社 説

 

「働き方改革」民間の意見聴き対策検討を

2017/8/26 土曜日

 

 政府は「働き方改革」を中小・零細企業にも広げるため、具体策の検討に乗り出した。問題は中小企業の多くが所在する地方経済は依然低迷しており、人手不足もあって労働時間の短縮が困難なことだ。時間外労働に上限を設ける企業への助成などが検討されているが、対策が使い勝手の良いものとなるよう、民間の意見にも耳を傾ける必要があろう。
 来月下旬にも召集される臨時国会の目玉として、政府は安倍政権の看板政策である働き方改革の関連法案を提出する予定で、長時間労働規制を盛り込んだ労働基準法改正案が柱となる。
 厚生労働省も2018年度概算要求に向け、時間外労働規制への助成のほか、非正規労働者の処遇改善や過重労働防止の方策をアドバイスする「働き方改革推進支援センター」(仮称)を全都道府県に設置することを検討している。
 また、「同一労働同一賃金」の実現に向けた施策では、正規、非正規にかかわらず共通の賃金規定や諸手当制度を導入する企業に対し、対象人数に応じて「キャリアアップ助成金」の支給額を加算する案が上がっている。
 働き方改革をめぐっては、県内でも県と青森労働局が先月、県経営者協会に対し、働きやすい職場環境の整備を要請している。
 具体的には▽非正規労働者の待遇改善▽女性の人材育成・管理職への登用▽労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進―など5項目について、会員173社に働き掛けるよう求めた。
 要請に際しては、16年の年間総実労働時間(速報値)が全国平均より約101時間長いなどといった本県の現状のほか、同局や県、金融機関による支援制度を説明。経営者協会側も「(5項目は)企業自らが主体的に取り組んでいかなければならない大事な事項」と応じ、会議や会報を通じて会員企業に周知すると答えている。
 過労死が深刻な社会問題となる一方、ITの活用によって自宅や職場から離れた「サテライトオフィス」などで仕事を行うテレワークが浸透し、柔軟な働き方への社会的理解は深まっている。
 特にテレワークは育児や介護、病気療養などの事情を抱えた人材の積極的な活用が可能になるだけでなく、長時間労働の是正にもつながるとして、政府も積極的に推進している。
 ただ、中小企業は一部を除いてIT化が遅れており、テレワークを推進したくてもできない事情もある。
 中小企業の働き方改革では労働時間の規制だけでなく、各企業の事情に即して有利な方策を選択できるようなメニューにすべきではないか。そのためには厚労省や各労働局が直接、企業の意見を聴く場を設け、対策に実効性を持たせる必要があろう。

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交通死亡事故抑止「意識付けで事故死者抑制を」

2017/8/25 金曜日

 

 今年に入ってから県内交通事故の死者が急増している。これを受け、23日に青森市内で開かれた「交通死亡事故多発に伴う特別対策会議」で、県警本部は9月1日から3カ月間、「交通死亡事故抑止対策秋の陣」と称して、関係機関と共に死亡事故抑止に向けた活動を展開する方針を示した。大事な命を一人でも多く救うため、官民を挙げて、住民の心に届くような取り組みを願いたい。
 会議資料によると、22日現在の死者数は前年比5人増の31人で、8月は同5人増の7人。会議が開催された23日には、つがる市で死亡事故が発生し死者数は32人に。県警本部は現在の統計方法となった1966年以降、死者数が最低だった40人を下回る39人以下に今年の死者数を抑制しようと目標を掲げるが、例年死者数が増加する秋季を考えた場合、40人を超す可能性が極めて高い。これを阻止、抑制するための「秋の陣」である。
 実際、過去5年に発生した秋季(9~11月)の交通事故死者数を見ると、2012年が年間59人のうち20人、以下、13年が48人中16人、14年が54人中19人、15年が40人中12人、16年が53人中20人と計87人に及び、件数にしても83件と、いずれも大きな割合を占める。
 つまり、秋の死亡事故発生を抑制することが年全体の死者数を減らすことにつながるわけである。県警本部の分析では、過去5年のこの期間の傾向として(1)高齢者の死者が大半を占めている(2)29件で65歳以上の高齢運転者が第1当事者だった(3)自動車運転中の死者36人中17人がシートベルト非着用(4)死者87人中56人に何らかの法令違反があったと挙げている。この中には本来、助かった命もあったかもしれないということだ。
 失われた命は元には戻らない。悲劇を繰り返さないための対策が求められる。そのためには運転者、同乗者、歩行者ら加害者、被害者双方になり得る人たちの、しっかりした意識付けが必要だ。
 「秋の陣」の取り組み内容には、そうした意識付けを図るための内容も盛り込まれた。例えば、シートベルトは運転者だけではなく同乗者も当然着用するものだが、それが守られない結果、後部座席の非着用者が車外放出され、最悪、死に至ってしまうことが少なくない。そのため、後部座席を含めた全座席のシートベルト、チャイルドシートの正しい着用について、啓発活動を強化する。このほか、制服警察官による交通誘導といった「見せる活動」、高齢者や子どもを重点とした事故防止対策を掲げる。
 いずれも過去、何度となく死亡事故抑止対策として挙がったものばかりだが、交通法規に関する基本的な意識付けが不十分なばかりに悲惨な事故が発生していることも事実。運転者、同乗者、歩行者とも、いま一度、交通ルールの順守を胸に誓ってほしい。

