社 説

 

米国TPP永久離脱「外交と国内基盤整備を両輪で」

2017/1/25 水曜日

 

 米国の新しい指導者に就任したトランプ大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの永久離脱を大統領権限に基づき、米通商代表部に指示した。同大統領は北米自由貿易協定(NAFTA)でも再交渉を求め、参加国が応じなければ離脱する意向を示している。就任演説で米国の国益を最優先する「米国第一」主義を宣言した同大統領が矢継ぎ早に発する政策の数々は、米国が保護主義的な国家へ変容していくことを目の当たりにさせられているようで衝撃を覚える。
 米国の戦略転換は、世界経済に大きな影響を与えることになる。日米など12カ国が署名したTPPは、米国が批准しなければ発効しない仕組みであり、トランプ新政権の永久離脱表明により、現状の協定は発効のめどが立たなくなった。日本政府は「米国の翻意を促す」との立場で署名国の一つオーストラリアは米国抜きの発効を含む代替案を各国に呼び掛けている。
 TPPについては、家族経営などが多く産業基盤の弱い本県の1次産業を中心に大きな影響を受ける可能性があるだけに、もちろんもろ手を挙げて賛成というものではない。行き過ぎた自由貿易協定や経済連携協定は、特に十分な国際競争力のない我が国の1次産業にとっては刺激の強いものであり、まずはこうした国内産業にとって競争力をつけるための基盤強化などの施策が優先されることは論をまたない。
 永久離脱表明を国内の環境整備が整うまでの一時的な猶予期間として捉えることができるのであれば、歓迎できる面もある。だが、先の北米自由貿易協定の再交渉を求める姿勢から見ても米国、トランプ政権からは「とにかく米国の利益を追求する」というなりふり構わない姿が透けて見える。米国にとってさらに有利な条件を求める2国間交渉を打診してくる可能性も高いだろう。米国との関係性を考えれば、その交渉がTPP以上の困難さを伴うことは容易に想像できる。
 TPPは多くの国が互いの相反する利害の一致点を探ってぎりぎりの交渉を重ねたものであり、完全ではないが環太平洋地域の財産の一つと呼べるかもしれない。米国第一を掲げるトランプ政権に対し、複雑・広域化する世界経済を円滑に動かす現実的な仕組みとして提示するのも一つの考え方ではないか。
 米国抜きのTPPを目指しながら、米国に離脱によるマイナス面などを訴え、辛抱強く翻意を促していくのも日本が取るべき戦略の一つとしてあっていい。日本は他の交渉参加国と協調し、リーダーシップを発揮すべきだ。
 加えて、国内1次産業の国際競争力強化にまい進しなければならない。米国の政策転換で世界経済の潮流が変わりかねない状況の中、いずれにせよ国内産業の基盤強化は必要不可欠だ。

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弘前の雪対策「市民の満足度向上を」

2017/1/24 火曜日

 

 雪対策を重要課題と捉え、ここ数年、重機による除排雪や地域に適した融雪システムの構築など総合的な雪対策を進めてきた弘前市。今冬は新たに下水熱を活用した歩道融雪の実証研究に着手し、効果の検証や課題の分析を進めている。
 新たな実証研究は、下水道管から熱を採取し、その熱で温めた不凍液を地表近くに伝えて雪を溶かす仕組み。下水の温度は年間を通して安定しており、今回の実証研究では管内の温度は10~15度、地表に近い部分を通過して管内に戻ってきた時点でも約4度下がる程度と高い。
 市が昨冬に実証研究を行った水道管熱と比べても温度は高く(水道管は5~7度)、さらに水道管は万が一にも凍結させるようなことがあれば市民生活に多大な影響を及ぼすため、利活用に慎重な姿勢が求められることを考えれば、下水熱の方が使いやすいと言えるだろう。下水道は水道同様、ほぼ市内全域に設置されていること、施工も地下水をくみ上げる散水融雪に比べると簡易なことを考えると、市内各地への普及が期待できる。
 また融雪の実証研究と並行し、市は市内の下水熱の供給体制も調査しており、民間事業者に広く情報提供することで、融雪だけでなく夏場の空調利用など可能性が広がっていくのではないか。近年の法改正で行政だけでなく、民間事業者の下水熱活用にも道が開かれており、積極的な活用につながることを期待したい。
 市は2013年に弘前型スマートシティ構想、15年には融雪等推進基本計画を策定、部局横断の庁内研究会である官民連携による総合的な雪対策研究会を設置するなど、さまざまな雪対策を進めてきた。融雪の実証研究だけとっても、地下水や温泉排水、水道管熱、太陽熱など多彩。今年度はスマートシティ構想で既存技術を導入するとした第1段階のフェーズ1の期間が終了するが、この4年間は毎年新たな取り組みに着手し、雪対策の可能性を広げてきたと言えるだろう。
 ただ実感として、冬期間の暮らしが楽になったと思える市民はまだ限られており、市が目指す市民生活の利便性向上やにぎわい創出につながる冬季の外出促進にはまだ道半ば。融雪等推進基本計画では道路の重要度を評価し、優先順位や手順を明確にしているが、計画に沿って着実に取り組みが進んでいるかどうか、一般市民には分かりにくいのが現状だ。
 人口減少と少子高齢化の進行に伴い、今後は各家庭での雪片付けがさらに負担になることが想定され、この問題に対する市民の関心はますます高くなっていくはず。実証研究と並行して、ある程度確立された技術は普及を図り、市民の満足度を上げていくことが必要だろう。
 経営計画では市民による自主的な除排雪作業への支援など、地域全体での雪対策の仕組みづくりを掲げている。こちらにも知恵と予算を期待したいと思う。

