社 説

 

公共交通再編「持続可能なネットワークを」

2017/3/8 水曜日

 

 人口減少を背景に、公共交通を中心とした交通ネットワーク構築に向けた動きが、県内でも広がってきている。利用者が減少傾向にある鉄道やバスは厳しい経営状況が続いており、一方のマイカー移動はドライバーの高齢化による事故などが懸念される。安心して移動や外出ができる体制の整備は今後の重要課題と言えるだろう。
 県内では県が2016年3月に県地域公共交通網形成計画を策定。市町村では弘前市が同年5月に「市にとって望ましい公共交通網の姿」を明らかにするマスタープランとして公共交通網形成計画を策定し、今年度は引き続き、具体的な取り組みを示す市公共交通再編実施計画の策定に向け、作業を進めている。
 再編に当たり、これまで示されている市の基本的な考え方は、需要が多い市街地でできるだけ多くのバスを走らせ、需要の少ない地域では乗り継ぎが必要だったり、運行本数が少ないなど利用者に一定の負担を掛けつつも、生活の足がゼロになるという事態を避けるというもの。
 具体的には市中心部の弘前駅―土手町―弘前公園のラインを太い幹線公共交通軸として鉄道やバスなどの運行本数を増やし、中心部と中心部以外で特に需要が多い青山・宮園、城東、弘前大学、城西・樋の口の四つの地域拠点との間や、地域拠点相互のアクセスも向上させる。
 一方、市街地と田園部との境界には拠点を設け、基本的に拠点で乗り継ぐことになる。田園部内は定時定路線ではなく予約型乗合タクシーの導入が想定され、利用者に一定の負担を強いるが、予約がない時は運行をしないなど効率的な運行ができるため、サービスが維持できる。
 同市に関連するバス路線(14年度時点)は102路線・系統。そのうち他市町村との連絡路線や観光路線などを除く74路線・系統が再編の対象だ。まずは赤字幅の大きい、薬師堂、城東南、岩木庁舎、浜の町の4方面で検討に着手しており、事業者との協議や地域住民との意見交換が行われている。来年度にも策定される計画に記載されれば、おおむね計画期間である5年以内に、実現に向けた取り組みが進められるという。
 需要が少ない地区に導入が想定される予約型乗合タクシーは既に相馬地区で実施済みで、地域住民に定着しつつある。事務局のさまざまな検討では、4方面の再編で市の負担額(赤字補助額)は減少するが、再編に反対する利用者離れを想定した推計では補助額が現状より増加するという結果も示されている。住民の理解を得るための丁寧な説明が必要だ。
 人口減少や高齢化が進む中、将来の公共交通はどうあるべきなのか。利用者とともに知恵を絞り、行政も市民もともに過度にならない程度の負担を引き受けつつ、持続可能な交通ネットワークを維持・構築していくことが重要だろう。

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県内外国人宿泊者数「本県の魅力発信継続の努力を」

2017/3/7 火曜日

 

 県のまとめによると、2016年に県内に宿泊した外国人(延べ人数速報値)は前年比32%増加し、過去最多の14万5370人に上った。日本を訪れる外国人観光客は近年、経済発展が著しい中国からの入り込みを中心に増加しており、地方においても確実にその流れが続いていることが実感できる数字となった。
 本県では、台湾から訪れる人たちが他を圧している。国・地域別で見ると、台湾が最多の5万150人(前年比64%増)、次いで韓国の2万4590人(同27%増)、米国1万9910人(同1%増)、中国1万7000人(同50%増)と続く。
 台湾の観光客増加について、県は15年10月に県内ロケを行い、同11月に台湾で放送、人気を博した連続テレビドラマの影響が大きいと分析している。紅葉やリンゴ園などの風景がふんだんに盛り込まれたこともあり、秋季の観光客が大幅に増加。放送翌年となる16年10月は前年比59%増の1万6620人、同11月は同117%増の8670人が本県に足を運んだという。また、函館、仙台両空港に昨夏、LCC(格安航空会社)の台湾定期便が就航したことで東北・道南を周遊しやすくなったことも追い風となった。
 台湾は本県の基幹産業であるリンゴについても輸出先として圧倒的なシェアがあり、日本へ親しみを感じる人が多い地域としても知られる。台湾の人には珍しい雪景色やスキーなどの冬季レジャーを楽しむことができる点も本県観光の魅力の一つに数えられるだろう。
 県はさらなる誘客促進に向け、現地旅行会社などに対するトップセールスのほか、個人客へのPRに注力する構えだ。また個人客が旅行を決める情報源はインターネットが多いことから、インターネット交流サイト(SNS)なども積極的に活用していくとしている。
 団体から個人へ、観光のトレンドは国内外を問わず、個人客観光にシフトしていく傾向がある。インターネットで情報収集する個人客は情報の新鮮さに目ざとい。細やかな情報発信で外国人観光客の心をつかみたい。
 今回は同年の県内宿泊者数(延べ人数、速報値)も観光庁の統計で分かった。本県に宿泊した人は462万8690人で、前年比7・5%減だった。県は桜の早咲きや8月の台風上陸の影響のほか、弘前城曳(ひき)屋(や)工事、B―1グランプリ(十和田市)開催など、15年にあった大型観光イベントの反動減と分析した。
 一過性のものであると思いたいが気になる数字だ。東北では冬季・夏季の国民体育大会が行われた岩手県を除き、各県とも5%から10%ほど前年よりも減少した。国内観光が減退傾向にあるとしたら、なおさらインバウンド観光が重要性を増すことになる。本県の魅力を海外に発信する努力を続けたい。

