社 説

 

記者セクハラ問題「メディアも認識を改めよ」

2018/5/17 木曜日

 

 福田淳一前財務事務次官のセクハラ問題をめぐり、麻生太郎財務相は「セクハラ罪という罪はない」と発言したほか、被害に遭った女性記者に「はめられた可能性は否定できない」と述べ、発言を一部撤回して謝罪したものの、その後も物議を醸している状況にある。
 この問題を受け、新聞・通信社、テレビ局、出版社、インターネットメディアなど31社やフリージャーナリストといった女性記者らが、所属組織の枠を超えて「メディアで働く女性ネットワーク」を結成し、麻生財務相宛てに発言撤回などを求める要請書を提出した。取材現場でセクハラを受けることが少なくない女性記者の立場から声を上げ、被害に遭った女性記者に連帯しようとするものだ。
 今回の問題で、国の重要ポストにある人物による、セクハラという社会問題に対する認識の甘さや人権意識の薄さが露呈した。その一方で、メディアで働く女性記者たちが、自分たちの受けるセクハラを「自分たちの業務に付き物の行為」と我慢し、メディア自体も見過ごしてきたという側面を浮き彫りにしたといえる。
 記者が独自の情報をつかもうとする際、情報を持っている相手と頻繁に接触し信頼される必要がある。この場合、記者が接触する相手の多くが男性だ。昔に比べれば女性が社会進出したとはいえ、今もさまざまな組織のキーマンの多くは男性が果たしているのが実情である。
 記者は取材を通じ、現場で多くの人に助けられ、時に返せないほどの恩を受けることがある。だが取材対象者と親しくなることで、セクハラを受けやすい状況に陥るケースがあるのは確かだ。さらに女性記者の多くが、「これだから女性は使いにくい」と組織に断じられるのを恐れ、取材先で受けたセクハラ被害を報告せず、我慢する傾向にある。
 今回被害に遭った女性記者は、最初に自分の所属する組織を通してセクハラ被害を報道できなかった。しかし、いずれのメディアであっても、自社の記者が取材活動で受けたセクハラ被害を表沙汰にしたことは、これまでなかったのではないだろうか。
 セクハラ問題の基本は、上の立場にいる者が、「やめてほしい」と訴えにくい弱い立場の者に行うということだ。だからこそ被害者は声を上げにくい。その中で勇気を持って告発した被害者の声を、メディアは支援する立場で報じてきた。
 メディアは、弱い立場の声を社会に届けるという役割を持ちながら、自社の女性記者に対するセクハラについては、見過ごす風潮があったことを自覚しなければならない。
 セクハラ報道の在り方について、メディア自体も反省し、被害をなくするために取り組まなければならない時代に来ている。

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新潟女児殺害・遺棄「地域一丸の見守りしかない」

2018/5/16 水曜日

 

 新潟市の小学2年女児が殺害され線路内に遺棄された事件で、女児の近くに住む23歳の男が逮捕された。動機を含め事件の全容解明が待たれるが、女児の命が戻ることはなく、子どもを持つ親としてやりきれない思いである。二度と同様の事件が起きぬよう、地域一丸となって見守り強化に努めるしかあるまい。
 新潟県警は女児が連れ去られてから遺体で発見されるまでの詳しい経緯を調べている。ただ、容疑者の自宅が女児の自宅に程近いことから、女児を見知っていたか、通学時間帯を把握していた可能性もある。
 同様の事件から浮かぶ構図は、容疑者が被害者を見知っている、通学路周辺に土地勘がある―などだ。いくら小さな子どもに「知らない大人に話し掛けられてもついていくな」と言い聞かせても、犯人と顔見知りだとか、「親が急病になった」などと言葉巧みに車などに誘い込まれては、事件を防ぐことは困難だ。
 容疑者逮捕から一夜明け、女児が通っていた小学校では児童らが保護者らに付き添われ集団登校した。父母らは胸をなで下ろす一方、下校途中を狙われた事件について、「防犯対策を地域一丸となって考えたい。もうこのような事件は起こらないでほしい」と語った。
 こういった事件が起きるたび、地域の見守り、防犯対策の充実が叫ばれる。では実態はどうなのか。
 警察庁のまとめでは、登下校の見守りや特殊詐欺の注意喚起といった防犯活動を行うボランティアは、2016年末時点で全国に4万8160団体、272万5437人を数える。所属人数こそ前年末を下回ったが、団体数は過去最高を更新しており、活動の大半が通学路などでの見守りであることを考えれば、防犯ボランティアの存在は貴重だ。
 あえて課題を挙げるなら、60歳以上が65%を占めるなど高齢化が進んでいることだが、これはわが国の人口構造からして避けられない。自主的な活動であり、週何日かでも仕方あるまい。
 こうして手が回らない部分は保護者や学校関係者らPTAに頼ることになるが、昨年3月の千葉県松戸市での小学3年女児殺害事件では、保護者会長が逮捕、起訴されている。
 子どもを見守るはずの保護者の代表が逮捕されるという前代未聞の事件に、大きな衝撃を受けたことは記憶に新しい。つい「じゃあ誰が守るのか」と嘆いた覚えもある。
 結局は社会全体で見守り活動への関心を高め、犯罪を許さない環境づくりに努めるしかあるまい。
 警察を含む行政には、ボランティアを増やすための財政的な支援のほか、学区に1台は青色回転灯を装備した巡回車を走らせるといった、防犯事業の強化を早急に検討してもらいたい。

