社 説

 

次期米大統領会見「『トランプ節』変わらず」

2017/1/13 金曜日

 

 「トランプ節健在」―とでも言うべきか。20日に米大統領に就任するトランプ氏が、昨年11月の大統領選後初めて記者会見した。冒頭から自身に厳しい姿勢を取るメディアを批判するなど、攻撃的な発言が相次いだ。
 「一部の報道機関はプロではない」と会見で質問の機会を与えず、記者に対し「おまえの会社はひどい。おまえには質問させない。おまえたちはフェイクニュース(偽のニュース)だ」とののしった。自身に批判的なメディアを排除しようとする言動は、民主主義国の宰相が取るべきものではないだろうし、およそ聞いたこともない。独裁国家でも築こうというのだろうか。
 矛先は、日本にも向けられた。「われわれは毎年、中国、日本、メキシコ、全ての国との間で巨額の貿易赤字を負っている」と通商面での不満を示した。日米は1990年代に深刻な貿易摩擦を抱えたが、既に乗り越えたものと思っていた。対日赤字は対中の5分の1程度だが、日本に対して「損をしている」との思いは拭えないようだ。
 大統領就任時に、環太平洋連携協定(TPP)離脱を表明することを明言しており、その後は自国が優位となるような二国間協定を日本に求めてくる可能性が高いとの指摘もある。そうなればTPP以上に、日本への影響は計り知れないものとなることだろう。
 記者会見以前は、ツイッターで一方的に批判や警告を発信してきた。メキシコに新工場の建設を計画するトヨタもやり玉に挙げられ、今後5年間で米国の事業に1兆円超を投じる考えを表明した。自動車業界ではほかにも、米フォード・モーターや欧米連合フィアット・クライスラー・オートモービルズ、独フォルクスワーゲンなどが相次いで米国への投資を発表した。
 いずれの企業も関係性を否定しているが、次期大統領のツイートと無関係とはいえまい。そもそも、企業を名指しで批判するような人物が超大国の宰相としてふさわしいのか疑問は残る。批判直後に株価が下落するなど、各社は被害を受けている。まさか、想定外だったということはあるまい。
 会見では、この対米投資に触れつつ「私は神が創造した最大の雇用創出者になる」と宣言。一連の批判が国内の雇用悪化を防ぐためだったとみることもできよう。ただ、トヨタにツイッターで「米国に工場を建設するか、国交で巨額の税を支払え」と一方的に突き付けたように、その態度は極めて強権的過ぎるのではないか。
 会見でトランプ氏は「中国、日本、メキシコ、全ての国が過去の政権下より、はるかにわれわれを尊敬するようになる」と強弁した。いつかその言葉が現実になることを願うほかない。

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訪日客最高更新「国際観光振興へ試される地方」

2017/1/12 木曜日

 

 2016年の訪日外国人数が2403万9000人となり、4年連続で過去最高を更新した。石井啓一国土交通相が明らかにしたもので、国・地域別の内訳などの詳細は政府観光局が17日に発表するが、中国と韓国、台湾からの訪日客大幅増がけん引した格好だ。菅義偉官房長官は「ビザ(入国査証)の戦略的緩和や(消費税の)免税拡充など大胆な取り組みを矢継ぎ早に実行したことが大台につながった」と、効果を強調した。
 「20年に4000万人」の政府目標について国交省は15年をベースにして年間15%ずつ伸びれば達成可能との見通しを示す。一方、中国人によるいわゆる「爆買い」は既に勢いを失っており、訪日客の日本国内消費に、これまでのような明るさは期待できそうにない。もっとも恩恵を大きく受けたのは大都市圏の家電量販店など大規模小売店である。もともと恩恵の少ない地方では、頭打ちの日本人旅行客に代わって、何としても獲得したいのが訪日客だろう。
 JTBは17年度、新たな取り組みに着手する。広域の周遊コースを巡る訪日客向けバスツアーだ。東京や富士山、京都などの「黄金ルート」中心の場合、最長で12日間となるため、訪日客の長期滞在を促すものになる。欧州では国境をまたぐバスツアーが人気を博しているといい、JTBは実施に当たり、出資先のスペイン企業からノウハウを得るという。
 計画では黄金ルートのほか、東北や九州などを周遊するコースを設定し、公共交通機関で行きづらい「隠れた名所」も掘り起こす考えだという。これまで空港から近い観光地にとどまっていた訪日客を、地方に誘導する試みであり、こうした動きが加速すれば地方の観光振興に拍車が掛かるだろう。
 では、受け入れる側の態勢はどうか。本県では弘前市をはじめ、早くから訪日客誘致に取り組む地域については、パンフレットや観光案内の多言語化などが進んでいるが、その他地域の観光関連業は現在の経営を維持することで精いっぱいという状況。地域で続いてきた祭りも、少子高齢化を背景に観光資源にする以前に存亡が危ぶまれているものもある。残念ながら訪日客に魅力的コンテンツを十分に提供する環境を構築できないケースがあるのが現実のようだ。
 政府が目標に定める20年は、東京五輪・パラリンピックの開催年。間違いなく競技者以外の訪日も増える。つまり多種多様な文化や考え方などが日本に集中するのだ。もはや一企業・団体で応じるには限界がある。個々の利益誘導という考えを捨て、地域全体で受け入れる幅広い連携が不可欠だろう。それができれば、出遅れを取り戻す新たな動きが生まれる可能性もあるはずだ。目標年まで4年を切った。限られた時間の中でどれだけできるか。地方の本気が試される。

