社 説

 

食品の輸出「地方から積極的な売り込みを」

2019/11/29 金曜日

 

 これまで輸出の実績がない中小の食品メーカーに海外から熱い視線が送られている。昨今は中小の食品メーカーの販路拡大を後押ししようと大規模な商談会も開催されている。本県の企業にも積極的に輸出に取り組むことを期待したい。
 海外での日本食ブームは衰えるどころか、勢いを増すばかり。日本の食料品の輸出額は、2013年から4年連続で過去最高を更新し続け、16年は7502億円に達した。農水省は19年に1兆円にする目標を掲げている。
 日本は海外の農業大国に比べて土地が狭いため、農業のコスト削減が容易ではない。その結果、生産物も割高となる。それでも、高い品質は各国の富裕層を中心に人気を集めており、日本食レストランも増加し続けている。
 このような好機を生かさない手はないと、国内の関係機関や国も支援に乗り出している。17年から首都圏で開かれている「“日本の食品”輸出EXPO」はその一つ。今年も今月27日に開幕し、29日まで開かれている。会場には80カ国から1万8000人のバイヤーらが訪れる規模だ。
 国内食品メーカーの支援策といえば、これまでは海外の商談会に連れていくといったケースが目立っていた。しかし、資金力などに乏しい中小メーカーにとってはハードルが高く、十分な成果を得られているとは言い難かった。そこで、海外のバイヤーらを逆に招くEXPOが開催されるようになった。
 さらに、開幕前日の26日にはEXPOに参加する海外のバイヤーを全国19都市に招いて小規模の商談会を開催。弘前市の会場にもポーランド、ベトナム、中国、米国のバイヤー計5人が訪れ、県内の21社と商談を重ねた。
 会場に設けられたブースでは活発な商談が行われ、地方の商品に対するバイヤーの関心の高さをうかがわせた。関係者によると、ポーランドなどEU(欧州連合)圏の国が地方の商談会に参加することは今のところ珍しいといい、参加した地元企業にとって貴重な機会だったのではないか。
 ポーランドは本県と同様、リンゴ生産で知られており、国民もリンゴを好んで食べるという。来場し、津軽地方の工場で製造されたリンゴのワインを試飲した同国のバイヤーは、共通した食文化を持っていることは販路を開拓する上で有効との認識を示していた。
 地方にある中小食品メーカーの商品へのニーズは確実にあるようだ。企業の規模にかかわりなく、優れた商品を生み出せば、まっとうな評価を受けることができるのだ。経済のグローバル化がますます進む今、自社の製品に自信を持ち、より積極的に売り込むべきだろう。「良いものは良い」。理解してくれる人たちは世界にたくさんいる。

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テレビ離れ「情報提供媒体の効率的活用を」

2019/11/28 木曜日

 

 「また、テレビばかり見て」。こんな言葉が死語とも思えてきそうな調査結果である。時事通信が全国18歳以上の男女2000人に行った「テレビに関する世論調査」(有効回収率62・2%)によると、10~20代の若い世代の約1割が「テレビは見ていない」と回答し、この世代を中心にテレビ離れが進んでいることが分かった。代わって、インターネットの動画投稿サイトや配信サービスを視聴する傾向が高くなっているという。
 調査結果によると、1日のテレビ視聴時間の平均は平日、休日ともに「180分以上」が最多で、平日25・7%、休日34・2%。だが18~29歳は平日12・0%、休日11・1%が「テレビを見ていない」と回答した。テレビ離れが起きている理由については、「動画投稿サイト・配信サービスの方が魅力的」が60・5%で最多。続いて「スマートフォンやゲーム機の方が楽しめる」(57・4%)、「ネットが普及し、テレビを見なくても困らない」(56・5%)、「似た番組や同じタレントばかりで番組がつまらない」(27・3%)などの順だった。
 その時代によって、情報収集手段や娯楽として求め、活用する媒体が変遷するのは当然だ。効率的に自分が見たい情報内容だけを集中・選択できるインターネットは、国内外の多様なジャンルの情報を楽しむことができることに魅力がある。ただ、活用方法によっては、得られる情報が偏る可能性も否定できない。
 テレビは視聴者のチャンネル選択にもよるが、ニュースや娯楽、ドキュメンタリーなどをバランスよく楽しめ、技術的な面でも、この数十年で映像、機器とも格段に進歩した。災害発生時に避難を呼び掛ける即応性は他媒体に比べても群を抜く。一方で、提供情報に関しては「似た番組や同じタレントばかり」との指摘が当てはまるケースも見受けられる。実際、好んで見る番組は最多が「ニュース・報道番組」の75・8%で、「スポーツ」(52・4%)、「ドラマ」(42・6%)、「バラエティー」(35・9%)を大きく上回っているのは、視聴者がマンネリ化を無意識に感じているためだろう。
 テレビをめぐる環境は視聴者の生活様式の変化に伴い、近年大きく様変わりした。一例を挙げれば、いわゆるゴールデンタイムには、かつてのような子ども向け番組やドラマは、ほぼ見られない。テレビ番組の製作現場からは、番組への規制が厳しくなり、思うような内容を製作できない悩みも聞こえ、そうした中でいかに視聴者が求める内容を提供できるかが課題となっている。
 情報獲得手段が多様化した現在、各媒体をいかに効率的に活用するかが課題となる。インターネットとテレビ、ラジオ、紙媒体それぞれの有用性を認識しつつ、バランスよく活用することが望ましい。

