社 説

 

サクラオーバルズU15「地域スポーツ振興の起爆剤に」

2021/5/20 木曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、市民生活はさまざまな点で影響を受けているが、地域スポーツの世界もまた厳しい環境に置かれている。そうした中、ラグビーの普及促進に取り組む弘前市のNPО法人「弘前サクラオーバルズ」が中学生のために新たなカテゴリー(U-15)を立ち上げたという話題が新鮮だった。
 同法人はラグビー競技の裾野拡大や選手・指導者の育成などを目指しており、同名のトップチームや小学生対象のスクールを運営。15歳以下のカテゴリー(U-15)はトップチームとスクールの中間に当たるもので、小学生のスクールよりも、より実戦に即した練習に取り組んでいくという。
 記事では今回の新カテゴリー創出の背景について、津軽地方で中学生がラグビーに取り組むことができる環境が乏しいことを挙げている。同地方には現在、中学校のラグビー部やクラブ活動はなく、中学生を対象としたスクールも青森市、八戸市、十和田市の3カ所のみだという。
 2019年に日本で開催されたラグビーのワールドカップで日本が予想を大きく超える躍進を果たし、国内にブームが巻き起こったことは記憶に新しい。こうした活躍を目にした子どもたちがせっかく未来の日本代表を夢見ても、地元で学ぶ機会がなければ、その芽が育つことは難しい。小学校、中学校、高校と、地元で切れ目なく練習する機会が提供されることの意義は大きいだろう。
 U-15には弘前市や黒石市、五所川原市、藤崎町など、津軽一円から子どもたちが集まっているようで、期待のほどがうかがえる。今後、人数が増えれば、U-15のカテゴリーでの大会出場なども視野に入るということだ。息の長い取り組みで、津軽地方のラグビー人口の裾野拡大と競技の発展に尽力してもらいたいし、その活動を応援していきたい。
 ラグビーに限らず、地域で子どものスポーツ活動が盛んになることは喜ばしい限りだ。さまざまな競技で、これまで学校の部活動が担ってきた部分が、少子化などの影響で従前のような対応ができないケースが見られる。受け皿の一つとして期待されるのが、弘前サクラオーバルズといったNPО法人で、こうした団体が担い手となることで、より広い範囲から子どもを集めることができ、専門性の高い指導を受けることも可能となるだろう。普段の学区などとは異なる子どもたちと交流することで、新たなコミュニティーの創造にもつながるのではないか。
 新型コロナの感染が拡大している現在の状況にあって、地域スポーツの活動は大人、子どもを問わず、厳しい状況にある。だが、閉塞感のある現在の社会情勢だからこそ、地域スポーツの果たす役割は大きい。地域全体で、スポーツ活動を応援する機運を醸成していきたい。

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GDPマイナス成長 「回復へワクチン接種加速を」

2021/5/19 水曜日

 

 内閣府が18日発表した2021年1~3月期の実質GDP(国内総生産)速報値は前期比1・3%減と、3四半期ぶりのマイナス成長に陥った。この成長が1年続いた場合の年率換算では5・1%減。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って1月に首都圏などで緊急事態宣言が再発令され、経済活動が制約されたことが要因だ。20年度の実質GDPも前年比4・6%減と2年連続のマイナスで、下落率は戦後最悪を記録。4~6月期もマイナス成長の可能性があり、景気回復の道筋は見えない。
 マイナス成長の大きな要因はGDPの半分以上を占める個人消費の冷え込みで、1~3月期は前期比1・4%減。外出自粛で外食が振るわず、衣類や自動車販売も苦戦した。これは宣言対象地域だった首都圏、大都市圏に限った話ではないだろう。タクシーに乗れば、運転手からは「週末でも(弘前市)鍛治町は全然人がいない」「あそこの店が閉めるみたいだ」といった暗い話ばかり出てくる。4月27日~5月9日に県の営業時間短縮要請があった青森市本町地区の酒類提供店では期間終了後も客足が戻らず、「心が折れる」「希望がない」などと悲痛な声が上がる。ただでさえ厳しい地方経済に追い打ちを掛けた新型コロナ。工夫を凝らして何とか営業を続ける飲食業者だが、この状況が来年まで続くようなら持ちこたえられないだろう。
 苦境を打開するためには新規感染を徹底的に抑えなければならないが、国内の状況は依然として厳しい。感染力が強い変異ウイルスの流行により、4月に出された3度目の緊急事態宣言は対象が9都道府県に拡大。本県でも連日のように20~30人規模で新規感染者が確認され、クラスター(感染者集団)の発生も相次ぐ。変異株の確認も増えており、置き換わりが進めば感染爆発の状況に陥る可能性もある。
 政府が頼みとするワクチン接種も他の主要国・地域に比べて遅れが目立つ。17日には国が東京と大阪で運営する大規模接種センターの予約が始まったが、菅義偉首相が掲げる「1日100万回」を達成するためには、接種態勢の整備はなお大きな課題だ。7月末までに高齢者向け接種が完了しても、その後に待つ16歳以上の一般対象者は約1億1000万人に上る。1日100万人が実現できても全員が2回の接種が終えるのは22年に入ってからとなる。
 政府は21年度中に経済をコロナ前の水準に戻す目標を変えていないが、現状では厳しいと言わざるを得ない。ワクチン接種が加速する欧米、中国の経済はコロナ前の水準に戻りつつあり、日本だけが取り残される可能性もある。経済活動の正常化には、ワクチン接種の加速と感染抑制しかない。政府には苦境にあえぐ業界への補償など景気の下支えはもちろん、ワクチン確保、接種率向上への大胆な対策が求められる。

