社 説

 

米朝合意至らず「“決裂”で先行き見通せず」

2019/3/1 金曜日

 

 27、28日の2日間にわたって行われた米朝首脳会談は、北朝鮮の完全非核化で双方の隔たりは埋まらず、合意に至らなかった。トランプ大統領は会見で金正恩朝鮮労働党委員長との関係は良好だと強調したが、両首脳は予定された昼食会に出席せずに会場を後にした。事実上の決裂であり、非核化交渉に加えて拉致問題解決の先行きも、一層不透明となった。
 会談の焦点は、北朝鮮から完全な非核化に向けた具体的措置を引き出せるかと、それに対する米国の見返り。一方で日本政府内には、「成果」をアピールしたいトランプ氏が、昨年6月の歴史的初会談から大きく前進させることを急ぎ、北朝鮮側の要求を安易に受け入れるのではないかとの危機感もあった。
 会談初日の段階でトランプ氏は「大成功するだろう」、正恩氏も「素晴らしい結果を出せると確信」と述べ、完全な非核化に向けた具体的措置で合意し、将来的な国交正常化への一歩になる可能性もうかがわせた。しかし最終日、正恩氏が寧辺の核施設などを廃棄する意思を伝えながら、見返りとして全面的な制裁解除を要求。トランプ氏は「寧辺だけでは不十分」と拒否し、共同声明や合意文書取り交わしの道は断たれた。
 もしトランプ氏が、正恩氏の強気の要求を受け入れるようであれば、世界中から弱腰と批判されるだけでなく、北朝鮮側に過大な見返りを引き出せる“容易な交渉相手”との印象を持たせる危険があった。いくら、米国内でさまざまな問題を抱え、米朝会談を巻き返しに利用したいであろうトランプ氏でも、絶対に応じるわけにいかない。正恩氏が制裁の全面解除を勝ち取れると読み違えたのか、トランプ氏の出方を試したのかは分からないが、当然の結果である。
 これで、非核化の早期実現は難しくなったとみていいだろう。トランプ氏は正恩氏との関係継続を表明し、今後も両国間の交渉は続くとする。しかし、最終的にはトップ同士の合意が不可欠なのに、次の首脳会談開催に話は及んでいないようだ。また、核・ミサイル実験しないことを再確認したとの主張も、念押しにすぎない。
 日本政府は今回、非核化とともに拉致問題解決の進展を期待していた。安倍晋三首相はトランプ氏に日本の方針を伝えるよう要請し、会談後にトランプ氏から、1対1の会談と夕食会で拉致問題を取り上げたと電話報告を受けた。詳しい内容は明らかにされていないが、非核化の見返りを持ち帰ることができなかった正恩氏が、米国以外の問題に対して真剣に取り組むとは思えない。首相は自身が正恩氏と向き合う意欲を口にした。米朝首脳会談でさえ、前回会談で行く先を照らしながら、次には暗礁に乗り上げたのである。極めて難しい交渉は、並の決意では成功しない。

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地震の長期評価「どこにいても油断せず対処を」

2019/2/28 木曜日

 

 政府の地震調査委員会が26日に更新した日本海溝沿い地震の長期評価によると、2011年3月に発生した東日本大震災と同じマグニチュード(M)9程度の超巨大地震が今後30年以内に起きる確率は同年11月の前回評価から変わらず、「ほぼ0%」とされたことが分かった。一方で、M7~8弱の地震は同確率を3段階にランク付けした場合、本県沖から茨城県沖にわたる大半の区域が、最も高いランク3(26%以上)に分類された。いつ、どれほどの規模が発生するのか分からないのが、地震をはじめとする災害だ。東日本大震災レベルの地震に襲われた場合は、どれほどの備えと対策が必要であり、有効なのかを含め、評価内容に基づく検討と措置がさらに進むことを期待したい。
 今後30年以内に起きる地震の確率は、過去に起きた同規模の地震の回数や発生間隔に基づき計算したもの。ランク付けは今回から導入され、3の次は2(3~26%未満)、1(3%未満)と続く。
 本県東方沖から岩手県沖南部はM7~7・9程度が想定され、ランクは3となっている。このほか、本県東方沖と岩手県沖北部はM7・9程度の巨大地震が1677年以降4回起きたとして、30年確率が前回評価に続き「5~30%」、M7~7・5程度の地震は1923年以降10回起きたことから「90%以上」と高いものになっている。本県の担当者は「最大級の地震を想定し、被害想定調査も行って市町村に対策を取ってもらっている。着実に進めていきたい」と話す。
 東日本大震災を契機に、同規模の大地震の発生を想定した訓練は本県をはじめ各地で実施されてきた。建築物の崩壊や土砂崩落、津波に加え、福島第1原発事故の教訓に基づく原子力災害を想定した訓練などだ。対策は着実に進んでいると言えるのだろうが、身の危険が迫る実際の地震発生と、何もないことが分かっていながら実施する訓練では、やはり意識の差はあろう。現実と訓練との間で、どれだけ危機感の差を縮めていけるかの取り組みも考えていくべきだろう。
 また、実際に地震が発生した場合はマグニチュードがいくらかと考える余裕はまずない。M9程度の地震確率が「ほぼ0%」としても、それに準ずる規模のM7~8弱の地震は人命や財産を奪うのには十分過ぎる規模だ。大きめの地震が起きた場合は最悪の事態を想定し、早めの高台避難といった対策を取ることを考えたい。
 今回の長期評価では、日本海側の本県が絡む部分、本県西方沖から北海道西方沖で30年以内にM7・5~7・8程度の地震が起きる確率は3%未満とされた。とはいえ、1983年5月に発生した日本海中部地震(M7・7)は本県を含み100人超の人命を奪った。どこにいても油断せずに対処を心掛けたい。

