社 説

 

退位特例法成立「皇室の安定的存続に議論を」

2017/6/10 土曜日

 

 天皇陛下の退位を実現する天皇の退位等に関する皇室典範特例法が9日、参院本会議で可決、成立した。明治以降の近・現代日本においては初めて、歴史的にみれば、1817年の光格天皇以来、約200年ぶりに退位への道が開かれることになる。今回の法案成立はわが国における象徴天皇制の在り方を考えた時、大きなターニングポイントとなるのは間違いない。
 特例法では、83歳と高齢になられた陛下が被災地視察といった公的行為などの継続が難しくなることを「深く案じておられる」とし、「国民は陛下のお気持ちを理解し、共感している」と退位に至る事情を明記している。
 政府は2018年12月下旬に陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位を実現させ、翌19年元日に元号を改める日程を軸に検討を進めている。時期はまだ流動的だろうが、陛下の退位が現実のものとなる以上今後のスケジュールは万端遺漏なく執り行いたい。中でも改元は国民生活にも大きな影響を及ぼすものであり、混乱が生じることのないよう、早い段階でその時期を明確にし、しっかりとした準備を整えていかなければならない。
 退位への思いがにじむ陛下の「お言葉」から10カ月。国会や専門家による会議などを通じて、さまざまな議論が行われてきた。その生前退位の在り方は今回、陛下一代限りの特例法という形での決着を見ることになった。
 菅義偉官房長官は特例法について「将来の先例になり得る」と述べたが、法律に明文化されていない以上、その時々の政権の判断となることは避けられない。陛下の退位へのお気持ちに対して、国民の多くが共感を覚えたことは確かだ。だが一代限りとする今回の特例法に賛成であるかどうかは、別問題であろう。国民の願いは、突き詰めれば、象徴天皇制と皇室制度について将来も安定したものであり続けてほしいということに尽きるのではないかと思う。こうした点を考えれば、もっと議論を踏み込んだものとすることができたのではないか。
 安定的な皇位継承や皇族数の減少という問題も積み残されたままだ。例えば30年後の皇室を考えた時、皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻はいずれも80代になられる。現在未婚の女性皇族7人は、眞子さまをはじめ多くが結婚に伴い、皇籍を離脱している可能性がある。40代の悠仁さまがお一人で皇室の将来を抱え込む事態になりかねない。
 男系男子による皇位継承を維持するために側室制度を復活させるのは非現実的だろう。旧宮家の皇籍復帰も判断の分かれるところだ。
 皇室を安定的に存続させるためにはどうすれば良いのか。難問を先送りせず、国民的議論を続ける。国と政府はその先導役を担わなければならない。

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16年人口動態「働き盛り世代の健康守れ」

2017/6/9 金曜日

 

 厚生労働省が発表した2016年の人口動態統計によると、本県の死亡者数は1万7309人で15年よりも161人増え死亡率(人口1000人当たり)は13・4と全国で5番目に高かった。出生数と死亡数の差に当たる自然増減数は死亡数が上回る「自然減」で、マイナスは18年連続、減少幅は8683人と過去最大。女性1人が生涯に産む子どもの数を表す「合計特殊出生率」が1・48と4年連続で上昇し、11年ぶりに全国平均を上回るなど明るい兆しもあるが、全体として人口減少に歯止めがかからない状況だ。
 死因を詳しくみると、糖尿病の死亡率(人口10万人当たり)は3年連続で全国最悪。悪性新生物(がん)の死亡率は全国ワースト2位、腎不全は同3位、肝疾患が同4位など、主要な疾患の死亡率が全国に比べて高い。特にがんの死亡率は年々上昇しており、がんをはじめとする主要疾患の対策や健康寿命の延伸が引き続き本県の重要課題であることが分かる。
 県はこれまでも人口減少の克服、健康長寿県の実現をともに大きな課題と捉え、取り組みを積極的に進めてきた。
 例えば40年前に比べて死亡率が3倍超となったがん対策。県は高齢になると免疫力が低下することから、高齢化の進行が影響しているとみるが、それだけでは他の都道府県と比べて高い理由にはならない。喫煙などの生活習慣、検診受診率などさまざまな要因が複雑に絡み合っているのだろう。今年度はこれまでの施策に加えて、大腸がん検診未受診者へ効果的な受診勧奨を行い、検診受診率を向上させる取り組みや未受診のリスクを見える化する取り組みを新たに進める。
 働き盛り世代の死亡率が高いという問題も深刻だ。16年の人口動態統計では、男性40~44歳の死亡率は全国が126・2なのに対し、本県は155・8。50~54歳は全国322・4に対し、本県は410・0、55~59歳は全国が519・0で、本県は661・4と軒並み高い。
 これについて県は従業員の健康づくりに取り組む事業所を増やすとして、今年度から新たに始めた「あおもり働き方改革推進企業」に9社、事業主自身の健康宣言や勤務時間にがん検診が受診できる体制整備、受動喫煙防止対策の実施を必須要件とする「県健康経営事業所」に3社を認証、認定した。1~2年内にそれぞれ100事業所まで増やす考えだ。
 近年、事業所単位での健康づくりの取り組みが増えているのは心強いことだと思う。事業所は一日の多くを過ごす場所であり、経営者が率先して健康づくりに取り組む姿勢は職場全体に少なからず影響を与えるだろう。市町村や大学などの健康に関する取り組みも活発化してきており、県民の意識も少しずつ変化していると言える。働き盛り世代は家庭の柱であり、社会にとっても重要な担い手。県全体で死亡率抑制に力を尽くしたい。