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地銀経営統合へ「両行の強みを生かした地銀に」

2021/5/18 火曜日

 

 青森銀行とみちのく銀行が合併を視野に入れた経営統合の基本合意を正式に発表した。2022年4月をめどに持ち株会社を設立、2年の準備期間を経て24年の合併を目指す。協議が順調に進めば、経営基盤をより強化した形で県内に圧倒的シェアを誇る、新たな地銀となる。
 先行きの見えない新型コロナウイルスの影響も含め、国内経済は回復に向かう好材料が見られないまま低迷を続けている。長期的には国内は少子高齢化の進行に歯止めがかからず、本県の場合はさらに若者が県外流出する傾向が強く、地方の活力が失われる事態が懸念される。その波は本県経済を支えてきた地銀にも確実に及ぶ。
 本県の少子高齢化が急速に進展し続けていった先、両行が合併しても地銀をめぐる環境は楽観視できるものではないかもしれない。両行ともその事態を見据え、体力のある状態で経営統合を目指す大きな決断を下した。再編は本県経済の転換期となる出来事だが、一般県民にとっては、普段利用する店舗やATM(現金自動預払機)がどの程度存続するのかといった身近な問題にもつながってくる。
 一方、両行による経営統合に向けた正式表明前から注目されていたのは、24年9月にみち銀が迎える公的資金200億円の返済期限だ。14日に青森市内で開かれた合同会見の場で、両行頭取は公的資金の存在が経営統合の要因となったとする見方を否定。みち銀の藤沢貴之頭取は公的資金について返済可能との考えを示し、返済が青銀の負担となる点についても強く否定した。
 みち銀が発表した21年3月期決算では、総資産に対する自己資本の割合を示す自己資本比率が連結で7・93%だった。数値が高い方が健全性が高いとされ、国内業務のみの銀行の基準は4%となっている。みち銀によると、公的資金を返済した場合の自己資本比率は6%程度で、国内基準は上回る見通しとしている。
 ただ、200億円という巨額の公的資金返済を可能とする主張に懐疑的なまなざしを向ける経済関係者は少なくはない。みち銀は21年3月期決算で、前期の赤字決算を黒字に転換。今後もさまざまな改革を推し進める方針を掲げているが、公的資金返済のへ道筋をしっかり示すことで、関係者の不安を払拭(ふっしょく)してほしい。
 行政や大手企業を主な取引相手とする堅実なスタイルの青銀と、「家庭の銀行」を掲げ中小企業や個人を顧客とするみち銀は行風が異なることもあり、組織として一丸となるまでには紆紆(うよ)曲折が生じることは想定される。
 しかしこれまで守ってきた両行の特徴と魅力を決して損なうことなく、合併を機にさまざまな多様性を内包した新たな地銀として県内経済を底支えすることを願いたい。

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PCB製品「期限内処分を確実に」

2021/5/15 土曜日

 

