拓く力 コロナ禍に生きる

 

2021/1/1 金曜日

 

  新型コロナの猛威にさらされ、感染防止対策に追われた2020年。生活、経済、教育-と、国民生活すべてがこのウイルスに振り回され、悪影響を受けた。ワクチン接種に道筋が付くなど収束への道に光が見える一方、感染者の増加傾向に歯止めがかからない。21年も続くコロナ禍に私たちはどのように備え、生きればいいのだろう。さまざまな視点からコロナ禍で生き抜く力「拓(ひら)く力」を取材した。

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商業(上)=1

 

弘前市の中土手町と下土手町の商店街が初めて合同で取り組んだ抽選キャンペーンの応募箱(写真は中三弘前店)

 「本来であれば、弘前さくらまつりが開催100回目で東京五輪もある飛躍の年だったのに…」。弘前中土手町商店街振興組合の平山幸一理事長は、四大祭りの中止をはじめ、新型コロナウイルスが地元商業者に猛威を振るった弘前市の2020年をそう振り返る。
 同市土手町を会場とするカルチュアロードやよさこい津軽など、経済波及効果が大きい恒例イベントも軒並み中止に。年末には、商店街の商業施設「ルネスアリー」の全テナントが撤退し、施設は休館。商業者への影響は現在進行形で広がり続けている。
 しかし、苦境だからこその前向きな変化も生まれつつある。新年恒例の「お年玉抽選会」を「3密」回避の観点から中止とした一方、投函(とうかん)による代替策の抽選会は、隣接する弘前下土手町商店街振興組合と初めて合同で取り組む。他の商店街や商業施設、商工会議所などで構成する弘前商業連合会も同様のキャンペーンに着手するなど、組合や業態の垣根を越えた連携の機会はコロナ以前より増えている。平山理事長は「従来はおのおのでやってきた事業も、苦境だからこそ連携に踏み切りやすい雰囲気がある。21年もこの方向性で方策を探りたい」と話した。
 市内約20の宿泊施設でつくる弘前市旅館ホテル組合の福士圭介組合長は、20年を「おおむねどの施設も売り上げは前年比で50~60%減だが、『Go To』効果でかなり盛り返すことができた」と振り返る。特に9月から、市内でクラスター(感染者集団)が発生した10月半ばまでの期間は、売り上げが平年並みまで回復したとみており、事業の効果を実感している。
 その「Gо Tо トラベル」事業は昨年12月に全国一斉停止となったが、県独自の割引キャンペーンが補完的に行われる。福士組合長は「21年は『Go To』明けの反動による需要減が怖い。国の施策に連動する県や市の事業もうまく活用し、引き続き行政への要望を続けながら乗り切れれば」とした。
 新型コロナの影響が大きかった飲食業界では、「第1波」以降に浸透した外食控えが書き入れ時の忘新年会シーズンも直撃。「多くの店で20年の売り上げは前年比で3割程度まで落ち込んだ」と弘前料理飲食業組合の板垣重敏理事長。事業者が融資や補助制度を活用して急場をしのぐ中、板垣理事長は「消費税などの返済猶予期限である3月が一つのボーダーラインで、店側は体力の限界。国に対応してもらうしかない」と窮状を訴える。
 こうした状況から、融資やさまざまな補助制度の申請に関する事業者の相談が急増した弘前商工会議所では、年々減少傾向にあった会員数が20年は増加に転じた。土岐俊二専務理事は「会議所が本来持っていた相談窓口としての機能がコロナ禍で見直されてきたのでは」と推察する。
 同商議所では、会員に経営状況などを確認し、悩み相談に応じる「御用聞き事業」に注力してきた。その成果なども基にした要望書を市へ提出。家賃補助など市の独自支援策につなげた。土岐専務理事は「この苦境に何が必要とされているのか。事業者が気軽に相談できる商議所運営をこれまで以上に心掛け、関係機関との情報共有を密にして行政へ伝えていきたい」と事業者へ寄り添う意思を改めて示した。

