社 説

 

「ワクチン接種」正確な情報と十分な支援を

2021/2/19 金曜日

 

 新型コロナウイルス対策の「切り札」と期待されるワクチンの接種が始まった。国民の期待も大きいが、供給量が不確定なため65歳以上の高齢者への接種が遅れる可能性もある。政府はスケジュールの変更などがあった場合、速やかで正確な情報発信に努める必要がある。またワクチン接種が社会活動を取り戻すための手段であることを周知し、より一層国民に協力を呼び掛けるべきだ。
 政府の計画ではワクチンは厚生労働省主体の医療従事者向け先行接種を皮切りに、県主体の医療従事者向け優先接種、市町村主体の高齢者接種、その他の住民(基礎疾患のある人優先)の順に進められる。
 県は厚労省の計画に基づき接種時期を医療従事者向けの優先接種は3月から、住民(65歳以上高齢者)向け接種は3月下旬から開始する方向で準備を進めている。
 ただ、ワクチンの先行きは不透明だ。欧州連合(EU)が域内で製造されたワクチンの輸出を規制するなど、円滑な確保は見通せない。
 政府はファイザー社と1億4400万回分の供給を受ける契約を交わすが、ワクチン1瓶からの接種回数が6回から5回に減ることが判明したため接種可能者は想定の7200万人から減る恐れがある。また、一般接種の開始時期も明らかになっておらず、一部には「半年後」との見方もある。
 不確定要素が多い中、地方自治体は補正予算の編成や専従組織の設置と職員の配置、接種場所や人員の確保など準備を進めている。ところが規模の小さな町や村には、さらなる難題が待ち受ける。
 それは集団接種に必要な医師や看護師の確保だ。ただでさえ医師の偏在が指摘される中、公立病院の統廃合などにより、隣接する町村でも事情は異なる。
 津軽地方の首長は「人口の多い市部にも悩みはあるだろうが、小さい町や村は最初から医師や看護師が足りていない。限られた医療資源をどう活用するか考えてほしい」と心情を吐露。政府や県に対し、地域住民の命をどう守るのか、解決策を検討すべきと訴える。
 対策としては複数の町村が限られた医療資源を交互に活用する、圏域の中核病院が資源の乏しい町村に出向いて集団接種を担うといったことが考えられよう。
 ただでさえ、今回のワクチン接種は地方に負担が大きい。菅義偉首相は国会で「多くの国民が一日も早く接種できる環境をしっかりつくっていくのが政府の責任」と明言した。
 ならば政府は自治体によって異なる状況を把握した上で、きめ細かな支援体制を検討すべきだ。
 時事通信の2月の世論調査ではワクチンに「期待する」との回答が8割を超えた。これを裏切らないためにも確保見通しや副反応の有無を含め、正確な情報発信が必要だ。

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災害時の外国人支援「事前の備えを万全に」

2021/2/18 木曜日

 

 13日に宮城、福島両県で震度6強の地震があり、本県でも三八上北で震度4、津軽北部などで震度3の揺れを観測した。16日は県内沿岸部を中心に強風に見舞われ、暴風雪で110棟の建物が損壊、18市町村で停電が発生するなど被害が相次いだ。東日本大震災が発生した3月11日が近づき、防災意識は高まる時期だが、改めて日ごろの備えが重要と感じた人も多かったのではないか。
 2月には災害時に外国人をどう支援すればいいのか、市町村職員に具体的な対応を学んでもらおうという研修会が青森市で開かれた。主催は県国際交流協会。講義と演習で、必要な支援や準備について具体例を交えて説明し、災害時の外国人支援の拠点となる「災害時多言語支援センター」についても詳しく解説した。
 同協会によると、県内在住の外国人は6300人を超え、県内ほぼ全市町村に外国人が暮らしているが、相談窓口の開設や生活に必要なことを学ぶ場所づくりに比べると、災害時の外国人支援の体制づくりはそれほど進んでいないのが現状のようだ。今後も県内で暮らす外国人は増えていくのだろうし、全国で災害が頻発する近年の状況を考慮すると、早急に検討を進めるべきだろう。
 避難勧告や避難場所を多言語で伝えるという課題は誰でも思いつく。だが研修会で提示されたような、避難所に無料であること、外国人も使えることを多言語で張り出す必要性についてはどうか。日本人なら当たり前だと思ってしまいがちだ。実際にはせっかく避難所にたどり着いても、周囲が日本人ばかりなので、自分も受け入れてもらえるのか悩む外国人がいるのだという。確かに自分が外国で被災したと考えてみると、気後れする気持ちはよく分かる。
 避難所に入ってからも食事や支援物資の提供など多言語での情報提供が必要だし、復興に向かう段階になれば、さまざまな申請書類を多言語で用意しておくことが求められる。
 行政の側からすれば相当ハードルが高いようにも思われる。英語だけでは十分ではないだろうし、多くの言語に精通する人が役所内にいるとも限らない。だが、講義でも指摘されたことだが、一緒に活動してくれる人を探したり、育てたりすることは可能だ。避難所で使う典型的な文章の多言語バージョンはインターネットを通じて入手が可能だという。
 こうした準備は災害が起きてからでは間に合わない。平時のうちに検討を重ね、準備しておくことが必要だし、特に一緒に行動してくれる人らと良好な関係を築くには相応の時間がかかる。まずは必要性を認識し、行動することが重要だろう。
 同協会は今回の研修を災害時の外国人支援体制づくりの第一歩と位置付け、今後も研修を続けたいとしている。県内外のさまざまな人とつながり、連携しながら、非常時の体制構築に努めてほしい。

