社 説

 

避難所の運営「人ごとと考えず理解深めたい」

2017/9/6 水曜日

 

 災害時に被災者が身を寄せる避難所の在り方に理解を深めてもらう動きが、県内でも見られている。平川市は先日、自主防災組織の関係者らを対象に、避難所の設置・運営について学んでもらう訓練を初めて行い、参加者たちが段ボールを使って間仕切りを作るなどした。
 同市は今年4月に「市避難所運営マニュアル」を策定し、ホームページで公開しており、自主防災組織の関係者だけでなく、避難者にも役割を持って運営に携わる意識を持ってもらいたい―などと訴えている。
 近年、地震や集中豪雨といった大きな災害がしばしば発生していることを踏まえると、われわれにとって避難所は「縁遠いもの」とは言えなくなっている。利用しなければならない可能性もあると考えれば、設置や運営についてもっと関心を持って学ぶべきだろう。
 内閣府が2016年4月の熊本地震直前にまとめた「避難所運営ガイドライン」の冒頭には、被災者の健康を維持するために「避難所の質の向上」を目指す―とある。災害の規模が大きく、避難生活が長くなるほど、避難者の心身の負担は大きくなり、生活上のさまざまな問題も増える。ガイドラインは、これらをできるだけ軽減、防止し、「人間らしい生活」を送ってもらうためのものという。
 避難所の在り方をめぐっては東日本大震災の際、障害者や高齢者といった援護が必要な人たちだけでなく、男女双方のニーズにも対応し切れていないことなどが問題となり、避難所運営の難しさが浮き彫りになった。
 東日本大震災以降、関係団体や専門家は改善策を検討したり、提言したりしている。しかし、それらを自治体関係者ら一部の人が認識しているだけでは避難所の質は向上しない。平川市が自主防災組織の関係者らを対象に訓練を行ったのも、そのためだろう。
 同市の訓練会場では、避難所の運営をシミュレーションするカードゲームを用い、参加者がトラブルへの対応について話し合った。ゲームは、危機管理を担当した元自治体職員が考案したもので、県外でも災害対策教育の場で使われているようだ。実際の避難所運営はより複雑であろうが、関心を持ってもらうきっかけとして、このようなゲームも活用されてよいのではないか。
 同市付近には断層帯があり、1700年代半ばに直下型地震が発生しているとして、市は市民らに有事への備えを促している。熊本地震も断層活動による直下型地震とされていることを踏まえれば、日ごろから備えはしておくべきだろう。
 今回の訓練で、参加者は間仕切りを作るのに苦労したという。作業一つをとっても容易でないとすれば、避難所の運営はさらに難しいはずだ。人ごととは考えず、できるだけ理解を深めたい。

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北朝鮮核実験「問われる中ロの決断」

2017/9/5 火曜日

 

 国際社会を無視して、どこまで挑発と暴走を続けるつもりか。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)用水爆の実験を行い、完全に成功した―と発表した。同国は7月に2回、ICBM「火星14」の発射実験を強行し、8月29日には中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練で北海道上空を通過させたばかり。同国側の主張が本当ならば、米本土を射程圏内に収めるICBMの核搭載が現実となりつつあり、当然、日本にとっても脅威は日々増している。今後、核実験とミサイル発射の頻度がさらに高まらないか心配だ。
 新たに開発されたICBMの核弾頭は、広い地域の電子機器に障害を引き起こす電磁パルス(EMP)攻撃が可能な多機能弾頭という。通信・情報機器の機能を停止させ、インフラや都市機能を大混乱に陥れる厄介な兵器だ。
 北朝鮮は、核兵器やICBMを武器に米国などと対等に渡り合い、核保有国として認めさせたいのだろう。しかし、国際社会から孤立してまで、自国民のために得るものは何なのか。「先軍政治」が国民にもたらすものは何なのか。核を振りかざして“パワーゲーム”に血道を上げる前に、一国の主導者としての本分を学び直した方がいい。
 米国を中心とした経済制裁などによる圧力の強化が、現段階では北朝鮮に翻意を促す結果に結び付いていないのは残念だ。一時、金正恩朝鮮労働党委員長が発した「米国の行動をもう少し見守る」も、結果的には米韓合同軍事演習実施を理由に挑発行為をエスカレートさせる布石だったように映る。北朝鮮に融和的だった韓国の文在寅大統領も、遅ればせながら「最も強い対応策」の検討を余儀なくされた。
 国連安全保障理事会では、新たな制裁決議が議論される。焦点は、北朝鮮に対する石油輸出の制限が盛り込まれるかどうかだ。外貨収入源の締め付け策として、北朝鮮による繊維製品の輸出禁止や、北朝鮮からの出稼ぎ労働者の受け入れ制限強化も検討対象となる可能性があるという。
 石油禁輸は、8月の安保理制裁決議で採択が見送られていた。朝鮮半島の非核化を目標としつつも制裁強化に慎重な中国とロシアが反対したためだ。両国には北朝鮮の体制崩壊につながりかねないとの懸念があるという。北朝鮮労働者についても、その多くがロシアで働いているとされる。
 今回の核実験に対しては中ロ両国とも強く非難した。今後の安保理では両国とも制裁強化を認めざるを得ないのでは―との見方があるが、強化の度合いは不透明という。米国を中心とした制裁強化に手詰まりが指摘される中、中ロ両国の決断が北朝鮮問題の今後の鍵を握ると言っていい。

