社 説

 

増える児童虐待「早期発見・予防へ体制強化を」

2018/5/5 土曜日

 

 総務省が「こどもの日」に合わせて発表した15歳未満の子どもの推計人口(4月1日現在)は、前年より17万人少ない1553万人で、1982年から37年連続の減少となった。
 この歯止めがかからない少子化の時代に、憂慮されるのが、増加傾向にある児童虐待だ。保護者らの虐待によって幼い子どもの命が奪われるという痛ましい事件のニュースが全国的に後を絶たない。
 警察庁のまとめによると、全国の警察が2017年に虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した18歳未満の子どもは、前年比約20%増の6万5431人に上った。統計を取り始めた2004年以降、13年連続の増加で、過去最悪を更新した。
 通告内容は、暴言を浴びせられるなど「心理的虐待」が全体の約7割を占めて最も多く、うち保護者が子どもの面前で配偶者に暴力を振るう「面前DV」が6割以上を占めている。
 心理的虐待は、身体的虐待やネグレクト(保護の怠慢・拒否)などの虐待と異なって目に見えにくいため、周りの大人が気づいた時には、うつや強い不安、適応障害など深刻な事態になっていることが懸念されるという。大人が考える以上に子どもへの影響が大きいということを認識すべきである。
 県内の相談件数も増加傾向にある。17年度に6児童相談所で対応した児童虐待の相談は過去最多の1073件(前年度比124件増)に上ったことが県のまとめで明らかになった。相談しやすい環境の整備によって通告が増えたためとみられるが、児童虐待がなくならない現状は深刻と言わざるを得ない。
 虐待の種別では心理的虐待が最も多く、次いで身体的虐待、ネグレクト、性的虐待と続く。相談後の対応は、わずかな面談や情報提供で解決した「助言指導」が922件を占めており、相談環境や支援体制が効果的に機能し早期発見・解決に結び付いているといえる。
 ただ、継続的な通所や家庭訪問を行う行政指導「児童福祉司指導」、子どもを親元から離して保護する「児童福祉施設等入所」、里親委託も増加傾向にあり、決して楽観はできない。
 全国的な関心の高まりによって相談件数が増え、統計を通じて児童虐待の実態が明らかになってきていると考えられるが、まだまだ潜在しているものは多いはずだ。
 児童虐待の事件が起きるたびに、なぜ防ぐことができなかったのかが課題に挙がる。最悪の事態を防ぐためには、できるだけ虐待の実態をいち早く把握し、幼い子どもの命を守ることができるよう地域一丸となって取り組む必要がある。児童虐待の予防、早期発見の仕組みづくりはもちろん、子育てする親を支援するための体制強化も必要だ。

∆ページの先頭へ

クルーズ船寄港「経済効果の拡大図れ」

2018/5/4 金曜日

 

 今年も青森港への大型クルーズ船の寄港が始まった。4月23日のセレブリティ・ミレニアム(9万963トン)を皮切りに、同30日には過去最大級となる全長333メートル、13万7936トンの「MSCスプレンディダ」が寄港。青森市はもちろん、オプショナルツアーで弘前市などへ足を運ぶ乗客も多く、本県の観光・経済振興に確実に貢献していると言える。
 東北地方で最多のクルーズ船寄港を誇る本県。大型船ともなれば1回の乗客は2000人から3000人に上る。この好条件を最大限生かして、クルーズ客のニーズに応え、経済効果を拡大させる取り組みをぜひとも進めてもらいたい。
 クルーズ船の経済効果について、青森地域社会研究所は22隻が寄港した2017年分を約3億5140万円と試算。またクルーズ客の平均消費額は1人当たり9379円で、県外からの日帰り観光客(平均消費額7840円)より消費額が多い傾向にあると分析している。地域経済に与える影響は決して小さくない。
 クルーズ船は事前にスケジュールが把握できるため、県内の商店街や観光地など受け入れ側の対応は十分に可能だと同研究所。簡単な外国語の貼り紙や何を売っている店なのか分かりやすいようディスプレーを工夫するなど、寄港日だけでもクルーズ客を意識することでウエルカムの気持ちが伝わると助言している。
 青森港は青森市の中心部に近く、乗客は下船した後、気軽に歩いて商店街などの散策を楽しめる。このメリットは非常に大きい。徒歩圏内には青森駅もあり、列車やバスを組み合わせることで市外への移動も十分に可能だ。同研究所の調査によると、乗客の3分の1はバス移動などを主とするオプショナルツアーを利用しており、こうしたツアー客はもちろんフリーで動く客への対応も併せてより多くの乗客に県内を観光してもらえる仕組みづくりに知恵を絞るべきだろう。
 今年は昨年を上回る過去最多の25隻が寄港予定。関係者は将来的に寄港100隻、クルーズ客10万人の獲得を目指すとし、施設整備なども着々と進んでいる。
 今春には新中央埠頭(ふとう)の岸壁を約80メートル延伸する工事が完了しており、これまで以上に大型船への対応が可能になった。新中央埠頭には県が今後、税関や出入国管理、観光案内、物産販売などの機能を併せ持つターミナル施設も整備予定で、完成すれば手続きに要する時間が2時間ほど短縮され、県内を回遊する時間が増える。先を見据え、取り組みを強化していくにはちょうどいいタイミングだろう。
 本県を訪れる外国人観光客は急増しており、本県入りのルートも多岐にわたっている。外国人観光客への対応も従前に比べれば随分と進んできたと思う。ただ「おもてなし」に完璧はない。より深くきめ細やかに、訪れる観光客のニーズに寄り添う努力を進めていってほしい。

