社 説

 

移住促進策「希望者数だけが成否の指標か」

2017/5/24 水曜日

 

 本県への移住者が増えている。首都圏における本県の移住相談窓口「青森暮らしサポートセンター」の2016年度相談受付件数が681件、同センターを利用して移住を決めた人は46人と、ともに開設以来最多となった。関係者の努力が次第に実を結んでいるようだ。
 とはいえ、全国には1年間の相談件数が数千件に上る県もあるようで、件数だけを見る限り、本県は多い部類には入らない。
 地方への移住促進に取り組む認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都)がホームページ上で公開している「移住希望地域」ランキングによると、上位は関東地方の近隣県が目立つ。この傾向は以前から続いており、要因としては、首都圏の移住希望者が生活環境の変化が比較的小さい地域を選んでいることなどがあるのではないか。
 これらを踏まえると、首都圏から移住者を数多く受け入れることだけを目指すのであれば、近隣県が有利であることは否めず、その優位性はこの先も変わらないだろう。
 かといって、本県が落胆する必要もないだろう。確かに、移住促進の取り組みが活発化している背景には、地方の人口減少があり、受け入れる人数は一人でも多い方が良い。ただ、現実的に人口の減少分を移住者の受け入れだけで補えるわけではない。むろん、移住促進に取り組む地元関係者も補えるとは思っていないはずだ。
 ならば、各自治体が移住者を熱心に受け入れようとする理由はどこにあるのか。一言で言えば、地域活性化の契機の一つにしたいと考えているからだろう。
 その思いに応えるかのように、近年は起業を目的とした移住者も見られるようになってきた。例えば、老後の生活の場を探して移住を決断するにも相当な覚悟が要ると思われるが、さらに起業にまで踏み切る勇気には頭が下がる。彼らの考え方からは学ぶものも多いだろう。
 総務省は最近、移住先の地域活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の起業を支援する仕組みを導入した。隊員としての活動期間は長くて数年だが、その後も定住する人が一定割合いることを踏まえれば、同省や地方自治体には同様の支援策を一層充実させてほしい。
 移住者に移住先での暮らしの楽しさなどを語ってもらい、地元の魅力をアピールすることは大切だ。ただ、これからは、地元の魅力を理解し、起業などを通じてさらなる魅力の創造に寄与している人たちが地元にいることを強く発信することも求められると考える。
 中長期的に考えれば、どのような目的を持つ移住者の受け入れを積極的に目指すか―という観点も移住促進策には必要だ。移住希望者数だけが、成否を測る指標ではないのではないか。

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クマ被害相次ぐ「入山の際にはしっかり対策を」

2017/5/23 火曜日

 

 本格的な山菜採りシーズンを迎えた津軽地方で、入山者がクマに襲われる被害が相次いでいる。
 弘前市内では、4月30日に同市百沢で山菜採りをしていた70代女性がクマにかまれて右太ももにけがを負ったほか、21日にも同市百沢の山中で山菜採りをしていた50代男性がクマに襲われ右手にけがを負った。
 20日には、鯵ケ沢町長平町の雑木林で山菜採りをしていた60代男性がクマに頭をかまれるなどしてけがを負う被害が発生している。
 山菜採りシーズンを迎え、しばらくは入山者が増える時期だ。昨年、県内ではクマによる人的被害はなかったものの、今年は津軽地方だけで3件と相次いでいる。山菜採りに出掛ける際はあらかじめクマの出没情報に注意し、出没地域に入らないようにするなど、被害に遭わないよう十分注意したい。
 県などのまとめによると、山菜採りなどによる遭難事故の発生件数は、過去5年間では春が20~31件、秋が10~15件で推移しており、春が秋を上回る傾向が続いている。最も遭難が多いのはタケノコ採りだからであろう。タケノコ採りは夢中になるあまり、道に迷ったりするケースが多い。
 遭難者は60歳以上が9割以上を占め、死亡または行方不明の遭難者の94%が60歳以上となっている。救助された事例では、山奥に入り込んで道に迷ったケースや転落、滑落、体調不良、急病などによる遭難が多い。そしてもう一つ、クマとの遭遇も最近は全国的に相次いでおり、注意が必要だ。
 昨年は、ツキノワグマの目撃件数が、東北6県では上半期だけで計5839件に上り、この10年で最多となった。青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の6県で県や県警本部がまとめた目撃件数を集計した結果で、福島以外の5県は年間最多件数も超えるほどだった。
 最も目撃が多かったのは岩手で、1年間を通じた件数が過去最多だった12年度の2357件を上回った。昨年の5~6月にクマに襲われたとみられる4人が死亡した秋田では、上半期で、過去最多だった12年度通年の倍近くに達していた。
 本県においては、県警地域課によると、今年に入ってから18日までの県内のクマ目撃情報は昨年より少ないものの、人的被害が相次いでおり、例年以上に注意が必要だ。
 山菜採りに出掛ける際はクマの出没情報に注意し、出没地域には入らないことがまず大事だ。また、山では必ず2人以上で行動し、クマの足跡やふんなどを見つけた場合は引き返すよう心掛けたい。クマが活発な時間帯である夕暮れや明け方は特に注意するといった対策を常に心掛けることが、山菜採りを楽しむ上で不可欠である。

