社 説

 

イチロー選手引退「言動一つ一つが後進に」

2019/3/23 土曜日

 

 記録にも記憶にも残るアスリートは、そう多くはない。大リーグ・マリナーズのイチロー外野手(45)が現役引退を表明した。最後の試合では、埋め尽くされたスタンドから「ありがとう」の声が響き渡った。「きょうの球場での出来事を見せられたら、後悔などあるはずがない」。野球とファンを愛し、数々の金字塔を打ち立てた名選手は、野球とファンに愛されながら終止符を打った。
 愛工大名電高校(愛知)からドラフト4位でプロ野球・オリックス入りし、1994年から7年連続でパ・リーグ首位打者。2000年オフにマリナーズに移籍すると、1年目でア・リーグMVP、新人王、首位打者、盗塁王、そして熱狂的ファンを獲得した。04年には大リーグ記録を84年ぶりに塗り替える年間262安打を放ち、大リーグを代表する選手になった。ヤンキースを経てマーリンズに移籍。この間、大リーグ最多安打を日米通算で上回り、100年以上ぶりとなる8年連続200安打も更新した。
 抜群の選球眼で好球必打、そして俊足を生かして、内野に転がしても一塁を陥れる。実に8割以上が単打であり、強打者による豪快な特大アーチに注目が集まる大リーグでは異色の存在だ。守備では「レーザービーム」と称された正確な返球で失点を阻止する。とはいえ天才とは違う。確実に出塁するために、かつての特徴だった振り子打法を捨てるなど、すべてのプレーが相当な努力の上に成り立っていることを忘れてはならない。
 年齢を重ねて出場機会は減少しても「最低でも50歳まで」の現役続行を公言し、引退会見で「有言不実行の男になった」と述べた。昨シーズン、事実上の引退とも取れる球団「特別補佐」に就任。試合に出られぬ、つらい日々だったはずだ。それでも、最高のパフォーマンスを発揮できるよう練習を欠かさなかった。
 「本当に(50歳までできると)思っていた」という。ファンも、安打を量産し“エリア51”と称された右翼に立つ「背番号51」を5年後も見られると疑わなかった。確かに「不実行」ではある。しかし、会見では「その表現をしていなかったら、ここまでできなかったかもしれない」「ファンの存在なくして、自分のエネルギーは生まれない」と加えた。
 現役最終打席は遊ゴロ。内野安打にしようと、一塁へと全力で駆ける姿は、多くの球児が憧れたイチローらしいプレーだった。引退後について明確に語らず、監督待望論には「絶対無理。人望がない」と。果たしてそうか。きょう開幕する選抜高校野球大会の出場選手は「目標」などと口にした。少しでも近づこうとキャンプを訪ね練習を共にしたプロ野球選手も多い。これまでの言動一つ一つは、確実に後進の中に生きている。自身は意識していないかもしれないが、既に“指導者”なのではないだろうか。
イチロー選手引退「言動一つ一つが後進に」

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JOC会長退任「抱える課題多い新体制」

2019/3/22 金曜日

 

 2020年東京五輪の招致に絡む贈賄疑惑で、フランス司法当局の捜査対象になっている日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が、任期満了の6月末で退任する意向を表明した。国際オリンピック委員会(IOC)の委員も辞任するという。
 東京五輪開幕まで500日を切ったばかり。責任論が浮上していたとはいえ、この時期での表明には耳を疑う。退任の理由に挙げた「五輪を成功させるためにも若いリーダーに託して、新しい時代を切り開いてもらうことが一番ふさわしい」は、むろん本意ではあるまい。JOCでは竹田会長の続投が既定路線で、6月の役員改選を控え、定年規定の変更が検討されていたという。若いリーダーに託すならば、もっと早くから対応してしかるべきだろう。
 「不正なことはしていない」とする竹田会長の主張が認められるかどうかは分からないが、日本の信頼性を含めた東京五輪のイメージ悪化は避けられないだろう。竹田会長は続投した場合に傷口をさらに広げることになる事態も勘案し、最終的には大会への影響が少ないと思われる道を選択したように映る。
 混乱の責任を取る形での退任表明とも受け取れるが、もちろん、退任により疑惑が晴れるわけではないし、帳消しにされるわけでもない。仏当局による捜査は長期化するとみられており、東京五輪は不安要素をはらんだまま開幕が近づくことになる。
 IOCをはじめ日本政府、大会組織委員会などからは、東京五輪のイメージ悪化を懸念して、退任を促す動きが出ていたという。ただ、捜査対象に上がっていたのが竹田会長だったとはいえ、疑惑は竹田会長が理事長を務めていた東京招致委員会がコンサルタント料として拠出した約2憶2000万円の流れについてだった。責任を取るべきは竹田会長1人なのだろうか。イメージや体面を気にして、疑惑の解明を置き去りにして幕引きを迫った側面はないだろうか。
 近年、五輪の開催都市決定は、巨額の経費が敬遠されてIOCが苦慮しているという。一方で、リオデジャネイロ五輪(16年)の招致でもIOC委員の買収疑惑が報じられるなど、五輪とカネをめぐる問題はたびたび耳にする。五輪の在り方と同様、招致に関する仕組みも見直す時期ではないか。
 JOC側にも問題はあった。今年1月に疑惑が再燃した際、竹田会長が記者会見で質問を受けなかった。現在10期目の竹田会長の多選、パワーハラスメントなど国内競技団体の不祥事への対応にも疑問が寄せられていたという。
 JOCは新体制を敷いて約1年後に東京五輪を迎える。前述の問題をはじめ、疑惑への対応や五輪開催に向けた機運の呼び戻しなど、抱える課題は多い。

