社 説

 

移動販売車「広げたい買い物弱者支援」

2017/11/15 水曜日

 

 五所川原市の七和地区で、食材や生活用品などを積み込んだ移動販売車の運行がスタートした。人口減少や少子高齢化の進展に伴い、食料品店などが近所にない「買い物弱者」への支援と同時に、独り暮らしの高齢者の見守りをする役割を果たすことが期待される。
 移動販売車は、同地区活性化協議会(三上勝則会長)と青森県民生活協同組合(平野了三理事長)が協定を結んで実現した。県民生協は移動販売車と食材などを提供し、同地区が運行を担う。地区の2コースを週2回巡り、課題を見極め改善しながら年度末まで継続していく。
 同地区は今年1月末現在で、人口1944人のうち4割近くを高齢者が占める。近隣では商店なども減少し、買い物をするためには車で20分ほどかかる同市の中心部や青森市浪岡地区まで行く必要があるという。同様の状況にある地区は県内でも少なくないだろうし、全国の地方共通の課題とも言えよう。
 過疎化などにより商店が減少する一方で、インターネット通販が急速に普及した。通販に限らず、ネットで注文すると商品を届けてくれるサービスを行う小売店なども増えている。だが、高齢者らにとってネットはなじみにくい面が少なくないだろう。特に地方では移動販売車のような取り組みが必要だろうと思う。同様の動きが各地で広がってほしいとも願う。
 移動販売車の運行では国の補助金が活用されているようだが、行政の支援はまだまだ不十分と言わざるを得ない。総務省が全国87自治体に調査したところ、買い物弱者の実態把握に取り組んでいるのは約半数にとどまっていた。さらに移動販売や店舗開設、買い物代行などを行う事業者を調べたところ、193事業のうち約7割が実質的に赤字に陥っていることも判明している。
 一方で、買い物弱者対策を主に担う所管府省は決まっておらず、府省間の連携も深まっていない。買い物弱者の定義も明確ではなく、農林水産省は372万人程度、経済産業省は700万人程度とばらばらに推計しているのが現状だ。
 総務省は買い物弱者の暮らしを支援するため、国と自治体の積極的な関与が必要と強調。自治体による買い物弱者の実態把握と府省間の情報共有が欠かせないとし、国と地方自治体が積極的に対策を講じることが重要だとする通知を7月に関係府省へ出したが、その後どれだけ進展しただろうか。新年度政府予算編成に反映されることを期待したい。
 経産省によると、1996年から2014年の間に、全国の飲食料品小売業は42万店から17万店に減少した。その結果、「買い物に困難を感じる」高齢者の割合は17%に上っているという。行政にはスピード感を持って、買い物弱者支援に当たってもらいたい。

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決算検査報告「国民の血税、無駄遣い一掃を」

2017/11/11 土曜日

 

 会計検査院が安倍晋三首相に提出した、2016年度決算検査報告書によると、税金の無駄遣いといった指摘金額は874億円で、10年ぶりに1000億円を下回ったことが分かった。とはいえ、あまりに巨額の「無駄遣い」である。行政に従事する人たちは今一度、国民の血税を使っているという認識を新たにしていただきたい。
 報告によると、報告件数は前年度比32件減の423件。省庁別の指摘金額は国土交通省が最多の384億円。これに農林水産省157億円、厚生労働省80億円と続いた。指摘件数が最多だったのは厚労省で135件。1件の指摘金額が最も多かったのは、国交省が道路や河川の公共工事などを実施する自治体に対し、支出する社会資本整備総合交付金に関する案件だった。
 指摘されたうち、法令違反など「不当事項」は333件、計137億円に及んだ。中でも目を見張るのは、第2次世界大戦などの海外戦没者遺骨を収集するといった厚労省の「海外遺骨収集等事業」で、不当とされた支出金額が4億6325万円にも及んだケースだ。
 検査院が示した事例の中には、遺骨収集を行った現地で、担当職員が車の借り上げ料金などを実際の支払額より水増しした領収書を作成、事実と異なる内容の支払決議書を作成したとある。しかも、領収書は既に廃棄されたため計879万円が使途不明という状況である。「うっかりミス」や計算間違いなどと言い訳ができない行為であり、真相解明が待たれる。
 本県でも、交付金・補助金の申請に当たり、計算間違いや認識不足、解釈の誤りなどから、結果的に国から支払われた金額が不当と認められたケースが多数見られた。税金を原資とするこれら交付金・補助金に関してミスは一掃されなければならない。ただ、自治体などが補助金などを申請するに当たり、国が示したマニュアルや計算方法が難解との声も聞かれる。これも不当事項が多数見られた原因の一つではないだろうか。
 多くの地方自治体にとっては、これら交付金・補助金は地域発展の足掛かりとして活用したいものであろう。これが申請方法が複雑であったり、難解であったりで、不当とされるミスを誘発するものならば、国側も一考する必要がある。実際、検査院側から分かりやすくチェックシートを作成するよう省庁に指摘した例もある。
 水増し、使途不明金のような事例は論外だ。地方自治体が行う事業に対する交付金・補助金が結果として「不当」と認定されることで、事業主体の意欲をそがれることも避けたい。「無駄遣い」とされたのが国民の血税であるという認識を持ち、不当行為をなくする努力を関係者は心掛けてほしい。

