社 説

 

中国国際定期便「期待とともに路線維持に努力を」

2017/5/5 金曜日

 

 中国・北京市に本社を置く航空会社「奥凱(オーケー)航空」の国際定期便が7日から、青森空港と中国天津間で運航されることが決まった。同空港の国際定期便就航は1995年4月の韓国ソウル線、ロシア・ハバロフスク線(運休中)以来22年ぶりとなる。毎週水、日曜の運航で、日本国内での発券体制が整っていないため、当面は中国からの訪日客だけの利用となるが、いずれ本県関係者らが訪中できる双方向の利用も実現する日が来よう。その時まで、しっかりと本県の魅力を中国人観光客に紹介できる取り組みを期待したい。
 奥凱航空は中国国内での手続きを終えた上で3月中旬に国土交通省に申請、4月27日に認可を受けた。既に相当数の予約が入っているという。同社は定期便化に先立ち、1月中旬から2カ月余にわたって青森―天津間で定期チャーター便計74便を運航。結果は利用者1万1474人、搭乗率86・14%と高い数字を記録し定期便化への弾みとなったほか、本県観光の課題となっていた冬場の誘客にも大きく貢献した。
 本県への中国国際定期便就航の実現は、空港がある青森市だけではなく、弘前市をはじめ県内各地の観光地にも乗客が多数訪れることが見込まれ、定期チャーター便の時のような数字を維持できる限りは安定した誘客が期待できよう。また、乗客が帰国後に本県の魅力を周囲に伝え、さらに誘客を呼ぶといった効果も考えられる。さまざまな可能性を秘めた定期便であることは間違いない。
 ただ、本県に先駆けて昨年12月に就航した奥凱航空の函館―中国西安線は搭乗率が低迷したことから、わずか1カ月半程度で運休した経緯がある。函館は観光地としては本県以上に知名度が高いだけに、何が原因だったのか、路線維持のためには何が必要なのかを本県関係者はしっかり検証することが必要だ。
 この点、三村申吾知事は4月28日の会見で「(函館―西安線の運休は)指摘通り。だからこそ、定期チャーター便という“お試し期間”ができた。とても良いもので、お客さまが幸せを感じることが非常に大事だ」と路線維持に意欲を見せた。中国人乗客が求める「幸せ」とは何か、常に追求する本県関係者の姿勢も求められよう。
 県が定期チャーター便に関して行ったアンケート調査では、中国人旅行者の本県旅行の満足度は94%と高く、県内産業への波及効果は約4億8000万円とはじき出された。一方で受け入れ側の課題としては「中国語を話せる人材確保」「中国式習慣・マナーへの対応」などが挙がった。
 「習慣・マナーへの対応」が課題として大きなものとなろうが、「それは日本では、やってはいけない」などと言えるような雰囲気醸成にも努めてほしい。

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相次ぐ閣僚辞任「政治家の資質が問われている」

2017/5/4 木曜日

 

 東日本大震災について「東北で良かった」などと発言し、安倍晋三首相に事実上更迭された今村雅弘前復興相。閣僚の不祥事が相次いでいることを踏まえ、政権の「おごり」や「緩み」の表れとの指摘もあるが、そもそも政治家にとって、言葉は「生命」と言っても過言ではない。その重みが理解できないのなら、政治家の資質に欠けると言わざるを得ない。
 今村氏は発言直後、「首都圏で発生していれば甚大な被害だったという意味での例え」と説明した。しかし愛する人を失った悲しみを抱える被災者や、愛する人を守りたいがゆえに故郷を離れている避難者のことが、頭の、心の片隅にでもあったなら、「東北で良かった」という表現にはならないはずだ。
 今村氏は先月4日にも、原発事故に伴う自主避難者への対応に関し「本人の責任だ。裁判でも何でもやればいい」などと発言。避難者はもとより与野党問わず厳しい批判を浴び、撤回していた。
 更迭後、県選出国会議員の一人は「怒りを通り越して『何で』という思い」とやるせない心情を明かした。まったく同感だ。国会では「東大出身でも人の気持ちは分からない」といった皮肉や、辛辣(しんらつ)な批判も多く耳にした。
 復興担当相という責任ある立場での発言が、どれほどの影響を及ぼすのか考えることもなく口にしてしまう今村氏。やはり閣僚はおろか、政治家でいることにも疑念を抱かざるを得ない。
 また、中川俊直前経済産業政務官が先日、女性問題で辞任した。本人が公の場で説明しないため詳しい状況は不明だが、週刊誌などによれば、こちらも政治家である前に、人格が疑われるような言動が報じられている。その他、閣僚による失言や国会答弁の訂正など失態も数限りない。
 ここに至っては「安倍1強による弊害」との指摘に耳を傾けざるを得まい。第2次安倍政権以降の閣僚辞任は今村氏で5人目であり、首相は「緩みがあるとの指摘は真摯(しんし)に受け止める」とし、閣内の引き締めを図る考えだが、あまりに緊張感に欠けてはいないか。
 与党・自民党でも今村氏の更迭を受け、二階俊博幹事長が講演で「マスコミは余すところなく記録を取って、一行でも悪いところがあったらすぐ首を取れと。なんちゅうことか」などと発言し、こちらも与野党問わず批判を招いた。
 ところで二階氏は、同じ講演で「人の頭をたたいて血を出したという話ではないのだから、いちいち首を取るまで張り切らなくても」とも発言。自派閥の今村氏が相談もなく更迭されたことについて、首相官邸への不満をあらわにした。
 相次ぐ閣僚辞任に加え、幹事長の要職にありながら派閥の都合を優先する二階氏。盤石に思えた政権の基盤が揺らいでいる。

