社 説

 

就活ルール廃止「学生と企業納得できる決着を」

2018/9/5 水曜日

 

 経団連の中西宏明会長が3日に行った記者会見で、2021年春以降入社の学生の採用活動について、大企業が中心の会員各社を対象に、面接の解禁時期などを定めた就職活動ルール(採用選考に関する指針)を廃止する意向を明らかにした。現在の就活ルールは、3月に会社説明会、6月に面接をそれぞれ解禁する。20年春入社まではこれを適用することが決まっている。
 現行ルールが就職活動を行う学生にとって好都合なのか、そうでないのかは定かではないが、廃止による学生、企業双方の利点も明らかにするべきだろう。今後大学など関係各方面と調整を進め、機関決定を目指す見通しといい、どのような結果となるか注目したい。
 廃止の背景には、人手不足の中で企業による学生の獲得競争激化、外資系を含む経団連非加盟企業による「青田買い」の問題が指摘されている。20年には東京五輪・パラリンピックのため、会社説明会を行うための会場不足も懸念されていた。また、経団連の就活ルールには形骸化を指摘される部分もあった。
 実際、就職情報会社がまとめた今年5月1日時点の就職活動調査によると、調査対象となった学生の4割が、選考解禁前にもかかわらず内定を得ていたというデータがある。これが、就職活動を行うすべての学生に当てはまるデータかどうかは定かではないが、これでは6月の面接解禁は意味を成さないのではないか、という指摘があったとしてもやむを得まい。
 とはいえ、こうした問題が指摘される就活ルールも企業や学生双方にとって、採用や就職活動の計画を立てる際の一定の目安となっていたのは確かだ。これが頻繁に変更されたり、廃止されたりすれば混乱が生じかねないとの声もある。中西会長は今後、学生側の意見を聞く意向を示したものの、学生を送り出す側の日本私立大学団体連合会は現行スケジュールの堅持を訴え、ルール廃止に反対の立場を示している。
 実際、大学側は就活期間の長期化による学業への影響を心配しているようだ。当然のことだろう。学生の本分は勉学だからだ。ルール廃止によって、本来学業に専念できるであろう学年で就職活動の心配をしなければならないというのは心理的負担につながる。
 しかし、形骸化している就活ルールにより春の時点で多くの学生が既に就職を決めているという矛盾。要領よく立ち回った企業と学生だけが良い思いをし、ルールを守って真面目に取り組んだ側が不本意な結果に終わったということがあってはならない。中西会長は「どういう解決策があるのか考えないといけない」と語る。混乱が生じないよう、また学業にも影響が出ないよう、企業と学生双方にとって良い形で決着するよう望みたい。

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アジア大会閉幕「経験と課題を2年後に生かせ」

2018/9/4 火曜日

 

 4年に1度開かれるアジア最大のスポーツの祭典、第18回アジア競技大会は2日、ジャカルタとスマトラ島南部の都市パレンバンで繰り広げられた熱戦の幕を閉じた。
 今大会は2年後に迫る東京五輪の前では最後の国際総合大会となった。日本勢が獲得したメダルは金75、銀56、銅74の計205個で、金メダル数と総数でともに中国に次ぐ2位。金メダルは前回仁川大会の47個を大きく上回り、東京五輪へ弾みをつける結果となったと言えよう。日本選手団の山下泰裕団長は「予想をはるかに上回る好成績」と評価し、五輪に向けた強化の成果を強調した。
 主要競技は、期待通りと言っていい結果を残した。その中でも躍進が目立ったのは競泳陣だろう。女子の池江璃花子選手が日本選手最多を更新する6冠を果たすなど、前回を大きく上回る19種目を制した。大会前半での金メダル量産が勢いをつけたようだ。
 陸上は桐生祥秀選手、山県亮太選手らの男子400メートルリレーが20年ぶりに優勝。同マラソンの井上大仁選手、同50キロ競歩の勝木隼人選手も金メダルに輝いた。柔道は、世界選手権を控えて1番手の派遣を見送ったが、女子は7階級中6階級を制する安定ぶりだった。東京五輪で初めて実施されるスポーツクライミングやスケートボードでは若い選手が活躍し、2年後に期待が掛かる。
 ただ、「お家芸」のレスリング女子は初めて金メダルなしに終わった。コーチは技術的な課題を挙げたが、パワハラ問題で栄和人強化本部長が指導を離れた影響も垣間見え、東京五輪に向けて体制の仕切り直しが急務と言える。
 バスケットボール男子は、買春などの不適切な行為で国内外に恥をさらし、日本勢の活躍に水を差した。スポーツ界で不祥事が次々と発覚する中で、またかと思わせる残念な出来事であった。心技体を育むスポーツの一流選手としての自覚を持つことを肝に銘じてほしい。
 ジャカルタ・アジア大会は、東京と同じような高温多湿の環境下で行われた。このため日本勢は東京五輪を想定したテストと位置付け、屋外競技の各団体がさまざまな酷暑対策を試し、結果としてメダル獲得に結び付けたのも特徴の一つだろう。今回の経験を生かしながら、さらに検討を重ね、2年後にしっかり備えてほしい。
 今大会を振り返り、山下団長は「結果に満足することなく、いかに2020年につなげていくかの視点でやっていく」と述べ、継続的な取り組みの重要性を訴えた。大会結果が東京五輪へ弾みをつけたことは確かだが、当然のことながら、2年後は世界の強豪を相手に戦うことになる。今回の経験や浮かび上がった課題を踏まえ、さらに競技力の向上を図る必要がある。

