社 説

 

ソウル線増便「観光客満足へソフト面充実を」

2017/8/8 火曜日

 

 大韓航空が冬季スケジュールとなる今年10月29日から来年3月24日まで、国際定期便である青森―ソウル線を現在の週3往復(6便)から、同5往復(10便)に増便すると発表した。同線は過去週4往復運航していた時期もあったが、2012年10月からは週3往復となっていた。週5往復となるのは1995年の就航以来初。16年の利用率が過去最高の74・6%となるなど需要の高まりを受けての対応という。
 大韓航空などによると、ソウル線は現在、日、水、金曜日の計3往復運航だが、10月からは火、土曜日の2往復が増便となる。同線の16年中の利用者数は3万3600人余りとなるなど需要の高まりを見せている。こうしたことから、同社は今年4~6月に航空機を大型化、1~7月の利用者数は前年同時期より726人多い2万435人だった。
 三村申吾知事は増便決定を受けて「関係者一丸となって、利用促進に取り組んできた成果」と喜ぶとともに「多くの国、地域との交流を拡大する大きなチャンス。週5便体制の維持拡大にしっかり取り組みたい」と語った。その言葉通り、単純に増便を喜ぶだけではなく、いかに維持拡大していくかが今後の課題となろう。利用率がより高まり、本県の魅力を発信できる機会が増えることに期待が高まる一方で、受け入れ側のソフト・ハード面の整備は急務だ。現状のままでよいのか、より充実させていくのがベストなのか、考えていく必要があろう。
 大韓航空ソウル線増便に加え、調整段階ながらも台湾・エバー航空が11月から、青森と台湾を結ぶ定期チャーター便を運航する計画であることも明らかになった。これが実現した場合、大韓航空、中国・奥凱(オーケー)航空の天津線と併せて、受け入れ態勢の整備が要検討課題となることは言うまでもない。
 ただ、このように青森空港に就航する航空機が増加傾向を見せる一方、空港自体の航空機、乗降客の収容力について懸念の声も聞かれる。実際、同空港に就航した16年度中のチャーター便は15年度の3倍強に当たる156便である。
 現在、青森空港ビルが空港施設・設備の老朽化や定期便、チャーター便の増加を踏まえ、19年3月までに空港ターミナルビルをリニューアルする計画だ。判明している内容は約2000平方メートルを増築、約3500平方メートルを改修する。増築部分にエスカレーターや階段など既存設備の一部を移した上で、スペースを確保し搭乗待合室や到着手荷物受取所の拡張を図るなどの計画で、現在基本計画の取りまとめを行っている。
 つまり、ハード対策では準備が着々と進んでいるということだ。ソフト対策はこれまでの実績があるだろうが、「青森に来て良かった」の声がさらに聞かれるよう充実したものにしてほしい。

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20年目の立佞武多「今後は確かな伝統築く時期に」

2017/8/5 土曜日

 

 県内は夏祭りが佳境に入り、4日には運行20年目を迎えた「五所川原立佞武多」が五所川原市で開幕した。高さが20メートル以上、重さが20トン近くもある大型の山車は当初から話題を呼び、知名度は弘前ねぷたまつり、青森ねぶた祭などと肩を並べるほどになった。節目の年を契機に、さらなる飛躍を期待したい。
 かつては豪商らが、富を競うかのように背丈の高い特徴的な山車を制作した。これがもともとの立佞武多なのだが、いつしか伝統は途絶えた。ところが、1996年に地元有志によって約80年ぶりに復活した。その後、巨大な山車は地元での運行にとどまらず、首都圏のイベントなどに参加したほか、ブラジル・サンパウロカーニバルにも出陣し、現地の観衆を魅了した。
 津軽弁に「もつけ」という言葉があるように、津軽地方の人々には熱狂を好む面もあるのだろうが、古くから商都として知られる五所川原には加えて特有の「思い切りの良さ」も感じられる。長く途絶えていた立佞武多を突如復活させ、その立佞武多が一気に知名度を上げたことも無関係ではないのではないか。
 立佞武多を復活当初から見詰め続けてきた菊池忠さん(立佞武多の館館長)は本紙連載で、五所川原の大火をつづった「失われた五所川原」(山本和夫氏著)の一節「ひとは町をつくるが、のちには町がひとをつくる」を取り上げ、市民と立佞武多の関係に重ねている。
 菊池さんは「人が育てた立佞武多が、今度は五所川原を育てていくと信じている」と語った。しばらく忘れられていた立佞武多だが、20年を経て街のアイデンティティーになったと言っても過言ではないだろう。そのことを誇りに思う市民も数多くいるはずだ。
 大型の山車は毎年新たに1台ずつ制作されており、今年の新作「纏(まとい)」は、過去に五所川原を襲った大火で纏を振る勇壮な火消しの姿を形作った。度重なる困難から立ち上がる市民の不撓(ふとう)不屈の精神を表現したものといい、98年の運行開始から20年目の年にふさわしいテーマだ。
 「纏」の制作者・鶴谷昭法さんによると、同作は1人の人物をシンプルに表現する初期の立佞武多をイメージする構図にした。節目の年に復活当初の原点を見詰め直し、将来に向かっていこうという強い決意が感じられる。
 立佞武多は運行開始から短い間に、祭りとして確固たる地位をつかんだ。祭り期間中(8月4~8日)には毎年、大勢の観衆が訪れ、大型の山車を常設展示している立佞武多の館には年中、観光客が詰め掛けている。
 今後はこれまで得てきた数々の成功を大切な財産としつつ、確かな伝統を築いていく時期に当たると言えるのではないか。運行20年目の今年をその出発点にしたい。

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内閣改造「政権浮揚につながるか」

2017/8/4 金曜日

 

 安倍晋三首相が行った内閣改造と自民党人事は、果たして政権浮揚につながるのか。永田町で最大の関心事は、改造を受けて今週末に行われる世論調査の結果だ。与野党問わず「結果によっては政局となり、年内の解散・総選挙もありうる」との見方が広がっている。
 今年2月の時事通信の世論調査で、安倍内閣の支持率は53・4%だった。しかし、この高支持率を背景とした強引な政権運営に加え、加計・森友学園問題、相次ぐ閣僚の辞任、“魔の2回生”によるスキャンダルなどが相次ぎ、7月の調査では29・9%にまで急落した。
 内閣支持率は30%を割り込むと政権運営が極めて不安定になる「危険水域」とされる。さすがに危機感を抱いた首相は加計学園問題の集中審査に応じたが、疑惑を払(ふっ)拭(しょく)するどころか、国家戦略特区制度を活用した獣医学部新設計画について「今年1月20日まで知らなかった」と答弁するなど、新たな火種を抱え込んだ。
 さらに稲田朋美氏が南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報をめぐる問題の責任を取り防衛相を辞任。都議選での歴史的惨敗もあって厳しい立場の首相は、内閣改造を機に体制を刷新し、政権の立て直しを図ろうとした。
 しかし「人心一新」を掲げる一方で、早い段階で「骨格は維持する」との考えを示し、盟友の麻生太郎副総理兼財務相と腹心の菅義偉官房長官の留任が確実となったため、党内には「代わり映えがしない」との空気が漂う。
 党人事では岸田文雄前外相を政務調査会長に起用したが、二階俊博幹事長と高村正彦副総裁を留任させた。また、加計学園問題を抱える文科相、組織の立て直しが急務の防衛相に閣僚経験者を起用することが事前に報じられ、新内閣は発足前から新鮮味に欠ける格好となった。
 野田聖子元党総務会長を起用するなど自らと距離を置く人材も活用したが、“サプライズ”として取り沙汰された石破茂前地方創生担当相や小泉進次郎党農林部会長らの起用は見送った。首相は「安定した政治基盤をつくる」と意気込みをみせるが、政権浮揚につながるかは疑問だ。
 一方、週明けにも判明する最新の支持率によっては、来月半ばに臨時国会を召集し解散・総選挙に打って出るとの見方がある。10月22日投票の衆院ダブル補選では、愛媛3区での苦戦が予想されており、敗戦ショックを和らげようと、補選に日程を合わせるというのだ。
 さらには早期に解散できなければ、来年秋の任期満了ぎりぎりの“追い込まれ解散”になるとの予想もある。
 このような観測が党内外でささやかれるほど、首相の足元は揺らいでいる。わずか半年前まで高支持率を誇り、「安倍1強」とまで揶揄(やゆ)されていた政権だが、先行きは不透明さを増すばかりだ。