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天下りあっせん問題「自浄能力はないのか」

2017/1/21 土曜日

 

 文部科学省が幹部の天下りを組織的にあっせんしていたことが発覚した。いまだに悪弊が脈々と引き継がれていることに、あきれる国民も多いのではないか。自浄能力がないとしか言いようがない。
 天下りや、再就職を繰り返す「渡り」に対する批判の高まりを受け、2007年に国家公務員法が改正され、再就職のあっせんや口利きなどが禁じられた。翌年から施行されたが、その後も天下りは繰り返され、再就職の規定に違反する事例も各省庁で複数確認されてきた。
 今回、文科省をめぐっては10件もの違反行為が確認され、他にも違反が疑われる行為が28件あった。さらには違反を隠すため、人事課職員が虚偽報告をしていた実態も判明。再就職等監視委員会の担当者は、これだけ組織的なあっせん行為が認められたのは「初めて」とし、驚きを隠さない。それほど悪質と言える。
 ただ、文科省に限ったことだろうかという疑問が湧く。同省職員からは「他省庁にも同様のケースはある」と指摘する声が聞かれる。政府は全省庁を対象に実態調査を行うが、あっせん行為などに限定せず、天下りそのものの実態まで明らかにしてもらいたい。
 野党幹部の一人は「天下りが過去5年で倍増しているというデータもある。安倍政権の緩みの象徴ではないか」と指摘する。そうしたデータが存在するのであれば、政府にはぜひつまびらかにしてもらいたい。一切合切の問題点を、国民の前に示してほしい。
 それにしても、なぜ天下りはなくならないのか。キャリア官僚の世界で慣行となっている早期勧奨退職が、主因とされている。同期や後進の中から事務次官が出たら定年前でも退職するもの。国民から懐疑的な視線を向け続けられても、いまだに変わっていないのが現状だ。
 平均寿命の増加や高齢化に伴い、60歳で仕事を辞める人は減少している。できるだけ現役でいたいと思う人は増えており、企業も定年延長や再雇用などの制度に取り組んでいる。
 省庁でも同様の制度を取ればいいのではないか。人件費の膨張を抑えるために、給与体系も見直せばいい。官僚は天下りを了としているのだろうか。改革しようという意志が全く感じられない。
 官僚の意識が変わらない限り、監視の目を強くする必要がある。監督責任のある大臣ら政務は今以上に緊張感を持って責任を果たすとともに、われわれメディアや国民も常に関心を持ち続けることが必要なのだろう。
 国会が定期的に点検することも効果的ではないか。折しも、通常国会が幕を開けた。天皇陛下の退位に関する法整備をはじめ重要案件は山積しているが、もういい加減に天下りをなくするため、有効な施策について議論し、見つけ出してもらいたい。

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定期チャーター便「定期路線就航の足掛かりに期待」

2017/1/20 金曜日

 

