社 説

 

核兵器禁止条約「政府は参加効果や影響検証を」

2018/1/18 木曜日

 

 昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約。日本政府は米国の核抑止力に依存する立場から否定的だが、改めて条約に参加した場合の影響について検証し、条約が核兵器の根絶に有効か否か、国民に説明すべきではないか。
 政府による検証は、被爆者とともに条約採択を後押しし、ノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が16日、国会内で開かれた与野党との討論会で主張したものだ。
 唯一の被爆国でありながら、政府は今回の条約については現実の安全保障環境を踏まえず、核保有国を巻き込んだ実践的なものではないとして、距離を置いてきた。討論会でも自民党の武見敬三参院政審会長は「軍事的脅威に対応できる抑止力を含めた防衛態勢を整えないと国民の命を守っていくことができない」と反論した。
 一方で、ICAN受賞について河野太郎外相は「核廃絶というゴールは共有している」と祝意を表明している。
 ならば政府は条約の効果や影響について検証した上で、国民に政府の姿勢を説明すべきだ。フィン氏は来日中の会見で「日本政府は核廃絶という目的を唱えながら、自分たちが変わろうとしていない」と指摘。「条約に参加するかは最終的には国民が決めるべきだ。国民が声をそろえて求めれば、(条約に)署名するはずだ」と訴えている。
 核兵器の廃絶をめぐっては、フランシスコ・ローマ法王も15日、改めてメッセージを発信した。
 法王は核戦争への恐怖心を明かした上で、原爆投下後の長崎で撮影された「焼き場に立つ少年」の写真を印刷したカードを示し「これを見た時、とても心をかき乱された」とし、「1000の言葉よりもこうした写真は人の心を動かし得る」と説明した。
 この写真は1945年に米従軍カメラマンが撮影したもので、亡くなった幼い弟を背負い、火葬の順番を待つ少年の姿と伝えられるもの。ニュースで見た人もいるだろうが、悲しみをこらえながらも直立不動の少年の姿が涙を誘う写真である。
 フィン氏の来日や法王のメッセージに触れ、改めて核兵器廃絶に対する政府の姿勢に注文を付けたい。
 北朝鮮の核開発といった脅威に対し、現実は日米安保が基軸であることは理解している。今回、安倍晋三首相とフィン氏との会談が実現しなかったことからも、政府の条約参加への後ろ向きな姿勢は明らかだ。
 だからこそ、唯一の被爆国としてICANと向き合い、その活動や功績をたたえた上で、毅(き)然(ぜん)と政府の姿勢を説明すべきではなかったか。極めて残念な対応だったと言わざるを得ない。

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逗子ストーカー殺人「個人情報の重さ 再認識を」

2018/1/17 水曜日

 

 神奈川県逗子市で女性が元交際相手の男にストーカー行為を受けた末、2012年に殺害された事件に関連して、女性の夫が住所を元交際相手側に漏らしたとして市に損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁横須賀支部は女性のプライバシーを侵害したと認定し、110万円の支払いを命じた。市は「今後とも情報漏えいを決して起こさないよう最大限取り組む」として、控訴しない意向という。
 判決などによると、市納税課の担当職員は、女性の夫に成り済まして電話をかけてきた元調査会社経営の男に女性の住所を伝え、探偵業者を通じてその情報を得た元交際相手が女性宅で刺殺した。一方で「情報漏えいの相手方の真の目的を知らなかった」として、漏えいと殺害事件との直接の因果関係は認めなかった。
 女性はストーカー被害を理由に、市に個人情報の閲覧制限を要請していた。今回の事案は、こうしたストーカーやDV(配偶者・交際相手からの暴力)、児童虐待事案の被害者の支援措置が機能しなかったことになる。
 加えて、電話を受けた担当者は、本人確認手続きをしないまま住所を伝えていた。支援措置以前の問題として、公務員の守秘義務違反であり、「違法な公権力の行使だった」(前沢功裁判長)といった指摘は当然である。直接の因果関係こそ否定されたが、人命が奪われた結果は重大だ。
 支援措置対象者の個人情報(避難先住所など)が、市町村役場から加害者側に漏えいしてしまう事案は他所でも発生し、対象者が再び転居を余儀なくされる場合もあると聞く。担当者のうっかりミスの場合もあれば、制度の理解不足の場合もあるようだ。
 再発防止策の徹底はもちろんだが、個人情報管理の責任の重さを、官公庁はもちろん、民間企業の担当者も改めて肝に銘じなければならない。
 この事件で問題となったのは、今回の訴訟だけではない。
 女性殺害前の11年、神奈川県警が女性への脅迫容疑で元交際相手を逮捕した際、逮捕状に記載された女性の結婚後の姓や住所の一部を読み上げたことが、女性の住所特定の手掛かりとなったのではないか―と後に指摘された。この経緯は、被害者の実名や住所を伏せた、いわゆる「匿名逮捕状」「匿名起訴状」の運用につながった。
 元交際相手は脅迫事件で執行猶予付きの有罪判決を受け保護観察の期間中、女性に「慰謝料」を求めるメールを1000通以上送信していたが、当時は連続メールがストーカー規制法の対象外で摘発されず、事件後に法改正された。
 一連の事件・問題は多くの反省と改善を促したが、被害女性の心情をおもんぱかると安易に「教訓」の言葉では片付けられない。