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森友学園問題「国有地格安売却こそ“本丸”」

2017/8/3 木曜日

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)が国や大阪府の補助金を不正に受給したとされる事件で、前理事長の籠池泰典容疑者夫妻が詐欺容疑で、大阪地検特捜部に逮捕された。同学園の国有地取得に端を発した一連の問題は、新たな段階を迎えたと言える。
 学園が豊中市の国有地に開設予定だった小学校の校舎建設工事をめぐり、国の補助金計約5600万円をだまし取った疑い。受給額を増やすため、実際には約15億5500万円だった工事費用を23億8400万円余と水増しした請負契約書を国に提出したとみられている。
 小学校の設置認可申請では、府に虚偽の寄付収入見込みを提出していた疑惑が浮上。学園が運営する幼稚園では、専従教員数や障害などで支援が必要な園児数を偽って申請し、府の補助金計約6200万円を詐取した疑いも持たれている。
 これらが事実とすれば、幼稚園の保護者に“清く正しく”を旨とする「熱心な教育者」と映った籠池容疑者の人物像は表裏の落差が甚だしい。国会の証人喚問や記者会見などで繰り広げた強烈な「籠池節」も相まって、その主張や証言をにわかに信じるのは難しい。
 一方で、問題の発端となった国有地の格安売却問題は、解明が進んでいるだろうか。国民の関心事はむしろ、売却に絡む政治家の関与の有無であり、国の「特別扱い」であろう。
 学園は国有地を土地評価額より約8億円安く購入した。近畿財務局は「地中のごみ撤去費を差し引いた」としたが、当初は定期借地としたこと、売却代金の分割払いを認めたことが判明。近畿財務局は不当に安く売却したとして背任容疑で告発され、受理した特捜部が職員の聴取などを進めている。だが、財務省は関連文書の存在を否定したままだ。
 一時、小学校の名誉校長に就いた安倍昭恵氏(安倍晋三首相夫人)と、昭恵氏付だった当時の職員は、学園側に国の予算措置方針をファクス送信した国家公務員法違反容疑で告発された。籠池容疑者は、首相側から100万円を受け取ったと主張していた。
 問題の大きさとしては、近畿財務局の背任容疑の捜査が先行しそうなものだが、実際に先行しているのは籠池容疑者に対する詐欺容疑のようだ。学園は財務が脆弱(ぜいじゃく)で、8億円の値引きがなければ土地を取得できなかったとの指摘もある。背任容疑の捜査につながる全容解明の“第一歩”かもしれないが、詐欺容疑の捜査の裏で背任容疑がうやむやなまま終わってしまう恐れはないか。
 背任容疑での立件や、近畿財務局と同じ国の機関である検察の捜査に、困難を指摘する声もある。しかしここで追及を緩めては、「これも忖度(そんたく)か」とのそしりは免れまい。中立な立場で解明してほしいものである。

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縄文遺跡群見送り 世界遺産推薦へ「全力」尽くせ

2017/8/2 水曜日

 

 2019年の世界文化遺産登録を目指してきた本県など4道県の「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、国の文化審議会は7月31日の会合で、ユネスコ(国際教育科学文化機関)への推薦を見送った。推薦見送りは5回目。ユネスコ世界遺産委員会審査の前段階である文化審の理解を得ることがいかに難しいかを、改めて痛感した。
 縄文遺跡群は青森市の国特別史跡「三内丸山遺跡」や弘前市の国史跡「大森勝山遺跡」など、北海道と北東北3県にある計17の資産で構成。約1万年にわたり発展し、大型集落や祭祀(さいし)道具に特異性がある「地域文化圏」と位置付け、同時代の他文化圏にも影響を与えたと主張した。前回(16年)の推薦見送りの際に文化審は「縄文文化の普遍的価値を説明する上で、17資産それぞれの位置付けが十分に精査されていない」としており、この指摘を踏まえて今回の推薦を目指した。
 しかし文化審は、縄文時代を代表するだけの優位性や特異性が十分に説明されていないことを理由に推薦を見送った。文化審世界文化遺産部会は「構成資産の説明が工夫され、明確になった」と、前回からの改善点を評価した半面、「さらなる努力が必要」と厳しい意見もあった。
 同部会の佐藤信部会長らは会合後の会見で、他の地域文化圏と比較検討し、共通点や相違点などをさらに説明する必要があると指摘。全国に縄文遺跡がある中で、北海道と北東北3県に限定して登録を目指すのだから、誰が見ても理解、納得できるものでなければならないのは当然。しかも世界文化遺産である。国内での価値のみならず、世界的価値を認めさせる必要がある。
 15年は縄文遺跡群全体の価値と構成遺跡の関係、16年は構成遺跡それぞれの位置付け、そして今回は縄文時代を代表するだけの優位性、特異性―の説明不足が指摘された。言葉は違えど、提出した推薦書素案が、縄文遺跡群の価値を裏付けるレベルに達していないという欠点を解消できていないことを示す。
 県世界文化遺産登録推進室は後日、詳細な理由を聞き取る予定で、現時点では「これまで示された課題については、推薦書素案でほぼ説明は尽くしており、一定の理解が得られた」と受け止めている。しかし、それでも推薦されないのだから、指摘部分を修正しただけで、文化審を納得させられないのは明らか。
 来年の推薦を目指す以上、文化審が求めるレベルを超えた内容にする必要があるのではないか。4道県で組織する縄文遺跡群世界遺産登録推進本部長の三村申吾青森県知事は「全力で取り組む」とした。推薦を得る難しさを心に刻み、言葉だけではない「全力」を尽くさなければならない。

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