社 説

 

創刊記念日 「『読者のための新聞』誓う」

2018/9/1 土曜日

 

 このところ国内では地震や豪雨、猛暑、台風といった自然災害、国外に目を向けると米中の貿易摩擦や各地で起こるテロ、不透明な北朝鮮情勢など、生活を脅かすような問題が後を絶たない。平穏に見える津軽でも、多発するリンゴの黒星病や生産者の高齢化が基幹産業の農業に影を落とす。少子化による人口減少も大きな懸念材料となっている。
 陸奥新報は1946年9月1日、弘前市で産声を上げた。戦後の混乱期に発行された創刊号は、タブロイド判でわずか2ページ。その社説には「ちつぽけながら陸奥新報は新聞の青年であることを誇りとする」とある。しかし「青年」の歩みは決して順風満帆ではなかった。60年には本社社屋を火災で焼失、「りんご台風」で知られる91年の台風19号や、2011年の東日本大震災による大規模停電で新聞発行が危ぶまれたこともあった。それでも紙齢を途切れさせることなく、今日までつなぐことができた。
 創刊号の社説にはこうもある。「明るく、健康に、たとひ苦難の中にあつても微笑を忘れずに、大きな理想をリツクサツクに背負つて進んでゆきたい」。その言葉の通り、一歩一歩進んできた。しかし「青年」が現在の姿に成長できたのは「青年」自身の力によるものだけではない。津軽という温かい「家庭」に生まれ、読者という「家族」の叱咤(しった)激励に後押しされなければ、72年の歳月を重ねてくることはできなかっただろう。
 「我らは固く信ずる。新聞は廣く民衆のものであると。言ひ換へれば讀者のものであると」(創刊号社説)、「不偏不党 陸奥新報は郷土のみんなの新聞である」(編集綱領)。であるなら、創刊当時の「青年」がリュックサックに詰めた理想と、津軽の地に暮らす人々が思い描く理想は同じでなければならない。地元の立場で、理想的社会を築くために報道する。それが津軽に生まれた郷土紙としての存在意義と考える。
 いつでも気になるニュースにアクセスできるインターネットの普及で、若者を中心に新聞離れが進んでいる。ネットにはいわゆるフェイクニュースも散見され、紙媒体の新聞のような信頼性を欠くとはいえ、新聞業界が厳しい環境に置かれているのは変わらない。加えて、先述したように少子高齢化など、現代社会が抱える多くの問題を見ると、残念ながら特に本県など地方の先行きに明るさを見いだせない。
 それでも、われわれは前に進まなければならない。原動力になるのはリュックサックの中にある「理想」だと考える。創刊記念日に当たり、ここまで育ててくれた読者に心から感謝するとともに、創刊の志を改めて胸に刻み、この地に張った根を深く伸ばし、「郷土のみんな」に必要とされる新聞であるよう、一層の努力を誓う。

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トリチウム水「地元に配慮した対応が重要だ」

2018/8/31 金曜日

 

 東京電力福島第1原発から出る放射性物質「トリチウム」を含んだ水(トリチウム水)の処理方法をめぐり、資源エネルギー庁が30日、国民の意見を聴く公聴会を福島県で開いた。焦点のトリチウム水の海洋放出案について、漁業者団体などから懸念の声が相次いだ。国には公聴会を単なるポーズで終わらせることのないよう、地元感情に配慮した丁寧な対応を求めたい。
 福島第1原発では約106万トンの汚染水が保管されており、うち約89万トンは放射性物質の濃度を下げる装置「ALPS」(アルプス)で処理し原発敷地内のタンクに保管している。ただ、タンク建設は今後2年程度で限界になるとされており、トリチウム水の処理方法が最大の課題となっている。
 国の作業部会は2016年に処分方法として「海洋放出」「地下埋設」など5通りの案をまとめており、今回の公聴会での意見も踏まえて今後検討するとしている。
 このうち最有力と目されている海洋放出案について、30日の公聴会では福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の野崎哲会長が「国内での風評被害や輸入規制を続けている国もある中、このタイミングでの海洋放出は、福島県の漁業に壊滅的打撃を与えることは必至」などと反対意見を表明した。
 もっともな意見である。東日本大震災後、本県の農産物や海産物もアジアや欧州から輸入規制を受けたことは記憶に新しい。県や市町村はもとより生産現場は何度も安全性を確認し、やっとの思いで規制撤廃にこぎ着けた。
 福島の海では安全性の証明に向け、今も試験操業を続けて実績を積み上げている。それだけに、さらなる風評被害を何としても避けたい思いは理解できる。
 公聴会では、今後もタンクで管理するよう求める意見や、海洋放出する際には全量検査を義務付けるよう求める意見も上がった。
 一方、政府側の有識者は反対や懸念が相次いだことに対し、「反対意見を重く受け止めるが、永久にタンクで保管する選択肢は考えにくい」とし、処分の必要性を改めて強調した。
 果たしてそうだろうか。結果的に政治決断するにしても、地元理解を得る努力は最低限必要だ。公聴会は始まったばかりであり、政府側がかたくなな姿勢を示しては、やはり公聴会は単なるポーズと受け止められるだろう。
 もう一点。汚染水処理には東京電力も主体的に関わるべきだ。報道によればトリチウム以外の放射性物質が処理し切れず残っていた問題が指摘されている。
 国、東電ともデータを隠すことなく明らかにし、丁寧に対話する姿勢を示すべきだ。公聴会はきょう31日も福島県と東京都でそれぞれ開かれる。

