社 説

 

学習支援教室「学びの場活用へ浸透図りたい」

2017/12/26 火曜日

 

 経済的理由から学習塾に通っていない生徒らの学ぶ力をサポートしようと、弘前市が学習支援事業を行っている。生活困窮世帯や就学援助、児童扶養手当を受けている世帯の中学生を対象にした学習支援教室「あっぷる~む」だ。
 2015年に始めた事業は、弘前大学ボランティアセンターの協力もあって運営基盤が整い、着実に成果を上げているようだ。一方で、利用するのは対象者のうち、ごくわずかにとどまっている。事業がより広く理解され、運営関係者が願うように支援が必要な生徒に届く仕組みとなるよう期待したい。
 あっぷる~むは、市社会福祉協議会が市の委託を受けて事業運営を行い、弘前大学ボランティアセンターの大学生が中学生の勉強を手伝っている。現在は週1回開設しており、場所は対象者のプライバシーに配慮して利用者だけに明かしているという。
 事業開始から2年間で、利用した中学3年生6人が学力や経済的理由で進学を断念することなく高校へ進んだという。利用者数は少ないものの、生徒たちの学ぶ力をサポートしたいという事業の狙い通り、着実に成果を上げているといっていいだろう。
 学習支援を行うのは弘前大学の学生たちだ。将来、教師を目指す学生らが、生徒と1対1で向き合い、積極的にコミュニケーションを図りながら勉強を教えており、将来につながる経験になることは間違いない。大学が数多くある学都ひろさきらしい取り組みである。
 一方で、あっぷる~むの活用をどう促していくのかが今後の課題だろう。弘前市によると、参加対象世帯の一つである就学援助認定者の数(16年度)は、小中学生合わせて1981人。このうち中学生は827人。この数に対して毎年参加登録するのは5~10人前後にとどまっている。
 市はケースワーカーを通じて戸別に周知したり、広報誌に掲載したりするなどして周知を図っているが、なかなか広まらないのが現状のようだ。プライバシーへの配慮から、周知方法が限定されていることも一因だろう。
 現在は開設場所が1カ所にとどまっており、距離的に利用できる生徒が限られているという課題もある。必要性が高まれば開設場所を増やすことも検討しているようだが、可能な限り柔軟に対応していくことができれば、利便性が高まることだろう。
 大学生から1対1で勉強を教えてもらえるというのは、勉強に限らず、さまざまな話題の話し相手になるなど生徒らにとって貴重な機会であるはずだ。学ぶ側、教える側双方にとって「学び」がある理想的な学習支援の仕組みが、必要とする生徒らに届くよう広く浸透していくことを期待したい。

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政府予算案「社会保障費削減へ議論を」

2017/12/23 土曜日

 

 政府は22日、2018年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は過去最大の97・7兆円となったが、このうち33兆円が社会保障費で、借金の返済と合わせた避けられない支出が56兆円を占める。歳出改革の必要性が指摘されて久しいが、まずは高齢化に伴い拡大を続ける社会保障費をどうするのか、来年の通常国会で根本的な議論が必要だ。
 景気の回復傾向を受け税収は1・4兆円増の59兆円を見込むが、不足分は27・6兆円の赤字国債などで賄うため、借金頼みの状況に変わりない。財務省は国債発行額が6年連続で縮減し、基礎的財政収支も17年度に比べ4000億円程度改善するとして「財政健全化は着実に進展する」と主張する。
 果たして国民の何割が、財務省の説明に納得するだろう。国も地方も借金に頼る財政状況が続く中、子どもからお年寄りまで含めた国民1人当たりの借金は、約878万円まで膨らんでいる。にもかかわらず、借金の最大の要因である社会保障費は増え続ける。
 少しでも財政の健全化を図るため、これまでは不必要な支出、特に公共事業を削減すべきという議論が幅を利かせてきた。1990年代には整備新幹線がその標的となり、中央マスコミは横並びで“壮大な無駄”扱いした。
 当時は随分悔しい思いもしたが、東北新幹線全線開業に伴う観光客の入り込み数の伸びや、県経済への波及効果などは県などが公表している指標を見れば一目で分かる。それ以上に、新幹線が本県の魅力度向上にも寄与していることを指摘したい。民間の最新ランキングで全国17位、東北では宮城に次いで2番目という“大躍進”が物語っている。
 公共事業をめぐっては、県内では国道の橋梁(きょうりょう)、水利施設など、戦後や高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化が進んでおり、補修や更新が課題となっている。国や県は、費用対効果も見極めながら順次対応する予定で、公共事業イコール無駄という批判は当たらないだろう。
 自由に使える財源の捻出に不自由している現状を踏まえれば、財政健全化のため社会保障費をどう削減するのか、“本丸”に切り込む覚悟が必要だ。
 財務省は薬価や生活保護制度の見直しなどにより、社会保障費の伸びを前年度比4997億円の増に抑えたと説明するが、高齢化の進展は避けられず、間もなく団塊世代が後期高齢者の75歳に到達する。
 安倍晋三首相は先の衆院選で、財政再建に使うとしていた将来の消費税引き上げ分について、教育の無償化にも充てると公約に掲げた。本当にそれでいいのか。社会保障費の財源に充て、財政再建に道筋を付けるべきではないのか。年明けの国会で、真剣に議論する問題だ。