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福島県沖地震「コロナ禍の対応と知見取得を」

2021/2/17 水曜日

 

 福島県沖で13日夜に発生した地震は、同県や宮城県で震度6強の揺れを観測した。震源の深さは55キロ、地震の規模(マグニチュード=M)は推定7・3で、東日本大震災の余震と考えられるという。幸いにも死者はなかったものの、負傷者は両県を中心に東北と関東10県で15日時点で157人に上っている。2万2000人余の死者・行方不明者を出した2011年3月の震災から今年で10年の節目でもある。現在は地震への対応の渦中ではあるが、いま一度災害に対する備えを見直し、この状況を新型コロナウイルス禍における避難の在り方を考える機会としてほしいと考える。
 報道によると、人的被害以外の地震の影響は、東北新幹線が新白河―古川間で電柱が折れるなど設備に被害が出たため復旧作業を進めており、全線再開のめどは24日ごろとなっている。常磐自動車道の福島県内一部区間や同県二本松市のサーキット場では、土砂崩れが確認されたが、いずれも人的被害はない。被災地域にある原子力発電所では、大きなトラブルの報告はなかった。
 多くの負傷者を出した宮城、福島両県は先の震災で、未曽有の人的物的被害を受けた地域でもある。それだけに今回の地震は、多くの住民が恐怖感に襲われただろうが、経験を生かした対応も見られた。福島県新地町では、町内全域の約2800世帯が一時断水したものの、70代の無職男性は平素からペットボトル入りの水を大量に備蓄しており、地震直後から家族3人の飲用、生活水として活用したという。震度6弱を観測した宮城県山元町では、60代男性が地震発生から断水までの約1時間で、浴槽いっぱいの水をためることで、生活水には困らなかったという。一方で「震災から10年たち、気を抜いていた部分もあった。念のための備えが必要だと感じた」(60代女性)との声もあった。
 こうした平素からの物資備蓄といった対応はもちろんだが、現在はコロナ禍の中でもある。災害発生時に住民が数多く身を寄せる避難場所は、設備の状況や環境次第では、換気の悪さや人の密集、近距離で行われる会話などから集団感染の危険性が指摘されている。これを防ぐためには、手洗いやアルコール消毒、マスク着用といった住民自身ができる対応の徹底はもちろん、避難場所の分散や同所における換気の徹底などを求めたいところだ。
 震災から10年という節目に被災地を襲った地震、しかもコロナ禍という気が滅入りかねない状況だが、今は災害からの復旧と被災住民が日常の生活を取り戻せるよう努めることが急務だ。官民挙げて復旧のために力を合わせ、特にコロナ禍における災害対応に必要な知見を学ぶ必要があろう。そのことを通じて、今後発生する災害に対しても迅速に対処できるはずだ。

