Voice(ボイス) 津軽のトップインタビュー

 

まずは一歩踏み出す=13

2020/3/15 日曜日

 

ANEKKO(弘前市)
 代表取締役 村上美栄子さん(59)
弘前市宮地の施設内にあるレストランにて。直売所や自社の畑で取れた野菜を使うなど、地産地消に努めている。手にしてもらったのは嶽きみを使ったオリジナル商品のロールケーキとドレッシング

 農家の所得向上や地域活性化につながる農産物直売所の発想が浮かんだのが40歳。45歳で農業生産法人の代表となり、47歳の時には国の補助金を受けて、交流スペースを併設した直売所、レストラン、市民農園が一緒になった総合交流拠点施設を、岩木山を一望できるバイパス沿いにオープンさせた。
 結婚後は肥料や農薬、食品などを販売する夫・岩男さんの実家の家業を手伝っていた。客はほぼ農家。作った野菜が安く取引され、収入が労働に見合わないといった悩みを聞く機会が多く「何かしたい」とずっと考えていた。
 社名は津軽弁で「お嬢さん、お姉さん」を意味する「あねっこ」をローマ字表記に。自身の思いに共感した出資者13人のうち12人が女性であり、地域女性の活躍を願って付けた。直売所に農産物を納める会員約140人のうち8~9割が女性だ。
 「こんなにおいしいトウモロコシがあると嫁いでから知った」弘前市岩木地区特産の嶽きみ。会社は旧岩木町の「嶽きみオーナー制度」を引き継いだほか、生果では流通・販売できないB級品の活用と、収穫期間が短い嶽きみを一年中提供するため、6次産業化に着手。県内外の企業と協力し、粉状にしたものを菓子やドレッシングなどに加工して販売している。
 交流拠点施設として多種多様なイベントや講座を企画するだけでなく、地域文化の継承も目指す。途絶えていた地区の仮装盆踊り大会を復活したり、かつて多くの家庭で作られた干しもちでコンテストを行ったりした。地元に伝わる大絵馬の歴史を残したいと「津軽絵馬研究会」を有志たちと立ち上げ、会社は事務局を務める。
 座右の銘は「やってやれないことはない。やらずにできるわけがない」。迷っていてもとにかく一歩踏み出す姿勢でやってきた。
 「オープンからレジ打ちも接客も皿洗いもトイレ掃除もしてきた。社長室もないし」と話し、社員との距離は近い。社員からの提案・アイデアがあれば吸い上げ「面白そう。やってみるか」―で、すぐ実行に移せる“機動力”は会社の強みだと考える。
 2018年にはオープン時の1・8倍となる21万7600人が訪れた。講演する機会やメディア出演も増えた。「でも『実るほど頭を垂れる稲穂かな』で、てんぐになってはいけない。(起業してから)いろんな人との出会いが得られた。それは財産ですから」

※続きは本紙紙面をご覧ください。

 

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交通教育で日本一に=12

2020/3/1 日曜日

 

ムジコ・クリエイト(弘前市)
 代表取締役社長 新戸部洋輔さん(60)
弘前市和泉の弘前モータースクールの校舎前にて。社員70人、車両108台を抱える同校。全車種の免許が取得できる

 県内最大規模を誇る「弘前モータースクール」をはじめ、4校の自動車教習所を運営する。さあ行こう 君を乗せて鳥のように―で始まる同教習所のコマーシャル曲が、青森県民なら誰でも歌えると、テレビ番組で紹介されたことも。「県内では(社名より)モータースクールの方が認知度があります」
 1961年に「弘前中央自動車学校」として創業して以降、先進機材の導入や新しい
教習手法の開発、法制度の改革、自動車教習所で日本初のISO(国際規格)取得―といった先進的な取り組みを常にしてきた企業だ。
 「自動車教習所で一流になろう」との思いで会社を興した父の満男さん、顧客第一主義を業界でいち早く掲げ、全県の教習生数が減少に転じた後も卒業生を増やしていった兄の八州男さん。2人の意志を受け継いで2018年、代表取締役社長に就いた。
 「自動車教習所は斜陽産業」と話すように、少子化、若者の車離れ、都市部への人口流出などを背景に、本県の教習生数はピーク時の半分を切るまでになった。「人が集まる東京はまだ潤っているが、われわれ地方は危機感を持っている」
 長年行ってきた交通安全教育を企業向けに事業化したほか、ドローン(小型無人機)スクールを開講。「経営資源を有効に使える分野」で事業を拡大する一方、経営者として必要性を説くのは、企業活動を通じて社会的な課題を解決し、企業益と社会益を両立させる「CSV(価値の共創)」という考え方。「教習所で免許を取ってもらうだけでなく、交通事故を無くしていくことが持続可能な社会の役に立つ」からだ。
 「過去全て善」。船井総研創業者である故船井幸雄さんの言葉を、悩みがある時に思い返す。「起きたことを悔やんでも過去は変えられない。現在起きていることは必要・必然・ベストだと捉えると、くよくよせずに前向きになれる」
 創業50周年を機に会社は今後のビジョンを「日本一の交通安全教育研究会社になる」と決め、13年には経営理念を刷新。それに伴い、新理念を表した社名に変更した。目指すのは無事故(ムジコ)の社会をつくる(クリエイト)ことだ。
 「人口が減少し、高齢化も進んだ青森県だが、交通安全に関する部分で先進県になり、地方の教習所が持続可能な社会をつくるモデルになれたら」

