社 説

 

草津白根山噴火「火山監視体制の強化が急務」

2018/1/25 木曜日

 

 群馬県の草津白根山の本白根山が噴火し、近くのスキー場で訓練中だった自衛隊員1人が死亡、隊員とスキー客ら計11人が重軽傷を負った。噴火で死者が出たのは2014年の御嶽山(長野・岐阜県境)噴火以来となる。
 気象庁によると、本白根山は約3000年前に噴火した記録はあるが、近年は活動が確認されていなかったという。最近の活動は、噴火した鏡池付近から約2キロ北に離れた白根山の湯釜付近が中心だったという。
 次に噴火する可能性が高いのは湯釜付近と想定されており、鏡池付近には監視カメラなどは設置されていなかった。本白根山を遠くから撮影する監視カメラ映像では、天候不良で噴火が確認できなかったため、噴火場所を特定するまでに時間がかかった。本来は約5分以内とされる「噴火速報」は発表できず、噴火警戒レベルを引き上げる噴火警報を発表するのにも1時間を要した。
 場所を特定せずに噴火の可能性を直ちに知らせる発表手段はないという。気象庁の担当者は「噴火警報も警戒範囲を判断できないと発表できない」とする。噴火が発生した際、登山者や付近住民の安全を確保するために、迅速な周知は不可欠だ。噴火速報は御嶽山の噴火を受けて導入されたものだが、さらなる制度の改善が必要だ。
 噴火の予兆を察知するための体制強化も求められよう。ただ、鏡池付近では火山性地震や傾斜変動などはさかのぼっても記録がなく、本白根山近くに観測機器があっても前兆はつかめなかったのではないかと、気象庁の担当者は説明する。専門家も「観測データを見ると傾斜計に変動があったのは直前で、それまではっきりした変動はない」と指摘した。
 別の専門家も、ガス噴出など火山性の現象がほとんどなかったことから、「前兆がないところで突然噴火したような状態だ」と説明する。それだけ噴火の兆候を予知することは困難だということなのだろう。
 しかし国内には111の活火山があり、このうち本白根山を含む50は、防災のために特に観測が必要な「常時観測火山」に選定されている。すべてがそうとは言い切れないのだろうが、前兆もなく噴火する可能性は捨て切れまい。噴火による被害を最小限に抑えるため、観測体制の強化を急ぐべきだ。噴火に関する研究にも力を注いでもらいたい。
 一方で、火山付近の住民は噴火への防災意識を高めるべきだろう。県内では岩木山と八甲田、十和田が常時観測火山に指定されているほか、恐山も活火山に含まれる。万が一噴火した場合、県内の広範囲に被害が及ぶことが想定される。今回のように前兆もなく噴火することが現実として起こり得るということを認識し、備えを万全にしておきたい。

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高校距離スキー競技「関係者の連携で危機突破を」

2018/1/24 水曜日

 

 本県距離スキー界は少子化に伴う選手減少が進み、危機的状況にある。今年も大鰐町の大鰐温泉スキー場を会場に、県中学校スキー競技大会、県高校スキー大会が行われ、各種目で白熱のレースが展開された。しかし、会場では出場選手の少なさが目に付いた。少子化の波がスポーツの部活動にまで影響を及ぼしていることは本紙の報道などでも承知していたつもりだが、スキーが盛んとされた雪国であってもこれほど深刻な状況にあることに改めてショックを受けた。
 中でも高校の距離競技は、一層厳しい環境にある。同大会リレー種目の出場校は男女とも野辺地高校の1校のみで、史上初めてだった昨年に続き2年連続となった。個人種目の出場も女子は同校の3選手だけで、津軽勢の姿はない。
 野辺地高校の選手も決して層が厚いわけではない。来年度も距離スキーをやる新入生が入らなければ、同高の女子距離選手は1人だけになるという。そうなれば、県大会から女子リレー競技そのものがなくなるという最悪の事態すら想定される。津軽勢の状況はさらに悲惨だ。昨大会、津軽勢の女子でただ一人、距離種目に出場した選手も東奥義塾高校を卒業。今大会はリレーだけでなく、女子は個人種目も野辺地高の3選手だけとなった。県高体連スキー専門部によると、県高校大会の距離競技出場選手加盟数は昨年が17人、今年は13人と、減少に歯止めがかからない。
 野辺地高校スキー部の三國正樹監督は、競技選手が極めて少ない現状について「他校にライバル選手がいて初めて競争意識が高まる。今後、中学生が高校でも競技を続けていける取り組みが必要」と警鐘を鳴らすが、もっともな話だ。
 朗報なのは津軽地域の小、中学生の選手層は充実しつつあるということだ。6年ほど前に同地域を中心とした小学生が所属する阿闍羅アスリートクラブが発足したが、所属の選手たちがめきめきと実力を伸ばし、各種大会で活躍を見せている。スキー競技に限らないが、競技人口の拡大には若年世代の育成が最も効果的であるのは間違いがないだろう。
 底辺拡大に向けてこうした地域の活動がさらに活発化してもらいたい。ただ、こうした地域社会の協力もそれだけでは抜本的な解決策にならない。小、中学時代に育てた選手を地元に残すためには、県外の強豪校と互角に戦うだけの力を持つ高校の存在が必要不可欠である。地域スポーツクラブ、小・中学校、高校、それぞれに携わる指導者のこれまで以上に緊密な連携と、危機を迎えているスキー競技に対する地域の理解と支援が必要となるだろう。
 2月には平昌冬季五輪も開かれる。冬季スポーツが注目を浴びる今、未来のオリンピック選手を目指す子どもたちにより良い環境を残してやりたい。