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インバウンド対策「市民が情報共有する仕組みを」

2017/9/2 土曜日

 

 昨年の北海道新幹線開業、青森空港への国際定期・チャーター便就航や青森港への大型クルーズ船寄港などにより、本県を訪れる外国人観光客が増加している。一方で観光施設を除けば、訪日外国人観光客(インバウンド)に十分対応できる状況にあるとは言い難い。インバウンドがもたらす経済効果を逃さぬ環境づくりが急務だ。
 藩政時代の面影を残す「こみせ通り」、紅葉の名所として知られる「中野もみじ山」を有する黒石市。これらは観光に力を入れる弘前市と比較しても、引けを取らない“日本らしさ”を感じさせる資源である。黒石市内に宿泊する外国人観光客数は、集計を始めた2016年2月から12月までの11カ月で1530人。今年は1~7月の7カ月で1157人。中野もみじ山が色づく観光最盛期を控えていることを考えると、16年実績を上回るのはほぼ確実だろう。
 市はこうした状況を踏まえ、昨年度から観光施設や宿泊施設、飲食店などを対象にしたインバウンド観光勉強会を行っている。各事業者が抱く一番の不安は言葉の壁であり、コミュニケーションに対する苦手意識の解消などを目的に、今年度は4回開く。8月29日の第1回勉強会には約30人が参加。5班に分かれ、10月末に予定する留学生対象のモニターツアーのコースについて意見を出し合った。
 班ごとの話し合いは、モニターツアーの実施などインバウンドに取り組む黒石商業高校生がサポート。何もないところからプランを練り上げるのは、容易ではないだろうが、こうした経験の積み重ねが、外国人観光客に喜ばれる観光地づくりにつながる。当初「外国人観光客が来店したとき、コミュニケーションが取りづらく苦手意識があった」という参加者から「意識が変わってきた」という声が聞かれた。参加者がインバウンドを自身の課題として、向き合うようになったのは勉強会の成果の一つだろう。
 ただ、参加者は地元をよく知る事業者。市民が考える魅力と、外国人観光客が欲するものが同一とは限らない。モニターツアーだけでなく、常日ごろからさまざまな形で情報収集に努めることが重要だ。市は各事業者がインバウンドの重要性を認識する半面、早急な受け入れ環境整備の必要性に危機感を抱いていることから、来年度以降も勉強会を継続する方針であり、回を重ねるごとに事業者の意識改革が進むと期待される。
 東京五輪を控え、ますます訪日客が増加すると見込まれる。現在の勉強会に参加していない店舗などに外国人観光客が訪れたり、街で道案内したりすることもあるはずだ。勉強会参加者以外も応対できるよう、市の広報紙を活用するなど情報共有できる仕組みづくりを進め、市民みんなが外国人観光客の受け入れに携わっているという意識を高めたい。

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陸奥新報創刊71周年「混とんの時代に正確な報道を」

2017/9/1 金曜日

 