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商業(下)=2

2021/1/3 日曜日

 

伝統の「旧正マッコ市」の中止を余儀なくされた黒石商店街協同組合。コロナ禍での商店街について模索が続く

 新型コロナウイルスの影響は、県内経済界に大きな打撃を与えている。津軽地方の地元商店街も売り上げの減少、販売不振にあえぐ。黒石市では、中心商店街の伝統行事で、津軽の冬の風物詩にもなっている「旧正マッコ市」すら「3密」を避けるため、今年は中止を余儀なくされた。年間を通じて最大の書き入れ時を失った商店街。コロナ禍での生き残りを懸けた模索が続く。
 「組合のマッコ市中止は記憶の中ではおそらく初めて。開催を望んでいた方には申し訳ないが、この状況なので中止を決めた。私たちも1年で一番の書き入れ時なのでとても残念」
 同市で例年2月に行われる「旧正マッコ市」。藩政時代から続く一大イベントだが、新型コロナウイルスの影響で中止となり、主催する黒石商店街協同組合の鳴海浩二理事長は肩を落とす。
 マッコ市は組合主催のみならず、市内の量販店などでも行われる。開店前からお目当ての店に買い物客らが行列をつくるほか、中心商店街で行われる名物の「福まき」には大勢の市民らが集まる。黒石商工会議所によると、2019年は全体で約8万5000人が訪れたという。
 同組合は開催の可否を検討してきたが、昨年10月に入って弘前市の飲食店でクラスター(感染者集団)が発生。当時、感染者は津軽地方で200人を超え、イベントは軒並み中止となった。こうした状況を踏まえ、同組合は11月、中止を正式に決定した。
 「9月ごろから開催について問い合わせを数件受けていたが、弘前のクラスター発生などもあり、中止を決めた。市内外、県外からも多くの買い物客が来て、いろんなお店を訪れる。全ての店で買い物客に氏名や住所などを記入させるわけにもいかず、感染者が発生し、クラスターに発展したとすれば濃厚接触者を把握しきれない」と鳴海理事長。「組合には現在46店舗が加盟しており、コロナによって店を閉めたケースはまだ出ていないが、マッコ市が中止となって売り上げが落ちる店は少なからず出るだろう」と心配する。
 組合ではマッコ市に代わり、小規模で来店客が密にならないようなイベントができないか検討している。1月から2月にかけて一定期間を設け、買い物客に番号付きの券を渡し、抽選で商品券をプレゼントするといった企画などを考えているという。
 鳴海理事長は「かつてあったたんす屋さんで、嫁入り道具一式を買った時、マッコとして軽トラック1台を渡したこともあった」と往時を懐かしむ。そのにぎわいを今に伝える伝統のマッコ市。「1年に1度の大イベントであり、来年は開催できればいいのだが」と、その復活を心から願う。だが「コロナによって密を避ける新しい生活となった今、今後はオンラインによるマッコ市も検討していかいないといけない」と鳴海理事長。「この状況でも影響をほとんど受けていない店もある。生き抜いていくためには新しい生活にあった販売方法を各店舗で工夫していかないといけない。組合として情報を共有していきたい」とコロナ禍での商店街の在り方に思いを巡らす日々だ。

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祭りの在り方(上)=3

2021/1/4 月曜日

 

