社 説

 

弘前市の情報流出か「再発防止へ原因の究明徹底を」

2019/12/25 水曜日

 

 弘前市職員の個人情報が外部に流出した可能性があり、市が調査を進めている。流出したとみられるデータは全職員に相当する2747人分の氏名や住所、給料など約70項目に及ぶという。
 誰が何のために流出させたのかは明らかではないが、市は市民の個人情報も含め、さまざまな行政情報を管理しているだけに、流出は決してあってはならない事態である。市は刑事告発も視野に調査を進めている。職員や市民の不安を一刻も早く解消するために、事実関係を明らかにし再発防止へ全力を挙げてほしい。
 情報流出の可能性が明らかになったのは今月13日。県内の一部報道機関にメールで送られたデータが、市保有の個人情報データに酷似していることを、市が記者会見で明らかにした。内容は、2017年度の職員や非常勤職員ら全職員とみられる氏名、職員番号、住所、個人の月額給料、最終学歴、健康診断の内容、採用年月日など膨大な情報量だという。
 11月18日~今月12日には、市に匿名で「職員の個人情報リストファイルが流出していますが、いいのでしょうか」「マスコミにも情報提供を考えています」といった情報流出を示唆する、半ば脅迫とも受け取れるメールが届き、一部職員の個人情報が記載されたメールも届いたため、市が内部調査を進めていたさなかだった。
 全国的にも、神奈川県庁で行政文書管理に使われていたハードディスクが転売され、大量の個人情報流出が明らかになり、全国各自治体の情報セキュリティーの在り方が問われていた矢先の出来事だっただけに、多くの市民らが情報管理の在り方に不安を募らせる結果となっている。
 市によると、職員らの個人データにアクセスできる職員は担当課の約20人と限られ、データ保存ファイルを開くためには異なるパスワードを複数回入力しなければならないという。データを持ち出すには課長に申し出た上で専用のUSBのみ接続できる設定になっており、厳重な管理体制になっている。ただ、パスワードの運用について不備を指摘する声もあり、今回の問題を踏まえ、管理体制の見直しは急務だ。
 これまでの市の調査によると、個人情報に対して外部からアクセスした形跡はなく、市は「限りなく内部情報の流出に近い」として、刑事告発も視野に調査を進めている。流出したのは17年度当時のデータとみられることから、当時在籍していた職員も含め、内部情報のデータを知り得る可能性のある職員を対象に調査している。
 再発防止のためには事実関係と原因の究明が欠かせない。同時に、情報管理の在り方についていま一度再点検し、見直すべき点は見直して流出防止に全庁挙げて努めてもらいたい。

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英国総選挙「EU離脱に向け、対応万全に」

2019/12/24 火曜日

 

 欧州連合(EU)の離脱が争点となった英国下院の総選挙は、ジョンソン首相率いる保守党が単独過半数を制して歴史的勝利を収めた。これにより、2020年1月末に英国が欧州連合(EU)から離脱することが確実な見通しとなった。与党大勝を受け、同国では20日、離脱協定案の基本方針が可決。1973年にEUの前身「欧州共同体(EC)」へ加盟して以来の約半世紀にも及ぶ、英国とEUとの関係は、終止符が打たれることになる。
 開票前の予想では、優勢とされた保守党を「離脱か残留かを問う国民投票の再実施」を主張した労働党が急追し、接戦となるとの見方も出ていたが、開票結果を見れば、想像を超える保守党の圧勝。接戦との報道に危機感を募らせた離脱派の投票行動が勝ったということなのだろうか。いずれにせよ、離脱の是非を問うた国民投票から約3年半にも及んで、国論を二分し続けた離脱協議は、新たな段階に進んだと言えるだろう。
 今後の焦点は、離脱後に英国がEUと結ぶ自由貿易協定(FTA)交渉に移るが、離脱後の経済・社会の激変を緩和するため、同国が一定期間加盟国並みの待遇を受ける「移行期間」は、20年末までとわずか11カ月間に過ぎない。ジョンソン首相は、移行期間を延長しない方針だ。通常は数年にも及ぶと言われる貿易協定を1年にも満たない期間で締結するということは至難の業と言えるだろう。
 長く、EU加盟国であった英国は、単独で実施する貿易交渉の経験が不足しており、実務を担う人材が不足していると言われる。想定を超えた難局が待ち受ける可能性がある。
 民族や言語、文化、経済規模などが異なる国々が、国家の枠を超えた広域な経済、政治などの協力圏域をつくるというEUの試みが、多分に人類史上的な実験であったとすれば、英国のEU離脱もまた、後世から見れば壮大な実験と呼ばれるかもしれない。明確に離脱へのかじが切られた今、いかに経済、社会的な混乱を生じさせないために事態を“軟着陸”させるか、英国、EU当事者にかかわらず、世界各国が知恵を出し合う必要があるだろう。ジョンソン首相は、総選挙での大勝を受けて強気の国会運営を図るだろうが、英国内の事情を優先するだけでなく、世界的な影響を見据えた柔軟な姿勢も問われることになるのではないか。
 今回の総選挙の結果について、日本国内からは政府、経済界などを中心に、冷静な受け止めの声が聞かれるが、移行期間中に英国がEUと貿易協定を結べなければ、物品貿易に関税が課される実質的な「合意なき離脱」に陥りかねない。英国へ進出した日本企業にとっては、離脱後に向けた対応が本格化する。日本においても不測の事態に備えた官民を挙げた努力がさらに必要となるだろう。