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リンゴ結果樹面積「産業の活性化で生き残りを」

2017/5/20 土曜日

 

 農林水産省が実施した2016年産リンゴの調査で、実際に果実を収穫できる園地面積を表す「結果樹面積」の本県分が1万9900ヘクタールとなった。2万ヘクタールを割るのは1973年産の統計開始以降、初めてとなる。本県の結果樹面積は12年産から2万ヘクタールが続いており、関係者の間では、大台割れも時間の問題と受け止められていたが、その時が来てしまったのは、やはりショックだ。結果樹面積の減少がそのまま、リンゴの収穫量に跳ね返るものではないが、生産の土台となるリンゴ園の減少が、数字の上からも裏付けられるのを見ると、危機感を感じざるを得ない。
 原因はさまざま考えられるだろうが、背景にリンゴ生産者の高齢化と担い手不足があるのは間違いない。面積が2万ヘクタールを切った背景について、農水省の担当者は「農業者の高齢化の進行や担い手不足が影響し、手間のかかる急斜面などでの作業が必要になって廃園につながっている」と分析している。
 16年産の本県の収穫量は15年産を5%(2万2200トン)下回る44万7800トンとなり、直近の過去10年間(07~16年産)では7番目の量となった。15年産が大玉傾向だった反動で樹が弱り、果実の肥大が進まなかったことや日照不足などによる小玉傾向となったことが原因として挙がるという。結果樹面積の減少が直接の理由でないとしても安定した収穫量、特に産地間や他果実との競争を勝ち抜ける高品質なリンゴを継続して供給していくには、結果樹面積を現在の水準に維持していかねばならない。
 生産者の高齢化や担い手不足が背景にある以上、結果樹面積のV字回復はなかなか難しい。現状を維持しつつ、高品質、かつ市場で存在感のある数量を毎年、生産していくことが求められる。
 産地は今後、どのような対策を取るべきか。関係者の見立て、方策は異口同音だ。その答えは、収量が低下した老木を管理しやすい、わい性台に改植するなど「園地の若返り」を進めていく努力をさらに推し進めることにほかならない。園地の若返りは、古くて新しい本県リンゴ産業の課題だ。毎年、一定の収穫量を確保しながら、園地の改植を進めていくのは、並大抵の努力ではない。生産者の努力はもちろん、本県リンゴ産業を守るという決意の下、行政、農業団体、生産者が一体となって、計画的に若返り事業を進めなければならない。
 加えて生産者の労働力を軽減させる省力化栽培可能な品種の導入や付加価値の高い加工向けリンゴ生産に向けた取り組みなども加速させなければならない。国内への安定的な供給に加え、海外への積極的な輸出で生き残りを図る本県リンゴ産業。園地のみならず、リンゴ産業全体を若々しく、活力あるものにするための不断の努力が求められる。

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高校再編地区懇談会「住民の意見に耳傾けて」

2017/5/19 金曜日

 

