社 説

 

米大統領選討論会「国民無視のショータイム」

2020/10/1 木曜日

 

 11月の米大統領選に向けた最初の直接対決となるテレビ討論会が29日に行われ、共和党候補のトランプ大統領と、民主党候補のバイデン前副大統領が激しい舌戦を展開した。これまでのトランプ氏の言動を見ると、ある程度予想されたとはいえ、両氏が繰り広げた非難、中傷の応酬には、各メディアも「見るに堪えない」「史上最悪」などと一斉に批判した。
 約90分の討論会では、新型コロナウイルス対応、黒人差別問題など、米国が抱える課題について互いに意見を述べた。現時点で劣勢とみられるトランプ氏は形勢逆転を狙って、バイデン氏に目を向けて激しく攻勢をかける。対するバイデン氏はトランプ氏の資質を批判するが、カメラの先の視聴者に向けるように語る。スタイルの違いを印象づける「動」と「静」の構図だが、それも次第に崩壊していった。
 新型コロナについてバイデン氏は、深刻さを認識しながら国民に知らせなかったとし「彼(トランプ氏)がパニックだったか、株式市場を気にしていた」と対応を非難。トランプ氏は自身でなければさらに被害が広がったと主張するとともに世界的流行は「中国のせい」とし「(民主党を含む)州知事の大半は私が素晴らしい仕事をしたと称賛している」と実績を強調した。黒人差別問題で「差別的憎悪をあおった」と詰め寄られたトランプ氏は、反論とともにバイデン氏を「過激左翼の言いなり」と批判した。
 トランプ氏はバイデン氏の発言をたびたび遮り、司会者にいさめられるほどヒートアップ。バイデン氏も「いい加減に黙ってくれ」「史上最悪の大統領だ」「道化師」などと吐き捨てるなど、いら立ちを隠し切れなくなっていた。トランプ氏の挑発的発言を、バイデン氏から冷静さを奪う策略とみることもできなくはないが、多くはいつもの「トランプ節」と見たのではなかろうか。
 討論会のはずだが、議論はかみ合わず、当選後の政策を訴えるよりも相手を蹴落とすことに終始。国民無視の泥仕合に、メディアや識者は「司会者はプロレスのレフェリー役を担った」「有権者にとって災難」などと酷評した。熱狂的支持者を除けば、米国民の多くも品位のないショー、あるいはエンターテインメント番組のように思ったのではないだろうか。もし日本で同様なことがあれば、有権者は双方に「不適格」の烙印(らくいん)を押すのではないか。
 米CBSの世論調査によると討論会の勝者はバイデン氏48%、トランプ氏41%。トランプ氏の反転攻勢、バイデン氏の支持固めとも不発に終わったようだ。米国でのことではあるが、誰が大統領に就くかは、同盟国の日本にも少なからず影響する。討論会は10月15、22日にも行われる。次回は「本当」の討論を見せてほしい。

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援農者の確保「技術の伝え方に知恵を」

2020/9/30 水曜日

 

 農業従事者の高齢化が進む中、現場の労働力不足が大きな課題となって久しい。自治体、農協など関係機関はさまざまな手法で確保に取り組んでいるが、抜本的な解決策を見いだせずにいる。
 本県ではリンゴの本格的な収穫期が近づいており、先日はJAグループ青森4連の呼び掛けで集まった援農ボランティアが弘前市内の園地で、中生種「ジョナゴールド」の葉取りなどに汗を流した。
 4連による呼び掛けは2018年度から行われており、今年で3年目。今回は県内企業の有志10人が参加した。受け入れた生産者によると、最近は作業の担い手を募集しても簡単には集まらないという。労働力の確保がいかに難しい課題であるかが分かる。
 近年は農業分野も機械化が急速に進んでおり、ハイテク技術を駆使する「スマート農業」という言葉も頻繁に聞かれるようになった。実際に資機材を積極的に導入し、事業の実績を上げている生産者もいる。現場の労働力不足が深刻な今、限られた人数で生産活動を続けるには、こうした機械化が不可欠。その流れは今後も続くはずだ。
 ただ、農作業にはどうしても人の手で行わなければならない部分がある。それらの作業を誰が担うのか。農業を産業として持続させるため、関係者を今後も悩ませ続けるであろう課題だ。とりわけ、リンゴの生産は人の手でなければできない細かい作業が多く、機械化できる部分は限定的とされる。それだけ、より多くの援農者が求められるはずである。
 前述のように、最近は作業の担い手を募集しても簡単に集まらない場合もあるようだ。大半の場合、援農者が園地で作業に従事する期間は短い。このため、作業に慣れる前に期間が終了してしまうケースも少なくないと考えられる。作業方法をある程度習得してしまえば、援農者本人も再び参加しやすくなり、生産者側も依頼しやすくなるのではないだろうか。
 安定的に労働力を確保するには、単に人を集めればよいのではなく、援農者に技術を習得してもらうことも必要だろう。そのためには、作業方法を的確に伝える工夫をしなければならない。関係機関もこの点を課題の一つと捉えており、改善に取り組んでいるようだ。
 この先も農業従事者の高齢化はますます進むはずだ。進歩が目覚ましいハイテク技術を最大限活用し、省力化できる部分は徹底的に省力化すべきだ。ただ、人の手でなければできない作業の技術を伝えていくことも同時に求められている。双方があって初めて農業を持続させていくことができるのである。
 援農者に作業技術をどうしたらうまく伝えることができるのか。関係機関には、その方策の確立に一層知恵を絞っていただきたい。