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創刊記念日 「『読者のための新聞』誓う」

2018/9/1 土曜日

 

 このところ国内では地震や豪雨、猛暑、台風といった自然災害、国外に目を向けると米中の貿易摩擦や各地で起こるテロ、不透明な北朝鮮情勢など、生活を脅かすような問題が後を絶たない。平穏に見える津軽でも、多発するリンゴの黒星病や生産者の高齢化が基幹産業の農業に影を落とす。少子化による人口減少も大きな懸念材料となっている。
 陸奥新報は1946年9月1日、弘前市で産声を上げた。戦後の混乱期に発行された創刊号は、タブロイド判でわずか2ページ。その社説には「ちつぽけながら陸奥新報は新聞の青年であることを誇りとする」とある。しかし「青年」の歩みは決して順風満帆ではなかった。60年には本社社屋を火災で焼失、「りんご台風」で知られる91年の台風19号や、2011年の東日本大震災による大規模停電で新聞発行が危ぶまれたこともあった。それでも紙齢を途切れさせることなく、今日までつなぐことができた。
 創刊号の社説にはこうもある。「明るく、健康に、たとひ苦難の中にあつても微笑を忘れずに、大きな理想をリツクサツクに背負つて進んでゆきたい」。その言葉の通り、一歩一歩進んできた。しかし「青年」が現在の姿に成長できたのは「青年」自身の力によるものだけではない。津軽という温かい「家庭」に生まれ、読者という「家族」の叱咤(しった)激励に後押しされなければ、72年の歳月を重ねてくることはできなかっただろう。
 「我らは固く信ずる。新聞は廣く民衆のものであると。言ひ換へれば讀者のものであると」(創刊号社説)、「不偏不党 陸奥新報は郷土のみんなの新聞である」(編集綱領)。であるなら、創刊当時の「青年」がリュックサックに詰めた理想と、津軽の地に暮らす人々が思い描く理想は同じでなければならない。地元の立場で、理想的社会を築くために報道する。それが津軽に生まれた郷土紙としての存在意義と考える。
 いつでも気になるニュースにアクセスできるインターネットの普及で、若者を中心に新聞離れが進んでいる。ネットにはいわゆるフェイクニュースも散見され、紙媒体の新聞のような信頼性を欠くとはいえ、新聞業界が厳しい環境に置かれているのは変わらない。加えて、先述したように少子高齢化など、現代社会が抱える多くの問題を見ると、残念ながら特に本県など地方の先行きに明るさを見いだせない。
 それでも、われわれは前に進まなければならない。原動力になるのはリュックサックの中にある「理想」だと考える。創刊記念日に当たり、ここまで育ててくれた読者に心から感謝するとともに、創刊の志を改めて胸に刻み、この地に張った根を深く伸ばし、「郷土のみんな」に必要とされる新聞であるよう、一層の努力を誓う。

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トリチウム水「地元に配慮した対応が重要だ」

2018/8/31 金曜日

 

