社 説

 

立佞武多運行20周年 「市民の誇り」と心に留めたい

2017/1/7 土曜日

 

 20年という短期間で知名度が全国区になった祭りはそれほどないはずだ。五所川原市の立佞武多が今年、運行20周年を迎える。
 本県のねぷた・ねぶたと言えば、夏祭りの代表格で、弘前の扇ねぷた、青森の人形ねぶたは名前を挙げると県外の人もすぐにイメージできるほど。
 その中で、五所川原市では豪商らが自らの富を競うかのように、背丈の高い特徴的な山車を制作した。これが立佞武多なのだが、いつしか伝統は途絶えた。
 しかし突如、復活を果たした。1996年、地元の有志が明治期のモノクロ写真を手掛かりに制作。天を突くような威容が市民の目に映ったのは約80年ぶりだったというのだから驚きだった。
 そのわずか2年後の98年、市街地での運行が始まった。全国各地に無数の祭りがあっても、山車の顔がビルの屋上より高い所に見える光景は他にないだろう。高さ23メートルの迫力は言葉で表現し難いものがある。
 運行開始当初から注目を集め、10周年を迎えたころには既に広く知られるようになっていたが、同時に多くの課題も浮かび上がっていた。
 かつての青森ねぶた祭がそうだったように、いわゆる「カラスハネト」のような参加者が増加。関係者たちは早急に対策に乗り出し、衣装の適正化などに努めてきた。
 祭りは元来、非日常的な空間を提供し、参加者は蓄積したエネルギーを数日しかない会期に一気に爆発させる。五所川原市がある西北地方は県内でもとりわけ気象条件が厳しいためか、参加者の熱気は独特のものがある。
 「ヤッテマレ、ヤッテマレ」という掛け声は初めての人には乱暴に聞こえるかもしれないが、よくよく理解すれば、地域に眠る潜在的なパワーが表現されたものと捉えることもできると思う。
 80年ぶりに立佞武多を復活させた有志たちは今、それぞれ別な分野で活躍を続けている。しかし、「立佞武多は先人の遺産、宝だ」「祭りはショーではない。地域が守る、地域の財産」など、20年を振り返った各人の言葉からは同じ思いが感じ取れそうだ。
 五所川原市は県内を代表する商都と言われたが、経済環境の変化に伴って元気をなくした時期もあった。そこで、市民に元気を与え、一つに結び付けたのが立佞武多だった。
 立佞武多の成功によって、地元は大きな経済効果を得ることができた。観光が成長産業と位置付けられる今、それを伸ばしていくことは重要だ。
 ただ、忘れてならないこともありそうだ。祭りは地元が愛し、誇りに思ってこそ続く。このことを節目の年に心に留めたい。空白期間を経て再び現れた立佞武多はその重要さを強く訴え掛けている。

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交通死亡事故「一丸となって事故減少に努力を」

2017/1/6 金曜日

 

 警察庁のまとめによると、2016年に全国で発生した交通事故死者数は前年比213人(5・2%)減の3904人であることが分かった。年間死者数が4000人を下回ったのは、1949年に戦後最少の3790人を記録して以来67年ぶりとなった。しかし、全国都道府県中、死者数が前年を上回ったのは17県。この一つに本県が入った。降雪やアイスバーンなど現在は車両の運転に最も気を付けたい時期。ドライバー、歩行者ともに気を引き締め、思わぬ事故に巻き込まれないよう心掛けたい。
 全国の死者3904人中、65歳以上の高齢者数(速報値)は前年比109人(4・9%)減の2138人だが、死者全体に占める割合は統計史上最高の54・8%となった。事故発生件数(速報値)は7%減の49万9232件、負傷者数(同)も7・2%減の61万7931人だった。しかし、飲酒死亡事故件数(同)は12件増の213件に及んでいる。
 県警交通企画課によると、本県で16年中に発生した交通事故件数は前年比114件減の3740件、負傷者数は同234人減の4539人と大幅に減少したが、死者数は同13人増の53人。死者全体に占める高齢者数は同8人増の27人となった。
 全国的に死者数が減少した要因は、車の安全性能や医療の向上、ドライバーに対する啓発や道路改良といった、総合的な交通安全対策の結果であると警察庁の担当者は分析する。当然ながら今後も死亡事故減少に向けて、さまざまな対策を講じてほしい。
 気になるのは今年に入り、本県では死亡事故が続発していることである。1日には弘前市、2日には青森市と板柳町、3日には青森市、4日には南部町で、それぞれ交通死亡事故が発生し、60代から80代までの5人が犠牲となった。3日現在の数字で見ると、1月に入っての交通事故死者が本県4人に対し、全国23人、東北5人で、いずれに対しても本県の死者数が数字を押し上げている状態にある。
 1週間にも満たない期間に、5人もの人が交通事故で亡くなったということを重く受け止めねばなるまい。県警は交通死亡事故抑止に向けた推進重点として(1)高齢者・子供対策(2)交通ルール順守対策(3)悪質・危険運転者対策―の3点を掲げている。交通弱者を守る意味での高齢者・子供対策はもちろんだが、交通ルール順守は運転免許証を受けた者が当然守らなければいけないものであり、悪質・危険運転は論外である。
 この3点が徹底されなければ、いくら気を付けても事故に巻き込まれる可能性がある。行政や警察による対策はもちろんだが、ドライバーも歩行者も外出時は常に緊張感を持ち、一丸となって死亡事故減少に努めてほしい。

