櫻田市政任期折り返し - 弘前 -

 

2020/4/20 月曜日

 

 「市民生活第一」を掲げ18年4月の市長選で初当選した櫻田市長は、任期4年を折り返し3年目に入った。櫻田市政の任期前半を振り返る。

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市民目線=上

 

市は搬入される事業系ごみの内容物を確認して指導を徹底するなどし、適正化を推し進めた=2019年12月、弘前地区環境整備センター

 「弘前市民会館は市における文化振興のシンボル的拠点施設。市民会館の指定管理者選定に関する議会判断は企業ファーストと受け止めたが、市は今後も市民生活を第一に、市民目線に立ち、市民感覚を大切に、全力で市民ファーストの市政運営に努める」―。
 2019年12月20日、市議会定例会最終日の本会議で、閉会に当たってあいさつした櫻田宏市長は、市民会館の指定管理者選定の議案を否決した議会に対し、こう述べて自身の立場を強調した。
 指定管理者を地元業者グループから、地元企業も加えた県外業者主体のグループとする議案をめぐっては、常任委員会の審査段階からもめていた。
 「指定管理者は地域貢献する地元業者にすべき」「市民のため、より文化振興を図る実力のある県外業者も入れたい」。議会と市の議論は平行線のまま最終日を迎え、櫻田市長のあいさつは物議を醸した。関係者は「市長は市民会館を利用する“市民目線”を貫いた。物腰柔らかに見え、実はなかなかの“じょっぱり”」と評する。
 櫻田市長が、3選を目指した当時の現職葛西憲之氏を大差で破って初当選し、新市長に就任したのは18年4月16日。市民から反発の声が多かった家庭系ごみ指定袋制度導入を公約通り中止し、県内自治体で最下位クラスにあるごみの多さを解決するため、減量化・資源化する施策を展開した。
 「市民力を生かす」とする取り組みに懐疑的な見方もあったが、市は特に課題となっていた事業系ごみの分別適正化を強化。事業者説明会を重ね、搬入されるごみについても内容を確認し、分別が不適正な場合は受け入れを拒否する搬入規制も導入した。
 これらの取り組みから、事業系ごみの不燃ごみは昨年12月で前年同月比85・0%の大幅減。不燃ごみに混入していた缶やペットボトルなどの分別が適正化され、資源化量は同比34・5%増となり、市担当課は「市の取り組みに事業者側が本気になって応えてくれた」と評価する。
 家庭系ごみについても各町内会を通して協力を呼び掛けた。市町会連合会の小山三千雄副会長は「ごみ袋の有料化や指定袋の導入には反対の声が多かった。櫻田市長が指定袋導入をやめたこともあり、皆が減量と資源化に協力した」と話す。
 ごみは重さで計量されるため、庭などの手入れをする市民には草木を乾燥してもらうよう呼び掛けたり、軟らかくなったリンゴを生ごみに出さず肥料に再利用してもらったりする工夫を展開。「市民力の結集がごみの減量につながっている」と小山副会長は見る。
 「市民目線」を掲げる櫻田市長は今も「決断力スピード感実行力」を誇った葛西前市長時代と比較されることが多い。
 ある議員は「市長が替わり、市民をわくわくさせる大きな夢が掲げられなくなった」と嘆息。別の議員は「前市長の華やかな事業後に残された“負の遺産”の後始末に追われた2年間。櫻田市長自身、歯がゆい部分があるのでは」と推察する。
 市財政を見ると、前市長時代に国の有利な財源を活用して大型建物の改築を進めた結果、施設維持費が増加。高齢化に伴い扶助費も増加傾向にあり、新たな事業を打ち出す際の足かせとなっている。
 市の財政構造の弾力性を示す経常収支比率は19年度で98・2%となる見込み。3カ年平均が95%を超え、県に財政運営計画を提出して改善を図る状態だ。厳しい財政下で、市民の理解と協力を得ながら、市民が求める施策をどのように展開するのか。任期後半も難しい局面が続く。

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新中核病院=中

2020/4/21 火曜日

 