 県教育委員会が公表した県立高校再編に関する第1期実施計画案(2018~22年度)について説明、意見交換する地区懇談会が8日以降、県内各地で開かれている。同日の青森市を皮切りに、9日には黒石市、さらに県南地方などを経て17日には五所川原市金木町で開催された。北五地方では、22日以降さらに3地区で開催予定となっている。成案は同懇談会やパブリックコメントを踏まえて7月に策定予定だ。
 実施計画案が示した内容は、西北五地区では金木、板柳、鶴田、五所川原工業4校を募集停止の上、五所川原工業の校舎に新設校を設置。このほか、中里と木造深浦校舎を地域校として存続させるというもの。中南地区では、黒石と黒石商業両校を統合した上で黒石商3学級のうち2学級を弘前実業に移す。弘前実業の農業経営科は柏木農業に集約し、弘前工業定時制は募集停止、閉課程となる。
 各地の懇談会では、予想通り地域住民からの不満が噴出した。9日に開かれた黒石市では「(計画は)弘前を中心に考え、黒石だけやり玉に挙げている」「弘前の中学校卒業生は全員が(進学は)市内で済むが、黒石の場合は半数以上が動かないといけない。これが平等なのか」といった意見。17日の五所川原市金木町では「高校をなくすることは地域にとって痛手」「生まれた地による、教育差別の推進計画としか思えない」といった声が相次いだ。
 当然とも言える声だ。生まれた地域によって、進学の選択肢が狭められることは好ましくはないし、遠距離の通学を強いられることは保護者の負担増にもつながる。ただ、県教委側による、部活動や教育科目の面で一定の教育規模を維持する必要があること、統廃合対象の高校で志望倍率が減少傾向にある、といった説明も理解できる。生徒数が少ないまま、あるいは減少するまま高校を維持した場合、本来あるべき生徒間の切磋琢磨(せっさたくま)ができない、部活動が成り立たないなどの事態が考えられるからだ。
 地区懇談会は今後、弘前市で開かれる30日で終了するが、単に「地域の意見を聞いた」という事実を作っただけの場にしてはいけない。現在高校が存在する地区では、学校と共に地域が歩んできた歴史、子どもたちを進学させてきた保護者の思いなど、数時間程度の懇談会では語り切れないことが多数ある。100%住民の願いをかなえることは困難としても、耳を傾け、ある程度納得が得られるものにするため、検討していく必要はあろう。
 高校の統廃合は今に始まったことではなく、そのたびに過去多くの地域で同じようなやりとりが繰り返されてきた。そうした経緯を踏まえ、今後県教委側がどのように成案を作っていくのか注目したい。

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安倍1強「都議選で風向きは変わるか」

2017/5/18 木曜日

 

 閣僚の不祥事や「森友問題」に加え、「共謀罪」や唐突な改憲提案といった国民の意見が割れる課題も抱える中、安倍内閣の支持率が50%前後で高止まっている。「安倍1強」が際立つ背景には政治の安定性を求める有権者の心理もあるだろうが、最大の要因は野党のふがいなさではないか。特に野党第一党の民進党の現状は目を覆うばかりである。
 永田町では現在、東京都議選(6月23日告示、7月2日投開票)での小池新党のすう勢が最大の関心事だ。
 小池百合子都知事が事実上率いる「都民ファーストの会」は、一部報道や週刊誌などが50議席以上を獲得すると予測しており、自民党と民進党が議席を減らすのは不可避とみられている。自民党は現職都議2人が離党し小池新党に合流する見込みだが、より事態が深刻なのは民進党だ。
 同党をめぐっては先月、野党共闘への不満を理由に都連幹事長を務めた長島昭久元防衛副大臣が離党届を提出。さらに細野豪志代表代行も憲法改正をめぐる執行部対応への不満を理由に代表代行の辞表を提出した。
 幹部の離反は執行部にとって痛手なだけではない。都連は15日、都議選公認候補36人のうち長島氏と行動を共にするとした都議らを含む15人の公認を取り消した。14人は離党届を提出しており、小池新党の公認か推薦が内定している。
 号砲が鳴る前に苦戦を強いられる中、改憲をめぐって賛否が混在する党内事情を見透かしたように、安倍晋三首相に改憲提案で揺さぶりを掛けられ、執行部は改憲について当面、党内議論のテーマとしないことを決めた。
 しかし、改憲に前向きで野党共闘に不満を募らせる保守系議員らが、都議選で大敗した場合は「蓮舫代表降ろしに動く」との指摘もある。これでは首相を追い込むどころか、首相のもくろみ通り分断の危機である。
 結局、国政における「安倍1強」は続くのか。その状況が変わるとすれば「都議選で小池新党が急伸、その勢いに乗り年内の総選挙でも勝利」とのケースが考えられる。ただ、解散権は首相が握っており、その事態は避けるはずだ。
 離党・無所属議員らが集まるなどして小池新党が国政で一定勢力を確保した場合でも、首相は日本維新の会と同様に、政策課題ごとに協力関係を構築しようとするだろう。オリンピックを控える都に配慮し、国政でも是々非々の関係でいるならば、やはり「1強」は揺るがない。
 重要法案が山積する今国会は会期の大幅延長が確実視されているが、都議選期間中は与野党とも“休戦”するため来月末まで1カ月ほどの延長が濃厚となっている。都議選を終え、会期末を迎えるころに国政の勢力図はどのように変化しているだろう。

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