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「統一地方選」投票率低迷に歯止めを

2019/3/21 木曜日

 

 第19回統一地方選は21日、11道府県知事選の告示でスタートし、1カ月にわたり全国各地で首長・議員選が繰り広げられる。
 本県は29日告示の県議選が皮切りとなる。安定過半数を目指す自民に対し、反自民勢力はどこまで自民を切り崩せるかが焦点となる。統一選後に控える県知事選と夏の参院選を見据え、各党は地方選を通じて党勢拡大に注力する構えで、各選挙区では激しい戦いが繰り広げられる見通しだ。
 一方で、気になるのは有権者の関心度合いと投票率だ。県議選の投票率は過去10回連続で下落を続け、前回は51・08%にまで落ち込んだ。また、統一選後半戦となる弘前市議選の前回の投票率は47・88%で過去最低を更新した。いかなる要因があるにせよ、地域における身近な選挙で約半数が棄権している現状は憂慮すべき事態と言わざるを得ない。
 最近は、投票率向上を図るため、共通投票所を設置する自治体が全国的に増えている。弘前市も昨年4月の市長選から導入し、ヒロロ3階に設置した。投票日、市内のどの投票区の有権者でも投票できるため、有権者にとっては買い物ついでに利用できるといった利点があり、一定の効果があったようだ。
 つがる市は、有権者数の減少などを受けて投票区を大幅削減し、代わりに全てを共通投票所にした。全国的にも珍しいこの試みは、今年1月末投開票の市議選で初めて導入され、結果、投票率は「思っていたより高かった」(関係者)とみられている。
 各種選挙では期日前投票の割合も増えている。投票日に投票できない人が事前に投票するもので、従来の不在者投票に比べて手続きが簡素化されたほか、期日前投票所が増えるなどし、より気軽に投票できるようになったため浸透してきたとみられる。ただ、全体の投票率アップに必ずしも結び付いているとは言えず、これまで投票所に足を運ばなかった人をいかにして投票行動に結び付けるかという課題の解決は容易ではない。
 先ごろ、弘前市選挙管理委員会主催の政治啓発座談会が開かれた。出席者からは投票率向上策として、期日前投票所や共通投票所の設置場所増加を求める声が上がった。また「自分の住んでいる地域の政治家がどんな人で何を訴えているのか知らない若者も多い」といった意見もあった。
 本県でも間もなく始まる統一地方選。前回のように約半数が棄権するような事態は避けたい。そのためにも立候補予定者には活発な政策論争と同時に、有権者に分かりやすい訴えを期待したい。有権者の側も決して受け身になるのではなく、地域の今後を託す候補者をしっかりと見極め、政治の果たす役割にもっと関心を持ってもらえればと願う。

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ユニバス設立「大学スポーツの統括に力を」

2019/3/20 水曜日

 