新型コロナ対策で桜の開花中に閉鎖された2020年春の弘前公園内。今年は“日本一の桜”を楽しむことができるか、関係者は先行きを注視している

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、県内の祭りやイベントが軒並み中止となった2020年。例年200万人規模を集客する弘前市最大の祭り「弘前さくらまつり」も中止となり、日本一の桜が咲き誇る弘前公園は閉鎖された。
 「春は桜、夏はねぷた。祭りで盛り上がり、日常に戻ることを繰り返すサイクルが津軽人の体内時計に組み込まれている。コロナ禍によって、1年を過ごした実感のなかった市民は多かったと思う」とため息をつくのは市内の観光関係者。
 「今年のさくらまつりがどうなるかは分からない。開催すべきとはなかなか言えない」としつつ、「今年こそは弘前公園の桜を見たい、きっと見られるという根拠のない思いが市民の今の支え」と苦笑する。
 新型コロナの収束がいまだ見通せず、101回目となる今春の弘前さくらまつりの開催は現段階で不透明だが、市など主催者側はコロナ禍での祭りの在り方を検討、開催も想定して準備を進めている。
 キーワードは「人の流れの分散」。弘前公園内に複数の新たな見どころを設け、本丸や西濠に集中しがちだった人の流れを分散させることが狙いだ。
 新たな見どころづくりに用いるのは、イルミネーションなど「光の総合演出」。主役の桜を引き立てつつ、園内各所の隠れた見どころも際立たせるライトアップなどを検討する。
 20年9月に弘前公園で開かれた大型イベント「弘前城秋の大祭典」は、コロナ禍における祭り開催の試金石となった。メイン会場を四つ設けたことで人の集まりを分散。万一に備えた来場者の連絡先記入もスムーズで、イベント由来の感染拡大は確認されなかった。
 しかし200万人規模のさくらまつりで、人の流れが狙った形に分散されるかどうかは未知数だ。市は「見どころの設置、動線の分け方や露店の配置方法、よりスムーズな連絡先の記入方法など、さらに検討を重ねていく」と話す。
 さくらまつりは会期中すべてが混雑するわけではなく、満開時に近い晴れた日の数日間に集中する人出のピークをいかに乗り切り、流れを分散できるかがカギとなりそうだ。
 主催者側がさくらまつりの準備を進める一方、新型コロナの感染拡大状況次第で再び中止となる可能性はある。昨年の中止で痛手を被った地域経済がいまだ回復できない中、今春の開催はどうなるのか、地元関係者は不安を抱えながら状況を注視している。
 「弘前さくらまつりは、弘前の産業構造を支える屋台骨。今年もまた中止となれば、弘前はもたない」。弘前市ホテル旅館業組合専務理事で弘前東栄ホテル専務取締役を務める木村知紀さんは、さくらまつりが地域経済で果たす役割の大きさを指摘し、中止の可能性に危機感を募らせる。
 同ホテルにとっても、さくらまつり期間の売り上げは一年の3分の1近くにも及ぶが、中止による影響は宿泊業だけにとどまらない。
 「宿泊施設にはリネン類をクリーニングする業者、食材関係者などさまざまな地元業者が関わり、その各業者にさらに関わる市内業者がある。これまで支え合ってきた地域経済の連鎖が祭り中止により、負の連鎖として働いている」
 本来観光客が集まる春も夏もコロナ禍に阻まれ、客足が減る冬に突入。例年であれば「春まで乗り切れば大丈夫」と思えるが、先行きは不透明なままだ。
 東日本大震災発生後に東北が支え合ったように、コロナ禍でも市民が支え合えばさくらまつりは可能なのでは-と木村さんは開催を願っている。
 「市民一人一人が、誰にも感染させないという強い気持ちで対策を取り、弘前の街と弘前の桜を愛する“弘前愛”を結集させて、今年の桜を見ることができれば」と祈るように話した。

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祭りの在り方(下)=4

2021/1/5 火曜日

 

青森ねぶた祭中止を受け、代替イベントとして開催された「青森市民ナヌカ日ねぶた」。前代未聞のコロナ禍となった2020年は、手探りでさまざまな取り組みが企画された年でもあった

