科学で食育

 

2020/8/22 土曜日

 

 青森は食材の宝庫。本県には新鮮でおいしい食材がたくさんあるが、健康や美容にどんな効果をもたらすのかについて知られていないことも多い。そこで、身近にある食材を日々の生活に取り入れ“短命県返上”を目指す取り組みを進めている東北女子大学家政学部長で医学博士の加藤秀夫教授に、食材の効果や特徴について、実験から得た科学的根拠を基に解説してもらった。ビタミンCの効果、抗酸化力、消化力をテーマに3回にわたって紹介する。

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ビタミンC=上

 

ビタミンCの差を調べる実験。試験紙の色は(右から)パプリカ、レモン、野菜ジュースの順に濃い結果となった

「ビタミンCでこの夏を乗り切ってほしい」と話す加藤教授

 初回のテーマは、野菜や果物などに多く含まれる、誰もが知る栄養素「ビタミンC」。
―実験について紹介して下さい。
 人気シンガー・ソングライターの米津玄師さんの曲の題材でよく知られる食材レモンとパプリカ、それに、多くの人が飲んでいる野菜ジュースについて、ビタミンCの差をビタミンCを検出することができる試験紙で比べてみましょう。
―結果はどうなりますか?
 パプリカ、レモン、野菜ジュースの順で試験紙の色が濃くなりました。一目瞭然ですね。
 酸っぱいとビタミンCが多いわけではありません。野菜ジュースでビタミンCを取っていると思い込む人もいますが、実はパプリカやレモンに比べて、ビタミンCの量は少ないのです。
―ビタミンCの特徴を教えて下さい。
 多くの哺乳動物は体内でビタミンCを合成することができます。ところが、ヒトやモルモットなどの一部の動物は、合成に必要な酵素がなく、ビタミンCをつくることができません。食事から摂取しなければならないのです。
―ビタミンCの働きは?
 ビタミンCは、皮膚のメラニン色素を増やさないことから日焼けを防ぐ作用や、体の抵抗力を強める働きがあります。ビタミンCが不足すると体脂肪がつきやすくなることや、血管がもろくなることも知られています。
―ビタミンCの1日摂取量は。
 ビタミンCは成人で100ミリグラムとれば十分で、実際に体内で使うのは30~40ミリグラム程度といわれています。熱に弱い性質があるので、かんきつ類で取るのがいいでしょう。
 健康と美容のナンバーワン栄養素「ビタミンC」で、この夏を乗り切ってほしいですね。

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抗酸化力=中

2020/8/23 日曜日

 

リンゴ、バナナ、青汁を活性酸素の溶液に混ぜ、抗酸化作用を調べた結果。試験紙の色は基準の色(左端)よりも(右から)バナナ、リンゴ、青汁の順に薄かった
トマトとトマトジュースの活性酸素を比較すると、試験紙は生のトマトの方が薄い色を示し、活性酸素を壊す働きが強いことが分かった

 今回の実験では、本県が誇る果物リンゴと、気軽にスーパーで手に入るバナナ、健康食品の中でもすっかりおなじみになった青汁の抗酸化力を比べます。本県で7月から10月にかけて旬を迎えるトマトとトマトジュースの抗酸化力も比較してみましょう。
―実験について教えて下さい。
 世界中が新型コロナウイルスと闘っている中、私たちが今できることは、食生活で自分を守ることです。
 では体の免疫力をアップするためには、どうしたらいいのでしょう。まずはタンパク質を取ることです。次に、病気の元になる活性酸素を分解させることが大事なので、野菜をたくさん食べなければなりません。
 今回は免疫力を低下させる活性酸素をやっつけるための食材を見つける実験です。
―結果はどうなりましたか。
 活性酸素の溶液に食材を混ぜ、試験紙の色を比較します。
 試験紙の色は、青汁に比べバナナとリンゴが薄くなりました。同じ実験で、生のトマトとトマトジュースを比べると、トマトの方が薄くなりました。
 試験紙の色が薄いほど、活性酸素を壊す働きが強いということです。
―抗酸化力とは何でしょうか。
 体の中で増えた活性酸素を除去していくことが老化やがん、生活習慣病などの予防になります。活性酸素から体を守ることを抗酸化作用といいます。
 抗酸化作用があるということは、新型コロナに立ち向かう免疫力を付けるということにもつながります。
―本県で親しまれているリンゴとトマトについて教えてください。
 本県を代表するリンゴに含まれるリンゴポリフェノールは、皮の部分に多い抗酸化成分です。リンゴのおいしさは程よい酸味と甘みに加え、みずみずしい歯応えも心身の健康に最適ではないでしょうか。
 青森は日中と夜間の気温差が大きく、生産されるトマトは、色が鮮明で味が良く、保存性が高いです。こうした特徴を持つトマトに含まれるリコピンは、最強の抗酸化ビタミンで過酸化脂質の生成を抑制します。
 新鮮なリンゴや旬のトマトで免疫力を上げ、新型コロナを吹き飛ばしたいですね。

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消化力=下・完

2020/8/25 火曜日

 

消化力を調べる実験に使用するみそ(左)としょうゆ
大根下ろしのみを入れた溶液(左)に比べて、みそ(中央)としょうゆを入れた溶液は色が薄くなった

 新型コロナウイルス感染拡大が懸念される中、これまで免疫力アップに効果が期待できる食材などを紹介してきました。最終回は「消化力」がテーマです汁物や味の決め手として食卓に欠かせないみそとしょうゆについて、その消化力を実験を通じて紹介します。
―実験の内容と結果を紹介してください。
 主食の米やパンに含まれるデンプンは、食品の60%を占めると言われています。このことを踏まえた実験です。
 デンプン溶液にはブドウ糖がたくさんありヨウ素を入れるとデンプンの構造とヨウ素が絡み合って色が付きます。デンプンが消化されたり、吸収されやすい形に変わったりすると、ヨウ素と結合できなくなり、溶液の色が薄くなります。
 みその溶液もしょうゆの溶液も色が薄くなるということは、消化が進んでいるということです。
 実験での大根下ろしは、唾液の役割を果たしています。
―消化を助ける食事とは?
 お年寄りの場合、胃がもたれたり、食べたものがいつまでも胃に残っていたりして、食事が進まないことがあります。これは、消化力が落ちていることが考えられます。
 そんな時のみそ汁一杯は体にいいですね。汁物を取ることで、食べた物を体に利用できやすいものに早く変えるからです。
 おにぎりを食べる時も、梅干しやオカカで塩分を少し加えたり、汁物を一緒に取ることで消化を助ける働きがあります。
―食塩は体に必要なのでしょうか。
 食塩は大切な栄養素で、体液と血圧の調節をしています。食欲を高めたり、消化吸収やエネルギーをつくったりすることに不可欠なミネラルです。高血圧を予防するためにはもちろん減塩も必要ですが「適塩」を心掛け健康的な食生活を目指してくださいね。
―最後にメッセージをお願いします。
 新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、おいしい食べ物を体に取り入れて元気になることが、皆さんの免疫力アップにつながります。免疫力アップにはビタミンCが重要。消化機能もみそやしょうゆなどでサポートすることがいいでしょう。
 子どもたちが意欲や関心の湧く取り組みを通じて、言葉だけでなく実験で客観的に物事を確かめて判断する力を身に付けることや、勉強することがいかに楽しいかということを伝えていきたいですね。

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