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ハンセン病問題「差別の根絶に本腰を」

2019/11/27 水曜日

 

 ハンセン病隔離政策で差別を受けた元患者家族に対し、最大180万円を支給する補償法と名誉回復を図る改正ハンセン病問題基本法が施行され、22日に厚生労働省で補償金の申請の受け付けが始まった。補償金は最短で来年1月末にも支給される見通しだという。補償法には政府と国会による「悔悟と反省」「深くお詫び」という文言が明記されたが、われわれも理由のない差別や偏見を抱いていないか、今一度問い直す必要がある。
 ハンセン病は手足などの神経がまひしたり、皮膚がただれたりする病気。国は患者を療養所に隔離する政策を進め、感染力が弱いことが分かり、特効薬が普及して治る病気になった後も隔離政策を続けた。かなり昔の話だと思ってしまう人も多いだろうが、隔離政策が廃止になったのは1996(平成8)年だから、平成に入ってもこの政策は続いていた。われわれが無関心であってはいけない。
 国の隔離政策をめぐっては今年6月の熊本地裁判決が、患者の家族にも差別や偏見の被害が及んだと認定、国に賠償を命じた。安倍晋三首相が控訴見送りを表明して判決が確定。救済策が議論され、ようやく法の制定までたどりついた。
 補償金は元患者の親子や配偶者には180万円を、きょうだいや同居のおい、めい、孫、ひ孫らには130万円を支給する。補償制度の対象者は全国に約2万4000人いると推測されるという。
 ただ本紙の取材に元患者の男性が語ってくれたように、患者の家族の苦しみは相当なものがあったようだ。国が患者を強制隔離し、家中を消毒したりするのを目の当たりにしたら、恐ろしい病気だと思い込んでしまうだろう。差別や偏見は激しいものだっただろうし、今でも家族訴訟原告団のメンバーは多くが実名を公表していない。元患者の家族だと知られることを恐れ、請求をためらう人も多いだろう。こうした人らにどう対応するのか。元患者や家族への偏見をどう払拭(ふっしょく)して、名誉回復を図っていくのか。課題は山積しており、むしろここからが本格的なスタートなのだろう。改正法の制定を機に、本格的に差別や偏見のない社会の実現に取り組む姿勢が必要だ。
 本県には国立療養所「松丘保養園」がある。全国に13ある療養所の一つで、日本最北端の療養所だ。身近に療養所があることに加え、毎年パネル展が開かれるなど、写真や関係者の話を通じてハンセン病の歴史や元患者の生活をうかがうこともできる。本県は正しい知識を得ようとすればチャンネルは多いといえよう。
 われわれにまずできることは、この問題に関心を持ち、知ろうとすることだろう。国には元患者や家族の名誉回復のための具体的な取り組みを示し、彼らが地域社会に溶け込んで暮らせるようにする責任がある。正しい知識を持ち、厳しい視線で、今後の取り組みを注視したい。

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日韓情報協定延長「先行き不透明な“対話”」

2019/11/26 火曜日

 