∆ページの先頭へ

〝不正常〟国会「野党は審議復帰し存在感を」

2018/5/3 木曜日

 

 国会は野党が先月20日から審議拒否を続ける〝不正常〟状態にある。財務事務次官セクハラ疑惑などへの政府・与党の対応に反発してのものだが、審議拒否の間に新たな閣僚のスキャンダルも発覚した。やはり野党は国会で政府を追及する姿勢を示してこそ、存在感が発揮されるのではないか。
 確かにセクハラ疑惑をめぐり、次官の辞任で幕引きを図ろうとする政府・与党の姿勢は許し難い。だからこそ財務省の通り一遍の調査ではなく、野党が国会の場で真実はどうだったのか厳しく追及し、責任を明らかにしてもらいたい。
 長期政権のおごり、緩みかは不明だが、森友・加計学園問題や自衛隊の日報問題、セクハラ疑惑などが逆風となり、安倍政権の支持率は続落している。野党側にしてみれば、攻め手に事欠かない絶好の機会ではないか。
 しかし、審議拒否の長期化は〝超大型連休〟と揶(や)揄(ゆ)されるなど、国民の多くから理解を得ているとは言い難い。また、昨年の衆院選から続く旧民進党勢力の合流をめぐるごたごたも、国民から冷めた視線を向けられる要因となっている。
 実際、時事通信の先月の世論調査では、自民党の支持率が微増の25・3%だったのに対し、立憲民主党が0・2ポイント減の5・1%。民進党は0・5ポイント減の0・7%、希望の党も0・1ポイント減の0・4%と低迷している。
 それでも先月26日には民進党に希望の党が合流することが決まり、大型連休明けには新党を旗揚げする運びとなった。双方から離脱者が相次ぐ厳しい状況ではあるが、一日も早く国会審議に復帰して新党の存在感を発揮してもらいたい。
 一方、〝数の力〟で働き方改革関連法案の審議入りを決め、2日も一部を除く野党欠席のまま衆院厚労委で実質審議を行った政府・与党。数々の問題や疑惑を抱えていることから今国会の会期を延長する考えはなく、来月の会期末までの同法案の可決・成立を目指している。
 ただ、国会運営が横暴との批判をかわすため、加計学園問題をめぐって柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)の参考人招致を行う方向だ。安倍晋三首相が出席する予算委集中審議にも応じる考えで、背景には野党の審議復帰への呼び水にしようとの狙いがある。
 さらに柳瀬氏は、これまで記憶にないとしてきた学園関係者との首相官邸での面会についても認める方向だという。
 立憲など6野党は柳瀬氏の参考人招致ではなく証人喚問を要求してきた。ただ、審議拒否の長期化が野党批判につながる可能性もあり、政権側の対応を見極めながら慎重に判断する構えだ。
 繰り返しになるが、野党は早期に審議復帰すべきだ。あらゆる機会を捉えて政権を追及してこそ、来年の統一選や参院選に向けた展望も開けると考える。

∆ページの先頭へ

憲法記念日「改正の是非を考えたい」

2018/5/2 水曜日

 

