社 説

 

目屋炭「ブランド化による飛躍を期待」

2021/10/8 金曜日

 

 昭和20~30年代の津軽地方の生活に欠かせないエネルギー源として流通した目屋炭が復活した。数少ない伝承を頼りに、西目屋村が新たに炭窯を建て、西目屋薪(まき)エネルギー株式会社とともに炭焼きの技術を1年かけて確立し、商品化を成し遂げた。村の新たな特産品として注目を集めており、今後の飛躍が期待される。
 世界自然遺産・白神山地の山懐に位置する西目屋村には、林業をなりわいとする人が多く、かつて炭窯が村の山々に点在し、弘前などの都市部に大量の「目屋炭」が送り出されていた。その後、化石燃料の普及に伴い、炭の消費量が減少し、目屋炭は姿を消していく。往時の様子を伝えるものは少ないが、地域の一大産業に発展したことを伝える民芸品として、炭を背負って運ぶ娘の姿を表現した「目屋人形」が知られている。
 このように木材資源が豊富な村は2017年に木質バイオマスエネルギー事業の取り組みをスタートさせた。村も出資して設立した西目屋薪エネルギー株式会社が間伐材をまきに加工し、村はそのまきを燃やした熱エネルギーを公共温泉施設と道路融雪に利用するなど、資源の有効活用に取り組んでいる。
 村は、事業の新たな展開として目屋炭復活に着手。数少なくなった炭焼きを知る高齢者を探し出して聞き取りを行ったほか、県外でも技術を学ぶなど、目屋炭復活に向けた準備を進めてきた。昨年10月には、大秋地区に炭窯を築造し、何度も炭焼きを繰り返して試行錯誤を続け、商品として提供できる目屋炭の完成にこぎ着けた。
 ナラとカエデが原料の目屋炭は質が密で堅く、長く燃え続けるのが特徴。火入れ後に窯から出し、砂などを掛けて火を消す「白炭」と呼ばれる物で、高級品として知られる備長炭と同種だそうだ。
 こうして誕生した目屋炭は村の新たな特産品としてヒットする可能性が大いにあるだろう。まずは話題性だが、白神山地の入り口にある西目屋村は、豊かな自然や山林資源に恵まれており、その村で作られた特産の炭というだけでブランド的な価値が生じるだろう。一度は消滅した目屋炭が復活したというストーリー性も、商品の付加価値を高めている。需要面も長引くコロナ禍にあって、アウトドアレジャーの人気が高まっていることから、キャンプやバーベキューなどでの活用が大いに期待できる。
 商品としての価値もさることながら、原料となる間伐材が多く利用されることは森林の適切な整備につながり、ひいては土砂災害の危険性が減る効果や、野生動物が里に下りて来ないようにする抑止効果も生まれるという。白神の里から生まれた山の恵みを使った目屋炭が、西目屋村を代表する特産品に成長することを期待したい。

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秋山シーズン「安全最優先を心掛けたい」

2021/10/7 木曜日

 

 県内は本格的な秋山シーズンを迎えている。実りの秋の到来を告げる天然キノコは例年より1週間ほど早く旬を迎えているほか、各地の紅葉も次第に見頃を迎えつつある。ただ、入山の際に気を付けたいのは遭難事故とクマの出没だ。今年はすでに遭難者が亡くなり、クマに襲われたとみられる死亡事故も発生しており、十分注意する必要がある。
 県などによると、直近5年間に県内で発生した秋の山菜採りの遭難事故は4~13件で推移。例年はキノコ採りシーズン最盛期の10月に発生が集中するが、今年は9月の1カ月間で既に7件発生しており、このうち1件は遭難者が死亡した。
 2018~20年の過去3年間のキノコ採りの山岳遭難発生状況はほぼ横ばいで推移しているものの、死者・行方不明者は微増傾向にある。遭難の原因は大半が道に迷ったというもので、年齢別に見ると70歳以上が圧倒的に多い。転落・滑落、体調不良、疲労、急病により遭難するケースも多く見られる。
 遭難者の多くは1人で入山しているか、入山後に単独行動をしており、行き先や帰宅予定時間などを家族に知らせていない場合も多いため捜索の初動が遅れるケースもあるという。入山の際は家族らに行き先などを知らせ、1人での入山や入山後の単独行動は避けるとともに、日暮れも早まることなどから明るいうちに早めに下山するといった行動を心掛けなければならない。また、有事に備えて携帯電話や携帯食、方位磁石などを持ち歩き、体調に合わせ、無理をしない行動で楽しむようにしたい。
 クマの出没にも注意が必要だ。今年の出没件数(3日現在)は前年同期比12件減の399件だが、2日に平川市の農道でクマに襲われたとみられる死亡事故が発生したことから、県は県内全域に2年ぶりとなるツキノワグマ出没警報を発表して注意を呼び掛けている。
 この時期、クマは冬眠に備え、餌を求めて活動を活発化させる。特に夕暮れや明け方が活発なため注意が必要だ。県によると、今年の出没件数を県民局別で見ると中南地域98件、下北地域127件と2地域での目撃が多いという。痛ましい事故を防ぐため、山に向かう際はクマの出没状況を事前に確認し、出没が確認されている山には入らないようにしなければならない。また、入山の際はできるだけ複数で歩き、クマの活動が活発な早朝などは十分に注意してほしい。
 県内はこれから本格的な紅葉シーズンを迎える。新型コロナウイルスの感染状況も落ち着き、山菜採りのみならず、さまざまな山のレジャーを楽しむため週末などを利用して入山する家族連れらも多いことだろう。その際はルールやマナーをきちんと守り、安全最優先を心掛けて楽しんでもらいたい。

