社 説

 

白神財団「節目の年に向け活発な展開を」

2012/3/6 火曜日

 

 世界自然遺産「白神山地」の環境保全と環白神地域の地域づくりを目的とした一般財団法人「白神財団」が民間企業家や大学関係者の手によって設立された。地域住民や企業から寄付を募りながら、地域づくり事業を展開し、2年後には行政や大学なども参画する公益財団化を目指すという。
 また産学官からなる財団の支援組織「白神コミュニティ・ファンド協議体会議」には本県側の弘前市や西目屋村などに加え、新たに秋田県の藤里町、八峰町も加わった。白神山地を行政区域とする全市町村による広範な協力体制が整ったという。20日には弘前市内で造園家の涌井史郎氏を招いた講演会も予定しており、4月以降も都内で講演会を開くなど財団の設立をPRしていくという。今後、財団と協議体会議が互いに連携して活動し、目的達成に向けて前進してもらいたい。
 ブナの原生林に覆われ、多種多様な動植物の生息地としても希少な白神山地は1993年、鹿児島県屋久島とともに日本で初めての世界自然遺産として登録された。以来、豊かな自然を求めて、多くの観光客や登山客が訪れているほか、周辺地域ではブナの植林活動が積極的に行われるなど環境保全・教育の場として生かされている。しかし、登録から18年余りが経過し、一時のブームも過ぎ去ったことから近年は入山者も減少傾向にある。
 もちろん、世界遺産の目的から考えれば、観光客が大挙して押しかける状況は好ましいものではないだろう。しかし、この人類の宝を後世に残すためには白神山地の素晴らしさを発信し続け、同時に多くの人にじかに触れてもらうことが重要な意味を持つ。
 財団では、実施する事業として新しい山村生業の創造や白神独自の再生可能エネルギーの創出などのアイデアを持っているようだ。過度の開発はもちろん慎まねばならないが、白神山地の特性を生かした地域づくりを行ってもらいたい。
 屋久島や北海道知床など、国内の世界自然遺産地域の多くでは既に財団が設立され、それぞれ活発な事業を展開している。白神財団は後発だが、先進地域の良い点を取り入れるとともに、白神の独自性を十分に生かした取り組みを進めてほしい。
 また財団の“応援団”である協働体会議に環白神地域のすべての自治体が参画したことも大きい。複数の自治体にまたがる白神山地は、それゆえに地域の一体的な発信力が乏しかったことは否めない。民間活力の財団を接着剤に環白神地域が足並みをそろえた活動を行うことで、これまで以上の成果を上げられるのではないか。
 2013年には白神山地が世界自然遺産登録20年の節目を迎える。この節目に新たな一歩を踏み出せるよう、財団の今後の活動に期待したい。

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伊達げら「大切に伝えたい祖先の手業」

2012/3/5 月曜日

 

 北国には手の込んだ美しい手仕事が数多く残っていると言われている。
 近代化以前の冬の北国は雪に閉ざされ、農作業はほとんどなく、時間だけがたっぷりとあった。長い冬をやり過ごすため、手業は自然と丁寧に、また緻密になり、発展していった。
 この津軽地方も例外ではなく、こぎん刺しはその代表格である。紺色に染めた麻布に、白の木綿糸で幾何学模様をびっしりと刺しつづる技は、寒さと雪がなければ生まれなかっただろう。
 こぎん刺しが冬場の女性の手仕事なら、男性のそれは伊達げらだった。
 伊達げらは、コートがない時代の外套(とう)のようなもので、男性が妻となる女性のために作り、贈るのが習わしだったという。地元に自生するシナノキの皮を乾燥させて編み、襟の部分に黒と白の糸で鳥居や矢羽などの模様を編み込む。炉端で父から息子へ、連綿と続いた津軽独特の技だった。
 民芸の世界では、こぎん刺しと伊達げらを一対のものと捉える人もあるが、今や地元ですら、こぎん刺しは知っていても、伊達げらを知る人は少ない。作り手は高齢になり、伝承が途切れる瀬戸際にある。
 伊達げら作りは個人の熱意によって辛うじて続いている。継承の礎となるような文献も乏しいのが実態で、例えば同じ津軽地方でも地域によって異なると言われる模様が、どのように分類されるかなど不明な点は多い。
 そうした中、平川市で新たに男性3人が伊達げら作りを始めたことは朗報だ。ぜひとも息長く続け、できることなら裾野を広げていってほしい。
 昔ながらの手仕事は便利な代用品が登場すると廃れ、地元の努力がなければ継承が難しい。現代にどう生かすのかという大きな課題もある。
 一方で、こうした手仕事が地域を特色あるものにしている。
 こぎん刺しは最近のクラフトブームに乗って、その細かな技や模様の美しさが改めて注目され、津軽という地域や風土、暮らしに目を向けるきっかけになっている。手仕事好きを県外から津軽へ引き寄せる魅力にもなっているようだ。
 祖先が生み出し、国内外の関心を集める手業は地域の誇りになる。産業興しの可能性をも秘めている。
 郷土を見詰め直すには、民俗資料と解説が身近にあることが望ましい。地元の子どもたちに学習の機会を与え、大人にとっても温故知新の場所になるだろう。
 しかし、こぎん刺しを含めて、そうした環境が整っているとは言えない。民俗資料は行政機関にも保管されているようだが、特別展などを企画しない限り、一般の目に触れる頻度が少ないことは残念である。
 津軽の風土から生まれた手業を次世代へ大切に伝えていきたいものだ。