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コロナ入国制限緩和「前のめりを避け冷静に」

2020/9/29 火曜日

 

 政府は、新型コロナウイルス対策として実施してきた入国制限を緩和し、10月1日から、中長期(3カ月以上)の滞在者を対象に、新規入国の受け入れを一部再開することを決めた。観光を目的とした短期滞在者は対象外で、1日1000人程度を想定しているようだ。
 感染拡大が比較的落ち着いているアジアの一部国・地域については既に長期滞在者の往来が再開されているが、今回は全世界が対象となる。
 海外の新規感染者数の経過を見ると、米国やブラジルで増加のペースが落ちている一方、インドや欧州で増加のペースは加速傾向にあるといい、世界の死者が100万人を超えたとする報道もある。こうした中で一部とはいえ全世界に門戸を開いて大丈夫か。
 もちろん、10月からの新規入国者に対しても、滞在先から出国前の検査で陰性であることを確認すること、入国後2週間は待機すること、こうした対応を確約できる受け入れ企業や団体があること-といった条件を課している。
 1日当たり1000人程度であれば、国際空港の検疫所でも対応は可能なように思われる。だが、前述したアジアの一部国・地域に加え、今月からは日本の在留資格を持つ外国人の再入国も、条件付きながら原則容認されている。それらを合わせると、現行の検疫所の人員や設備で賄い切れるのだろうか。すり抜けが生じる盲点はないか。
 日本は程なくインフルエンザの流行期を迎える。幸い9月の全国のインフルエンザ報告例(13日まで)は7人で、例年の1000分の1ほどに収まっている。この要因には、新型コロナの感染防止策が奏功したことに加え、入国制限による訪日客らの大幅減少もありそうだ。新型コロナとの同時流行が危惧される中、各自の感染防止策の強化はもちろんだが、受け入れ再開が同時流行に拍車を掛けてはならない。
 菅義偉首相は受け入れ再開の決定に際し、「経済再生のためには国際的な人の往来の再開が不可欠だ」と述べた。各国の経済が他国との相互依存の上に成り立ち、入国制限の緩和要請が各国から相次いでいることを踏まえれば、現実的な対応なのだろう。観光客を含め海外からの受け入れを順次拡大していくのも既定路線。来年夏の東京五輪・パラリンピック開催に向けて環境を整える意味合いもありそうだ。
 ただ一方で、経済再生に前のめりとなり、感染防止対策が二の次にならないか不安は消えない。全国知事会が入国規制の緩和について、慎重な対応を訴えたのは当然だ。
 国内外の感染状況を注視し、憂慮される事態が生じたら国・地域別に速やかに受け入れを一時見合わせるといった柔軟な対応が必要だろう。ここで受け入れを焦っては、せっかくのこれまでの努力が水泡に帰す。

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PCR検査「流行期に備え、体制強化を」

2020/9/26 土曜日

 

