社 説

 

1票の格差「国会は抜本的な改革議論を」

2019/11/22 金曜日

 

 5年ごとの国勢調査が来年10月1日に行われ、2021年春には速報値が判明する見通しだ。人口急減、大都市一極集中という社会構造において、「1票の格差」をどう是正するのか、議論には多くの時間を要するはず。国会は早急に制度改革に着手する必要がある。
 次期参院選をめぐっては、全国知事会が県をまたぐ選挙区の「合区」を早期に解消するよう国会や各政党に申し入れている。合区に反対意見の多い自民党内では、憲法改正によって「参院議員は都道府県ごとに選出する」と明示する案も浮上している。
 ただ、参院を地方代表と位置づけた場合、法の下の平等という基本理念に反するとの指摘もあり、衆院との役割分担を含めた抜本改革の議論を同時に進める必要がある。
 先日、県選出の大島理森衆院議長は本紙などのインタビューで、1票の格差について「根底には人口減少や一極集中という現実がある。その背景にある、これからの地方の、日本国土の全体の在り方という問題は、大きな政治課題だ」と指摘した。
 その上で大島議長は「来年には国勢調査が行われ、衆院は相当な選挙区変動が予測される。参院もそうだろう。衆参とも1票の格差がどうあるべきか議論すべき時期であり、各党各会派がよく勉強して、立法府の在り方まで議論することを期待したい」と問題提起した。
 司法も国会に抜本改革を迫っている。1票の格差が最大3・00倍だった今夏参院選が違憲として、弁護士らが各地の高裁・高裁支部に選挙無効を求めた訴訟の判決が相次いでおり、計14件の訴訟は「合憲」が12件、「違憲状態」が2件。無効訴訟は全国で計16件あり、判決が来月出そろった後、最高裁が統一判断を示す見通しだ。
 このうち「合憲」判決は、格差縮小のための埼玉選挙区の定数増について「格差是正を実現する国会の姿勢を示した」と判断。一方、「違憲状態」とした高松高裁の判決は、定数増を急場しのぎと断じ、国会にさらなる改革を迫った。
 来年の国勢調査で格差は拡大する可能性が高い。格差縮小のための議席配分を続ける限り、地方の議席は減り、大都市圏の議席は増え続ける。現在の社会構造において、場当たり的な制度改正が行き詰まるのは目に見えている。
 国会は国勢調査結果を踏まえた改定作業とは別に、国のありよう、立法府のありようにまで踏み込んだ議論を始めるべきだ。二院制を維持するのか、維持する場合、参院の都道府県枠をどうするのかなど難題は多い。議論の行方によっては憲法改正が必要になるかもしれない。
 衆院議員の任期は残り2年を切り、次期参院選も3年後に迫る。残された時間は少ない。

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移住促進「Uターン者の力を生かしたい」

2019/11/21 木曜日

 

 地方の少子高齢化や人口減少への対応策の一つとして移住促進が注目され、最近は定着した感がある。全国の自治体が工夫した施策を次々と打ち出す中、県内の関係者にも引き続き力を入れることを期待したい。
 東京都内にある弘前市の「ひろさき移住サポートセンター東京事務所」は今年10月、開設から3年を迎えた。開設当初から職員3人が常駐し、首都圏などの移住希望者の相談に応じるなど支援に努めてきた。その結果、3年で相談件数は500件以上に上り、実際に移住した人は60人を超えた。
 相談件数と移住者の人数からもうかがえる通り、移住支援のニーズは確実に存在しており、今後もますます高まるとみられる。内訳を見れば、形態もUIJターンとさまざまで、理由もそれぞれ異なっているはず。幅広いケースに対応できるよう、支援の拠点としてノウハウを一層蓄積していってほしいと思う。
 移住といえば、かつては老後の生活をより有意義にするための一手段といったイメージが強く、「田舎暮らし」を楽しもうという移住希望者も少なくなかった。しかし、昨今の事情はだいぶ異なる。例えば、年老いた親の面倒を見なければならないため、やむを得ずUターンするといった場合も珍しくなくなった。
 それでも、少子高齢化や人口減少の急速な進展に悩む地方にとっては、「戻ってきてくれる人がいれば、ありがたい」というのが正直なところではないか。受け入れる側としては、せっかく戻ってきてくれた人たちに、できるだけ充実した生活を送ってもらいたいとも考える。
 Uターン者にとって、Uターン後の充実した生活とはどんなものなのか。当然、人によってさまざまであろうが、Uターン者にUターンを促進する場により多く参加してもらう―というのはどうだろうか。
 今月29日には東京都内で、弘前圏域の温泉をテーマの一つにした移住セミナーが開かれる予定で、ゲストの一人としてUターンした青森市(旧浪岡町)出身の男性が参加するという。男性は温泉ソムリエの資格を持ち、同圏域の温泉の魅力を説明することになっている。
 この男性は、一度県外に出て本県の魅力を知った一人のようだ。県内で暮らす高校生の頃は温泉に特別興味があったわけでもないようだが、Uターンして地元の温泉の豊かさを実感した。似たような思いを持つUターン者は少なくないのではないか。
 温泉のほかにも県内には人を引き付けるものがたくさんあるだろう。これらの魅力をUターン者ならではの視点で伝えてもらい、新たな移住につなげる―といった好循環をつくることができないか、移住促進に取り組む県内関係者には知恵を絞ってほしい。

