社 説

 

元徴用工問題「協定重んじ毅然と対応を」

2019/7/18 木曜日

 

 徴用工問題をめぐり、日本政府が日韓請求権協定に基づき韓国に求めている仲裁委員会設置に向けた手続きについて、韓国大統領府高官は応じない立場を示し、期限の18日を前に韓国の仲裁拒否がほぼ確実となった。日本政府は期限を待って新たな措置に踏み切る構えで、日韓関係改善の道筋は見通せなくなった。
 徴用工問題では韓国最高裁が三菱重工業に元徴用工らへの賠償を命じ、原告側は賠償問題解決に向けた協議要請の期限までに三菱重工側が応じなかったと発表し、差し押さえた同社資産の売却命令を近く申請すると表明した。原告側は既に日本製鉄(旧新日鉄住金)、不二越の資産売却手続きに着手している。
 こうした中で同高官は16日、記者団の「仲裁委に関し、受け入れ不可能という立場か」との質問に「そうだ」と断言し「(日本側への)特別な回答は恐らくないと理解している」と述べた。韓国が提示する日韓企業による慰謝料支給案について文在寅大統領は「われわれが提示した方策が唯一の解決策だと主張したことはない」と、ほかの方策も検討する用意があることを示唆しているが、この高官の発言からは、慰謝料支給案以外の方策に、仲裁委設置が含まれていないことがうかがえる。
 こうした韓国側の姿勢に対し、16日に菅義偉官房長官、17日には西村康稔官房副長官も会見で「韓国政府に協定上の義務である仲裁に応じるよう強く求める」などと強調した。日本政府は徴用工問題について1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、「義務」を果たさぬ韓国側に不信感を抱く。菅官房長官は明言を避けたが、回答期限を待って国際司法裁判所(ICJ)提訴や新たな対抗措置などを視野に検討している。
 協定にのっとって手続きを進めてきた日本政府に対し、韓国側は国内世論などを背景に一歩も引けない状況。このような状態では、過去最悪と言われる日韓関係の好転はあり得ない。
 終盤に入った参院選の各党公約を見ると、自民は「客観的事実に基づかない主張には断固たる反論を行う」、公明も「日韓合意などに基づき適切な対応を求める」とする。野党に具体的な記述はなく、これ以上の関係悪化を危惧してのことのようだ。与野党で異なる対応も、日韓問題の難しさを物語る。
 訪韓中のスティルウェル米国務次官補は17日、日本の対韓輸出管理強化に対して韓国が「経済報復」と反発していることを「深刻に受け止めている」とし、同盟国として「仲介」する姿勢を初めて示した。次官補はこれまで仲介などを否定しており、どの程度関与するかは不透明だが、日本政府は毅然(きぜん)とした態度を維持しながら、「完全かつ最終的に解決された」と明記した協定の重さについて、米国の理解を得る必要がありそうだ。

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安美錦関引退「“諦めない”で後進育成を」

2019/7/17 水曜日

 

 大相撲の元関脇で関取最年長40歳の西十両11枚目・安美錦関(本名杉野森竜児、深浦町出身、伊勢ケ浜部屋)が名古屋場所10日目の16日、現役引退を表明した。1997年初場所で初土俵を踏み、2000年初場所で新十両、同年名古屋場所で新入幕。多彩な技を生かした相撲で人気力士となり、関脇には6場所にわたって在位した。左アキレスけん断裂の大けがも乗り越え、再入幕した17年九州場所では敢闘賞に輝いた。本県出身の名力士がまた一人、土俵から姿を消すことに多くの県民は寂しさを隠せないだろうが、今後は名指導者として活躍し、名をとどろかせることを期待したい。
 安美錦関は小学校入学後、父の指導で相撲の稽古を受けるようになった。小柄で少年期は好成績を残せなかったが、鯵ケ沢高校入学後に頭角を現した。高校卒業後、兄(元・安壮富士関)がいた安治川部屋(現・伊勢ケ浜部屋)へ入門。伊勢ケ浜親方と父親はいとこ同士でもあった。その後の活躍は多くの相撲ファンが知るところ。幕内在位97場所は歴代3位。三賞受賞12度は同10位タイで、金星は8個獲得した。しかし、近年は足のけがに悩み、今場所2日目に古傷を抱える右膝を負傷、白星がないまま3日目から休場し、9月の秋場所では幕下転落が確実となっていた。今後は年寄「安治川」を襲名する見通しとなっている。
 けがに泣き十両に陥落しながらも再入幕し活躍してきた姿に「努力すれば再起できるという夢を見させてもらった」と語る父・清克さん。「最後まで諦めないという気持ちを持っていた」という伊勢ケ浜親方の言葉がそのまま当てはまる。こうした姿は県民はもちろん、全国の多くの相撲ファンを魅了してきたと思われる。
 安美錦関の引退は、「相撲王国」とされる本県出身力士がまた一人、番付から姿を消すことを意味する。今の名古屋場所の番付を見る限り、幕内の本県出身力士は2人、十両は安美錦関一人だけだ。幕下以下の成績を紹介する新聞の「郷土出身力士」の欄は、かつて縦長に多くの力士が名を連ねていたが、今では10人ほど。「王国」と言うには寂しい状況にある。深浦町に至っては、同時期に安美錦関、安壮富士関、海鵬関、将司関の4人の出身力士が番付に名を連ねていた時期もあったが、今回の引退によって完全に姿を消す。
 相撲人口の減少など背景は多々あるが、初代若乃花関、隆の里関ら数多くの名力士を輩出した本県だけに「相撲王国」再興を願わずにはいられない。現在、幕内に在籍する宝富士関、阿武咲関の2人の活躍、今は幕下以下にいる力士の台頭を期待する。それに「決して諦めない」心で勝負に挑んできた安美錦関自らが親方として、その信念を後進に引き継いでいってほしい。