 中国の奥凱(オーケー)航空(本社北京市)が16日から、青森―天津間を往復する定期チャーター便の運航を開始した。3月中旬まで週4便が運航されることとなり、乗客見込み数5000人に対し、13日現在の予約者数は約4300人、予約率85%という好調さを示す。数カ月の短期間で、まとまった数の中国人観光客が本県に訪れるのは初といい、受け入れ体制の整備が課題になるだろう。幸い本県の行政や商工、観光関係団体などが力を合わせ、万全の体制としているようだ。あとは、いかに本県の魅力を中国人観光客に知ってもらい、帰国後にいかに情報発信してもらえるかに期待がかかる。
 同社は、同区間での定期路線就航を目指しており、今回の定期チャーター便の好調がその実現への足掛かりになるのではと関係者の期待も高い。ただ、中国国内での手続きに時間を要していることから、定期路線就航時期は4月以降の見通しという。そうした中で同社と旅行会社側から定期路線に先駆けたチャーター便運航の打診があったものだ。
 中国では今月末から旧正月「春節」が始まり、その需要を取り込む形であり、乗客は5泊6日もしくは7泊8日の日程で、本県から新幹線や海路を経て北海道を楽しむという形だ。本県へは空路で入り、北海道へは陸・海路で向かい、再び本県に入って空路で帰国するという形は、県が推進する「立体観光」を体現しており、今後の外国人観光客の本県誘致に向けたモデルケースともなろう。本県を起点に北海道や東北他地域に向かうことが可能とアピールするのも良いが、本県への滞在日数をいかに長くするかの取り組みも関係者には示してほしい。
 今後、気になるのは定期路線就航実現の可能性である。中国からの国際定期便は、北京首都航空(本社北京市)が青森―杭州、天津航空(同天津市)が青森―天津の各路線就航をそれぞれ計画しているが、いずれも予定が延期され、現段階で実現に至っていない。また今回、定期チャーター便運航を開始した奥凱航空は昨年12月下旬に函館―西安間で運航開始した定期路線について、搭乗率低迷を理由に2月初旬に運休する。
 こうした不安要素がある中で、本県への定期路線就航について、16日に就航セレモニーに出席した奥凱航空関係者は「当社は天津―青森線を重視している。始発地は天津、西安と異なっており、それぞれの集客は違うので比較はできない。天津からの集客力に期待している」と語った。
 本県への定期路線就航に名乗りを上げた中国航空会社の中では最後発ながら、いち早く定期チャーター便を実現させた同社の言葉だけに期待がかかる。県や関係者は定期路線就航に向けた準備を進めているだろうが、早期実現への取り組みも加速してほしい。

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高齢者事故対策「社会全体で支える仕組みを」

2017/1/19 木曜日

 

 高齢ドライバーによる重大な交通死亡事故が相次ぐ中、警察庁が、2015年に起きた、75歳以上のドライバーによる死亡事故の原因に関する初めての詳細な分析結果を示した。
 同年中の死亡事故は全体で3585件(75歳未満3127件、75歳以上458件)。事故原因のうち、75歳以上で最も割合が高かったのは操作ミス(アクセルとブレーキの踏み間違え、ハンドル操作の誤りなど)で29%を占め、75歳未満(15%)の約2倍だった。
 事故状況では特徴的な傾向として▽単独事故(電柱など工作物への衝突、路外への逸脱など)の割合が39%と多い▽車両同士の事故では高齢になるほど出合い頭や正面衝突の割合が高まる―などが挙げられた。
 75歳以上による死亡事故は年間400件台で横ばいに推移している一方、死亡事故全体は減少傾向にあるため、全体に占める75歳以上の割合が相対的に高くなっているという。
 高齢ドライバーの事故の背景には、認知能力を含む身体機能の低下があるとされる。年齢を問わず、場合によってはハンドルを握らないといった判断が求められるのは当然だが、一般的に事故のリスクが高い高齢者は一層の注意が必要であることを自覚しなければならない。
 一方で、身体機能は個人差が大きい。それは高齢者も同じ。個々の特性に柔軟に対応し得る制度や環境の整備が求められる。「高齢者は危険」といった画一的な意識で、一律に排除するような風潮は避けたい。
 警察庁は、運転免許制度の在り方をはじめとした高齢ドライバーの事故対策を検討する有識者会議を立ち上げた。逆送対策や先進安全技術の普及も検討課題に盛り込まれている。高齢者の生活を社会全体で支える仕組みづくりにつなげてほしい。高齢者の安全は社会全体の安全につながる。
 高齢運転者対策では、運転免許証の自主返納も重要課題の一つに挙げられる。15年の免許返納者は28万5514人で10年前の15倍。うち75歳以上でみると返納者は12万3913人、返納率は2・77%だった。返納率は高い都市部と低い地方の間で格差が大きいという。
 都市部に比べて公共交通機関が整っていない地方では、マイカーは生活に不可欠な存在だ。身体機能に多少の不安を抱えながらも運転せざるを得ない場合もあるだろう。公共交通機関または代替交通網がある程度整備されなければ、免許証は手放せまい。経営が厳しい民間事業者だけでは対応にも限界がある。国や自治体の支援が必要だ。
 75歳以上の免許保有者は毎年約20万~30万人ずつ増加。来年は約533万人になると推計されている。高齢運転者対策は喫緊の課題と言えそうだ。

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