社 説

 

東京五輪延期「関係者の英知の結集を」

2020/3/26 木曜日

 

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、開催をめぐる検討が行われていた東京五輪・パラリンピックについて国際オリンピック委員会(IOC)は、臨時理事会を開き、当初予定の今夏から、1年程度延期することを承認した。トーマス・バッハ会長が安倍晋三首相と電話会談を行い、日本側からの提案を受け入れた。これにより、大会は遅くとも来年夏までに開催することになる。
 東京五輪をめぐっては、IOCが予定通りの7月に開幕する方針を示したものの、世界保健機関(WHO)がその後、「パンデミック(世界的流行)が加速している」と表明。新型ウイルスの感染拡大が世界的に続き、収束が見通せない状況にあることから、複数の国内オリンピック委員会(NOC)や代表選手らから、次々と延期を求める声が上がり、IOCが延期を含む検討を行うと表明していた。
 過去に戦争による中止はあったものの五輪の延期は今回が初めてとなる。「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など、さまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」とするオリンピックの理念をいま一度、かみしめた時、延期という判断をせざるを得ない現在の状況を嘆かずにいられない。世界最高レベルのアスリートたちの躍動に心を躍らせようとしていた国民の一人として率直に残念に思う。また観光、文化、交流と、さまざまな場面での波及効果が期待されてきただけに、返す返すも延期という現実を目にすると、やりきれない思いがする。
 だが、東京五輪は中止ではない。延期である。この違いは大きい。むしろ現在の新型ウイルスに感染しないかどうか、その恐怖に包まれている状況の中で、大会を開催することを良しとする人は、それほど多くはいないのではないか。
 延期承認の報道がなされてから、国際競技団体や選手からは延期を歓迎する声が相次いでいる。選手、観客、大会関係者のいずれもが、最善の環境の下での開催を願っていることに違いはない。今回の延期の判断は、やむを得ないものと理解できる。
 だが、選手だけでも1万人を超える参加が見込まれる世界最大のスポーツイベントである。延期となるに当たって、さまざまな課題や障害が待ち受けることになる。
 競技場の確保や他の大規模スポーツ大会と開催時期が重ならないような配慮といった大会運営面、選手の選考やコンディションづくりといった競技面、さらに宿泊施設の確保や交通機関の対応など、受け入れ態勢も見直す必要がある。関係者の英知を結集して、東京五輪の未来をより良いものにしたい。

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新型コロナ本県発生「拡大防止へ最大限の努力を」

2020/3/25 水曜日

 

 本県初の新型コロナウイルス感染者が発生したことが判明した。県の発表によると、感染したのは、いずれも70代で八戸市の会社経営男性とその妻。2人とも同市内の病院に入院しているが、肺炎症状は確認されていないという。県や地方自治体、関係機関はこれまで講じてきた対策を踏まえつつ、感染拡大防止に向け最大限の努力を続けてほしい。
 男性は今月9~15日にツアー旅行でスペインに渡航し現地で感染した可能性が高いという。16日に成田空港到着後、新幹線で八戸市へ移動。八戸駅からタクシーで帰宅したが、翌17日以降喉の違和感を覚え、37・0度の熱と咽頭痛の症状が出た。妻にも発熱が確認された。2人は帰国者・接触者相談センターに相談せず、直接医療機関を受診し、その後の検体検査で陽性が判明した。
 本県はこれまで国内で新型コロナウイルスの発生が確認されていない、数少ない県の一つだったが、ついに来るべき時が来たと言えるだろう。ウイルスの感染者数は国内外で増え続けており、発生は時間の問題だった。
 国や県などがこれまで講じてきたコロナ対策は多岐にわたった。手洗いやせきエチケットの徹底の呼び掛け、多くの観客が集まるプロスポーツ競技の無観客試合、大規模の会合やコンサートの中止、全国一斉休校要請などが主なものだ。中には、ある自治体で予定していた小規模の会合で関東圏から本県に訪れる予定の講師が、移動途中に感染する危険があるとの危機管理の見地から、自主的に来青を取りやめたケースもあった。
 これまで感染がなかった本県では、こうした動きは大げさとも見る向きがあった。しかし、事前に対策を講じてきたのと発生が確認されてから対策を講じるのとでは、有事においては前者に軍配が上がるだろう。
 では、現在の事態を受けて今後本県で何ができるだろうか。まず第一に言えるのは、感染拡大の防止だ。23日夜に県庁内で記者会見した三村申吾知事は「八戸市や市保健所と連携して、感染拡大防止に向け全力で当たっていきたい」と力強い決意を示した。ウイルスに感染した男性が参加したスペイン旅行には、三八地域の男女9人が同行していることから、参加者の帰国後の移動ルートや移動に使用した交通機関の確認などを急がなければならない。そして、病状の悪化による死亡という最悪の事態だけは何としても防いでほしい。
 津軽地方は三八地方から遠く離れているとはいえ、今の事態を「対岸の火事」と見る人はもちろんいないだろう。本県に隣接する秋田県でも既に発生が確認されている。関係機関には、地域住民との連携による“防波堤”が及ばないケースに備えて、現状の対策をさらに充実させてほしい。