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高齢者の移動「持続する仕組みの構築を」

2019/12/21 土曜日

 

 超高齢化社会を迎えるに当たり、大きな課題の一つとなっているのが、高齢者の移動手段の確保だ。17日に青森市で高齢者の移動手段について考える勉強会が開かれ、関係者が県内外の取り組み事例を参考に今後の方向性について考えた。
 つがる市、佐井村など県内外4自治体・団体が取り組みを発表したが、予約型乗り合いタクシーや社会福祉協議会が主体となり、住民も有償ボランティアとなるドアツードアの住民輸送、道路運送法によらない、住民の助け合いによる無償の地域内交通など、さまざまな手法があることが分かる。地域で持続していける交通の仕組みをつくり上げるには、地域の実情に最も合うやり方を地域の人々が選択し、より便利になるように自らカスタマイズしていくしかないのだろう。
 勉強会で紹介された県外事例は今後の取り組みを考える上で参考になった。山形市では路線バス廃止後に住民が「交通サービス運営協議会」を設立、予約型乗り合いタクシーを運行している。住民ニーズを調査し、バス停の数を2倍近くに増やして利便性の向上を図ったという。岩手県北上市では乗り合いタクシーのほか、自宅から目的地まで運ぶ予約型自家用有償運送、道路運送法によらない地域住民限定の無料互助輸送など、同じ市内でも地区ごとに選んだ移動手段が異なり、市は運行経費を補助している。
 利用者のニーズは多様化しており、これからは市内一律の制度導入がますます難しくなってくるのだと思う。勉強会でも指摘されていたが、ニーズに合った仕組みを導入するには、使う側の住民が自分のこととして考えることが重要だし、行政側には住民が選択できる仕組みを用意して提示すること、さらには住民を動かすための働き掛けが求められる。
 住民が考え、行政が支援して地域内交通の仕組みが動き出しても、それで終わりではない。長く続けるためには、利用者が高齢化したり、地域のにぎわいポイントが変わったりと、変化に応じて常に進化させる必要がある。相当に手間がかかるが、手をかけなければ、人口が減り続ける中、地域内交通を維持することは難しい。核となって熱心に取り組んでくれる人材の確保も重要なポイントだ。
 近年高齢運転者の事故が社会問題となっているが、地方では車がないと外出に困る人は多い。バスがあっても不便だったり、高齢者がバス停まで歩けなくなったりするケースも増えているという。
 2025年の超高齢化社会到来は目前に迫り、待ったなしの状況だ。県は18年度から「青森県型地域共生社会」の実現を掲げ、高齢者の移動のほか、買い物や見守りなどの生活サービスの維持確保について部局横断で取り組んでいる。市町村とも連携を強め、住民が参画し、行政が支える仕組みを早急に構築し、取り組みをさらに前に進めてもらいたい。

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コンビニ出店「等しい購買環境享受へ努力を」

2019/12/20 金曜日

 