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違法残業「長く活躍できる環境整備を」

2018/8/30 木曜日

 

 青森労働局が2017年度に長時間労働が疑われた県内226の事業場を監督指導した結果を発表し、全体の58・4%に当たる132事業場に違法な時間外労働が確認されたことが分かった。
 さまざまな情報から長時間労働が疑われる事業場、過重労働による労災請求があった事業場が対象とはいえ、違法な時間外労働が確認された割合の58・4%は全国平均45・1%を上回っており、本県で働き方改革が進んでいない現状が浮かび上がる。賃金不払い残業や過重労働による健康障害防止措置を取っていないなど、何らかの労働基準関係法令違反があった事業場は184事業場、全体の81・4%という高い割合を示した。各企業が真剣に対応を考えるべき課題だろう。
 今回の違法な時間外労働時間を詳細に見ると、過労死ラインとされる月100時間超の違法な時間外・休日労働があったのは82事業場、2~6カ月続くことで過労死ラインとなる月80時間超は109事業場に上る。月200時間超という事例も1事業場あった。もともと他の都道府県と比べて年間の労働時間が長いとされる本県。労働者が健康を損ねる事態となっていないか懸念される。
 監督指導された事業場を規模別で見ると、従業員9人以下が59事業場(26・1%)、10~29人が68事業場(30・1%)で、両者を合わせると半数を超え、従業員が少ないほど長時間労働につながりやすい傾向がうかがえる。業種は製造業をはじめ、運輸交通、建設、商業、教育・研究、接客娯楽と多岐にわたり、業種を問わず、どの業界も自分たちのこととして顧みる必要があるようだ。
 もちろん、われわれ新聞社も同様。長時間労働になりがちな業界であり、労働者の側にも休日が少ない、拘束時間が長いといったことがむしろ「普通」という意識があった。近年、働き方改革の推進が全国的に叫ばれるようになって、テレビ局を含めて、働き方改革に取り組んでいる事例が聞こえてきてはいるが、本格的な取り組みはまだまだこれからだ。
 19年4月からは働き方改革関連法が順次施行され、時間外労働の上限規制の導入や年次有給休暇の確実な取得が求められるほか、正規雇用と非正規雇用の労働者の不合理な待遇差が禁止されるなど、新たな「働き方」への対応が必要だ。
 経営側が責任を持って労働時間を管理し、労働者の健康維持に知恵を絞らなければならないことは言うまでもないが、現場をよく知る労働者の側もより良い働き方について考えることが望ましい。
 人口減少は今後も加速していくことが想定され、あらゆる業種で労働力の確保が課題となっている。戦力となる労働者に長く活躍してもらうための環境整備はますます重要性を増してくる。仕事を見直し、高齢者や女性ら働き手の裾野を広げていくことも視野に入れたい。

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自民総裁選「信頼回復に向けた姿勢を」

2018/8/29 水曜日

 

