’21衆院選 暮らしは今

 

2021/10/22 金曜日

 

 31日に投開票が行われる衆院選。与野党公約を踏まえながら、コロナ禍の影響にあえぐ本県の現状と課題を探る。

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コロナ渦の医療体制

 

新型コロナ感染の重症者用ベッドとなる弘大附属病院高度救命救急センターの病床。重症者病床数の比率の低さが課題の一つに挙がる(同センター提供)

 新型コロナウイルス対策が争点の一つとして注目される今回の衆院選。自公政権が講じてきた対策への評価が有権者の1票の行方を左右することは間違いないだろう。本県の医療現場は幾度となく大規模クラスター(感染者集団)の発生を経験し、そのたびに関係機関との連携を強め、治療と医療体制の強化に努めてきた。だが、第6波の感染拡大が危惧される中、重症者向け病床の不足と軽症者向け病床を持つ医療機関における患者の受け入れの偏りが課題に挙がり、医療機関に対する国の公正な支援制度が求められる。
 県内の感染症病床は感染拡大前の当初は29床だったが、現在は10倍以上に増えて349床を確保。県内の最多入院者数(164人、今年9月6日)の2倍以上を確保しており、一地域で入院者が集中した場合は他地域への入院調整を行い、病床逼迫(ひっぱく)の軽減を図っている。県新型コロナウイルス感染症対策監の泉谷和彦氏は「一般医療を維持しながらとなると一つの医療機関が用意できる病床は限られる。多くの民間医療機関の協力があったからこそ今の状況まできた」と振り返り、今後起こり得る第6波の対応に向けて気を引き締める。
 だが、「重症者(人工呼吸器やECMO=エクモ、体外式膜型人工肺=などが必要な患者)を診る医療機関は限られていて、全体の病床数に対する重症者病床の比率が低い」と、重症者向け病床の不足を指摘するのは弘前大学医学部附属病院高度救命救急センター副センター長で、災害医学が専門の伊藤勝博医師。伊藤医師は弘前、青森市の両保健所管内で大規模クラスターが発生した際に県の要請を受けて保健所と共に病床数の調整を行ってきた。現在はワクチン接種が進んだこともあって重症化する患者が減ったことを前置きしつつ、過去に医療圏域を超えて重症者の入院調整を行ったケースがあったことを例に挙げる。
 軽症者向け病床を確保している医療機関の中には、感染者受け入れの経験が少ない病院があるといい、「対応に慣れていないために、感染者を受け入れて院内感染が広まるようなことがあったら大変」とし、受け入れの偏りを解消する必要があるとも指摘する。
 また、医療従事者が家庭内感染を防ぐ目的でホテルに滞在する場合があるが、感染拡大が落ち着いた現在は医療従事者のために確保されていた部屋数が減っているといい、感染が再拡大した場合には迅速な対応が必要となる。
 軽症、中等症患者を積極的に受け入れてきた弘前市の医療機関の中には、国の支援制度に対して問題提起する病院もある。感染患者を迅速に受け入れるために、国は医療機関に空床を確保するよう促すとともに、患者を受け入れるまで収入が得られず病院の経営が不安定にならないよう、空床に対して補助金を交付している。しかし、新型コロナ患者専用の病棟などを設定する重点医療機関の中で軽症・中等症患者を中心に診る病院では、患者を治療するよりも病床を空けたままにした方が収益が上がる場合がある。
 制度では空床1床につき1日約7万円の補助金が交付される一方、入院治療した場合の軽症者1床の診療報酬はそれよりも低く、3万円ほど差が出る場合もある。同市のある医療機関の男性事務局長は「あえて感染患者を受け入れない病院も出てくるし、何より受け入れるモチベーションが下がる。患者を受け入れた病院が受け入れない病院よりも収益が下がるような制度はおかしい」と訴え、「改善するには診療報酬を上げるしかないのでは。患者を受け入れている病院が評価される制度にすべき」と制度の改善を求める。

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観光

2021/10/23 土曜日

 

苦戦が続く観光業。関係者からはGoToキャンペーンの本格再開を望む声が上がっている(写真は津軽藩ねぷた村)