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憲法改正論議「有権者に分かりやすい議論を」

2019/7/13 土曜日

 

 21日投開票の参院選で、争点の一つとなっているのが憲法改正だ。自民党は参院選の公約に改憲を掲げており、参院選での結果が改憲論議を推し進めるかどうかの判断基準につながることだろう。
 県内有権者を対象に行った参院選についての本紙世論調査(4、5日)では、安倍政権の掲げる憲法改正に「賛成」と回答した人の割合は18・3%にとどまり、「反対」は賛成のおよそ2倍となる36・7%、最も割合が高かったのは「分からない」の44・2%だった。有権者の間で改憲を求める声が高まっているとは言えない状況にある。
 自民党が公約に掲げている改憲の方向性は大きくは7項目。「国旗は日章旗、国歌は君が代とする」「憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和」などとするほか、特に注目されるのが「平和主義は継承しつつ、自衛権の発動を妨げないこと、国防軍を保持することを明記」「武力攻撃や大規模自然災害に対応した緊急事態条項を新設」の部分だ。
 改憲賛成派の意見を聞くと、現憲法に明記されていない自衛隊に関し「国民のために頑張っている自衛隊をきちんと明記してほしい」との声が上がる。また現憲法を「敗戦後にGHQ(連合国軍総司令部)から押し付けられた憲法」「日本人が作り上げた憲法にすべき」との声も。一方で反対派からは「9条改正が戦争につながる」との声があるが、国際法で戦争は違法とされており、両者の議論はなかなかかみ合わない。
 ただ、改憲が「立憲主義の破壊につながるのでは」と不安視する声があることも確かだ。国家権力を制約する憲法に仮に自衛隊が規定される場合は、自衛隊の権限の範囲をも規定することが当然と考えられるが、自民党の改正草案を見ると法律で後から決められる形になっているのではないか―といった懸念がある。
 また武力攻撃や大規模自然災害に対応する緊急事態条項新設についても、緊急事態により迅速に対応できるというメリットがあるが、権力の歯止めを一時的であれ停止・制限することを憲法レベルで規定した場合、緊急事態が終了した段階で速やかに元の状態に戻れることが担保されているのかどうかは不明だ。
 「政府が権力を乱用することがあるはずもない」。そのような絶対的な信頼感を持って改憲論議を見守るよりは、乱用される危険性もあると想定した上で注視すべきではないだろうか。10年後、20年後にどのような事態が起き、あるいはどのような政治家が出てくるかは予測できないからだ。
 参院選で本県選挙区の候補者の街頭演説を聞いていても、改憲が大きな争点とされている印象は少ない。有権者の多くが「分からない」と感じていることがうやむやに進んでいくことがないように、今後の議論を注視したい。

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人口減と高齢化「一極集中是正こそ最重要課題」

2019/7/12 金曜日

 

