社 説

 

りんご公園「“付加価値”発信の拠点に」

2017/11/29 水曜日

 

 県産リンゴの消費拡大に向けて輸出の重要性が高まる中、弘前市りんご公園を訪れる外国人観光客が増え続けている。輸出先に出向いたPR活動などに加え、品質の高い果実を生産する園地について理解を深めてもらうことは極めて重要。その意味で同公園を大いに活用したい。
 りんご公園を訪れる外国人観光客数は近年、おおむね増加傾向にある。2011年の東日本大震災の影響で一時落ち込んだものの持ち直し、昨年初めて1万人を突破。今年は今月8日現在で1万6661人に上った。同公園のインターンシップ(就業体験)に参加する留学生の応対も好評を得ているという。
 現状、アジア圏の客が目立ち、台湾、中国、香港、タイなどの順となっている。訪日観光客全体に占めるアジア圏からの客の割合が高いため、りんご公園を訪れる客に占める割合も高いのは自然と考えられる。さらに推察すると、台湾や香港は県産リンゴの主要な輸出先であり、現地で県産リンゴの認知度が高いことも影響しているのではないか。
 県内の自治体、リンゴ関係団体はこれらの国、地域の量販店などを毎年のように訪れ、県産リンゴをPRしている。こういった長年の努力で県産リンゴは現地市場で揺るぎない地位を確立した。他国産との競合が激しさを増す中、これからも地道に続ける必要はあろう。
 ただ、現地市場でのさらなる浸透、一層の販路開拓を目指すのであれば、別のアプローチも必要だ。リンゴの生産現場に消費者を招き、果実の品質の高さや安全性を知ってもらうことも有効な手段だろう。実際、海外のメディア関係者に園地を視察してもらうといったケースはしばしば見られる。
 幸い、訪日外国人客は急激に増加している。彼らを招かない手はない。生産者個々人で受け入れることは容易ではないが、りんご公園であれば、生産期間を通じて一定数の観光客を受け入れることは可能だろう。もちろん、果実自体の品質で勝負することが販売戦略の基本だが、他国産との差別化を図る上で、生産現場について理解を深めてもらうことは重要な意味を持つはずだ。
 りんご公園を訪れる外国人観光客が最も多くなる時期は、果実のもぎ取りを体験できる10~11月だという。さらに訪問客を増やすためには、収穫期前の誘客が必要不可欠。さまざまな作業工程を経て出来秋を迎えていることを体験してもらうことも一つの考え方ではないか。
 通年で果実を消費者に提供できる点が本県リンゴ産業の最大の強みだ。収穫期以外の時期にも果実を味わってもらい、園地や生産者の思いについても理解してもらう。こうした経験は来園した外国人観光客の記憶に「付加価値」として残るのではなかろうか。りんご公園をその拠点として今後も育てていきたい。

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冬期労災防止「軽視せず、対策の徹底を」

2017/11/28 火曜日

 

 積雪寒冷地の本県は、降雪や凍結などが原因の転倒や雪下ろし中の屋根からの転落、車両のスリップ事故など冬期の労働災害が多発する傾向にある。青森労働局と県内の各労働基準監督署は今年も11月1日から、冬期労働災害防止運動を展開し、対策の実施を促している。各事業所には積極的な取り組みを求めたい。
 運動期間は11月から2018年3月末まで。労災の発生状況や事例を記載したチラシを配って周知を図るほか、冬期労災防止に向けたチェックリストも配布、事業所に自主点検を呼び掛けるという。
 昨年度の運動期間中に発生した冬期労災の被災者(死亡および休業4日以上)は217人。15年度の同時期と比較して43・7%の大幅増で、過去10年間でも3番目に多かった。労働基準監督署の所管別に見ると、弘前管内(弘前市、黒石市、平川市、青森市浪岡、中津軽郡、南津軽郡)が57人と最も多く、津軽地域の事業所は特に注意が必要だと言えよう。
 冬の労災事故で最も多いのは、転倒事故だという。昨年度の被災者は179人で、全体の8割を占める。転倒ぐらい―と軽く考えてしまいがちだが、けがの多くは骨折などの重傷。昨年12月には津軽地方で2年ぶりに転倒による死亡事例が発生、2人が亡くなっており、決して軽視はできない。また昨年度は転倒に次いで交通事故が15件、墜落・転落が12件あったが、こちらもより重篤な災害につながることが想定され、対策が必須だ。
 労働局が転倒事故防止対策として例示しているのは、転倒しやすい場所を労働者に周知するほか、防寒対策と合わせて冬道に適した靴底の靴の着用を呼び掛けることなど。墜落対策には言うまでもないが、命綱を着けることが基本となる。また、夏に比べると冬は移動に時間がかかる。移動には十分な時間をみて、控えめな速度で安全運転を心掛けるなど、時間と気持ちに余裕を持ちたい。
 いずれも当たり前のことだが、労働者に意識して心掛けてもらうにはやはり事業所側の働き掛けが重要になってくる。誰もが知っているはず、と安易に片付けず、意識啓発に努める姿勢が必要だ。
 県内では今年1~7月の労災による死傷者が641人、うち死亡者が8人と多発傾向となり、労働局が業界団体に対策の徹底を要請するなど意識啓発を図ったばかり。本県は16年も年間死傷者数が1201人、前年比で約14%増と年間増加率で全国ワーストとなったが、17年の1~7月はその16年の同時期を上回るペースで推移している。例年、冬期の労働災害は本県の年間件数を底上げする傾向にあり、今冬の動向を注視したい。
 本格的に労働災害事故が増えるのは寒さが本格化する12月からという。労働者が事故で休業することは事業所にとっても大きなマイナス。今冬を事故なく乗り切れるよう対策に万全を期してほしい。

