社 説

 

中国・商標問題「大きな枠組みで問題解決を」

2018/1/12 金曜日

 

 中国で「弘前」の文字が商標登録申請され、弘前市などが2016年に異議を申し立てていた問題で、中国の商標局が異議を認めない裁定を下していたことが分かった。中国の企業がローマ字の「AOMORI」の文字を商標出願していることも分かり、県など関係8団体が連名で今月5日に異議を申し立てている。
 中国の商標法には、一般に広く知られた外国地名は商標登録できないという規定があり、これまでも県などが「青森」という文字の商標出願に対して行った異議はすべて認められてきた。今回の「弘前」について、中国商標局は同国内での弘前の認知度は低いという判断を示したとされ、大方の県民が抱く「日本の地名であれば異議が認められるだろう」という認識が覆されたと言える。問題解決に向け、新たな取り組みが必要だ。
 中国の商標問題はこれまでも繰り返されてきた。本県では03年に中国の企業が乳製品や果物、水産物、野菜など5分野で「青森」の文字を商標登録出願する動きがあり、話題に。5件すべてが却下されたのは08年のことで、安堵(あんど)したのもつかの間、同年に「青淼(チンミャオ)」という「青森」と紛らわしい文字にリンゴの図柄を組み合わせた商標の登録申請が判明し、県などが再び異議申し立てを余儀なくされるなど、振り回された。
 中国では日本の都道府県名や政令指定都市名を無関係の第三者が商標出願する動きが多く、もはや本県だけの問題にとどまらない。商標が登録されれば、たとえ地名であってもその文字を使った輸出は他者の商標権を侵害するリスクがある。無関係の商品に地名が使われたり、日本と関連ある会社だと消費者を惑わすビジネスの可能性も否定できない。
 中でも懸念されるのがイメージの低下だ。16年の県産農水産物の輸出額が過去35年で最高額となった本県にとって、中国は重要な輸出先の一つであり、天津線就航を契機に観光面でのつながりも深まっている。今後の展開を注視したい。
 本県では03年の騒動を契機に、県産品であることを示す統一マークの商標登録や県内の団体による海外での商標出願の支援など積極的な防衛策も講じてきた。ただ商標の無効を求める取り組みは時間も手間もコストもかかる割に、根本的な解決にはつながっていないのが現状。特許庁は日本貿易振興機構とも連携し、各自治体への情報提供や対応策・事前予防策のマニュアル提示などの支援策を打ち出しているが、自治体任せにせず、より大きな枠組みで中国側へ訴え、根本的な解決策を探ることが重要ではないか。
 「弘前」の商標については市などが商標を無効とする審判などの手続きを検討しているという。難しい面も多々あろうが、中国側の考えを知るという点で他の参考になるはず。結果の成否を問わず、積極的な情報公開を求めたい。

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カヌー・ドーピング「自らを律する強さを持ちたい」

2018/1/11 木曜日

 

 昨年9月に石川県で行われたカヌー・スプリント日本選手権で、鈴木康大選手がライバルの小松正治選手の飲み物に禁止薬物を混ぜたことが明らかになった。世界のスポーツ界がドーピング問題に悩まされる中、トップ選手による前代未聞の悪質な行為が国内で発生した。
 小松選手はレース後の検査で陽性反応を示し暫定的に資格を停止されたが、鈴木選手が自らの行為を申し出たことで資格停止は取り消された。2016年のリオデジャネイロ五輪で、カヌースラローム男子の羽根田卓也選手が日本勢初の銅メダルを獲得し、競技の注目度が増していただけに、関係者らの落胆は大きい。
 鈴木選手は今回の薬物混入のほかにも、東京五輪招致が決まる以前の10年ごろから、ライバル選手の用具を盗んだり、細工したりする妨害行為を繰り返していたという。国内で開催される五輪に出場したい―という焦りなどから行っていたという。身勝手というほかなく、弁解の余地はない。
 日本アンチ・ドーピング機構は鈴木選手に8年間の資格停止処分を科し、日本カヌー連盟は、最も重い除名処分を科すよう臨時総会などに提案するという。競技に勝つため、自ら禁止薬物を服用することはもちろん許されないが、その罪を他の選手に着せようとした行為はより悪質だ。連盟の方針は当然だろう。
 今回の一件はスポーツ界全体に大きな波紋を呼んだ。過去の五輪でドーピング違反者を一人も出していない日本は、“クリーン”を掲げて東京五輪の招致に成功したのだが、その信頼が揺らぐ事態となり、早急な対応を迫られている。
 国内のスポーツ界からは、鈴木選手の行為を悲しむ声が相次いだ一方で、被害に遭った選手、競技団体双方の認識の甘さを指摘する声も上がる。04年のアテネ五輪陸上男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治さんは、飲み物のボトルを一度開けて席を離れた場合、二度と飲まないのは当たり前―とし、競技団体が選手の指導を徹底すべきと提言する。
 選手たちは五輪出場権をめぐり激しく争い、出場した場合は好成績を収めなければならないという重圧を背負うことになる。彼らの重圧は周囲の想像をはるかに超えるものであろう。そう考えれば、選手には禁止薬物などから自らを守る意識も必要なのかもしれない。
 組織的ドーピングにより、2月の平昌冬季五輪への選手団派遣を禁じられたロシアを、他山の石とすべきところだったが、今回の件を受け、日本国内の関係者はドーピング対策に「当事者意識」を持って一層強い姿勢で臨まなければならない。ただ、選手が自らを律することができなければ、いくら対策を講じても再発を完全に防ぐことは困難だ。自らを律する強さを持ってこそ、国を代表する選手と言えるのではないだろうか。

