社 説

 

原発再稼働「再エネ拡大の行程表が先だ」

2022/5/7 土曜日

 

 岸田文雄首相が5日、ロンドンの金融街シティーで講演し、エネルギーのロシア依存度を低減するため改めて原子力の活用を進める考えを示した。最近、原発の再稼働に積極的な発言が目立つ首相。電力供給への懸念が拡大していることが背景にあるが、エネルギー源として原発の再稼働推進が理解を得られるのか、夏の参院選に向けて世論を探る狙いもありそうだ。
 ロイター通信によると、首相は講演でロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー安全保障をめぐる環境を一変させたと指摘。エネルギー分野における脱ロシアに貢献するため、再生可能エネルギー(再エネ)に加え、安全を確保した原子炉を有効活用するとした。
 中長期的には、エネルギーの安定供給を確保しつつ、2050年カーボンニュートラル、30年温室効果ガス46%排出削減という公約の達成を目指す。
 そのため、30年に17兆円、今後10年間で官民協調により150兆円の新たな関連投資を実現させる考えも示した。その投資を引き出すため、30年までの包括的政策のロードマップを早急に策定するという。
 ここで注目したいのは、再エネ拡大に向けた政権の本気度である。政府が昨年10月に策定したエネルギー基本計画では再エネによる発電量の割合を30年度で36~38%まで高める目標を掲げているが、太陽光や風力は限られた国土で敷地確保が課題となり、気象条件にも左右される。
 ならば潮汐(ちょうせき)力や洋上風力など四方を海に囲まれた日本ならではの再エネの実用化が不可欠だ。地熱なら24時間稼働できる。これらは実証段階だったり技術開発の途中だったりする。投資を引き出すためにも、政権がロードマップで具体的な政策を示し本気度を見せる必要がある。
 一方で、自民党内には代替エネルギーについて「原発しかない。このままだと12月以降は大停電が起こるかもしれない」との声もある。実際、今年3月には東京電力や東北電力管内で電力が不足し、停電の恐れがあるとして初の電力需給逼迫(ひっぱく)警報が発令され、供給への不安を印象付けたばかりだ。
 エネルギー基本計画では30年度の原発比率を20~22%と設定したが20年度の実績は約4%。36基中、現在稼働しているのは5基にとどまる。
 首相は海外訪問前、記者会見では原子力の活用について「極めて大切だ」と発言。テレビ番組では原発再稼働に関し、原子力規制委員会の審査について「合理化、効率化を図りながら体制を強化し、できるだけ(再稼働)可能な原子力発電所は動かしていきたい」とも語った。
 世論の反応を探るための発言だろうが、脱ロシアを旗印に原発再稼働を推し進めても理解は得られまい。やはり再エネ拡大への具体的な道筋を示すことが先である。

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知床観光船事故「人命を守る意識が見えない」

2022/5/6 金曜日

 

 北海道・知床半島沖で26人が乗った観光船が沈没した事故は、発生から2週間近くが経過した。これまで14人の死亡が確認され、行方不明者12人の捜索が続く。海上保安庁が運航会社「知床遊覧船」(斜里町)を家宅捜索するなど、社長と行方不明の船長の業務上過失致死容疑での立件を視野に捜査を本格化しているが、会社側に乗客の命と安全を守る意識があったとは到底言い難い。
 捜査の最大の焦点は、出航判断時に事故発生の可能性を予見できたかどうかだ。社長は先月27日の記者会見で、出航可否の判断基準が「港内の波の高さが1メートル以上、風速8メートル以上などの場合は欠航」で、「出航時点では1メートル以下だった」と説明していたが、同30日の乗客家族への説明会では波の高さを0・5メートルに訂正していた。社長の言い間違いなのか理解不十分だったのか、それともその場限りの言い繕いだったのか判然としない。しかし判断基準を含む安全管理規定は海上運送法に基づき事業者側が作成し、国土交通省に届け出る事項。それすらないがしろにされていたように映る。
 「海が荒れるなら引き返す条件で(出航を)決定した」という「条件付き運航」も疑問だ。事故当日は強風、波浪注意報が出されていた。地元の元遊漁船員は「ここの海を知っていれば、(波浪)注意報で船を出すことはしない」と指摘し、運航会社の元甲板員も出航判断を疑問視する。そもそも海が荒れたら引き返すのは当たり前で、荒れることが予期される状態では条件付けは何の言い訳にもならない。海難事故の怖さを軽視する一つの表れと言っていい。
 立件には事故原因の特定が不可欠だが、水深約120メートルの海底付近に沈んだ船体の損傷の有無確認は容易でない。行方不明者の船体内部での捜索や船体引き揚げには特殊な潜水技術を持つ民間業者が加わるが、捜査は長期化するだろう。
 運航会社の安全管理規定では、船長が運航管理者である社長に対し、決められた地点に達した時に通過時刻や天候、風速、波浪などを連絡する必要があったのに、事故当日は船長から連絡を受けて記録する作業を行っていなかった。当日は会社事務所に社長はおらず、代わりに連絡を受ける運航管理補助者の社員もいなかった。事務所の無線も不具合がありながら、携帯電話による運航状況の把握も指示していなかったという。その船長の携帯電話は事故当時、通信エリア外にあった可能性が指摘され、衛星電話は船に積んでいなかったとみられている。
 こうした通信環境の不備と沈没との直接的な因果関係は薄いかもしれない。しかし、当たり前の通信環境が確保されていれば助かる命はあったかもしれない。安全管理規定の実効性確保や観光船の設備強化など行政側にも課題はあるが、事業者側の人命を預かる自覚が先決だ。