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雇用対策「県外流出抑える取り組みを」

2017/3/4 土曜日

 

 2018年春に卒業を予定する大学生らの就職活動が本格的にスタートした。面接や筆記試験などが解禁される6月1日以降には事実上の内定が出る見通しで、学生にとっては3カ月間の「短期決戦」となる。
 県内でも弘前大学で合同企業説明会が開かれ、学生延べ約1000人が参加。地元や大手などの企業211社から業務内容や福利厚生などについて説明を受け、理解を深めた。
 人手不足を背景に、全国的に企業の採用意欲は強い。県内も雇用環境は改善傾向が続いており、1月の有効求人倍率は1・23倍で過去最高を更新し、全国順位も過去最高の35位に浮上。全国同様に「売り手市場」となることが見込まれている。
 売り手市場は、学生にとっては選択肢が広がることから歓迎されるべきことだろう。逆に企業側からすれば厳しい状況で、大企業の一部では大卒の初任給を引き上げる動きも見られる。優秀な人材を確保するため、企業間の競争がさらに激化する可能性もある。
 中小企業がほとんどの本県や地域にとっては、待遇面で大企業と渡り合うことは難しいだろう。かといって、急激に業績が上向くことなど望むべくもない。
 青森労働局が発表した今年3月卒業予定者の職業紹介状況(1月末現在)を見ると、県外就職を希望した大学生は県内のほぼ2倍。高校生は県内希望が県外を上回ったが、内定率は県外が高く、未就職者が県外志向に転じる可能性もある。将来を担う若者の県外流出を少しでも抑えるため、知恵と工夫が求められている。
 県は、工業高校の生徒の過半数が県外就職していることに着目し、地元定着に向けた事業の経費を新年度予算案に盛り込んだ。県内の求人情報を予定も含めて早期に発信し、県内企業を就職先の選択肢としてもらうことを目指すという。
 中小企業にとっては業績や採用の見通しが立てにくく、求人票の提出が首都圏の企業などに比べて遅れがちな傾向にある。人口流出を防ぐためにも、各企業には少しでも早い提出に向けてなるべく努力してもらいたい。
 県の事業ではほかに、製造業や建設業の採用予定企業を対象に、製品や技術を紹介する「あおもりものづくり企業展示フェア」を6地区で開催。選考・採用内定開始を前に工業高校生を招き、地元企業の魅力をアピールする場を設ける。ガイドブックやホームページで、ものづくり企業の情報発信にも努めるという。
 まずは工業高校生を対象とした取り組みだが、この事業を就職による県外流出を防ぐための第一歩としたい。県や労働局、また学校側や企業側がそれぞれ知恵を出し合い、さらに大きな取り組みとなるよう願う。

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縄文時遊館の増築「遺跡群の価値共有する契機に」

2017/3/3 金曜日

 

