社 説

 

シードルの街弘前「リンゴ産地の魅力を深めたい」

2017/11/1 水曜日

 

 日本一のリンゴ産地・弘前市で、シードル醸造の機運が盛り上がりを見せている。
 弘前市で飲食店を経営する企業が新たに“街なかの醸造所”を目指して準備を進めており、12月初旬には弘前産のリンゴなどを使った地シードルやワインの販売を始める計画だ。
 シードルはリンゴ果実を原料とする酒で、アルコール度数が比較的控えめで飲み心地がよいため、男性のみならず女性にも好まれる。総じて爽やかな味わいが特徴で、原料となったリンゴの種類や醸造の仕方によって味もさまざま楽しめる。
 大手酒類メーカーも本県産リンゴを使ったシードル商品の発売に力を入れているほか、弘前市内にもシードル製造者が増えており、産地で飲む“地シードル”は今や弘前観光の目玉の一つになっているといえる。
 生産量はもちろん、品質も全国、世界的な評価を受けている弘前産リンゴ。それでも他産地との競争は激しく、リンゴ以外にも国内外の多種多様な果実が市場に出回る。そうした中で、生果以外のリンゴ加工品市場の拡大がリンゴ産業全体の底上げを図る重要な鍵を握ることになるだろう。その加工品の中でも、シードルは有望格といえる。
 弘前市内でも生産に取り組む動きが次々と見られるようになってきたことを踏まえ、市も2012年10月にシードル先進地フランスのブーブロン・アン・ノージュ村とシードル製造技術支援協定を締結。また、さまざまなシードルを味わえるシードルフェスタを市りんご公園で開いたり、弘前シードル研究会を設立して情報交換するなどして支援しており、行政と民間による連携が功を奏しているようだ。
 今回新たにシードル製造に乗り出す企業は、弘前ハウスワイン・シードル特区に基づく規制緩和を活用し、果実酒製造免許を取得した。12月初旬には地シードルやワインを提供、販売し、3年計画で製造量を拡大していくという。地域の魅力発信の拠点がまた一つ増えることになり、“シードルの街”弘前が一段と熱を帯びそうだ。
 市内では、有志による「弘前シードル倶楽部」が発足。シードルの本場・フランスで、シードルとセットで食されている「ガレット」の食文化定着を目指そうと取り組んでいる。ガレットはフランス・ブルターニュ地方の郷土料理で、そば粉を原料としたクレープ生地だが、津軽地域のそば粉を使いながら、弘前ならではの食文化を発信する狙いだ。
 さまざまなシードルを味わいつつ、シードルに合わせた料理を楽しむ。まさに、リンゴ生産量日本一を誇る弘前でしか味わえない魅力がさらに深まることを期待したい。

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無資格検査問題「猛省と信頼回復の取り組みを」

2017/10/31 火曜日

 

 日本の「ものづくり」に対する信頼はどうなるのか。神戸製鋼所のデータ改ざん問題が広がりを見せ、次々と不正が明らかになる中で、自動車業界では日産自動車とSUBARU(スバル)が新車出荷時の完成検査を無資格の者が行っていたことが判明。不具合を見過ごされた車両が使用されている可能性があり、信頼失墜は免れない。「メード・イン・ジャパン」は世界的に信頼されているブランドである。それが人の命を預かる製品で不正があったということであり、国際的な影響も計り知れない。企業関係者には猛省とともに徹底した原因追及、信頼回復に向けた取り組み姿勢を見せてもらいたい。
 日産自動車は9月末、新車を出荷する際の完成検査を、資格を持たない者が行っていたと発表。同社が製造する国内全ての工場、全車種で不正が常態化していた。リコール(回収、無償修理)は100万台超に及ぶ可能性がある。スバルは今月27日、社内調査の結果として、主力工場である群馬製作所(群馬県太田市)で無資格の従業員が過去4年間で8人程度、完成検査に携わっていたことが判明した。こちらはリコール台数が25万台余りに及ぶという。
 完成検査は道路運送車両法に基づく制度であり、大量生産・販売の前提となる「型式指定」を受けて、出荷時にメーカー各社が活用。検査は各社が社内規定で認定した者が行うよう通達で定められている。しかし、日産の場合は国土交通省の抜き打ち検査の結果、神奈川県など6工場全てで不正が発覚した。4~5人で分担する車1台の検査に未認定の「補助検査員」が加わっており、一部検査が通達違反の形となった。スバルは日産の不正問題を受けて行った調査の結果、不正が判明した。完成検査員に登用する前の研修中の従業員が、本来関わってはいけない完成検査に従事していた。しかも、両社とも無資格者が有資格者のはんこを使い、押印していたという。
 石井啓一国交相が「型式指定制度の根幹を揺るがす行為で極めて遺憾」とコメントしたことは当然であろう。ただ、今後国際的な「メード・イン・ジャパン」に対する見方はどうなるのか。かつて、「安かろう、悪かろう」と見られていた日本製品を高品質の信頼のおけるブランドに育て上げたのは先人たちの努力であり、それを連綿と紡いできた次世代の労力によるたまものである。ところが、ある世代が起こした気の緩みや慢心が、一挙にその信頼を崩してしまうことには歯がゆいものがある。
 不正は、地方で地道に製品を販売してきた店舗の営業や従業員、家族の生活にも影響を与えかねない。そうしたことには思いも及ばず、不正を積み重ねてきたのだろうか。原因や背景、動機が明らかになることを待ちたい。