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日本相撲協会が処分「事件再発防ぎ健全な取組を」

2017/12/22 金曜日

 

 大相撲の元横綱日馬富士による、幕内貴ノ岩に対する傷害事件に絡み、日本相撲協会が20日の臨時理事会で、事件関係者への処分などを協議した。その結果、暴行現場の酒席に同席した白鵬、鶴竜両横綱が1カ月から1・5カ月の報酬減額とする懲戒処分となった。さらには元日馬富士の師匠だった伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士、つがる市出身)が管理責任を取って協会理事を辞任し、2階級下の役員待遇委員となるほか、八角理事長(元横綱北勝海)は残任期間3カ月分の給与を全額返上する。引責引退した元日馬富士に対しては「引退勧告に相当する」ことが確認された。
 貴ノ岩の師匠である貴乃花親方(元横綱)への処分が保留されており、すべて決着した訳ではない。しかし、今回の処分が同様の事態に対する再発防止効果となるかは未知数だ。かねて言われるような、協会全体の体質改善や力士本人の自覚がなければ難しいのかもしれない。
 協会の危機管理委員会は、元日馬富士を引退勧告相当とした理由を「いかなる理由があっても暴力を行使することは許されず、その一事をもって重大な非難に値する」とした。その通りであるが、白鵬らへの処分と同時に明らかにされた、事件の調査報告を見る限り、貴ノ岩の当時の態度や言動にも問題があったとも受け取れる。
 それによると、9月に貴ノ岩が東京都内飲食店で白鵬の知人らと口論になった。その内容を聞いた白鵬が10月、鳥取市内飲食店で貴ノ岩らに説教をし、話が一段落したと思い込んだ貴ノ岩がスマートフォンを操作。同席した元日馬富士がこれに激怒し、横綱が説教している最中になぜ携帯電話を操作しているのか、という趣旨で問いただしたが、これに対する貴ノ岩の回答内容や態度に立腹し、暴行に至った。
 たとえ、説教が一段落としていたとしても、その場で即座にスマホを操作した行為は、まるで注意したことが身に染みていないように受け取られる。手を上げ、カラオケのリモコンで殴った元日馬富士の行為は行き過ぎで、あってはならないことだが、ここで貴ノ岩が謙虚な態度を取ることができれば、ここまで大ごとになることはなかったろう。
 気になるのは貴乃花親方の出方だ。事件発覚後、謝罪に出向き、会見し、自ら潔く理事職から身を引いた伊勢ケ浜親方とは異なり、ようやく貴ノ岩を危機管理委の聴取に応じさせたものの、これまでの非協力的な対応や態度、言動は、社会人として疑問符が付くものであり、大人げがないとも見られかねない。28日に処分などが検討される見通しだが、「内輪もめ」が強調されることは誰も望まない。望むのは、体質改善がされ、健全な環境の中で培われた力士たちによる取組ではないだろうか。

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豪州からの誘客「ニーズ把握し一層の促進策を」

2017/12/21 木曜日

 