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移住対策「活躍できる仕組みづくりを」

2017/8/24 木曜日

 

 人口減少が急速に進行する中、市町村の移住対策が全国的に活発化している。移住の取り組みと言えば暮らしやすさや移住支援策のPRが定番だが、本県ではそれだけにとどまらず、受け入れる側の地域が移住者に期待する役割を明確にし、獲得した外部人材で地域の課題解決を図ろうという試みが進行中。地域おこし協力隊の制度を活用し、担い手不足に悩む伝統産業の職人や1次産業の従事者を同隊員として募集し、育成しようという県や関係市町村の事業もこの一環だ。
 地域おこし協力隊員として受け入れると、最長で3年間の報償費や住居、活動車両の借り上げ費用、研修のための経費などに国から財政支援があり、現場の負担が軽減できる。もともとこの制度は都市部から過疎地への定住・定着を図る目的だが、知名度の低い市町村は自治体や移住施策のPRだけでは隊員の獲得が難しいのが現状。県などの事業は地域課題を地域の個性として打ち出し、首都圏などで移住を希望する人を引き付けるとともに、長く活躍できる場作りにもつなげるもので、今後の展開に注目したい。
 モデル事業として今年度、弘前市で進む津軽打刃物の鍛冶職人を目指す人材の募集は、まさに多彩な伝統工芸が根付く津軽地域の特色を表すものだと言えるだろう。鍛冶職人は刃物のほか、リンゴや桜の維持管理に欠かせないせん定ばさみの製造やメンテナンスを担う。城下町だった弘前市には鍛冶屋が多かったというが、現在残るのは5軒のみ。職人数が減り、高齢化していることもあって、日々の仕事をこなしながらの後継者育成が難しいことは容易に想像できる。これは他の伝統産業にも共通する課題だろう。
 今回の事業ではこうした背景を含め、情報発信を工夫することで他の地域との差別化を図り、関心のある層への訴求力を高めたほか、受け入れる側と応募する側双方が相性や適性を確かめる場として体験ツアーを設定、その後に本格的な地域おこし協力隊員の募集を行うという流れとした。初年度でもあり、課題なども検証しつつ、より効果の高い仕組みづくりに知恵を絞ってもらいたいと思う。
 県内の地域おこし協力隊員は7月1日現在で14市町村に32人。活動を終えた隊員を含めると51人に上り、農林水産業に従事したり、地域おこしの支援や移住コンシェルジュなどとして活躍している。
 総務省の調査では、任期終了後も同じ地域に定住している割合は約6割だという。せっかく縁があって県内で暮らす選択をした隊員だ。国の財政支援のある3年間限定ではなく、その後も地域に定着してもらえるような仕組みづくりが必要だろう。現在、さまざまな産業で将来を見据えた労働力不足への対応が急務となっている。地域に本当に必要な担い手として迎え入れ、育て上げる。そうした取り組みが県内に広がるよう期待したい。

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クマ出没注意報「共存を前提に適切な対策を」

2017/8/23 水曜日

 