 21世紀の“空襲警報”は心を不安で満たすものだった。29日早朝、北朝鮮が発射した弾道ミサイルの日本通過を告げるJアラート(全国瞬時警報システム)で、たたき起こされ、いくつかの取材の手配を終えた後、ふと眺めた弘前の街並みもまた、どうしていいのか不安で立ちすくんでいるように見えた。「頑丈な建物や地下に避難して下さい」。Jアラートは告げているが、地方にそうそう、当てはまる施設があるわけがない。ミサイルは本当に発射されたのか、発射されたとしたら、どこに落下したのか、被害はあったのか、正確な情報がないまま時間が過ぎる中、同僚から「本県への被害はありませんでした」と一報が入った。心がやっと動き出したような気がした。「正確な情報を知る」。そのことの大切さとありがたさが身に染みた。
 陸奥新報は9月1日、71年目の創刊記念日を迎えた。敗戦直後の混乱期、インターネットもテレビもなく、インフラ整備も現代と比較にならない地方の弘前において、産声を上げた本紙がもたらした「情報」は、地域の人たちからどのように受け止められたのだろうか。「読者が知りたい、役に立つ情報を早く正確に伝える」。これは創刊当初から変わらぬ、陸奥新報の姿勢であり、至らぬところが多いながらも、この伝統を引き継いでいこうとする私たちの姿勢は、今後も変わることがない。こうした考えが、読者の信頼を得て、70年余りもこの地で新聞を発行することができたのだと信じ、この歩みを止めることなく前に進みたいと思う。
 終戦直後の混乱期に産声を上げた陸奥新報であるが、現代の日本もまた、混乱と不安の中にある。北朝鮮をはじめとする近隣諸国とは陰に日なたに摩擦が生じ、国の安全保障をめぐる環境は大きく変化した。国内に目を向けても国民の政治不信を助長させるような問題が数多く生じており、その根は深い。
 地方が抱える事情は、さらに深刻だ。人口減少が目に見える形で進行し、地域から活力が奪われている。「人もモノも金も、中央へ」と進められた近代日本の中央集権政策のツケを支払わされる中、地方は自立への道を模索しなければならない。
 この時代を乗り切るために何が必要なのだろうか。「正確な情報を知る」ことが重要な意味を持つのではないか。何かを判断し、行動するために必要な材料や基準、それを形作るために役立つ「正しく、有意義な情報」。陸奥新報は地域づくりに、地域住民の生活に、ためになる情報、伝えなければならない情報を発信する存在であり続けたい。21世紀にあっても変わることなく、地域に根を張り真実を伝える。「フェイクニュース」ではない、本当の津軽の姿を報じ続け、地域に貢献したい。

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海自ヘリ事故「徹底した原因究明を」

2017/8/31 木曜日

 

 26日夜、竜飛崎の西南西約90キロ、久六島(深浦町)からは北約20キロの日本海で、夜間訓練中の海上自衛隊大湊航空基地(むつ市)所属のSH60J哨戒ヘリコプターが海自護衛艦「せとぎり」から発艦後、通信が途絶えた。これまでにヘリの部品が複数発見、回収されていることから、墜落したとみられる。乗員4人のうち1人は事故直後に救助されたが、他の3人は30日現在、行方不明となっている。早期の発見、無事を願いたい。
 ヘリが行っていた訓練は、隊員の技量維持のため定期的に行っているもので、艦上の管制官らが目視などで機体を確認しながら、ヘリに指示を出すという内容。ヘリが「せとぎり」から発艦したのは26日午後10時30分すぎ、連絡が途絶えたのは同10時48分である。この18分弱の間に何があったのか。訓練当時は晴れて視界が良く、風も強くなかったといい、海自側も「航空機運用に問題はなかった」と説明する。発艦前の点検でも異常は見られなかったという。機体に何らかの異変が起きたのか、予期し得ない何かの外部的なトラブルが起きたのか―。いずれにせよ、原因が判明するまでは同型ヘリの運航や同種の訓練は差し控えることが賢明であろう。
 ヘリの事故は近年、県内外でたびたび発生している。2008年には、火災を起こした海自護衛艦を取材するためテレビ局社員ら4人が乗ったヘリが大間沖で墜落する事故が起きた。12年には、今回と同じ大湊航空基地所属のSH60J哨戒ヘリが陸奥湾で護衛艦に接触して墜落し、機長が死亡した。今年3月には長野県の消防防災ヘリコプターが同県の鉢伏山付近で訓練中に墜落し、9人が死亡。今月17日には、海自岩国航空基地(山口県)で多用途ヘリが訓練中に横転し、3人が負傷した。
 ヘリを海上や山岳地点で飛行させる場合は予想できない気象条件の悪化も考えられよう。実際、今回の事故で救出された隊員は証言の中で、訓練中に突然衝撃を感じた後、「気付いた時には機内に海水が侵入していた」と語っている。気象条件が問題だったのか、運転ミスが原因だったのかは、定かではない。
 今回の海自ヘリの事故が起きたのは海上で、夜だった。国防の任務に当たってはいつ、どのような気象条件、環境にあっても対応できるよう備える必要はある。そのために今回の訓練が定期的に行われ、これまで事故がなかったことを考えれば、訓練自体は無謀なものではなかったのだろう。
 ヘリはホバリング(空中静止)できることから、人命救助、上空視察などに欠かせない。防災ヘリやドクターヘリなどの働きを見れば、その有用性は誰もが認めるところであろう。それだけに事故が続く状況は看過できない。今回の事故を含めて徹底した原因の究明を求めたい。

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