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待機児童解消「政権の本気度をただすべき」

2017/6/8 木曜日

 

 認可保育施設に入れない待機児童の解消について、政府は2017年度末の達成目標を3年先送りし、遅くとも20年度末までに目指すという新たなプランを発表した。安倍晋三首相は女性の活躍や働き方改革を重要課題に掲げるが、本当に待機児童の解消に取り組む覚悟があるのか、国会は“本気度”をただすべきだ。
 全国の待機児童は16年4月時点で2万3553人。しかし保護者が育児休業中だったり、きょうだいが入所している、通勤に便利といった理由で特定の施設のみを希望している場合は待機児童と見なさない除外規定があり、この「隠れ待機児童」は6万7354人に上る。
 さらに入所できる認可外の施設があったとしても、保護者が信用できるか否かという問題もある。安心して子どもを任せたいという思いから入所を見送った場合でも、「特定の保育所しか希望していない」と判断されるのだ。
 先日行われた、塩崎恭久厚生労働相と子どものために保育施設を探す「保活」経験者らとの意見交換では、「お母さんが入れたいと思う保育園に入れることが待機児童ゼロだ。母親の気持ちを聞き入れる体制を」「情報が見えにくい中で、何を根拠に保育園を選択していいのか不明瞭。情報の見える化を進めてほしい」などの切実な声が上がった。
 厚労相には母親らの声を真摯(しんし)に受け止め、内閣の最重要課題として取り組むよう首相にも働き掛ける必要がある。
 さて、新プランでは18年度から3年間で22万人分の受け皿を整備。さらに女性の就業率が80%に達しても保育ニーズに対応できるよう、21、22年度に10万人分の受け皿を拡大し、5年間で新たに計32万人分の定員を確保するとしている。
 さらに地価の高い都市部に待機児童が集中していることから、保育園の賃借料の補助や大規模マンションでの設置を促進。待機児童の7割を占める1、2歳児の受け皿を充実させるため、幼稚園での2歳児受け入れ拡大や預かり保育も進める。
 それでも課題は多い。新プランの財源に明確な方針はなく、予算編成に向けた調整は難航が予想される。他業種に比べて低い給与水準や少ない休日など、保育士の就労条件を改善する必要もある。
 今国会では、現在は国家戦略特区だけで認めている公園内の保育所設置を、全国で可能にすることを柱とする都市公園法などの改正法が成立した。今夏までに施行される見通しで、保育所に加え、小学生を放課後に預かる学童クラブなどの設置も可能となる。
 人口減少社会にあって、働く意欲のある女性の支援は最も重要だ。獣医学部の新設が注目を集めているが、政府は特区や規制改革会議での議論など、あらゆる手段や機会を捉えて待機児童の解消に取り組むべきだ。

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“有休”“残業”対策「拭い切れないちぐはぐ感」

2017/6/7 水曜日

 

