社 説

 

米国難民・移民規制「大統領令の即時見直しを」

2017/2/1 水曜日

 

 トランプ米大統領によるシリアなどの難民受け入れ停止やイスラム圏7カ国からの入国禁止令による混乱は、目を覆うばかりだ。米国内では抗議集会が連日続き、国民から激しい抗議の声が上がる。
 国際社会からの批判も強い。オランド仏大統領はトランプ大統領との電話会談で「難民保護の原則を守らなければ、民主主義を守ることはできない」と批判。メイ英首相の報道官も「この種の措置には同意しない」と表明した。
 イスラム圏の反発も当然強い。インドネシア外務省報道官は取材に「過激主義やテロリズムを特定の宗教と結び付けるのは間違いだ」と批判。イラクは米国に「誤った決定の見直し」を要求し、スーダンやイエメンは相次ぎ「不満の意」を表明した。
 こうした事態に、ついには米国司法省トップのイエーツ司法長官代理が、この大統領令を支持しないよう同省に命じ、ホワイトハウスが長官代理を解任する事態にまで発展。西部ワシントン州が大統領らを相手取り「違憲」として提訴に踏み切る動きを見せるなど、政府内や地方州にまで混乱や反発が広がっている。
 米国は言うまでもなく、移民の国だ。米国勢調査局によると、推定約3億2000万人(2016年)の人口のうち、約4300万人が外国生まれの「移民」に当たる。移民がもたらした労働力や技術力、文化、風習が米国の活力となり世界に類を見ない発展を遂げてきたことを如実に物語る数字ではないか。
 トランプ大統領は高まる批判に「われわれの国には今こそ、強固な国境と究極の入国審査が必要だ」とツイッターに投稿。自らの政策の正当性を主張した。だが、特定の国や特定の宗教を理由に個人を差別するような今回の政策にどのような正当性も見いだすことはできない。まして今回の問題では1975~2015年に起きたテロ事件で7カ国の出身者は1人の米国人も殺害していないという信頼性の高い報道もある。少なくとも自他ともに認める民主主義社会のリーダーである米国が行うべき政策ではない。
 トランプ大統領は即刻、この大統領令を見直すべきだ。難民が生まれる背景の戦争やテロ、移民が生まれる背景の世界的な経済格差の問題を解決に導けば、強固な国境も、究極の入国審査もおのずと必要なくなる。政治、軍事、経済で国際的な影響力を行使してきた米国にはこれらの問題について解決を図る責務があるはずだ。米国一国主義でこうした国際的な問題に背を向けることはできない。
 それにしてもこの問題で日本政府から目立った意思表示がないことを物足りなく思う。10日の日米首脳会談で安倍晋三首相は日米同盟の揺るぎない姿を世界に発信したい―と意気込んでいるが、良き同盟者、良き友人であるならあえて苦言を呈するのも友人の務めではないか。

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伝統工芸品の販路「市場の存在を正しく知りたい」

2017/1/31 火曜日

 

 「伝統工芸品がなかなか売れない」といった声は全国各地で聞かれる。ただ、市場は本当にないのか。どうやら「ない」とは言い切れないようだ。
 昨年末、東京・六本木で1カ月間開かれた県の企画展「青森展」は、関係者の予想を上回る売り上げを記録した。津軽塗、津軽打刃物、こぎん刺しなど県内の伝統工芸品が計約400点販売され、売上金額は200万円以上に上った。
 なぜ売れたのか。関係者の分析によると、県内の伝統工芸品が珍しかったからだという。言い換えれば、首都圏の一般消費者にとっては、メジャーではなかったということになる。
 例えば、漆器は全国に見られ、広く知られるものも少なくない。その中で、津軽塗の知名度は今のところ、高いとは言えない。企画展では「この塗り物は何」と尋ねる来場者もかなりいたという。
 地元のわれわれからすれば、津軽塗は県内の伝統工芸品の代表格であり、一定の知名度はあるだろうと思っているが、実際はそうではなかったのである。
 ここで考えたいのは、知名度の低さを嘆くべきかという点。確かに全国的に知られてはいないが、その津軽塗に興味を持って買い求める客が実際にいるのである。むしろ、この点に希望を見いだすべきではないだろうか。
 津軽塗は技法が多様で、工程が非常に多い。企画展の関係者によると、こういった特徴が強力なアピールポイントになるという。消費者は、工芸品にまつわるストーリーを求めており、津軽塗にはそれがあるのだということらしい。
 特に注目したいのは、消費者は伝統工芸品を買い求める上で生産者の思いを知りたがっており、直接のやりとりを望んでいることだ。企画展に携わった企業の代表はこういった状況が「作り手の独立」につながり、伝統工芸品を販売していく理想的な形を生むと強調する。
 バブルが崩壊した以降、流通業界は安価な商品を求め、さまざまな分野で価格破壊も起きてきた。その中で価格帯が高い伝統工芸品も価格を下げることを強いられ、そのつけは産地に回ってきた。
 当然だが、採算を割れば生産者は生活できない。生産者が生活できなくなれば、産地も消えてしまうのである。しかし、よく見れば市場は確かにある。今回の企画展の結果は、そのことを気付かせたのではないか。
 伝統工芸品は「高いから売れないだろう」「古い物だから売れないだろう」と諦めるには早すぎる。というより、認識を改めてみようではないか。
 市場の存在を正しく認識し、そこに商品を売り込んでいく。こうしたアプローチが今、産地全体に求められている。伝統工芸品は、地域のアイデンティティーを形成する大切な一要素。なくすわけにはいかない。

