる。廣瀬准教授は「オール弘前の原料で作るねぷたや、剪定枝の和紙に棟方志功の版画を刷るアイデアなど、夢はたくさんある。和紙の付加価値を高め、剪定枝を新たな資源として産業振興につなげることで廃棄物の削減にも貢献したい」と意欲を示している。

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