社 説

 

深刻化するナラ枯れ「徹底した対策で拡大防ぎたい」

2019/11/5 火曜日

 

 ナラ類の広葉樹が病原菌の影響で枯死する伝染病「ナラ枯れ」が深浦町で深刻化している。県と国の調査によると、2019年シーズン(19年7月~20年6月)の被害木は10月25日現在、1万3712本。過去最悪だった18年シーズンの5・7倍にも上り、事態の異常さがはっきり分かる。
 県内のナラ枯れは10年に同町大間越地区で初めて確認され、11年以降はなかったが、16年に再び同地区や十二湖周辺で見つかった。以降、被害木は急激に増加。18年シーズン(18年7月~19年6月)は2409本に上った。被害木が確認される範囲も拡大しており、北上している状況という。
 県と国による19年シーズンの被害報告によると、被害木の内訳は民有林8368本、国有林5344本。全体の9割弱に当たる1万1980本が旧岩崎村に集中し、全体の9割以上がミズナラだった。被害範囲は南端が県境の大間越地区、北端は風合瀬地区と海岸線沿いに広く及んでいる。
 被害が急激に拡大した理由は何か。ナラ枯れは、害虫のカシノナガキクイムシが運ぶ病原菌「ナラ菌」が幹の中でまん延して道管を詰まらせ、通水障害が起きることで発生する。県が今シーズンに行った調査では、カシノナガキクイムシは昨シーズンの4倍近い430匹が捕獲された。
 被害拡大の原因について、有識者の一人は▽昨冬は暖かく、カシノナガキクイムシが死なずに越冬したとみられる▽今年は平年より夏の気温が高い上に雨が少なく、ナラが弱って被害拡大を招いた―の2点を挙げている。
 害虫の繁殖については、天候や樹木の状態などさまざまな要因が影響するとされるほか、隣県からの侵入も考えられるといい、状況を予測するのは容易ではない。さらに、ナラ枯れ発生の背景には、ナラ類の大径木化があるとの指摘も以前からある。幹が太くなるほど害虫が繁殖しやすくなるため、ナラ枯れの発生を防ぐには、ナラ類を適度に活用して森林を若返らせることも必要なようだ。
 いずれにしても、このままでは被害はさらに拡大してしまう。関係機関は、被害木の伐倒・くん蒸処理を行うほか、合成フェロモンを利用してカシノナガキクイムシを誘引、殺虫する「おとり丸太法」も行う方針という。まずは基本的な対策を徹底したい。
 ナラ枯れの拡大は生態系や森林の防災機能に悪影響を及ぼすほか、景観を損なうため観光にも打撃を与える。さらには、ドングリの凶作などを引き起こし、クマの目撃件数増加にもつながっているとの指摘もある。とにかく影響は広範囲に及ぶ恐れがある。大切な森林を守るため、関係機関が一丸となって取り組むことを改めて求めたい。

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洪水対策「最大の想定で浸水に備えを」

2019/11/2 土曜日

 

 県が新たに、岩木川水系の平川や腰巻川、旧十川など8河川について、想定される最大規模の降雨で河川が氾濫した際の「洪水浸水想定区域」を指定、公表した。県は2020年度までに洪水で相当な損害を生じる恐れがある35河川の浸水想定区域を公表するとしており、これで公表済みの河川は26河川になった。
 台風19号による記録的な大雨で、東日本を中心に大きな被害が出たばかり。幸いにも本県の被害は限定的だったが、全国では多数の死傷者が出たほか、3万棟を超える建物が全壊や床上・床下浸水などの被害を受けたとされている。各地で道路の陥没や土砂崩落で孤立する集落も出た。適切なタイミングで適切な行動を取らなければ命に関わるのだと、改めて強く認識した人も多かったと思う。
 洪水浸水想定区域はこれまでの想定の「50年に1度の豪雨」を「1000年に1度」に見直したものだが、今や「50年に1度」の想定では心もとない。今後、県が指定、公表した洪水浸水想定区域を基に、各市町村で洪水ハザードマップの策定が進められるが、自分の居住地の状況を一度しっかり確認しておきたい。
 浸水想定区域図は県のホームページで確認できるが、想定される最大の浸水深は平川と腰巻川で7・9メートル(大鰐町長峰沢田)、後長根川で5・5メートル(弘前市三世寺)、旧十川、金木川、松野木川では5・2メートル(五所川原市金木町)、堤川と駒込川では4・5メートル(青森市筒井)となっており、一般的に家の1~2階が浸水する深さだ。万が一の際はどこに避難すればいいのか、家族全員が確認し、情報を共有しておくべきだろう。浸水面積も従来の想定より大幅に広がっている。水深が低い地域では簡易的な土のうを準備するなど、事前に被害を軽減するための対策を検討することもできるはずだ。
 配慮が必要な人らの命をどう救うべきかということも今後の重要な課題だ。今回の台風19号では体の不自由な人や、障害があって集団での生活になじめなかったり、ペットを飼っていたりと、さまざまな理由で避難をちゅうちょする事例が報じられている。結果として命を落とした人もおり、痛ましい限りだ。
 県の洪水浸水想定区域の公表を受け、各市町村は社会福祉施設などの要配慮者の利用施設を地域防災計画に記載し、施設の管理者は避難確保計画を作って避難訓練を行うなど、防災・減災を図るとされているが、施設利用者以外の配慮が必要な人の対応についても、考えるべき時代だろう。もちろん、当事者もいざという時の自分と家族の身の守り方について、真剣に考えてもらいたいと思う。
 大きな災害に見舞われるたびに、われわれは課題を発見し、学んできた。災害はいつ来るか分からず、平時の備えが何よりも重要だ。まずは自助、自分自身の行動を考えることから始めてみたい。

