原子力施設の安全確保のため、原子炉規制法の規定に基づき、原子力事業者やその従業員が守らなければいけない「保安規定」。その順守状況について、原子力規制庁が四半期ごとに確認を行っている保安検査の結果、今年度第3四半期(2016年10~12月)に日本原燃が六ケ所村に保有する使用済み核燃料再処理施設など3施設で、監視を含む4件の保安規定違反が確認された。同庁青森事務所によると、1事業者で4件という違反数はめったにない数字といい、原燃には核物質を扱う事業者として猛省を求めたい。
発表によると、違反があったのは再処理施設2件、ウラン濃縮施設と廃棄物埋設施設が各1件。このうち、再処理施設に関しては、低レベル廃棄物貯蔵建屋で水分を含んだ廃活性炭(低レベル放射性廃棄物)をビニール袋に入れ、それをドラム缶に詰めて保管する際、担当者が独断で袋に切り込みを入れていた上、作業手順書も変更していた。その結果、ドラム缶から液体が漏えいしたものである。
このほか、ウラン濃縮施設では過去の保安検査で指摘を受けた事項に関して、改善提言の評価書を不適切な意思決定手順で策定。廃棄物埋設施設では巡視・点検の状況に関する記録が未作成だったことが確認された。
人には「つい」「うっかり」のミスが付き物だ。ただ、今回指摘を受けた規定違反の内容を見る限り、それは当てはまらないようだ。よかれと思った個人の独断が結果的に保安規定違反と指摘されたことを原燃は深刻に受け止めねばなるまい。
そもそも、原子力施設の仕事に従事する人は工学や医療、発電など人間が生きていく上で役に立つとともに、時に危険な存在となる核物質を取り扱っているという自覚を持たねばならない。保安規定の内容や規制庁の指摘には異論が聞かれることもあるが、決まり事には従う必要がある。組織である以上、個人の独断によって、県民の不信を招くような事態は避けてほしい。
原燃が初めて保安規定違反を指摘されたのは09年4月のことだ。この時の指摘は高レベル廃液ガラス固化建屋内で、廃液が2度漏れるなどしたトラブルに対して、漏えいを検知しながら速やかに対処しなかったなど、今回を上回る5件の違反が指摘されていた。10年3月には、使用済み燃料受け入れ・貯蔵建屋内の作業で生じた布などポリ袋数百袋分となる低レベル放射性廃棄物の仮置きが不適切管理とされた。
原子力規制委員会による施設の安全審査も今後大詰めを迎えることになろうが、組織としての詰めの甘さや油断は早期の施設操業実現に影響を与えかねない。指摘を踏まえ、慎重な対応をし、心して審査に臨むことを願いたい。