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大鰐温泉もやし「増産体制構築で産地の振興を」

2017/1/5 木曜日

 

 大鰐町の「大鰐温泉もやし」の評価が高まっている。藩政時代から作られている地域の特産物で、一般のモヤシに比べて細長く、シャキシャキとした食感が特徴的だ。津軽地方にもファンが多い地場野菜だろう。
 この大鰐温泉もやしの増産と後継者育成に取り組み、6次産業化や観光振興への展開を目指す「大鰐温泉もやし増産推進委員会」(八木橋孝男委員長)の3カ年計画「『大鰐温泉もやし』増産と販路開拓を中核とした『大鰐ブランド』価値向上、産業振興プロジェクト」が来年度から本格始動する。計画に先駆け、新規生産者が栽培に携わる栽培施設「大鰐温泉もやしハウス」が町内には完成しており、プロジェクトの今後の展開が楽しみとなっている。
 大鰐温泉もやしは、弘前藩3代藩主津軽信義の時代から一子相伝の栽培方法により、連綿と地域に受け継がれてきた。栽培過程で水道水を使わず、洗浄なども温泉水で行う。もともとは冬野菜で、農閑期などに農家らが出荷してきた。
 歴史ある地場野菜だが、近年は生産者数が減っている。記録が残る大正時代に29戸あった生産者は現在6戸8人となっている。一方で人気は急上昇している。2012年に地域団体商標に登録されてからはメディアへの露出が増えたこともあり、需要が供給に追いつかない状態が続いているという。
 計画は新規就農者を増やすことで大鰐温泉もやしの増産を図るとともに町内の農家や観光事業者と連携した特産品の販路拡大、6次産業化や農観連携による商品開発などを行って“大鰐ブランド”の価値向上を狙うとしている。
 温泉とスキーで栄えた大鰐町も温泉施設の減少やスキー人気の低迷などにより、地域の活力が失われてきているように感じる。その中にあって大鰐温泉もやしは魅力ある地域資源といえる。食材自体に歴史があり、その栽培方法も地元の温泉を使うという独特なもの。何よりおいしいのだから言うことがない。
 地域おこしを成功させる要素として「観光」の役割は大きいが、近年、その観光における「食」の占める比重が大きくなっている。温泉とスキー場という豊かな観光資源を有している大鰐町だけに、これに「食」の魅力が加われば、町の活性化にも大きな力となるはずだ。
 委員会はこうしたさまざまな事業に対応するため、地域総合商社の設立を目指しているという。八木橋委員長は「ブランド化を実現し利益を生むためには、まずはもやしの規格や価格などをまとめる組織が必要と考えた」と説明している。規格や品質の均一化などはブランド食材として確立する上での必須事項といえるものだけに一層、取り組みを強め、大鰐温泉もやしを本県を代表する地場野菜の一つに押し上げてもらいたい。

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日米同盟「世界貢献のためにも強固に」

2017/1/3 火曜日

 

