社 説

 

環ちゃん帰国へ「小児の臓器移植、状況改善を」

2017/3/17 金曜日

 

 心臓の機能が低下する難病を患い、昨年9月に渡米し心臓移植手術を受けた、青森市出身の青山竜馬さん(36)=大阪府吹田市在住=の次女環ちゃん(3)が今月21日に帰国を果たすことになった。環ちゃんの手術に当たっては、3億2000万円が必要で、支援団体「たまきちゃんを救う会」(本部・仙台市)が広く募金活動を展開してきた経緯がある。募金呼び掛けから渡米、手術、帰国と、ここまで1年近く経過した。順調に目的を果たして帰国の日を迎えることを喜びたい。
 救う会によると、環ちゃんは心臓の筋肉の収縮力が弱くなるなどの「拡張型心筋症」と診断されたため、大阪府内の病院に入院、補助人工心臓とペースメーカーを装着したが病状は重く、いつ容体悪化となってもおかしくない状態だった。
 しかし、救う会の呼び掛けと各方面からの善意が実り、昨年8月には目標額の募金が集まり、同9月に渡米。その後間もなくドナー(臓器提供者)が見つかり、心臓移植手術を行った。退院後は米シアトルの滞在先で通院しながら療養。移植に伴う拒絶反応などはなく、体調が順調に回復していることから、帰国することになった。20日には米国をたち、翌21日に成田空港に到着、22日には大阪府内病院に入院する予定となっている。
 1990年代、内臓の重い疾患を患い臓器移植が必要となっても、手術は米国でしか受けられない、しかも高額な医療費や渡航費を要するといった事情から、募金活動が展開され、無事手術を果たしたことがニュースで報道されたことがある。生体肝移植や脳死肝移植が国内で一般的となった今でさえなお、環ちゃんのケースを見る限り、二十数年前と状況は変わっていないように見受けられる。渡米して手術する必要があり、億単位の金額を要するという点だ。
 関係機関がまとめた、小児に対する臓器移植の国内における現状を見ると、さまざまな問題点が指摘されている。年齢を問わず、ドナーが見つかるまでの待機期間が長い上、脳死体からの臓器移植が既に行われている現状にもかかわらず、小児に関しては6歳未満の脳死判定基準がない、15歳未満の臓器提供の意思は認められていなかった、といったことが挙げられる。結果、一部例外を除き、家族は海外渡航し手術を受けることにいちるの望みを託すしかないという現状だ。2010年以降はドナーの年齢制限がなくなり、こうした状況は改善されたというが、それでも状態によっては海外渡航の必要がある状況という。
 年齢を問わず、生きるために必要な手術を受ける機会が国内で制限されることは当然好ましくない。環ちゃんと同じ病気となり、渡米のための募金を呼び掛けているケースはほかにも多数ある。さらなる状況改善を願いたい。

∆ページの先頭へ

残業の月間上限「働き方の改善、加速を」

2017/3/16 木曜日

 政府が導入を目指す残業時間の上限について安倍晋三首相は、経団連の榊原定征会長、連合の神津里季生会長と会談し、繁忙期に例外として認める残業を「月100時間未満」とするよう要請した。労使ともこれに応じる姿勢を見せており、労使交渉で最大の焦点だった残業の月間上限は決着する見通しとなった。「100時間」という基準の妥当性はなお議論が必要ではあるが、これまで事実上、無制限状態だった残業の上限に、一定の基準が示されたことは、働く場の環境改善という点について前進があったと言えるのではないか。
 経団連、連合の合意内容は労使の「三六(さぶろく)協定」締結を前提に残業の原則的上限は現行通り「月45時間、年360時間」と設定。月45時間超の残業は年最大6カ月までなどとし、上限規制に違反した企業に罰則を科すとした。また繁忙期でも「原則的上限に近づける努力が重要」と強調している。
 今回の合意を受け、17日に開く政府の働き方改革実現会議で、首相裁定の残業「月100時間未満」を含む政労使の残業上限規制案が提示され、今月末に策定する実行計画に盛り込まれる予定。その後、年内に労働基準法改正案が国会に提出され、2019年度にも上限規制が導入される見通しとなっている。
 上限についての労使の交渉は難航が続いた。連合の神津会長は2月上旬、月100時間を上限とする政府原案について「過労死認定ラインで到底あり得ない」と猛反発。電通の新入社員の過労自殺問題も念頭に、上限を大幅に引き下げるべきだと主張した。
 これに対し経団連は(1)企業の国際競争力低下(2)人手不足にあえぐ中小企業の経営難(3)規制対象外の管理職への過度な負担―などを危惧。上限は「現実を踏まえて判断してほしい」(榊原会長)と月100時間にこだわった。
 その結果、示されたのが月100時間未満という基準だが、労使とも妥協の産物といえるものだけに反発や不安の声は多い。
 過労自殺した元電通社員の親族は「このような長時間労働は健康に極めて有害なことを政府や厚生労働省も知っているのに、なぜ法律で認めようとするのでしょうか」と批判。一方で特に人手不足が深刻な中小企業や小売業、製造業などの事業者からは先行きに対する不安の声が根強い。
 だが、常態化している長時間労働を是正していく必要があることは論をまたない。今回の合意はあくまで「日本の働き方」のベースの一つにすぎない。労働時間を短縮しながらいかに生産性や業務内容を向上させていくかが問われており、国、企業、労働者はそれぞれの立場から真剣にこの問題に対する答えを導き出さなければならない。

