社 説

 

文献調査へ新たな動き「賛否の主張議論し方向性を」

2020/9/12 土曜日

 

 原発から出る使用済み核燃料を再処理する過程で発生する高レベル放射性廃棄物(核のごみ)について、北海道西部の神恵内村で新たに最終処分地選定の第1段階に当たる「文献調査」の応募検討に向けた動きが浮上していることが分かった。国が2017年に全国の処分適地を示した「科学的特性マップ」を公表後、2例目となる。
 道内では今夏、同じく道西部の寿都町が応募検討に向けて動き出しているが、これまでの経緯を見る限り、調査はおろか応募に至る道のりすら決して楽ではない。もし、同村で動きが本格化した場合、周辺自治体や「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」で核のごみは受け入れ難いとしている道などは、自らの主張を伝えることはもちろん大事だが、頭ごなしになることなく、村の主張にも耳を傾け、どのような方向性が最適なのかを打ち出してほしい。
 同村は道西部の日本海側に面し、南側に隣接する泊村には稼働を停止している北海道電力泊原発がある。同町とも距離的には近い。科学マップ上では、南部の一部を除き、ほぼ全域が非適正地に分類されている。村議会によると、地元商工会が8日、村議会に文献調査受け入れに向けた取り組みの促進を求める請願を提出。これを受けて村議会は、15~17日の9月定例会で審議する見通しという。村役場で記者会見した高橋昌幸村長は「議会の審議に影響があるようなことは現時点では言えない」と話している。
 しかし、考えなければならないのは、なぜ同じ道内から2自治体が立て続けに最終処分地選定調査の応募に前向きな姿勢になったのか、だろう。全部で3段階ある調査のうち第1段階となる文献調査を受けるだけで、国から最大20億円の交付金を得ることができる。同町は厳しい財政状況の中で、この交付金を活用する考えを明確にしている。神恵内村の場合は、理由は明らかになっていないが、主産業は漁業で、人口はすでに1000人を割り込み、823人(8月末現在)。今年度一般会計当初予算は35億円余といい、その半分以上となる交付金は大きな魅力と映ることは想像に難くない。今後、理由を述べる場において、村関係者はなぜ、今、自らの住む場所での調査に名乗りを挙げたのかを明確に説明してもらいたい。
 多くの原発が停止している現状とはいえ、大多数の国民が核エネルギーを享受してきた事実がある。「それでも核のごみは嫌だ」という心理が働くのはやむを得ないだろうが、処分地選定に向けた動きを、これまでのように総力を挙げて封じ込めてしまうのでは、物事が進まない。最終的に処分場を建設するかどうかの判断はまだ先となる。一度、調査の先例を作った後で賛否について議論する場面があってもよい。

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ドコモ口座被害「社内体質がもたらした問題」

2020/9/11 金曜日

 

 NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を使って、預金が不正に引き出される被害が全国で相次いでいる。ドコモによると10日正午現在の被害は66件、総額約1800万円に上る。1年以上前にも同様の被害があったが、ドコモは問題を把握していたにもかかわらず、適切な再発防止策を講じなかった。根底にあるのは極めて希薄なセキュリティー意識。国が進めるキャッシュレス化に対する国民の不信感、不安感を招いた責任は重い。
 ドコモ口座は、登録した銀行の預金口座からチャージ(入金)し、スマートフォンなどを使って代金決済や送金できるサービス。しかし、大きな落とし穴があった。口座開設時の本人確認はメールアドレスのみで、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)などによる認証はないため、架空名義のメールアドレスで開設した第三者が、不正に入手した銀行口座番号と暗証番号を使えば、預金者になりすまして引き出すことが可能だった。
 昨年5月にりそな銀行と埼玉りそな銀行で被害が発生。両行は新規登録を停止したが、ドコモが行ったのは1カ月に入金できる金額の上限を100万円から30万円に引き下げた程度。つまり1回の被害額が約3分の1になっただけで、なりすましを防ぐなどの策は講じなかった。
 10日正午までに被害が確認されたのは、ドコモが提携する35行のうち11行で、みちのく銀行も30万円が引き出される被害1件を確認した。第三者が口座番号などを不正に入手したとみられ、同行からの顧客情報漏えいはないという。35行は同日、口座の新規登録を停止した。ただ、すべての確認には至っておらず、今後さらに被害が拡大する可能性がある。
 ドコモは同日になって丸山誠治副社長が問題発覚後初めて記者会見し「不正を排除する仕組みがなかったのが最大の問題」と陳謝。被害者に全額補償するとともに、今月末までにSMSなどを使った認証を導入する意向を示した。
 新しいサービスを導入する際には、システムに欠陥があるとの前提で、事前に想定される問題の芽を摘み、導入後にも想定外の事態に即応できるよう、常に備える。業種に関係なく一般的なことである。
 格安スマホの参入による事業者間の競争激化に加え、キャッシュレス化対応、同業他社との差別化を急ぐ必要が生じた。メールアドレスだけの容易な本人確認は「多くの人に使ってもらう戦略」(丸山氏)というが、競争の中で自社の優位性を確保するために提供し続けたのが犯行に利用可能なサービスであり、その結果が1800万円の被害である。これが日本電信電話公社を前身とする業界大手がすることか。丸山氏は謝罪と反省を口にしたが、急ぐべきは“常識外れ”の社内体質改善だ。