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非常用ゲート放流「ダムの観光資源化に本腰を」

2017/5/3 水曜日

 

 黒石市の浅瀬石川ダムで4月28、29の両日、非常用放流設備「クレストゲート」の試験放流が行われた。初めて行った昨年度は2日間の見学者数が延べ1700人と好評だったが、今回は延べ約230人にとどまった。観光資源として期待されるだけに、来年度に向けた検証と「ダムマニア」と呼ばれるファン以外をも取り込むための検討が求められる。
 同ゲートは計画規模以上のダム流入がある異常洪水時などに開放するゲート。通常は見る機会がない同ゲートからの放流はダムマニアに人気がある。万一に備えてゲートが正常に機能するかなどを確認するのが目的だが、県外のダムでもダムマニアを中心に集客が見込まれるため、試験と観光という一石二鳥の“イベント”として注目している。
 岩手県西和賀町にある湯田ダムでは「ダムカレー」の割引や温泉入浴者への牛乳サービスなど、町を挙げた取り組みを展開し、一定の効果があったようだ。浅瀬石川ダムもダム管理支所と市、市観光開発公社、ダムに近い観光施設などを運営するツガルサイコーでプロジェクト委員会を組織。ダム訪問者に配布する「ダムカード」の提示で、ダム湖畔の道の駅「虹の湖」でのダムカレー割引などのサービスを実施した。
 前回比での見学者落ち込みは、「ダム管理開始後で初」という看板がなくなったことに加え、28日は平日、29日午前は雨天、全国的に知名度のある弘前さくらまつりの満開―といった要素が響いた結果と推測できる。
 ただ見学者の居住地は北海道や秋田県、山口県など全国各地に及び「東北のダムを制覇した」という県内の女性や1人で訪れた県外女性の姿もあった。彼女らの話を聞くと、現地で会ったダムマニアと情報交換するなど、新たなネットワークが生まれる場になっているのも魅力だという。「こけし女子」と称される女性愛好者に支えられた空前のこけしブームに通ずるところがありそうだ。
 こけし女子たちは目当ての職人の作品を収集するほか、各イベントで再会し、こけし談議に花を咲かせるのが楽しみの一つだという。今回の試験放流で初めて会ったダムマニアたちもすぐに意気投合し、ダムの構造やダム湖水の色などで盛り上がっていた。一見、男性ファン中心と思われるダムだが、実はそうでもないようだ。現時点では大ブームとは言えないかもしれないが、まだまだ伸びしろがあると考えていいだろう。
 一般的に市街地から遠い山中にあるダムが多い中、浅瀬石川ダムは目前に黒石温泉郷が広がり、市街地に近いなどの優位性がある。もっと幅広い分野の意見を得るなど“ダム観光”に本腰を入れていいのではないか。市は「田園観光産業都市」を目標にしているのに、このままでは好機を逃してしまうのではないか。

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米艦防護「懸念される過度の協力要求」

2017/5/2 火曜日

 