 「現状では体力が持たなくなっている事業者も多い」と話すのは、弘前市のブロッサムホテル弘前・福士圭介支配人。新型コロナウイルスの影響で人流の抑制が呼び掛けられる中、観光業は大打撃を受けている。観光資源が豊富で多くの旅行客を受け入れていた津軽地域はとりわけ影響が大きく、関係者からは、宿泊需要を後押しして経済効果が大きかった「GoToキャンペーン」の再開を望む声や、国民の行動変容を政治が促していくべき-との要望が聞かれる。
 「とにかく『GoTo』を動かすことに尽きる。感染状況により全国規模でできなければ、例えば東北などブロックで区切って実施するなど、スピードが最優先」と福士支配人。経済環境の停滞から経営が困難になっている事業者も多く、待ったなしの状況であることを強調し「観光の本格再開に向けロードマップを作って、早急に国が号令を掛けてほしい」と望む。
 黒石市の津軽こけし館の山田拓郎部長は「『GoTo』は早めに再開してほしいが、タイミングが重要」と指摘。「前回は若干急なスタートだった。感染が広がった時にはすぐ止めるなど、状況に応じてスピード感を持った対応をしてほしい」と述べた。弘前観光コンベンション協会の白戸孝之専務理事は「人流を生むことで感染拡大の第6波を生じるとの懸念もされるが、前回の『GoTo』期間当時と比べると、6割の国民がワクチン接種を完了している現在では状況も変わってきているだろう」とした上で「とにかく感染への不安感を取り除くことが求められる。賛否はあるがワクチンパスポートのような、安心安全を担保するような施策が必要だろう」と、国民の行動変容を促す政治的アクションを望んだ。山田部長は「県外に催事で出張することがあるが、現時点では催事出店の誘いを受けた時に、正直なところ行っていいのか迷っている」とも話し、事業者側にとっても公的な行動指針の提示が求められているといえる。
 関係者の中ではGoToキャンペーンの本格再開に加え、アフターコロナの観光を見据えた取り組みも求められている。黒石観光協会の石澤照代会長は「全国的に感染者が減少傾向にあり、観光に対しても少しずつ期待をしてもいいかという雰囲気」としながらも「観光客は急激には戻らないと思うし、国内旅行客だけでは心もとない。国にはインバウンド対応も含め、コロナを踏まえた新しい観光振興に取り組んでもらい、指針を示していただきたい」と注文する。
 津軽藩ねぷた村の中村元彦理事長も「短期的にみれば『GoTo』は効果的だが、インバウンドの回復を見据えた政策論争を求めたい」と訴える。「観光業は国内旅客だけではもはや持たず、インバウンドに頼るのが宿命だと言われて久しい。しかしコロナ禍で国内外の旅客がストップし、大変な状況。このまま委縮が続くと産業復興への道のりは遠くなってしまう」とし「候補者には地方観光の窮状が政府に届くように訴えてほしい」と望んだ。

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冷え込む経済

2021/10/24 日曜日

 

客足が伸びず苦戦が続く商業者が多い津軽地域。特に飲食店業は一段と厳しさが増している状況だ(写真は弘前市土手町)

 新型コロナウイルスの影響で苦境が続く商業者たち。コロナ禍により客足が遠のく中、経費が掛かる感染対策を施しながら新機軸の営業形態に挑戦するなど経営努力を重ねているが、それらが報われているとは言えない状況だ。特に飲食業は厳しい経営環境にさらされており、負担軽減策や、経済循環を促す抜本的な政策を望む声が上がっている。
 「コロナが出てから、客足はぱったり止まった」と肩を落とすのは寺山餅店店主で黒石商店街協同組合の寺山正幸理事長。店のあるこみせ通りは今年3月に道路の美装化と電柱の地中化が完了し、本来であれば観光客や買い物客でにぎわいを見せるはずだった。同組合主催で黒石を代表するイベントである旧正マッコ市も苦渋の決断で今年は開催を見合わせ、代替企画を行った。来年の開催については様子見の段階という。「国には経済対策はもちろんだが、しっかりと感染原因を究明してほしい。ウィズコロナ、アフターコロナにせよ、国には行動制限解除に関して強い発信力を見せてほしい」と訴えた。
 みそラーメンくろいし鉄満堂(黒石市)の相馬大輔店主は「夜9時まで営業しているが、夜はお客さまがぱったり来なくなり、昼の営業で細々とやっている」とコロナ禍の苦境を語る。新たな顧客確保に向けテークアウトを始めたほか、今は生麺の通販にも取り組んでいる。「何があるか分からない時代。商売する側も変化に対応していかなければならない部分があるかもしれないが、国にはしっかりとした政策を望む」とし「給付金もいいとは思うが、消費する側の負担を減らすようにしてほしい。『消費税を下げろ』とまでは言わないが、上げるような事は絶対にしないでほしい」と注文を付けた。
 弘前市の「串焼き・冷麺としぞう。」では、接客機会を減らして感染症対策と業務効率化を図ろうと、利用客が自ら焼く形態に変更。3カ月の休業期間を経て9月下旬に改装オープンした。小田桐誠代表は「チャレンジしないと街に活気がなくなる」と気を吐くが、夜間営業を主にする飲食店への風当たりには頭を抱える。「行政やマスコミの発信のされ方でイメージが悪くなってしまった。悪印象を払拭(ふっしょく)するような方策を望んでいる」と深刻な表情を見せ「給付金はあるが基本的には十分でなく、店舗運営に最低限必要な経費に理解が足りているようには思えない。経営を下支えする補償がほしい」と話した。
 同市の服飾店YURAGIの三上慎太郎店主も「現状の雰囲気を変える政策が必要」と話す。具体的には商業者対象に月1回の検査無償化など、陰性証明が気軽にできる制度の確立を挙げ「安心感から来店のハードルは下がるし、人も動くようになる。こちらも今は上京は控えているが、展示会での仕入れなどにも行ける」という。「服飾需要が回復するのは最後。そのためにまず他の業種がある程度潤ってくれなければ」と訴えた。