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「特別国会」首相は所信表明演説を

2017/10/28 土曜日

 

 第4次安倍内閣は来月1日、特別国会での首相指名選挙を経て発足する。ところが安倍首相は所信表明演説を行わない見通しだ。首相は衆院選後の会見で真(しん)摯(し)な政権運営に努めると明言したはず。であるならば、改めて政権の基本理念、北朝鮮対応など内外の課題にどう向き合うかなどを説明すべきで、それに対する代表質問も行うべきだ。
 与党は25日、特別国会の会期を8日間とする方針を決め、各派協議会で野党側に提案した。野党側は代表質問や衆参両院予算委員会での質疑など十分な国会審議を行うよう求めて折り合わず、週明けも引き続き協議する。
 まず所信表明演説は、新しく首相が選出された際、または臨時国会や特別国会が召集されるなどした際、首相が政権の基本理念などを説明するもの。演説後は各会派による代表質問が行われるのが通例だ。
 しかし与党は首相の所信表明演説もなく短期間で特別国会を閉じようとしている。その理由としては11月5日にもアメリカのトランプ大統領が来日するほか、中旬以降にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などの外交日程が予定され、さらに年末の予算編成に向けた関連作業が本格化することから、日程に余裕がないとしている。
 これに対し野党側は8月の内閣改造後、閉会中審査を除けば本格的な国会審議は行われておらず、首相指名後の組閣で現閣僚が引き続き任命された場合は一度も国会の場で答弁していないとして、国会審議の場を設けるよう求めている。
 実際、与党内にも内閣支持率が低迷していることを踏まえ、学校法人「森友学園」「加計学園」問題を含め、丁寧に説明する姿勢を示す必要性があるとして、会期に余裕を持たせて所信表明と代表質問を行うべきとの声もある。
 首相は選挙後の会見で、森友・加計学園問題について「これからも国会で質問をいただければ丁寧に答えていきたい」と明言。さらには各種世論調査で内閣支持率が不支持率を下回っている現状を踏まえ、「私や自民党に厳しい目が向けられている中、今まで以上に謙虚に政権運営に努めなければならない」と述べた。
 その言葉が本当ならば特別国会は1カ月程度の会期を設け、首相の所信表明と代表質問、各閣僚の所信表明と質疑を行うのが当然だ。週明けの与野党協議に向け首相官邸の出方が注目される。
 一方で、野党側も国会審議に耐えうる体制の構築を急ぐべきだ。特に希望の党と民進党は、首相指名で誰に投票するのか、衆院や参院で統一会派を組むのかといった国会活動での基本となる問題を早急に片付ける必要がある。
 野党の体制の不備を理由に十分な審議が行われないことは、絶対に避けなければなるまい。

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ナラ枯れ「広域連携で適切な対策を」

2017/10/27 金曜日

 

