社 説

 

日ロ首脳会談「長期的視野で領土問題解決を」

2017/4/29 土曜日

 

 安倍晋三首相は27日、ロシアのプーチン大統領と会談した。共同記者会見でプーチン大統領は、北方四島での共同経済活動に向け、夏に官民の調査団が日本から訪問するとし、北方四島への元島民の墓参に関しては、航空機の利用で合意したことなどを公表した。今回の会談により、北方領土問題の解決に向けた具体的な協議をスタートさせたと言えるが、日ロ間の領土問題に対するスタンスの違いを改めて垣間見るものでもあり、その解決に向けた道筋はやはり、長く険しいものになるだろうと予感させる。
 日本側は、今回の会談で、北方領土問題の解決に向けて「重要な一歩」と位置付ける共同経済活動の具体化での進展を目指した。会談冒頭で、安倍首相は共同経済活動の協議開始で合意した昨年の首脳会談に触れつつ、「両国の関係が着実に前進していることを評価したい」と述べた。プーチン大統領も「この数カ月間でかなりの進展が見られる」と語った。
 交渉の進展に期待感を持たせる発言で会談の幕を開けたが、実際の領土問題交渉は昨年の会談以降、停滞している。そのため、安倍首相は突破口として共同経済活動の協議入りに踏み切った。北方四島に日本の資本が入り、人や物の交流が盛んになれば、領土交渉前進に向けた環境が醸成されていくという考えによるものだ。極東地域での経済協力プランにはロシア側も積極的だ。官民の調査団の派遣を皮切りに北方四島での日本企業による経済活動が活発化すれば、ロシア側が態度を軟化させることもあるかもしれない。しかし、共同経済活動について、日本側は日ロ双方の法的立場を害さない形で実現させたい意向だが、ロシア側の態度は硬く、ロシア法に矛盾しない条件に基づいてのみでの実施を主張するなど、双方の隔たりは大きい。
 さらにこうした課題をクリアし、経済活動が進展しても、それだけが先行しては、結果としてロシアの主権を追認するだけのものとなりかねない。日本が目的とする領土交渉の前進にとっては、かえって逆効果になる懸念もある。経済協力の進展は、領土問題の解決にとってもろ刃の剣であることを関係者は肝に銘じなければならない。
 元島民の墓参については、高齢化が進んでいることもあり、今回の合意は歓迎できるものだ。墓参は6月に行われる予定で、ビザなし渡航の出入域の拠点を増やすことも申し合わせており、経済活動と併せ、こうした民間交流をさらに積極的に進めることで、ロシア側との信頼関係の醸成に努められればと思う。
 いずれにせよ長年にわたる北方領土問題が一朝一夕に解決することはない。今回、少しでも開いた窓をさらに開くには粘り強い交渉とさまざまな交流による信頼醸成が不可欠だ。関係者の不断の努力を望みたい。

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遭難事故「春に多発傾向、注意を」

2017/4/28 金曜日

 

 山菜採りなどによる遭難事故は例年、春のシーズンが秋を上回る傾向にあるという。県がまとめた直近5年間の発生状況をみても春は平均24・4件で、秋の12・8件と比べるとほぼ2倍と多くなっている。今年は雪解けが早いため、入山時期も例年より早まる可能性があり、シーズンが長くなる分、遭難事故の多発が懸念されている。十分な注意が必要だ。
 2016年は春に23件、秋には13件と合計36件の遭難事故が発生。遭難者は春が25人、秋が13人の合計38人で、直近5年間の平均発生件数37・2件、遭難者数40・4人と比較すると特に多いわけではないが、亡くなったり、行方不明になった人は春に5人、秋には6人おり、通年での11人は過去5年で最も多かった。
 遭難は山の奥に入り込んで迷うケースだけではなく、転落や滑落、体調不良、疲労や病気という要因もあり、世代を問わず注意が必要だと言えよう。ただ春のシーズンに着目すると、過去5年の遭難者数128人のうち116人、約91%が60歳以上の入山者。死亡したり、行方不明になった21人は全員が60歳以上で、やはり高齢者の遭難事故が目立つ。近年は高齢者といっても若く元気な人が多いが「自分は大丈夫」という過信は禁物だ。
 また昨春の死亡者等5人のうち4人は6月にタケノコ採りに出掛けての遭難であり、タケノコ採りは特に注意が必要。普通の山菜は道路沿いなど比較的見晴らしのいい場所に多いが、タケノコは見通しの悪い斜面に生えていることが多く、道沿いに歩くのではなく斜面を登って行くため、現在地の把握が難しくなる。新緑の時期は草木も生い茂っており、ひたすら地面だけを見つめて熱中してしまえば、顔を上げた時には方向感覚を失っている―という事態も十分考えられる。
 県や県警などの関係者はこうした情報を共有し、毎年遭難事故防止対策を展開している。今年も新たなチラシを作成したほか、各種媒体を通じての広報活動、登山者に対する指導や山岳パトロールの強化なども。事故防止の取り組みに決め手はなく、日ごろから地道な活動を続けていくことが重要だろうが、必要な情報が入山者にしっかり届いているかを確認し、内容が注意を喚起するものになっているかどうかも意識してもらいたい。
 何よりも重要なのは入山者それぞれの意識だろう。天候の悪化に対応できるような服装や携帯電話や携帯食の準備はもちろん、家族に行き先や帰宅予定時間を伝えて出掛けることで万が一の事故の際も早期発見の可能性が高まるという。
 豊かな自然に囲まれた本県では山菜採りや登山などアウトドアでの活動を楽しむ人が多い。これから本格的なシーズンに入るが、春の遭難事故も5~6月に集中している。入山者には常に安全を最優先に、準備を万全にすることで春の山菜シーズンを楽しんでもらいたいと思う。