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歴代最長の首相「改めて問われる政治姿勢」

2019/11/20 水曜日

 

 安倍晋三首相の在職日数は20日で通算2887日となり、戦前に3回政権を担った桂太郎を抜き、歴代最長となった。経済最優先の路線が底堅い支持を集めるとともに、「安倍1強」体制を構築したことが大きな特徴と言えるだろう。一方で、長期政権の「おごり」を指摘する声も少なくない。
 首相は2006年9月に戦後最年少の52歳で第1次政権を率いた。「戦後レジームからの脱却」を掲げたものの、相次ぐ閣僚辞任や自身の健康悪化もあり、わずか1年で退陣。旧民主党から政権を奪還し返り咲きを果たした12年12月以降は国政選挙で連戦連勝の成績を収め「安倍1強」体制を築いた。1次政権の反省を生かして経済重視を前面に打ち出し、有効求人倍率や堅調な株価などの成果を掲げ、最近も40~50%台の高い支持率を維持している。
 ただ、長期政権ゆえの弊害も目立つ。学校法人森友学園への国有地売却に絡んでは、財務省の決裁文書改ざんが発生。国会を欺く行為にもかかわらず、閣僚が政治責任を取ることはなかった。加計学園問題も含め、野党による徹底追及をかわし続け、結果として国民が納得する十分な説明を尽くしたとは言い難い。
 9月の内閣改造後、わずか約1カ月半で2人の重要閣僚が相次いで辞任に追い込まれた事態も、政権の緩みを印象付けたといえる。
 首相が安定的に政権を運営する一方、残念ながら国会論戦からは緊張感が消えた。世論調査では、安倍内閣への支持率は底堅く推移しているものの、政権に不満はあっても「他に適当な人がいない」という消極的理由が多くを占めている。
 自民党総裁としての残り任期は2年。首相は憲法改正など宿願達成に意欲を示すが、先行きは見通せない状況だ。任期中の解決を目指す北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの北方領土交渉も解決のめどはたっておらず、手詰まり感も漂う。
 ここにきて新たに浮上した首相主催「桜を見る会」の問題をめぐっては、首相の地元後援会関係者らが大勢招待され、全体の招待者数も大幅に増えていることが分かり、野党は「公的行事を私物化するものだ」と攻勢を強めている。
 政府は当初、「問題ない」との姿勢を示していたが、来年の桜を見る会の中止を急きょ発表。問題の沈静化で幕引きを図ろうとしたのかもしれないが、桜を見る会の前日に地元関係者を招いた夕食会も含め、公選法違反や政治資金規正法違反に該当する疑いも指摘され、疑念や批判は強まるばかりだ。
 野党側は衆参両院予算委員会の集中審議開催を求めている。どのような形にせよ、首相は説明責任を果たす必要があろう。史上最長の首相であればこそ、改めてその政治姿勢が問われている。

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3庭園が国名勝へ「津軽の宝、保存活用に知恵を」

2019/11/19 火曜日

 