 ナラ類の広葉樹が病原菌の影響で枯死する伝染病「ナラ枯れ」が深浦町で広がっている。2016年に6年ぶりに確認され、今年は今月20日現在で民有・国有林合わせて1951本の被害木が確認された。事態は極めて深刻であり、関係機関の早急な対策が求められている。
 林野庁などによると、ナラ枯れはもともと西日本で目立っていたが、日本海側を中心に北上。二十数年前からは山形、福島、秋田の各県などでも確認されている。本県では2010年に深浦町大間越地区で初めて確認され、11年以降はなかったが、16年に再び同地区や十二湖周辺で見つかった。
 県内の被害が2年連続で確認されたこと自体極めて憂慮される状況なのだが、とりわけ心配なのは被害木の増え方だ。害虫の活動期間に合わせたシーズン(7月~翌年6月)で見ると、16年シーズンは民有・国有林合わせて85本だったが、17年は1951本と20倍以上に増えた。
 国立研究開発法人・森林総合研究所東北支所(盛岡市)は「異常事態と認識してもいい状態」としている。さらに急増する恐れもあろう。原因を把握した上で対策に取り掛かりたいところだ。しかし、対策で中心的役割に担う県によると、原因は「特定が難しい」という。
 ナラ枯れは、害虫のカシノナガキクイムシが運ぶ病原菌「ナラ菌」が幹の中でまん延して道管を詰まらせ、通水障害が起きることで発生する。害虫の繁殖は、天候や樹木の状態などさまざまな要因が影響するとされるほか、隣県からの侵入も考えられるといい、有効な対策を打ち出すのは容易でなさそうだ。
 枯れた木は伐倒・薫蒸処理を施さざるを得ない。貴重な森林資源が失われるのは残念だが、これから考えるべきは被害の拡大を防ぐことだ。とりわけ、被害木が確認された一帯では、健全木にカシノナガキクイムシが侵入することを防ぎ、幹に殺菌剤を注入するといった防除策を徹底したい。
 さらに、害虫の繁殖状況などを広域で把握する必要もあろう。そのためには秋田、岩手といった隣県、林業の関係者らとの連携も欠かせない。情報交換や監視体制の強化はもちろん、工夫を長い間重ねて対策を講じている自治体から知恵を借りることも必要だろう。
 ナラ枯れ発生の背景には、ナラ類の大径木化があるとの指摘もある。幹が太くなるほど害虫が繁殖しやすくなるため、ナラ枯れの発生を防ぐには、ナラ類を適度に活用して林を若返らせるといった中長期的な対策も必要という。
 ナラ枯れで被害を受けるのは林業だけではない。景観が大きく損なわれるため、観光資源を失うことにつながり、生態系や森林が持つ防災機能などにも悪影響が及ぶ。関係機関・団体が広域で連携し、適切な対策を講じていきたい。

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臨床研修マッチング「医師を育てる環境整備を」

2017/10/26 木曜日

 

 来年度から医療機関での初期臨床研修に入る医学生らの研修先を決める「医師臨床研修マッチング」の内定結果が公表され、本県では14の指定病院のうち過去最多の6病院が募集定員を満たし、総内定者数は81人で過去3番目の高水準となった。定員に達したのは県立中央病院、青森市民病院、国立病院機構弘前病院、黒石病院、十和田市立中央病院、むつ総合病院。これまで志望者が少なかった病院も定員に達したことは朗報だ。県や関係者が進めてきた医師確保の取り組みが一定の成果を挙げたと言えるだろう。
 県は医師確保を重要課題と位置付け、特に若手医師の育成・定着に力を入れてきた。臨床研修医を指導する指導医を対象としたワークショップを毎年開催。病院側でも相互に連携し、他の病院の良いところを積極的に取り入れるなど努力を重ねてきたという。臨床研修医の採用数は過去には50人台と低迷した時期もあったが、近年は80人前後と増えている。
 並行して、将来の医師を育てる取り組みも展開されている。県は受験対策や医療の仕事を体験できるセミナーなどを開き、医学部志望の生徒を支援。本県出身の医学部合格者数は30~40人だった時代から2013年度は過去最多の92人、昨年度は84人となった。こうした学生が卒業すれば、県内の病院で勤務する医師も少しずつ増えていくことが期待される。
 医師確保の取り組みはすぐに成果が出るものではない。県が「良医を育むグランドデザイン」を策定したのは05年度。策定後既に10年以上が経過しているが、今後も現状に満足せず、各種施策の成果を検証しつつ、取り組みを続けてもらいたい。それが県の目指す短命県返上、健康長寿県にもつながっていくだろう。
 人口が減少する中、限られた医師数で地域医療を維持していくには、自治体病院機能再編成も欠かせない。県内医療を広域の保健医療圏域単位で捉え、圏域内に救急医療や専門医療を担う中核病院を設置、診療所やその他の病院とも連携して圏域全体で必要な医療を提供していく。圏域で医師を育成していくシステムも必要で、中核病院でそれができなければ地域で医師を確保するのは難しい。
 そうした中で注目されるのは、津軽地域保健医療圏で浮上している、弘前市立病院と国立病院機構弘前病院を統合し、中核病院とする案だ。どのように協議が進んでいるのか市民にほとんど情報が伝わらない中、葛西憲之弘前市長から「協議が停滞している」との発言も飛び出した。市立病院は医師不足などの理由から来年度の研修医採用を見合わせており、津軽地域の医療が今後どうなるのか、不安を感じている人も多いのではないか。
 圏域市町村による病院機能再編成推進協議会が発足して3年。県が連携の方向性を示す指針を策定してからは18年が経過した。迅速な取り組みが待たれる。

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