 日韓両国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を日本政府に通告していた韓国政府が、失効期限となる23日の前日に通告の効力停止を発表した。協定の延長に方針を転換したことになる。
 GSOMIAは、軍事機密情報の漏えいや流出の防止が目的。北東アジアの安全保障に関する日米韓3カ国連携の「象徴」と目されている。現に北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返している。最悪の事態はとりあえず免れたといったところだろう。
 両国政府は失効回避に向けて協議を続けていたが、韓国側の方針転換の背景には、失効をきっかけに3カ国の連携にほころびが生じることを憂慮した米国からの圧力を無視できなかったことが指摘されている。「いつでも失効が可能」という前提をわざわざ付したのは虚勢にも映るが、経過や子細はともあれ、失効回避の決定自体は評価したい。
 韓国は発表で、日本による韓国向け半導体材料の輸出管理強化措置を世界貿易機関(WTO)へ提訴したことに関し、日韓の対話が続く間は提訴手続きを中断することも盛り込んだ。輸出管理措置をめぐる日韓協議の行方が、GSOMIAの今後を左右するとも言える。「輸出規制撤回に向けた土台が作られた」という韓国側のもくろみと手法には疑問もあるが、両国は関係改善に向けて対話に臨む段階に入った。
 ただ、日韓関係が悪化した要因として忘れてはいけないのは、輸出管理措置の問題以前に元徴用工をめぐる問題、さらには一度合意した慰安婦問題の最終解決を一方的にほごにしたことなど、韓国側の対応にあることだ。韓国側は輸出管理措置で日本側の譲歩を引き出せば満足かもしれないが、日本側の立場は異なる。
 特に元徴用工問題で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた判決とその後の経過は、日韓請求権協定(1965年)で解決済みとする日本の立場とは相容れない「国際法違反の状態」であり、日韓関係の根幹に関わる。その点を解決せずして関係改善は望めない。
 両国は12月下旬に中国で開かれる日中韓首脳会談に合わせ、日韓首脳会談も開く方向で調整することになったが、両国が従来の主張を繰り返すだけでは溝は埋まらない。
 輸出管理強化措置については、韓国高官が経済産業省の発表を「事実をねじ曲げた」と抗議した。「(韓国が)問題改善の意欲を示した」とする経産省発表と、韓国高官が主張する「韓国側に改善の実績を確認できれば、(日本が措置を)見直す」との間にどれほど本質的な違いがあるだろうか。こうした対応は外交手法の一つなのか、それとも国内世論への配慮なのか。関係改善の本気度が疑われる言動で、この点でも先行きの不透明さを感じさせる。

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教皇きょう来日「全世界が平和考える機会に」

2019/11/23 土曜日

 

 ローマ・カトリック教会トップのフランシスコ教皇が23日に来日する。歴代教皇の来日は、故ヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶり2回目。来日のテーマを「すべての命を守るため」としており、唯一の被爆国から、核兵器廃絶に向けたメッセージを世界に発信する見通しだ。
 日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師フランシスコ・ザビエルらが創設したイエズス会の出身で、1987年に宣教活動の視察で、来日したことがある。気さくな人柄やジョークを交えた分かりやすい話し方などから人気があり、公式ツイッターのフォロワー数は4900万人を超える。一部からは「ロックスター」と評されているようだ。
 日本でも話題になったものに、原爆投下後に撮影された写真「焼き場に立つ少年」を、カードに印刷して配布するよう指示したことがある。亡くなった幼い弟を背負い、唇をかんで悲しみに耐えながら、火葬の順番を待つ少年の姿を通じ、核兵器の悲惨さを視覚的に訴えた。今回の長崎、広島訪問は核兵器廃絶を実現させるという強い意志の表れだろう。
 2017年の国際会議では「核兵器は使用するのと同様に保有することも断固として非難すべきだ」と述べ、他国の核兵器に対する抑止目的でも保有してはならないとの考えを示した。しかし、世界から核兵器はなくなっていない。北朝鮮の非核化をめぐる米朝協議は進展が見られず、日本は北朝鮮の核・ミサイルの脅威にさらされている。
 23日午前0時が失効期限の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)をめぐり、一方的に破棄するとしていた韓国政府が期限直前になって延長を発表した。もっとも北朝鮮などの情報を共有し、安全保障に役立てられるGSOMIAを、日本の輸出管理強化の対抗策に持ち出すこと自体、理解に苦しむが、身近に北朝鮮の脅威があるのは韓国も同じであり、延長は賢明な判断。ただ「いつでも失効が可能な前提で終了通告の効力を停止する」(韓国政府)ともしており、結論を先送りしたにすぎない。
 もし核兵器が使用されると再び「焼き場に立つ少年」の悲劇が訪れる。「核なき世界」であるならば、GSOMIAがこれほど注目されることも、外交の切り札にされることもなかったのではないだろうか。もちろん世界平和に必要なのは非核化だけではない。キリスト教を敵対視する「イスラム国(IS)」などが世界各地でテロを企て、多くの命を奪い続けている。日本の警察当局も教皇の来日でテロ警戒を強めている。
 教皇は長崎、広島両市を訪れることで、被爆地が歩んだ悲惨な歴史を肌で感じるだろう。その上で宗教を超えて命の大切さを訴える見通しだ。発信力のある教皇である。日本人だけでなく全世界が平和が考える機会になると期待する。

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