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子ども対策「社会全体で支えよう」

2019/2/27 水曜日

 

 貧困などの課題を抱える子どもの支援を検討する「県地域の子ども支援ネットワーク会議」が新たに発足した。2年にわたって協議し、本県で不足している取り組み、課題などを検討して、子どもの貧困対策に取り組む機関・団体の活動が円滑に進むように後押しするという。
 子ども食堂や学習支援など子どもの居場所づくりに関わる団体のほか、教育支援や生活支援、就労支援、経済支援などを行う相談支援機関、学識経験者ら、現場をよく知る委員で構成されており、今後の議論に期待したい。現状の活動で困難を感じている部分について、解決につながるような方策を模索してほしい。
 県は現在、昨年行った子どもの生活実態調査の結果を分析中。来年度はこの結果も踏まえた議論が進められるほか、県内に子どもの居場所を増やすため、開設希望者と人員や資金などの地域資源をつなぐ地域コーディネーターの養成、支援機関のネットワーク化につなげる研修会の開催などを予定しており、県議会定例会に関連予算を提案している。
 子ども食堂は利用者が貧困という負のイメージが強く、運営側が気を遣う側面もあるようだ。一方、公的機関は相談、申請する側にとってハードルが高い部分も。子どもらは気軽に集えて、支援する側は課題を抱えた子どもに出会えるような、そんな場所が地域に増えればいい。
 児童虐待の早期発見、被害拡大防止も子どもの健全な発達を考える上で重要な課題だ。子ども支援ネットワーク会議の発足と日を同じくして、県と県警が児童虐待に関する情報共有について協定を締結した。相互に情報共有する事例について具体的に明示し、これまで以上に互いが連携を強めていく方針だ。
 昨年本県で児童虐待が疑われるとして警察から児童相談所に通告があった人数は479人。検挙件数とともに過去最多を更新した。本県も虐待と無関係とは言えず、他県で起きているような痛ましい事件につながらないとも限らない。
 児童相談所と県警という専門機関の連携強化は心強いが、それで完璧とは言えない。われわれ県民にもそれぞれの立場でできることがあるはずだ。地域で子どもや子育てを温かく見守っていく視点、子育てをする上で困らないような働き方の見直しなども必要だろう。今後、人口減少が加速していく中で、将来の地域を担う子どもらが健やかに育つよう支援するのは、社会全体の務めだと言える。
 県の調査で、子育て世帯や独身者に子育ての不安や悩みを問うと「お金がかかる」「自信がない」「大変そう」「仕事に影響が出そう」などの回答が多く、子育てにネガティブなイメージが強く感じられる。困ったら救いの手が差し伸べられる、何かあれば応援してもらえるという安心感を持ってもらえるよう、われわれ一人一人の意識改革が求められる。

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沖縄県民投票「民意の黙殺は許されない」

2019/2/26 火曜日

 