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中国初の国産空母「権益防衛と平和貢献の矛盾」

2018/5/15 火曜日

 

 中国初の国産空母が試験航海を始めた。研究や訓練を主目的とする中国初の空母「遼寧」と違い、当初から実戦配備を想定しており、就役時期も1年前倒しして来年になるとの見方。中国軍を象徴する空母の国産化からは、国威発揚したい思惑が見える。
 遼寧は旧ソ連製の船体をウクライナから購入して改修。初の国産空母も、艦載機はそり上がったスキージャンプ型船首甲板から発艦する。さらに中国は2隻目の国産空母を建造中で、艦載機を加速して発艦させるカタパルト式を採用するようだ。カタパルト式はスキージャンプ型と比べて、艦載機にミサイルや燃料を多く搭載できる。採用するカタパルトも艦載機にダメージを与える従来型の蒸気式ではなく、米海軍が昨年就役させた原子力空母「ジェラルド・フォード」と同様に、リニアモーターを用いる電磁式にするため、中国海軍工程大学の研究チームが開発を急いでいるという。
 運用能力について軍事専門家は「第2次世界大戦以降も実戦経験を積み重ねてきた米軍との実力差は大きい」とするが、訓練で運用能力の向上を図っており、いずれ実力差が縮まるのは明らか。さらに現時点の2隻態勢から、将来的には5、6隻程度の空母を保有し、3隻目の動力は原子力にするとの見方がある。
 習近平国家主席は4月の海上閲兵式で「新時代の党の強軍思想を貫徹し、世界一流の海軍建設に努力しなければならない」と演説。国産空母開発や“史上最大規模”という艦艇48隻などが参加した海上閲兵式などからも、経済力に続き、軍事力でも米国に次ぐ大国を目指す決意を示したもので、国威に加え、求心力を高める狙いもあるのだろう。
 海軍力を強化し海洋進出を突き進める中国に、ASEAN諸国は警戒感を強める。沖縄県・尖閣諸島の問題を抱える日本も同様だ。先日の日中首脳会談では東シナ海での自衛隊と中国軍の偶発的衝突回避に向けた「海空連絡メカニズム」の運用開始で合意し、日中関係改善に一筋の光が見えたようだが、尖閣諸島をめぐる対立を考慮し、具体的地域に踏み込むことはしなかった。
 今月18、19日に日本と太平洋島しょ国の首脳らによる「太平洋・島サミット」が福島県で開かれる。日本は「法の支配」に基づく海洋秩序の維持・強化を目指す方針だ。念頭にあるのが直面する中国の海洋進出。習氏は「国家権益の防衛」「世界と地域の平和安定への貢献」と正当化するが、対外的には矛盾していないか。4月には公海上ではあるが遼寧を含む中国艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過、与那国島南方の西太平洋で戦闘機らしい機体の遼寧発着艦も確認されるなど、軍事力を誇示して関係国に緊迫感と警戒を強いているのが現実。「貢献」の2文字は抜け落ちている。

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最終処分説明会再開「運営見直しで国民理解促進を」

2018/5/12 土曜日

 