※続きは本紙紙面をご覧ください。

 

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ライフ充実で好循環=11

2020/2/16 日曜日

 

I・M・S(弘前市)
 代表取締役 三上友子さん(44)
弘前市土手町の本社内にある教室にて。最近増えているという企業研修。課題や要望を細かく尋ね、各企業に合った研修を提案している

 「ライフの充実があってこそのワークの充実」を公言し、社員にもワークライフバランスを大切にしてほしいと願う。「人生の多くの時間を、ここ(会社)にいてくれると思えばありがたいこと。社員を大事にしたい」
 社員が働きやすいようにと時短勤務や時差出勤、テレワーク、遅番専門といった多様な働き方を取り入れてきた。社内に自然と芽生えたのは「お互いさま」の意識。情報共有やフォロー体制が整っており、子育てや介護のためだけでなく、趣味や習い事で休んでもいい。私生活(ライフ)の充実が仕事での好循環を生んでいる。
 主な業務はキャリア形成支援。職業訓練やキャリアカウンセリング、企業向けの各種研修などを行う。業務上必要な国家資格「キャリアコンサルタント」の取得費用は会社負担。社員31人中、17人が資格保持者だ。
 15年前までは全国展開するパソコンスクールの弘前店で職業訓練講師を務めていた。ある日の会議で突然、全スクールの閉鎖が決まった。「弘前は利益を上げていたので、他店の業績悪化で続けられないのがもったいなくて。なくなると困ると言う方もたくさんいた。そこで初めて起業を考えました」
 専門家に頼むと費用がかかるため、全て自分で調べ、会社設立に必要な書類を用意。従業員は3人。29歳での起業だった。社名の「I・M・S」は「IT Management Support」の略。前職と同じパソコンスクールが当初のメイン業務だったこともあり、「情報技術全般の取り扱いを支える」との意味で付けた。
 女性の起業支援や、ひとり親の子育て支援など、社会的弱者を助ける活動にも携わる。現在、準備を進めているのは障害者が働ける場所づくり。「カウンセリングしていると発達障害の人が多いと感じる。『特別』じゃないと社会全体がもっと理解し、その人の特性を知った上で仕事をつくらないと」
 6歳の女の子を育てるシングルマザーでもある。子どものためにパートでしか働けずに困窮したり、手当ありきの生活になったりしている母子家庭の現状を憂う。「フルタイムで働いてキャリアを積み、子どもの手が離れた時にもう一度輝けるような仕組みが必要。母親が主体的にキャリアを考えるようになれば、子どもたちが変わっていくはずなんです」。来年度はシングルマザー向けのセミナーや勉強会を開く予定だ。

※続きは本紙紙面をご覧ください。

 

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技術と誠意が信頼に=10

2020/2/2 日曜日

 

フジプラント(弘前市)
 代表取締役藤崎 和夫さん(73)
弘前市高田の本社にある研究用の小型CA冷蔵庫の前にて。15部屋あり、ここでさまざまな青果物の貯蔵実験が行われている。蓄積されるデータは「会社の財産」