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東京五輪「延期を含む検討は現実的」

2020/3/24 火曜日

 

 新型コロナウイルスの感染拡大により、開催が危ぶまれている東京五輪について、国際オリンピック委員会(IOC)は、延期を含めて検討すると発表した。大会組織委員会や東京都などと協議した上で、今後4週間以内に結論を出す予定としている。
 IOCはこれまで、五輪を当初予定の7月24日に開幕する方針を表明していた。だがその後、複数の国際競技団体や各国内オリンピック委員会などから延期を求める声が出始め、さらに五輪の出場辞退を表明する選手も現れるなど、IOCの判断に対する批判、疑問が国際的に急速に高まっていた。
 開催国に住む者としては、東京に招致が決まってから、準備に準備を重ねてきたことでもあり、できるならば、予定通りの開催を願わないわけではない。だが、新型ウイルスの感染が全世界で拡大し続ける現状に目を向け、選手や観客、スタッフの健康などを第一に考えるならば、延期を含めた検討という、IOCの判断はやむを得ないものだと思う。
 IOCは声明で、関係者全員の健康を守り、新型ウイルスの封じ込めに寄与するため、これまでとは異なる東京五輪のシナリオ立案に着手するとし、わが国の関係当局、各国際競技団体、各国内オリンピック委員会などと協力しながら、4週間以内に検討を終えるとしている。
 IOCの声明で、評価したいのは今回の検討に「東京五輪の中止」を議題にしないと明示したことだろう。五輪は、過去に戦争などにより、中止となったことがあるが、今回の事態は、政治的な対立を背景にした戦争などとは次元の異なるものであり、仮に延期という判断が示されたとしても世界中の理解を得られやすいのではないか。
 国内でも安倍晋三首相が「仮に完全実施が困難な場合は、アスリートの皆さんのことを第一に考え、延期の判断も行わざるを得ない」と発言するなど、国内の関係者からは、延期やむなしとする声が多く聞かれる。
 もちろん延期となれば、クリアしなければならない問題がさまざまに生じる。開催時期をいつにするかでも異なるが、IOCが指摘するように、延期により、利用できない施設が一部に出てくるだろうし、他の大規模な国際スポーツ大会と開催時期が重ならないような配慮も必要となる。場合によっては、選手の選考などに影響が及ぶものも出てくるだろう。
 競技面だけでない。宿泊施設の確保や交通機関の対応など受け入れる側にも混乱が生じる可能性がある。検討は多方面に及ぶ。だが、世界最大のスポーツイベントの開催を、関係するすべての人々が心から祝い、楽しむことができるようにするために必要な措置だと言える。この困難を乗り切れば、東京五輪は人類のスポーツ史に残る歴史的な大会となる。

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コロナ対策で補正「生活への影響を最小限に」

2020/3/21 土曜日

 