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非を問う県民投票は反対票が7割を超えた。しかし、法的拘束力はないことから、政府は移設に向けた埋め立て工事を続ける方針だ。ただ、移設に対して示された民意を黙殺することは許されない。
 辺野古移設は、日米両政府による1996年の普天間返還合意に基づくもので、政府は「世界で最も危険といわれる普天間飛行場の危険性を除去するため」などと強調してきたが、20年以上たった今も実現されていない。
 言うまでもないが、県民の多くが移設に反対する背景には米軍基地過重負担への怒りがある。仮に普天間飛行場が返還されても、移設先が県内であれば、沖縄県の負担軽減につながらないのは明らか。米軍基地に対する問題意識が国内で必ずしも高いとは言えない中、沖縄県民として問題の深刻さを改めて示したいとの思いが反映されたのではないか。
 辺野古移設に反対した故翁長雄志前知事の後継として、昨年10月の知事選で当選した玉城デニー知事の得票は39万票余り。県民投票の反対票はそれを大きく上回る43万票余りとなった。政府の強硬姿勢に対する怒りが高まる一方であることが分かる。
 安倍政権は沖縄県と対立を深めるが、歴代の自民党政権は普天間返還合意以降、民意に一定の配慮をしながら計画を進めてきた。例えば、96年の県民投票で米軍基地の整理・縮小を求める声が9割近くに達すると、その直後に当時の橋本龍太郎首相が大田昌秀知事と会談するといった対応を取った。
 沖縄県が抱える米軍基地問題をめぐり、安倍晋三首相もこれまで「県民の気持ちに寄り添う」と繰り返し、今回の県民投票の結果についても「真摯(しんし)に受け止め、基地負担軽減に向けて全力で取り組む」とした。
 基地負担軽減に努めるのは政府として当然だ。しかし、その務めを果たしているからといって、県民の声に耳を傾けなくてもよいということにはならない。安倍政権にも歴代の自民党政権のような配慮がなければならないのではないか。
 辺野古の埋め立て海域では軟弱地盤の存在が明らかになり、政府は地盤改良のため、約7万7000本のくいを打ち込むといった案を検討している。ただ、設計変更には県の承認が必要だ。玉城知事は認めるはずはなく、法廷闘争に持ち込まれるとの見方も出ているようだ。
 地盤改良に伴い費用は大幅に増大し、工期も長期化するはずで、野党は移設の検証を強く求めている。このような状況下での工事続行は対立をさらに深めるだけだ。「県民の気持ちに寄り添う」。こう繰り返してきた安倍政権には、民意との溝を埋める責任がある。今こそ行動で示してもらいたい。

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はやぶさ2着陸「世界に誇れる初号機の“子”」

2019/2/23 土曜日

 

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日朝、探査機「はやぶさ2」の小惑星「りゅうぐう」着陸と、試料採取のための弾丸発射を確認した。着陸目標地点は赤道付近にある直径6メートルほどの領域。JAXAは「目標地点に降りたとみられる」と説明し、同様の探査機を打ち上げている米航空宇宙局(NASA)などと比較し「きれいな試料」を持ち帰ることができる点でも日本は勝っていると胸を張る。宇宙分野で高い技術力を有することを世界に示した。
 はやぶさ2は世界で初めて小惑星から試料を採取し、地球に持ち帰った「はやぶさ」の後継機で、イオンエンジンなどの基本設計は初号機を踏襲。2014年12月に日本のH2Aロケットで打ち上げられ、昨年6月にりゅうぐうに到着した。りゅうぐうには約46億年前に太陽系が形成された当時の水や有機物が存在すると考えられており、採取する試料が太陽系の成り立ちや地球の生命の起源を探る手掛かりになると期待されるロマンあふれるプロジェクトだ。
 小惑星「イトカワ」と地球を往復した初号機は、試料採取のための弾丸発射に失敗したのに加え、姿勢制御装置が3基中、2基故障した上、代わりに利用してきたガス噴射エンジンも燃料漏れ事故に陥り、JAXAは当時「地球に戻って来られるかは非常に厳しい」との見通しを示していた。絶望的とされた中で試料を採取し地球帰還を果たした奇跡の物語は大きな感動を呼び、映画化もされた。このプロジェクトマネジャーを務めたのが弘前市出身の川口淳一郎JAXA教授であったことで、初号機に親しみと誇りを抱いた県民も多いだろう。
 今回の挑戦を率いる津田雄一プロジェクトマネジャーは記者会見の冒頭で「本日、人類の手が新しい小さな星に届きました」と述べた。初号機の実績を踏まえながら新たな技術を投入し、最初の難関である着陸を成功させた喜びの大きさが感じられる言葉だ。そして川口教授と握手を交わし「初号機の借りは返しましたよ」と報告したという。初号機が今回の成功に導いたと考えると、青森県人として実に誇らしい。
 ただプロジェクトは着陸で終わりではない。着陸・試料採取は計3回を計画しており、3回目には人工クレーターを作って地下物質を採取する新たな試みに挑む。計画通り進めば20年末ごろ、地球に帰還する。ようやく折り返し地点に到達したばかりだ。満身創痍(そうい)で帰還し、注目を浴びた初号機。2号機も想定を上回る険しい地形に、昨年10月の着陸予定を延期せざるを得ないという、いきなりの難問を突き付けられながらも、それを乗り越えた。きっと新たな発見をもたらす試料を持ち帰ってくれると信じ、川口教授が指揮した初号機の遺伝子を受け継ぐ“子ども”を見守りたい。

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