 大学スポーツを束ねる新たな組織として、「大学スポーツ協会(ユニバス)」が今月、設立された。各地の大学197校と31競技団体が参加してのスタート。協会は、アメリカにある団体「全米大学体育協会(NCAA)」を参考に設立したそうだ。日本では、米国で大変人気のある学生バスケットボールなどの大会を主催していることで知られるが、その役割は多岐にわたり、大学間や地域リーグ・スポーツ競技の統括・管理、スポーツと学業の両立を図るための支援などに取り組んでおり、テレビ放映権料の収入などを得て加盟大学への配分を行っている。中でも重要な取り組みが「統括・管理」という部分だろう。
 日本の高校スポーツには、全国高校体育連盟、中学校スポーツには日本中学校体育連盟と、それぞれ統括団体が存在する。一方で、国内の大学スポーツは競技ごとに学生主体の学生連盟が存在するものの、連盟同士のつながりは強いとは言い難い。大学も、多くは学生のスポーツを課外活動の一部と捉え、積極的な関与をしていないのが現状だろう。
 こうした大学スポーツを取り巻くガバナンスの脆弱(ぜいじゃく)さが現れて見えたのが、昨今の学生スポーツをめぐる不祥事や事故の数々だろう。日本大学のアメリカンフットボール部における悪質タックル問題は大きく報じられたが、その他にもさまざまな競技で選手や指導者らによるトラブルが起こっている。
 ユニバスは、その方針に「学業充実」「安全安心」「事業マーケティング」の3本の柱を据えている。指導者によるパワーハラスメントの相談窓口の設置、競技中の事故情報の共有化、大会映像のネット配信などに取り組むという。パワハラの相談窓口や事故情報の共有化といった部分は、まさに昨今の不祥事や事故など、学生スポーツを取り巻く問題に対応できるものだ。的確に運用すれば、不祥事事案などは、大学や競技団体でバラバラだった対応に、公平性や客観的な判断をもたらすことができるだろう。学生選手にとっては、精神的、肉体的に安全、安心な競技環境の整備が、まずは何よりも優先される事柄であるのは疑いがない。新団体の活動が軌道に乗ることで、学生スポーツをめぐる不祥事の数が減ることに期待したい。
 課題はさまざまだろうが、まずは組織の拡大と新組織、制度の周知ということになるだろうか。全国に800近くあるとされる大学のうち、設立当初の加盟数はおよそ4分の1程度にとどまった。日本ではなじみの少ない活動であり、大学や団体の側にしてもまずは様子見といったところが多いのかもしれない。ただ、こうした取り組みは今後の日本のスポーツ界の振興を考えた時に、有用なものになる可能性を大いに秘めている。ユニバスの活動を注視していきたい。

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赤石渓流線開通へ「鯵ケ沢の観光盛り返しに期待」

2019/3/19 火曜日

 

 土砂崩落のため2015年2月から通行止めとなり、崩落地点を迂回(うかい)する県代行の新道整備工事が進められていた鯵ケ沢町一ツ森の町道赤石渓流線(総延長15・6キロ)が8月ごろにも全線開通する見通しとなった。実現すれば、およそ4年半ぶりの通行再開となる。赤石渓流線は同町から世界自然遺産白神山地に向かう唯一のルートであり、白神観光をはじめ減少の一途をたどっていた町内観光の盛り返しにも期待がかかる。町や観光関係者には、この好機を生かし町内観光活性化や交流人口のさらなる増加に結び付けてほしい。
 町によると、赤石渓流線への土砂崩落は約100メートルにも及んだ。再発の恐れから崩落地点を迂回する新道を建設することになったが、町の財政的事情から県が工事(総工費約5億円)を代行している。開通の見通しは、県代行工事区間約740メートルが7月末にも完成するめどが付いたことによる。町は県代行区間を除く、残りの通行止め区間約13キロも車両が通行できる簡易的な安全対策工事を実施した上で、全線を開通させる。
 赤石渓流線の長期間にわたる通行止めは、町の観光全体へも大きな影響をもたらしており、近年における町内観光施設の入場者数は年々減少していた。町によると、「白神の森遊山道」の年間入り込み数は15年の1万6000人台から16年1万3000人台、17年1万2000人台へと落ち込んだほか、工事地点までの途中にある歴史資料館「光信公の館」は15年1600人台、16年1300人台、17年1100人台となった。このほか、赤石渓流線の通行止め区間に接続している町道黒熊の滝線(総延長約590メートル)も必然的に通れなくなっていた上、のり面崩壊など各所が損傷し、「日本の滝100選」にも数えられている「くろくまの滝」を訪れることもできなくなっていた。
 南方に隣接する深浦町もそうだが、鯵ケ沢町は海と山がある。さらには、金アユの産地である赤石川があり、その豊かな自然を育んできた根本には、まさしく白神山地の存在があり、観光資源や食という面では非常に恵まれていると言えよう。「白神」の長期間にわたる空白による観光への打撃は大きく、赤石渓流線の早期開通を願う声が多数上がっていた。裏返せば、同町における白神観光がそれだけ大きな位置を占めていたということだろう。
 白神山地や白神の森遊山道の散策、渓流釣り、光信公の館で歴史ロマンに触れた後は町内の温泉施設や「ヒラメの漬け丼」を味わうという“フルコース”を提供できることが鯵ケ沢観光本来の在り方であり、そして醍醐味(だいごみ)である。それだけに通行再開後は、観光関係者や自治体による誘客の取り組みに拍車が掛かることを期待したい。

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