 2016年、日米両国の歴史に新たなページが加えられた。5月にオバマ大統領が被爆地広島を訪問、12月には安倍晋三首相が米ハワイ・真珠湾を訪問し慰霊。第2次世界大戦をめぐり、両国民の中にあったわだかまりを和らげ、戦後に大きな区切りを付けたと言えよう。
 真珠湾では、敵対国が同盟国となった日米両国の「和解の力」を両首脳が訴え、日米が今後も国際社会で積極的役割を果たすとの未来志向のメッセージを強く打ち出した。日米同盟が、これまでにないほど強固に感じられた印象的なシーンだった。
 だが、今月20日にはオバマ氏に代わり、トランプ氏が大統領に就任する。これまで「米国第一主義」を掲げ、日米同盟の見直しにも言及してきた。アジア太平洋地域の平和と安定のためにも、日米同盟は堅持されるべきだが、その将来は極めて不透明だ。
 近隣諸国を見渡せば、現状は不安定と言わざるを得ない。北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返し、つい最近も新たなミサイル基地が見つかっている。大統領の弾劾で揺れる韓国では、既に合意した慰安婦問題をめぐり、再検討を求める声が次期大統領選の有力候補から出るなど、蒸し返しの動きも見られる。昨年末には日本総領事館の前に慰安婦を象徴する少女像が設置された。
 中国は、公船を再三日本領海に運航させ、その回数は昨年1年間で約40回に及んだ。昨年末には海軍の空母「遼寧」を含む艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過し、西太平洋へ出たことが確認された。空母の西太平洋進出が明らかになったのは初めてで、日米をけん制したものと考えられている。東アジア情勢は、日米同盟に対するトランプ氏の出方次第で、さらに流動化する可能性が高い。
 世界を見渡せば、テロの脅威は収まるどころか拡大の一途をたどっている。昨年はジャカルタやブリュッセル、ダッカなど、これまで惨劇とは無縁だった場所も狙われた。12月には欧州の中で比較的安全とされていたドイツでも、首都ベルリンでクリスマス市にトラックが突入する悲劇が発生した。
 欧州ではポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭し、英国が欧州連合(EU)離脱の道を選んだほか、フランスやイタリアでも反EUの勢力が増えつつある。1930年代、世界恐慌をきっかけに関税引き上げなど保護主義や経済ブロック化がまん延した。各国の「近隣窮乏化策」が第2次大戦という悲劇を招いたことを忘れてはいけない。
 世界情勢の不安定さが増し続ける中、日本はどのような役割を果たせるだろうか。平和の尊さと和解の力を世界各国に示すためにも、まずは日米同盟を引き続き強固なものとしていく努力が求められていよう。

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2017年に思う「成熟時代に生きる努力を」

2017/1/1 日曜日

 

 2017年が始まった。昨年末からの雪で、津軽はやはり雪国なのだと実感する。厳しい寒さと雪との戦いとなるのだろうが、春の訪れを心待ちにしながら、今冬を乗り切りたい。
 昨年は変化の多い一年だった。世界経済はグローバル化の影響により、さまざまな国で富める者と貧しい者の差が拡大した。この貧富の拡大が背景となり、米国大統領選ではグローバリゼーションを否定するようなトランプ氏が当選。英国のEU(欧州連合)離脱の国民投票結果もこうした不満の延長にある出来事といえるだろう。世界の各地でこれまでの流れを転換させるような変化が起こった一年だったと思う。
 国内においても大都市圏と地方の地域間格差などが広がる一方だ。こうした格差を生み出す要因の一つが人口減少だろう。本紙が年末から年始にかけて連載している企画「創生への道 人口減少時代を生きる」を見ると人口減少が地方にもたらす影響の大きさがよく分かる。
 本県人口は1985年の152万人余りをピークに右肩下がりが続き、昨年ついに130万人を割り込んだ。本県の基幹産業・農業は担い手不足が顕在化し、中心商店街も空き店舗が目立つ。生産年齢人口も目減りし、社会保障制度の維持が難しくなるなど悪循環の中にある。
 つくればつくるだけ物が売れ、経済が発展した高度成長時代が終わり、その終えんと共に出現したバブル経済も泡のごとく消え去った。
 日本は、本県は、衰退に向かっているのだろうか。そうは思わない。日本を人に例えれば、成長期を終えた今、この国は成熟期にあるといえるのではないか。身の丈に合った暮らしを営むのに必要なインフラや制度は成長期にある程度、整備された。こうしたモノや制度をこの成熟時代に合ったものに作り替え、持続可能なものとして継続、発展させていく、そのような時代に私たちは生きているのだろう。
 こうした時代は地方にとって不利なのだろうか。これもそうは思わない。豊かな自然に恵まれ、所得が低いながらも暮らしやすい地域コミュニティーなどがまだ残る地方こそ、成熟時代を生き抜く資源の宝庫と言えるのではないか。
 本県リンゴ産業は輸出が急伸し、世界から熱い視線が集まる。弘前城は石垣修理を逆手に取って観光資源としての新たな魅力をまとった。県産米のエースと期待される青天の霹靂(へきれき)の販売は好スタートを切り、これからが正念場だ。2017年はこうした資源をさらに磨き上げ、本県に活力を与える起爆剤としたい。
 今年の干支(えと)「酉(とり)」という字はもともと「果実の熟した状態」を表しているという。成熟時代の今、今年を熟れて美味な果実を収穫するための努力の年としたい。

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