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弘前で来年も1軍戦「今年以上の盛り上がりに期待」

2017/11/10 金曜日

 

 プロ野球1軍公式戦が来年も弘前市のはるか夢球場で開催されることが決まった。来年7月3日、楽天と今シーズン日本一のソフトバンクが対戦する。
 日本野球機構(NPB)が8日に来年のパ・リーグ1軍公式戦の日程を発表し明らかになった。弘前市での1軍戦開催は2年連続となる。
 はるか夢球場では今年6月28日に、楽天―オリックス戦が開催され、詰め掛けたほぼ満員の1万3227人が、プロ選手が見せる鮮やかなプレーに歓声を上げ盛り上がった。
 本県での1軍戦は1988(昭和63)年7月17日、県営球場で行われた広島―ヤクルト戦以来で、実に29年ぶりだった。ファンにとってはもちろん、県民待望の1軍戦。あの感動と興奮を再び味わうことができることになり、関係者や地元ファンは喜びに沸いている。
 1軍戦誘致を目標に掲げてきた弘前市は、プロ仕様の球場整備に力を注ぎ、総事業費約28億円を掛けて、はるか夢球場の改修工事に着手。防災機能も兼ね備えた施設とし、収容人数約1万4800人で、必要な照明設備や屋内ブルペンなどの諸室を備え、多目的利用が可能なボールパークとして整備した。
 同時に弘前商工会議所や野球関係者と一緒になって楽天野球団に要望書を提出したり、楽天の本拠地コボスタ宮城への1軍戦観戦ツアーを行ったりと継続的な取り組みを図ってきた。こうした粘り強い活動によって1軍戦誘致実現にこぎ着けた。
 弘前市は、今年の楽天―オリックス戦開催による市への経済効果は約6500万円、メディア露出を広告費に換算した宣伝効果は約2億円と試算。今後も年間複数回の1軍戦開催を目指していく考えを表明。8月には、市と弘前商工会議所、市野球協会が楽天本拠地の仙台市のスタジアムを訪れ、楽天野球団に対し、はるか夢球場で来年度も1軍戦を開催するよう要請していた。
 はるか夢球場では来年7月12日にプロ野球フレッシュオールスターゲーム2018の開催が既に決まっている。県内では初開催となり、若手有望選手のプレーを間近で楽しめる機会とあって、全国の野球ファンが注目する特別な一戦が期待されている。さらに2年連続の1軍戦も決まったことは何よりだ。
 はるか夢球場がリニューアルされた今年は、女子ソフトボールの国際大会なども行われ、多くの市民らが球場に足を運んだ。弘前市は「野球、ソフトボールの聖地というイメージを全国に発信したい」と誘客に努めており、今後も、はるか夢球場の利活用が図られ、県内外から人が集まるにぎわいの拠点となることを期待したい。同時に、一流選手のプレーに間近で触れた地元の子どもたちの夢を育む場となってほしい。

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自治体の基金「地方の実態踏まえ制度設計を」

2017/11/9 木曜日

 