∆ページの先頭へ

「霹靂」の特別栽培「生き残りを懸けた重要な試み」

2017/3/15 水曜日

 

 日本穀物検定協会(穀検)の食味ランキングで、最高評価「特A」を3年連続で取得した県産米のエース「青天の霹靂(へきれき)」の特別栽培に取り組む動きが出てきた。全国のブランド米の競争が年々激化する中で、生き残りを懸けた重要な試みであり、その成果を大いに期待したい。
 主食用米の消費量増加が見込めない中、各産地は新銘柄の開発に躍起となっている。先月発表された穀検による2016年産米の食味ランキングでは、評価対象となった全141銘柄のうち、特においしいとされる「特A」と、おいしいとされる「A」を取得した銘柄は計123銘柄となり、全体に占める割合は過去最高の87%に上った。
 さらに注目すべき点がある。15年産米と16年産米を比較すると、特AとAの変動が大きく、16銘柄が特AからAに評価を下げ、12銘柄がAから特Aに評価を上げたのだ。厳しい見方をすれば、3年連続で特Aを取得した青天の霹靂が、今後も同様の評価を得続けるという保障はどこにもないのである。
 当然、県内の関係者はこのことを十分認識しているはずだ。それ故に、市場デビューして年数の浅い青天の霹靂で、早くも一層の差別化に取り組む動きが出てきているのであろう。特別栽培に取り組もうとしているのは津軽みらい農協で、現時点では同農協特Aプレミアム研究会の16人が約34ヘクタールで、現行の地域慣行化学肥料を半減以下にして栽培する計画という。
 青天の霹靂を市場デビュー1年目から取り扱っている東京都内の米穀店関係者は、当初からさらなる差別化の必要性を指摘していた。富裕層が数多く訪れる都内の百貨店にある店舗には、全国の銘柄の中でもよりすぐりものばかりが並ぶ。その中で青天の霹靂も存在感を示し、来店者から好評を得ていた。店舗関係者によると、その霹靂は産地を限定して仕入れていた。つまり競争の最前線では、同じ有力銘柄の中でも厳選されたものが並んでいるということだ。
 ブランドを確立することはもちろん難しいが、それを維持するのはもっと難しいのかもしれない。そのためには、緻密な戦略が必要だ。同じ銘柄でも、栽培方法などによってさらなる付加価値をつけて販売する手もあろう。しかし、全ての生産者が対応できるわけではないことを踏まえれば、購買層によって栽培方法をオーソドックスなもの、特殊なものと分けることも一つの考え方なのではなかろうか。
 ブランド米として生き延びるには品質はもちろんのこと、一定の生産量を確保することも求められる。これらを両立することが重要なのである。青天の霹靂の評価を揺るぎないものとすることは本県稲作の将来に大きく関わる。関係者の知恵と工夫に期待したい。

∆ページの先頭へ

南スーダンPKO「納得できる説明が必要」

2017/3/14 火曜日

 