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首里城火災「文化財に準ずる施設も対策を」

2019/11/1 金曜日

 

 那覇市の世界遺産、首里城跡で31日、首里城正殿と北殿、南殿など7棟を焼く火災があった。正殿は太平洋戦争中の沖縄戦で焼失しており、今回焼けたのは1992年に復元したもの。復元とはいえ、沖縄県のシンボルであることは変わらず、焼け落ちる姿が沖縄戦を知る同県民の目にどう映ったのだろうかと考えると、心が痛む。
 午前2時40分ごろ、正殿付近で煙が上がっていると119番があった。消防によると正殿の向かって左側から火が上がり、木造の正殿を覆う激しい炎は強い風にあおられてコンクリート造の北殿、南殿、奉神門、鎖之間(さすのま)、黄金御殿(くがにうどぅん)、二階御殿(にーけーうどぅん)に次々と燃え移り、鎮火するまで11時間を要した。首里城のある首里城公園では10月27日から「首里城祭」が開かれており、31日はイベント会社が会場設営のため屋外で照明などの機材を整備し、午前1時半ごろ退去。以降に敷地内にいたのは警備員だけだったという。警察と消防は1日にも実況見分し、出火原因などを調べる。
 正殿などが焼け落ちる様子を、ぼうぜんと見守るしかできなかった付近住民からは「あまりに衝撃が大きすぎて涙が止まらない」「沖縄の人にとって大事なものなので悲しい」といった声が聞かれた。中には沖縄戦を思い起こす人もいたのではないだろうか。煙の臭いが充満する現場を視察した城間幹子市長は「言葉もない」と語った。沖縄県民が抱く喪失感は想像できないほど大きいはずだ。本県でも06年に弘前城の子櫓(ねのやぐら)を、招魂祭の花火で焼失している。焼け落ちる櫓を直接、目にした当時の人は、現在の沖縄県民と同じ思いだったのではないだろうか。
 文化庁は今年4月、パリの世界遺産・ノートルダム大聖堂火災を受け、世界文化遺産や国宝・重要文化財の防火管理状況を緊急調査し、建造物全体の約2割で老朽化による消火設備の機能低下の恐れが判明。首里城跡は世界遺産だが、正殿などは文化財に当たらず、この調査対象外だった。建物外側に延焼を防ぐドレンチャー設備を有すが、消防法でスプリンクラー設置義務のある建物に該当せず、内部にスプリンクラーはなかった。
 未明の火災でけが人はいなかったが、沖縄を代表する観光名所、しかも祭り会期中である。出火時間によっては大惨事になっていたかもしれない。復元とはいえ多くの観光客が訪れており事実上、世界遺産の一部と言えるだろう。文化庁は首里城火災後、文化財の防火設備の点検、確認を改めて求める通知を出したが、文化財だけ保護すればいいわけでないことは今回の火災で分かったはず。文化財に準ずる性格を有する施設に対しても、適切な防火対策を義務付けるなど、消防法と併せて見直すことが必要ではないか。

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ガソリン携行販売「事件防止へ一層の対策を」

2019/10/31 木曜日

 