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慰安婦合意「不透明な“不可逆的解決”履行」

2017/1/11 水曜日

 

 韓国・釜山の日本総領事館前に昨年末、韓国の市民団体により、旧日本軍の従軍慰安婦問題を象徴する少女像が新たに設置された。日本政府が駐韓大使らを一時帰国させるなどの対抗措置を講じ、韓国内で反発を呼んでいる。
 戦後70年余りを経てなお感情面での和解が進まない現状と、両国関係の将来を憂慮せざるを得ない。理性的・建設的な事態収拾を望む。
 対抗措置は、少女像設置と、それをめぐる韓国内の対応が、2015年12月の日韓外相会談で発表された、慰安婦問題に関する政府間合意(慰安婦合意)の精神に反する―と日本政府が判断したためだ。大使館や領事館を保護する「特別の責務」を定めたウィーン条約への抵触も即時撤去の根拠としている。
 合意では安倍晋三首相名での「おわびと反省の気持ち」表明、慰安婦支援に向けた日本政府からの資金拠出と、これらを前提にした「問題の最終的かつ不可逆的な解決」を確認していた。ソウルの日本大使館前の少女像は「韓国政府としても、適切に解決されるように努力する」とうたわれながら進展はない。
 釜山については、一度地元自治体が撤去しながら、非難の殺到を受けて設置容認に一転した。韓国政府も、慰安婦合意を「着実に履行する」方針は示しながら、積極的に設置を阻止していない。設置前に日本大使館が設置を認めないよう韓国側に申し入れた際は「民間団体が推進しているので、政府が関与する事ではない」と返答した。世論を口実に、黙認することで反日の動きを後押ししているようにすら映る。
 日本政府は既に慰安婦支援で10億円を拠出し、韓国の財団を通じて元慰安婦に支給する事業が進められている。これに対し、韓国側が合意を着実に履行しているとは到底言えまい。通貨スワップ(交換)協定の交渉中断など経済面を含めた強い内容となった日本の対抗措置には賛否が分かれようが、日本側が抗議の姿勢を示した点では首肯できる。
 韓国世論には慰安婦合意自体への批判が根強いとされる。合意を主導した朴槿恵大統領が、親友による国政介入事件に伴う国会の弾劾訴追案可決で職務停止に追い込まれたことで内政が混乱し、批判の声を上げやすくなったのかもしれない。ただ、韓国国内での慰安婦合意への批判は、一義的には合意した韓国政府に向けるべきではないか。
 朴大統領の後継を選ぶ大統領選を控えた時期であることも影響しているのだろう。野党は慰安婦合意の履行中断や再交渉を要求しているという。慰安婦問題を政争の具にして反日感情をあおり、世論を支持につなげたいのだろうか。しかし、国と国の約束である合意は重い。簡単にほごにするようでは、国際的な信頼低下は避けられまい。

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高校サッカー日本一「青森山田の快挙をたたえたい」

2017/1/10 火曜日

 