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中国輸出リンゴ「輸出再開へ関係者の努力を」

2018/1/16 火曜日

 

 県産リンゴの販路拡大を進める上で、年々、比重が高まっているのが輸出分野だろう。国産輸出リンゴの約9割が本県産とされる本県リンゴ産業にとって海外は非常に重要な市場となっている。2016年産リンゴの輸出量は過去10年間で輸出量が3番目、販売額も2番目の多さを記録するなど、好調さが目立つ。人口減少や消費者の嗜好(しこう)の変化などを考えれば、国内市場での販売がこれから急速に伸びるという状況が見込まれるものでもない。輸出リンゴ市場の規模拡大と安定化は、本県リンゴ産業にとって生命線といえるものになってきている。
 こうした中、国産リンゴを中国へ輸出できない事態が続いている。11年の東京電力福島第1原発事故後、県内の輸出業者は民間の検査機関が出す放射性物質検査証明書で輸出を続けてきたが、中国側が日本政府発行の検査証明書を提出させる輸入条件を厳格に運用し始めことにより、昨夏から事実上の市場閉鎖の状態に陥っている。財務省の貿易統計でも、17年7~11月の5カ月間の中国への累積輸出量はゼロと記録されている。
 そもそも中国への県産農産物などの輸出は、東日本大震災後、証明書の扱いなどをめぐって日中間に考えの隔たりがあり、公式には輸出停止が6年半余り続いている。
 ただ、昨春までは、県薬剤師会衛生検査センターの検査証明書の添付で輸出が可能だった。このため中国への15年産リンゴの輸出は量・金額ともに前年産の2倍以上となるなど、中国市場は近年、台湾や香港に続く3番目の市場へと急成長していた。
 世界一の人口規模を誇る中国の潜在的な需要は非常に大きなものがある。リンゴの栽培も盛んで、国民にもなじみの深い果物だろう。高品質な県産リンゴが、中国国内市場でもっと流通すれば、大きく消費が伸びる可能性はあるだろう。それがここに来て足踏み状態とは、関係者でなくとも歯がゆさを感じる。
 今回の輸出ストップの背景について、県が輸出業者へ聞き取りをしたところ、中国政府が昨年6月ごろから自国内の輸入機関に輸入条件を厳格運用するよう通達しているとみられ、以降、市場は完全に閉鎖された状態が続いているという。
 ただ、日中両政府が規制緩和に向けて協議入りする方向で調整しているとの情報があり、本紙の農水省への取材でも「中国側が輸入規制緩和の協議に好感触を示したと日本政府側から聞いている」との回答があり、前進に向けた兆しが見え始めている。
 中国からの観光客の入り込みが好調な日本。日本ファンが増える中で、日本の食べ物への関心も高まっていくだろう。この機を逃さず県産リンゴを売り込みたい。日中両国が早期に協議入りし、一日も早い事態の収拾を望む。

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火災死者ワースト「より一層の防火意識高揚を」

2018/1/13 土曜日

 全国の火災による死者数は近年、減少傾向となっている。総務省消防庁の資料によると、放火自殺なども含めた2016年の死者数は1452人で、07年と比べると27・6%減り、10年間で7割程度にまで減少。16年の総出火件数は3万6831件で、やはり減少傾向。07年比では32・6%減っており、特に建物火災は1万件以上少ない2万991件だった。
 死者数や火災件数が減っている背景に何があるのか。06年6月から新築住宅の火災警報器の設置、08年10月からは家庭向けの新設ガスコンロに過熱防止用センサーの設置がそれぞれ義務化された。11年9月には幼児が扱いにくい機能を備えた使い捨てライターを製造、販売することが義務付けられた。こうした対策が複合的に絡み合い、効果をもたらしていると考えられる。
 そうした中、本県は人口10万人当たりの火災による死者数(死者発生率)が依然として高い傾向となっている。16年は2・39人で、3年ぶりに全国ワーストとなった。続く福島の2・15人、秋田と新潟の2・11人と比べても突出した状況。最少の沖縄(0・34人)とは7倍もの差が生じている。
 県の担当者は「依然として住宅の火災警報器の設置が少ない状況。火災が発生した場合に少しでも助かる確率を高めるため、設置をお願いしたい」と呼び掛ける。警報器によって逃げ遅れを防ぐことができた効果も報告されており、何とかして設置率を高めていきたい。
 また、都道府県別の死者発生率を見ると、高齢者の割合が少ない自治体は低くなる傾向にあることも見て取れる。内閣府の高齢社会白書によると、15年の都道府県高齢化率で最も低いのは沖縄で19・6%。22・7%の東京や23・8%の愛知、23・9%の神奈川なども低く、死者発生率の低い都道府県と重なる。
 一方、本県の高齢化率は30・1%で全国12番目。福島は22番目、秋田は1番目、新潟は14番目となっている。専門家は「高齢者は若い人に比べて、火災の発生に気付きにくかったり、逃げ遅れがちだったりする」と指摘。「独居高齢者の多い地域ほど火災の犠牲者が出やすくなるのではないか」と推測する。
 16年の火災による死者のうち、高齢者は6割の873人。本県は死者32人のうち、7割近くに当たる22人が高齢者だった。高齢者をいかに守るかが死者数減少のカギの一つになることは確実だ。高齢者の防火意識高揚はもちろん、周囲の気配りや目配せも必要だろう。
 県によると、17年の火災による死者数は前年の半分以下となる14人(暫定値)で改善傾向。県の担当者は「市町村や消防本部の継続的な広報活動が奏功し、県民の防火意識が高まったのでは」と分析する。この流れをさらに加速させ、犠牲者の減少をさらに進めたい。

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中国・商標問題「大きな枠組みで問題解決を」

2018/1/12 金曜日

 

 中国で「弘前」の文字が商標登録申請され、弘前市などが2016年に異議を申し立てていた問題で、中国の商標局が異議を認めない裁定を下していたことが分かった。中国の企業がローマ字の「AOMORI」の文字を商標出願していることも分かり、県など関係8団体が連名で今月5日に異議を申し立てている。
 中国の商標法には、一般に広く知られた外国地名は商標登録できないという規定があり、これまでも県などが「青森」という文字の商標出願に対して行った異議はすべて認められてきた。今回の「弘前」について、中国商標局は同国内での弘前の認知度は低いという判断を示したとされ、大方の県民が抱く「日本の地名であれば異議が認められるだろう」という認識が覆されたと言える。問題解決に向け、新たな取り組みが必要だ。
 中国の商標問題はこれまでも繰り返されてきた。本県では03年に中国の企業が乳製品や果物、水産物、野菜など5分野で「青森」の文字を商標登録出願する動きがあり、話題に。5件すべてが却下されたのは08年のことで、安堵(あんど)したのもつかの間、同年に「青淼(チンミャオ)」という「青森」と紛らわしい文字にリンゴの図柄を組み合わせた商標の登録申請が判明し、県などが再び異議申し立てを余儀なくされるなど、振り回された。
 中国では日本の都道府県名や政令指定都市名を無関係の第三者が商標出願する動きが多く、もはや本県だけの問題にとどまらない。商標が登録されれば、たとえ地名であってもその文字を使った輸出は他者の商標権を侵害するリスクがある。無関係の商品に地名が使われたり、日本と関連ある会社だと消費者を惑わすビジネスの可能性も否定できない。
 中でも懸念されるのがイメージの低下だ。16年の県産農水産物の輸出額が過去35年で最高額となった本県にとって、中国は重要な輸出先の一つであり、天津線就航を契機に観光面でのつながりも深まっている。今後の展開を注視したい。
 本県では03年の騒動を契機に、県産品であることを示す統一マークの商標登録や県内の団体による海外での商標出願の支援など積極的な防衛策も講じてきた。ただ商標の無効を求める取り組みは時間も手間もコストもかかる割に、根本的な解決にはつながっていないのが現状。特許庁は日本貿易振興機構とも連携し、各自治体への情報提供や対応策・事前予防策のマニュアル提示などの支援策を打ち出しているが、自治体任せにせず、より大きな枠組みで中国側へ訴え、根本的な解決策を探ることが重要ではないか。
 「弘前」の商標については市などが商標を無効とする審判などの手続きを検討しているという。難しい面も多々あろうが、中国側の考えを知るという点で他の参考になるはず。結果の成否を問わず、積極的な情報公開を求めたい。

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