社 説

 

エー・プレミアム「県産品の取引拡大に貢献」

2020/5/9 土曜日

 

 県とヤマトグループが連携して行っている県総合流通プラットフォーム「A!Premium(エー・プレミアム)」の2019年度の実績が公表された。エー・プレミアムはスピード輸送と保冷一貫輸送を両立させ、小口配送もできる県産品輸送の仕組み。県産品自慢の鮮度と品質を保ったまま、国内外へ素早く届けられる仕組みとなっており、19年度の利用実績は3549個で、18年度実績の4772個から約1200個減少した。
 ただ内訳をみると、国内向けは前年度を28・3%上回る2428個と順調。減少の要因となったのは海外向けの落ち込みで、主な取引先だった香港の大手飲食企業との取引が減ったことに加え、同じく香港の大規模デモによる現地の混乱などが影響し、海外向けは前年度比61・1%減の1121個と大幅に減った。
 エー・プレミアムは開始当初から香港の飲食企業1社の取引が大きく、全体の件数を押し上げてきたが、企業の事情に全体が左右されることもあり、長期的には取引先を増やしていくことが望ましい。19年度は取扱個数こそ減らしたが、香港だけでなくシンガポールやタイなどへの荷物も出ているほか、青森フェアやマグロの解体ショーなど海外での県産品のプロモーションも複数の国で開催した。国によってニーズやスムーズに取引が進められる仕組みも異なるようだが、地道な取り組みでそうしたノウハウを蓄積し、海外へ県産品を届けるルートを広げていってもらいたい。
 国内向けが好調なのは、喜ばしいことだ。16年度に設置した県港湾空港課「大阪分室」の精力的な活動の成果だという。西日本の飲食店をメインターゲットに営業活動を展開し、19年度は新規で中部地方の飲食チェーンや、鮮魚卸売業者との取引が始まった。「鮮度が良く安価」などと高く評価されており、さらなる取引の拡大も期待される。
 エー・プレミアムは取引品目の約9割を鮮魚や貝類などの生鮮水産品が占めるが、エー・プレミアムの営業活動をきっかけに、水産品以外の県産の青果や酒類、加工品などの取引も品目、取扱量ともに急増しているという。生鮮水産品ほどスピード輸送にこだわる必要がないため、エー・プレミアム以外の輸送手段で運ばれているが、こうしたエー・プレミアムがきっかけとなった取引も含めると19年度の実績は1万5724個となり、前年度の1・2倍に増えた。
 20年度は新型コロナウイルスの影響が懸念されるが、大阪分室では営業活動をいつでも再開できるよう準備しているという。鮮度が良く、おいしい水産品はもちろんだが、本県にはまだまだ目を向けてほしい食材、加工品がたくさんある。エー・プレミアムを大事に育てつつ、同時に幅広い県産品をどんどん売り込んでほしい。今後も注目したい。

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休業要請延長せず「平穏維持へ節度ある行動を」

2020/5/8 金曜日

 

 県は新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態措置を見直し、今月6日までとしていた遊興施設や劇場などに対する休業要請を延長しないことを決定した。県内の感染者発生状況や専門家会議の意見を踏まえて判断したという。経営者は休業、利用客は我慢を余儀なくされた要請だけに、にぎわいと笑顔が各地で戻りそうだが、油断は禁物。県はあらゆる場面で「三つの密」を避けた上で、適切な感染防止対策を行うよう求めている。これまでの通常の生活には至らない部分が多々あろうが、平穏を維持するために、事業者の対策はもちろん、県民一人一人に節度ある行動を求めたい。
 県は県内全域のカラオケやバー、映画館といった遊興施設や劇場などを対象に、大型連休期間の4月29日から今月6日までの休業を要請し、応じた中小企業に30万円、個人事業者には20万円の協力金を支給する。政府は6日までだった全都道府県の緊急事態宣言を31日まで延長したが、一方で「特定警戒都道府県」を除く本県など34都道府県に対しては、休業要請の解除や緩和の検討を要請。これを受け、県は「不要不急の外出」などの自粛要請を取りやめたが、あらゆる施設・イベントで「3密」回避を徹底し、施設や店舗が適切な感染防止対策を行うよう求めた。
 しかし、休業を余儀なくされた事業者の不安は、これまで通り客が訪れるのか、経営が成り立つのかといったことに尽きるだろう。施設や店舗を利用してきた人の中にも感染の危険性を考え、従前通りの出入りに二の足を踏む場合も考えられる。これを完全に払拭(ふっしょく)するには、感染症の根絶が第一だが、終息がいつになるか見通しがつかず、現在は望めない。やはり、県民一人一人が自覚を持った行動を心掛けるしかない。ささやかではあっても、せきエチケットや手洗いの徹底や場を踏まえたマスクの着用も挙げられる。これを窮屈に思う人も少なくないだろう。ただ、言い尽くされた言葉だろうが、皆で心からの笑顔を将来にわたって見せるために、取り組んでほしい。
 休業協力金に関しては、安堵(あんど)と不満の声が入り乱れている現状がある。例えば、「わずかでもあれば助かる」「1カ月分の家賃にしかならない」「全然足りない」といった声があるほか、対象にならない業種からは、利用者数の大幅減は飲食・宿泊業と変わらない状況からか「なぜ、自分たちだけ」といった恨み節も少なくない。
 すべての人の声に応えることが困難であることも事実。休業要請も今回だけとは限らない。行政には今回実施した要請の反省を踏まえ、再度の要請が不可避となった場合に備えた検討を、住民や事業者には我慢を余儀なくされる状況を招かないため、節度ある行動とマナーで感染拡大防止に努める姿勢を求めたい。