 3日は憲法記念日。日本国憲法が施行されてから71年目となる。安倍晋三首相(自民党総裁)は9条を含む憲法改正の実現に意欲を見せているが、年内の改憲発議や目標とする2020年の新憲法施行は到底見通せない状況だ。
 同党憲法改正推進本部は9条改正について、安倍首相の提案に沿い、戦争放棄を定めた1項と戦力不保持を定めた2項を維持し、「9条の2」を新設して自衛隊を明記する方針を固め、条文化作業を進めている。
 先に開かれた党大会で安倍首相は「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうではないか。これこそが今を生きる政治家、自民党の責務だ」と呼び掛け、改憲実現に強い決意を表明。9条改正について「敢然とこの使命を果たし、新しい時代をつくり上げていこう」と強調した。
 だが、自衛隊イラク派遣部隊の日報問題や、幹部自衛官が民進党議員に暴言を吐いた問題をめぐり、シビリアンコントロール(文民統制)が機能しているのか疑問符が付けられた。さらに、混乱が収まりそうにない「森友・加計問題」、財務省の決裁文書改ざんと福田淳一事務次官のセクハラ辞任などが相次ぎ、「改憲をやろうと内輪で盛り上がっても、世間の人はどう思うか」(地方議員)というのが現状だろう。
 しかし、先送りされそうだからといって、議論そのものまで先送りしてしまってもいいのだろうか。長く続いてきた自衛隊の違憲論争に、いい加減決着を付けたいとも思う。
 時事通信の2月の世論調査で、9条改正について尋ねたところ、「2項を維持した上で、自衛隊の存在を明記すべき」が35・2%で最も多かった。次いで「9条を改正する必要はない」が28・1%、「2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化すべき」が24・6%となった。
 自衛隊の存在に関し、6割近くが何らかの改正が必要と考えていることが分かる。日報隠蔽(いんぺい)などさまざまな問題が明るみになる前の調査ではあるが、国民の中の潜在的な意識を表しているといっていいのではないか。
 自民党案については、世論調査にもあるように改正する必要はないとの批判があるし、改憲派からは2項を削除すべきで不十分だとか、20年の新憲法施行というタイムスケジュールありきとの批判もある。ただ、こうした議論が噴出することは歓迎されてもよいのではないか。
 憲法を改正するためには、18歳以上に投票権がある国民投票で、有効投票数の過半数の賛成が必要となる。国民的議論が不可欠なことは論をまたず、機運醸成も求められる。憲法記念日を、この国の憲法の在り方などについて改めて考える機会としたい。

∆ページの先頭へ

北朝鮮問題「融和ムードにも冷静な対応を」

2018/5/1 火曜日

 

 北朝鮮の最高人民会議常任委員会は30分の時差がある南北の時間を統一し、標準時をソウルに合わせることを決めたという。4月27日の南北首脳会談で金正恩朝鮮労働党委員長は「時間から先に統一しよう」と発言しており、有言実行と行動力をアピールした格好だ。「日本と対話する用意がある」とも表明しており、拉致問題解決への糸口を探りたい。
 南北首脳会談では韓国の文在寅大統領と金委員長が「板門店宣言」に署名し「完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島の実現を共同目標にする」と明言した。ただ、非核化への具体的な措置や手順に触れられていないため、この時点では努力目標であり、実効性については不透明との見方をするしかなかった。今回の標準時変更は、金委員長の〝本気〟を示す一つと映る。
 安倍晋三首相が29日に行った文大統領との電話会談で、南北首脳会談の内容が次第に見えてきた。文大統領は日本人拉致問題を提起したことを報告したほか、自身が日朝間の橋渡し役になる意思を伝えたという。ただ、拉致問題に関する金委員長の反応については、日韓両政府とも詳細を明らかにしていない。
 つい半年ほど前まで、弾道ミサイルの発射や地下核実験を繰り返し、威嚇してきた金委員長の豹変(ひょうへん)ぶりが不思議でならない。経済制裁による国内情勢への影響や国際社会からの孤立を恐れてのことなのか。拉致被害者の再調査を日本に約束しながら核実験などを行い、日本政府が独自制裁を科すと、一方的に合意を破棄した過去もある。
 こうした状況から考えると、現在の行動は、今月中にも行われる見通しの米朝首脳会談に向けた一時的なパフォーマンスなのではないかと思え、安易に信用するわけにはいかない。文大統領との電話会談後、拉致問題に対する金委員長の返答について安倍首相が「詳細を紹介するのは控える」と話したことが、日本にとって厳しい反応を示したためではないか、拉致問題を外交カードに日本の経済支援を引き出そうとしているのでは―などの憶測を呼んでいる。
 「日本と対話の用意がある」と伝えられても、このような状況では拉致被害者の家族に期待を抱かせるに至るものではない。拉致被害者横田めぐみさんの弟拓也さんは「具体的に被害者を帰すことがない限り、楽観的な評価はできない」としたのも当然だ。
 南北、米朝の首脳会談が新しい一歩であるのは間違いない。ただ、トランプ米大統領は首脳会談の行方を「予測困難」と表現し「成果が出なければ退出する」とも語っており、米朝首脳会談次第で日朝対話も暗礁に乗り上げかねない。拉致問題を抱える日本政府には南北の融和ムードなどに惑わされぬ冷静な分析と対応が求められる。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 6 7 8 ... 72

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード