社 説

 

国会正常化「国民を向いた対応を」

2018/5/10 木曜日

 

 国会は8日、環太平洋連携協定(TPP)新協定関連法案の審議に関する衆院本会議に立憲民主党など主要野党が出席したことで、19日ぶりに正常化した。9日は衆院厚生労働委員会で、安倍晋三首相が最重要課題に掲げる「働き方改革」関連法案の論戦が始まった。
 今国会の会期末は6月20日。TPP新協定、働き方改革以外にも、成人年齢を18歳に引き下げる民法改正案、カジノ設置を含む統合型リゾート(IR)実施法案とギャンブル依存症対策基本法案など、残された重要法案は多い。
 与野党とも法案審議へ真摯(しんし)に向き合ってほしいが、森友学園に関する財務省文書改ざん、加計学園の獣医学部新設問題をはじめ、自衛隊海外派遣部隊の日報問題、前財務事務次官のセクハラ問題など、続発する政権の不祥事が法案審議の先行きを不透明にしている。
 主要野党は加計学園問題に関する柳瀬唯夫元首相秘書官(経済産業審議官)の証人喚問、文書改ざんやセクハラ問題をめぐる麻生太郎副総理兼財務相の辞任などを要求し、4月20日以降、国会審議を拒否。与野党は柳瀬氏を参考人として招致する(10日)ことなどで折り合い、正常化が図られた。
 主要野党が応じた背景には、不祥事の真相究明を図る一方で、審議拒否の長期化により批判の矛先が自らに向くことへの懸念、不祥事追及の手詰まり感による妥協があったのだろう。一連の不祥事を受けて開いた野党合同ヒアリングで、官僚をつるし上げる手法は、一部で「官僚いじめ」と批判された。
 ただ、停滞の責任は一義的に政府・与党にあったと言っていい。森友・加計問題にせよ日報問題にせよ、発覚したのはきのうきょうではない。疑惑に正面から向き合わなかった姿勢が招いた結果である。8日の首相答弁「国民の信頼回復に向け、首相の責任を果たしていく決意だ」が言葉だけに終わらないよう望む。
 野党陣営は、旧民進、旧希望両党の合流による国民民主党の設立に伴い、構成に変化が生じた。国民民主は政権交代を目指し、立憲などとの連携も想定していく意向を表明したが、不参加議員を受け入れ勢力を拡大する立憲との主導権争いも想定される。合流組、不参加組問わず、結党が「なぜ(国会で与野党の攻防が続く)今なのか」という疑問を拭えない議員は多いのではないか。国民目線を欠いた主導権争いが続くと、国民の信頼を損なう。
 麻生氏については、「セクハラ罪という罪はない」との発言に与野党から苦言や批判が相次いでいる。罪名の有無によらない人権の問題であり、その点に意を用いるのが政治家の務めではないか。それを認識した上での発言ならば著しい言葉足らずか挑発だろうが、その意図を測りかねる。

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イタイイタイ病 公害見つめ直す認定半世紀に

2018/5/9 水曜日

 

 四大公害病の一つに数えられるイタイイタイ病が日本初の公害病に認められてから8日で50年となった。中川雅治環境相は同日の閣議後記者会見で「多くの患者が長い間苦しんできた現実に向き合い、悲惨な公害が繰り返されることがないよう、今後も環境行政の推進に全力で取り組みたい」と述べた。この決意を日本国内だけでなく、公害に苦しむ世界の国々にも向けるものにしてほしい。
 イタイイタイ病は岐阜県の神岡鉱山から排出されたカドミウムが富山県の神通川流域に流れ込み、汚染された水や米などを口にした住民らが発症。患者が発生し始めたのは1910年代で、63年になって当時の厚生省が調査研究に着手。68年5月8日、公害病に認定された。認定患者は200人。
 患者の9割以上が腎臓障害や骨軟化症を発症し「痛い痛い」と訴えたことから病名が付けられたとされる。医師で地元の県立イタイイタイ病資料館名誉館長の鏡森定信さんは大学卒業後、被害が最も激しかった地域の病院で研修。危篤状態に陥った患者の心臓マッサージをすると、もろくなった肋骨(ろっこつ)が音を立てて折れてしまったという。この話だけでも、患者たちの苦しみの一端を感じることができる。
 資料館では被害者を支えた家族らが「語り部」になり、公害の恐ろしさを伝えてきた。鏡森さんは「語り部の声など、生きた資料を若い人たちに伝えたい」と力を込める。半世紀を経て認定患者200人のうち存命は5人。被害者と接した家族らの高齢化も進んでいく。「生きた資料」の減少は、風化を招くことになりかねない。富山県以外では、なおさらのことだ。
 生きるために口にした水や米が、自身の体に悪影響を及ぼすなど、今の日本では考えられない。われわれが安全を疑うことなく、安心して食材や水道水を摂取できるのは、公害に苦しんだ多くの被害者たちがいるからであることも忘れてはならない。
 イタイイタイ病は2013年に被害者団体と原因企業の三井金属鉱業が、前段症状の発症者に一時金を支払うなどとした合意書を交わし、全面解決したことになってはいるが、今なお苦しむ人たちがいるのも事実。さらに「50年たった今も、アジアの国々では公害による腎臓障害の被害は起きている」(鏡森さん)という。公害に苦しんだ地域だからこそ、世界の公害抑止のためにできることがあるはずだ。「生きた資料館」の存在価値は地元だけのものではない。
 新たな産業や技術が新たな公害を生む可能性も否定できない。公害認定半世紀の節目に、すべての企業・労働者、次世代を担う子どもたちが再度、イタイイタイ病をはじめとする公害に目を向け、全世界の安全・安心を考えたい。