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新型ウイルス対策「地方で支援が行き届く工夫を」

2020/5/6 水曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながら、どのように社会・経済活動をしていくのか。感染者が確認された世界各国をはじめ、日本が直面する今後の大きな課題だ。現段階で新型ウイルスのワクチンや治療薬は開発されておらず、社会・経済活動が活発化すれば、感染拡大の第2波、第3波が起きる可能性がある。
 政府は長期的に取り組むべき「新しい生活様式」を提案。「接触8割削減」までいかずとも、結局のところ「密閉、密集、密接」のいわゆる「3密」は可能な限り避けることが求められる。ワクチン開発など根本的な問題解決に至るまでの間は、感染拡大を抑える慎重さを保ちながら経済を回していくという、例えるならばアクセルもブレーキも踏み過ぎずに絶妙な加減を保ち続けるような、非常に難しいかじ取りを各地が迫られることになる。
 緊急事態宣言が解除されても、急に集客するわけにはいかないだろう。屋外であっても多くの人を集めるイベントは難しい側面がある。食と同時に会話を楽しむ時間を提供する飲食店も、従来の営業スタイルの維持は難しい。さまざまな業態の店が、新型ウイルス発生以前より収入減となることが懸念される。
 人同士の接触を減らしつつ情報発信し、経済を回すツールとしてはインターネット交流サイト(SNS)が優れた効果を発揮するが、スマートフォンやパソコン自体にほとんど触れない層も地方には多い。県内では弘前市をはじめ、飲食店からテークアウトして応援する「エール飯」の動きがあるが、年配の個人経営者からは「エール飯に参加したいが、参加方法が分からない」との嘆きも聞く。
 エール飯に関しては、ツイッターなどでの小まめな情報発信が販売促進の大きな鍵となるが、ツイッターのアカウントをどのように立ち上げ、情報発信するのか。操作の仕方をどこで教わればいいのか―といった戸惑いの声がある。昔ながらのスタイルで営業してきた世代に対し、SNSの活用を伝える窓口のようなものは設置できないだろうか。
 また政府は、営業自粛などの影響を受けている中小企業や個人事業主を対象に、返済の必要がない持続化給付金で支援することを発表。1日から、国の専用ホームページで申請を受け付けている。行政窓口に申請者が殺到し、「3密」が起きる事態を防ぐための方策だが、この支援についてもインターネットを使うことを苦手とする事業主らにも届くのか、懸念される。
 SNSのない時代から、地方で地道に商売を続けてきた個性豊かな店を「コロナ禍」で失わないために、支援が行き届く方策を考える必要がある。弊紙のような地元紙も積極的な情報発信に努めなければならないが、こまやかに支援が行き届く工夫を関係機関に望む。

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コロナ禍の学生支援「未来を見据えて今こそ知恵を」

2020/5/5 火曜日

 

