社 説

 

白神山地入山者数「世界遺産の活用、多方面から」

2019/2/22 金曜日

 

 環境省西目屋自然保護官事務所は2018年度の白神山地世界遺産地域と周辺地域13地点の入山者数を、2万4296人と発表した。昨年度より8715人減少したが、全体の約半数を占める西目屋村のブナ林散策道で、入山者数を計測する赤外線式センサーに不具合が生じたそうで、これが減少の大きな要因になったとみられる。
 白神山地への入山者数は、その年によって増減はあるが、1993年の世界自然遺産登録直後の活況に沸いた時期に比べれば、その勢いが減退しているのは間違いない。白神山地が持つ豊かな動植物をはじめとする良好な自然環境の保護が世界自然遺産の最も重要な目的である以上、入山者がただ増えればいいというものではない。ただ地域の活性化という点で考えれば、世界遺産ブランドである白神山地にはもっと多くの観光客に来てもらいたいというのが、この地域に住むわれわれの本音になるだろう。
 その意味で2018年度の入山者数は全体では減少したがルートによっては今後に希望が持てるものがあった。白神山地周辺でも人気の高い暗門の滝は、昨年度の1175人から大幅に増加し、5491人になった。暗門の滝に至る旧遊歩道では、15年に落石が原因とみられる事故が発生。これを受け、西目屋村は16年から仮設歩道を設置しないことを決め、上級者向けコースに転換したが、昨年から第3の滝までの沢に簡易の歩み板を渡して通行しやすい環境を整えた。今回の増加要因の一つと考えられている。
 一口に白神観光といっても、広大な面積の白神山地は、登山、自然観察、観光と、その目的によって見どころとなる場所が異なる。弘前市などから比較的近い暗門の滝へのアクセスが、より簡単になるということは、白神の代表的な観光スポットを気軽に見物したいという観光客のニーズと合致するだろう。今後もしっかりとPRして、暗門の滝への入山者を増加させる対策を講じてもらいたい。
 一方で、暗門の滝と並ぶ観光スポットである津軽峠は16年度から減少傾向が続く。今年度は昨年度より370人減って662人になった。崩岳と白神岳も昨年度より減少したが、津軽峠を含めた3地点は機器の不具合による欠測があり、実際の入山者数より少ないと想像される。こうした機器の不具合もあるだろうが、津軽峠と言えば、白神のブナ林を象徴する存在だった、マザーツリーの倒木が、入山者の減少に影響を与えている面もあるのではないか。倒木は残念ではあるが、これで白神山地のブナ林の魅力が消え去ったわけではない。新たな魅力発信のためのアイデアが必要だ。
 白神山地は昨年、世界遺産登録25年の節目を迎えた。この貴重な人類の宝を守り、生かすための方法をさまざまな角度から考えたい。

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地方移住「さらなる相談機会の充実を」

2019/2/21 木曜日

 

 NPO法人ふるさと回帰支援センターが20日発表した2018年移住希望地域ランキングによると、1位長野県、2位静岡県、3位は北海道という結果となった。ちなみに本県は21位以下でランキング圏外(未公表)だった。県や県内自治体は、移住相談機会の充実に一層努めるべきだろう。
 今回のランキングで最大の特徴は北海道が初のトップ3に入ったことだ。17年の16位から大きく順位を上げたのだが、同センターは、道内自治体が週替わりで出張相談会を開催した「北海道ウィーク」など、積極的なプロモーションが奏功したと分析している。
 また、17年の圏外から18年は10位と躍進した佐賀県は、女性向けセミナーや起業セミナーなどに加え、就職相談の機会を増やしたことで認知度が高まった。
 県内自治体も移住相談に特化した東京事務所を構える弘前市を筆頭に、県も都内各所でセミナーを開催するなど移住促進に取り組んでいる。
 雪国というハンディはあるが、北海道や新潟県(5位)が上位に食い込んでいることを踏まえれば、ランキング入りは十分可能なはず。今後は移住検討者へいかに浸透させるか、その方策に知恵を絞る必要がある。
 カギとなるのは移住検討者の年齢構成だ。18年の同センター利用者約4万人を年代別にみると、最多は30代の28・9%で、次いで40代の21・9%、20代の21・6%となっている。
 まさに働き盛り世代であり、移住先の選択条件(複数回答)も(1)就労機会(68%)(2)自然環境(28・7%)(3)住居(21・1%)―と、就労機会を最も重視する傾向にある。
 ひろさき移住サポートセンターの17年度実績を見ても傾向は同様で、相談者は20~40代が8割を占め、相談内容は仕事に関するものが最も多かった。
 つまり「自然豊かな地方都市で、仕事をしながら子育てをしたい」のだ。言い換えれば、極端な生活スタイルの変化は望んでいない。
 就農希望者は別として、移住を考える際に仕事の有無は絶対条件だ。これを踏まえて県も昨年8月、都内で県内17市町村と合同の移住フェアを開き、仕事や暮らしといった情報を一体的に発信した。
 このフェアでは参加市町村の相談ブースにとどまらず、農業、建設業、介護といった分野を対象にした、就労支援ブースも設けた画期的なものだった。
 自然環境や気候風土はもちろん、働く場所はあるのか、これら疑問にワンストップで答えてこそ、どんなライフスタイルを送るのか考えることができる。
 この移住者目線の取り組みこそランキングアップのカギとなろう。県や市町村には従来の相談業務にとどまらず、積極的な情報発信にも努めてもらいたい。

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ふるさと納税「「地元愛」の行き交う機会に」

2019/2/20 水曜日

 

 弘前市に寄せられた「ひろさき応援寄附金」(ふるさと納税)がここ数年、過去最高額を更新し続けている。年度途中のため2018年度分は確定していないが、現段階で約2億6400万円。17年度の2億3862万2683円を既に上回り、過去最高額を更新した。
 市のふるさと納税は08年度に始まり、当時の額は191万5000円。5年後の13年度は100万円以上増えて321万7000円となったが、大きく伸びたのは14年度以降だ。14年度、弘前城本丸の石垣修理に活用される応援コースを設けたところ、多くの寄付が寄せられた。14年度の総額は4852万1000円まで伸び、17年度には初めて億単位となった。
 市によると今年度は、弘前公園の景観保持や整備に活用される「日本一の『さくら』応援コース」で寄付する人が多かったという。このため22日開会の市議会定例会に市が提出する18年度一般会計補正予算案には、「弘前公園お城とさくら基金」の積立金に5072万8000円を追加することも盛り込まれる。
 18年度は弘前さくらまつりが100周年の節目を迎えたことから、弘前公園の桜が広くPRされたことも大きいだろう。また近年は弘前公園の桜を採用したポスターが首都圏の駅構内に掲示されたり、日本有数の桜の名所としてテレビなどでも取り上げられる機会が増えたりし、知名度がさらに向上したことも背景にあるとみられる。
 日本一と称される弘前公園の桜が、「弘前方式」と呼ばれる独自の剪定(せんてい)技術で支えられている点も「応援したい」という意欲につながっているのではないだろうか。桜を応援するコースには弘前公園内の桜のオーナーとなる特典があり、オーナーが弘前さくらまつりを見に訪れたり、同じ桜のオーナー継続を希望したりするなど、弘前公園の桜への理解と愛着を深めることにもつながっている。
 寄付をした人からは「日本一の桜をいつまでも」「行ってみたいです憧れの土地です」「美しい桜の咲く弘前を大切に守ってください」といった応援メッセージがインターネットを通じて市に寄せられており、地元出身者の「弘前愛」や、弘前の取り組みを応援する「弘前ファン」の姿が浮かび上がってくる。
 ふるさと納税は返礼品で選ばれる側面はあるが、県外で入手しにくいストレートのリンゴジュースや、旬のリンゴも人気だ。政府はふるさと納税の過度な返礼品競争を是正する地方税法改正案を閣議決定したが、弘前の場合は「応援意欲」と「応援に対するお礼」のバランスが取れた取り組みがなされていると言えるのではないか。
 ふるさと納税が「金と物」のやりとりではなく、「地元愛」が行き交う場として今後も活用されることを願う。

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県の子育て調査「産み育てやすい環境整備を」

2019/2/19 火曜日

 

 県が15歳以下の子どもを持つ親らを対象に実施した「子どもと子育てに関する調査」によると、理想とする子どもの数は「3人」という回答が42・3%を占め、最も多かった。ただ、実際に予定する子どもの数は、経済的な負担感を主な理由に、理想を下回る「2人」が最も多い結果となった。
 調査は昨年実施し、15歳以下の子どもを持つ親1026人と20~30代の独身者579人から回答を得た。前回(2014年)調査では理想とする子どもの数は2人が最多だったが、今回は3人が42・3%で、2人の39・3%を上回った。
 ただ、実際に予定する子どもの数は2人が48・1%と約半数を占め、理想と現実に隔たりがあるのが実態だ。予定する子どもの数が少ない理由として最も多く挙げられたのは、子どもの教育に関する負担感(45・7%)。食費や衣服費など子育ての負担感(35・6%)がこれに次ぎ、経済的理由が大きな支障となっていることが分かる。
 本県が子育てしやすい環境かどうかを問う項目では、子育てしやすいと「思う(やや思うを含む)」は21・5%にとどまり、「思わない(あまり思わないを含む)」が35・8%に上った。安心して子どもを産み育てる環境の整備は、まだまだ不十分と言える。
 夫婦共働き世帯が増加傾向にあるものの、安心して子育てできる環境づくりに関しては、企業や社会の仕組みがまだまだ追い付いていないのが現状だろう。
 国は負担軽減を図るため、幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案を決定し、3~5歳児は全世帯、0~2歳児は住民税非課税世帯を対象に10月1日から認可保育所などの利用料を無料にする方針だ。
 また県は、全市町村で年間を通じた待機児童の解消を目指していく。本県の待機児童は年度当初にはゼロになるが、毎年夏以降、産休や育児休暇からの職場復帰に伴って増える傾向にある。働きやすい環境を求め、特定の保育所を希望しているものの、思うようにかなわず、入所していない児童も少なくない。
 年度途中での保育士確保が難しいといった事情もあり、年間を通じた待機児童の解消実現は決して容易ではないとみられるが、子育て環境を整備する上では欠かせない課題であり、早期実現が図られることを期待したい。
 弘前市は、妊娠初期から子どもの就学前までの間、母子とその家族を支援する拠点として「子育て世代包括支援センター」設置を目指し19年度当初予算案に関連経費を計上しており、その効果が注目される。
 今回の県の調査結果をはじめ、子育て世代らの声を積極的に各種支援対策の仕組みづくりに反映させ、活気ある社会の実現に努めてほしい。

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豚コレラ「改めて問われる“危機管理”」

2019/2/16 土曜日

 

 岐阜県で昨秋、国内では26年ぶりに発生した家畜伝染病「豚コレラ」。岐阜、愛知など1府4県に拡大し、発生養豚場での殺処分を経てもなお、終息は見通せない。愛知県田原市の養豚場でも14日に新たな感染が見つかり、感染が確認されていない周辺施設の豚約1万2000頭も農林水産省の要請を受けて追加で殺処分されることになった。
 感染が広がると、拡大防止のため大量の殺処分を余儀なくされる。対象となった養豚場には補償金が支払われるとはいえ十分とは言えないといい、子豚が育つまでは一時的に収入が途絶える。養豚農家のみならず地域経済、豚肉の安定供給にも影響は大きい。感染経路の究明と、拡大防止に全力を尽くさなければならない。
 豚コレラは豚やイノシシの病気。人に感染することはなく、感染した豚の肉を食べても健康に影響はないとされ、消費者も冷静に対応すべきだろう。風評をあおる言動は慎みたい。
 愛知県豊田市の感染養豚場から繁殖用の子豚が出荷された長野、岐阜、滋賀の各県と大阪府で感染が広がった。13日までに感染が確認されたウイルスの型は、1月末に岐阜県で見つかった1例を除き同じだった。同県内でこれまで確認された7例は、周辺の野生イノシシがウイルスを媒介したとの見方が有力だが、なぜこれらとは離れた豊田市でも見つかったのかは分かっていない。
 幸い、豚やイノシシを飼育する本県内の97農場では異常が確認されていない。豊田市の感染養豚場から子豚を仕入れた農場もない。しかし、豊田市の感染経路が未解明の現状では、衛生管理の徹底を含む防疫態勢の強化が必要だ。本県の1戸当たり豚飼育数は全国で最も多い4550頭で、万一の事態になるとダメージは大きい。
 豊田市の感染養豚場は、1月下旬には豚の異常を認識し、愛知県に報告していながら、出荷を続けていた。同県も報告を受けた時点で出荷自粛などを要請していなかった。なぜ出荷を止めず、また止めさせられなかったのか、認識の甘さを指摘されても仕方あるまい。農水省は岐阜県の初動対応の遅れや監視態勢の不備も感染拡大の一因になったとみて、直接指導に乗り出している。
 こうした非常事態が起こるたびに関係機関の連携強化や積極的な情報発信が叫ばれるが、危機管理においてもいいかげんに過去の教訓が生かされていい。今回の事態を招いた原因の検証も不可欠だ。
 豚コレラの封じ込め策として、地元自治体などからは養豚へのワクチン接種を求める声が上がる。農水省は一度接種すると国際ルールに定める「清浄国」ではなくなり豚肉の輸出に支障が生じる―などと慎重だが、手遅れにならないよう迅速な判断も必要だろう。

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