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弘前さくらまつり「次代に伝える祭りの精神」

2018/5/8 火曜日

 

 100周年の節目を飾った弘前さくらまつりが6日閉幕した。今年はソメイヨシノの早咲きに合わせて4月18日から準まつり体制に突入。大型連休前半は好天に恵まれる日も多く、外堀、園内、西濠と次々と見頃を迎える桜に歩調を合わせるように人出も順調に伸びた。同本部によると、まつり前半の来場者数はゴールデンウイーク前半初日の28日に30万人、29日に会期中最多となる33万人が訪れるなど、好調のまま推移した。準まつり体制を含む4月18~30日の累計が214万人となるなど、ゴールデンウイーク前半だけで200万人を突破した。
 ゴールデンウイーク後半は、ソメイヨシノの見頃がピークを過ぎたこともあり、天候がぐずついた日もあったことから、人出に影響が出たものの、遅咲きの桜がけん引。最終的な人出は準まつり体制を含めると、254万人となり、会期日数や体制は違えど、累計251万人となった前年(4月22日~5月7日)並みを維持することができた。この254万人という人出は、東日本大震災以降では最多だという。
 100周年という節目だっただけに花の見頃もぴったりと合って、さらなる人出の増加を―と期待したいところだったが、近年の早咲き傾向を考えれば、致し方ないところもある。
 100周年関係で言えば、祭り(当時の名称は観桜会、第1回開催は1918年5月3日)が、初めて行われた5月3日を「弘前観桜会記念日」と定め、今年も昨年に引き続き、記念パレードと打ち上げ花火を行った。
 バンカラ学生やチンドン屋、担ぎねぷたなどに加え、大正期の観桜会の様子を収めたフィルムに記録されている仮装姿も再現され、昔懐かしい祭りの雰囲気を演出。沿道の観衆を沸かせた。ソメイヨシノの花が十分楽しめなくなったゴールデンウイーク後半の目玉イベントとしても観光客に弘前の〝観桜会〟をアピールすることができたのではないか。下乗橋付近の内堀に花筏(いかだ)の映像などを投影して幻想的な雰囲気を演出した「デジタル花筏」や屋根付きの桟敷で、郷土食を詰め込んだ特製のお花見弁当や津軽三味線の生演奏などが楽しめる「弘前さくら桟敷」も昨年に続いて好評だったと聞く。
 今年、本紙でも連載企画などを通じてさまざまな角度から弘前さくらまつりの100年を報じてきた。桜の植樹や管理への思い、出店のにぎわい、そして100年もの間、連綿とこの祭りを続けてきた弘前市民の弘前公園、弘前さくらまつりへの愛情を、紙面から感じることができた。
 弘前市民として弘前公園の桜、弘前さくらまつりは、未来永劫(えいごう)のものであってほしい。多くの人を魅了する〝公園の桜〟を確実に次代に残す。そのことを再確認した100周年の節目だった。

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増える児童虐待「早期発見・予防へ体制強化を」

2018/5/5 土曜日

 