 参加48校が頂点を目指して熱戦を繰り広げた第95回全国高校サッカー選手権大会の決勝で、本県代表の青森山田が前橋育英(群馬)を5―0で下し、22度目の出場で悲願の初優勝を果たした。
 青森山田イレブンの快挙はサッカーに汗を流す本県の高校生はもちろん、県民に大きな感動と勇気を与えてくれた。練習で培った力と技、チームワークを随所に発揮して見事頂点に上り詰めた選手たちの健闘をたたえたい。
 同校は2010年1月の第88回大会で準優勝を果たした。その後も着実に力を付け、昨年1月の第94回大会では6年ぶりの4強入りを果たしたが、惜しくも準決勝で敗れた。その苦い思いを成長の糧に、今大会は県大会で20年連続22度目の優勝を果たし全国大会へと進んだ。
 昨年12月に行われた、18歳以下の日本一を争う高円宮杯U―18サッカーリーグ2016チャンピオンシップでは東地区王者として臨み、西地区王者のサンフレッチェ広島FCユースと対戦し初の頂点に立った。
 優勝候補の一角に挙げられた今大会も勢いそのままに初戦の2回戦から準決勝までの計4試合を順当に勝ち上がり、7大会ぶり2度目の決勝に進出した。対戦相手は、前々回準優勝の前橋育英。ともに20度以上の出場を誇る強豪同士の戦いとなったが、青森山田は攻守に持ち前の能力の高さを発揮し、5―0での完全勝利を果たした。
 青森山田と言えば、同校出身で鹿島アントラーズの柴崎岳選手(野辺地町出身)の活躍も選手たちに勇気を与えたはずだ。先に行われたサッカーのクラブワールドカップ(W杯)で、欧州王者レアル・マドリード(スペイン)から2得点を挙げ、海外メディアからも絶大な評価を受けた。
 柴崎選手は、同校が準優勝した7年前の全国高校選手権大会に出場しており、今回は「その記録を超えたい」と生徒たちが頂点を目指してきた。
 青森山田が全国大会の上位常連校となる道のりは決して平たんなものではなかったはずだ。しかし頂点を見据えた一貫した指導態勢や充実した指導陣の確保・育成によって、いまや名実ともにサッカーの名門校となった。
 黒田剛監督によると、今年の青森山田イレブンは「自分たちの力を認識し、学ぶ姿勢が例年より強かった」という。冬の全国選手権で初の優勝を成し遂げた直後のインタビューでは「雪を味方に付けて、北国であることに誇りを持ってプレーした成果」と選手たちをたたえた。
 雪国のハンディを克服して全国の王者となった姿は、県内のサッカー少年少女にも大きな夢と希望を与えた。全国、さらには世界の舞台を目指す子どもたちが増え、県内におけるサッカー競技が一層活発化することも期待される。

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立佞武多運行20周年 「市民の誇り」と心に留めたい

2017/1/7 土曜日

 

 20年という短期間で知名度が全国区になった祭りはそれほどないはずだ。五所川原市の立佞武多が今年、運行20周年を迎える。
 本県のねぷた・ねぶたと言えば、夏祭りの代表格で、弘前の扇ねぷた、青森の人形ねぶたは名前を挙げると県外の人もすぐにイメージできるほど。
 その中で、五所川原市では豪商らが自らの富を競うかのように、背丈の高い特徴的な山車を制作した。これが立佞武多なのだが、いつしか伝統は途絶えた。
 しかし突如、復活を果たした。1996年、地元の有志が明治期のモノクロ写真を手掛かりに制作。天を突くような威容が市民の目に映ったのは約80年ぶりだったというのだから驚きだった。
 そのわずか2年後の98年、市街地での運行が始まった。全国各地に無数の祭りがあっても、山車の顔がビルの屋上より高い所に見える光景は他にないだろう。高さ23メートルの迫力は言葉で表現し難いものがある。
 運行開始当初から注目を集め、10周年を迎えたころには既に広く知られるようになっていたが、同時に多くの課題も浮かび上がっていた。
 かつての青森ねぶた祭がそうだったように、いわゆる「カラスハネト」のような参加者が増加。関係者たちは早急に対策に乗り出し、衣装の適正化などに努めてきた。
 祭りは元来、非日常的な空間を提供し、参加者は蓄積したエネルギーを数日しかない会期に一気に爆発させる。五所川原市がある西北地方は県内でもとりわけ気象条件が厳しいためか、参加者の熱気は独特のものがある。
 「ヤッテマレ、ヤッテマレ」という掛け声は初めての人には乱暴に聞こえるかもしれないが、よくよく理解すれば、地域に眠る潜在的なパワーが表現されたものと捉えることもできると思う。
 80年ぶりに立佞武多を復活させた有志たちは今、それぞれ別な分野で活躍を続けている。しかし、「立佞武多は先人の遺産、宝だ」「祭りはショーではない。地域が守る、地域の財産」など、20年を振り返った各人の言葉からは同じ思いが感じ取れそうだ。
 五所川原市は県内を代表する商都と言われたが、経済環境の変化に伴って元気をなくした時期もあった。そこで、市民に元気を与え、一つに結び付けたのが立佞武多だった。
 立佞武多の成功によって、地元は大きな経済効果を得ることができた。観光が成長産業と位置付けられる今、それを伸ばしていくことは重要だ。
 ただ、忘れてならないこともありそうだ。祭りは地元が愛し、誇りに思ってこそ続く。このことを節目の年に心に留めたい。空白期間を経て再び現れた立佞武多はその重要さを強く訴え掛けている。

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