社 説

 

公共交通再編「利用者目線の仕組みを期待」

2018/9/15 土曜日

 

 赤字バス路線の見直しなどを軸とした弘前市の地域公共交通再編実施計画が8月末、国の認定を受けた。東北運輸局管内では初の認定。今後5年間かけて、赤字のバス路線を乗り合いタクシーに切り替えるなど、人口減少や高齢化の進む時代でも維持確保可能な公共交通ネットワーク構築に取り組んでいくことになる。
 近年、地方のバスや鉄道など住民の足となる交通ネットワークの維持が難しくなってきている。車社会で普段はバスや鉄道は利用しない人が多いだろうが、運転を控えた方がいい高齢になった時のことや運転免許のない家族のことなどを考えると、地域の公共交通的なサービスも使える環境であってほしいと思う気持ちは理解できる。時代に合った新たな交通サービスが求められているように思う。
 地域公共交通を再編する計画の認定を受けたのは、7月末現在の国の集計で23件だけ。弘前市はこの実施計画の策定に2年以上かけており、この問題への着手は全国と比べても早かったと言える。
 具体的には赤字幅の大きい4方面で、27のバス路線を12路線に集約。新たに8路線に乗り合いタクシーを導入する。乗り合いタクシーは他の路線バスや鉄道などとの接続を考慮したダイヤ設定となっており、一定の利用者が見込める1路線以外は予約に応じて運行する仕組みだ。
 利用者が減少している路線の再編と言われると、不便を強いられることになるのだろうという諦念が生じるが、市側は「効率的な運行にしても、利用者が使いづらくなっては本末転倒。サービス水準は変えず、経営改善もできることを念頭に考えた」と話す。さらにはこの再編案を、利用する住民に理解してもらうための取り組みに相当力を入れたようだ。
 乗り合いタクシーは同市相馬地区で既に導入されており、実績を上げている。ただ今ある路線の廃止や不慣れな予約制の導入に否定的な声が上がるのは市側も想定済み。対象地区で説明会を重ね、バス路線を廃止するというよりはバスに代わって乗り合いタクシーを運行し、利便性については変わらないことを丁寧に伝えたほか、実車を手配しての乗車体験会なども行った。予約も、利用する側は路線名さえ伝えれば、オペレーターとのやりとりで完了するよう工夫している。
 どれだけいい仕組みを考えても、地域住民に受け入れられなければ意味を成さない。今回市が進めたような、利用者の目線に立った取り組みが重要だろう。
 計画は今後5年の取り組みを記載しており、乗り合いタクシー8路線のうち、5路線の運行が10月1日から始まる。東北初の計画認定だが、そこで終わらず、東北のモデルとなるような交通サービスの維持確保に努めてもらいたい。また人口減少は今後も進んでいくことが想定される。住民にとってより良い交通体系について考え続けることが今後も必要だ。

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地元産ワイン「文化として根付くことを期待」

2018/9/14 金曜日

 

 ブドウの町でワイン造りを―。その思いが着々と形になっている。2017年10月にオープンした鶴田町の「WANO Winery(ワノ・ワイナリー)」が次々と商品を完成させ、現在は新酒「ヌーボー」の醸造に取り組んでいる。国産ブドウだけで造られた「日本ワイン」が国内外で高く評価されている中、完成度の高い仕上がりを期待したい。
 糖度の高いブドウ「スチューベン」の生産量日本一を誇る同町にワイナリー(醸造所)を造ろうと、地元有志が15年10月に研究会を設立。17年10月にワイナリーをオープンさせると、すぐに初のワインを完成させた。今年に入ると、原料のブドウ生産者の似顔絵をラベルにあしらった商品を販売。目下、ヌーボーの醸造に励んでいる。
 昨今は日本各地で地元産ワインが造られ、成功を収めている。国際的な評価も高まり、海外の国際コンクールでも相次ぎ金賞を受賞。日本固有のブドウとして「甲州」が初めて国際機構に品種登録されるなど、世界の注目が集まり、ワインの本場・欧州への進出も視野に入っているようだ。
 国内の大手メーカーも積極策に出ている。サッポロビールは北海道北斗市でワイン用のブドウ畑を開設すると発表。この畑のブドウから製造したワインを22年に発売する計画だ。ワイン最大手のメルシャンは長野県塩尻市にワイナリーを新設した。近くの畑で収穫したブドウの仕込みを始め、日本ワインの生産を拡大するという。
 日本ワインの人気を受け、国は輸入した濃縮果汁・ワインを使っている「国内製造ワイン」(国産ワイン)と明確に区分する新表示基準を定め、10月30日から適用する。国内市場は輸入ワインが約7割を占め、残りは国産。既に新基準を反映して流通している日本ワインのシェアは約4%にとどまるという。
 このような状況を踏まえれば、大手の動きも理解できる。ただ、量産して大量に販売することが日本ワインを育てる唯一の方法ではない。生産量は少なくても特徴あるワインを提供すれば、消費者は評価してくれる。日本各地で地元産ワインが造られているのは、その証拠だ。
 ワノ・ワイナリー関係者によると、町内のスチューベンはプライドを持った農家に生産され、それぞれ特徴があるという。「生産者ラベル」は、味の個性を伝えたいとの思いから販売されたものといい、量産とは真逆の発想だ。地元に住む者としては、このような商品が消費者に受け入れられることを強く願っている。
 今年のボージョレ・ヌーボー解禁日は11月15日。ワイン大国フランスから届く新酒を皆が喜んで飲む様子は風物詩となっているが、地元のヌーボーで楽しむのもよいのではないか。ワインが津軽にも文化として根付くことを期待したい。