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国会改革「審議充実へルールの検討を」

2018/1/10 水曜日

 

 与党は22日召集の通常国会で、安倍晋三首相の常任委員会への出席削減、与党の質問時間拡大など国会運営の見直しを提起する方針だ。「森友・加計問題」などの追及に後ろ向きな与党の姿勢とともに、連携に難のある野党の力不足が透けて見える。充実した審議に向けて国会改革が叫ばれて久しいが、これを機会に時の権力に左右されないルールづくりも検討すべきではないか。
 焦点となっている質問時間をめぐっては、国会法などに規定がない。与党は昨年の特別国会で質問時間配分見直しを主導し、従来の与野党「2対8」から、おおむね「3対7」に変えた。これはあくまで一時的なもので、通常国会では改めて「5対5」を求めるとみられる。
 ところが与党の質問時間が増えた特別国会の衆院委員会では、与党側が政府判断の擁護に終始した。野党側は追及を少しでも減らそうとしただけと反発、立憲民主党の幹部からは「政府の言い分を補強する質問をするため時間を欲しがったのか」と皮肉られた。
 さらに与党は首相と野党党首が1対1で議論する党首討論を毎月開催する代わりに、予算委員会などへの首相出席を大幅に減らすことも目指す。
 その理由として自民党は安倍首相の国会出席時間が2016年に計376時間で、ドイツや英国の10倍近くに達し、外交や国際問題対応へ影響が及ぶとする。
 予算委では1日約7時間、拘束される場合が多い一方で、党首討論は全体でも45分と短い。このため野党側が予算委で質疑時間を確保することを優先、毎年数回程度開催されていたものの、17年はついにゼロに終わった。
 なぜ野党側が党首討論を避けるのか。党首討論が行われる週は慣例により、本会議や各委員会への首相出席を求めることができない。このため野党側は「通常7時間の予算委の方がいい」(立憲幹部)とし、共産党の穀田恵二国対委員長は「首相に対する質問時間の圧倒的な縮小につながった」と断じる。
 ならば党首討論の時間を増やし、野党の質問時間配分にも配慮すべきだろう。国会改革は審議の充実を目指すものでなくては意味がなく、質問時間配分に一定のルールを設けるか否か、また党首討論も月1回の開催でいいのかを含め、各党・会派をメンバーとする検討組織を常設すべきだ。
 昨年の衆院選で大勝し、今秋の自民党総裁選で3選を目指す安倍首相。地元・山口での後援会の新年会で「決しておごることなく、責任を果たすために全力を尽くす」などと語った。
 ならば数の力で慣例を変えず、野党の主張に耳を傾け、一定のルールづくりを検討するよう、自民党総裁として党に指示すべきではないか。国民・有権者の理解が得られる国会改革こそ必要だ。

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成人式「本県振興のため気概を持って」

2018/1/9 火曜日

 