 2018年度の企業の年次有給休暇(有休)取得日数について、政府は今年度比「3日増」を目標に掲げて企業に実現を促す方針だ。社員の有休取得を増やした企業には、代替要員の確保に必要な助成などの優遇措置を検討。有休取得率を向上させるため、労働基準法の改正で一定日数の取得を企業に義務付けることも視野に入れるという。
 この方針、直接的には、長時間労働の是正などを目的とした「働き方改革」の枠組みではない。働き方改革と併せて進める「休み方改革」の一環だ。
 休み方改革では、公立小中高校の夏休みなど長期休業の一部を自治体ごとに別の時期に移して分散させ、親子が一緒に連休を過ごせるよう促す取り組み「キッズウイーク」が盛り込まれている。保護者の有休取得を促すのが狙いで、今回の方針はこの補強策のようだ。
 政府はキッズウイークを18年度から導入したい意向。有休取得を促すことで、個人消費拡大や地方の景気回復も図るという。
 この方針自体に異を唱えるつもりは全くない。親子が一緒に過ごせる時間が増えるのは歓迎である。しかし、これらが政府の狙い通り制度設計できたとして、実現できる企業・自治体はどれぐらいあるのだろう。恩恵を受けられる家庭と受けられない家庭の間に格差は生じないだろうか。
 政府の調査によると、15年の有休取得率は48・7%。1人当たりの付与日数18・1日に対し8・8日しか取得しておらず、政府が掲げる目標「20年までに70%」には程遠い。いまだ有休の取得に冷ややかな職場は少なくないと聞く。それ以上に、業務の量や内容によって休みたくても休めない人も多いのではなかろうか。前述の優遇措置で業務の「量」の問題は解決できたとしても、「内容」の解決は難しい。高い専門性や能力が求められる業務ならばなおさらだ。その点が解決されなければ、休み方改革は画餅に帰しかねない。
 一方、働き方改革関連では、厚生労働省の労働政策審議会の分科会が、残業時間に罰則付きの上限を設ける労基法改正に向けた意見書に、休日労働の抑制を企業の努力義務として労基法の指針に明記するよう盛り込んだ。働き方改革に関する政府策定の実行計画では残業時間の上限を年720時間などと決めたが、720時間に休日労働を含まない点が上限規制の「抜け穴」になる―との批判があり、努力義務はそれに対応したものだ。しかし、努力義務である以上、その実効性は期待できない。
 働き方改革と休み方改革は不可分な関係にありながら、二つの方向性にはちぐはぐな印象を受ける。全ての人が享受できる労働環境改善に向けた、実効性の高い改革はできないものか。

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新幹線開業効果「津軽地区の企業に奮起を期待」

2017/6/6 火曜日

 

 北海道新幹線の開業効果を実感する県内企業が、開業時(2016年3~4月)から1年たって大幅に減少していることが、みちのく銀行の調査で分かった。「開業は好機」と躍起になる自治体と対照的であり、経済への波及効果を高めることが容易でないことが分かる。
 開業は「県内経済にプラスの影響を与えた」と回答した企業は、開業時の33・9%と比べて23・1ポイント減の10・8%。さらに、「自社にプラスの影響を与えた」との回答は開業時の14・8%と比べて10・7ポイント減の4・1%だった。
 10年12月に東北新幹線が新青森にまで延伸し、全線開業した時も同様だったと思われるが、開業時は周囲から注目されるため、地元でも漠然としたものながら期待感が膨らむのは理解できなくもない。しかし、当初の高揚感がいつまでも続くはずはなく、それが調査の数字にも反映されているのではないか。
 当然、要因は心理的なものだけではないだろう。調査によると、「開業に伴って何かしらの取り組みをした」と回答した企業は開業時の5・7%と比べ、微増の8・6%にとどまった。経済への波及効果は、待っているだけでは得られない。積極的に取り組む企業が増えないことが、効果を実感できない状況をつくっているとも言えるのではないか。
 確かに、効果を得ようと積極策を取るには相応の投資が必要であり、中小企業が大半を占める本県にあっては、そのような投資が可能な企業は多くない。ただ、諦めてしまうのは早過ぎる。何とか知恵を絞りたい。
 北海道新幹線の開業に伴って売り上げを増やしたり、顧客を開拓したりした企業は、北海道・函館地区の企業と商品の共同開発などに取り組んでいるようだ。こうして見ると、やはり本県と道南の連携が重要なカギを握っているらしい。
 昨年の「青森県・函館デスティネーションキャンペーン(青函DC)」が成功したことからもうかがえるように、本県と道南の連携は的を射た取り組みなのであろう。今後は奏功した事例を継続・発展させるとともに、連携を新たな分野でもできないか探っていくことが重要だ。
 そこで気になる点がある。同行の調査によると、開業のプラス効果を実感する津軽地区の企業が青森地区に比べて少ないことだ。津軽地区で「県内経済にプラスの影響を与えた」と回答した企業は7・8%、「自社にプラスの影響を与えた」との回答は1・3%。「開業に伴って何かしらの取り組みをした」との回答は3・9%にとどまった。
 津軽地区は東北・北海道新幹線の沿線から外れ、ハンディを背負っているかもしれないが、道南との連携でしっかり実績を上げている企業もある。開業効果を引き出す主役は民間であるべきだ。津軽地区の企業に奮起を期待したい。

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