社 説

 

弘前さくらまつり「100年の歴史と魅力発信を」

2017/4/21 金曜日

 

 弘前さくらまつりが、あす22日に開幕する。今年は祭りが始まってから100年の節目となる。時代を超えて今に息づく弘前公園の桜の美しさを存分に楽しみ、改めて内外にアピールする機会としたい。
 今年は園内のソメイヨシノが18日に開幕し、同じ日に外堀も開花した。中旬の気温が予想以上に高く推移したため、一気に開花が進んだとみられる。このため21日から出店の自主営業が始まり、開幕を前に祭りムードが高まっている。
 桜に対する思いは、長く厳しい冬を乗り越える雪国にとっては格別だ。春の到来と同時に日に日に桜のつぼみが膨らみ、次第に花が咲き始めていくさまを間近で楽しむことができるのは、やはり地元市民らの特権であり、自慢だ。弘前公園の桜の風情は、花の咲き具合はもちろん、天候によってもさまざまだ。
 このように桜に心を弾ませるのは、今も昔も変わらないようだ。今の祭りが始まったのは1918(大正7)年。当時の弘前商業会議所(現弘前商工会議所)の外郭団体である弘前商工会が「第1回観桜会」を開催したのが始まりとなる。
 当時の城下町弘前は封建的で堅苦しい空気が残っていた。しかし、明治以降に植えられた桜が順調に成長し、ハイカラな若者グループが公園に出店を依頼するなどして花見を楽しんだ。これが先駆けとなり、2年後の祭り開催に至ったようだ。
 祭りは特別な“ハレ”の日とされ、男性はスーツにネクタイ、女性は晴れ着の正装で園内に繰り出し、祭りを楽しんだ様子が当時の写真からもうかがえる。園内の出店にはトゲクリガニやガサエビが並び、サーカスのゾウなどに子どもたちは心躍らせた。当時から「弘前の観桜会」は有名で、花や“団子”を求める各地からの観光客でにぎわった。
 100年を経て時代は変わり、祭りの様子も当時とは変わった。それでも、桜の下で杯を交わしたり、軒を連ねる出店を楽しんだり。祭りを楽しみ、桜をめでる人々の思いは変わらない。弘前公園の桜の魅力も今や国内のみならず国外にも知れわたるまでになった。
 祭りに欠かせない桜を支えてきた存在として決して忘れてはならないのは、桜の管理技術を守り伝えてきた人たちだろう。今でこそ「桜守」として全国的に注目されるようになったが、長い間、縁の下の力持ち的な存在として、独自に生み出した「弘前方式」で桜を守り続けてきた。手間暇と、たっぷりの愛情を受けてこその桜の美しさと言える。
 100年目を迎えた弘前公園の桜の物語はまだまだたくさんある。多くの関係者によって守り続けられてきた祭りの歴史をこの節目にいま一度振り返り、祭りを楽しみながら、その魅力を後世へとしっかり伝え続けていく機会としたい。

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衆院区割り改定「制度の根本的な改正議論を」

2017/4/20 木曜日

 

 政府の衆院議員選挙区画定審議会(区割り審)が、小選挙区の「0増6減」と「1票の格差」を是正するため、19都道府県の約100選挙区を見直すよう安倍晋三首相に勧告した。定数1減の本県は現2区を1区と3区に分割、青森市浪岡地区を新1区とし、現1区の北五地方を現4区に編入することが盛り込まれた。
 2014年の前回衆院選で生じた格差を「違憲状態」とした最高裁の判断を踏まえ、選挙制度改革関連法が昨年5月に成立。区割り審は来月末までを期限に、15年の国勢調査結果を踏まえた20年の見込み人口を基に、格差を2倍未満に収めるよう改定作業を進めてきた。
 一方、永田町では減員区で候補者調整に時間がかかることを念頭に、勧告前に解散だ、いや勧告の先送りだ―などと憶測を呼んでいた。しかし首相の解散戦力に影響が出ないよう官邸サイドが勧告を前倒しさせた、との一部指摘もある。
 また、区割り審は昨年12月、市町村を分割する際の要件などを列挙した指針を決めたが、全国の知事からは分割回避の要望が相次いだ。
 三村申吾知事は定例会見で、分割回避が望ましいものの改定が決まった場合は従わざるを得ないとの立場を示した上で、「今後は地方の声にどう配慮するかが重要になる」と指摘、人口比率をベースとした制度改正論議に疑問を呈した。
 実際、今回の改定は暫定的な措置であり、政府は20年の大規模国勢調査後に人口比を反映させやすい新たな定数配分方法の「アダムズ方式」を導入する。
 このままでは人口が集中する都市部の議席が増える一方で、本県など人口減少に悩む地方の議席数は減り続けることが予想される。これでは少数(地方)の声が国政に反映されにくくなり、日本の食や豊かな自然を維持している地方を切り捨てることにもなりかねない。
 選挙制度は公平公正で国民が納得することが絶対条件だ。有権者が地方の切り捨てだと不信を抱くならば、わが国の根幹を成す議会制民主主義を揺るがすことにならないか。
 県選出の衆院議員からも「米国のように小さな州にも議席を割り振るような心配りが必要では」「選挙区が頻繁に変わっていいはずがない」といった声が上がっている。
 政府は勧告を受け、新たな区割りを反映させた公職選挙法改正案を今国会に提出、成立を図る。法案成立後、1カ月程度の周知期間を経て夏以降に適用される見通しだ。同時に定数減の県に多くの現職議員を抱える自民党を中心に、与野党は今後、候補者調整を迫られる。
 しかし忘れてならないのは選挙区が変わったり、地域のつながりが分断されたりする有権者の理解を得ることだ。人口減少社会を見据え、もっと地方に配慮した根本的な改正議論が必要だろう。

