全国で子どもや若者らが被害に遭う悲惨な交通死亡事故が相次いでいる。大津市では8日午前、県道交差点の歩道で信号待ちをしていた保育園児らの列に乗用車が突っ込み、引率の保育士を含む16人が巻き込まれ、幼い園児たちの命が奪われた。
4月下旬には、東京都豊島区の交差点などで乗用車が歩行者や自転車を次々とはね、巻き込まれた10人のうち31歳と3歳の母娘が死亡。神戸市では、市営バスが横断歩道を渡っていた複数の歩行者をはね8人が死傷、20代の将来ある若者2人が命を奪われた。
11日からは「春の全国交通安全運動」が始まる。毎年恒例の運動だが、悲惨な交通事故がこれ以上起こらないよう、関係機関一丸となって啓発活動に取り組んでほしい。ドライバーはもちろん、歩行者らも安全指導の呼び掛けに耳を傾け、事故を起こさない、事故に遭わないことを心掛けてほしい。
悲惨な交通事故は本県も例外ではない。県警のまとめによると、今月7日現在の交通事故発生件数は前年同期比19件増の958件だが、死者は同4人減の12人。減少したとはいえ、これだけの尊い命が奪われているという現実を受け止め、これ以上犠牲者が増えることがないよう官民挙げた対策が求められる。昨秋にはつがる市森田町の国道で飲酒暴走運転の末、4人もの命が奪われた重大事故があったことも忘れてはならない。
大津市の事故の場合、車が乗り込んでくるとは誰もが想定していない、安全なはずの歩道上で事故は起きた。神戸市の事故は、歩行者の通行が優先である横断歩道上で起きている。今に始まったことではないが、自らがどんなに運転に注意を払ったり、安全とされる場所にいたりしても、交通事故に巻き込まれる可能性がある。死者を出してしまうという取り返しがつかない事態となってしまっては元も子もない。
悪質ドライバーに対する厳罰化や車両の安全機能搭載など、これまで幾多にもわたって運転する側への対策は講じられてきたが死亡事故はなくならず、そういった対策の抑止効果にも限界がある。交通安全意識を高めるといったソフト対策はもちろんだが、運転する側の対策のみならず、例えば交通の往来が激しい交差点などでは、完全に歩行者と車両を分離するといったハード対策も急務と言えよう。
20日までの春の交通安全運動期間中は子どもと高齢者の安全な通行、飲酒運転根絶などを狙いに活動が展開される。安全対策の基本にある交通安全意識の高揚に向けた啓発活動が各地で行われることになる。ドライバー、歩行者がともに安心できる環境づくりに向け、一人一人が対策を胸に刻み、悲惨な事故の防止に努めたい。