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自民総裁選「一極集中是正で積極議論を」

2020/9/10 木曜日

 

 自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏による論戦が始まった。新型コロナウイルス対策が最重要課題ではあるが、深く関係する一極集中の是正について問題提起し、積極的に議論してほしい。
 3氏の政権構想や記者会見などを見ると、地方創生・地方活性化について、論点の一つとして取り上げられてはいる。
 中でも一極集中是正を大きく掲げたのは石破氏だ。「東京一極集中を是正するための税制の在り方を今考えないでどうするか」と問題を提起し、「国策として地方に分散しないと国家が持たない」とも訴える。
 菅氏は基本政策で「最低賃金の全国的な引き上げを行い、農業改革や観光をはじめ頑張る地方を政治主導でサポートする」としている。
 岸田氏は「最新の技術、イノベーションを活用する形で東京の過度の密集(解消)、地方活性化を果たしていく。こういった政治の取り組みは大事ではないか」とする。
 石破氏は別として、菅、岸田両氏の主張は従来の取り組みの継続だったり、新たな要素を加えたりするものだ。そもそも地方創生は安倍政権の看板政策の一つだった。
 2020年に東京圏の転入超過を解消して地方との転出入を均衡させる目標を掲げ、自治体への財政支援などを通じての移住促進や、地方での雇用創出に取り組んできたが、東京一極集中は加速するばかり。ついには目標達成の時期を24年度に先送りした。
 日本の人口の3割が集中する首都圏は、ひとたび感染症や自然災害に見舞われればぜい弱なことが、今回の新型コロナではっきりした。
 東京圏における経済・社会活動の停滞は地方へも悪影響を及ぼす。この構造を変えない限り、新たなウイルスの感染拡大や首都直下型地震が発生すれば、また同じことが起きる。いずれも専門家は近い将来、高い確率で起きると予想する。
 かつてない危機に直面している今だからこそ、“国のリーダー”を選ぶ選挙において、危機リスクの分散を積極的に論じるべきではないか。
 もちろん地方活性化も重要課題であり、本県などが求める新たな過疎対策法の制定や、地方創生の取り組み継続は不可欠だ。
 ただ、耳障りの良い活性化策が聞きたいわけではない。なぜ一極集中が問題なのか、どう解消するのかが聞きたいのだ。
 例えばリモートワークの拡大が、地方移住を後押しするとの見方がある。ならば政府は本社を首都圏から地方に移転する事業所に対し、税制で優遇する制度を作ってはどうか。
 一極集中の是正について政治が真剣に考え、議論を重ね、政府や社会を動かすべきだ。新たな危機が訪れる前に。

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自民党総裁選告示「長期政権の総括踏まえ論戦を」

2020/9/9 水曜日

 