 総務省消防庁が、ガソリンスタンドでガソリンを携行容器に詰めて販売する際、購入者の身元や使用目的を確認するよう義務付ける方針を決めた。7月に発生した、京都府のアニメ制作会社「京都アニメーション」の放火殺人事件を受けた規制強化策として、再発防止につなげる狙い。関係省令を改正した上で来年2月1日の施行を目指すこととしている。
 ガソリンは揮発性や引火性、燃焼力が強く、火を付けた場合は瞬時に燃え広がる危険性がある。それだけに取り扱いには慎重さが求められ、法令などで販売に当たっての項目が定められている。携行缶も材質や容量などの規格が消防法で定められている。このため、ガソリンを買い求める顧客が自ら容器に給油したり、詰め替えしたりすることができない。携行缶を使ってガソリンを購入するのは、主に農業機械用の燃料とする農家の人たちだ。
 携行缶を使って購入したガソリンが結果的に大量殺人を招いた事件に使われたことを鑑みれば、使用目的などの確認を義務化することは当然であろう。改正案によると、ガソリン購入者の身元は運転免許証などの身分証で確認することを基本とする一方、身元が明らかな常連客については、確認作業を省略化できるようにするという。事件とは無関係であり、仕事として日常的にガソリン購入のため携行缶を使用する人にとっては手間が増えることになる。しかし、誤った使用目的を持つ何者かによる、ガソリンを利用した犯罪を未然に防ぐためには、やむを得ない側面もあると思われる。
 ガソリンを凶器とし、結果多くの人が犠牲になった事件は、これまでも数多く引き起こされてきた。2000年6月に宇都宮市で発生した「宇都宮宝石店放火殺人事件」では6人が犠牲になった。翌01年5月に弘前市で発生、5人もの命を奪った「武富士弘前支店強盗殺人・放火事件」はガソリンを含む混合油を犯行に使用したものだった。同年9月には、名古屋市で3人が犠牲となった「名古屋立てこもり爆発事件」も起きている。
 こうした事件を受けて、これまでもガソリンの取り扱いに関する法改正が行われてきた。例えば、名古屋の事件後にはポリ容器などへのガソリン販売が規制された。今回の法改正も「京アニ事件」を受けての対応である。
 しかし、これまでの「何かあったから」の法・省令改正は行政対応が後手に回ったと見られても仕方あるまい。平成以降最悪の、36人もの焼死者を出した京アニ事件のことを考えれば、過去の対応に抑止力があったのか疑問も残る。消防庁など関係機関には、携行缶を含む現行のガソリン販売の在り方にどのような問題点、課題があるのかを調べ上げた上でさらなる対策を検討し、二度と悲惨な事件が発生しないよう努めてもらいたい。

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津軽弁変換システム「郷里を見詰め直す契機にも」

2019/10/30 水曜日

 

 弘前大学が、AI(人工知能)を活用して津軽弁を標準語や多言語に翻訳するシステムの開発に当たり、基となる津軽弁の例文募集を開始した。12月まで、ウェブページ上で受け付け、3万例文の収集を目指している。
 同大は2017年にシステムの研究を開始し、これまで医療関連を中心とした約3000例文を収集している。もっとも、一言語の翻訳・変換の学習には最低20万程度の例文が必要といい、開発はまだ道半ばのようだ。
 津軽弁はその衰退が指摘されて久しいが、その一方で、県外出身者らとの意思疎通の障壁にもなり続けている。両者の気持ちの行き違いが「おかしみ」あるいは「笑い」のレベルにとどまっていればいいが、企業の商談・クレーム処理や、生命や健康が絡む医療・福祉の現場ではそれでは済まされない。特に災害時の避難誘導では素早く正確に相手に伝わることが求められる。外国人観光客への対応にはホスピタリティーの観点からも津軽弁の翻訳機能は有用であり、将来的には外国人労働者への対応も想定しなければならない。
 このシステムがいつから一般向けに供用されるかは未定だが、スマートフォンやタブレットといった携帯端末で使えるアプリになればその恩恵は大きく、かつ多方面に及ぶ。文章だけでなく音声認識機能にも対応すればなおさらだ。早期の供用を望みたいし、楽しみでもある。
 同じ津軽に生まれ育った人間でも、世代間や地域間で通じる言葉・通じない津軽弁がある。翻訳システムは、そうしたギャップを埋める存在としても一役買うだろう。
 今回の例文募集は、一般市民を対象に「生きた」津軽弁を募った点がポイントだろう。われわれが普段使っている言葉をウェブページに書き込めば、翻訳システムの変換精度がより向上することにつながるのだ。複雑な思考も専門知識も求められない。
 その意味では、公募で寄せられた例文は一般市民が協力して作り上げる一つの津軽弁データベースである。成果としての翻訳システムのみならず、その作業の過程は、津軽に暮らすわれわれが言葉を守り、風土を大切にすることにもつながるのではなかろうか。
 変換システムの位置付けは、一義的には社会生活を想定した実用的な道具だろう。高木恭造や一戸謙三らの津軽方言詩が表現する津軽の風土やそれぞれの詩情をどこまで再現できるかにも注目したいが、そもそもそれを求めること自体が酷なのかもしれない。
 ただ、翻訳システムの存在は、県外出身者が津軽弁に関心を抱いたり、津軽出身者が郷里を見詰め直したりするきっかけになり得る。そうした副次的効果にも期待したい。

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