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エー・プレミアム「県産品PRに成果」

2022/5/5 木曜日

 

 県とヤマトグループが連携して行っている県産品の輸送サービス「A!Premium(エー・プレミアム)」の2021年度利用実績が公表され、国内向けの利用が過去最多となったことが分かった。国内向け、海外向けを合わせた全体の実績は前年度比約17・6%増の4419個。このうち国内向けは4312個で、前年度を15・8%上回った。
 エー・プレミアムの営業がきっかけで始まった県産品の関連取引(輸送手段はエー・プレミアム以外)も前年度実績の倍近い7692個となっており、関連取引を合わせた利用実績は前年度比56・0%の大幅増。新型コロナウイルス禍での落ち込みから、順調に回復しているようだ。
 スピード輸送と保冷一貫輸送というエー・プレミアムの強みを最も生かせるのは水産品で、取引品目の8割は鮮魚や貝類などの水産生鮮品だが、21年度は青果品の取引も拡大した。内訳を見ると、青果品は前年度の461個から約1・7倍の773個に拡大。嶽きみ、一町田のセリ、大鰐温泉もやし、津軽の桃など本県ならではの食材が高評価だという。
 関連取引ではホタテ稚貝やワカサギなどの水産冷凍品が前年度の560個から4287個と大幅増。生鮮水産品以外にも青森の食材のファンを増やしているということだろう。引き続き魅力ある商材の掘り起こし、売り込みに尽力してほしい。
 コロナの感染拡大が収まらず、依然として輸送サービス面や飲食店の営業などに影響がある中で実績を伸ばしているのは、コロナ禍という環境の変化や新たなニーズを的確に捉えた営業活動、販路開拓に積極的に取り組んできた成果だと思う。
 例えばコロナ禍の影響が比較的少ないとされる回転寿司チェーン店との取引が順調に推移。エース商材の活ホタテを売り込もうと、貝料理専門店や高価格帯の飲食店への営業を強化、新たな取引が始まったという。飲食店以外の販路開拓にも取り組み、大阪市のサービス付き高齢者住宅との間では海峡サーモン、嶽きみなど、年間を通じた取引が始まり、継続しているとか。
 コロナの影響で外食を控え、お取り寄せなどネットショッピングへの関心が高まっていることを受け、ECサイトを活用した家庭食向けの販路拡大にも取り組んでおり、こちらも一層の利用増が期待できそうだ。
 コロナでほぼ休止状態となっている海外向けは個別対応で香港やインドとの取引があった。長く活用してきた沖縄国際物流ハブが停止しているため、輸送スキームを再構築し、以前の取引先との取引再開や新たな商流の構築に向けた取り組みを進め、利用増を図りたい考えだ。
 コロナ禍にあっても停滞せず、時代の変化を捉えて積極的な取り組みを展開している「エー・プレミアム」。21年度の活動をベースに、今年度もさらなる飛躍を期待したい。

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憲法施行75年「改憲論議は国民主権の視点で」

2022/5/4 水曜日

 