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北朝鮮の木造船漂着「不測の事態想定し対策を」

2017/11/25 土曜日

 

 秋田県由利本荘市で、北朝鮮から木造船で漂着したとみられる男性8人が保護された。「船が故障して漂着した」と話しており、過去の例に倣えば所要の手続きを経て帰国することになるだろう。
 同県に限らず、日本海側では北朝鮮から船が漂流してきたり、漂着したりする例が後を絶たない。県内では今月20日に中泊町、21日には深浦町に国籍不明の木造船が漂着したばかりだ。
 国際社会の制裁が強まる中、北朝鮮は国を挙げて漁業に力を入れているという。国連安保理決議履行のため中国は海産物の輸入を停止したが、韓国の専門家によると制裁後も国境付近では取引されているようだ。昨年12月には金正恩氏が平壌市民に大量の魚を振る舞ったと伝えられており、人心掌握に利用する可能性も指摘されている。
 今月7日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮は内閣拡大総会で「今年の水産物生産計画を超過して遂行する」方針を確認。同日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は社説で、冬場の漁業シーズンで成果を挙げるよう呼び掛けた。
 今回の漂着船には魚を集めるための電球が複数付いており、保護された男性はイカ釣り漁などをしていたと話している。深浦町の漁業関係者によると、ここ何日か日本海は荒れていたという。本県沿岸に立て続けに漂着した木造船も、北朝鮮の漁船である可能性は低くはないだろう。
 北朝鮮が漁業に注力しているのであれば、今後も同様の事案が発生することは十分に考えられる。由利本荘市に漂着した木造船も、潮の流れ次第では本県まで北上していたかもしれない。いずれにせよ、本県でも起こり得るということを認識しておきたい。
 今回は不慮の事故のようだが、脱北者が漂着することも考えられる。実際、深浦町では2007年6月に脱北した家族4人が小型船で入船した。県外では1987年1月に福井県、11年9月に石川県の能登半島沖で脱北者の乗った小型船が漂着している。不審な船や人物を見つけたら、警察などへ速やかに通報することを心掛けたい。
 一方で、万が一北朝鮮で有事が発生した際、船舶による攻撃や難民の脱出なども想定しなければなるまい。北朝鮮は2カ月以上、核実験や弾道ミサイル発射といった大掛かりな挑発をしていない。だが、米国がテロ支援国家再指定を決定したことで、朝鮮半島情勢は再び緊張局面に入る可能性が高まっている。自制していた挑発を再開する恐れがあるとみる専門家もいる。
 板門店で国家への忠誠心が高いとされる兵士が韓国へ亡命するなど、北朝鮮内で何らかの異変が起きていることも考えられる。不測の事態も想定し、対策を講じることが急がれる。

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子どものネット利用「大人側で見守る態勢づくりを」

2017/11/24 金曜日

 

