社 説

 

オウム死刑執行「区切りだが終わりではない」

2018/7/7 土曜日

 

 地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教の元代表麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚(63)ら7人について、法務省は6日、刑を執行した。29人の命を奪い、6000人超を負傷させ日本中を震(しん)撼(かん)させた一連の事件は大きな節目を迎えた。ただ、全容が解明されぬままであり、今も存在する崇拝者らの動きに懸念が残る。
 執行されたのは松本死刑囚のほか、元幹部の土谷正実(53)、遠藤誠一(58)、新実智光(54)、井上嘉浩(48)、中川智正(55)、早川紀代秀(68)の各死刑囚。1月に一連の事件で起訴された教団関係者192人の刑事裁判が終結したのを受け、死刑囚13人のうち7人を東京拘置所から、他施設に移送しており、執行が近いとみられていた。
 1984年に発足したヨガサークルは、“空中浮揚”の写真などで民衆の興味を誘いながら拡大し、カルト教団へと姿を変えていった。坂本堤弁護士一家殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件―とエスカレート。特に地下鉄サリン事件は、乗客と駅員13人が犠牲となり、5800人以上が負傷した、わが国の事件史に残る無差別テロだ。
 裁判で松本死刑囚は、弟子らに責任を転嫁し「私は完全に無罪」などと主張したのを最後に口をつぐむ。東京高裁は控訴を棄却、最高裁もこれを支持し2006年に死刑が確定した。結局、最後まで謝罪の言葉も、事件の詳細も口にすることはなかった。
 死刑執行に国民からは「あれだけいろいろな人を傷つけてきた。ようやくという気持ち」「どこかで区切りをつけないと」など、肯定的な声が聞かれた一方で、首謀者が全容を語らぬままでの執行を疑問視する人もいる。「慎重にも慎重な検討を重ねた上で決定した」という上川陽子法相の言葉から、難しい判断だったことがうかがえる。
 事件に関わった元幹部の多くは高学歴の若者。松本死刑囚に陶酔し、命じられた殺人は正当なものと信じて疑わなかった。カルト教団という閉鎖的組織の中に、われわれが理解し難い世界が確立されていた。教団は解散したが、複数の後継団体が今も存在し、松本死刑囚を崇拝する構成員らもいるとされ、こうした崇拝者らの動きを注視する必要がある。
 報復テロ、松本死刑囚の神格化と墓を聖地化する勢力の増強、死刑執行に乗じた模倣犯罪―考え得る脅威はまだまだある。死刑執行は一つの区切りであるが、事件終結を意味するものではない。弁護士一家殺害から約30年、地下鉄サリン事件から20年以上を経過し、当時を知らない世代が増えてきたことも気になる。過度の不安をあおるつもりはない。しかし、世界的に治安の良さが評価されるわが国でも、いつ、どこで、どんな凶悪事件が起きるか分からないという意識を薄れさせてはならない。

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夏祭り間近「よされ、世界一ねぷたに新風」

2018/7/6 金曜日

 

 日に日に日差しが強くなり、津軽はもう夏本番だ。この地方は、短い夏を謳歌(おうか)しようと、各地で夏祭り一色となるが、本紙紙面では、津軽南地域で今年の夏祭りに向けた、新たな試みや期待の膨らむ話題がいくつか紹介された。
 日本三大流し踊りの一つとして知られる黒石よされは、伝統の継承を目的としたクラウドファンディング(インターネットで資金提供者を集める取り組み)を初めてスタートさせた。県内の祭りでの同種の取り組みは珍しいとの話で、目標支援総額は50万円。達成の際は、古民家桟敷(さじき)席での観覧などのサービスを受けることができるそうだ。
 クラウドファンディングの利点は、さまざまあるだろう。一例で言えば、資金を求める側は、ネットを通じて、より広範な層に呼び掛けることができるし、出資する側も今回の黒石よされの場合がそうだが、目標額に達しない場合は、返金されるという仕組みもあるため、計画参加のハードルがより低いと言える。
 黒石よされは日本三大流し踊りの一つとは言え、阿波踊り(徳島市)、郡上おどり(岐阜県郡上市)に比べると一般的な知名度は、まだまだ低いと言わざるを得ない。伝統を守るという目的以外にも、黒石よされの知名度を上げるための魅力を発信する手段の一つとして、今回のクラウドファンディングが、効果を発揮してくれればと思う。
 クラウドファンディングの実施に当たり、黒石よされ実行委員会は、返礼品に古民家の桟敷席での観賞や黒石温泉郷の宿泊券などを用意している。古き良き街並みと名湯がそろう黒石の魅力を発信する良い機会になるに違いない。この取り組みをきっかけに黒石よされのにぎわいがさらに増すことを祈っている。この取り組みの支援額は5日現在で30万円を超えた。クラウドファンディングの締め切りは20日。さらに多くの賛同者が現れ、計画が成立するよう願っている。
 平川市では、世界一のねぷたが新調された。同市のねぷたまつりではトリを務めるなど、平川観光の“顔”とも言える存在だが、制作から約20年が経過し、老朽化と今後の安全運行に支障を来す恐れがあるため、骨組みからの作り替えとなった。幅はこれまでと同じ約9メートルだが、高さは初代に比べ1メートル高い、約12メートルとなり、世界一の大きさに一層の箔(はく)が付いたと言えよう。大きさも立派なものだが、濃淡の違う墨を使って描かれたねぷた絵も迫力があり、見る者を圧倒する。
 初陣は8月の平川ねぷたまつりだが、平川市では今年、帰省客をターゲットとした初めての祭り「平川あどの祭り」も計画されており、この場にも出陣するという。その雄姿は新しい祭りをもり立てるだろう。黒石よされ、平川市の世界一のねぷたとも新たな試みで、今年の津軽の夏祭りに新風を吹かせてもらいたい。

