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歴史ある城下町であり、さまざまな技術や西洋文化を取り入れたことで“ハイカラ”な雰囲気が街並みに残る弘前市。ハイカラと言えば洋館が代表選手だが、昔から街に根付く和菓子屋にも見ることができる。
今ほど洋菓子が盛んではなかった時期に登場した洋菓子、洋菓子のような和菓子―。新しいものを取り入れながら、職人たちが試行錯誤して作り上げた弘前の「レトロ菓子」を探してみた。
2020/3/3 火曜日
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歴史ある城下町であり、さまざまな技術や西洋文化を取り入れたことで“ハイカラ”な雰囲気が街並みに残る弘前市。ハイカラと言えば洋館が代表選手だが、昔から街に根付く和菓子屋にも見ることができる。
今ほど洋菓子が盛んではなかった時期に登場した洋菓子、洋菓子のような和菓子―。新しいものを取り入れながら、職人たちが試行錯誤して作り上げた弘前の「レトロ菓子」を探してみた。
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上質なバタークリームによるかれんなバラが愛らしい「ローズ」 |
弘前市土手町にある老舗「開雲堂(木村ノブ代表取締役)」の店内には、和菓子に加えて洋菓子のショーケースがあり、どこかレトロで懐かしさを感じさせるケーキ類が並ぶ。かれんなピンクのバラがあしらわれたバタークリームのケーキ「ローズ」は、いわゆる「インスタ映え」もしそうな愛らしさだ。
同店は2代目店主の頃、東京都の老舗洋菓子店「ゴンドラ」の菓子職人が訪れて技術指導した経緯があり、大正時代の終わりごろから洋菓子を置いている。職人が変わることで商品内容も変化しながら現在に至る。上質のバタークリームで仕上げられたローズは、観光客にも「レトロでかわいい」と評判だという。
近年のケーキは生クリームを用いるタイプが主流だが、「もしバタークリームが少し苦手という方がいたら、冷蔵庫で冷やし、クリームを硬めにした状態で食べてみてほしい」とのこと。ひんやりしたバタークリームの食感も格別の味わいだ。
2020/3/4 水曜日
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焼きメレンゲとバタークリームで真っ白に仕上げられた「エンゼルケーキ」 |
弘前市本町の「旭松堂」(山本清寛代表取締役)は気温があまり高くない時期に、「エンゼルケーキ」を出している。表面を細かな焼きメレンゲが覆い、断面にはこだわりのバタークリーム。真っ白なケーキを「津軽の雪のよう」と評するファンもいるのだとか。
卵黄を使う和菓子「桃山」を作る際に出る大量の卵白を用い、卵白仕立てのケーキとして販売し始めたのは1965(昭和40)年前後。当初はエンゼル型の生地に粉砂糖を振るシンプルなケーキだったが、少しずつレシピが変わって現在の形になった。
口溶けのよいバタークリームとさっくりした生地にアクセントを添えるのが焼きメレンゲで、食感を計算した上で丁寧に手作業で細かくしている。店は現在4代目だが、手掛けているのはバタークリームにこだわる3代目。
4代目清寛さんは「時代に合わせて作られたケーキ。ひいきにしてくれるお客さまのためにも大切にしたい」と話した。
今年は5月ごろまで販売予定。
2020/3/5 木曜日
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甘酸っぱい紅玉のジャムがふわりとしたカステラ生地を引き立てる「ワップル」 |
弘前市本町にある東北でも指折りの老舗「大阪屋」(福井清代表取締役社長)。伝統ある菓子が並ぶ中、洋風のたたずまいを見せるのが「ワップル」。焼いたカステラ生地で紅玉の甘酸っぱいジャムを挟んでいる。
ワッフルで“アップル”ジャムを挟んでいることに由来する名称で、昭和30年ごろから登場。甘過ぎない生地がジャムの濃厚な味わいを引き立てる。「ジャムにはほかの品種も試したが、紅玉以外でこの味が出せない」(福井さん)ため、毎年収穫時期はできる限りの紅玉をかき集める。
型焼きしたカステラ生地は、ふわりとしつつかみ応えもある。このカステラ生地は近年主流のしっとりと柔らかなものより古い作り方に分類されるようだ。弘前藩9代藩主津軽寧親はカステラを作っていたとされ、福井さんは「ワップル生地に近いかも」と話す。
県内でも作付面積が減少傾向にある紅玉が、懐かしくもハイカラな風情を持つ味わいを支えている。
2020/3/6 金曜日
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県内でも最初期に登場したチョコレートである(手前左から)ウイスキーボンボンと玉チョコ |
弘前市住吉町に本店がある「双味庵」(大和田善嗣代表取締役社長)は、店名に「和と洋の二つの味」という意味を持つ。創業したのは、今より和菓子の需要が高かった時代、洋菓子への関心が強かったという初代金蔵さん。赤いベレー帽をかぶって仕事をするハイカラな職人だった。
創業時から置いているのが、県内で最初期に登場したチョコレートである玉チョコとウイスキーボンボン。玉チョコの中身は煮詰めてクリーム状になった砂糖で、ウイスキーボンボンは中からとろりとウイスキーが出てくる状態の糖衣をチョコレートでコーティングした。いずれも和菓子の製法が応用されたチョコレートだ。
特にウイスキーボンボンは季節の温度や湿度を見極めながら職人の経験で作り上げるもので、非常に手間のかかる逸品。3代目の善嗣さんは「弘前の人たちのハイカラ好きに支えられたチョコレート。初代からの菓子なので、大切に作り続けたい」と話す。