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コロナ禍の子育て

2021/10/25 月曜日

 

コロナ禍によりさまざまな“つながり″を絶たれた母親たち。孤立解消への支援が求められている(写真は宮川交流センターのイベント会場)

 新型コロナウイルス禍により子育て中の母親たちは孤立に拍車が掛かっている。悩みや情報を共有する場だった催しや母親教室の中止が相次いだことで息抜きの場の重要性が浮き彫りに。感染拡大が落ち着いた今はイベント開催が徐々に再開し始めてきたが、母親たちの悩みは尽きず、支援のニーズは各種給付金の充実、子育てと両立できる雇用の創出、不妊治療の無償化などと幅広い。
 10月21日午前、弘前市の宮川交流センターに未就学児とその母親15組ほどの姿があった。子育て世代を中心にしたつながりづくりを行う同市のNPO法人「しののベース」が主催するイベントで、無料のおさがり交換会、母親向けの美容と運動教室、キッズスペースと、皆思い思いに楽しんでいた。1歳5カ月の長男を連れた同市の女性(32)はソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を介して開催を知り、おさがり交換会を目的に訪れた。コロナ禍によって保育園の他の保護者と交流する機会がなくなったといい、「お母さんたちがリフレッシュできる場で助かる」とし、「最近はしっかりと感染対策をした上で外出するようにしている。(息子が)幼い今の時期に他の人と触れ合って外的刺激があった方がいいと思っているので」と目を細めた。
 同法人は子育て真っ最中の母親8人で構成。育児と両立してできる仕事が見つからなかったことがきっかけで設立に至った。創設メンバーで理事の中村加菜子さん(44)は「育児の隙間時間に働こうと思っても、勤務時間の問題でどこも雇ってくれなかった。ならば自分たちで仕事をつくろうということで活動が始まった」と語る。活動自体は数年前に始まったがNPO法人化したのは最近で、今回のイベントは初めて市市民参加型まちづくり1%システムの補助事業を活用して開催した。中村さんは「まだ仕事として利益が出るほどではないが、コロナ禍で孤立しがちな子育て世代やシルバー世代がつながりを持てるような活動をしていきたい」と力を込める。
 出産前後の入院時に孤独を感じたというのは昨年9月に第2子を出産した藤崎町の女性(32)。面会が禁止され、わが子と父親が対面したのは産後5日目で、入院中は「責任がすべて自分にのしかかっているようで孤独感に襲われた」。今後の子育てを見据えて女性は「うちは共働きだが経済的に苦しい面はある。一人親とか所得でとか給付対象を区切らずに、子育て世代を均一にケアしてもらうと助かる」と給付金の充実を要望。前出の弘前市の女性(32)は「周りでは不妊治療をしている人が多い気がするので不妊治療の無償化を。デリケートな問題だが議論をオープンにして、休みを取りやすい雇用環境を整えてほしい。そうでなければ少子化は進む一方」と求めた。
 感染拡大を受け、弘前市内4カ所の子育て支援センターは休止や、イベントを中止または規模を縮小する時期が多かった。このうち、ヒロロ内の駅前こどもの広場では、以前は遊び場も含めると延べ年間約17万人前が利用していたが、コロナ流行後の昨年度は約3万9000人、今年度も9月末までの半期で約2万1000人の利用にとどまっている。感染への警戒もあって今も親子連れの足は遠のく状況が続いており、かつてのにぎわいはまだ遠い。
 「母親たちのつながりたい気持ちは強い」と、こどもの広場に隣接するひろさき子育て世代包括支援センターの浅沼綾香総括主査。妊娠中から乳幼児期まで幅広い相談に応じる場であり、平時は広場へ遊びに来るついでに相談に訪れる人が多いが、コロナ禍以降来所は減少。センターの助産師らが気になる母親たちへ電話で様子の聞き取りをしているほか、昨年度からは、産科での中止が続く母親学級の代替講座を開催。妊娠中や出産後について学ぶ内容だが、同時にコロナで孤立に拍車が掛かる母親たちに人とのつながりも持ってもらう狙いもあり、予約待ちが出るほどの人気だ。「イベントのオンライン開催を考えたこともあったが母親たちの反応は良くなかった。人に会いたい、ふさぎがちになる家から出たいという思いだと感じる」。感染防止に腐心しながらどうやって息抜きの場を提供していくか、試行錯誤を続けている。

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