 安倍晋三首相(自民党総裁)が9月7日告示、同20日投開票の党総裁選への立候補を正式に表明した。
 総裁選には、石破茂元幹事長が既に出馬の意向を表明。野田聖子総務相は最終的に立候補を断念するとみられ、首相と石破氏の一騎打ちとなりそうだ。
 一政党の代表を決める選挙とはいえ、国のかじ取り役に関わる事項である。特に2019年は皇位継承、20年は東京五輪・パラリンピックと重要行事が続く。推移を注視したい。
 総裁選では、憲法改正の進め方、いわゆる「アベノミクス」の評価と経済政策、森友学園に関する財務省の文書改ざん問題や陸上自衛隊のイラク日報問題をはじめとした政権不祥事を踏まえた政権運営の在り方が主な争点と目されている。石破氏は公約で、地方創生と社会保障制度の再構築による消費喚起策「石破ビジョン」などを提唱。一方で、改憲については、他党との議論を重ね、国民理解を得る姿勢を示すにとどめた。
 憲法改正は首相の宿願。秋の臨時国会への自民党改憲案の提出に意欲を見せるが、党麻生派は総裁選に向けた政策提言で、来年夏の参院選前に改憲の国民投票を実施するよう首相に求めた。首相は「基本的な考え方は全く同じ」と応じたといい、改憲がスケジュールありきで進められている印象は強まる。
 今回は、地方の党員・党友投票を基に算出する党員票にも国会議員票と同数の405票が割り当てられ、その比重が増した。地方の姿勢を示す好機である。その一方で、選挙期間中の街頭演説会は全国5カ所。首相のロシア訪問が理由とはいえ、直近で選挙戦となった12年の17カ所から大幅に減ったのは不思議だ。
 政権不祥事について首相は「再発防止に全力を尽くす」と述べ、石破氏は公約に信頼回復策として内閣人事局の運営見直しなどを盛り込んだ。これらへの対応を含む首相の政治姿勢の争点化には「個人攻撃だ」などと難色を示す声も上がるが、争点化の是非以前に、首相が自ら信頼回復への道筋を具体的に示すべきだ。不祥事に関する政権の対応で納得できた人はどれくらいいるだろう。
 政治不信が払拭(ふっしょく)されないまま首相が「次の時代の新たな国造り」を声高に訴えても、説得力を欠く。逆に、不祥事などへの関心をそらそうとしているようにすら映る。一政党の代表を党関係者で決める作業であっても、国民は動向を注視している。
 大島理森衆院議長(本県2区)は7月、通常国会閉会を受けた談話で、政権不祥事について「民主主義の根幹を揺るがす問題であり、行政府・立法府は、共に深刻に自省し、改善を図らねばなりません」と異例の苦言を述べた。政治が国民の信頼の上に成立していることを、忘れてはならない。

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携帯電話料金「利用者目線の見直し期待」

2018/8/28 火曜日

 

 政府が携帯電話料金の引き下げに向けて再び動きだした。総務省は情報通信審議会に料金値下げなどの検討を諮問し、来夏にも一定の方向性が示される見通しとなった。
 背景には、家計負担の増加がある。総務省の家計調査によると、2017年の家計の消費支出総額は292万1476円と10年比で3・5%減ったにもかかわらず、携帯電話通信料は同25・4%のプラスとなる10万250円にまで増加した。
 携帯電話は既に生活必需品となり、今後はあらゆる機器が情報網とつながるIoT(モノのインターネット)の普及も進む。通信料がさらに増大することは避けられそうになく、家計における支出割合は高まることだろう。
 一方で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループの大手3社の18年3月期の営業利益は、合計で3兆2000億円にも達した。菅義偉官房長官は「国民の財産である公共電波を利用して事業をしており、過度な利益を上げるべきではない」と苦言を呈し、携帯電話料金について「4割程度下げる余地がある」と指摘する。
 民間企業の経営に政府高官が言及することは異例と言えるが、携帯料金が政府から狙い撃ちにされるのは今回が2度目。15年には、やはり家計負担の軽減を目的に、安倍晋三首相の指示を受けた総務省がデータ通信量の少ない利用者向けに低料金プランの導入などを求め、大手3社で導入が進んだ経緯がある。
 3年ほど経過したが、家計の負担は軽減していないということが浮き彫りになったとも言えよう。生活スタイルの変化に伴い大量のデータ通信を必要とする利用者が増えたのかもしれないし、そもそも携帯大手が設定する料金が高いのかもしれない。
 ただ、大手3社は全国の基地局の維持費として毎年、数千億円を投資。20年にも商用化される次世代通信規格「5G」にも、巨額の投資が必要となる。仮に携帯料金が4割下げられれば、各社とも赤字に転じ通信網の維持が困難になるとの見方がある。
 それでも、家計負担が増え続ける中で携帯大手は多額の利益を得ている現状に批判は根強い。菅氏によれば、日本の携帯電話料金は経済協力開発機構(OECD)の2倍程度だという。さらに新規参入する楽天は、既存事業者の半額程度に設定する方針を公表している。
 利用者の立場からすれば、料金を引き下げる余地は十分にあるように感じられる。新規参入によって競争が活発化し、値下げが実現することが最良と考えられる。政府主導ではなく、審議会の答申を待たず、携帯大手が利用者にとって分かりやすく、納得できる料金サービスを実現することを期待したい。

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