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津軽南バス運行「広域連携型の挑戦に期待」

2012/3/3 土曜日

 

 黒石市、平川市、田舎館村の津軽南地域3市村が連携して、2012年度から新青森駅と3市村を結ぶシャトルバスの運行を計画している。認知度向上や東日本大震災に伴う客足の伸び悩みなど課題もあるが、東北新幹線全線開業効果を最大限呼び込もうとする広域連携型の挑戦にまずは期待したい。
 シャトルバスは、黒石市が2010年の全線開業に合わせてスタートさせた「黒石こけし号」が母体。新幹線と直接接続するJR在来線が通らない地域事情から、2次交通事業化を目指す社会実験だった。現在は毎日3往復運行し、新幹線利用客に黒石を「近い存在」としてアピールする。
 同市と隣接する平川市の国名勝「盛美園」、田舎館村の田んぼアートを含め、津軽南地域は田園観光の資源が豊富にある。黒石市は運行当初から広域観光への対応を想定。弘南鉄道黒石駅に比較的近いこみせ通りにも停留所を設け、停留所と近隣施設を結ぶ3次的な接続も歓迎していた。3市村による連携運行は、こうしたコンセプトをさらに具体化した取り組みと言える。
 運行の事業主体は、民間事業者や旅館などで構成予定の運営協議会。3市村は協議会へ助成金を拠出する。総事業費は780万円で、県の東北新幹線全線開業効果活用支援事業を当て込んだ。各自治体負担分は12年度の予算案に盛り込まれ、これから各議会の定例会で審議の対象となる。
 現段階では毎週金、土、日曜日と祝日、有料による運行を予定している。こけし号のような毎日無料でない点は利用客数に影響を与えるかもしれない。3市村で構成する協議会は利用客への配布も想定した観光情報パンフレットを作製したが、誘客促進の観点からバスに乗って行ってみたくなる目的地としての魅力づけも求められよう。
 広域連携バスには、近隣の藤崎町や大鰐町も関心を寄せているという。現段階で両町に直接停留所を置く予定はないが、将来的に、より広域へ効果を波及させられないかを含めた話し合いの場を設けていると聞く。この過程はこけし号が広域連携に発展する様子と重なって映り、一本のバスが持つ可能性の大きさを感じさせる。
 2年目を迎えたこけし号。乗客数は震災で一時大幅に落ち込んだが、今年1月は662人を数えた。前年同月の834人には及ばないが、JR東日本の会員制旅行サービスなどにも支えられ徐々に復調している。ただ、黒石市の担当者によると「徐々に知られてはきたが、まだまだ定着したとは言い難い」。PR対策は移行後も引き続き課題になりそうだ。
 ともあれ、広域連携バスは短期間で運行を終えては誘客効果は期待できない。観光客や関連業界の認知期間を含め、持続可能な運営による息の長い取り組みが求められる。

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震災がれき「政治が責任を果たせ」

2012/3/2 金曜日

 