 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が8日告示され、石破茂元幹事長(63)、菅儀偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)が立候補した。7年8カ月に及んだ安倍政権継承の是非を争点に、新型コロナウイルス対応や経済、外交など重要施策をめぐる論戦が始まった。
 総裁選の本命候補とされる菅氏は党内7派閥のうち5派閥の支援を受け、国会議員票を固めて優位に立っている。追う岸田、石破両氏は地方票を取り込んで巻き返しを図りたい考えだ。
 同日午後に党本部で所見発表演説会と共同記者会見に臨んだ3候補。菅氏は「安倍首相が進めてきた政治を継承し、発展させる」と明言し、新型コロナ収束を最優先課題に挙げ「国民の命と健康を守る。社会・経済活動の両立を図る」と語った。岸田氏は安倍政権で外相と政調会長を務めたことに触れ、「チーム安倍の一員として仕事ができたことを誇りに思う」と強調し「安倍首相の残した成果を土台として次の時代を考えていかなければならない」とした。安倍政権の政治手法への批判をにじませる石破氏は、公職選挙法違反の罪に問われた河井案里参院議員の陣営に党本部が1億5000万円を振り込んだことを念頭に「国民から政党助成金を頂いている。党の金をどのように使ったのか、国民にきちんと示す(べきだ)」とした。
 3候補のスタンスの違いが垣間見える演説会・記者会見となったが、何と言っても、政権党の自民党総裁選は、事実上、次期首相を選ぶものだ。争点となっている安倍政権継承の是非を議論する上で、まずは長期政権の功罪をしっかりと総括する必要があろう。
 安倍首相は第2次政権発足以降、国政選挙に勝利し続け、政治の安定を実現させた。首脳外交で、国際社会での日本の存在感を高めたことも確かだ。大胆な金融緩和など経済政策「アベノミクス」は首相の代名詞ともなった。ただ、格差拡大や人口減少、地方の衰退など日本社会が抱える長期的課題の解決には至っていない。異論を封じ込めるような政権の体質が、政治不信を助長した面もある。森友・加計学園問題や「桜を見る会」をめぐる問題など長期政権ゆえのおごりも指摘される。
 今回の総裁選は党員・党友による投票を省略して行われる。各都道府県連による地方票は本県など44都府県連が党員らによる予備選で投票先を決めるものの、地方の声が十分に反映されるとは言い難く、「派閥ではなく地方の声を聞く姿勢を示してほしかった」という声もある。
 長期政権が招いたゆがみ等、改めるべき点は改め、安倍政権で先送りされた課題にどう取り組み、またコロナ後の社会の設計図をどう描くのか。新たな時代を切り開くリーダー選びは、派閥ではなく国民目線に立った論戦を期待したい。

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合流新党代表選「政権選択肢となり得るか注視」

2020/9/8 火曜日

 

 立憲民主、国民民主両党などによる合流新党の代表選が7日告示され、国民の泉健太政調会長、立憲の枝野幸男代表の順で立候補の届け出が行われた。10日に投開票が行われ、新たな代表と新党の党名が決まる。合流新党には、立憲、国民、無所属合わせ、約150人の国会議員が合流予定で、これにより、2017年に分裂した民進党以来となる規模の野党が誕生する見通しだ。新しい代表は野党第一党のかじ取り役として、その責務は極めて重いものがある。代表選の行方を注視したい。
 長期政権となった安倍晋三首相が退陣を表明し、日本の政治は今、一つの転換期を迎えている。新型コロナウイルスの感染拡大により、国民の生活は一変した。日本の経済は疲弊の極みにある。冬に向けてさらなる流行が懸念される新型コロナ対策に、経済の抜本的な立て直しなど、政治に求められる役割は大きい。合流新党には、現政権に対するチェック機能を果たすことに加え、しっかりとした対案づくり、さまざまな政策を深化させるための徹底的な国会での議論などが今まで以上に必要となることは論をまたない。
 だが、合流新党に対する有権者の期待は高まっているといえるだろうか。安倍政権下の国政選挙では野党候補が乱立、共倒れを繰り返し、結果として長期政権を許してきた。野党間の連携不足だけではない。立憲、国民両民主党の前身である旧民主党時代には、さまざまな政策をめぐっての党内不和が日常化し、政党として、有権者の信頼を損なっていったことは記憶に新しい。今回の合流をめぐっても原発ゼロ政策などをめぐり、合流の足並みは乱れた。旧党時代の悪癖を引きずり、同じ轍(てつ)を踏めば、合流新党は、あっという間に有権者から、そっぽを向かれることになるだろう。
 立候補の届け出を終えた両氏は「提案型野党を訴える。新型コロナウイルス対策、消費税を軸とした経済対策を争点にしたい」(泉氏)、「国民のリアルな暮らしを直視し、政権の選択肢となり政治に緊張感を取り戻す」(枝野氏)と、それぞれ意気込みを語った。
 両氏には、これらの言葉に内実が伴うような、何より有権者に新党がどのような日本の未来図を描き、国民をリードしようとしているのかが明確に伝わるような真摯(しんし)な論戦、選挙戦を望みたい。
 同時期に自民党総裁選も行われる中、衆議院の解散・総選挙の可能性も取りざたされている。総選挙となれば、合流新党が野党共闘の軸となるだろう。態勢を整える時間は多くないのかもしれない。合流新党が有権者にとって政権の選択肢となり得るかどうか、試される時は近いだろう。一強多弱の政治状況を変えることができるか。合流新党と新代表が取り組むべき課題は多い。

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