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「自殺死亡率」きめ細かな対策で一層改善を

2018/1/23 火曜日

 2017年の自殺者(速報値)は前年より757人(3・5%)少ない2万1140人となり、8年連続で減少したことが、厚生労働省が警察庁の統計を基に公表したデータで明らかになった。人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)は16・7人で、統計開始の1978年以降で最少となった。
 一方で、本県は自殺者が7人(2・5%)増の286人となり、自殺死亡率は全国ワースト2位となった。ピーク時の03年と比べると大幅に減少してはいるものの、全国的に減少傾向にある中で増加に転じたのは残念なことである。年代や自殺の原因などを踏まえ、実態に応じたきめ細かい対策で自殺防止に努めなければならない。
 厚労省がまとめた速報値によると、自殺者全体の7割を男性が占め、依然として割合が高いものの、1万4693人まで低下し、95年以来22年ぶりに1万5000人を割った。女性は6447人で、最少を更新した。
 自殺者は金融危機で倒産や失業が増えた98年から14年連続で3万人を超えたが、17年はピーク時の03年の3万4427人と比べて4割近く減った。景気の状況に加え、自治体や関係団体による対策が奏功した結果とみられている。ただ、それでも1日平均約58人が自ら命を絶っていることになり、深刻に受け止めなければならない。
 17年1~11月分で原因・動機(三つまで計上)を見ると、判明した約1万4600人のうち、うつ病や身体の病気といった「健康」が7割を占めて最も多い。自殺に至る背景には他にも失業や生活苦、介護疲れ、過労など複数の危険要因があるとされ「経済・生活」と「家庭」が2割ずつ、「勤務」が13%あった。原因や背景が多様かつ複合的であるだけに、きめ細かな対策が求められる。
 年代別では大半で減少したものの、19歳以下で「学校問題」を中心に微増しており、近年は横ばいに近い傾向がみられるという深刻な実態もある。16年の20~30代の死因は依然として自殺がトップを占めている。
 昨年10月に神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件では、被害者の多くはツイッターに自殺を示唆する書き込みなどを行っていた若い女性だった。こうした自殺願望につけ込んだ事件に巻き込まれる可能性もあり、若者の自殺を防ぐための効果的な対策は急務といえる。
 日本は先進国の中でも自殺死亡率が高く、15年時点で先進7カ国の中でワースト。改善に向け、関係機関の連携強化と同時に、悩んでいる人に寄り添い、必要な支援につなげる人「ゲートキーパー」としての意識を一人でも多くの人が持ち、それぞれの立場で支援できることを行動に起こしていくことが大切だ。

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トランプ政権1年「日本の影響力強め次の段階へ」

2018/1/20 土曜日

 