 新型コロナウイルス感染症の対策として、県は総額92億4700万円に上る2019、20年度補正予算案を発表した。政府の緊急対策第2弾の決定を踏まえた対応で、感染拡大防止策と医療提供体制の整備、学校の臨時休校に伴う課題への対応、中小企業の事業縮小や雇用への対応―が主な内容。財源確保のため、財政調整用基金を約6億6700万円取り崩す。県は財政健全化に向け、ここ数年収支均衡の達成に力を注いでおり、基金の取り崩しは16年度当初以来だという。
 本県で感染は確認されていないが、新型コロナウイルスの影響は県民生活や事業活動に影を落としており、対策は急務だ。補正予算案は18日、県議会定例会に追加提案され、週明けの23日には質疑が行われる。対策に不足はないか、これから求められる支援策は何かなど、議論を深め、今後に生かしてほしい。
 補正の対応で、重要なのは感染拡大防止対策だろう。24時間態勢の相談窓口を設置するなど検査や相談態勢を強化し、介護施設や保育所など社会福祉施設が、感染予防に必要な消毒液、空気清浄機などの備品を購入する経費を支援するという。マスクや消毒液などは一般県民の手には入りにくい状況が続いている。予防したくてもできないということがないように、重症化リスクの高い高齢者が集まる施設からまずは手当てすべきだ。
 ただ、世界中に感染が広がる中、本県でも誰がいつ感染してもおかしくない。補正予算では医療機関への人工呼吸器などの追加配備、感染症指定医療機関以外の医療機関での入院病床確保などを支援し、感染した際に県民の命を守るための医療提供体制の整備を図るとしている。
 一方で、心配なのは地域経済への影響だ。県が行った最新の調査では、中小企業の約6割が直近1カ月の売り上げが減少したと回答。旅行や会合の自粛による飲食業や宿泊業の落ち込みに加え、製造業は海外からの部品調達に苦慮、小売業は卒業式の縮小で生花や記念品の売り上げが減るなど、影響は多方面に及ぶ。
 農林水産分野でも休校措置で給食用の牛乳がキャンセルとなって損失が生じた事例などがあり、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化すれば、影響を受ける事業者はさらに広がる可能性がある。
 国や県は事業者には融資枠拡大といった対応で支援する構えだが、本当にそれで十分なのか。県は入国制限などに伴う農業の労働力不足への対応や需要回復後を見据えた観光コンテンツ創出にも予算を計上した。本県の特性を十分考慮し、引き続き必要な対策を見極めてほしい。
 県民は感染予防に神経をとがらせているが、慎重に行動することが地域経済の低迷につながってしまうのではつらい。感染防止に十分留意しつつ、事業活動や生活への影響を最小限に抑える方法も模索していかなければならないだろう。

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聖火の行方「日本主導で世界的収束目指せ」

2020/3/20 金曜日

 

 東京五輪の聖火が20日、日本に到着する。世界最大のスポーツの祭典に向け、一気に盛り上がる―はずだった。五輪開催の是非が問われることになろうとは、新型コロナウイルスの感染が世界中に広がるまで思いもしなかった。世界保健機関(WHO)の委員会が緊急事態宣言を見送っていたのだから、国際社会が危機感を抱くはずもない。「たられば」は言うべきではないが、もっと早くに宣言していたらどうだったかと考えてしまう。
 WHOがパンデミック(世界的流行)との判断を示したのは、イタリアなどで感染拡大が深刻化した今月11日。以降は「当初は皆、過小評価していた」(フォンデアライエン欧州委員長)、「(ウイルスとの)戦争状態」(マクロン仏大統領)などの発言が相次ぎ、同時に五輪の延期・中止論が語られるようになった。
 国際オリンピック委員会(IOC)と各国内オリンピック委員会(NOC)の選手委員との臨時電話会議では、予定通り7月開幕を目指すIOCの姿勢に反発する声もあったという。非常事態を宣言し、国民生活を制約した国では、代表選手選考会を開催できなかったり、満足に練習できなかったりしており、選手がベストな状態で五輪を迎えられない可能性が指摘されている。
 一方ですでに代表に選出された選手たちは、本番に焦点を合わせて調整を続けており、特に自国開催となる日本選手は、晴れの舞台を心待ちにしているだろう。早い段階で収束に向かい、開催時の終息が見通せればいいが、残念ながら現時点で聖火の行方は不透明だ。「アスリートファースト」とは何か。IOCは近く難しい判断を迫られることになる。
 ギリシャ・オリンピアで採火された聖火が特別輸送機で日本に到着する。しかし、オリンピアへの中学生派遣や到着式で予定していた小学生の参加は中止され、歴史的イベントを楽しみにしていた子どもたちは涙を流した。近代五輪の理想を示す言葉として知られる「参加することに意義がある」。選手ではないが、子どもたちは“参加”する機会を新型コロナウイルスに奪われた。IOCは「予定通り」行う方針だが、採火を含めて五輪であると考えると、すでに「予定」は崩れている。とはいえ、多額を投じて準備を進めてきた開催国としては、中止はもちろん、代表選手に影響する1年以上の延期という選択肢は持ちたくない。
 「友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」がオリンピズム(五輪のあるべき姿)。日本は国内の収束を急ぐとともに、オリンピズムにのっとって世界的収束に向けて主導的に取り組むべきだ。こうした姿勢は東京の安全を国際社会に印象付けるだろう。医療を含む関係機関が一丸となって、諦めずに7月開幕を目指したい。

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