 県は新型コロナウイルス感染症の検査体制について、インフルエンザの流行期と重なることを懸念して、これまでピーク時で1日375検体と見込んでいた検査需要を同4000検体に拡大、検査体制を強化して対応していく方針を明らかにした。
 冬のインフル流行期に発熱した場合、新型コロナなのか、インフルなのか、それとも両方に感染しているのか、症状だけで判断するのは難しい。現在、イベントや会議、一部店舗など多数の人が集まる場所では手指の消毒とともに検温を求められる機会が増えており、たとえ微熱でも生活に支障が出ることが想定される。発熱した場合には速やかに検査し、他人への感染の拡大を防いで治療へつなげることが重要になる。検査体制の拡充は喫緊の課題だろう。
 県はインフル流行期には原則、発熱した患者に対し、新型コロナとインフル両方の検査を行うとしている。過去のインフル患者数から、インフル流行期の新型コロナの検査需要は1日3571検体と試算。新型コロナのみの検査需要の推計1日375検体を加え、目標を1日4000検体と設定した。目標の確保は、身近なかかりつけ医などで新型コロナ疑いの患者の相談から診察、検査までを行う態勢ができないと難しいとみており、広く医療機関へ協力を呼び掛けている。
 これまでも3市にドライブスルー方式で検体を採取できるPCR検査センターができたり、多数の関係機関で抗原定性検査(迅速キット)を導入したりして、検体採取や検査能力は少しずつ上がってきた。だが、現状の検査体制は9月4日現在、検体採取対応力が1日241件(ピーク時同533件)、検査能力は同562件(同759件)というから、相当数増やさなければならない。医療現場での混雑も想定される。検査や診察がスムーズに行えるよう準備し、インフル流行期に備えたい。
 国はビジネス目的の海外渡航者向けに、新型コロナのPCR検査を受けられる医療機関を検索・予約できるウェブサイトを10月に開設すると発表した。外国との往来が再開される中、出張者らが安心して検査を受けられる態勢を整え、経済活動を下支えする狙いがある。これまでは国によって渡航に必要な条件が異なるため、出張者の準備する際の煩雑さが懸念されていたという。
 新型コロナの終息は見通せず、長期化の様相を呈している。当面は必要に応じて検査や診察が受けられる態勢を整え、新型コロナとの共存を模索する暮らしが続くのだろう。
 それだけに何よりも重要なのは、手洗いの徹底やマスク着用、3密を避ける行動など感染防止対策だ。新型コロナの感染防止策はインフルの予防にも有効。各自が流行期に備え、対策を徹底することで自分の身を守り、医療関係者の負担を減らすようにしたい。

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弘前城秋の大祭典「検証重ね今後につなげたい」

2020/9/25 金曜日

 

 弘前公園で久しぶりとなる大型イベント「弘前城秋の大祭典」がシルバーウイークの4連休を中心に開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じた「新たなスタイル」で開かれ、好天にも恵まれて県内外からの大勢の観光客らでにぎわった。コロナ禍で打撃を受けた地域経済の回復と観光マインドの喚起に一定の効果があったと言える。
 新型コロナがさまざまな催しに影響を及ぼす中、大型イベントの開催は県内初となった。会期中は感染拡大防止のため、県の助言も得ながら各種対策を実施。園内に入る8カ所で検温を実施したほか、万一の事態に備え入園者に居住市町村や氏名、連絡先を記入してもらい、これら対策に応じた人にはリストバンドを配布、手首に着けてもらうことで入園者の状況を把握する仕組みとした。
 また「3密」を避けるため、園内をテーマパークに見立てて四つのエリアに分け、入場を制限。最大となったのがイベントステージ・出店エリアとなる四の丸で上限5000人。出店は間隔を空け、飲食も店内ではなく四の丸に設置したテント内でするよう誘導。園内は順路に沿って進むと初秋から晩秋へと紅葉の変化が楽しめるライトアップやプロジェクションマッピングを展開。シャボン玉の演出や、金魚ねぷたのちょうちんを持ち歩くと光でソーシャルディスタンスが分かる仕掛けなども好評だったようだ。
 経済効果もしっかり表れた。大型イベントへの出店が今年初となった弘前露店商業組合は「天候に恵まれ、想像以上の客足だった」と手応えを語ったほか、弘前市内のホテルでは18~21日の客室稼働率が約90%にまで回復したという。弘前公園近くの観光施設もイベント効果が波及したようだ。参加者からは「久々に祭り気分を味わえた」「人は多いが新型コロナ対策が取られていたので、あまり心配を感じない」といった声が聞かれた。
 今回のイベントについて、市は「目標は来年の弘前さくらまつりをコロナ禍の中でもしっかりと開催すること。それに向けた第一歩」と強調する。弘前さくらまつりはイベントの規模が大きく、来園者数もかなり多い。新型コロナ終息が見通せない中、来年春の感染状況も予断を許さないのは明らかで、開催へのハードルは決して低くはないが、感染拡大防止対策を講じた「新たな日常」と地域経済活性化との両立を図ることは重要だ。
 大祭典をコロナ禍における大型イベントのモデルと位置付ける市など関係者は、今回の対策と効果などをしっかり検証し、次へとつなげてもらいたい。また主催者側の工夫はもちろんだが、イベントに参加する側も各種対策に協力し、感染防止のマナーを守ってこそ皆が安心して楽しめる祭りになるのだということを今後も心掛けていきたい。

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