漂泊の再処理

 

2020/7/31 金曜日

 

 6年半をかけ、紆余(うよ)曲折の果てに国の安全審査に正式合格した再処理工場。合格までの歩みを振り返りながら、今後の課題について考える。

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合格への道のり=上

 

国の安全審査に「正式合格」した六ケ所村の再処理工場=2020年7月15日

 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)が29日、原子力規制委員会の安全審査に正式合格した。2014年1月の申請以降、6年半にも及んだ合格への歩みは、数多くのトラブルの歴史でもあった。
 合格実績がある原発と異なり、前例がない同工場の審査では議論が大詰めを迎えては仕切り直しを繰り返すなど一進一退。議論が終盤を迎えた19年以降も審査書案のたたき台の見直し、航空機落下など一部重大事故対策の追加審査もあり、補正申請書の提出回数は21回に上った。
 安全審査の長期化を招いた一因はトラブルの多さだ。規制委への審査申請以降、とりわけ重大なトラブルに当たる「保安規定違反」はこれまで計7件発生。年1回のペースでトラブルが発生している計算だ。特に17年夏の非常用電源建屋への雨水浸入を発端とした長年にわたる設備未点検問題など、ずさんな管理が露呈。核燃料を取り扱う企業の在り方に疑義を抱かせた。
 「改善活動」という名の体質自浄化のため、審査中断を申し入れた原燃に対し、規制委の目は冷ややかだった。田中知委員は「安全確保上の問題が改善できないなら、規制委としてもしかるべき対応を取る」(17年10月の定例会)ときっぱり。その後半年を経て規制委に審査再開を申し出た原燃に更田豊志委員長は「多くが規制以前の問題。再びあれば致命的」とくぎを刺した。
 直近の「保安規定違反」は19年8月の同工場での排風機停止。協力会社から事前にベルトの仕様が異なるとの指摘を受けていた社員が正しい対応を行わないといった安全意識の低さが、トラブル発生を招く結果となった。
 原燃の同工場などでは今年度に入ってからも人身事故が6件と頻発。正式合格を間近に控えた7月中旬には、同工場で試験運転の際に生じた放射性廃棄物などが、規定外の場所に長期間置かれたままとなっていた不適切管理が明るみになった。
 7月1日、同工場を視察した梶山弘志経済産業相は、原燃社員に向けた訓示の中で「信頼回復」のフレーズを3度にわたり繰り返すなど、原燃の企業姿勢を厳しくただした。
 審査合格翌日の30日、原燃の増田尚宏社長は県庁を訪問。三村申吾知事に対し「重要な問題発生の予兆を捉え、未然に防止する活動を継続的に進めることで昨日より今日今日より明日』へと事業改善に努めていく」と述べ、トラブルや労災の再発防止を誓った。
 今後もトラブルが相次げば、正式合格が空手形化しかねない。安全確保への責任と姿勢が問われている。

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完成へ険しい道=中

2020/8/1 土曜日

 

再処理工場の審査書交付後、記者団の質問に答える増田社長(左)

