社 説

 

青函DC経済効果「効果維持にさらに取り組みを」

2016/12/22 木曜日

 

 青森地域社会研究所がまとめた「青森県・函館デスティネーションキャンペーン(青函DC、7~9月)」の本県への経済波及効果推計によると、期間中は56億2200万円の効果があり、この間の観光客入り込み客(実人数ベース)491万人中、DC効果による人数は推計45万8000人とした。
 北海道新幹線が3月に開通したことに伴い効果があったことは、紛れもない事実だ。この数字は推計ではあるが、JRや県、自治体、関係機関が一丸となり、開通効果と併せたDC効果を獲得しようと取り組んだ結果であろう。今回の結果に満足することなく、効果を継続させ、誰がいつ、どこを訪れても楽しむことができるような青森県を目指して、関係者には頑張ってもらいたい。
 56億円余もの経済波及効果の背景には数々の要因が挙げられる。JR東日本は青函DC開催期間中の本県と道南エリアへの送客数について、目標を6000人上回る約8万3000人としており、県集計でも期間中の観光客入り込み数は過去3カ年の平均に比べても約1割増との結果が出ている。このほか海外旅行客の本県に対する関心は台湾を中心に高い数値を示しているという。
 期間中の9月中旬にはメインイベントである「SL銀河青函DC号」が奥羽線青森―弘前間で運行し、勇姿を披露した。津軽地方各地では、多くの観光客を出迎えるなどDC効果を肌で感じる場面が多数見られた。
 しかし、青函DCは全体的に見れば成功であったとはいえ、課題も残した。JR沿線以外の地域や町村部では、恩恵を得たとは言えない観光地も少なくなかった。次回、再び本県のDCが実現した場合に備えて、県内全体に効果が行き渡る取り組みももっと必要だろう。
 経済波及効果をまとめた同研究所は分析の中で、本県が今後取り組むべき課題として、▽従来通り観光客入り込み客数の増加を図るとともに消費額単価増によって観光消費額をさらに伸ばす工夫が必要▽地場産品の開発や積極的な活用により、県内の経済構造を改善させ、県内自給率向上を図る▽行政、大学、金融機関などが一体となったオール青森での取り組み―を掲げた。
 DCが一時的な「お祭り」で、効果は限定的であった、という事態は避けたいものだ。来年にはアフターDCも予定されていることから、それも踏まえ効果を連鎖的に持続させていく必要があるだろう。
 22日には県と北海道、JRが青函DCの実施結果について記者会見を開き、発表する予定だ。その内容からも取り組むべき課題が見えてくるであろう。研究所が示した課題、22日の発表を基に関係者には、さらに効果的な取り組みを求めたい。

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弘前城の石垣修理「いよいよヤマ場となる解体へ」

2016/12/21 水曜日

 

 世紀の大改修となる弘前城本丸石垣修理事業で、石垣解体準備のために行われてきた石垣に番号を付ける作業がこのほど完了した。いよいよ来年3月下旬に石垣解体工事が始まる予定だ。
 弘前城天守は昨年、約100年ぶりに元の天守台から本丸中央部へと約77メートル移動した。石垣の解体範囲は、天守台真下から本丸東面にかけての約100メートルと南面約10メートルとなる。
 作業の節目ごとに一般市民らを対象にした体験型イベントも開催され、県内外の城郭ファン、歴史ファンらが大勢詰め掛けた。歴史的な事業とあって、観光資源としての魅力を生かした取り組みが功を奏しており、いよいよ迎える石垣解体工事も、多くの市民らでにぎわうことを期待したい。
 今年行われた石垣に番号を付ける、いわゆるナンバリングは、解体して積み直す際の場所を明確にするために実施している。作業は10月下旬にスタートし、作業員が石垣一つひとつに番号を書き入れてきた。19日に最後となる2518個目の石に番号を付け、ナンバリング作業は終了した。今後は解体中にも間詰め石や石垣下層の石にナンバリングしていき、最終的に3000個近くの石に番号が振り分けられる予定という。
 来年3月下旬に着工予定の石垣解体作業は、天守台真下の1段目から取り外される予定で、同11月までには石垣全体の6~7割程度の解体を済ませる計画だ。2018年度までに終了し、19年度から石垣を順次積み直していく。21年度中には天守を元の位置に戻す予定となっている。
 解体と同時に、石垣の背面構造を把握し、同時進行で発掘調査も行うことになっている。新たな歴史的発見の可能性も秘めており、非常に興味深い。作業が進むのと同時に変化していくであろう弘前城の景色も楽しみの一つである。四季折々の風情と共に石垣が解体されていく様子を体感しながら、記録としても刻んでいきたい。
 4月の熊本地震では熊本城の石垣が大きく崩落し、今後、修復作業が行われる予定だ。石垣修理という点で、弘前城の事業は先行事例として関係者の注目を集めそうだ。
 今年の石垣ナンバリング作業においては、昨年の天守曳屋(ひきや)に引き続き、一般市民らを対象にした体験型イベントが行われた。昔の石垣普請を追体験する人力での石曳き体験や、解体範囲に含まれる石垣へのナンバリング、石垣セミナーなどが多彩に繰り広げられ、多くのファンらでにぎわった。
 長期に及ぶ一連の事業の中でもヤマ場となる石垣解体は、一層の集客力を期待できそうだ。世紀の大改修を市民や県内外のファンらが体験できるような仕掛けを楽しみにしたい。