 ツキノワグマによる県内の人身被害が今年に入って5件(21日現在)発生したことを受け、県は「出没注意報」を初めて発令した。秋はキノコ採りで入山者が増えるほか、農作物の収穫期にはクマが人里に姿を現すケースも考えられる。被害防止策の徹底を改めて呼び掛けたい。
 県内の統計によると、目撃、食害、人身被害を合わせた2016年の件数は500件余りとなり、統計が残る1992年以降で最多を記録した。今年の前半を見ると、目撃や食害の件数は16年より少ないものの、人身被害が目立ち、関係機関は危機感を募らせているという。
 このため、県は7月、被害の発生状況などに応じてクマ出没の「注意報」や「警報」を発令し、県民に注意を促すことを決定。今回の「注意報」は初の発令で、対象は県内全域となっている。
 今年は春以降、弘前市や鯵ケ沢町で山菜採りらがクマに襲われ、今月20日には十和田市でキノコ採りの70代男性がクマ2頭に遭遇し、右手人さし指の骨を折る重傷を負った。キノコ採りはこれからが本格的なシーズン。タケノコが生える春と同様に入山者が増えることが予想され、クマに遭遇する可能性も高まる。
 さらに、農作物の収穫期に当たる秋はクマが冬眠に備え、食べ物を求めて人里に現れるケースが増える。昨年の8月以降を振り返っても、数日ごとに県内各地でクマの目撃情報が寄せられていた。今年も同様の状況になることは十分考えられる。
 県の出没情報システムなどは十分活用されるべきであり、その情報は各種対策を講じる上で参考になる。しかし、いつ、どこで、どのようにクマに遭遇するかを予想することは当然、不可能だ。クマと出合わないための対策、出合った際の対応は結局、個人に委ねられている。
 国や地方自治体はホームページなどでクマへの対応策を紹介している。それらによると、クマの生息域に入る際はまず「出合わないこと」を心掛けるべきとし、ラジオなど音が出るものを携帯することをはじめ、木の幹に付けられた爪痕などクマがいたことを示すものがないか気を配ることも促している。
 近年は地方の過疎化による耕作放棄地の増加などに伴い、クマが人里に現れるケースも目立つようになった。林の下草刈りなどをしてクマの侵入経路を絶つといった基本的な対策を怠らず、場合によってはクマを森に追い払う「ベアドッグ(クマ対策犬)」など積極的な手法も活用すべきではないだろうか。
 人の生活域にも現れ、危害を加えることもあるクマだが、豊かな森林の象徴とも言われ、われわれも森林から大きな恩恵を受けている以上、対策はクマとの共存を前提に講じられるべきだろう。互いに適度な距離を保ちながら、被害を未然に防ぎたい。

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民進党代表選「党再生への道筋を明確に示せ」

2017/8/22 火曜日

 

 民進党の蓮舫代表の辞任表明に伴う代表選が21日告示され、前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官が立候補を届け出て、一騎打ちの構図が確定した。
 次期衆院選に向け、低迷する党勢を立て直し、安倍政権に代わる「受け皿」をどう築くかが最大の焦点となる。野党第1党としての存在感を示すための道筋をどう示せるかが問われよう。
 保守系の前原氏は共産党との関係を見直す考えであるのに対し、リベラル勢力の支持を受ける枝野氏は路線継続を訴えている。9月1日の投開票結果で、今後の野党共闘の在り方が変わる可能性もあり、論戦の行方が注目される。
 前原、枝野両氏は1993年の衆院選に日本新党から出馬し初当選。その後、新党さきがけを経て98年の民主党結成に参画するなど初当選から24年間、政治行動を共にしてきた盟友同士。2009年発足の民主党政権時代には、野田佳彦氏らとともに主流派を構成した。
 ただ、いずれも民主党時代の「負の財産」を引きずる。前原氏は05年に民主党代表に就任したが、偽メール問題への対応をめぐり1年足らずで辞任に追い込まれた。枝野氏は、菅直人政権の官房長官を務めるなどしたが、菅政権は東日本大震災・東京電力福島第1原発事故への対応で批判を浴びた。
 こうした経験を踏まえ、代表選に臨む両氏。前原氏は「自民党に代わる選択肢がない。われわれには選択肢を示す歴史的な使命がある」と強調。枝野氏は「本当に地に足を着けた国民政党に脱皮することができるかが問われている」と意気込む。
 安倍内閣は、強引な政権運営に加え、加計・森友学園問題や相次ぐ閣僚の辞任、2回生議員によるスキャンダルなどが相次ぎ、今年2月の時事通信の世論調査で53・4%だった支持率は、7月に29・9%にまで急落。東京都議選での自民党の惨敗を経て「安倍1強」は様変わりしている。8月の世論調査で36・6%と、2割台を一応は脱したものの、内閣改造の効果も限定的だった。
 ただ、自民党に代わる政党として、野党第1党の民進党が受け皿となり得ていないのが現状だ。民進党内では、小池百合子東京都知事と連携する形での野党再編を想定して離脱者が相次いでいる。こうした現状をどう克服し、求心力を高められるのか。まさに正念場にある。
 野党第1党の新たなリーダーには、次期衆院選に向け、政権に対する勢力結集への戦略も問われ、対応次第では政権再編につながる可能性もある。
 代表選では弘前市など地方における候補者遊説も予定されている。党再生の最後のチャンスとも言われる今回、両候補は自らが掲げる政策や党運営の方針、再生への道筋を党員・サポーターに明確に示し、活発な論戦を交わしてほしい。

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