 「がれき処理で国がもう一歩前に出るべきだ」「気持ちはまさにその通りだ。事業者や自治体への働き掛けを強めながら、国が前面に出て広域処理が進むよう対応したい」
今国会初となった野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁による党首討論で、震災がれき処理をめぐる2人のやりとりである。被災地の負担軽減に向け、がれき処理は政治の責任で推し進めるべき緊急の課題であり、言葉だけでなく行動で示してもらいたいものだ。
環境省の2月20日時点の集計では、立ち入り禁止区域を除く岩手、宮城、福島3県のがれきは計2252万8000トン。このうち埋め立てや再利用など最終処分を終えた量は計117万6000トンにとどまり、全体のわずか5%にすぎない。
同省は岩手、宮城両県の木材がれき400万トンを被災地外で広域処理することを想定しているが、現在は東京都や山形県が受け入れているだけ。2014年3月末までに全てのがれきを最終処分する政府目標の達成は厳しい状況だ。
首相が協力を呼び掛けても一向に進まない被災地のがれき処理。しかし受け入れに前向きな秋田県や静岡県、八戸市など八つの地方自治体は、新たな連携組織を設立する考えを表明した。互いの情報共有を進めるとともに、他の自治体にも参加を呼び掛け受け入れ拡大を目指している。
さらに八戸市は1日付で、岩手、宮城両県と災害廃棄物処理に関する基本協定を締結した。石巻市内の廃飼料約10トンと、野田村の可燃・不燃系廃棄物など計約15トンについて、八戸セメント株式会社で処理試験を行う内容だ。
また、東北町では宮城県気仙沼市の災害廃棄物のうち、放射性物質が検出されない木くずを廃棄物処理業者が受け入れ、チップに加工する取り組みを始めている。
一方で受け入れを検討しながらも、不安を訴える住民の説得に首長らが苦心するという構図はおかしい。国が矢面に立って住民に安全性を説明し、受け入れた自治体には財政的な手当てを講じるなど、国が地方よりも一歩前に出る姿勢が求められている。
折しも首相と谷垣氏が先月末、都内のホテルで極秘に会談していたことが明らかになった。3月中にも提出される消費増税関連法案をめぐり、成立に政権の命運を懸ける首相と、早期の衆院解散を引き寄せたい谷垣氏が、互いの出方を探ったとみられている。
会談の詳細な内容は不明だが、与野党一体で被災地支援に取り組む方針の確認も、テーマの一つだったことを願うものである。とかく足元が危ういと指摘される首相と谷垣氏だが、求心力を高めるため互いにリーダーシップを発揮し、がれき処理という「震災対応」に責務を果たすべきである。

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防災対策事業「市民とともに実効性高めよ」

2012/3/1 木曜日

 

 津軽地方6市の2012年度当初予算案が出そろった。黒石、つがる両市は緊縮型の編成となったが、残る4市は過去最大規模の予算額を計上している。各市の予算案を見ると、特徴的なのは災害対策関連事業に力を入れている点だ。
 青森市は市庁舎を建て替え防災拠点とするための整備事業費や、耐震性に問題がある小・中学校5校の改築などを計画。弘前市は文京、高杉両小学校の耐震化を図る校舎改築事業などのほか、葛西憲之市長のマニフェストを基に行政計画化したアクションプランを初めて改訂し、新たな政策分野に防災、環境・新エネルギーという柱を設けた。平川市は平賀地区への防災無線施設整備のほか、町会への訓練費支援などで住民を主体とした備えに万全を期すための独自施策を展開する。五所川原市は自主防災組織育成助成事業などに予算を盛った。
 予算規模が増大した4市だけではない。緊縮型としたつがる市でも自治組織活動助成事業の補助金を拡充するなど、災害用備品や発電機の購入がしやすい環境を整えた。
 災害対策に力を入れたのは県と同様の傾向だが、大震災による被害が軽微で、復興・復旧関連事業に巨額を投じる必要がない津軽地方の各市が防災を重視したのは「大災害はいつ起きても不思議がない」という危機意識が根付いたことの表れだろう。長引く景気低迷などで歳入の伸びが見込めず、さまざまな課題を抱える中にあっても、限られた予算をやりくりして市民の命を守ることを優先する姿勢は、震災の教訓が生かされたものとして高く評価していい。
 ただ、厳しい財政状況の中で取り組むのだから、実効性を注視していく必要がある。特に自主防災組織に対する助成などの事業については、目的通りに機能する状態が常に維持されていなければ意味がない。東日本大震災では、発電機があっても使い方が分からない、整備不良で使用できない―といったケースも全国的に見られた。備品などがそろった時点で、市民の安全、安心が確保されたわけではない。行政はこのことを強く認識すべきだ。
 大きな被害をもたらすのは地震や津波だけではない。台風や大雨、竜巻、そして今冬のような大雪など多岐にわたる。あらゆる災害を想定して備えるのが行政の役割である。もちろん行政だけが動いても市民の防災意識が低ければ、せっかくの備えも機能しないという事態に陥るのは明らかだ。
 あと10日で世界に衝撃を与えた東日本大震災から1年を迎える。震災から得た教訓を行政と市民が共有し、同じ意識で取り組める態勢づくりが、最大の災害対策ではないか。各種防災事業が始まる新年度は、災害に強い地域づくりへの第一歩になる。

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