社 説

 

違法残業「長く活躍できる環境整備を」

2018/8/30 木曜日

 

 青森労働局が2017年度に長時間労働が疑われた県内226の事業場を監督指導した結果を発表し、全体の58・4%に当たる132事業場に違法な時間外労働が確認されたことが分かった。
 さまざまな情報から長時間労働が疑われる事業場、過重労働による労災請求があった事業場が対象とはいえ、違法な時間外労働が確認された割合の58・4%は全国平均45・1%を上回っており、本県で働き方改革が進んでいない現状が浮かび上がる。賃金不払い残業や過重労働による健康障害防止措置を取っていないなど、何らかの労働基準関係法令違反があった事業場は184事業場、全体の81・4%という高い割合を示した。各企業が真剣に対応を考えるべき課題だろう。
 今回の違法な時間外労働時間を詳細に見ると、過労死ラインとされる月100時間超の違法な時間外・休日労働があったのは82事業場、2~6カ月続くことで過労死ラインとなる月80時間超は109事業場に上る。月200時間超という事例も1事業場あった。もともと他の都道府県と比べて年間の労働時間が長いとされる本県。労働者が健康を損ねる事態となっていないか懸念される。
 監督指導された事業場を規模別で見ると、従業員9人以下が59事業場(26・1%)、10~29人が68事業場(30・1%)で、両者を合わせると半数を超え、従業員が少ないほど長時間労働につながりやすい傾向がうかがえる。業種は製造業をはじめ、運輸交通、建設、商業、教育・研究、接客娯楽と多岐にわたり、業種を問わず、どの業界も自分たちのこととして顧みる必要があるようだ。
 もちろん、われわれ新聞社も同様。長時間労働になりがちな業界であり、労働者の側にも休日が少ない、拘束時間が長いといったことがむしろ「普通」という意識があった。近年、働き方改革の推進が全国的に叫ばれるようになって、テレビ局を含めて、働き方改革に取り組んでいる事例が聞こえてきてはいるが、本格的な取り組みはまだまだこれからだ。
 19年4月からは働き方改革関連法が順次施行され、時間外労働の上限規制の導入や年次有給休暇の確実な取得が求められるほか、正規雇用と非正規雇用の労働者の不合理な待遇差が禁止されるなど、新たな「働き方」への対応が必要だ。
 経営側が責任を持って労働時間を管理し、労働者の健康維持に知恵を絞らなければならないことは言うまでもないが、現場をよく知る労働者の側もより良い働き方について考えることが望ましい。
 人口減少は今後も加速していくことが想定され、あらゆる業種で労働力の確保が課題となっている。戦力となる労働者に長く活躍してもらうための環境整備はますます重要性を増してくる。仕事を見直し、高齢者や女性ら働き手の裾野を広げていくことも視野に入れたい。

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自民総裁選「信頼回復に向けた姿勢を」

2018/8/29 水曜日

 

 安倍晋三首相(自民党総裁)が9月7日告示、同20日投開票の党総裁選への立候補を正式に表明した。
 総裁選には、石破茂元幹事長が既に出馬の意向を表明。野田聖子総務相は最終的に立候補を断念するとみられ、首相と石破氏の一騎打ちとなりそうだ。
 一政党の代表を決める選挙とはいえ、国のかじ取り役に関わる事項である。特に2019年は皇位継承、20年は東京五輪・パラリンピックと重要行事が続く。推移を注視したい。
 総裁選では、憲法改正の進め方、いわゆる「アベノミクス」の評価と経済政策、森友学園に関する財務省の文書改ざん問題や陸上自衛隊のイラク日報問題をはじめとした政権不祥事を踏まえた政権運営の在り方が主な争点と目されている。石破氏は公約で、地方創生と社会保障制度の再構築による消費喚起策「石破ビジョン」などを提唱。一方で、改憲については、他党との議論を重ね、国民理解を得る姿勢を示すにとどめた。
 憲法改正は首相の宿願。秋の臨時国会への自民党改憲案の提出に意欲を見せるが、党麻生派は総裁選に向けた政策提言で、来年夏の参院選前に改憲の国民投票を実施するよう首相に求めた。首相は「基本的な考え方は全く同じ」と応じたといい、改憲がスケジュールありきで進められている印象は強まる。
 今回は、地方の党員・党友投票を基に算出する党員票にも国会議員票と同数の405票が割り当てられ、その比重が増した。地方の姿勢を示す好機である。その一方で、選挙期間中の街頭演説会は全国5カ所。首相のロシア訪問が理由とはいえ、直近で選挙戦となった12年の17カ所から大幅に減ったのは不思議だ。
 政権不祥事について首相は「再発防止に全力を尽くす」と述べ、石破氏は公約に信頼回復策として内閣人事局の運営見直しなどを盛り込んだ。これらへの対応を含む首相の政治姿勢の争点化には「個人攻撃だ」などと難色を示す声も上がるが、争点化の是非以前に、首相が自ら信頼回復への道筋を具体的に示すべきだ。不祥事に関する政権の対応で納得できた人はどれくらいいるだろう。
 政治不信が払拭(ふっしょく)されないまま首相が「次の時代の新たな国造り」を声高に訴えても、説得力を欠く。逆に、不祥事などへの関心をそらそうとしているようにすら映る。一政党の代表を党関係者で決める作業であっても、国民は動向を注視している。
 大島理森衆院議長(本県2区)は7月、通常国会閉会を受けた談話で、政権不祥事について「民主主義の根幹を揺るがす問題であり、行政府・立法府は、共に深刻に自省し、改善を図らねばなりません」と異例の苦言を述べた。政治が国民の信頼の上に成立していることを、忘れてはならない。