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日ロ首脳会談・領土返還になお遠い道のり

2016/12/20 火曜日

 

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による首脳会談が行われた。北方領土問題に関連して、北方四島での両国による共同経済活動に向けた協議の開始は合意したが、4島の帰属問題で具体的な進展はなかったとされる。
 ある程度想定された結果ではあったが、領土問題を進展させたい日本側と、経済振興を重視するロシアとの溝の深さを改めて感じた。「がっかり」は元島民ならずとも率直に抱いた感想であろう。声明には元島民の墓参を目的とした査証(ビザ)なし渡航の拡大も盛り込まれたが、実質的には大統領が日本側から官民80件の経済協力と3000億円規模の投融資を取り付けて終わったように映る。
 共同経済活動の実現は、領土問題を含む平和条約締結に向けた「信頼の醸成」につながるとされる。しかし、共同経済活動が領土返還へどう結び付くのかは曖昧だ。世界情勢、両国の経済情勢の変化も想定されるし、信頼が醸成され締結の機が熟したとの判断も恣意(しい)的だ。両首脳による締結への「真摯(しんし)な決意」は、これをどの程度担保するのだろう。
 戦後71年間動かなかった平和条約締結交渉を前進させるために切った経済協力のカードが、逆に交渉のハードルを上げることにならないか。
 もっとも、締結に向けた第一歩と位置付けられる、共同経済活動の協議開始合意を、無意味と一蹴する気はない。日本側が4島である程度活動できる、日本に対する現島民の理解が進むといった指摘もある。
 ただ、日本とロシアいずれの法令にも基づかない「特別な制度」創設による共同経済活動が、日ロどちらの主権下で行われるかも、現時点では不透明だ。共同経済活動は1998年にも、当時の小渕恵三首相とエリツィン大統領の合意で実施方法が検討されたが、主権をはじめとした法的課題を解決できないまま終わった。ロシアが4島を領土とする立場を変えない限り、着地点を見いだすことはできないのではないだろうか。結果的にロシアによる統治を追認することにつながりはしないかということも懸念される。
 「(日ロ間に71年間平和条約がない)異常事態に、私たちの世代で終止符を打たなければ」。安倍首相の姿勢は評価できるし、困難な道であることを踏まえての発言であろう。だからこそ、今後進められる、共同経済活動の制度設計に関する協議の在り方が重要だ。両国の法的立場を害さない形でこれらをいかに進展させるか。国民の理解を得るための説明も求められる。
 平和条約締結後の色丹、歯舞2島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言(56年)についても、プーチン大統領は「主権を返すとは書いていない」と理解しているとされる。同じ土俵に立つまでが、長い道のりとなりそうだ。

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弘前の縫製業「技術アピールの好機を逃すな」

2016/12/17 土曜日

 