 東京電力福島第1原発から出る放射性物質「トリチウム」を含んだ水(トリチウム水)の処理方法をめぐり、資源エネルギー庁が30日、国民の意見を聴く公聴会を福島県で開いた。焦点のトリチウム水の海洋放出案について、漁業者団体などから懸念の声が相次いだ。国には公聴会を単なるポーズで終わらせることのないよう、地元感情に配慮した丁寧な対応を求めたい。
 福島第1原発では約106万トンの汚染水が保管されており、うち約89万トンは放射性物質の濃度を下げる装置「ALPS」(アルプス)で処理し原発敷地内のタンクに保管している。ただ、タンク建設は今後2年程度で限界になるとされており、トリチウム水の処理方法が最大の課題となっている。
 国の作業部会は2016年に処分方法として「海洋放出」「地下埋設」など5通りの案をまとめており、今回の公聴会での意見も踏まえて今後検討するとしている。
 このうち最有力と目されている海洋放出案について、30日の公聴会では福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の野崎哲会長が「国内での風評被害や輸入規制を続けている国もある中、このタイミングでの海洋放出は、福島県の漁業に壊滅的打撃を与えることは必至」などと反対意見を表明した。
 もっともな意見である。東日本大震災後、本県の農産物や海産物もアジアや欧州から輸入規制を受けたことは記憶に新しい。県や市町村はもとより生産現場は何度も安全性を確認し、やっとの思いで規制撤廃にこぎ着けた。
 福島の海では安全性の証明に向け、今も試験操業を続けて実績を積み上げている。それだけに、さらなる風評被害を何としても避けたい思いは理解できる。
 公聴会では、今後もタンクで管理するよう求める意見や、海洋放出する際には全量検査を義務付けるよう求める意見も上がった。
 一方、政府側の有識者は反対や懸念が相次いだことに対し、「反対意見を重く受け止めるが、永久にタンクで保管する選択肢は考えにくい」とし、処分の必要性を改めて強調した。
 果たしてそうだろうか。結果的に政治決断するにしても、地元理解を得る努力は最低限必要だ。公聴会は始まったばかりであり、政府側がかたくなな姿勢を示しては、やはり公聴会は単なるポーズと受け止められるだろう。
 もう一点。汚染水処理には東京電力も主体的に関わるべきだ。報道によればトリチウム以外の放射性物質が処理し切れず残っていた問題が指摘されている。
 国、東電ともデータを隠すことなく明らかにし、丁寧に対話する姿勢を示すべきだ。公聴会はきょう31日も福島県と東京都でそれぞれ開かれる。

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違法残業「長く活躍できる環境整備を」

2018/8/30 木曜日

 

 青森労働局が2017年度に長時間労働が疑われた県内226の事業場を監督指導した結果を発表し、全体の58・4%に当たる132事業場に違法な時間外労働が確認されたことが分かった。
 さまざまな情報から長時間労働が疑われる事業場、過重労働による労災請求があった事業場が対象とはいえ、違法な時間外労働が確認された割合の58・4%は全国平均45・1%を上回っており、本県で働き方改革が進んでいない現状が浮かび上がる。賃金不払い残業や過重労働による健康障害防止措置を取っていないなど、何らかの労働基準関係法令違反があった事業場は184事業場、全体の81・4%という高い割合を示した。各企業が真剣に対応を考えるべき課題だろう。
 今回の違法な時間外労働時間を詳細に見ると、過労死ラインとされる月100時間超の違法な時間外・休日労働があったのは82事業場、2~6カ月続くことで過労死ラインとなる月80時間超は109事業場に上る。月200時間超という事例も1事業場あった。もともと他の都道府県と比べて年間の労働時間が長いとされる本県。労働者が健康を損ねる事態となっていないか懸念される。
 監督指導された事業場を規模別で見ると、従業員9人以下が59事業場(26・1%)、10~29人が68事業場(30・1%)で、両者を合わせると半数を超え、従業員が少ないほど長時間労働につながりやすい傾向がうかがえる。業種は製造業をはじめ、運輸交通、建設、商業、教育・研究、接客娯楽と多岐にわたり、業種を問わず、どの業界も自分たちのこととして顧みる必要があるようだ。
 もちろん、われわれ新聞社も同様。長時間労働になりがちな業界であり、労働者の側にも休日が少ない、拘束時間が長いといったことがむしろ「普通」という意識があった。近年、働き方改革の推進が全国的に叫ばれるようになって、テレビ局を含めて、働き方改革に取り組んでいる事例が聞こえてきてはいるが、本格的な取り組みはまだまだこれからだ。
 19年4月からは働き方改革関連法が順次施行され、時間外労働の上限規制の導入や年次有給休暇の確実な取得が求められるほか、正規雇用と非正規雇用の労働者の不合理な待遇差が禁止されるなど、新たな「働き方」への対応が必要だ。
 経営側が責任を持って労働時間を管理し、労働者の健康維持に知恵を絞らなければならないことは言うまでもないが、現場をよく知る労働者の側もより良い働き方について考えることが望ましい。
 人口減少は今後も加速していくことが想定され、あらゆる業種で労働力の確保が課題となっている。戦力となる労働者に長く活躍してもらうための環境整備はますます重要性を増してくる。仕事を見直し、高齢者や女性ら働き手の裾野を広げていくことも視野に入れたい。

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