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サッカー日本代表「4年後に向けてさらに進化を」

2018/7/5 木曜日

 

 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で、2大会ぶりに決勝トーナメント1回戦に進んだ日本は強豪ベルギーに2―3で惜敗した。またしても“壁”を破ることができず、悔やまれるが、4年後に向けた戦いがまた始まる。早ければ今月中にも次期監督が決まる。新体制で進化を続けてほしい。
 ベルギー戦から一夜明け、西野朗監督は「勝てる状況にあったので少し悔いが残ったし残念」と振り返った。一時は2―0とリードし、8強入りもイメージできた。「悔いが残った」という言葉は日本中の人が抱いた感情だったのではないか。しかし、それがW杯の厳しさであり、日本はそれを受け入れて前に進まなければならない。
 日本代表選手は次々と去就を明らかにしている。主将を8年間務めた長谷部誠選手(34)が代表引退を表明。強靱(きょうじん)な精神力で日本をけん引してきた本田圭佑選手(32)も「W杯は最後」と話し、「W杯優勝」の夢を将来に託した。両選手らの功績は誰もが認めるところ。彼らの思いを後輩が引き継いでいくはずだ。
 主力だった選手たちはW杯に3回連続出場するなどベテランばかり。彼らが抜けると、日本代表は世代交代を迫られることになる。今大会で代表に選出されたものの、出場機会がなかった2016年リオデジャネイロ五輪世代などが中心となっていくのだろう。
 ただ、新たなチームをつくるためには中核になる選手たちがどうしても必要だ。そこで期待される選手の一人が、今大会の全4試合で先発した柴崎岳選手(26)=野辺地町出身、青森山田高出、ヘタフェ=だ。
 柴崎選手は攻守で活躍。ベルギー戦では、原口元気選手に絶妙なスルーパスを送り、先制点をお膳立てした。本人は「W杯を戦えたことで、想像以上に自分もチームも成長させてもらえた。なかなかそういう大会もない」と語り、十分な手応えを感じた様子だった。
 W杯で活躍した選手が、レベルのより高いクラブに移籍する例はたびたび見られる。柴崎選手についても、欧州のトップクラブが強い関心を示しているとの報道もあるようだ。4年後は30歳。本田選手らがそうであったように、柴崎選手もクラブを渡り歩きながら自らをさらに磨き、代表チームの柱として活躍する姿を見せてほしい。
 「本当のW杯のスタンダードが(最後の)30分にあった」。ベルギー戦について、西野監督はこう語った。劣勢をすぐさま覆す力。優勢を最後まで保つ力。世界最高の舞台では、こうした強さが求められているということか。2022年はカタール大会。日本は7大会連続の出場を目指すことになる。4年という時間は長いようで短い。W杯8強入りに向け、できるだけ早くスタートを切りたい。

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知事任期残り1年「人口減への対応急げ」

2018/7/4 水曜日

 