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米副大統領初来日「万一に即応する態勢整備急げ」

2017/4/19 水曜日

 

 米国のペンス副大統領が18日に初来日し、安倍晋三首相と会談した。焦点は北朝鮮の核・ミサイル開発で緊張が高まる朝鮮半島情勢。安倍首相が「北朝鮮が真剣に対話に応じるよう圧力をかけていくことも必要」としたのに対し、ペンス副大統領は「日本が絶えず挑発の中に置かれている厳しい状況を理解している。米国は100%日本と共にある」と応じ、日米の緊密な連携を確認した。
 会談で安倍首相は、トランプ政権が「全ての選択肢はテーブル上にある」と軍事力行使も排除していないことを評価すると、ペンス副大統領は「米国は平和を追求している」とした上で「平和は力によってのみ初めて達成される」と強調した。前日の韓国・黄教安大統領代行との会談でも「核兵器や通常兵器の使用には圧倒的かつ効果的に対応する。北朝鮮はトランプ大統領の決意や米軍の力を試すべきではない」と、北朝鮮の挑発をけん制。同時に北朝鮮に影響力を持つ中国の対応に期待した。
 北朝鮮は3月に弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射し、うち3発が秋田県男鹿半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。今月16日にも弾道ミサイルの発射を試みており、ミサイル開発の加速がうかがえるのに加え、核実験を強行するとの推測もある。米国が核保有国として認めない姿勢を貫いているものの、近くて遠い国によるミサイルへの核弾頭搭載を非現実的とは言えない時点に来ているとの危機感が募る。
 日本のEEZ内に落下したミサイルについて朝鮮中央通信は、朝鮮人民軍戦略報道官の談話として、米韓合同軍事演習に対抗し、在日米軍基地を攻撃目標にした訓練だったことを発表。これによりわが国の危機感は一気に高まった。米軍関連施設は全国にあり、本県には三沢市に三沢基地、つがる市に早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が置かれている。つまり、これらも北朝鮮の標的になり得るのだ。
 政府は3月17日、北朝鮮の弾道ミサイル飛来を想定した初の住民避難訓練を、秋田県男鹿市で行った。政府が全国瞬時警報システム「Jアラート」や緊急情報ネットワークシステム「エムネット」を通じ、秋田県と男鹿市に対し、ミサイルの発射や落下予測といった情報を伝達。同市が防災行政無線で市民らを小学校と公民館に避難させた。
 仮にミサイルが着弾した場合、公民館内で難を逃れることができるかは疑問だが、国民が有事にどう対応するかを考えるきっかけにはなる。北朝鮮の挑発行為を抑えられることを願う。しかし挑発がエスカレートする中で、急に方針転換するとは思えない。万一の事態に即応できる仕組みを、早急に整える必要はあるだろう。

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青い山脈 70年「作品の言づてに再び目を」

2017/4/18 火曜日

 