 世界的なファッション教育機関「エスモード」の学生がデザインし、弘前市内の縫製会社が製品化する洋服が来年3月、東京・原宿で販売されることになった。市内の縫製会社は技術の高さに定評があり、今回の取り組みはそのことを広く発信する絶好の機会。ぜひ成功させてほしい。
 洋服の販売は、エスモードと市が連携して進めている企画。市内のアパレル産業振興、若手デザイナーが活躍できる場づくり、廃棄される余剰生地の活用という三つの課題解決を目指している。
 地方の縫製会社は外部からの受注で製品を作ることが多いが、この先発展するには企画・デザイン力が求められているという。弘前市内の会社も同様といい、市側は「今回の取り組みを、自社製品を生産するきっかけにしてほしい」と期待している。
 一方、全国的には若手デザイナーの受け入れ態勢が不足しており、次世代の人材育成が業界全体の課題にもなっている。このような状況を背景に、学生たちは「大きな経験になる」と意欲的に取り組み、感性あふれる作品を生み出した。
 参加した学生によると、「human(ヒューマン=人間)」を大きなテーマに掲げ、芸術性も強調した作品になるよう心掛けたという。数人ずつの計8グループが手掛けた作品は非常に多彩。洋服作りの基本をしっかり押さえながらも、随所に遊び心が感じられる。
 それらのデザインを受け取り、製品化する縫製会社にとっては、まさに腕の見せどころ。関係者は「(デザインに対する)対応力を見せたい」と強い意気込みを見せ、年末から実際の作業に取り掛かることにしている。
 今回の企画に携わったエスモードインターナショナルの仁野覚(さとる)代表によると、ファッションは本来、情熱を感じさせるものだという。確かに、洋服は生活必需品ではあるが、それだけにとどまらず、デザインする人、縫製する人、着る人がそれぞれ自らを表現するためのものでもあろう。
 今回製品化される洋服のロットは小さい。そういう意味では小さな一歩ではある。ただ、製品には学生たち、縫製会社の思いが込められるはずだ。そのような“ファッションの原点”というべきものを前面に押し出し、胸を張って販売してほしい。
 ファッションの発信地と言えば、その多くが大都市だが、「地方には絶対に無理」ということもなかろう。実際、弘前市で毎年開催される「ファッション甲子園」では、全国各地の高校生たちが興味深い作品を披露している。
 その若者たちの感性をしっかり形にできる技術を弘前市内の縫製会社は持っている。関係者たちが自らの実力をしっかりアピールすることを期待している。

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災害時特設公衆電話「各自治体の努力で普及を」

2016/12/16 金曜日

 

 近年の日本は地震や大雨、台風などによる大規模な災害が毎年のように発生している。国内のどこにいても、こういった災害に巻き込まれる可能性はあるが、自分が被災者となった時に家族や知人、友人に「一刻も早く安否を知らせたい」と思うのは人として当然の感情だ。
 現代はスマートフォン、携帯電話全盛の世の中だが、大規模災害の発生時には警察や消防などの緊急通信ネットワークの確保が第一となるため、被災地への安否確認が急増する一般電話には通信規制が掛けられてしまう。東日本大震災はもとより、今年発生した熊本地震でも家族や知人、友人と連絡が取れず、不安を募らせた人々が多かった。
 そこで役立つのが「災害時特設公衆電話」となる。各地の自治体が指定避難所に緊急通信手段として設置するもので、この電話には回線に優先通信が設定されているため、一般電話よりつながりやすく、回線ケーブルを通じて電力も供給されるため、停電時でも利用することが可能になっているという。
 災害時に威力を発揮するこの電話だが、NTT東日本のまとめによると、県内で設置している自治体は弘前市など4市3町3村のみで、同社管内の17都道府県では最低の普及率にとどまっている。
 県内では東日本大震災の翌年の2012年から16年3月末までにこの10市町村が指定避難所に約80回線を設置したという。津軽地方では平川市の21台をはじめ、五所川原市が8台、弘前市と外ケ浜町が各5台、今別町と蓬田村が各3台となっており、他市町村は未設置の状態だ。東日本大震災で大きな被害を受けた県南地方も八戸市で24台、横浜町で10台など4市町村の設置にとどまり、状況は芳しくない。
 全体に普及が遅れている県内だが、津軽、県南とも大規模地震が発生すれば、津波などにより、大きな被害の発生が予想される沿岸部でも無設置の自治体が多く、対策の遅れが気になる。
 こうした状況にNTT東日本では今年度、各自治体を訪問して電話の設置を呼び掛けた。これにより、青森市は防災活動の拠点となっている避難所など63カ所への設置を予定。弘前市も災害時指定避難所94施設のうち、小中学校から優先的に増設するよう検討したいとするなど、東日本大震災から5年を契機にまた、普及に向けた機運が高まってきているように感じる。
 工事費や月額使用料は同社が負担し、各自治体は電話機の購入と保管のみを行うという災害時特設公衆電話は、各自治体にとっても導入に当たっての負担が少なく済むことだろう。災害時に自分の安否を知らせることで被災者もその家族、知人、友人もどれほど力づけられるか分からない。より踏み込んだ災害対策としてぜひ普及を図りたいものだ。

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