 新規制基準に「合格」した日本原燃の再処理工場(六ケ所村)だが、2021年度上半期の完成目標は厳しさを増している。今後は「設計及び工事の計画の認可(設工認)」や使用前事業者検査の審査などが控える。原子力規制委員会側は設工認について「緻密な作業が必要」とし、最低でも1年以上は必要とみているが、原燃側は類型化などでスリム化を図り「(審査期間を)1年以内で終わらせるように、もっと短くなるように取り組む」(増田尚宏社長)と意欲を示す。
 規制委は6月24日の定例会で、設工認や使用前検査の審査の進め方について方針を示した。
 定例会に先立って開かれた6月1日の審査会合では、原子力規制庁が原燃に設工認に対する基本方針をただした。原燃側は10月にも4分割して申請する方針を示し、7月半ばには申請スケジュールを示すと回答した。しかし規制庁の審査担当者は7月29日、「原燃から思ったようなアクションはない」と語った。
 規制庁の幹部は「審査には効率性が求められると思うが、原燃が言ってこない。普通はこんなことを考えてますと言ってくる」とし、「本気でスケジュールを考えた時、現在の完成目標とそごが生じるから言えないんじゃないか」と突き放す。
 一方、原燃の増田社長は審査書を交付された後の会見で、規制委の更田豊志委員長の言葉を引用しながら「規制庁と議論しコミュニケーションを取りながら準備を進めている。設備・機器の数は多いが、われわれがいかにうまくまとめられるか、審査を効率的に進めるため頭をひねっている」と説明する。
 設工認の審査と並行し、事業者による使用前検査の進め方も議論される見通しだ。経年劣化した機器は相当数に上り、その健全性については追加の試験をせず、書面で了解されるかも焦点となる。
 「機器の健全性の評価をどう検査に織り込むか、その検査も審査して適切か、充足性があるのか、規制庁の確認に耐えられるものかが問われる」
 設工認の方針が議題となった6月29日の審査会合では、規制庁の審査担当者が使用前検査についても説明し、その要求レベルの高さをうかがわせた。
 規制庁の長谷川清光管理官は「合格はしたが、本当の意味での安全対策が始まる」とした上で、「設工認の体制を強化するとしているが、何百人かの実働部隊を束ねる、マネジメントできる人間がいない。これは常に付きまとう原燃の体質の問題」と指摘した。

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サイクルの行方=下・完

2020/8/2 日曜日

 

安全対策工事が着々と進む再処理工場の工事現場。竣工(しゅんこう)、操業の先の核燃サイクル政策は不透明なままだ=7月15日

 「核燃料サイクル政策は限界にきており、政治決断すべき時期ではないか」
 原子力規制委員会が再処理工場の審査書案を了承してから1週間後の5月19日、国会では衆院の原子力問題調査特別委員会が開かれた。質問に立った荒井聡委員(立憲)は、余剰プルトニウムを出さないため、再処理工場は稼働させるべきではないと主張した。
 再処理工場では原発で使用した核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、隣接する工場がウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を作る。
 このMOX燃料を国内の原発16~18基で再び使うのが「プルサーマル発電」計画だ。
 現在、プルサーマル発電を行っているのは高浜原発や玄海原発など4基しかない。6基が再稼働を目指して審査中だが、目標には遠い。プルサーマルが進まない中、再処理工場の先行きも不透明だ。
 プルトニウムは核兵器の原料にもなり得るため、必要量以上の保有は許されない。
 日本は2018年末時点で45・7トンのプルトニウムを保有。平和目的に限定することで、国際的にも認められてきたが、北朝鮮やイランの核開発を受け、国際的なプルトニウム監視が強まった。
 内閣府の原子力委員会は同年、保有量を減少させる「基本的な考え方」を策定。再処理工場の稼働に当たっても、プルサーマルとのバランスを重視する方針を示した。
 衆院の委員会審議で荒井氏がプルトニウムの消費計画をただしたのに対し、資源エネルギー庁は「仮に10基でプルサーマル発電すれば年6トン消費できる。計画通り16~18基なら8・5~10トンとなり、再処理工場がフル稼働時に生成する年6・6トンを消費した上で、保有プルトニウムも減らせる」と答えた。
 荒井氏は「計画自体が非現実的。原発の耐用年数は原則40年。国内の原発は30年を超えているものが多く、今後10年ほどで限界になる。保有プルトニウムの消費すら不可能で、再処理工場を動かせば国際公約を守れない」と指摘、サイクルからの撤退を説いた。
 NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長も「プルサーマルで使ってもより有害な使用済みMOX燃料が生じるだけ。ましてプルサーマルが進まない状況で、使う当てのないプルトニウムを取り出す意味はない。持っていれば国際的に非難される」と述べ、「サイクル政策から速やかに撤退すべきだが、再処理が注目されている今だからこそ
議論が必要だ」とする。

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