 原子力発電環境整備機構(NUMO)と資源エネルギー庁が、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分に関する全国説明会を本格再開させた。高レベル放射性廃棄物を一時的とはいえ実際に貯蔵管理し、将来的な県外搬出を待っている本県からしてみれば、中断していたおよそ半年間という空白は大きい。遅れを取り戻せ、とは言えないが、確実に国民に理解してもらい、最終処分先の確定につながるよう、努力を求める。
 説明会は昨年7月に政府が公表した最終処分に適した地域を示す「科学的特性マップ」に基づき、最終処分に対する国民の理解を得ることが狙いだが、昨年秋に全国各地で始まった説明会で、業務委託先業者が謝礼の約束をして学生を動員、一部学生には実際に現金を支払っていたことが発覚。その後中断していた。
 説明会再開に当たって興味深いのは、NUMOが4月中旬に取りまとめた「対話活動改革アクションプラン」に基づいた説明会ということだ。それによると、これまでの地層処分に関する意見交換会など対外的な会合は(1)知識量の差により、初めて話を聞く参加者が議論に加わりにくい(2)参加者によって、関心テーマが異なるため、議論が活性化しない―といった指摘があった。
 これを踏まえた運営方法の見直しは、全国一律の説明会とせず、参加者目線で会場ごとに説明会の内容を柔軟に設計し、NUMO職員と参加者の距離を縮めた形で双方向の対話を行う。少人数のテーブルトークでは、参加者の側に立って柔軟に運営する、などの内容を掲げた。ほかにも「NUMO」「地層処分」が多くの人の目に留まるような文化祭型イベントの開催、学生らに対する出前授業も計画している。
 確かに地層処分に限らず、核燃サイクル政策やその関連施設、事業内容は多くの国民にとって分かりにくい。説明する側も自らの目線で「分かりやすく」と努めてきたのだろうが、難解さは否めなかった。かつては一方的に事業内容と専門用語を並べ立てた内容で、「地域住民に説明した」という実績づくりとしか思えない説明会も見受けられた。
 地層処分候補地の公募、全国説明会といったこれまでのNUMOの取り組みは、待ちの姿勢、実績づくりの感が否めなかったが、不適切運営を契機とした運営方法の見直しにより、ようやく前に一歩踏み出したと言えよう。
 ただし、それらの取り組みが将来どう評価されるかは実際に最終処分場の場所が確定するかどうかによるだろう。最大50年とした、本県における高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵期限まで、既に30年を切った今、国民の理解促進、処分場選定作業がどう進むか、注目を受けていることを心して取り組んでほしい。

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ニホンジカ対策「捕獲法や生息情報の充実急務」

2018/5/11 金曜日

 世界自然遺産白神山地周辺でのニホンジカ捕獲が思うように進んでいないようだ。2017年8月には遺産の本県側核心地域でも、その姿が初めて確認され、状況の深刻さは増している。捕獲方法を再検討するなどして植生への被害を防ぎたい。
 さまざまな機関がニホンジカ対策に取り組んでおり、県は17年度に初めて本格的な捕獲事業に着手した。銃と箱わなを使い、17年12月~18年3月に取り組んだが、結果は三八地域での9頭にとどまった。県内全域で53頭の捕獲を目標としたが遠く及ばず、白神山地周辺では1頭も捕獲できなかった。
 北東北3県で見ると、ニホンジカの生息密度は岩手県が最も高く、本県関係者は、県内に流入してくるシカは北上高地などを北上してきたものが多いとみている。実際、県内では三八地域での目撃情報が比較的多く、捕獲頭数が多かったのも納得できる。しかし、将来的には白神山地周辺の生息密度も急激に高まる危険性は十分あろう。
 今回の捕獲事業では、三八地域での捕獲はすべて銃によるもので、箱わなを使った手法に多くの課題があることが浮き彫りになった。県によると、シカは雪深い場所を嫌うため、冬季以外の目撃情報だけでは効率的な捕獲につながらない可能性が出てきたという。
 有識者からは既に「越冬の場所や動きを把握するデータが必要」といった指摘も出ており、シカの監視態勢の見直し・強化も急務だろう。
 関係機関は山中に監視カメラを設置するなどして、シカの生息状況把握に努めているが、それだけでは不十分であることを認識。シカの足跡やふんの特徴について関係者に理解を深めてもらったり、雄の繁殖期特有の鳴き声を集めて生息状況の把握を試みる咆哮(ほうこう)調査を新たに行うことにしたり、さまざま工夫している。
 こうして見ると、捕獲方法、生息状況のデータなどそのほとんどに早急な改善が必要だ。本県の対策は緒に就いたばかりという状況のようだが、対策の成果は一刻も早く挙げなければならない。ニホンジカは繁殖力が強く、常に先手を打っていかなければ手遅れになってしまう。
 北東北3県は今年に入り、ニホンジカ対策に連携して取り組むために初めて会議を開いた。岩手県北部から三八地域にシカが北上してきていることが推測されるならば、秋田県北部と津軽地域についても同様な状況が考えられよう。隣県同士の協力は不可欠だ。
 民間企業が地理情報システム(GIS)などを活用した鳥獣害対策システムを開発し、高い捕獲実績を挙げた例もある。費用などの問題はあろうが、効果的な対策を講じるには、民間企業との連携も選択肢の一つではないか。柔軟な発想で取り組みたい。

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