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警察懲戒処分者数「信頼維持と獲得へ住民目線で」

2017/1/28 土曜日

 

 警察庁が発表した昨年1年間の懲戒処分者数は、前年比27人減の266人となった。4年連続の減少で、統計が残る2000年以降3番目に少ない数になったが、逮捕者は72人から81人に増えた。
 発表によると、処分者のうち業務上の不祥事が74人、私生活上が192人だった。理由別では、強制わいせつや盗撮、セクハラを含む「異性関係」が最多の94人、「窃盗・詐欺・横領など」61人、酒気帯びなど「交通事故・違反」36人、「公文書偽造・証拠隠滅」17人。このほか、パワハラや借財など「その他の勤務規律違反」17人、「暴行・傷害など」15人、職務上の不適切事案を含む「職務放棄・懈怠など」12人となった。犯罪行為に起因する処分者が多いことに驚かされる。処分の内訳をみると、免職39人、停職60人、減給118人、戒告49人。階級別は警視以上7人、警部13人、警部補と巡査部長各67人に上った。
 本県で対象となったのは3人。いずれも私生活上によるものだった。このうち1人は薬物犯罪に関する捜査を装って女性の車の中を確認したり、一般住宅に侵入し現金を盗むなどし逮捕、免職となった八戸警察署の元巡査長が含まれる。大阪31人、警視庁25人、兵庫18人と比べれば、はるかに少ない数ではあるが、逮捕者が出たこと、元巡査長による行為は衝撃的な内容でもあった。
 地域住民の安全と安心を確保するため、事件・事故の対処や未然防止に当たる警察関係者から、逮捕を含む懲戒処分対象となるケースが出るということは何とも本末転倒に思われる。「あってはいけない」「やってはいけない」ことをただすことが仕事である。襟を正して、業務に当たっていただきたい。
 一方で、警察関係者の大多数が職務規律を守り、業務に励んでいるわけでもある。一線署での交通取り締まりや交通安全運動といった身近な活動はもとより、交番や駐在所勤務者の地域に根差した活動は住民の安心感を保つことになる。そうした人たちの頑張りがあってこそ、日々の平和が保たれていることも忘れてはならない。
 そうした中で、「現職警察官を逮捕」などといった耳を疑うようなニュースが流れることは、警察業務への信頼を損なわせ、精勤している警察官らの意欲をそぐことになる。言うまでもないが、なぜ警察に奉職しようとしたのかを常に考え、初心を忘れずに業務に当たってほしい。
 警察への信頼度合いが高いほど、その地域の人々が日常生活の中で感じる治安の状況「体感治安」も良い、というデータもある。確かに「警察など当てにできない」と考える地域住民が増えれば、事故や犯罪抑止にはつながりにくい環境となる。信頼獲得と維持のためには、住民目線で業務に取り組むことが必要だ。

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インフル流行期入り「感染拡大防止へ対策徹底を」

2017/1/27 金曜日

 