 弘前市出身で戦後「百万人の作家」とたたえられた石坂洋次郎(1900~86年)に関する企画展「石坂洋次郎展―『青い山脈』70年―」が、同市立郷土文学館で開かれている。ベストセラー小説「青い山脈」の新聞連載が始まってから70年を迎えた節目にちなんだ企画だ。
 同館は弘前ゆかりの文学者を紹介する施設だが、もともと石坂の記念館的な性格を併せ持つ。2階は石坂洋次郎記念室と名付け、あまたの資料や遺品を公開してきた。
 今年はこの企画展と並行して、石坂が敬愛した郷里の先輩作家西善蔵との交流など石坂にちなんだスポット企画展を順次開催。定期的に開催している講演会「北の文脈文学講座」も石坂関連の内容が中心で、まさに「石坂イヤー」と呼ぶべきプログラムだ。
 「『青い山脈』70年」展開催に伴い、記念室は石坂の生涯を概観する内容に展示替えし、未発表原稿や初公開資料を紹介している。旧制横手中学校(秋田県横手市)教員時代の教え子だったジャーナリストむのたけじの作文に記された石坂の評「巧く書けた。心理描寫が生きている」には、短文ながら愛情がにじむ。
 1階の一般展示室では、「青い山脈」およびその前後と作家歴を三つに大別。「若い人」「陽のあたる坂道」を含む各時期の主要作品を挙げながら、石坂の文学観と各時期の特徴を一歩踏み込みながらも分かりやすく示している。解説を通じて、戦前の社会情勢や私生活の影響を受けながら確立させた、「観念」よりも「現実」を、「精神」よりも「肉体」を重視する姿勢が、確立後は基本的に変わらなかったことがうかがえる。性の問題を前面に据え、かつての明るさやユーモアが影を潜めた後年の作品群も、その延長線上にあると言えそうだ。
 「新しい憲法も新しい法律もできて、日本の国も一応新しくなったようなものですが、しかしそれらの精神が日常の生活の中にしみこむためには、五十年も百年もかかると思うんです」。「青い山脈」のこの一節は、70年を経た今なお、読者に突き付けた鋭いメッセージ(言づて)に映る。現代に生きるわれわれは「民主主義」の精神を、地に足の着いたものとし得ているだろうか。
 石坂の著書は現在、一部を除き、多くが新品を入手できない。流行や風俗といった時代性の色濃い作品はまだしも、普遍的メッセージを放つ作品まで絶版状態にあるのは残念だ。石坂が「戦後の流行作家」の一人にくくられ、全てがその枠内で片付けられているようだ。関心を持つ者が作品に気軽に触れることができる環境づくりを望む。
 石坂の顕彰施設は、全国でも同館と石坂洋次郎文学記念館(横手市)の2館のみという。今展開催には同記念館も協力した。今後の両館の連携も期待したい。

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吉野町緑地「県全体にアートの波を」

2017/4/15 土曜日

 

 弘前市の吉野町煉瓦(れんが)倉庫を中心とした吉野町緑地周辺整備事業に絡み、同市と県内外の企業でつくる「スターツグループ」がこのほど基本協定を締結、2020年度の開館に向けて本格的に動き出した。もともと市民に親しまれていた煉瓦倉庫と吉野町緑地だが、美術館を核とした整備が進めば新たなにぎわいの拠点となり得る。今後の推移に注目したい。
 13日には優先交渉権者を選定するに当たっての審査講評も公表され、応募してきた事業者の提案とそれがどのように評価されたのかが見て取れて興味深い。
 講評によると、スターツグループの提案は従来の美術館とは異なる「アートセンター」を創設するという考えで、核となる美術館は芸術家が滞在しながら創作した作品を展示する「創造・更新型」とする方針。作品収集については「赤煉瓦倉庫の建築と対話し、新たな創造性を喚起する作品」「弘前市、東北地域との対話を促し、その自然、歴史、物語を素材とする作品」「現代の新たな創造性を喚起させる作品」という三つの方針が示され、地域性と時代の流れを捉えた明確で具体的な方向性だと高く評価された。
 老朽化が著しい煉瓦倉庫C棟は意匠を継承しつつ、ミュージアムショップやカフェ、シードル工房を誘致する考え。同倉庫が日本で初めてシードルを醸造した場所だという歴史を踏まえると弘前らしい独自性のある利活用と言えるだろう。
 スターツグループは県内外8企業と1協力企業で構成され、美術館総合アドバイザーにエヌ・アンド・エー(東京都)代表で東京都六本木ヒルズにある森美術館館長の南條史生さん、全体のデザインに携わるデザインアーキテクトにパリ在住の建築家、田根剛さんの就任が決まっており、いずれも実績のある方々だけに、新たな「アートセンター」が出来上がるのでは―という期待が高まる。
 審査会は事業者の提案を高く評価しつつ、同事業のさらなる充実に向け、中央弘前駅や中心市街地の歩行者ネットワーク、都市環境などと接続、呼応するような計画を求めた。まちづくりの重要な拠点となる場所だけに、事業者には市側と十分に情報共有し、事業の実現に向け、まい進してもらいたい。また通常の公共施設とは運営手法が異なり、課題が浮上することもあるだろう。市側には市議会などを通じてしっかりと情報公開し、市民の理解を得るように努めてほしい。
 県内には既に全国的にも知名度が高い県立美術館や十和田市現代美術館があり、さらに弘前市、八戸市にも新たに美術館ができることで、県外観光客やアートに関心の高い層には強力なアピールになり得る。今後は市民、県民ら地元の関心を盛り上げると同時に、県外客向けに分かりやすい周遊コースを示すなど、本県全体に効果が広がるような取り組みを求めたい。

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