 日本国憲法施行から75年が経過した。新型コロナウイルスへの対応、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う危機意識の高まりを受け、改憲を訴える声、現行憲法を保持する必要性を訴える声がともに上がっている。
 憲法を改正すべきか、すべきではないのか。改憲論議は長らく続いているが、国民を巻き込んだ活発な議論が十分尽くされているとまで言えないのが実情だ。
 改憲派からは、憲法が今の時代にそぐわない、不足している部分があるとの指摘がある。ただ、現行憲法を基本的に保持したまま、足りないとされる一部を追加するにとどめるのか。あるいは前文を含め、全体的に変えていくのかでも大きく意味合いが異なってくる。
 改憲を求める声は長らくあり、特に現行憲法は太平洋戦争で敗戦国となった日本に対し、GHQ(連合国軍総司令部)から押し付けられた憲法だという点についても不満が聞かれていた。一方、新たな憲法作成時、主権が天皇にあるとするかつての大日本帝国憲法から、主権が国民にあるとうたう新たな憲法草案を日本側が示すことが当時できなかった、ともされる。外から持ち込まれなければ、現行の国民主権の憲法にはならなかったのかもしれない。
 海外でも憲法改正が行われており、ロシアでは2020年7月、国民投票による賛成多数の結果、憲法が改正された。投票率68%、賛成78%と国民の過半数が改憲を支持。長らく権力の座にいるプーチン大統領の任期は2024年までとされていたが、改憲により最長で2036年まで大統領の任期を務めることが可能となった。
 「強いロシア」と愛国主義を掲げ、国内で高い支持を得るプーチン大統領だが、長期政権をさらに維持するには改憲が必要だった。長期政権は権力腐敗などの問題が付きものだが、改憲に伴い、プーチン大統領には「任期切れ」という歯止めが利くのかも不透明となっている。
 ロシアの改憲はプーチン大統領が自ら提案し、国民が支持したのだから口を挟む余地はない、と言われればそれまで。だが、権力側が示す改憲論議は、時に危うさをはらむことがあることを見せ付けた。
 憲法は国民を縛るものではなく、国民の主権を守るため国家権力を縛るためのものだ。75年前に施行された日本国憲法については、時代にそぐわない部分も出てきているかもしれない。だが、国を縛るかせの形を変えるという意味において、改憲はごく一部であろうと、国民に対して非常に重要な影響を持つことは疑いようがない。
 日本の今後を形作る上で、改憲論議を深めることは意味があろう。ただ、権力側が国民を制御しやすくなるのではなく、主権者である国民にとって意義があるという視点に立った議論を求めたい。

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ウクライナ侵攻長期化「一刻も早い停戦を願う」

2022/5/3 火曜日

 

 世界に大きな衝撃を与えたロシアのウクライナ侵攻から2カ月以上が経過した。戦争は長期化の様相を呈しており、事態の収拾は全く見えない。国際社会の方策は手詰まり感が否めず、結局はロシア側が“戦果”をどう判断するかにかかっているのが現状だ。いまだ多くの命が奪われている。一刻も早い停戦を願うとともに、苦難が続くウクライナ国民に寄り添うことも忘れてはならない。
 ロシア軍が侵攻を開始したのは2月24日。以降、首都キーウ(キエフ)の陥落を目標とした軍事作戦のほか、東・南部の支配地域拡大へ進軍を続けた。キーウをめぐっては、ウクライナ側の抵抗によりロシア軍は撤退したが、東・南部では現在も激しい戦闘が続いている。
 ウクライナ側は主戦場となっている東・南部で徹底抗戦の構えを崩していない。停戦交渉は一時、条件提示まで進み、希望の光が差したかに見えたが、ロシア軍が撤退したキーウ近郊で民間人への残虐行為が次々と明るみになり、ウクライナ側は「戦争犯罪」と反発。以来、交渉は暗礁に乗り上げたままだ。
 ロシア側は対独戦勝記念日に当たる9日までに、ドネツク、ルガンスクの東部2州の制圧を目指しているとの見方がある。同日までの戦況判断が一つの分岐点になりそうだが、2州掌握は難しい情勢のため、侵攻の長期化が指摘されている。米欧日の制裁に加え、多大な戦費で経済の弱体化が予想されているものの、プーチン大統領は近く、兵力の大量動員へ「特別軍事作戦」から「戦争」へと位置付けを拡大するとの観測も浮上し、現状では停戦への機運は皆無と言っていいだろう。
 ただ、それはウクライナ国民の苦難が続くことを意味する。日本国内ではさまざまな募金窓口が設けられており、中でもウクライナ大使館へ寄せられた善意は50億円を超えている。同大使館は寄付を武器購入に使うことはなく、避難者の生活支援やインフラ復旧などに充てるとしており、戦闘の長期化も見据えて支え続けていくことは肝要だ。
 ウクライナからの避難民については、全国の自治体などが積極的に受け入れを表明し、来日した人数は既に約700人に上る。学生についても、全国の国公私立大約30校が受け入れへ連携する動きが出ている。政府は避難民への生活資金支給など手厚い支援策を打ち出したが、今後は孤立を防ぐため、地域での交流やケアが求められよう。
 ウクライナへの支援は直接手を差し伸べることができず、できることには限りがある。とはいえ、戦争が泥沼化の様相を帯びる中、理不尽に苦難を強いられている人たちがいることを忘れてはならない。停戦後には都市や生活の再建という大きな課題が待っている。停戦の早期実現を願いながら、復興までを視野に入れた支援の在り方を考えていきたい。

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