 南スーダンに派遣した国連平和維持活動(PKO)に従事する陸上自衛隊部隊について、政府は5月末をめどに撤収する方針を表明した。安倍晋三首相は撤収について、国家安全保障会議(NSC)を中心に昨年9月から検討を開始したと説明するが、唐突感は否めない。
 昨年9月といえば、安全保障法に基づく新任務「駆け付け警護」をめぐり激しく議論されていた時期。撤収の検討を始めていたのなら、そのこともつまびらかにすべきだったのではないか。新任務の付与を優先するため、情報を隠していたと受け止められかねない。
 南スーダンでは昨年7月、首都ジュバで大規模な戦闘が発生し、自衛隊宿営地でも激しい銃撃戦が繰り広げられた。以降も大統領派と前副大統領派との衝突は続き、全面的な内戦に発展する恐れが続いていた。さらに、農業の崩壊などにより大規模な飢饉(ききん)も発生、治安情勢は悪化の一途をたどっている。
 こうした中で、陸自部隊の撤収について検討し始めたことは理解できる。だが、その一方で、昨年11月に新任務付与を閣議決定したことは解せない。当時、駆け付け警護で陸自隊員のリスクが増すとの懸念を指摘する声は少なくなかった。仮に撤収という選択肢があったら、国民世論や国会議員の考えも変わっていた可能性がありはしまいか。自衛隊幹部からも、新任務を付与したことを疑問視する声が上がっている。
 さらに、政府は治安悪化を撤収の理由としていないことも、不可解としか言いようがない。安倍首相は「国連の地域保護部隊が増強される。5月末に自衛隊による施設整備に一定の区切りが付く」などとするが、野党が指摘するように誠実な説明とは思えない。
 今年2月には、昨年7月のジュバでの銃撃戦を「戦闘」と記述した陸自の「日報」が見つかり問題化した。廃棄されていたはずの日報には「攻撃ヘリや戦車の動きを確認」などとあり、戦闘の激しさも克明に記録されていた。政府はこれまで一貫して「ジュバの治安は比較的安定している」と説明してきたが、その整合性が問われている。
 さらに、稲田朋美防衛相は「法的な意味での戦闘行為ではなく、武力衝突だ」と強弁し、「憲法9条上の問題になる言葉を使うべきでないことから、武力衝突という言葉を使っている」と答弁している。問題になるから言葉を言い換えていると自ら認めているようなもので、その姿勢は極めて不誠実だ。これでは、現地情勢がPKO参加5原則から逸脱していないという説明には首肯できない。
 撤収そのものについては理解できるが、その理由や新任務付与に至った経緯などについては疑念が残っていると言わざるを得ない。われわれ国民が納得できるように説明を尽くしてもらいたい。

∆ページの先頭へ

東日本大震災6年「風化させぬことが万一の備え」

2017/3/11 土曜日

 

 東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災から、きょう11日で6年。いまだ多くの人の行方が分からず、被災地の復興も進んでいるとは言い難い。加えて東京電力福島第1原発事故で福島県外に避難した子どもたちに対するいじめも相次いで明るみに出てきた。震災は過去の出来事ではないのだ。
 警察庁によると、10日現在の死者は12都道県の1万5893人、行方不明者は2553人。震災関連死を合わせると2万1000人を超える。原発事故による国の避難指示や津波で家を失うなど、古里を追われて、やむなく避難している人も12万3168人(2月13日現在、復興庁まとめ)に上る。
 被災者向け災害公営住宅は計画の8割弱の約2万3000戸が完成し、新たな町の開発や大津波に備える防潮堤の建設、かさ上げ工事なども続いている。とはいえ、震災から6年を迎えてなお、復興途中であり、進みの遅さにいらだちを覚える被災者も少なくない。
 福島県では今春、原発事故による国の避難指示が帰還困難区域を除いて解除される。確かに一歩前進であるが、それで全て解決するわけではない。放射能への不安は消えておらず、病院や商店などの生活サービスも元通りになるか分からない。かといって避難先にいても、子どもたちが負った心の傷に塩を塗るようないじめが存在する。避難者にとっては古里も避難先も、安らげる居場所ではないのかもしれない。
 津波で町が壊滅した東北の太平洋沿岸地域と違い被害が軽微だった津軽地方でも、中泊町が防災拠点になる新庁舎を建設したほか、日本海中部地震で津波の怖さを知る日本海沿岸自治体が津波避難計画の策定や海抜表記の新設といった取り組みを進めている。
 一方で地震による庁舎倒壊などの危険を知りながらも財政難で対策を取れない自治体が全国にある。震度6強で倒壊・崩壊の恐れがあると指摘された黒石市役所もその一つで、他施設への部署分散で庁舎を軽量化するのがやっとだ。ほぼ同じ約50年前に建てられた熊本県宇土市役所が熊本地震で押しつぶされたのを見ると、避難までの時間稼ぎがせいぜいで、防災拠点としての機能は果たせそうにない。一自治体で解決できる問題でない以上、国にも対策を講じる責任があるのではないか。
 われわれは震災を通じ、未曽有の出来事にいつ遭遇するか分からないことや、自分で身を守ることの大切さなど多くを学んだ。きょう午後に東京都内で政府主催の追悼式、各被災地でも慰霊式典が行われる。命を落とした人々のためにも「3・11を忘れない」と改めて誓う日にしなければならない。震災を風化させぬことこそが、今後起こり得る災害への一番の備えになる。

∆ページの先頭へ

Page: 1 ... 27 28 29 30 31 32 33 34 35 ... 41

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード