社 説

 

ナラ枯れ被害深刻化「拡大防止対策に全力を」

2020/10/8 木曜日

 

 県内で年々被害が深刻化している、ナラ類の樹木が枯死する伝染病「ナラ枯れ」。2020年シーズン(20年7月~21年6月)の被害は、過去最悪だった19年シーズン(19年7月~20年6月)を上回る可能性が出てきた。
 県によると、8月24日から9月11日にかけての調査で、県内の被害最北だった深浦町風合瀬地区からさらに広がり同町北部(北金ケ沢、関、柳田地区)まで北上したほか、鯵ケ沢、つがる、西目屋の3市町村で新たに30本の被害木が確認された。その後の調査で、弘前、五所川原、中泊の3市町でも新たに確認され、被害状況は調査中という。
 県内のナラ枯れは10年に深浦町大間越地区で初めて確認され、11年以降はなかったが、16年に再び同地区や十二湖周辺で見つかって以降、急速に増加。18年シーズンは2400本余に上り、被害確認範囲も拡大、北上している状況だ。過去最悪だった19年シーズンは前年の約6倍に上る1万4179本が確認されているが、被害は深浦町内にとどまっていた。今シーズンは同町に加えて、新たに6市町村で確認されており、被害地域がさらに拡大しているのは明らかだ。
 被害深刻化の要因の一つは、近年の暖冬傾向にあるようだ。冬期間の気温が高く推移すると、ナラ枯れを引き起こす病原菌を媒介する昆虫カシノナガキクイムシの幼虫が樹木の中で越冬しやすいとされるためだ。また、その後の高温で脱出時期が早まり活動期間が長期化するほか、夏の高温で木が弱って枯れやすくなっていることなどが被害拡大を招いているとみられている。県の調査では、19年シーズンのカシノナガキクイムシの捕獲数は前年シーズンの4倍近くに上っている。これまでに確認されている被害木のほとんどはミズナラだが、同じブナ科であるカシワへの影響を指摘する声もある。
 ナラ枯れの拡大は生態系や森林の防災機能に悪影響を及ぼす。現在は景勝地での大きな被害は確認されていないものの、状況が深刻化すれば景観を損なうため、観光にも打撃を与えかねない。新たに西目屋村でも被害が確認されている状況をみると、世界自然遺産白神山地への影響も懸念されるところだ。ドングリの凶作などを引き起こし、クマの生態にも悪影響を及ぼすといった指摘もあり、影響は広範囲に及ぶ恐れがある。
 すでに確認されている被害木に関して県は今後、切り倒し、ナラ枯れを引き起こす病原菌の媒介昆虫を薬剤でいぶす薫蒸処理をする方針だ。特に、今シーズンに初めて確認された地域の被害木に関しては、確実に駆除するとしている。同時に、被害木の早期発見と全容把握に全力を挙げ、森林の保全のため、関係者一丸となって被害拡大防止に努めてほしい。

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地価「コロナの影響を注視」

2020/10/7 水曜日

 

 県が公表した2020年度の地価調査によると、県内基準地の平均地価(7月1日現在)は全用途の平均変動率が前年度比でマイナス1・1%となり、1992年以降29年連続の下落となった。近年は下落こそ続いているが、青森市や弘前市など3市を中心に価格の上昇地点が増えてきていたが、今年度は新型コロナウイルスの影響で下落幅が拡大する結果に。全国の地価も全用途の全国平均が3年ぶりに下落に転じ、回復基調にあった地価の動向は一変した。
 コロナの影響は上昇や下落の地点数に顕著に表れている。全国の全用途の上昇地点数の割合は前年の32・8%から21・4%に下がり、横ばい地点数も同19・2%から18・5%に減少する一方、下落地点数は同48・0%から60・1%に増えた。年間の変動率が上昇となっている地点も、コロナの影響が広がった1年の後半では横ばいか下落になっている地点が多いと考えられるという。
 本県でも変動率の上昇地点数は激減。住宅地では前年度の17地点から今年度は5地点に減り、商業地の上昇地点は前年度は8地点だったが、今年度はゼロになった。本県では近年、都市部の利便性が高い住宅地や再開発が進む市中心部の商業地で地価の上昇が見られるようになり、変動率上昇地点も増えてきたが、ここにきてブレーキがかかった形だ。
 前年の調査では東京、大阪、名古屋の3大都市圏だけでなく、地方圏の商業地も28年ぶりのプラスを記録するなど、地価は全国的に回復傾向にあった。地価を押し上げる大きな要因となっていたのが、訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加。しかしコロナでインバウンドは激減し、観光地の店舗やホテル需要が弱まったことが地価を直撃した。商業地の全国平均は5年ぶりの下落。本県でもコロナによる営業自粛や祭りの中止などの影響で、商業地は前年度比0・2%下落幅が拡大した。
 今後の動向について、専門家からは判断が難しいという声が多く上がっているようだ。インバウンドの回復はいまだに不透明と言わざるを得ないが、国内では「Go To」キャンペーンをはじめ政府や地方自治体による経済対策が打ち出されている。コロナ禍にあっても、再開発が進む商業地では高い伸びを示した地点もあり、人口が密集する首都圏ではなく地方移住を考える動きやテレワークの推進など新しい生活様式への対応が進むことで、今後の土地の需要に変化が生じる可能性もある。
 本県では近年、地価を押し上げる一因となってきた青森市駅前から新町にかけての再開発が本格化。中でも旧中三青森店跡地に計画されている複合型商業施設「THREE(スリー)」はマンションと商業施設から成る2棟構成の施設で、注目度が高い。オープンは2023年春を予定しているという。こうした動きが地価に与える影響も注視したい。