新中核病院の整備・運営に関する基本協定を結んだ県、国立病院機構、弘前大学、市の関係者=2018年10月4日

 櫻田宏市長就任から約1カ月後の2018年5月。東京都の企業が市の委託を受けて提案した、地域包括ケアに関する資料の全容が明らかになり、関係者の間で波紋を呼んだ。
 医療資源を集約し、市が主体となって運営する中核病院、在宅医療などを支援するセンター、スポーツクラブなどを一体的に整備する方向性が示されたものだ。葛西憲之前市長時代は「内部の検討材料にすぎず、市の構想案ではない」と一部しか開示されなかった。
 ある関係者は「前市長がこの方向に向かおうとした可能性は高い」と指摘。「周囲の声に耳を傾けず、市は関係機関から孤立していた。仮にこの方向で形を整えたとしても、医師確保を含め恐らくプラン通りに進まなかったはず」とし、いずれ破綻した―との見方を示す。
 中核病院は津軽地域全体の2次医療を担う施設として、市立病院と国立病院機構弘前病院を統合することが想定されていたが、葛西前市長は17年12月、市が運営主体となることを目指す方向へかじを切った。津軽地域の医療を担う病院ながら、自治体が支出すべき整備費負担は弘前市のみに集中するのでは―とささやかれていたことも背景にあったとされる。
 葛西前市長は高齢化社会を見据え、「地域包括ケアの拠点となる中核病院」というこれまでにない構想を打ち出したが、自治体が担う地域包括ケアと、津軽の2次医療を担う中核病院を一体化させた構想をいぶかしむ声も上がるなど、協議過程で医療関係者や周辺自治体との間には溝が生じ始めていた。
 代わって18年4月に就任した櫻田市長は、県の提案に沿って中核病院整備を進める考えを早々に示した。市長選への出馬表明当初から、津軽地域の住民の命を守るには早期整備が必要―との考えを示していた櫻田市長は、「整備にはいろいろな手法があるが、県の提案を精査し、最も早く建設できると判断した」と振り返る。
 櫻田市長は非公式に各関係機関を訪ねて調整を図ったともされており、18年10月4日には県、国立病院機構、弘前大学、市との間で基本協定を締結。新中核病院は現在、22年早期の運営開始が予定されている。
 ある関係者は「市長が代わっていなければまだ、計画段階でもめていたとしてもおかしくなかった」と漏らす。その一方で「これまで国内で見たことのない、新しい病院が誕生していたかもしれない」と、前市長の計画が未完で終わったことを惜しむ声もある。
 県は今年2月、新中核病院整備については20年度から2カ年で計30億円の補助を行う方針を明らかにした。これにより、国立病院機構の負担の軽減が図られたほか、市の負担額は当初予定していた40億円から20億円に半減された。
 県の方針を受けて櫻田市長は「40億円の負担が必要と認識し、その決意で臨んでいたが、市の厳しい財政状況を認識し、県側が配慮をしてくれた」と感謝を表明。関係者は「周囲の声に耳を傾けながら整備を進めた、櫻田市長の手腕に対する評価の一つになるのでは」と語った。

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広域連携=下・完

2020/4/22 水曜日

 

津軽圏域14市町村長らが連携への思いを表明した=2019年7月

 2019年7月、鯵ケ沢町の七里長浜港を「津軽港」に名称変更することなどを盛り込んだ要望書が、津軽地域の14市町村長連名で港湾設置者である県に提出され、12月に名称が変更された。
 「七里長浜港利用促進協議会」の会長として名称変更に関わった弘前市の櫻田宏市長は、「三方を海に囲まれた本県には陸奥湾の青森港、太平洋の八戸港がある。日本海は“津軽港”が良いとの意見で14市町村長が一致した」と振り返る。
 「これまでは“鯵ケ沢の港”と見られることもあったが、今は“津軽の港”。名称変更は、津軽地域14市町村長が共に行動する試金石になったのでは」と平田衛鯵ケ沢町長は語る。
 青森市から五所川原、つがる両市を経て鯵ケ沢町までを結ぶ津軽自動車道の全面開通も視野に、「津軽港が津軽の物流を担い、産業や経済を発展させる一大拠点になれば」と期待を寄せる。
 櫻田市長は任期前半の2年間に、津軽地域8市町村によるごみ処理広域化の協議会設置、14市町村による津軽港への名称変更要望のほか、弘南鉄道の沿線5市町村による同社支援といった広域連携に携わった。
 「弘前は弘前のみで経済社会が成り立たない。広域市町村が各自の強みを生かし、不足部分を補い合う関係が必要になる」と強調し、任期後半における施策展開の柱にも広域連携を掲げる。
 中でも今後の進展が注目されるのが、14市町村で観光によるかじ取り役を目指す地域連携DMOだ。ある観光関係者は「DMOはイメージがつかみにくいとも言われるが、先駆けとも言えるのは“弘前感交劇場”」と弘前市内で展開された観光の取り組みを挙げる。
 弘前感交劇場は市内のさまざまな観光資源にスポットを当て、行政・民間を含む多種多様なネットワークを形成し、さまざまな仕掛けをした。地域連携DMOは同様のネットワークを14市町村に構築することに加え、データの収集・分析をしながら観光の戦略づくりを推し進める。
 JR東日本秋田支社の橋本渉弘前駅長は「これまでも各自治体と観光の在り方を模索してきたが、地域連携DMOが本格化すれば情報の窓口も一本化される。弘前駅が玄関口となり、あらゆる交通で津軽圏域を周遊してもらえる仕掛けづくりに協力したい」と意欲。
 五所川原市と中泊町を結ぶ津軽鉄道の澤田長二郎社長は「全国的に民間鉄道は厳しい状況にあるが弘南鉄道とも協力し、点と点の観光資源をつなげて面に広げ、盛り上げていきたい」とし中弘、西北が一体となった観光の在り方に期待する。
 「“津軽藩”の復活だ。若い人たちが夢と誇りを持って暮らしていける地域づくりへの第一歩となる」。
 19年7月、津軽圏域14市町村の首長らが一堂に会したDMO設立に向けたキックオフイベントで、高樋憲黒石市長は広域連携への意気込みと期待を“津軽藩”になぞらえた。
 地域連携DMO「一般社団法人Clan PEONY(クランピオニー)津軽」は4月1日に発足。クランは「藩、仲間」などの意味があり、ピオニーは津軽家の家紋でもあるボタン。津軽家の家紋はボタンの花に一対の7枚葉が描かれ、葉の枚数は偶然にも地域連携DMOの構成市町村数と同じ14となっている。
 地域連携DMOをはじめとする広域連携について、櫻田市長は「自治体が緩やかな共同体としてつながり、互いを褒め合い、魅力ある地域として支え合うことを目指したい」と重要性を語り、今後のさらなる発展に意欲を示した。

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