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県立高校再編「県一丸の少子化打開策を期待」

2017/4/27 木曜日

 

 2018年度以降の県立高校再編をめぐって県教委は26日、同年度から5年間を計画期間とする県立高校教育改革推進計画第1期実施計画案の内容を明らかにした。津軽地方では、五所川原工業と金木、鶴田、板柳4校の募集を停止した上で統合、五所川原工業に普通科を設置し西北地区統合校とする。このほか、黒石と黒石商業両校の募集を停止、黒石商業2学科を弘前実業に集約した上で中南地区統合校に。弘前実業農業経営科は柏木農業に集約、弘前工業定時制の募集停止といった内容が盛り込まれた。
 一方で、大学進学などに対応した取り組みを行う弘前など6校を「重点校」、職業教育を主とし専門科目の学習拠点となる五所川原農林など6校を「拠点校」とそれぞれ位置付けた。また中里や木造深浦校舎など地理的事情を考慮した6小規模校・校舎を「地域校」とした。
 長い間、地域と共に歩んできた高校がなくなるという事実を突き付けられた地元関係者や卒業生らの複雑な心情は想像できる。しかし、17年度以降10年間で約3100人の生徒数減が見込まれる本県の状況に対応するため、県立高校再編は不可避であることは事実。学級数減といった措置だけでは限界となっていた。
 今後、県教委は計画案について各地で地区懇談会を開き内容を説明、7月にも正式決定する。県教委側、地元側と互いに譲れない部分はもちろんあるだろう。しかし、ともに納得する道を探り出していかねばならない。
 高校再編に関し、04年に決定した計画では小規模校の校舎化、分校の閉校が盛り込まれた。特に不登校生徒の受け皿となり、指導に成果を上げてきた五所川原東(当時)の校舎化と将来的な閉校という措置に対しては、地元関係者が「存続させる会」を発足させ、存続を訴えるまでに至った。さらに04年当時の県教育長は県議会一般質問で、09年度以降の見通しについて触れ「相当規模の統廃合が必要になる」と今に至る現状を予見していたかの答弁を行っていた。
 04年当時生まれた赤ちゃんは、間もなく高校入試を控える年齢となる。状況は当時から変わっておらず、高校の統廃合は進む一方だ。背景にある少子化の事情もまた複雑である。職場がないと若年層は県外に流出し、県内に残っても晩婚化・非婚化が進む。夫婦でも経済的な事情から多くの子どもを持つことを諦めるケースも見られる。
 こうした問題は県教委だけではなく、県全体で取り組むべき課題であったことは分かっていたはずだ。むろん、県も将来的に本県人口が100万人を割ることを見据え、諸施策に取り組んできたが、社会減と自然減を合わせた人口減少には歯止めがかからない現状である。減少の緩和に向け、県一丸となった打開策を期待したい。

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玄海原発再稼働「地元同意在り方再考を」

2017/4/26 水曜日

 