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携帯電話料金「利用者目線の見直し期待」

2018/8/28 火曜日

 

 政府が携帯電話料金の引き下げに向けて再び動きだした。総務省は情報通信審議会に料金値下げなどの検討を諮問し、来夏にも一定の方向性が示される見通しとなった。
 背景には、家計負担の増加がある。総務省の家計調査によると、2017年の家計の消費支出総額は292万1476円と10年比で3・5%減ったにもかかわらず、携帯電話通信料は同25・4%のプラスとなる10万250円にまで増加した。
 携帯電話は既に生活必需品となり、今後はあらゆる機器が情報網とつながるIoT(モノのインターネット)の普及も進む。通信料がさらに増大することは避けられそうになく、家計における支出割合は高まることだろう。
 一方で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループの大手3社の18年3月期の営業利益は、合計で3兆2000億円にも達した。菅義偉官房長官は「国民の財産である公共電波を利用して事業をしており、過度な利益を上げるべきではない」と苦言を呈し、携帯電話料金について「4割程度下げる余地がある」と指摘する。
 民間企業の経営に政府高官が言及することは異例と言えるが、携帯料金が政府から狙い撃ちにされるのは今回が2度目。15年には、やはり家計負担の軽減を目的に、安倍晋三首相の指示を受けた総務省がデータ通信量の少ない利用者向けに低料金プランの導入などを求め、大手3社で導入が進んだ経緯がある。
 3年ほど経過したが、家計の負担は軽減していないということが浮き彫りになったとも言えよう。生活スタイルの変化に伴い大量のデータ通信を必要とする利用者が増えたのかもしれないし、そもそも携帯大手が設定する料金が高いのかもしれない。
 ただ、大手3社は全国の基地局の維持費として毎年、数千億円を投資。20年にも商用化される次世代通信規格「5G」にも、巨額の投資が必要となる。仮に携帯料金が4割下げられれば、各社とも赤字に転じ通信網の維持が困難になるとの見方がある。
 それでも、家計負担が増え続ける中で携帯大手は多額の利益を得ている現状に批判は根強い。菅氏によれば、日本の携帯電話料金は経済協力開発機構(OECD)の2倍程度だという。さらに新規参入する楽天は、既存事業者の半額程度に設定する方針を公表している。
 利用者の立場からすれば、料金を引き下げる余地は十分にあるように感じられる。新規参入によって競争が活発化し、値下げが実現することが最良と考えられる。政府主導ではなく、審議会の答申を待たず、携帯大手が利用者にとって分かりやすく、納得できる料金サービスを実現することを期待したい。

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エコファーマー制度「農業の将来のため積極活用を」

2018/8/25 土曜日

 