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病院の経営難「放置すれば地域医療は危うい」

2021/2/13 土曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、地域医療崩壊の危険性は確かに高まっている。各医療機関は感染者への対応に追われ、医師、看護師らスタッフは疲弊しているが、さらに経営難という大きな問題が追い打ちをかけている。
 昨今の感染状況の推移を見ると、医療機関が置かれた厳しい状況はもはや、全国的に大差はない。その中で、弘前市の健生病院は、新型コロナへの対応に伴って外来や入院患者の受け入れを制限せざるを得ず、経営が圧迫されているとして、支援金を募る取り組みを始めた。
 昨年10月に同市内で大規模なクラスター(感染者集団)が発生して以降、同病院もスタッフを総動員して対応。ドライブスルーによるPCR検査の検体採取、発熱外来の設置、コロナ感染者の受け入れなどを行ってきた。しかし、コロナ対策を徹底すればするほど、他の診療対応を縮小せざるを得ず、収益が上がらない状況が続いてきた。
 病院側によると、昨年4~12月の収益は前年同時期を比べて約5億円も減少。昨年4月からの外来患者の受診控えに伴う患者の減少に加え、10月以降の新型コロナ対応強化に伴う入院患者の減少などが背景にあるという。
 健生病院は圏域の医療体制を維持する上で必要不可欠な機関となっており、新型コロナへの対応でも重要な役割を果たしている。しかし、そのために、他の診療を制限せざるを得ないというジレンマを抱え、病院経営への悪影響がはっきりと現れ始めている。
 新型コロナ感染者への対応に連日追われる医療スタッフの苦労は、われわれの想像をはるかに超えるものだろう。県外の医療機関ではあるが、疲弊したスタッフが多数退職したケースもある。不眠不休での対応が長く続くのであれば、退職を責めることはできない。
 しかし、医療機関の経営難はスタッフの退職と同様に、あるいはそれ以上に深刻な問題だ。仮に、地域医療の中核を担う病院の経営が立ち行かなくなった場合、再建は容易ではなかろう。そこまで深刻な状況にならないことを願いたいが、新型コロナの収束が依然として見通せない中、ないとは言い切れないのではないか。
 全国で地域医療を担う各病院は現在、ワクチン接種の準備にも追われている。しかし、新たな感染者は日々確認され続けており、もちろんその対応も行いながらである。スタッフの負担は増す一方だ。
 感染を収束させるため、ワクチン接種は可能な限り急がなければならない。ただ、それができるのは医療機関があるからだ。経営難を放置すれば地域医療はますます危うくなる。政府には、感染拡大を収束させる施策とともに、地域の医療機関を守る施策に一層力を注いでほしい。

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森会長辞任へ「“わきまえない”会議こそを」

2021/2/12 金曜日

 

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」と発言、女性蔑視として高まる国内外の批判を受け、11日に辞任の意向を表明した。今回の一連の出来事は、ジェンダーギャップ指数が先進国最下位クラスにある日本社会を象徴する出来事と言えるだろう。
 森会長は、マスコミにも公開されていた日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会にオンラインで参加し、女性理事の任用を進めるJOCの方針に私見とした上で前述の発言をした。さらに「女性は競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、自分も言わなきゃいけないと思うのだろう」と発言。一方で、組織委員会の女性については「皆さん、わきまえておられる」と述べ、JOCの評議員会メンバーからは笑いが上がった。
 問題発言後、欧米各国の在日大使館はインターネット交流サイト(SNS)で「#DоntBeSilent」=「#沈黙しないで」のハッシュタグを付け、片手を挙げる写真を投稿し、差別的発言を容認しない姿勢を表明。海外からは「金メダル級の女性蔑視」とのやゆもあり、国外から注がれる視線の厳しさが以前と格段に異なることに、森会長本人も驚いたのではないだろうか。
 10年前の日本であったなら、発言撤回によりうやむやな形で収束したはずだが、差別的発言に対する国内外の意識が大きく変わっていることに、国際的組織のトップにありながら気付いていなかった点が致命的だった。政権を担う自民党幹部からも当初は「発言を撤回したのでいいのでは」と擁護論が出ており、森会長と同程度の認識だったことがうかがえる。
 これらの状況も踏まえ、単純に森会長1人の認識不足により生じた問題とは言い切れない部分がある。差別的発言を単なる冗談として笑い、撤回すれば流せると考える土壌が日本にあったからこそ、起きた問題だったのではないか。それは森会長の周囲を多くの「わきまえた」人物が占めていたからこそ起きたとも言えるのではないか。
 会議という観点からすれば、確かに女性が出席する会議は発言が多い傾向にある。それは競争意識ではなく、いまだ会議の少数派である女性の立場から発言をしなければと責任感に駆られているように見える。
 そもそも、「わきまえた」人物のみで構成された同調圧力に満ちた組織に、面白みがあるだろうか。一部上層部の意見のみ通し、風通しが悪い組織は新たな価値観でアップデートされることなく、世界の流れから取り残される。今回はその一端が表れたにすぎない。
 日本はそろそろ、「わきまえない」会議こそを意識すべきではないか。ぜひとも、女性出席者の数を増やした上でお願いしたい。

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