 健康被害を引き起こす恐れのあるポリ塩化ビフェニール(PCB)使用製品の処分期限が迫っている。県によると、県内にはまだ多くの高濃度PCB製品が埋もれているとされるが、廃棄期限が過ぎると事実上処分できなくなるというから問題だ。国や県などの呼び掛けに応じて、いま一度PCB製品を保有していないかを確認し、早期の処分に協力したい。
 PCBは人工的に作られた、主に油状の化学物質。熱で分解しにくく、電気絶縁性が高いなどの特徴を持ち、広く使用されていたが、慢性的な摂取で体内に蓄積するとさまざまな中毒症状を起こすことが報告され、現在は製造も輸入も禁じられている。健康被害の事例としては、1968年に食用油の製造過程でPCBが混入し、西日本を中心に広域で吹き出物やメラニン沈着などの皮膚症状、しびれや倦怠(けんたい)感などの症状が広がったカネミ油症事件が有名だ。
 代表的なPCB使用機器は昭和後半までに製造された変圧器や溶接機のコンデンサー、蛍光灯の安定器など。変圧器やコンデンサーは古い工場やビルの電気機器に、安定器は工場や学校などの業務用蛍光灯に使われており、一般家庭の蛍光灯にはPCBを使用したものはないというから安心だが、古いビルや工場の所有者や関係者は再度、確認する必要があるだろう。昨年4月には環境省から1980年までに製造・販売された溶接機、X線発生装置、昇降機制御盤にも高濃度PCBを含むコンデンサーの使用があると通知。関連する事業場はチェックが必要だ。
 県や青森、八戸両市が2016、19年度に行った高濃度PCB使用製品の掘り起こし調査では、変圧器・コンデンサーなどが約100台、照明器具の安定器約4400台が発見されている。だが照明器具の安定器調査では県管轄の1万7709事業所のうち約5000事業場から回答が得られなかったというから、まだ製品が残っている可能性は高い。
 全国の自治体の調査結果などを見ると、照会に対して一度「ない」と答えたが、後から見つかった事例なども散見される。見つけにくい高い場所や資材の陰、廃棄物が乱雑に放置されている場所にあったり、今は使っていない工場や病院に残っていたりと理由はさまざまのようだ。
 古い機械の整理は相当面倒だし、PCB使用製品かどうか、よく分からないことも多いだろう。だが、行政が多額の予算を盛って指導したり、広報を展開したりするのは処分期限が迫った今だからこそ。期限を過ぎてしまうと、永久に事業者側で保管することになり、今後の事業の引き継ぎ、廃業、物件の売買などにも影響が出かねない。同じ手間なら今、片付けるのが得策だろう。
 コンデンサーや変圧器はともかく、蛍光灯の安定器は自社にもあるかも、と思って確認を徹底したい。

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児童虐待相談増加「子にも親にも優しい社会に」

2021/5/14 金曜日

 

 子どもの虐待がますます深刻化している。県のまとめによると、2020年度の児童虐待の相談件数は1749件で、前年度に比べて129件増加。統計を始めた1990年度以降で最多となった。次代を担う子どもたちが危険にさらされている。対応の強化は急務だ。
 県の担当課は増加の要因として、児童虐待による死亡事例などの発生で社会の関心が高まったことなどを挙げている。例えば、2018年に東京都目黒区で発生した5歳女児虐待死事件は社会に大きな衝撃を与えた。理由はどうあれ、親が子どもを死に追いやるといった行為は許されるはずがない。同じような事件が再び起きないよう、社会全体で対策を講じなければならない。
 この事件を受け、政府も対策の拡充を急いでいる。児童相談所の体制強化に関するプランについては、関係する数値目標の達成時期を22年度から1年前倒しすることを決定。21年度中に児童福祉司や児童心理司ら職員の増員をおおむね完了させる方針だ。
 児童福祉司などは専門性が高く、容易に増やすことができる職種ではない。しかし、児童虐待相談件数は増加の一途をたどっており、手をこまねいてはいられない。数値目標の達成時期前倒しは妥当な判断であり、ぜひ実現してほしい。
 政府は、虐待相談に対応できる職員の増員と併せ、人材の質の向上にも取り組む方針を示す。具体的には、子ども家庭福祉の分野で新たな資格を創設することを検討している。前述のように、政府は児童福祉司や児童心理司の増員に取り組んでいるが、増員に伴って経験の浅い職員の割合も上がることが課題として浮かび上がったことへの対応だ。
 児童虐待への対応が難しい仕事であることは、素人でも想像できる。心に傷を負った子どもたちから事情を聴き、家庭環境や地域との関わりなども調査しなければならない。職務上の技術は経験を重ねる中で培われていくべきものではあろうが、児童虐待をめぐる状況の深刻さを考えると、職務のレベルを維持・向上させる別な方法も必要であり、政府の方針もうなずける。
 県のまとめにも表れているように、子どもを虐待するのは実父母の場合が非常に目立つ。虐待の根絶には、子どもへの対応に加え、親への対応も必要不可欠だ。子どもを虐待する背景には、子育てをする親の孤独などがあるといった指摘がある。
 近所付き合いなど社会的なつながりの希薄化といった課題の解決にも一層力を入れる必要があろう。ただでさえ、人々のつながりが薄くなっている時代だが、新型コロナウイルス禍でコミュニケーションがさらに難しくなった。児童虐待は身近で起きる恐れがある。そう考えながら、子どもにも親にも優しい社会づくりに努めたい。

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