社 説

 

成人の日 柔軟な発想で未来を切り開け

2012/1/9 月曜日

 

 きょうは「成人の日」。新成人の皆さん、おめでとう。
 世間一般にはこの日をもって「大人の仲間入り」という言い方をし、成人の日を定めた国民の祝日に関する法律も「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」と定めている。
 成人式に出席して祝辞を受けても「ああ、大人になったんだ」と実感することは難しいかもしれない。この日を誰よりも喜び、感慨深く思っているのはご両親のはずだ。新成人として最初の振る舞いに、ご両親へ感謝の言葉を贈ることを提案したい。気恥ずかしいかもしれないが、これ以上の恩返しはないだろう。
 さて、自覚が有る無しにかかわらず、20歳になった皆さんを社会は大人の一人として扱い、法律を適用していくことになる。
 分かりやすい例が事件の加害者になった場合の対応だ。未成年者が罪を犯した場合、少年法の規定で氏名は伏せられ「少年A」などと発表されるが、満20歳以上は実名。社会の庇護はなく、制裁を受け、最後まで自ら責任を負わなければならない。
 20歳になって初めて許される酒やたばこも、度を超せば害になる。特にたばこは喫煙者だけでなく、煙が周りの人の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになって久しい。手にした権利は、使い方を間違えると社会の迷惑にしかならない。自制をし、他人の立場を思いやるという多角的視点を持ち合わせたい。
 国内の就職環境は改善の見通しに乏しく、就活に苦労を重ねている新成人もいるだろう。近年は非正規労働者が増え、給与所得は伸びず、少子高齢化に起因する年金問題などへの不安から明るい未来を描くことが難しくなっている。政治が日本の針路を示すべきなのだが、それを語らない、あるいは語れない政治の貧困と有権者は、結局のところ同罪である。
 「あれが悪い」「誰も教えてくれない」と不平不満を言っているだけでは格好が悪い。考え、知恵を働かせ、自ら汗を流すことで状況は変わっていく。20歳になって手にした選挙権はそのための手段の一つであり、これからの選挙でぜひとも行使してほしい。
 東日本大震災が起きた「3・11」を境に、物資を大量に消費するといった従来のライフスタイルを見直す動きがみられる。行き詰まっている社会システムを変えられるのは、柔軟な発想と行動力だ。日本社会が大きく変革し、近代国家の幕開けとなった明治維新で中核を成したのは20代や30代の若者たちだった。
 新成人の皆さんが手にしているのは法律上の権利だけではない。これからの未来をつくる無数の可能性がある。皆さんが日本の希望である。

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一体改革素案「国民目線で十分な議論を」

2012/1/7 土曜日

 

 政府・与党の社会保障改革本部が、消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革素案を決定した。
 消費税率は2014年4月に8%、15年10月に10%へ段階的に引き上げ、税収は年金や医療、介護、少子化対策といった社会保障に充てるというものだ。
 関連法案を年度内に通常国会に提出する方針だが、野党は協議に応じない姿勢を示し衆院解散・総選挙を求め、与党内にも増税反対論がくすぶっている。
 今後の動向が政局の焦点となるが、生活に直結する重要な問題であるだけに、国民目線に立った議論を十分に尽くしてもらいたい。
 一体改革は、国の厳しい財政事情が背景にある。政府が昨年末にまとめた12年度予算案では「借金」に当たる国債発行額が当初予算段階で3年連続で税収を上回り、歳入に占める割合は49・0%と過去最悪となった。
 少子高齢化で社会保障費が膨らむ一方のため、このままでは将来世代への負担が増すばかりだ。国債依存度が高い財政運営が限界にきているのは明らかであり、再建に向けた抜本的な改革は不可欠だ。
 ただ、その実施に当たっては不公平感があってはならないし、弱者にしわ寄せがいくような仕組みは避けなければならない。
 素案の柱となる消費増税は、これまでも指摘されているように、低所得者ほど負担割合が増す「逆進性」が課題となろう。
 当初検討された食料品などの軽減税率は見送られ、単一税率とする代わりに、低所得者対策として給付付き税額控除の導入や基礎年金加算などを打ち出しているが、果たして真の対策となり得るのか疑問が残る。経済低迷が長引く中で、消費増税の景気への悪影響も懸念される。
 その一方で、社会保障費の抑制や効率化は、本来よりも高い水準に据え置かれている年金の減額などにとどまっており、財政再建には、より踏み込んだ改革が不可欠であろう。
 また、国民に負担を押し付ける前に、国会議員の定数削減や行財政改革に取り組むのが先であるのは言うまでもない。
 素案には衆院議員定数を80削減する法案を国会に早期に提出することなどを盛り込み、こうした政治改革・行政改革を消費増税の前提としている。
 実施には野党はもちろん、身内の与党内の協力を得る必要があり、ねじれ国会の下で、果たして実現にこぎ着けることができるのか。まさしく野田佳彦首相の指導力が今後問われることになる。
 素案をめぐる動向が政局の大きな焦点ではあるが、くれぐれも国民不在の議論に終始しないでもらいたい。

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自転車環境整備「弘前らしい施策展開を」

2012/1/6 金曜日

 

 東日本大震災で直接的な被害を受けなかった津軽地方だが、直後は多くの不便さを感じた。その困ったことの一つがガソリンの品不足だったろう。交通網の発達が十分ではない地方は車中心の社会だ。日常の足として自動車が必要不可欠という市民にとって、ガソリンスタンドに並んだ当時の危機感は、尋常でなかったはずだ。あのガソリン不足を機に車中心のライフスタイルを見直したという人も中にはいるだろう。
 震災により、鉄道などの交通機関が大きな影響を受けた被災地では、自転車の価値が改めて見直されたという。被災地以外の大都市圏でも停電により生じた帰宅困難状態などをきっかけに自転車がブームになった。
 大学などが数多く立地する弘前市も学生を中心に自転車の利用者が多い土地柄だと言える。冬期間のハンディはあるものの、地球環境に優しく化石燃料などのエネルギーを使わない自転車は今後も利用者が増えていくのではないか。
 ただ、利用者の増加に伴い危惧されるのが安全性だ。車道にあっては自動車よりも“弱く”、歩道にあっては歩行者よりも“強い”自転車が安全かつ快適に走行できる環境は、国内においてまだまだ不十分だと言わざるを得ない。自転車の交通事故は、利用者増加に比例するように全国で増加傾向にあるという。こうした状況に警察庁は自転車は原則、車道を走るなどとした交通ルールの徹底を全国の警察本部に指示。全国で自転車の環境整備に乗り出す動きが目につくようになった。
 弘前市は自転車の走行環境向上に向けた研究会を立ち上げ、本格的な取り組みを始めた。今後、モデル的な路線整備の在り方や走行に適した安全推奨ルートを記したマップづくりなどを目標に自転車の通行量調査などを行っていくという。自転車に適した走行環境といえば、まずは自転車道路などの整備が思い浮かぶが、研究会では通行量の少ない裏道を生かして大通りまで自転車を誘導するようなネットワークの導入なども考えているという。
 城下町特有の狭い道路や一方通行道の多さなど、弘前市の道路事情は制約が多いと言われるが、先進的な地域では創意工夫でその地域に合った環境づくりを実現している。
 弘前市も城下町の特性に合った施策の実現を図ってもらいたい。また市民のみならず、近年はレンタサイクルを使った街歩き観光も観光客の人気となっている。安全推奨ルートのマップづくりは、弘前の道をよく知らない観光客にとって役立つものとなるだろう。ぜひ実現してもらいたいものだ。
 自動車ありきの交通体系から自転車を含めた多様な交通手段を取り入れた新たな体系づくりにつながるよう、今後の展開に期待したい。

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平田容疑者出頭/測りかねる16年後の真意

2012/1/5 木曜日

 

 オウム真理教(現アレフ)による目黒公証役場事務長仮谷清志さんの監禁致死事件で、警視庁が特別手配していた元教団幹部平田信容疑者が12月31日夜、同庁丸の内署に出頭し、今月1日に逮捕された。1995年5月の手配後16年余りを経て、なぜ今になって突然出頭したのか不明な部分も多く、今後の捜査の進展が待たれる。
 平田容疑者は、地下鉄サリン事件などで手配されている菊地直子容疑者、高橋克也容疑者とともに同庁が特別手配していた1人。元教団代表松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の特別警備を務めていたことを含め3人のうちでも最重要人物とされていた。出頭時には現金数万円を所持し身なりも清潔だったため、逃走を手助けした人物がいたとみられる。2人については「どこにいるか分からない」と供述しているが、2人と共通の人物から支援を受けていた可能性もあるという。
 出頭の理由については、接見した滝本太郎弁護士を通じた声明で「東北の大震災で不条理なことを多く見て、自分の立場を改めて考えた」などと述べた。16年余りにわたる逃亡生活の果てに何らかの心境の変化、あるいは昨年12月に同教団をめぐる事件で起訴された被告の裁判が全て終結したことで、自らの境遇に「一区切り付けたい」との思いに至ったのかもしれない。
 しかしその内容は漠としたものである上、説得力に欠ける感は否めない。国松孝次元警察庁長官銃撃事件(95年)が2010年3月で控訴時効になったことで「間違った逮捕はあり得なくなったので早く出てきたかった」と同事件への関与を否定したが、その主張をすんなり是認するには時間差があり過ぎる。
 声明では「教祖(松本死刑囚)の死刑執行は当然」と述べるなど、オウム真理教との決別を強調。被害対策弁護団で信者の脱会を支援していた滝本弁護士への接見を求めたのもそのアピールかもしれない。
 この時期の出頭が、裁判終結に伴う松本死刑囚らの刑執行を遅らせる目的だったとの見方もある。共犯者の刑が未確定の死刑囚は、取り調べや証人尋問が必要となる可能性があるためだ。決別の姿勢や「刑執行と出頭は関係ない」との言葉にうそ偽りがないならば、全てを包み隠さず明らかにすべきだ。事実と反省を示すことが、今できる被害者らへのせめてもの償いだ。
 出頭をめぐっては、丸の内署へ出向く前に訪れた警視庁本部で何度も名乗ったものの、いたずらと思った警戒中の機動隊員に門前払いされたという。失態とされても仕方あるまい。警察官の意識の中で事件が風化していたのではないか。情報提供を募るフリーダイヤルが通話中のままで、容疑者の電話がつながらなかったことも含め気掛かりである。

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「県内経済」求められる自助・共助の姿勢

2012/1/4 水曜日

 

 正月三が日も終わり、きょうから仕事始めという人も多いだろう。2012年が本格的に始動する。
 東日本大震災からの“復興元年”と位置付けられる今年はどのような年になるのか。県内金融機関の関係者は「経済見通しは厳しい」と声をそろえる。日本銀行青森支店が昨年末に発表した県内企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の業況判断指数は2006年12月以来の高水準を記録したものの、既に海外経済減速の影響が輸出関連産業で見られており、先行きは悪化の見込みという。
 震災以降、復興需要に乗って順調に持ち直してきた県内経済だが、新年を迎えて新たな局面に入る見通しだ。同支店の分析では、もともと県内経済の動向は、供給側の動向ではなく需要側の要因で左右される性格が強いという。内需が弱い本県にあって、海外経済減速の影響を県内需要だけでカバーできるのか。同支店側もこの点を大いに懸念している。
 県内の地銀関係者に聞くと、市中金利が低い中でも企業の資金需要はなかなか高まらない。このため、各行は顧客の相談に乗る「課題解決型」の営業を展開し、地域振興に向けて県内外の商工団体と協議を重ねるなど、さまざまな取り組みを進めている。裏を返せば、地方経済はそれだけ厳しい環境に置かれているのである。
 全線開業から2年目に入っている東北新幹線の効果をいかに引き出すか。地域外から“外貨”を稼ぐ意味では、これもまた大きな課題だ。関係団体が盛大に繰り広げた観光客誘致キャンペーンも一段落し、これから本県観光の実力が問われている。
 県内の観光地を見渡すと、1年目は地域によって明暗を分ける形となった。本県を訪れる観光客を取り合う形となっている面もあるようだが、関係者の間では「今こそ地域間の連携が必要だ」との声が聞こえる。北海道新幹線の開業を見据え、弘前市が函館市との連携に力を注いでいる。それはそれで望ましい取り組みではあるが、県内観光地の連携を強化しようという動きがもっとあっていい。
 東日本大震災からの復旧・復興に努めてきた中で、われわれは自助・共助の大切さを実感した。震災以降は、低成長の時代に移行して久しい日本社会の中では、営利を追求する企業であっても社会的責任をより重視した運営が求められているといった指摘もしばしば耳にする。
 国全体が閉(へい)塞(そく)感に覆われる中、残念なことに政治は相変わらず不安定だ。地域の将来は地域で考える姿勢がますます求められている。さらに、自助に努める地域同士が助け合うことでこそ、相乗効果も生まれるのではないか。議論を尽くして、地域が持続できる道を見いだしたい。

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