 三村申吾知事の4期目の任期が残り1年を切った。これまで15年間で取り組んできた行財政改革、農林水産業の振興や訪日外国人誘客などが一定の成果を上げており、評価の声が多い。ただ最大の課題とする人口減少への対応となる各産業で深刻化する労働力不足や超高齢化時代を見据えた生活機能確保などの取り組みは本格着手したばかり。現状のままでは各産業や県民生活が立ちゆかなくなるという危機感を強く持ち、より一層スピード感を持った取り組みが求められる。
 15年間の県政運営で、三村知事自身も大きな成果の一つに掲げているのが行財政改革だ。知事就任当初は極めて厳しい状況にあったが、徹底した改革を進め、借金に当たる県債残高は11年度以降、減少局面に。2017年、18年の当初予算では、2年連続収支均衡を実現した。
 本県が強みとする農林水産業や観光分野でも目に見える成果が出ている。自ら積極的に仕掛けていく「攻めの農林水産業」のほか、鮮度を保った新たな物流の仕組み「エー・プレミアム」も着実に実績を伸ばしており、農業産出額が15、16年の2年連続で3000億円を突破。県産農林水産品の輸出額も16年に過去最高を記録した。観光分野では17年の外国人延べ宿泊者数が宮城県を抜いて東北6県で1位となったことが記憶に新しい。
 一方、医師確保や短命県返上などの課題は地道な取り組みで改善の兆しが見えつつあるが、現在も医師不足に悩む地域は多く、平均寿命も直近の2015年の都道府県別データで男女ともに全国最下位となるなど、道半ばと言えよう。
 特に近年、最重要課題としてきた人口減少対策はより一層のスピード感が必要だろう。県は今年度、各産業の労働力不足への対応や2025年の超高齢化時代を見据えた地域社会の仕組みづくりを特に重視する姿勢を示しているが、例えば農業の現場では数年前から将来の深刻な人手不足を懸念する声が上がっており、県の対応は決して早いとは言えない。
 団塊世代が75歳以上となる25年は7年後に迫っている。県は今年度、部局横断的に複数の事業を掲げ、県民局単位で県民の医療や福祉、交通や買い物など生活機能の維持確保に向けた体制を検証するとしているが、地域によっては担い手の育成から検討すべきケースも出てくることが想定され、25年までにどの程度の準備ができるのかは不透明だ。知事自身、「地域の存続に関わる危機が目前に迫っている」として早急な対応が必要という認識を示しているが、県の事業を参考に市町村がそれぞれ取り組むことを考慮すると、もはや待ったなしと言っていい。
 県の基本計画「未来を変える挑戦」は今年度が最終年度。目指してきた県の将来像にどれだけ近づけたのか、結果を示すことが求められる。総仕上げと位置付けるこの1年の取り組みを注視したい。

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世界文化遺産「縄文遺跡群の早期推薦、登録を」

2018/7/3 火曜日

 

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会が6月末、日本が推薦していた「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本両県)を世界文化遺産に登録すると決定した。これにより、国内の文化遺産は、昨年の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)に続き18件目、自然遺産と合わせた世界遺産は22件目となる。国内世界遺産登録数が増えることを祝うとともに、本県ほか3道県が目指す、三内丸山遺跡(青森市)など「北海道・北東北の縄文遺跡群」の早期推薦と登録を願いたい。
 登録されるのは、キリスト教が禁じられた江戸時代から明治初期に、既存の社会や宗教と共生しながら信仰を守り続けた潜伏キリシタンの集落や、島原の乱の舞台となった原城跡(長崎県南島原市)、国宝の大浦天主堂(長崎市)など12件となっている。事前審査したユネスコの諮問機関は、「禁教期にもかかわらず、ひそかに信仰を継続した独特の文化的伝統の証拠」と評価したほか、6月30日の審議でも、「ユニークで傑出した歴史を語る価値のある世界遺産」などと、登録を支持する意見が各国から相次いだという。
 16世紀中盤、日本に伝わったキリスト教は西洋とのいわゆる「南蛮貿易」とともに広がり、当時の大名の中には改宗して「キリシタン大名」と呼ばれる者もいたが、豊臣秀吉の「バテレン追放令」、江戸期に入っての鎖国に禁教令と受難が続く。島原の乱は鎖国完成直前に発生した、当時としては最大規模の一揆だった。
 禁教令後も信仰を守り続けた「潜伏キリシタン」の存在と集落、幕末の開国後に建設された日本最古のキリスト教建築物・大浦天主堂などは、歴史的経緯や数多くの殉教者の存在を考えれば、遺産としての価値は高く、登録を支持する意見が相次いだこともうなずける。関係者の「内面を隠し、仮面を着けて困難を乗り越えた人たちの歴史。宗教を超え、現代にも訴えるメッセージがあると思う」という言葉に力が入るのも、そうした思いがあるからだろう。
 次に日本に関して、ユネスコで審査が行われるのは「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)で、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の推薦がいつになるのかは、本県など関係道県にとって気になるところだろう。2009年にユネスコの世界遺産暫定一覧表に記載されてから、昨年まで5度にわたって挑戦したにもかかわらず、推薦は見送られてきた。ただし、国内にある他の遺産や“ライバル”と比べても、決して引けを取らない内容であることは、誰もが認めるところだ。早期の推薦に向けて内容をさらに精査し、関係者一丸となって悲願実現を目指してほしい。

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