 九州電力玄海原発3、4号機をめぐり、佐賀県知事が再稼働への同意を表明した。県議会のほか、立地する玄海町の町長と町議会も既に容認しており、地元同意の手続きが完了したことになる。
 同原発は、住民の避難計画が必要な半径30キロ圏が福岡、長崎両県にも及ぶ。福岡県知事と同県の糸島市長は再稼働を容認する姿勢を示したが、長崎県では松浦と平戸、壱岐の3市長が再稼働への反対を表明。いずれの市議会も反対の意見書を全会一致で採択している。
 平戸市長は避難計画について「実効性のある計画を作るために、国が具体的にどう関わるかはっきりしていない」とし、再稼働に「賛成とは言い難い」とする。松浦、壱岐両市長はいずれも「住民に反対意見が多い。理解が得られていない」と再稼働に反対を表明。果たしてこれで、地元同意と言えるのだろうか。
 原発の再稼働に関し、国のエネルギー基本計画では「立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」としている。一方で福島第1原発事故を受け、原子力規制委員会は重大事故に備えて避難計画の策定などを義務付ける自治体を半径30キロ圏に拡大した。
 電力事業者は立地市町村と県の二つの自治体の同意をもって、地元同意とする手法を取っている。新規制基準での原発再稼働同意は4例目となるが、この地元同意の範囲に対する反発が立地周辺自治体から相次いでいる。
 今回は市内全域が30キロ圏に含まれる長崎県松浦市で、市議会が「原発周辺地域の現制度の矛盾について国の責任で改正すべきだ」などとする意見書を採択し、現制度への不満を表明した。
 青函圏では、建設中の大間原発をめぐって、30キロ圏の函館市が無期限凍結を求めており、訴訟にまで発展している。政府と事業者はこうした声や不満を重く受け止め、地元同意の在り方について検討すべきではないか。
 避難計画についても問題は残されたまま。政府は自治体に作成を義務付けてはいるが、計画を審査するようなことはなく、丸投げとの批判も根強い。再稼働よりも先に、実効性のある避難計画が作成されるべきだろう。どうしても「再稼働ありき」との印象が拭えない。
 立地自治体が再稼働の是非を判断しているかのような、現在のプロセスにも問題はないか。佐賀県知事は会見で「再生可能エネルギーは安定供給に課題がある。一定程度は原発に頼らざるを得ない」などと説明したが、これは本来、政府や電力事業者が言うべきことだ。政府にはもっと前面に立ってもらいたい。
 反対や不満がくすぶる中、なし崩し的に原発が再稼働されていないだろうか。いったん立ち止まり、国民が納得できるような再稼働のプロセスを再構築すべきではないか。

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弘前駅リニューアル「街の顔を一層活用したい」

2017/4/25 火曜日

 

 県内各地の観光スポットでは桜の花が咲き誇り、大勢の観光客や行楽客が訪れている。100年目を迎えた弘前さくらまつりが開かれている弘前市は、1年で最もにぎわう時期だ。
 その弘前の玄関口であるJR弘前駅を、JR東日本秋田支社がリニューアルした。2004年12月に新しい駅舎となって以降初めてという。地元を代表する祭りが大きな節目を迎えた年に、観光の街「弘前」を改めてアピールする上で大きな意義があろう。
 駅舎2階の改札前壁面に、弘前の四季をイメージした弘前城や桜、冬の岩木山、弘前ねぷたなどを津軽こぎん刺し模様で描き、ホームにつながる階段やエスカレーター付近の壁面、案内板にもこぎん刺し模様を施した。
 駅はまさしくその街の顔だ。初めて弘前を訪れた観光客が抱く印象に少なからず影響する。そういった意味では、壁面の絵にもさまざま工夫が求められるはず。今回描かれたものも関係者が工夫を凝らしたものであろう。目にした観光客には良い印象を持って弘前を巡ってもらえると願いたい。
 訪日外国人客が年々増加する中、全体に占める割合は小さいだろうが、本県を訪れる外国人も確実に増えている。こうした傾向を踏まえ、JR東は東北6県と新潟県にある在来線・新幹線駅の観光案内所を数年かけて標準化する方針を示している。
 施設に掲げるロゴマークを統一するほか、案内所の名称を英語、中国語、韓国語でも掲示。接客力の向上に向け、日本政府観光局の認定制度に定める「カテゴリー1」(英語での対応、地域の情報提供が可能)のレベル以上を基準とし、未認定の場合は認定を目指してもらう。
 JR東によると、県内は弘前、青森、新青森、七戸十和田、八戸の5駅が対象。標準化の狙いは広域の周遊観光ルートをつくることにあり、今回の取り組みを機に弘前駅が東北周遊の一拠点として、うまく機能することを期待する。
 JR東は東日本大震災以降、復興に向けて東北地方を重視する方針を続けているが、訪日外国人客を誘客する上でも東北の潜在力を高く評価し、弘前など津軽地方にも期待を寄せる。期待の大きさは、5月に運行を始める豪華寝台列車「四季島(しきしま)」の運行コースに積極的に含めていることからも分かる。
 ただ、豪華寝台列車の運行にはJR各社が力を注いでおり、利用客確保の競争は激しい。JR九州の「ななつ星in九州」の知名度は既に全国区。6月にはJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」が登場する。
 こうしてみると、観光振興において駅が果たす役割は小さくない。各自治体、地元の住民が駅の活用をもっと考えてみることも必要なのかもしれない。

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