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学術会議候補任命拒否「政治の不当介入の悪例に」

2020/10/6 火曜日

 

 菅義偉首相が日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否した問題が波紋を広げている。日本学術会議は、行政や産業、国民生活に科学を反映、浸透させることを目的に設立。わが国を代表する科学者機関であり、政府に対する政策提言や科学の役割についての世論啓発などを行っている。国に対し、独立性をもって政策を提言できることが法律で定められていることからも、その役目は非常に重いことが分かる。
 会員は非常勤の特別職の国家公務員であり、日本学術会議法に基づき、同会議が「優れた研究または業績がある科学者」から会員候補者を選んで推薦。首相は推薦に基づいて任命すると定められている。
 学術会議は会員の半数に当たる105人の新会員候補を推薦したが、菅首相は、うち6人を任命しなかった。理由は示されていないという。
 首相が任命を拒否したのは、現行の制度になってから初めてということからも問題の特異性が分かる。政府は、今回の問題に関し、拒否した理由を明確にしていないが、これは通る道理もない。6人は日本学術会議が、その会員としてふさわしい業績や識見を有していると判断し、推薦したものであり、理由も示さずに拒否するなど、同会議への不当な政治介入と指弾されても反論できないような暴挙といわざるを得ない。
 6人は法律や歴史などの専門家だが、国の安全保障政策などについて、批判的な立場の専門家が多く含まれており、政府が今回の拒否理由を明らかにしない限り、こうした「政府の意に沿わない」専門家を恣意的に排除したとみられても反論しようがないのではないか。
 言うまでもないが「学問の自由」は憲法に保障された国民の権利であり、その「学問」のあらゆる分野をリードする専門家の組織である日本学術会議は、高い独立性を確保しなければならない。科学技術は、国の政策に沿えば、必ず発展するというものではない。たとえ国の政策と反するような研究、提言であっても、長い目で見れば、国益に合致するようなものがあることは、歴史が証明している。国に過ちがあった時でも科学者が冷静、客観的な視点を持ってただすべきをただす、そのような環境を構築することが民主主義社会の健全さを計る一つのバロメーターとなるだろう。
 自分たちの意に沿わない者を排除し、耳障りのいい話ばかりを聞くという考えであれば、国民一人一人の多様な価値観の上に成り立つ国家のリーダーとしての資質が疑われる。各種報道の世論調査でも菅内閣の支持率は総じて高く、国民の期待の大きさが分かる。菅首相には耳の痛い話ほどよく聞く度量を持ってその期待に応えてもらいたい。まずは今回の任命拒否の理由を国民が納得できるように説明するところから始めるべきだ。

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21年度予算編成「新首相の手腕が問われる」

2020/10/3 土曜日

 