 ほぼ1年中買える県産リンゴ。これを可能にしているのが、空気の組成を調整して青果物の呼吸を抑制し、鮮度低下を抑える冷蔵技術「CA貯蔵」だ。
 「フジプラント方式」と呼ばれる独自の技術を確立し、1984年の創業時に5%だったリンゴCA冷蔵庫の国内シェアを、8割まで伸ばした。
 大学卒業後に勤めた商社で、担当した業務の一つがCA冷蔵庫の設計・施工。「1人でやっていたので苦労したが、この時にほとんどの技術を身に付けた」
 13年後、別会社に引き抜かれた時、CA冷蔵庫の仕事を持って出た。5カ所あった納品施設の保守管理ができるのは自分だけ。責任を持ちたかった。当初は兼業していたが、転職先の社長に「うちの仕事に専念してほしい」と言われてしまう。
 「会社は自分がいなくても回る。でもCA冷蔵庫は自分がいないと困る人がいる」。38歳で独立を決めた。初めての契約は本県のリンゴ卸業者。「業界で信頼されている人だった。仕事を紹介してもらえ、創業年だけで6件の仕事が入った」
 ある農協から施設建設の話があり、手掛けたCA冷蔵庫を農協役員が視察することに。バスに同乗し、役員たちに訴えた。「私は独立したばかりで金も力もありません。ただ、絶対人に負けないと思うものが二つあります。技術と誠意です」
 視察直後の会議ですぐ施工業者に決定したと後で聞いた。誠心誠意取り組む姿勢が、リンゴ生産者でもある役員たちの胸を打ったからだった。
 確かな「技術」と「誠意」を尽くす営業姿勢が評価され、顧客数、売り上げともに増やしていった。
 2008年8月、受注した大型リンゴ冷蔵貯蔵施設が完成目前で全焼。溶接中の火花が原因で、けが人も出た。管理責任を問われ、損失は会社存続に影響を与えかねない3億円以上に。しかし翌年の売り上げは過去最高を記録する。「大変だろう」と案じた顧客から、前倒しで次々と仕事が入ったのだ。
 会社の危機に手を差し伸べてくれる人たちがいた。「だからこそ、業界のために頑張ろうと思い直しました。信頼を得るには普段の行いがいかに大事か。そこで見捨てられるか、拾って救ってもらえるかなんです」
 本社会議室の壁に、感謝状や表彰状が掲額されている。その数は約50枚。本県のリンゴ産業に長年貢献してきた軌跡であり、信頼されてきた証しでもある。

※続きは本紙紙面をご覧ください。

 

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りんご娘で人を呼ぶ=9

2020/1/19 日曜日

 

リンゴミュージック(弘前市)
 代表取締役 樋川 新一さん(49)
ライブのリハーサルに臨むりんご娘をバックに、青森市のリンクステーションホールにて。音響、照明にこだわり、観客を感動させる空間をつくり出すライブ。「地元の人にももっと見てほしい」

 座右の銘は「思いと行動」。「思い」は夢であり情熱。思うだけでは実現しない。「行動」し、情熱をぶつけて人の心を動かしてきた。大手芸能事務所「アミューズ」創業者の大里洋吉会長(青森市出身)ら各界の成功者に、手紙を書いて会ってもらい、アドバイスを受けたこともある。
 音楽・芸能活動で地域を元気にしたい―。Uターンして継いだ自動車整備販売業を営む一方で、子どもたちに歌やダンスを無料で教える「弘前アクターズスクール」を2000年に立ち上げた。同年誕生した「りんご娘」をプロデュースし、作詞・作曲も手掛ける。
 05年には芸能事務所「リンゴミュージック」を設立。現在はりんご娘ら3ユニットが所属する。彼女たちと練習生を含む15人が通うアクターズスクールでは、礼儀や社会のルールも厳しく教える。アイドル以外の道でも通用する人材を輩出するためだ。子どもたちの家庭環境はさまざま。時には自身の子ども以上に悩みに向き合い、育て上げてきた。
 津軽弁で話し、農業活性化をうたうりんご娘の人気は、今や全国に広がる。「(成木まで20年近く掛かる)リンゴの木と一緒。やっと軌道に乗った感じ」
 りんご娘は16年、高い歌唱力と圧倒的なダンスが認められ、ご当地アイドル日本一を決める「愛踊祭(あいどるまつり)」で、242組の頂点に立った。「(副賞で)一流クリエーターに曲をつくってもらい、転機にはなった。けれどブレークはしなかった」
 音楽ビデオの制作費や衣装代といった出費はかさむ一方。資金的にも厳しく、とうとうメンバー、スタッフを集めて告げた。「あと1年やってだめだったら解散しよう」
 この20年「もう終わりだな」と何度も思った。「すると神風が吹くんですよ」。17年、リーダーの王林さんが中央のアイドルグループに抜てきされた。半年ほどで脱退するが、その後、全国放送のテレビ番組に引っぱりだこに。「そこから追い風になりました」
 デビュー20周年にちなみ、春から全国20カ所でコンサートを行う。最終公演はホームの弘前市。「りんご娘の古里・青森県に人を呼ぶのが今年一番の目標。これからも仕掛けていきますよ」
 「地域のため」を貫いてきた20年。「必ず、都会と地方の『逆転の時代』が来ます。(略)青森県は、きっと全国からの注目・賞賛を浴びるはずです」。20年前に掲げた理念が現実になろうとしている。

※続きは本紙紙面をご覧ください。

 

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