 自衛隊が安全保障関連法に基づき、平時から米軍艦船を守る初めての「武器等防護(米艦防護)」が始まった。米軍の要請を受けた稲田朋美防衛相の命令により出港した海上自衛隊最大級の護衛艦「いずも」が、房総半島沖で米軍の補給艦と合流し並走した。補給艦は、北朝鮮を警戒監視している米軍艦船への燃料補給などを行うとみられている。
 米艦防護は、昨年3月施行の安保法に盛り込まれた新任務の一つ。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への派遣に際し、陸上自衛隊部隊に付与された「駆け付け警護」に続く対応だ。
 今回の直接の引き金が、緊迫する北朝鮮情勢をにらんだ対応であることは想像に難くない。
 海自などは先月下旬にも米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」と共同訓練を実施したばかり。これに先立つ昨年12月、政府は国家安全保障会議(NSC)で米艦防護に関する運用指針を決定していた。初の実施を北朝鮮の挑発をけん制する一連の流れに組み入れることで、強固な日米連携のアピールとの相互作用を狙ったのだろう。
 駆け付け警護―米艦防護と続く安保法の運用本格化は、自衛隊と米軍の緊密な協力を可能にするのと同時に、両者の一体化の加速をも意味する。
 米艦防護は、日本の防衛を目的とした艦船や航空機が対象。戦闘が行われている現場では行わないとされているが、米軍の姿勢により自衛隊へ過度の協力が求められ、なし崩し的な運用につながる恐れはないだろうか。運用指針では実施状況などに関する公表基準の範囲が限られていて、事後に十分な検証ができないという指摘がある。南スーダンPKOの参加では、「戦闘」の表現が用いられた日報をめぐる隠(いん)蔽(ぺい)疑惑も浮上し、安全保障政策に疑問符が付けられた。
 そもそも、今回の米艦防護の行程は房総半島沖から四国沖まで。北朝鮮がある日本海側からは比較的離れている。実質的な必要性よりは、日米連携のアピールと、運用の既成事実化を主眼としているのかもしれない。
 挑発する北朝鮮、けん制する米国および関係各国とも、本気で交戦を望んではいないだろう。しかし挑発とけん制がエスカレートする中での偶発的な衝突が怖い。そうなると、抑止力に資するはずだった緊密さは逆に“導火線”として日本に作用しかねない。
 日米連携のアピールは北朝鮮のみならず、中国に向けられていると見ていいだろう。もしかしたらロシアも含まれているかもしれない。日本人拉致など日本の常識が通用しない北朝鮮だから―という安易な感情に流れることなく、無血で事態を収束に向かわせる姿勢、そしてその背後に控える大国の動向も意識した慎重な対応が必要だ。

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日ロ首脳会談「長期的視野で領土問題解決を」

2017/4/29 土曜日

 

 安倍晋三首相は27日、ロシアのプーチン大統領と会談した。共同記者会見でプーチン大統領は、北方四島での共同経済活動に向け、夏に官民の調査団が日本から訪問するとし、北方四島への元島民の墓参に関しては、航空機の利用で合意したことなどを公表した。今回の会談により、北方領土問題の解決に向けた具体的な協議をスタートさせたと言えるが、日ロ間の領土問題に対するスタンスの違いを改めて垣間見るものでもあり、その解決に向けた道筋はやはり、長く険しいものになるだろうと予感させる。
 日本側は、今回の会談で、北方領土問題の解決に向けて「重要な一歩」と位置付ける共同経済活動の具体化での進展を目指した。会談冒頭で、安倍首相は共同経済活動の協議開始で合意した昨年の首脳会談に触れつつ、「両国の関係が着実に前進していることを評価したい」と述べた。プーチン大統領も「この数カ月間でかなりの進展が見られる」と語った。
 交渉の進展に期待感を持たせる発言で会談の幕を開けたが、実際の領土問題交渉は昨年の会談以降、停滞している。そのため、安倍首相は突破口として共同経済活動の協議入りに踏み切った。北方四島に日本の資本が入り、人や物の交流が盛んになれば、領土交渉前進に向けた環境が醸成されていくという考えによるものだ。極東地域での経済協力プランにはロシア側も積極的だ。官民の調査団の派遣を皮切りに北方四島での日本企業による経済活動が活発化すれば、ロシア側が態度を軟化させることもあるかもしれない。しかし、共同経済活動について、日本側は日ロ双方の法的立場を害さない形で実現させたい意向だが、ロシア側の態度は硬く、ロシア法に矛盾しない条件に基づいてのみでの実施を主張するなど、双方の隔たりは大きい。
 さらにこうした課題をクリアし、経済活動が進展しても、それだけが先行しては、結果としてロシアの主権を追認するだけのものとなりかねない。日本が目的とする領土交渉の前進にとっては、かえって逆効果になる懸念もある。経済協力の進展は、領土問題の解決にとってもろ刃の剣であることを関係者は肝に銘じなければならない。
 元島民の墓参については、高齢化が進んでいることもあり、今回の合意は歓迎できるものだ。墓参は6月に行われる予定で、ビザなし渡航の出入域の拠点を増やすことも申し合わせており、経済活動と併せ、こうした民間交流をさらに積極的に進めることで、ロシア側との信頼関係の醸成に努められればと思う。
 いずれにせよ長年にわたる北方領土問題が一朝一夕に解決することはない。今回、少しでも開いた窓をさらに開くには粘り強い交渉とさまざまな交流による信頼醸成が不可欠だ。関係者の不断の努力を望みたい。

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