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衆院選前倒し「活発な政策論議を期待」

2021/10/6 水曜日

 

 岸田文雄新首相が衆院選日程について「19日公示―31日投開票」と表明したことで、多くの与野党国会議員は4日、本会議を終えると足早に地元へと向かい、事実上の選挙モードに突入した。短期決戦の上、コロナ禍という特異な環境ではあるが、活発な政策論議を期待したい。
 与野党に衝撃が走った選挙日程の前倒し。21日までの衆院議員任期をまたぐことにはなるが、「憲政の常道」からも可能な限り前倒したことは評価できるのではないか。ただ、自民党の都合で任期前の解散を見送ったことは指摘しておきたい。
 同党は今後、公約作りを加速させる構えだ。岸田首相は「新しい資本主義実現会議」を新設すると表明し、「成長と分配の好循環と、コロナ後の新しい社会の開拓がコンセプトだ」と強調。格差是正や社会変革に取り組み、会議で具体化を図ると説明した。
 確かにコロナ対策と経済の再生は最優先課題だ。問題はその視点が大都市に立ったものなのか、より地方に寄り添ったものか、である。
 具体的には都市と地方の経済格差をどう解消するのか、一極集中を是正するならどのような対策を講じるのか、人口減に直面する地方社会をどう維持するかなどだ。
 残念ながら自民党の総裁選で「地方創生」が積極的に語られることはなかった。人口減少を最重要課題に掲げる候補はいたが、成否は別として、地方重視の姿勢を強調した前政権との温度差を感じた。
 新政権は地方経済の現状を正しく理解し、その原因はコロナだけなのか、地域特有の問題がないか分析した上で対策を講じる必要がある。
 総裁選ではエネルギー政策が注目されたが、新たな方向にかじを切るならば、まず本県など国策に協力してきた地方に代わりの振興策を示すべきだった。
 米価の概算金下落も主要な討論テーマに上がらなかった。1次産業の割合が高い地方において、コメ政策への関心が高いことは政権与党として理解しているはずだ。
 今後、自民党内では公約作りを加速させるが、地方再生に向けた具体策を提示するべきだ。本県など地方選出の同党議員は働き掛けを強めてほしい。
 これに対し、立憲民主党は「地域を守り、地域を活かす」と銘打ったテーマ別公約の中で、コメ政策の転換や人口減対策を掲げている。
 コメ政策では生産調整を政府主導に戻し需給安定化を図るとし、人口減少対策でも介護や医療、教育環境を充実させることで雇用の確保に努めるといった、具体的な内容を盛り込んでいる。
 次期衆院選の投開票日まで4週間を切った。各党の候補予定者の訴えはより熱を帯びるだろうが、冷静かつ具体的に政策論議を戦わせるよう期待したい。

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岸田内閣発足「国民の信頼と安心を取り戻せ」

2021/10/5 火曜日

 