 今年もインフルエンザが流行シーズンに入り、県内はすべての保健所管内で注意報が発令された。患者数は増加傾向にあり、感染拡大防止のため予防対策に万全を期したい。
 県が26日に発表した今年第3週(16日~22日)のインフルエンザ発生状況によると、定点医療機関から報告された患者数は1定点当たり16・06人となり、前週よりも増加した。
 保健所管内別では、新たに弘前、東地方・青森市など4保健所管内で注意報レベルを超えた。既に注意報レベルを超えている五所川原、上十三の各管内では、警報レベルに近い状況となっている。
 県内は昨年12月15日にインフルエンザが流行期入りしたと発表されており、昨シーズンより1カ月ほど早い。国内のインフルエンザウイルス検出状況によると、直近の傾向ではAH3亜型(A香港型)が最も多いようだ。
 全国的には昨年11月14~20日に患者数が流行開始の目安を上回り、例年より早い時期の流行期入りとなった。厚生労働省によると、季節性インフルエンザのウイルスにはA香港型やB型、2009年に流行した新型インフルエンザと同じH1N1型の3種類あり、いずれも流行の可能性がある。流行しやすい年齢層はウイルス型によって多少異なるものの、今年もすべての年齢で注意が必要だ。
 インフルエンザは普通の「風邪」とは違って症状が重く、特に幼児や高齢者など抵抗力の弱い人がかかると重症化しやすい。時には死に至る場合もあるため、決して油断してはならない。
 この時期はできるだけ人混みを避け、外出時のマスク着用、外出後の手洗い、うがいを習慣付けたい。日ごろからバランスの良い食事を心掛け、十分な睡眠をとるなど体力や抵抗力を上げることも大切だ。
 インフルエンザへの感染が疑われる場合には、できるだけ早く医療機関を受診し、かかった場合は外出を避け、十分な休養を取る必要がある。同時に、周囲にうつさないようマスクをするといった「せきエチケット」を心掛けたい。
 流行前にインフルエンザワクチンの予防接種を受けることも有効な対策の一つだ。発症をある程度抑え、重症化を予防する効果があるとされている。特に高齢者ら重症化する可能性が高い人の場合には効果が高いと考えられているため、毎年、流行シーズンに合わせて備えておくことも必要だ。
 高齢者の入所施設などでの対策にも万全を期してほしい。集団感染を防ぐため、まずはウイルスを持ち込まないようにし、感染者が出た場合はまん延防止に努めなければならない。
 ちょうど受験シーズンでもある。各家庭や学校、職場において、小まめな対策を心掛け、感染拡大を防止したい。

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横綱稀勢の里誕生「新時代の幕開けに集まる注目」

2017/1/26 木曜日

 

 日本相撲協会は25日、大相撲春場所の番付編成会議と臨時理事会を開き、初場所で初優勝した稀勢の里(田子ノ浦部屋)の横綱昇進を満場一致で決定。1998年夏場所後に横綱に就いた3代目若乃花以来19年ぶりとなる日本出身横綱の誕生だ。モンゴル勢に押されてきた角界。国技復活の象徴として2000年春場所以来の1場所4横綱時代をリードしてほしい。
 初土俵から89場所。長く優勝を期待されながらも、現在の4大関で一人取り残され、ここ一番での弱さ、プレッシャーをはね返せない精神力の弱さなどを指摘されてきた。しかし初場所は違った。綱とりが懸かる場所であるのに加え、高まる日本出身横綱誕生への期待など、これまでにないほどの重圧を感じていたはずだが、土俵上で冷静さを失うことはなかった。
 何度も悔しい思いをしながら、ようやく上り詰めた角界の頂点。血のにじむような稽古があってのことだが、同時に2011年11月に急逝した先代師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里=青森市浪岡出身)の指導の成果であることも忘れてはならない。大関昇進の伝達は鳴戸親方の遺影の前で行われた。今回の横綱昇進伝達後の記者会見で稀勢の里は「(鳴戸親方に)出会わなければ今の自分はない。これからだと言われると思う」と感謝の言葉を述べた。亡き鳴戸親方を思い出したのだろう。声を震わせた。
 稀勢の里には鳴戸親方が貫いた相撲道の信念がしっかりと継がれているのだ。稀勢の里自身は茨城県出身ではあるが、鳴戸親方が導いた昇進であるのに加え、所属する田子ノ浦部屋では年寄・西岩(元関脇若の里=弘前市出身)が後進育成に当たっている。であれば相撲王国として知られた本県の魂を受け継いだ横綱と言ってもいいだろう。
 この日、相撲協会の使者として理事の春日野親方と審判部の高田川親方から横綱昇進の伝達を受けた。口上は「今の気持ちをそのまま伝えた」という「謹んでお受けいたします。横綱の名に恥じぬよう精進いたします」。「不(ふ)撓(とう)不屈」(元横綱貴乃花)のような四字熟語を使わない実に簡素なものだが、真剣に相撲道と向き合い、ひたむきに稽古に励んだ稀勢の里らしい真っすぐさが感じられた。
 27日に東京・明治神宮で行う奉納土俵入りは、小さい頃から憧れていた雲竜型になるという。そして3月12日に、絶対に負けられない横綱の立場で春場所初日を迎える。深刻さを増す相撲離れに歯止めをかけるかもしれない、待望の日本出身横綱に向けられた国民の期待は、これまで以上に大きい。しかし、あと一歩で優勝を逃し続けた「重圧に弱い」姿は過去のもの。「常に優勝争いに加わり、優勝する」と決意を述べた稀勢の里が開く、新たな時代に注目が集まる。

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