 津軽地方でも鯵ケ沢町の青森スプリング・スキーリゾートが先週、オープンし、他のスキー場も今週末にかけて続々と営業を始める予定となっている。本県のスキーシーズンがいよいよ幕を開ける。例年になく、早い雪の訪れにうんざりという県民も多いだろうが、スキー関係者にとって今冬の雪は、期待を感じさせるものがあるだろう。
 四季がはっきりとしていて、海山ともに豊かな自然環境に恵まれた本県は、観光立県としてさらに発展できる余地がある。本県の地勢を生かした自然観光やさまざまな恵みを堪能できるグルメ観光、春の弘前さくらまつり、夏の青森ねぶた祭に代表される祭り・イベント観光、その多くが全国的な知名度を得た本県の貴重な観光資源だが、本県において最も特徴的な季節と言える冬を生かした観光だけは、どうしても元気が出ない。
 冬の観光資源と言えば、温泉とスキーが、まずは頭に浮かぶ。全国屈指の温泉地数を誇り、スキー環境も良質な雪でスキーヤーの評価の高いスキー場が多い。潜在的な冬季観光の需要は大きいものがあると言えるだろう。
 こうした中、県はスキー観光によるオーストラリアからの誘客に注力している。近年はアジア、特に中国人観光客の動向に目が行きがちだが、県などのまとめによると、2016年に県内に宿泊したオーストラリア人(延べ人数)は2820人で、東日本大震災前の10年と比較して約10倍に増加しているという。平均泊数も長く、旅行の支出額も多いなど「お金をかけてゆっくりと滞在してもらえる」豪州からの観光客は、ぜひ本県としても目を向けてもらいたい存在と言えそうだ。
 県が狙うターゲットは、オーストラリアでも知られる日本国内の有名スキー場などとは差別化し、何度も訪日しているスキー上級者だという。県は上質なパウダースノーで混雑なく山スキーを楽しめるとして八甲田や岩木山の情報を発信。関係者の本県招請や英語の専用ウェブサイト、インターネット交流サイト(SNS)でPRしているほか、13~15年度にはシドニーに職員を駐在させるなど同国からの誘客に力を入れてきた。
 こうした取り組みに、同国関係者の本県スキー観光に対する評価も上がってきているようだ。年明けにはファミリー向けのスキー雑誌関係者を招請し、県内でのスキー観光を提案していくという。また今年度から再びシドニーに職員を派遣しており、現地でのネットワークづくりもさらに進めていくことになる。
 漠然とした海外からの誘客ではなく、その国の人の嗜好や興味を分析し、ターゲットを明確化した上で対策に取り組めば、効果はおのずと上がる。地方観光地の誘客競争を一歩リードする施策の展開を今後も望みたい。

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リニア入札不正「問われる社会的責任と公共性」

2017/12/20 水曜日

 

 東京(品川)―名古屋間で2027年に開業が予定されているリニア中央新幹線の関連工事で、大手ゼネコン4社(大林組、鹿島、大成建設、清水建設)が、入札をめぐり事前に話し合うなどして正当な競争をしなかった疑いが強まり、東京地検特捜部と公正取引委員会が独禁法違反(不当な取引制限)容疑で強制捜査に乗り出した。
 リニア新幹線は、同区間を最速40分で結ぶ夢の超特急列車。その輝かしい未来に早くも汚点を残しかねない事態は残念である。
 名古屋市内の公園跡地に新設する非常口の工事については、大林組の依頼に応じて、他社が入札参加を見送るなどの調整が図られた疑いがある。工事は約90億円で大林組などの共同企業体が受注。大林組の担当者らは4社による受注調整を認めたという。
 総事業費9兆円に上る国家的プロジェクトを舞台とした大型談合事件。他の工事についても疑念は拭えない。事業主体のJR東海は民間企業だが、複数の業者が事前の話し合いで受注予定者を決める行為は独禁法違反に問われる。事業費の一部には、国債を原資とした低利融資が活用されていることもあり、「重要なインフラ建設工事」(経団連の榊原定征会長)の言葉通り、リニアの公共性は高い。公正な入札を妨げることは、事業費を上昇させ、運賃などの面で利用者らの負担増にもつながる。
 強制捜査の対象となった4社は05年、談合との決別を宣言していた。談合事件の摘発が続き、独禁法違反企業への課徴金が06年から引き上げられることを踏まえて自浄姿勢を示した形だが、東日本大震災(11年)以降は再び疑惑が噴出しているという。今年9月には東京外郭環状道路関連工事の契約手続きが中止されていた。宣言は単なるパフォーマンス―とのそしりは免れまい。
 業界が長年染み付いた体質から脱し切れていないとの見方もできるし、談合が同業者間で利益を守り共存するための必要悪と受け止められているのかもしれない。だが、業界大手の社会的責任は大きく、社会に与える影響も相応にあることを改めて自覚しなければならない。
 一方、リニア新幹線工事の入札で採用される「競争見積方式」が、不正の温床になった可能性の指摘がある。同方式では評価項目の詳細が公表されず、JR東海は契約締結後も選定に至る経緯や契約額を明らかにしていないという。官公庁の一般競争入札では予定価格などの公表が不正をけん制する機能を果たすが、JR東海の対応が第三者のチェックを難しくしているのでは―という見解だ。
 リニア新幹線の公共性と事業主体であるJR東海の社会的責任を考えると、情報公開を通じて透明性を高める余地はありそうだ。

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