 総務省は地方自治体の基金が2016年度末までの10年間に1・6倍に増えたとの調査結果を公表した。ただ、約7割は公共施設の老朽化対策や災害対応など将来への備えが目的。財務省側は基金増を理由に地方交付税の削減を主張しているが、一律削減は論外であり、地方の実態を踏まえた制度設計論議が必要だ。
 基金残高増をめぐっては、今年5月の財政制度等審議会(財政審)で財務省が「基金増は地方財政の余裕の表れ」と問題提起。これに総務省と地方側が猛反発し、総務省は地方の声を踏まえて実態を調査する考えを示していた。
 事態を重く見た県や県市長会など地方6団体も6月、総務省や自民党に交付税が削減されることがないよう要請。三村申吾知事は要請後、「当面は削減されないとの感触も得たが、引き続き6団体で行動していく」とし、国の議論を注視する考えを示している。
 その三村知事は03年に就任後、基金が底を突きそうだった県財政を立て直すため、公共工事の見直しや人件費の削減など歳出抑制を徹底。元金ベースでのプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化を図り、基金取り崩し額の圧縮、県債発行抑制に努めてきた。
 各市町村の財政環境も同様だ。6団体の要請直前、国会議員との意見交換の場で、県南の首長は市町村合併で職員や議員数を削減し、庁舎建設や学校改修など将来を見据えて基金を積み重ねてきたなどと説明。「(交付税削減の)議論自体に怒りを感じる。何のために血のにじむ思いで取り組んできたのか」と訴えた。
 調査結果を受け野田聖子総務相は、基金は地方の行政を将来にわたって安定的に運営していくために必要だとし、交付税削減に反対する姿勢を表明した。
 これに対して財務省は先月の財政審の分科会で、基金残高が過去最高となっていることを改めて持ち出し、地方創生関連事業費が積み残されている可能性を指摘。交付税の算定基準となる地方財政計画の見直しを主張する。
 しかし、地方の基金増は東京都の残高が3・6倍に膨らんだことも要因だ。都道府県の収入となる消費税収の配分は、事業者の売り上げに応じるため大都市に偏る傾向があるためで、財務省はこの配分ルールの見直しも提案している。
 今回の問題でも背景にあるのは、大都市への一極集中であり、特に地方で深刻な人口減少だ。
 地方の自治体は人口減で住民税が減り、労働人口減と相まって事業者の売り上げが落ち、結果的に税収が減ることを懸念する。それでも公共施設の老朽化などに対応しなければならず、備えが必要だと考える。また、東京都や23区と地方とでは事情も違う。消費税の配分ルールも含め、実態を踏まえた制度の在り方が問われている。

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ソウル線週5便化「県民の利用促進にも知恵を」

2017/11/8 水曜日

 

 今秋から、青森―ソウル線が1995年の就航以来初めて週5便(5往復)の運航となり、10月末には増便分の最初の便が青森空港を発着した。本県は現在、観光シーズンの真っただ中。紅葉や豊富な味覚、温泉など本県の秋の魅力を大いにアピールし、リピーター獲得などさらなる利用促進につなげてもらいたい。
 青森空港に到着した韓国人観光客に本県の魅力を聞くと、よく挙げられるのはやはり温泉や旅館。また青森のリンゴは韓国でも有名のようで、リンゴを味わったり、お土産に加工品を買うのを楽しみにしているという声もあった。紅葉の人気も高く、弘前公園には紅葉目当ての外国人観光客の姿が目立つという。これらは口コミも含めて本県の情報が一定程度届いているということ。就航から約22年、厳しい時期も変わらずに利用促進の取り組みを続けてきた成果だろう。
 今年の利用実績は10月30日までの速報値で利用者数が約2万9600人余りで、利用率は63・6%。夏季スケジュールの一部期間に機材を大型化したため、利用率こそ16年の75・1%を下回ったが、利用者数では16年同時期の2万8289人を上回り、好調のまま推移している。
 韓国人には冬のスキーや温泉も人気が高いため、閑散期に当たる冬も一定程度の利用が見込め、今後の期待も高まる。
 また週5便化となったことで、本県での滞在日数が伸びたことも観光関係者にとってはメリット。旅行会社が提供する同線を利用した本県ツアーはこれまで2泊3日が多かったが、増便後は3泊4日が主体。このため、従来から人気の高い弘前市や奥入瀬渓流に加え、新たに五所川原市の斜陽館や八戸市の八食センターなどが立ち寄り先として加わり、より多彩な楽しみ方が可能になったという。
 11月には台湾のエバー航空による青森―台湾間の定期チャーター便の運航も週2往復で始まり、本県を訪れる外国人観光客が増えることは確実。人口が減る中で地域経済を活性化するため、海外からの観光客の消費には一定の期待がある。
 増便で立ち寄る先が増えたように、今後は県内を広く周遊してもらい、関わる地域を増やしていく取り組みが必要だ。訪日ブームがいつまで持続するかは分からないが、観光事業者にとっては多様な外国人観光客に慣れ、おもてなしのノウハウを蓄積するチャンス。前向きに取り組み、ニーズの把握に努めてほしい。
 本県からの利用促進、アウトバウンドの取り組みも路線維持のために重要だろう。ソウル線の増便を記念し、新規にパスポートを取得して最初の海外旅行でソウル線を利用した場合、一定額を助成するなどの取り組みがあるが、より積極的な情報発信があってもいい。女性やシニア層、ファミリーなどターゲットを絞った旅の案内など、各国の関係者と連携した県民向けの取り組みにも期待したい。

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