 自分専用のスマートフォン、携帯電話の所持率は小学生が約3割、中学2年以上では5割を超える。この数字を多いと思うか、少ないと思うかは個々人の意識でだいぶ違うと思うが、子どもたちの世界でもインターネットがこれほどまでに深く浸透しているということだけは、共通の認識として持つことができるのではないか。
 スマホ、携帯電話の所持率は弘前市教育委員会が小学4年~中学3年を対象に行ったネット利用に関するアンケートの結果によるものだ。
 所持率を全国的に見ると、今年の小学高学年のスマホ所持率は6割、中学生は8割超というデータが、民間会社の調査結果として公表されている。単純比較はできないものの、弘前市の小・中学生の所持率は全国に比べると少ないようだ。だが、弘前市内でも小学4年以外の学年の所持率が16年度よりも増加しており、市教委は所持率の増加、低年齢化が今後も進むことを予想している。全国の動向を見ればこの予想は大いにうなずける
 言うまでもないが、ネットは便利なものだ。これまで知り得なかった情報が簡単に手に入り、国内はおろか世界中、どんなに遠い場所にいる人とでもネットを介してつながることができる。ネットがもたらす恩恵は大きいが、それゆえにネット特有の犯罪やトラブルも後を絶たない。大人でも利用には十分な注意が必要であり、社会などでの経験が未熟な小・中学生ならなおさらだろう。
 特にネット交流サイト(SNS)などではいじめを助長したり、犯罪につながったりするケースが近年、とみに目立つ。事の是非はともかく子どもたちへのスマホ・携帯電話の普及拡大が不可避な状況とすれば、便利ではあるが危険性も高い、ネットへの接し方や情報モラルの教育は大人の責任で成さねばならない課題だろう。
 アンケートでは、ネットで「嫌な思い」をした経験を問う項目があるが、無料通信アプリ「LINE(ライン)」での経験を挙げた人数が中学生で特に多く見られた。トラブルが起きた際の相談相手を聞いた項目では、小中全ての学年で「保護者」とした割合が最も高かった一方、「誰にも相談しない」と答えた児童生徒が3~5%だったという。
 相談しない割合が低いのが救いではあるものの、市教委の担当者が指摘するように、深刻な事案が隠れている可能性も大いにある。普段の学校生活以外でも子どもたちがネットの中でどのような交流関係を築いているかを知り、見守る態勢を大人の側でつくることが肝要だ。小・中学生がネットを使う際のルールを家庭で定めることも犯罪・トラブル抑止に効果があるだろう。家庭と学校、地域社会が連携しながら、子どもをネットに絡む問題から守りたい。

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核のごみ説明会「危機意識を持って運営方法改善を」

2017/11/23 木曜日

 

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の“適性”を示す「科学的特性マップ」をめぐる意見交換会で、謝礼などを約束して学生を募集していたことが判明した。緒に就いた議論を阻害するものであり、繰り返されてきた「やらせ体質」を彷彿(ほうふつ)させる問題である。政府は危機意識を持って事実関係を明らかにし、意見交換会の運営方法の見直しも検討すべきだ。
 最終処分場の建設事業を担う原子力発電環境整備機構によると、さいたま市で行った意見交換会の参加者を募集する際、委託先の業者が一部学生に「参加すれば1万円の謝礼金を支払う」と伝えていたという。
 機構側は、実際には謝礼金は支払われなかったと説明。謝礼金を支払う形での参加者募集は行わないことを委託先に周知していたが、この業者の社内管理が不徹底だったとしている。
 しかし、この業者は東京など4会場で行われた意見交換会に際しても、学生サークルに対し会議室の提供や印刷代行など活動支援を見返りに参加を呼び掛け、計27人の学生が参加した。
 このニュースに接して思い起こされるのは、2011年に発覚した九州電力・玄海原発の再稼働をめぐる「やらせメール」問題だ。
 九電が再稼働を容認する意見を投稿するよう子会社などにメールで依頼していたもので、当時の佐賀県知事の責任問題にまで発展。結果的に九電社長は辞任に追い込まれた。
 この問題を受けた調査では北海道、中部、四国の各電力会社でも、相次いでやらせが発覚。経済産業省資源エネルギー庁や自治体の担当者による動員や、やらせ発言の要請なども明らかになり、国、自治体、電気事業者ぐるみの意図的な世論操作に対し、国民の不信が一気に高まった。
 マップが公表された今年7月、世耕弘成経済産業相は、マップの説明会が国民的な議論のきっかけになればとの期待感を示した。そもそも機構の設立は、不信を増大させた事業者任せではなく、国が前面に立って議論を促進させることが目的だった。
 機構側は、意見交換会は核のごみの最終処分事業への理解を求める目的で行っており、幹部は「活動の公正性について不信感を招きかねない」として謝罪した。世耕経済産業相も機構に対し、事実関係の徹底究明や再発防止を指示した。
 専門家らによる議論を積み重ね、ようやくマップを公表する段階に至ったにもかかわらず、今回の問題で議論が後退する懸念もある。
 政府は危機意識を持って早急に事実関係を明らかにし、再発防止策は当然ながら、従来通り機構に説明会の運営を任せていいのか、改めて議論すべきだ。

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