 青森市にある国特別史跡・三内丸山遺跡に隣接する縄文時遊館で増築工事が進んでいる。企画展示室などを整備するもので、2018年11月の開館を目指している。同館を運営する県教育委員会は企画展を積極的に開催する方針で、世界文化遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」の価値を広く共有していく契機になることを期待したい。
 縄文遺跡群の登録をめぐっては、本県など関係4道県でつくる世界遺産登録推進本部(本部長・三村申吾知事)が、今年夏の文化審議会で国内推薦候補に選ばれることを目指している。今年で5度目の挑戦となり、遺跡群の価値を証明する上で構成17資産が必要かつ十分な存在であるとうまく説明できるか否かが最大の焦点となりそうだ。
 この点は遺跡群を4道県でくくったことに直接関係しており、遺跡群の価値を示す上でまさに生命線。同本部は、候補選定から漏れるたびに改訂に改訂を重ね、説明性を向上させてきた。今度こそは審議会を納得させる内容になると強く信じたい。
 ただ、登録を実現させるためにはもう一つ重要な点があるようだ。それは、遺跡が存在する地元で「遺跡を守る」という合意形成がなされているか否かという点だ。今年1月、東京都内で開かれた遺跡群PRの国際フォーラムで、文化庁の文化財調査官が強調していた。
 この点がなぜ問われるのか。それは価値ある遺産は当然、将来も長きにわたり受け継がれなければならず、登録された後にそのことを保障するのが地元の意志なのだ―ということなのではないか。
 「遺跡を守る」という合意形成が広くなされるためにはまず、遺跡群の価値を知ってもらわなければならない。その意味で、縄文時遊館の役割は非常に重要だろう。これまでは、三内丸山遺跡から出土した重要文化財約1960点すべてを一括して保管することができなかったが、地下に収蔵庫を新たに整備することで可能になるという。
 それに伴ってさまざまな企画展を開催することもでき、一般市民に遺跡群の価値を知ってもらう機会を増やすこともできるはずだ。専門的な知識を持たない人にも縄文文化を知ることの意義を分かりやすく伝えてくれることを、県教委には求めたい。
 遺跡群の世界文化遺産登録を目指し、国会議員レベルでは既に議員連盟が発足。今度は本県議会でも議連立ち上げに向けた動きが見られている。市民の代表である各層の議員が機運醸成の旗振り役を務めるのは、もちろん意味がある。ただ、願わくば、同じような意識が一般レベルにまでもっと浸透する必要があるのではなかろうか。そのためにも、縄文時遊館が遺跡群の価値を共有できる場となるよう願っている。

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国有地払い下げ「関係者は真実を明らかにせよ」

2017/3/2 木曜日

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)に大阪府豊中市の国有地が格安で払い下げられていた問題が、国会などで厳しい追及を受けている。問題の国有地は学園が小学校を開校するとして、鑑定価格9億5600万円の2割に満たない1億3400万円で購入した。政府は、差し引かれた8億2200万円は埋蔵廃棄物の撤去費用分としているが経緯の詳細を説明し切れておらず、この取引が国有財産売却に際して「適正な対価」を求める財政法に抵触しないかが問われている。
 確かにこの問題は疑念を抱かれる条件がそろっている。報道によると、国側は衆院予算委の質疑で、国有地のどの部分からどのような埋設物が出たかなどの詳細は「把握していない」と答弁できなかった上、売却後の土壌撤去に関する野党側の調査要求に対しても「確認する義務はない」と拒否。売却価格に関する公表記録は同じく野党が明らかにするよう求めたが「既に廃棄して残っていない」との回答だ。
 「把握していない」「義務はない」「残っていない」と責任逃れとも思われる姿勢では疑念を晴らすことはできない。これらの答弁では国民が納得することはあるまい。不自然な売買契約とその後の経緯について、深まる疑問に誠実に答えていく姿勢が国には求められる。
 この問題に関しては、森友学園と安倍晋三首相、同学園が開校する小学校の名誉校長を務めた昭恵夫人との関係も取り沙汰されている。昭恵夫人は既に名誉校長を辞任しており、安倍首相自身も「関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」とまで断言し、学園との個人的関係や国有地売却への関与を否定している。
 しかし、同学園については、その政治性がうかがわれる教育内容についての批判が強まってきている。学園が大阪市内で運営する幼稚園で、園児に「安倍首相頑張れ」などと言わせる教育を行っていたことが判明。さらには「安保法制国会通過良かったです」「日本を悪者として扱う中国、韓国が心を改め、歴史でうそを教えないようお願いします」とも園児たちに言わせていた。これは特定の政党を支持する政治教育を禁じた教育基本法に違反する恐れがあるという。
 園児たちに言わせていた内容は、未就学児にとっては理解不能であろうが、子どもの頃からの刷り込みで差別感情を増大させる危険性がある。子どもたちが成長し、状況を理解できるようになり、そこで初めて自ら主張すべき考えを、大人の一方的な感情で刷り込むことは好ましくない。
 国有地の売却問題に加え、学校法人・森友学園の教育の在り方、そしてこの学校法人に対する安倍首相の政治家としての関わり方、この問題に問われているものは多い。

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