 日本の人口が10年連続で減少する中、本県の減少率は全国ワースト2位、高齢化率は過去最高を更新した。ここ数日の間に発表された各種統計で明らかになった、本県の実態である。いかに地域を持続させるのか、政治や行政はもちろん、県民も真剣に考える必要がある。
 県国民健康保険団体連合会が公表した今年2月1日現在の住民基本台帳をベースとした本県の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)。県平均は32・07%で、最高は今別町の53・45%だった。海岸地域の町村で高い傾向が見られ、10町村で40%を超えた。弘前市は31・38%だった。
 また、今年2月1日現在の本県総人口は129万1271人(前年同期比1万5409人減)で、65歳以上は41万4065人(同4803人増)だった。
 高齢化率が上昇し続けることについて県の担当者は「町村部で若者が流出している。対策には市町村だけではなく、国と県が一体となった対応が必要」と指摘する。
 それを裏付けるのが、総務省が10日公表した住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の人口統計だ。
 それによると、日本の人口は前年同期比43万3239人(0・35%)減の1億2477万6364人で、10年連続の減少となった。減少数、率ともに過去最大を更新。都道府県別で人口が増えたのは東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の4都県と沖縄県のみで、東京一極集中が依然進んでいることが分かる。
 各種統計が物語るのは、本県を含む地方は若者の流出によって人口が減少し、それに伴い高齢化が進む構図だ。地方が衰退すれば、ますます若者が流出する。この“負の連鎖”を断ち切ることは、本県だけでなく、国全体で早急に取り組むべき課題だ。
 先日、県総合計画審議会(会長・佐藤敬弘前大学学長)が2020年度に県が取り組むべき施策をまとめ、三村申吾知事に提言した。提言書では人口減少対策として若者の県内定着を促進するため、生徒・学生への働き掛けだけではなく、教員や保護者にも県内の魅力的な就職先を周知することも求めた。
 県は提言も踏まえ、大胆な手だてを講じてほしい。例えば他県に進学する若者に対し、卒業後は本県で働き一定期間納税することを条件に、奨学金を支給してはどうか。移住者用に自治体が空き家をリフォームするなど、他県の若者を迎え入れる方策も検討してほしい。
 折り返しを迎えた参院選では、社会保障が大きな争点となっている。確かに重要な政治課題ではあるが、もっと語られるべきは、若者や子育て世代に光を当てた政策だ。地方が衰退しては、国は成り立たない。いかに一極集中を是正するかが、最重要課題である。

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アートで街活性化「美術館が新設される今が好機」

2019/7/11 木曜日

 

 アートで街を活性化しようとする、草の根的な活動が弘前市内で見られている。同市内では来年春に「弘前れんが倉庫美術館」の開館が予定され、市民のアートに対する関心が高まっているだけに、同じような活動が今後増えていくことを期待したい。
 活性化といっても手法はさまざまだ。デザインユニットをつくり、同市内を拠点に活動する夫婦は、空き店舗を活用したアートイベントを開催している。
 営業をやめた、いわば不要になった店舗を活用すること自体、面白い取り組みなのだが、活用の仕方もまた独特だ。世界大戦が勃発した近未来をテーマとし、「時間が止まった空間」に地元のアーティストが作品を並べた。
 この夫婦は、今回の展示がモデルケースとなり、アート分野における空き店舗・空き家の活用が広がる足掛かりになればと展望している。確かにアートに空き店舗を活用する例はそれほど多くない。
 さらに興味深いのは、空き店舗を単に展示会場として活用することにとどまらず、「住む人が離れてもそのまま存在している、会場の不思議な空気感も作品の一つ」と話している点だ。空き店舗そのものまで作品と捉える、ポジティブな姿勢に共感できる。
 津軽地方に住むアーティストの一人は、街なかのあちこちにアート作品を仕掛ける取り組みを展開している。商店の壁、シャッターをキャンバスに見立て、取り組みに参加するアーティストたちが無償で作品を制作するという。
 構想では、取り組みに賛同する店舗や施設の内外に作品をこしらえ、地図上で数珠つなぎにし、将来的には観光客らに回遊してもらうことを目指しているという。国内外で評価を得ている気鋭のアーティスト数人が無償での協力を表明しており、取り組みの成果が注目される。
 弘前市は、さくらまつり、ねぷたまつりなど四季の祭りがあり、観光都市としては国内外に知られる。しかし、アートに関しては、県立美術館がある青森市、現代美術館がある十和田市が先行している。弘前市は今のところ「アートの街」への仲間入りを果たせていない。
 ただ、弘前市が今後、アートに関して他都市と肩を並べられる可能性は十分にあろう。実際、街なかにアート作品を仕掛ける取り組みを展開する関係者は、地元におけるアーティストの認知度向上などを目指している。それだけ、同市にはアートに関わる人がいるということなのではないか。
  美術館が新設される今が弘前市にアートを根付かせる好機。ただ、アートによる地域振興例は全国に多数あり、後発組が成功するのは容易ではない。新たな美術館が独自色を持つことはもちろん必要だが、それに伴い地元の活動が盛んになれば最も大きな特徴となるはずだ。

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