 本県では3日の鶴田町を皮切りに、7日には弘前市など20市町村で成人式が行われた。各会場では、振り袖やはかま、スーツで着飾った新成人たちが大人の仲間入りを祝福し合ったり、旧友との再会を喜んだりした。県教育委員会によると、今年度の新成人は1万2450人となっている。このうちの多くが本県のために活躍し、将来を担うことを願う。
 高校などを卒業し、成人を迎えた若者は県内外の学校で学んだり、企業に就職したり、と立場はさまざまだ。夢をつかむため、希望の職に就くため、家族を支えるため、とがむしゃらに取り組んでいる最中であろう。そうした未知の可能性を秘めた若者が、20年の間に積み上げた知識や経験、意欲を本県のために役立ててほしいというのが、多くの人生の先輩方の希望であろう。ただ、理想通りにいかないのが現実である。
 県が4日に発表した本県推計人口は、昨年12月1日現在、127万7086人(男59万9949人、女67万7137人)となり、前月比863人減。微減が続いており、2040年には100万人を割るというデータもある。自然減はやむを得ない面があるとしても、若者の県外流出を中心とした社会減は何を意味しているのか。
 成人式に出席した新成人の声をまとめた本紙記事によると、「地元商店街はシャッターだらけで寂しい。何とか活性化してほしい」「(青森は)若者が働きにくい」「もっといい企業を誘致してほしい」「希望する仕事があれば(青森に)戻りたい」といった声が聞かれた。そこに垣間見えるのは、故郷がもっと活気にあふれてほしい、自分がやりたい仕事が地元にあってほしいといったことではないか。
 青森労働局によると、本県の直近(昨年11月)の有効求人倍率は前月比0・02ポイント増の1・27倍と過去最高を更新した。しかし、職があっても、人が集まらなければ意味がない。魅力あふれる地元や職場を提供できないのは、われわれ先輩世代の責任でもあり、今後どうするか模索する必要があろう。
 ただし、成人を迎えた世代も「あれがない、これがない、魅力がない」と言うばかりでなく、これからの時代を担い、自ら盛り上げていこうという気概を見せてもらいたい。例えば、やりたい仕事が見つからないのであれば、大都市圏に出て経験を積んで帰郷し、やりたい仕事を創出することもできるだろう。
 そうした意欲や情熱にあふれる若者の気持ちを受け止め、一人前の大人に育て上げた上で、働きやすく、創業しやすい環境を整えていくことも、現在青森県に住む、われわれ先輩世代の責務ではないだろうか。各世代が本県の現状を理解した上で協力し、地域を振興していく姿を望みたい。 

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弘前城の新発見「市民の力でさらなる価値を」

2018/1/6 土曜日

 

 世紀の大プロジェクトとして注目される弘前城本丸石垣修理事業は、石垣解体作業が昨年12月中旬に一時終了し、3月下旬の再開までしばしの中断となる。同年4月から始まった解体作業は、ナンバリングした2518個の石のうち、1233石が外された。進捗(しんちょく)率48・9%というから、ようやく半分の道のりだ。今さらながら息の長い取り組みが必要になると感じる。昨年分の石垣解体が大きな事故もなく無事に終了したことに安堵(あんど)している。工事再開後も滞りなく事業が進み、日本最北の現存天守が再び天守台の上に座る姿を一日も早く見たいものだ。
 昨年は石垣解体に伴い、さまざまな新事実が発見された。その中でも注目されたのが、元禄期のものと推定される排水遺構が明治以降に埋め立てられていたことだろう。石垣を解体して修理する理由となったのは、石垣が膨らんで崩落する危険があったためだが、この石垣のはらみの要因の一つが、排水遺構の埋め立てによるものと分かったのだから、今回の発見の意義は大きい。弘前城の石垣が今後100年、200年と、その美観を保っていくために、どのような対策を講じるべきか。排水路が埋め立てられたことによって石垣にどのような影響を与えたのかを専門家らの意見を聞きながら明らかにし、今後の対策に役立ててもらいたい。
 天守台最上段に当たる石の四隅で巨大なイカ形の隅石が見つかったことや約100年前の石垣修理の際の地鎮祭で使われたとみられる徳利(とっくり)やお猪口(ちょこ)、密教法具などが天守台下から発見されたのも記憶に新しい。イカ形の隅石は、その特異な形状が目を引き、市が「いかすみ石」と名付けて展示するなどし、多くの注目を集めた。観光資源としての弘前城について、幅と奥行きを与えるこうした遺構、遺物の発見が今後も続けば、弘前城・弘前公園の価値がさらに高まるだろう。今後の調査に期待したい。
 新発見といえば、元日付の本紙で報じた謎の櫓(やぐら)の写真発見のニュースも興味深いものだった。現存する弘前城の櫓の他にも同城には櫓が存在したが、今回発見された櫓の絵はがき写真が北の郭にあった子櫓ではないかというもの。本物であるならば、明治時代に花火による火災で失われた子櫓の現存する唯一の写真となるだけに、その資料的価値は非常に高いだろう。明治期の弘前公園の姿を捉えた写真としても珍しいものだろうし、他の櫓との構造の違いなども比較することができ、学術的な価値も高いに違いない。
 弘前公園を舞台に開かれる弘前さくらまつりは、今年100周年の記念すべき節目の年。市民としてもいま一度、弘前公園に注目し、家に眠っているかもしれない資料などを探してみるのもいい。新しい発見は弘前城・弘前公園をさらに市民に身近な存在にしてくれるだろう。

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