 米国のトランプ大統領が就任してから20日で1年。「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げたことは、一国のトップとしては当然ではあるが、世界に影響力を持つ大国としては疑問を抱かせる。地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」や「環太平洋連携協定(TPP)」からの離脱などもあり、多くの国が振り回された一年だった。
 クリントン氏優勢という大方の予想を覆して大統領選を制したトランプ大統領。迎えた昨年1月20日の就任演説では強い米国を取り戻すことを強調。「政治家は栄えているが、仕事はなくなり、工場は閉鎖された」と前政権を批判し「米国の惨状は今ここで、終わる」と訴え、米国第一の取り組みをスタートさせたが、大統領選でロシア政府と共謀したとされる疑惑や首席補佐官らの事実上の更迭など、ホワイトハウス内は混乱。決して順調な船出とはならなかった。
 「予測不能」とも言われる過激な発言も、大統領選時から変わらぬままだ。自身の言葉の影響を考えていないのか、あえて波紋を投げ掛けて反応を見ているのか、本気なのか―。よく言えば話題づくりのうまい人となるが、国際社会との信頼関係を揺るがす内容のものもある。トランプ流のパフォーマンスだとしても行き過ぎ感は否めない。
 エルサレムをイスラエルの首都と認め、大使館を移転させる考えを示したのもその一つで、アラブ諸国から猛反発を浴びた。オバマ政権後期に関係が悪化したロシアに対しては、就任前から「プーチン大統領はオバマ大統領より指導者らしい」などと持ち上げ、融和的な発言を繰り返してきた一方で、北朝鮮問題についてロイター通信が今月行った取材には「北朝鮮に関してロシアは全く助けてくれない。中国の努力をロシアが台無しにしている」と不満を表明している。
 また、批判的なメディアを「フェイク(偽)ニュース」と激しく反撃。今月17日には「フェイクニュース賞」を発表し、ニューヨーク・タイムズ紙などの記事を批判したほどだ。大統領が自由に発信するのも自由の国らしいと言えば、らしいのかもしれない。しかしメディアへの敵対心をこれほどまでにあらわにするのを見ると、報道の自由が奪われていくような印象を受ける。
 わが国にとって米国は最も重要な同盟国。安倍晋三首相とトランプ大統領は良好な関係を保ち、北朝鮮対応でも両者は歩調を同じくしている。本県沿岸などに相次ぎ漂着する木造船を見ると、制裁は一定の効果をもたらしているようだが、核開発と米全土を射程に収める大陸間弾道ミサイル開発は最終段階と分析される。脅威は日に日に強まっている。安倍首相、日本政府はトランプ大統領の2年目に良い影響を与えられる存在にならなければならない。

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訪日客消費動向「魅力的な青森のPRを期待」

2018/1/19 金曜日

 

 観光庁がまとめた2017年の訪日外国人消費動向(速報値)によると、訪日客が買い物などに使った旅行消費額は前年比17・8%増の4兆4161億円で、年間値の過去最高額を5年連続で更新し、初めて4兆円を突破した。格安航空会社(LCC)の増便などを背景に中国や台湾、韓国などからの訪日外国人が増加する傾向にあり、消費額を押し上げている。国・地域別では、中国が最多の1兆6946億円(38・4%)、次いで台湾5744億円(13・0%)、韓国5126億円(11・6%)、香港3415億円(7・7%)と中華圏だけで過半数を占めている。費目別では、買い物代が最多の37・1%、次いで宿泊料金28・2%、飲食費20・1%の順で多かった。
 訪日外国人旅行消費額は旅行者数と比例して伸びていることに注目したい。11年の622万人、8135億円と比べれば、17年の2869万人、4兆4161億円は5倍程度の値となっている。LCCの増便はもちろんだが、東日本大震災発生後の落ち込みから関係者が一丸となって努力し、訪日客にとって魅力的な素材をPRした結果であろう。実際、観光施設や飲食店での外国語表記、英語や中国語などを話すことができる人材の配置といった光景が各所で見られ、訪日客をいかに取り込むかという強い姿勢がうかがえる。
 本県でも昨年、中華圏の航空会社による国際定期便や国際チャーター便就航が相次いだ結果、街なかや観光施設など各所で訪日客の姿が多数見られるようになった。訪日客による観光消費をさらに伸ばすため、本県関係者と県民による「再び訪れたい青森、魅力あふれる青森」をさらに訴え、PRしていけるような環境づくりに期待を寄せたい。
 大都市圏で指摘されてきたような、集団で大声で騒ぎ立てる、無断で写真を撮影するといったような一部訪日客による、目を背けたくなるようなマナーの悪さについては現在、本県では大きな事例の報告がない。これも旅行会社などによる事前周知の結果であろうか。外国人との文化や習慣の違いに伴うトラブルは長期間にわたり指摘されているが、時間をかけてでも互いを理解しながら解消してほしい。
 懸念される事案が発生した。十和田八幡平国立公園に指定されている青森市の八甲田山系の樹氷に、ピンク色のスプレーで英語や中国語の落書きがされていたことである。落書きをした男女は日本語や中国語、英語で会話していたとの情報もある。この男女が訪日客か日本人かは定かでないが何者であれ、訪日客とその消費額が増加傾向にあり、さらにこれから盛り上げていこうという状況に水を差し、誤解を招くような行為は慎んでほしい。「当然やってはいけないこと」という雰囲気づくりも必要であろう。

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