 自民党の岸田文雄総裁が4日召集の臨時国会で第100代首相に指名され、岸田内閣が発足した。衆院は14日に解散される予定だが、最重要課題である新型コロナウイルス対策と経済再生の両立は空白が許されない。
 首相は総裁就任時の記者会見で、「(コロナ対策で)みんなで頑張ろうという心をしっかりと取り戻す」と国民に協力を呼び掛けた。「ワンチームとしてこの国難に取り組む」ならば、過去の首相が指摘されてきた説明責任軽視の姿勢は許されない。今後は「人の話をしっかり聴く」特技を、いかに説明と実行に結び付けていくかが問われることになる。「丁寧で寛容な政治」の実現を求めたい。
 新内閣の閣僚20人のうち、40代は2人、50代は5人で、女性は3人、13人が初入閣。牧島かれんデジタル相(44)、小林鷹之経済安全保障担当相(46)、堀内詔子ワクチン接種担当相(55)の3人は衆院当選3回の若手だ。逆に金子原次郎農林水産相と二之湯智国家公安委員長はともに77歳で初入閣。首相が閣僚人事で「老壮青のバランス」に重視した人選だろう。
 派閥別で見ると、党内最大である細田派と、総裁選で大半が支援した旧竹下派がそれぞれ最多の4人で、麻生派と岸田派が3人ずつと、主要派閥を中心にこちらもバランスを取った形だ。政権基盤を安定させ次期衆院選や参院選に向けた挙党態勢を構築したい意向とも指摘されているが、各派閥への配慮をあまり感じさせないのは、初入閣組の多さに加え、異例とされる一つの内閣で若手を複数起用するなどの独自色を出したことが影響しているからか。いずれにせよ、首相が危機感を募らせる政治不信を払拭(ふっしょく)できるかは、今後の手腕に懸かっている。
 経済再生では、経済政策「アベノミクス」が招いたとされる格差拡大の是正に向けた「成長と分配の好循環」が注目される。幅広い層の待遇改善と給与アップにより、数字上の成長ではない、安心を実感できる経済生活を求める。数十兆円規模の経済対策も、財政面をにらみながら規模ありきでない策定が必要だ。
 感染症危機に一元的に対応する首相肝煎りの「健康危機管理庁(仮称)」、子どもに関する政策を統べる「こども庁」の創設も進められる。組織の役割や権限を明確にするとともに、新組織を立ち上げるコストに見合った成果を上げなければならない。
 新政権の目玉の一つが、経済安全保障担当相の新設。経済安全保障は、国益の損失につながる自国の技術やデータなどの流出を防ぐ規制や取り締まりなどを指すが、米中の対立を踏まえた対応であることは想像に難くない。中国との対話は必要だが、覇権を強める中国に外交・安全保障面で対抗し得る備えが必要だ。

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公共施設業務再開「県民各自がルール守り活用を」

2021/10/2 土曜日

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、県が実施した独自対策の終了を受け、1カ月間にわたり休館していた県有施設が1日から業務を再開した。県に準じる対応をしてきた自治体も緊急対策を9月末までに終了し、同じく1日から感染拡大対策を十分に講じた上で施設業務を再開した。それぞれ県民らの憩いの場やコミュニケーションの場として再び、大いに活用されることを願いたい。しかし、沈静化するかに見えた新規感染者は9月28日から3日連続で20人超となり、依然予断を許さない状態にある。再び長期休館という事態を招かないためにも、県民それぞれができる新型コロナ対策に取り組み、ルールを守るという意識付けを図ってほしい。
 県は9月、新型コロナ感染急拡大の状況を受けて、県有施設の原則休館をはじめ、県主催イベントの中止と延期、学校の部活動禁止など県内全域で独自の緊急対策を講じ、市町村も追随した。この間、同月後半の新規感染者数は18日の76人をピークに10~30人台で推移、27日には1桁となったほか、今月1日は10人だった。人口10万人当たりの1週間の新規感染者数は津軽(弘前保健所管内)、青森、八戸の各2次保健医療圏域で依然高い水準を示しているものの、県全体では28日時点で3週間前の約3分の1となる13・1人にまで抑え込まれた。ただ、病床使用率は八戸を筆頭に津軽、青森の3圏域で依然として高い状況にあり、県全体でも41・3%と3週間前を8ポイント下回ったにすぎず、対策が終了したとはいえ、万全の注意が求められる状態だ。
 一方、業務を再開した県などの施設は休館の間、情報発信やより力を入れたコロナ対策などに努め、開館に備えて準備を続けてきた。本県唯一の県営水族館である浅虫水族館(青森市)は休館中も通常業務を継続。生き物の世話をし、普段は手が回らなかった館内設備の補修や展示の一部リニューアルに着手してきたほか、ホームページなどで積極的に生き物の様子を発信してきた。三内丸山遺跡センター(同)も休館に伴ってできなくなった展示解説はインターネット交流サイト(SNS)を活用。県立図書館(同)は一般閲覧室のアクリル板を増やすなど新型コロナ対策を充実させてきた。
 休館により利用者は不便な生活を強いられたが、業務再開に向けて施設関係者がより快適で安全な施設づくりに努めたことは歓迎したい。施設によっては久しぶりの開館により館内が混み合うことも予想されるが、感染者を増加させないよう、一人ひとりが注意を払いながら利用することが重要だ。来館の際には検温などで健康状態の把握に努め、マスク着用や手洗いといった外出時における基本的マナーはもちろん、利用時間が制限されている場合などはルールの順守を心掛けたい。

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