 2021年度予算編成で各省庁からの概算要求が出そろった。一般会計の要求総額は105兆円に達する見通し。また、別枠で要求できる新型コロナウイルス対策費は現時点で金額を示さない「事項要求」が多く、歳出の膨張が懸念される。年末の予算案取りまとめに向け、菅義偉首相の手腕が問われることになる。
 概算要求では首相肝煎りの地方創生やデジタル化をめぐり、多彩なメニューが並んだ。霞ケ関が意識して「菅カラー」を演出したとも言えよう。
 特に地方創生をめぐっては、内閣府と内閣官房がテレワークを推進する自治体向けの交付金を21年度に創設する。概算要求では150億円を計上した。
 新型コロナの感染拡大を契機に、在宅勤務やテレワークが普及し、人口密度の高い都心部を避けた地方での生活に関心が高まっている。地方に移住してテレワークで仕事をする新たな働き方を後押しし、東京一極集中の是正につなげる。
 新たな交付金は、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県)を除く自治体が対象。サテライトオフィスやシェアオフィスなど受け入れ体制の整備に取り組む場合、事業費の4分の3を支給する仕組みを検討している。
 このほか総務省は過疎地域等持続的発展支援交付金(仮称)として11億6000万円を計上。具体的には過疎集落の生活支援や維持を目的とした集落ネットワーク圏形成事業に5億円、移住・定住の促進を図る事業に3億円を盛った。
 移住・定住関連では地域おこし協力隊の推進に1億8500万円、関係人口を活用した地域の担い手確保事業に2億5000万円などが盛り込まれ、前政権以上に一極集中の是正への意気込みが感じられる。
 過疎対策としては農林水産省が鳥獣被害対策とジビエ利活用の促進に162億円、スマート農業推進対策に55億円、林業イノベーション対策には20億円などを要求。国土交通省は地方の空き家の除去や活用など空き家対策総合支援事業に45億円、地方におけるAIを活用したオンデマンド交通の推進に9億円を要求している。
 一部抜粋ではあるが、地方重視のメニューは百花繚乱(りょうらん)の様相だ。一方で課題となるのは地方財政の置かれる状況だ。
 概算要求では、自治体に配る地方交付税が20年度予算比で約4000億円少ない約16兆2000億円となった。新型コロナの影響で交付税の原資となる国の税収が減少、地方税収も大幅に減る見込みだ。
 地方重視であっても全額国費の事業は少ない。地方負担を伴う事業について、財政が厳しい自治体をどう手当てするのか。肝煎りの政策と感染症対策、そして財政規律という矛盾にどう答えるのか、注目したい。

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大浦光信入部530年「事業を通じ歴史ロマン体感を」

2020/10/2 金曜日

 

 戦国時代の武将・大浦光信(1460~1526年)が1491(延徳3)年、現在の鯵ケ沢町種里町に当たる種里に入部してから、今年はちょうど530年の節目となる。町はこれを記念し、7日に日本海拠点館あじがさわ1階冬の広場で記念行事を開催する。同町のほか、光信の先祖や子孫を通じて、ゆかりがある県内外4市の首長らが一堂に集結し、歴史的なつながりを基に交流の輪を広げていくことを宣言することになっている。光信がつないだ5市町の縁と今後期待される交流が持続し、互いの発展に貢献していくことを願ってやまない。
 南部氏の一族として、久慈(岩手県久慈市)で生まれ育った光信は、当時津軽地方で勢力を誇っていた安東(安藤)氏とのせめぎ合いで、情勢が不安定となっていた種里に、軍勢を率いて入部したとされる。その後に築いた種里城を拠点に勢力を広げた。光信から数えて5代目の津軽為信は津軽統一を成し遂げ、初代弘前藩主となった。その子孫は歴代藩主を務め、光信は弘前藩の始祖として敬われることになった。同町では弘前藩を「津軽藩」と呼称し、津軽家先代当主の義孝さんによる「津軽藩発祥の地」の揮毫(きごう)もあり、町が誇りとするところとなっている。
 鯵ケ沢町とゆかりのある4市とは、光信の出身地である久慈市、弘前藩主の居城弘前城が存在した弘前市、為信の孫の一人で黒石津軽家初代の信英が陣屋を構えた黒石市、光信の祖父金沢家光の居城・仙北金沢城があった秋田県横手市のことである。
 久慈市とは既に2018年10月、歴史的つながりに基づき「歴史文化で結ぶ友好協定」を締結し、歴史や文化、災害時支援などを通じて交流を深めてきた実績がある。距離的に近い弘前、黒石両市はもちろん、秋田県にまで交流の輪が広がっていることを踏まえ、さらなる交流の発展が期待されるところだ。この節目と5首長交流宣言を絶好の機会と捉え、さまざまな取り組みや事業が展開されることを望みたい。
 同町では、今から30年前の1990年、ちょうど節目の入部500年を迎え、この時は武者姿の行列が練り歩く「入部500年祭」が催された。今回は行列こそ予定されていないが、日本海拠点館あじがさわで光信や弘前藩ゆかりの地を紹介するパネル展(2~31日)や、町歴史資料館で津軽家所蔵の品を紹介する特別展「東京津軽家展」(8~31日)がそれぞれ開かれるほか、入部530年記念御城印や御城印帳の販売を予定している。北東北3県にわたる金沢-大浦-津軽の一族による歴史的営みを知り、改めて再認識する機会ともなる。
 興味を感じた人はぜひ、鯵ケ沢町に足を運び、歴史ロマンを体感するとともに後世にこの歴史的事実を伝える一人となってほしい。

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