 コンビニエンスストアが1軒もない「コンビニ空白地帯」となっている国道101号沿い、深浦町関―秋田県八峰町八森町間約76キロの間に、新たに住民待望のコンビニが来年2月、オープンすることが決まった。深浦町深浦地区のJR深浦駅近くに、業界2位のファミリーマート(以下ファミマ)が「深浦駅前店」として出店、24時間営業の店舗とする。同店オープン後も約50キロにわたる空白地帯が続くわけだが、1店とはいえ、同町が住民の高い要望に応え、事業者に出店を促して実現に至らせた意義は大きい。引き続き、町側には住民サービスの向上を目指して、空白地帯の解消も含めて取り組んでもらいたい。
 深浦駅前店は同町唯一のコンビニ「ファミマ深浦関店」から南方約26キロの場所に立地。海岸にも近く、地域住民はもとよりJR五能線や観光バス、マイカーによる観光客の需要も期待される。町は出店に併せ、隣接地にコンビニの駐車場とは別に大型車4台、普通車10台が駐車できるスペースを整備し、コンビニの買い物客以外も駐車できる形とする。
 昼夜問わず、いつでも必要なものを購入でき、料金収納にも対応できるなど、コンビニで可能なことは数多い。都市部では、局所的に複数業者の店舗が立ち並んでいたり、数百メートルおきに立地されていたりと、もはや供給過剰の感じがある。このため、近年では新規店舗オープンがニュースに取り上げられることは、ほぼない。業界トップのセブン―イレブンの本県進出が報道されたことが記憶に新しいぐらいだ。
 しかし、都市部やある程度人口が多い自治体で、当然のようにあるコンビニが深浦町にはわずか1軒、しかも北部にしかなかった。今まで事業者がこの地域を出店場所として選択してこなかった理由は明らかでないが、人口が少ない、都市部から相当の距離があるなどの事情を考慮したのだろうか。
 同町は少子高齢化と人口減少が進んでいるが、そこを生活基盤とし漁師や農家、福祉施設関係者ら早朝や深夜の仕事に従事する人も多数いる。県境も抱え、国道101号を通じて多くの人が通る場所であり、風光明媚(めいび)な十二湖や県内一の水揚げを誇るマグロなど、魅力的な観光や食を求めて観光客が多数訪れる。そうした人たちが、日用品や土産品など買い物をする場所は複数存在するが時間的な制約がある。夜中や早朝に緊急に商品を購入する必要性はいつ起きるか分からない。つまり、都市部ほどではないにしろ、確実にコンビニの需要はある。
 住民はもとより、観光客の利便性が図られることになる今回の出店。事業者側の「費用対効果」の考えもあろうが、自治体側はそうした障壁の解決策を打ち出し、住民が等しく購買環境を享受できるよう努めてほしい。

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弘南鉄道支援「路線維持へ知恵を絞れ」

2019/12/19 木曜日

 

 弘南鉄道の弘南線(弘前市―黒石市間)が2017年度から赤字に陥っていることを受け、弘前市をはじめ赤字が続く同鉄道大鰐線(弘前市―大鰐町間)を含む2路線の沿線5自治体は、両線の維持に向けて支援の在り方を検討している。同市は今後、何らかの支援策を予算に盛り込む可能性もあるとみられる。
 検討は現在、担当者レベルで進められているという。公共交通の維持に向けて早期の合意を望みたい。
 同社の収支はこれまで、大鰐線の赤字を弘南線の黒字で補う形で推移していたが、弘南線も少子化や人口減少などに伴う利用客の減少で赤字に転じた。13年に一時廃止案が浮上した大鰐線では各種活性化策が講じられているが、利用客の回復までは至っていない。18年度段階で同社の経常損益は赤字が8年続いている。
 車社会と言われて久しいが、現在でも学生や高齢者、マイカー通勤ができない大人にとって、公共交通機関が日常生活に不可欠な移動手段であることに変わりはない。
 近年は身体機能に不安を抱く高齢ドライバーに運転免許証の返納が勧められているが、代替移動手段が担保されていなければその浸透はおぼつかない。
 より安全な交通社会の実現には、公共交通網の維持が求められる。同社の業務の公共性に鑑み、沿線自治体による物心両面での支援が必要だ。市町村レベルでの支援だけでは不十分ならば、県や国にも協力を打診する選択肢もあろう。
 同社は経営合理化策の一環として、今年10月に両線の大幅なダイヤ改正を実施した。弘南線は上下12本、大鰐線は同6本を減便。通学・通勤客への影響を最小限にとどめるよう配慮されたが、これ以上の減便は、利便性の低下と利用客減少の悪循環につながりかねない。
 同社の経営再建は自助努力だけでは限界がある。駅舎や施設は老朽化が進み、保線もおろそかにはできない。社員は限られた人員で日々の業務に忙殺されている。
 今後も人口減少が見込まれる中で、2路線の存続を図るのは容易ではない。関係機関には議論を深め、知恵を出し合ってほしい。
 もっとも、存続は沿線自治体の財政支援で事足りるわけではない。肝心の沿線住民が利用しなければ、優れたビジョンや企画も画餅に終わる。住民も自分たちの足を守るため、地域の実情に応じた公共交通の在り方を考え発信し、行動に移すべきではないだろうか。
 大鰐線では、車両内外のイベントや企画など、さまざまな取り組みが展開されてきた。弘南線でもイベント列車運行などが定着しているが、温泉、庭園、田んぼアートといった沿線の豊富な観光資源を直接利用客増につなげる試みが増えてもいい。

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