 環境に配慮した方法で生産する農業者「エコファーマー」の認定者が減り続けている。ほぼ全国的な傾向で、直近の統計(2016年度末)によると、本県は2711人でピーク時の半数以下。しかし、農業と環境保全の両立は時代の趨勢(すうせい)だ。課題を詳細に分析して早急に対策を講じたい。
 農薬や化学肥料を抑えた生産方法を実践するエコファーマー制度は、1999年に施行された持続農業法に基づくもので、本県では2001年度に認定制度が導入された。
 農林水産省によると、エコファーマーの全国の認定者は99年度から増え続け、2011年度末には21万6341人に上った。しかし、翌12年度からは一転して減少。16年度末には12万9389人にまで落ち込んだ。わずか5年で4割も減少した背景に何があるのか。
 県によると、新規に認定を受ける人はいるのだが、更新手続きをしない人がはるかに上回っている。更新手続きは、県の指針に沿って新たな生産方法を導入することが必須条件となっており、高齢の農業者らには負担になっている。
 多くの農業者が厳しい経営を強いられ、通常作業に用いる機器や資材の購入にも慎重になる中、環境保全のための投資に二の足を踏むのも理解できる。新たな生産方法を導入するには多くの作業も求められ、高齢者にはつらいだろう。
 個々の農業者の経営状況や労働環境を踏まえれば、エコファーマーの認定者が減少しても仕方ない面はあろう。ただ、農業の将来を考えた場合に懸念されるのは、環境への対応が浸透しなかったり、後れを取ったりすることで農産物の販路の維持・開拓に悪影響が出ることだ。
 環境に配慮した農業を営んでいる点において、欧州などはまさに先進地。農産物の国際認証規格「グローバルGAP」が欧州で発祥したことなどを考えれば、農業と環境保全の両立は既に文化として根付いているのであろう。
 農産物の輸出入はこの先、ますます活発化し、欧州などとの取引量も増えるはずである。とすれば、本県においても、農業と環境保全の両立を従事者の間にできるだけ根付かせるべきだろう。
 県の担当者が言うように、エコファーマーの認定を受けるには、有機栽培や特別栽培ほどの厳しい基準があるわけではなく、環境に配慮した農業を営むための〝入り口〟として、これからも積極的に活用してよいのではないか。
 農業従事者の全体数が従来に比べて少なくなることは明らかであり、エコファーマーの認定者数が再び大きく増加することは考えにくい。それでも、エコファーマー制度などを通じ、次世代の農業者に環境保全の重要さを伝えていくことは、本県農業の将来のためになることは間違いないと思う。

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リンゴとの複合作物「柔軟な組み合わせで収入増を」

2018/8/24 金曜日

 

 日本一の生産量を誇る本県のリンゴ。津軽地方において、この作物が持つ重要性は今後も変わらないだろう。これからも青森リンゴのブランド力強化に努め、日本一の産地を維持して本県1次産業を引っ張る存在であり続けるよう、磨き上げを図らなければならない。
 だが日本一の産地を維持するには、さまざまな壁が立ちはだかる。販売面では他産地、他果物、輸入果実との価格競争があり、消費者の果物離れなど嗜好(しこう)の変化も看過できない。生産環境で言えば、生産者の高齢化による労働力不足が近年顕在化している。ざっと挙げただけでも対処すべき課題が多いのが現状だ。厳しい環境に打ち勝つには足腰の強い生産環境が必要であり、そのためには生産者の安定した収益確保が大前提となる。
 つがる弘前農協は、リンゴの作業と両立しやすいとして、ピーマンの作付け推進活動を展開している。今年度から、農協が選果や袋詰めなどを担う「共同選果」を本格的に始めたこともあり、出荷者は100人の大台に乗り、3年前と比べて40人の増加をみたという。産地化に向けて関係者も手応えを感じていることだろう。
 リンゴとピーマン。この二つの作物の相性がなぜ良いのか、すぐには思いつかないが、聞けば、なるほどと合点がいく。一般的に津軽地方で、ピーマンは5月下旬に定植され、その後30~40日ほどで収穫が始まる。つまりリンゴの「仕上げ摘果」が一段落する7月下旬からピーマンの収穫がピークを迎えるため、効率よく二つの農作物を育てることが可能だという。
 ピーマンそのものも、露地栽培のため初期投資が比較的少額で済み、栽培もしやすく重量が軽い「軽量作物」なので肉体的負担が少ない―などの利点がある。
 同農協もこうした特性に着目し、2017年度には袋詰めをするための包装機を購入。希望者を募って作業を受託した。今年度から共同選果と個人選果の選択制とし、弘前市内の千年第一りんご施設でリンゴ選果機を活用したピーマンの共同選果を行っている。
 リンゴ生産者はピーマンという別の収入源を持つことで農業経営を安定的に行うことができる。さらに作業員の継続雇用にもつながることにもなるため、その効果は大きいものがあるだろう。
 リンゴとの複合的な栽培で生産者の収入拡大を図る方法としては、ブランド化が期待されるモモの栽培が好調で、県中南地域県民局管内3農協を合計した販売額は昨年産まで3年連続の1億円台を達成している。リンゴ栽培をメインとしながらも、作業効率や価格動向を見極めて“第二の”収入になる農作物の生産を行う柔軟な農業経営が生産者に求められる。関係団体の支援もこうした視点で積極的に行われるよう期待したい。

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