 新型コロナウイルスの影響で、約20%の学生が退学を検討している。学生団体「高等教育無償化プロジェクト」が先日、衝撃のアンケート結果を発表した。ウイルスの影響が社会に広く及ぶ中、未来を担う人材が進む道まで閉ざされようとしているとは。支援に向けて今こそ知恵を絞るべきではないか。
 同団体の調査は全国の大学生や短大生、大学院生らを対象としたもので、インターネットを通じ、4月9~27日に1200人が回答。それによると、自身のアルバイトや親の収入減で退学を「大いに考える」との答えが4・8%、「少し考える」は15・5%だった。「辞めることにした」との回答も0・2%あった。
 学生時代にアルバイトをして生活費の足しにした経験を持つ人は少なくないだろう。自宅から離れた大学などに通う場合は、仕送りをする親の負担軽減を考えなければならないケースもある。今回のコロナ禍によって、親の収入が減り、さらには自らのアルバイト先も休業するといった状況が生まれている。学生たちを取り巻く経済環境は急速に厳しさを増している。
 このような状況を踏まえ、学生を救おうとする動きも活発化している。ウイルスの影響でキャンパスを閉鎖した各大学に対し、学費の減額を求める署名運動がインターネット交流サイト(SNS)上で広がっているという。少なくとも50以上の大学で行われており、国に一律で学費を半額にするよう求める署名集めも見られる。
 学生たちの訴えは切実だ。一人親家庭のため奨学金と自らの収入だけで学費を支払っている学生は「社会がダメージを受けているのに、大学が例年通り学費を請求する姿勢に疑問を感じた」とし、キャンパス閉鎖で合格後一度も足を踏み入れていない新入生は「対面での授業、図書館なども含めて大学を選んだのに、学費に見合ったサービスを得られていない」と訴える。
 大学側も困窮する学生を救おうと動き始めている。例えば、弘前大学は先日、「生活支援奨学金」の制度を拡充し、貸与額の上限を撤廃、原則的に必要額を全額貸与する方針を示した。併せて、授業料の納付期限を1カ月延長したほか、授業料の減免も検討するとした。
 学生たちは、これからの社会を担う大事な人材であり、社会全体にとっての財産である。志を持って学ぶ彼らを失うことがあれば、大きな損失であることを改めて認識すべきだろう。ただ、各大学側も、組織を維持していくためには相応の費用が掛かる。学生を救うための対策を講じるにしても、限界はあろう。コロナ禍が収束する兆しが見えない現状を踏まえれば、国を交えて抜本的な対策を講じる必要があるのではないか。検討をできるだけ急ぎたい。

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憲法記念日「コロナ禍でも冷静な議論を」

2020/5/4 月曜日

 

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中で迎えた73回目の憲法記念日。自由や最低限の生活、教育といったさまざまな権利が脅かされている昨今、憲法に対する国民の関心も高まっている。新型ウイルス問題で浮き彫りとなった多くの課題について、国会は冷静に議論すべきだ。
 安倍晋三首相は3日、憲法改正推進派の民間団体のオンライン集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、「緊急時に国家や国民がどう役割を果たし、国難を乗り越えるか。そのことを憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」と指摘。国会に対しても緊急事態条項創設の是非を議論するよう求めた。
 実際、えたいが知れないウイルスへの恐怖から、政府がもっと個人や事業者の行動を制限する必要がある、との声が一部にある。
 しかし「未曾有の危機」を理由とした議論は避けるべきだ。政府の権限を強化することは私権の制限につながる。民主主義の根幹に関わる問題であり、慎重かつ冷静な議論が必要だ。
 首相と同調し、自民党も「危機下での国会機能維持」を改憲の新たな論点に加え、国会での議論を求めている。
 例えば本会議を開催する場合、憲法は「総議員の3分の1以上の出席」が必要と規定しており、国会議員に感染が広がれば本会議開催の条件を満たせなくなる恐れがあり、条件見直しを挙げている。「感染拡大によって選挙を実施できない場合、国会議員の任期を延長すべき」とも訴える。
 これに対し野党は、与野党の隔てなくコロナ対応に集中すべきだとの立場で、国会での議論に応じる考えはない。国民民主党の玉木雄一郎代表も1日の記者会見で「新型コロナが落ち着いた静かな環境で進めていけばいい」と語った。
 まったく同感である。不測の事態への備えは重要だが、だからこそ平時から冷静な議論を重ねておくべきだ。
 改憲よりも重視すべきは、教育を受ける権利の危機的状況だ。自治体の一部は生徒全員に端末を渡してオンライン授業を導入しており、教育格差が生まれようとしている。文部科学省は早急に均衡策を講じるべきだ。
 教育現場が対応に苦慮していることは理解している。県内は県立学校が7日から再開される見込みだが、地域によって感染者の有無で再開時期が異なったり、再び休校したりする可能性は否定できない。各学校、各教師の取り組みの違いが、格差を生んではならない。
 我慢を強いる「同調圧力」を背景に、自粛要請に従わない行動を非難する動きも問題だ。事業や雇用を守るため、あえて営業を続ける選択もあるだろう。欠けているのは休業への補償であって、生存権を脅かす事態に国家としてどう向き合うのか、議論が不十分だ。

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