 本県の代名詞とも言えるねぶた(ねぷた)。情緒的な囃子(はやし)の音の中、豪華絢爛(けんらん)なねぶたと参加者が練り歩き、沿道は多くの観客でひしめき合う。祭りは新型コロナウイルス感染につながるとされる「3密」のうちの密集、密接が避けられず、制作現場も3密となるため、昨年は各地の祭りが中止に追い込まれた。ねぶたがもたらす影響は経済効果のみならず、伝統継承や地域コミュニティーなど多岐にわたる。苦渋の中止は、これからのねぶた史にどんな変革をもたらすのか。
 2019年夏には285万人を動員するなど、本県観光の要である青森ねぶた祭は、昨年4月に同年の祭り中止を決めた。現在の祭りの名称となった1958年以降、中止は初めて。
 「祭り期間は8月だが、ねぶた師にとっては冬から始まっている。制作のリスク回避や経済面を考えると、ぎりぎりの決断だった」と振り返るのは祭実行委員会の奈良秀則実行委員長。
 ねぶた師ら作り手の気持ちに不安要素があれば、制作時の安全面に影響が出る懸念もある。加えて4月上旬は旅行代理店で有料観覧席受付などが始まる時期に当たり、経済損失を少しでも抑えるには4月が瀬戸際だったという。
 それでも祭り中止で廃業を余儀なくされた事業者も。日本銀行青森支店が2007年に試算した同祭の経済効果は238億円に上り、関係事業者にとって経済的な打撃も大きかった。
 一方で、3密回避ができるインターネットを使った取り組みが活発化。中でも目立ったのが不特定多数の人から出資や協力を得る「クラウドファンディング(CF)」と動画配信だ。
 仕事のなくなったねぶた師の支援にと、青森観光コンベンション協会がねぶた師14人による特別ねぶたの制作・展示を目指すCFを行い、目標金額2500万円を上回る3546万2013円が全国から集まった。青森ねぶた運行団体協議会などは祭りの代わりに青森ねぶた囃子の無観客ライブを開催し、動画配信した。
 例年閉幕日に当たる8月7日には、祭実行委員会が人数制限を設けたねぶたの展示イベント「青森市民ナヌカ日ねぶた」を新たに企画。青森市民限定4000人の定員枠に1万人超の応募があり、関心の高さをうかがわせた。
 奈良実行委員長は「リモートなどはあくまで緊急避難。その時の問題に合わせた応急処置で、オーソドックスなわけではない」と説明。ねぶたはこれまでにも法改正によるねぶたの高さ制限に対応するなど、問題が生じるたびに対応してきたとして「青森ねぶたはずっと改革の歴史を歩んでいる」と述べ、今回の新型コロナも乗り越え、今年の祭り開催に決意をにじませた。
 青森ねぶた祭だけでなく、弘前ねぷたまつりも戦後初めての中止、五所川原立佞武多も大型ねぷた市街地運行が80年ぶりに復活した1998年以降初の中止に。ただ、両地域とも中止で終わらず、ねぷた絵の展示やオリジナル商品の開発、一部の団体による町内運行など、ねぷた、立佞武多に関連した代替の取り組みが展開され、市民らが祭りの灯を今年につないだ。
 五所川原立佞武多運行団体協議会の松本友義会長は「糸の切れたたこみたいな感じだ」と祭りのなかった昨年を振り返り「今年も中止となると協議会の各団体の気持ちをまとめていくのも難しくなる。何とか運行したい」と期待を込めた。
 弘前ねぷた参加団体協議会の中川俊一事務局長は、地域コミュニティーとしてのねぷたの在り方を「祭りを行う人たちが夏を共に越える一体感こそが弘前ねぷたまつりの醍醐味(だいごみ)。人と人とがつながっていくことに祭りの意義がある」とし、仮に弘前ねぷたまつりの中止が続いたとしても「人と人とのつながりをキープしたい。ねぷたは作れなくても、何かできることを考えたい」と力を込める。
 中川事務局長自身も「みんなでつくろう!!ONLINEねぷた」の実行委員会会長として、デジタル空間でのねぷた運行を昨年実施した。コロナ禍で行われた個々の取り組みをブラッシュアップし、各個人・団体の連携も強化してさらに発展させたいとし「コロナの時に得られた経験がこの先につながっていけばいい」と前を向いた。

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