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ブラックアウト「想定超を考えた対策急げ」

2018/9/13 木曜日

 

 北海道胆振地方を震源とする地震から1週間が経過した。地震では大規模な土砂崩れで多くの命が失われるとともに、道内のほぼ全域が停電する「ブラックアウト」が問題となった。このような事態に陥ったのは初めてという。営業休止を余儀なくされた道内の店舗などで再開の動きが出始めてはいるが、電力の全面復旧は11月以降になる見通しで、暖房需要が増える季節を控え、道民は不安を募らせている。
 ブラックアウトの発端は、北海道電力の供給の約半分を担う苫東厚真火力発電所の緊急停止。電力供給と需要のバランスが崩れると、発電機器などの故障を引き起こすため、道内各地の発電所が次々と停止したという。早期の稼働再開を阻んでいる大きな要因は、タービン発電機の火災が発生した苫東厚真火力発電所4号機の点検・修復。高温の蒸気で運転するタービンを冷やした上で一度分解し、組み立て直す必要があるためだ。
 道内の明かりを奪ったブラックアウト。電力各社は、道外での発生は「ゼロではないが、考えにくい」とする。東日本大震災を踏まえ、電力を融通できる仕組みが強化され、本州と九州で278㌗、本州と四国は380㌗の融通が可能。しかし、本州と北海道間の「北本連係線」の容量はわずか60㌗で、電力融通を十分に受け入れる体制にない。増強工事が行われているが、地震に間に合わなかった。他地域で起きないとした背景には、北海道が抱える特有の事情がある。
 一般の国民はこうした事態になって初めて、生活基盤の脆弱(ぜいじゃく)さを知る。本州に上陸した台風21号で関西国際空港の滑走路が水没し、利用者らが空港内に孤立。西日本の7月豪雨では、土砂災害や河川氾濫などで大きな被害が生じた。そして今回の北海道地震―。大きな災害を乗り越えるたびに、国民一人ひとりが身を守るすべを学んできた。
 一方、7日告示の自民党総裁選で安倍晋三首相(党総裁)は、防災・国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策を今後3年間に集中的に実施することなどを表明した。特定非常災害特別措置法に基づく「特定非常災害」に指定される阪神大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震を経験しながら、いまさら強靱化とは。近年相次ぐ「数十年に一度」の災害のたびに迅速に対応してきたのも、地震予知が難しいのも分かる。なのに、甚大な被害を防げていない。過去を踏まえた対策に見通しの甘さはなかったか。
 北海道以外でブラックアウトは考えにくいと言われても、それが「ゼロではない」限り不安は残る。国や関係機関は、想定を超える事態に陥る可能性があるとの考えに基づく対策を、早急に講じなければならない。そうでなければ、今後起こり得るさまざまな災害で、不幸を繰り返すことになりかねない。

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中核病院「地域医療の体制強化に期待」

2018/9/12 水曜日

 

 津軽圏域8市町村の医療を支える中核病院構想は、実現に向けてスタートラインに立てる環境がようやく整った。弘前市立病院と国立病院機構弘前病院の機能を統合した中核病院の2022年早期開設を目指す内容。同機構が運営主体となり、市立病院は開設に伴い廃止するという。10月上旬にも関係機関が基本協定を締結する運びだ。
 医師不足などに伴い、特に同圏域の2次救急医療は現場の疲弊が指摘されている。医療資源の集約による効率的な医療サービスの提供、2次救急の体制強化といった面で中核病院に寄せられる期待は大きい。
 同時に、その実現には継続可能な費用負担の見通しも不可欠だ。その意味で、関係する同機構、県、弘前大学、弘前市の4者が、費用負担や市立病院の職員の雇用といった懸案を含めて合意に至った意義は大きい。県が16年10月に示したこの2病院統合案に基づく整備を最優先で進める姿勢を打ち出し、4月の市長選で初当選した現市長の意向が反映された結果だろう。
 県の提示後、協議する過程では、前市長が地域包括ケアシステムの拠点としての機能も絡めて整備し、市が運営主体となる新たな「考え」を打ち出していた。この案には中核病院と地域包括ケアを切り離すべき―といった意見や、市の巨額な費用負担への懸念が上がっていた。今回の合意では、市がこれらに対応する形で仕切り直したとも言える。
 中核病院の方向性が定まったことで、同圏域の他市町村も同調しやすくなったのではないか。前市政で示された新たな「考え」に対しては、周辺市町村長から「(構想に)加わる余地がない」など疑問の声が上がっていた。中核病院は圏域にある他の自治体病院の在り方をも左右する大きな存在。それぞれの関係機関には、圏域全体で医療を支え、充実に努める姿勢が必要だ。
 これまで地域医療を支えてきた市立病院の廃止には不安が根強いとも聞く。圏域医療の将来像を具体的に示すことで、不安の払拭(ふっしょく)を図ってほしい。
 中核病院開設までの市立病院の経営改善も忘れてはならない課題だ。施設運営上必要と考えられる常勤医の充足率(5月1日現在、県自治体病院開設者協議会まとめ)は76・7%。県内22自治体病院全体の充足率68・1%は上回っているが、津軽地方の中でも決して高いとは言えない。
 市立病院の17年度事業会計決算で純損益は約5億5200万円の赤字となり、2年連続の赤字決算。累積赤字は約33億7878万円に上っている。医師数の減少に伴い患者数も減ったことが、医業収益減につながった主因という。中核病院の在り方が固まったことが、経営改善の“呼び水”にもなればいい。

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台風21号「台風シーズン到来、備えを」

2018/9/8 土曜日

 

 日本列島に大きな被害をもたらした台風21号。上陸した西日本、特に近畿地方は被害が大きく、関西空港は風にあおられたタンカーが連絡橋に衝突した影響などにより、空港全体が孤立化。5000人以上の利用者が一時、空港内に閉じこめられるなど深刻な影響を受けた。7日には一部の便が運航を再開したが、空港の機能が完全に回復するには、まだ時間がかかりそうだ。
 強い勢力と暴風域を保ったまま日本海を北上した21号は4日深夜から5日未明にかけて本県に最接近した。本県でも津軽地方を中心に倒木被害が相次ぎ、交通機関も乱れたほか、弘前市など8市町で最大8000戸余りが停電するなどの被害が出た。
 収穫の季節を迎える農業にも被害が発生した。弘前市を中心に、津軽地方のリンゴ園地では落果や枝折れ、倒木などの被害が見られた。台風通過後の園地では生産者が、落ちたリンゴを拾い集めたり、散乱した枝やコンテナ箱を集めたりと、その後始末に追われた。被害状況を調査した県りんご協会によると、落果被害の状況は6日時点で、県全体で2018年産の県産リンゴ予想収穫量(45万5500トン)の1%程度と推計している。だが被害程度は地域や園地でばらつきがあり、収穫前のリンゴが3割程度も落果するような大きな被害も局地的に発生。弘前市内では特に「アップルロード」沿いや市の中西部で、多くの落下被害が生じ、中にはリンゴが半分以上落ちた園地もあるという。ほかにも稲の倒伏やビニールハウスの損壊など、台風の爪跡は津軽各地に残された。
 収穫目前で被害を受けた生産者の心情は察して余りある。一方で、今回の台風の勢力の大きさや本県への接近度合いなどを考えれば、より広範で深刻な被害も想像されただけに、予想より軽いものとして胸をなで下ろした生産者も多かっただろう。
 ただ、台風シーズンはこれからが本番だ。今年は9月初めの段階で、すでに21個を数えるなど、台風の発生がいつになく多い。今後の発生状況、進路など関係者にとっては気をもむ日が続く。考えたくもないが、今年が台風の“当たり年”だとすれば、本県に被害を与え得る台風が、再び現れる可能性は十分にあるだろう。警戒の気持ちを緩めてはならない。生産者には、今後も気象情報をチェックし、生育するリンゴの収穫適期も細かに把握するなどして台風が接近した場合に素早く対応できる態勢を整えてもらいたい。また防風網や支柱の点検など、風に対する備えが万全であるか確認をしながら日々の作業を進めてもらえばと思う。
 津軽地方のリンゴ園地はこれから中生種を経て、主力品種ふじの収穫へ進んでいく。これ以上大きな災害が発生せず収穫の喜びを迎えられるよう祈っている。

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