 総務省が「こどもの日」に合わせて発表した15歳未満の子どもの推計人口(4月1日現在)は、前年より17万人少ない1553万人で、1982年から37年連続の減少となった。
 この歯止めがかからない少子化の時代に、憂慮されるのが、増加傾向にある児童虐待だ。保護者らの虐待によって幼い子どもの命が奪われるという痛ましい事件のニュースが全国的に後を絶たない。
 警察庁のまとめによると、全国の警察が2017年に虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した18歳未満の子どもは、前年比約20%増の6万5431人に上った。統計を取り始めた2004年以降、13年連続の増加で、過去最悪を更新した。
 通告内容は、暴言を浴びせられるなど「心理的虐待」が全体の約7割を占めて最も多く、うち保護者が子どもの面前で配偶者に暴力を振るう「面前DV」が6割以上を占めている。
 心理的虐待は、身体的虐待やネグレクト(保護の怠慢・拒否)などの虐待と異なって目に見えにくいため、周りの大人が気づいた時には、うつや強い不安、適応障害など深刻な事態になっていることが懸念されるという。大人が考える以上に子どもへの影響が大きいということを認識すべきである。
 県内の相談件数も増加傾向にある。17年度に6児童相談所で対応した児童虐待の相談は過去最多の1073件(前年度比124件増)に上ったことが県のまとめで明らかになった。相談しやすい環境の整備によって通告が増えたためとみられるが、児童虐待がなくならない現状は深刻と言わざるを得ない。
 虐待の種別では心理的虐待が最も多く、次いで身体的虐待、ネグレクト、性的虐待と続く。相談後の対応は、わずかな面談や情報提供で解決した「助言指導」が922件を占めており、相談環境や支援体制が効果的に機能し早期発見・解決に結び付いているといえる。
 ただ、継続的な通所や家庭訪問を行う行政指導「児童福祉司指導」、子どもを親元から離して保護する「児童福祉施設等入所」、里親委託も増加傾向にあり、決して楽観はできない。
 全国的な関心の高まりによって相談件数が増え、統計を通じて児童虐待の実態が明らかになってきていると考えられるが、まだまだ潜在しているものは多いはずだ。
 児童虐待の事件が起きるたびに、なぜ防ぐことができなかったのかが課題に挙がる。最悪の事態を防ぐためには、できるだけ虐待の実態をいち早く把握し、幼い子どもの命を守ることができるよう地域一丸となって取り組む必要がある。児童虐待の予防、早期発見の仕組みづくりはもちろん、子育てする親を支援するための体制強化も必要だ。

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クルーズ船寄港「経済効果の拡大図れ」

2018/5/4 金曜日

 

 今年も青森港への大型クルーズ船の寄港が始まった。4月23日のセレブリティ・ミレニアム(9万963トン)を皮切りに、同30日には過去最大級となる全長333メートル、13万7936トンの「MSCスプレンディダ」が寄港。青森市はもちろん、オプショナルツアーで弘前市などへ足を運ぶ乗客も多く、本県の観光・経済振興に確実に貢献していると言える。
 東北地方で最多のクルーズ船寄港を誇る本県。大型船ともなれば1回の乗客は2000人から3000人に上る。この好条件を最大限生かして、クルーズ客のニーズに応え、経済効果を拡大させる取り組みをぜひとも進めてもらいたい。
 クルーズ船の経済効果について、青森地域社会研究所は22隻が寄港した2017年分を約3億5140万円と試算。またクルーズ客の平均消費額は1人当たり9379円で、県外からの日帰り観光客(平均消費額7840円)より消費額が多い傾向にあると分析している。地域経済に与える影響は決して小さくない。
 クルーズ船は事前にスケジュールが把握できるため、県内の商店街や観光地など受け入れ側の対応は十分に可能だと同研究所。簡単な外国語の貼り紙や何を売っている店なのか分かりやすいようディスプレーを工夫するなど、寄港日だけでもクルーズ客を意識することでウエルカムの気持ちが伝わると助言している。
 青森港は青森市の中心部に近く、乗客は下船した後、気軽に歩いて商店街などの散策を楽しめる。このメリットは非常に大きい。徒歩圏内には青森駅もあり、列車やバスを組み合わせることで市外への移動も十分に可能だ。同研究所の調査によると、乗客の3分の1はバス移動などを主とするオプショナルツアーを利用しており、こうしたツアー客はもちろんフリーで動く客への対応も併せてより多くの乗客に県内を観光してもらえる仕組みづくりに知恵を絞るべきだろう。
 今年は昨年を上回る過去最多の25隻が寄港予定。関係者は将来的に寄港100隻、クルーズ客10万人の獲得を目指すとし、施設整備なども着々と進んでいる。
 今春には新中央埠頭(ふとう)の岸壁を約80メートル延伸する工事が完了しており、これまで以上に大型船への対応が可能になった。新中央埠頭には県が今後、税関や出入国管理、観光案内、物産販売などの機能を併せ持つターミナル施設も整備予定で、完成すれば手続きに要する時間が2時間ほど短縮され、県内を回遊する時間が増える。先を見据え、取り組みを強化していくにはちょうどいいタイミングだろう。
 本県を訪れる外国人観光客は急増しており、本県入りのルートも多岐にわたっている。外国人観光客への対応も従前に比べれば随分と進んできたと思う。ただ「おもてなし」に完璧はない。より深くきめ細やかに、訪れる観光客のニーズに寄り添う努力を進めていってほしい。

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