 国の文化審議会は、弘前市の三つの庭園を名勝指定するよう萩生田光一文部科学相に答申した。津軽特有の庭園の流派として知られる大石武学流で造られた「成田氏庭園」(同市樹木)、「對馬氏庭園」(同市折笠)、「須藤氏庭園」(青松園、同市前坂)で、指定となれば大石武学流庭園の名勝は全部で7件となる。津軽地方で脈々と受け継がれてきた庭園文化を象徴する庭園の数々が、国の貴重な“宝”となるわけで、実に喜ばしい。
 大石武学流は、江戸時代末から近代にかけて津軽一円に広がった本県独自の流派。座敷から眺める「座観」の形式が多く、ダイナミックに石を配し、庭の奧へと鑑賞の軸線を作るのが特徴とされる。流派の様式を踏襲する庭園は、津軽一円に400以上あるといわれる。発祥や由来には不明な点が多いが、作庭技法は代々宗家によって受け継がれてきた全国的にも珍しい流派とされる。
 これまでに盛美園、清藤氏書院庭園(平川市)、瑞楽園(弘前市)、金平成園(黒石市)が名勝指定を受けている。これらの庭園は、富裕層が施主の大規模なものだが、今回は、医師やリンゴ農家の庭として作られた、比較的小規模なものが、選ばれている。
 計算された岩木山の借景や効果的な石を配置しての奥行きある空間の創設、秩父宮雍仁親王の耐寒演習行軍にちなんだ記念堂や記念碑の設置など、三つの庭園にそれぞれの特徴があり、庭としての美しさはもちろん、作庭に至る時代背景などもうかがうことができる大変貴重なものと言えるだろう。先行して指定された名勝と合わせて俯瞰(ふかん)して見れば、大石武学流庭園がなぜ津軽地方で隆盛を得たのか、その変遷や歴史的な背景など、見えてくるものがあるかもしれない。
 この津軽で独自に昇華した庭園文化を後世に残していくため、その保存、活用について地域全体で考え、行動に移していく必要がある。庭園の魅力周知や観光資源としての活用については、取り組みも目立つようになってきた。例えば、黒石市の金平成園では、大石武学流庭園の魅力を広く知ってもらうために、一般公開を春、夏、秋の年3回行っており、多くの人でにぎわっている。平川市の盛美園では同市観光協会が主催し、大型クルーズ船の寄港に合わせて、茶会を開いて好評を博している。弘前市では同流の庭園サミットなども開催された。
 弘前市は、黒石市や平川市とともに広域の庭園巡りのモデルルートなどをまとめたガイドブックを作成している。インバウンドの目が本県に注がれる中、日本庭園は外国人観光客の興味をひく「和」の精神にあふれている。津軽の庭園を国内のみならず、海外の方にも多く見てもらいたい。庭園への関心がさらに高まれば、後世に向けた保存、活用の取り組みが一層深まるだろう。

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プラチナ大賞「産学官民の連携で健康増進を」

2019/11/16 土曜日

 

 弘前大学と県、弘前市が共同で進めている「産学官民一体型青森健康イノベーション創出プロジェクト」が、日本が目指すべき社会に向けた取り組みを表彰する「プラチナ大賞」最高賞の大賞・総理大臣賞に選ばれた。同賞を主催するのは全国の首長や企業経営者で組織するプラチナ構想ネットワークと同大賞運営委員会。元東京大学総長の吉川弘之氏が委員長となり、学識経験者、有識者が審査に当たった。本県のプロジェクトはこうした各方面の有識者に高く評価されたもので、長年の取り組みに敬意を表したい。
 同賞が日本の未来のあるべき社会像として描く「プラチナ社会」は環境問題やエネルギーの心配がなく、雇用があり、あらゆる年代の人が生涯を通じて豊かに生き生きと健康で暮らせる社会と定義されている。今年はプラチナ社会の実現に向け、自治体や企業など47団体から50件の応募があった。その中での最高評価だ。全国に誇れる取り組みだと言える。
 審査では、弘前大学が2005年から弘前市岩木地区の住民の協力を得て続けてきた大規模健診「岩木健康増進プロジェクト」で、15年間に延べ2万人分、2000項目に及ぶビッグデータを取得、それを基に、産学官民の連携でさまざまな疾患予防の研究や新産業の創出につながっていることが評価されたという。
 本県では長年、短命県が当たり前のように受け止められ、健康寿命の延伸という目標も実現可能なものとは受け止められていなかったように思う。だが、弘前大学大学院の特任教授でCOI(センター・オブ・イノベーション)拠点長の中路重之氏が同賞審査会で述べた通り、各方面を巻き込んだ地道な活動を続けてきたことで現在は県内全40市町村が健康宣言をし、約100の小、中学校で健康授業を実施。県の入札の際にポイントが付く健康経営認定制度の認定企業として従業員の健康づくりに取り組む企業は約200社となり、地域や学校、職場で健康づくりのリーダーとなる健やか隊員や健康増進リーダーらの育成も進んでいる。
 近年は全国の大学などと連携した研究や大手企業の大型投資、他の拠点間とのデータ連携も目立つなど、全国から注目されるプロジェクトに成長している。
 大学だけでも、行政だけでも、成果を挙げることは難しかっただろう。産学官民が連携し、一体となって進めてきたことが功を奏した。もちろん、その底に弘前大学と岩木地区の住民による岩木健康増進プロジェクトの地道で継続した取り組みがあったことは言うまでもない。
 本県では男性の平均寿命の伸び幅(2010~15年)が全国3位となり、野菜摂取量も増えるなど目に見える成果が出ている。県民の意識も着実に変化してきた。今後も産学官民の連携をさらに強力にし、県民だけでなく、全国の健康長寿に役立つ取り組みを期待したい。

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