社 説

 

弘実高藤崎校舎「引き継がれるりんご科の精神」

2018/11/29 木曜日

 

 全国で唯一「りんご科」がある藤崎町の弘前実業高校藤崎校舎が、来年3月末で閉校となる。生徒が果樹園のリンゴの木を1本ずつ担当して栽培技術を学ぶ「マイツリー」、国際宇宙ステーションに保管されたリンゴの種を育てるプロジェクトなど、特色のある活動を展開してきた同校に対し、閉校を惜しむ声は後を絶たないが、藤崎校舎の伝統と精神は、関係者によって今後も脈々と引き継がれていくことになる。
 その象徴的な出来事が、本紙の紙面を相次いで飾った。一つは「藤校舎」という校名の略称をリンゴの品種名「藤巧者」として残すべく、農林水産省に品種登録出願しているという話題だ。20年ほど前、同校舎の果樹園で見つかった「ふじ」の枝変わり品種を同校OBで県りんご剪定(せんてい)士の太田昌文さんが自身の園地で育成してきたが、閉校決定を受けて、この枝変わり品種を世に出そうと計画。太田さんの提案を受け、2016年度から同校舎果樹研究部の生徒を中心とした品種登録出願に向けた取り組みがスタートした。通常のふじより赤く色づく特徴を持つリンゴだが、果実の重さ、大きさ、着色程度、蜜入り程度、糖度、酸度などを調べ、通常のふじとの違いを明らかにした。その結果、着色程度だけでなく、蜜入り程度も通常より良いことが分かったという。
 今年1月に太田さんが出願者となり、農水省に藤巧者の名で品種登録を出願。藤巧者の名前は生徒が話し合って決めたという。
 もう一つもふじに関する話題だ。同校舎では、ふじの原木のDNAを受け継ぐ木を育てているが、閉校に伴い、管理を引き継ごうと、平川市の柏木農業高校生物生産科の2年生が今月下旬、移植作業を行った。
 ふじの原木は、藤崎町の旧農林省園芸試験場東北支場で作られたが、藤崎校舎では、2004年に当時の藤崎園芸高校が原木から穂木をもらい受け、大切に育ててきた。柏木農高は16年度から、藤崎校舎のリンゴに関する教育のノウハウを引き継ぐ取り組みを進めており、リンゴ販売実習や選択科目「りんご栽培」の設置などを推進。今回の移植もこうした教育活動の一環として行われ、3本のうち1本が同校果樹園に移植された。
 ふじの木は移植から1年程度は樹勢回復に力を注ぐ方針で、順調にいけば約2年後には真っ赤な実を付けることになりそうだ。
 藤崎校舎、最後の在校生はりんご科3年生12人のみだが、これまでに3600人近くの卒業生を輩出している。日本一のリンゴ産地を守り、育て、未来を築く原動力として、同校舎の果たしてきた役割は大きい。リンゴの品種とリンゴ樹に宿り、引き継がれていく同校舎の精神を地域全体で大切にしていきたい。

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議会改革の今後「なり手確保を意識した活動を」

2018/11/28 水曜日

 

 鯵ケ沢町議会が12月に開会される定例会で、県内の町村議会として初めて「日曜議会」を開く。傍聴の機会拡大に加え、議員のなり手確保も見据えた取り組みという。小規模自治体の議会が抱える悩みは全国共通だ。
 言うまでもないが、議会の最大の役割は各種政策を進める地方自治体の首長をチェックすること。政策の適否の判断は当然、住民生活に影響する。判断の過程は住民に示されなければならず、住民も関心を持つべきだろうが、現状、議会と住民の距離は近いとは言い難い。
 議会改革の必要性が強く叫ばれたのは、地方議会の活動原則や責任を定めた「議会基本条例」を北海道栗山町が2006年に議決、制定した以降。その後、本県自治体の議会でも条例制定の動きがあり、住民対象の議会報告会を定期的に開催する例も見られる。日曜議会もこの流れに含まれると言えよう。
 栗山町の条例制定以降の改革は、議会活動の質向上を目指したもので、全国的に広がった。ただ、それから10年余り。地方自治体を取り巻く状況はさらに変化した。少子高齢化のさらなる進展などを背景に、議会の存続が危ぶまれる時代を迎えつつある。議会活動を理解してもらうことだけにとどまらず、議員のなり手確保まで考えなければならない深刻な状況となっている。
 しかし、今のところ打開策は見えていない。離島を除き人口が全国最少の高知県大川村は一時、議会を廃止して有権者による「村総会」を設けることを検討したものの、結局は「現状では不可能」と議会存続を表明。ただ、議会のなり手不足を解消する手だてがあるわけではなく、村議会の苦悩は続く。
 大川村の件を機に、総務省は小規模市町村の議会維持に向けて検討に着手。同省研究会は、議員の兼業・兼職制限緩和などを含む報告書をまとめた。これを受け、政府は対象自治体の規模などを詰め、来年の通常国会にも地方自治法改正案などを提出したい考えという。全国一律の地方議会制度を改める議論であり、各議会が地元地域の実情に合わせ、自らの在り方を選択していかなければならない時代が遠からず来るかもしれない。
 そのためには、優れた議員のなり手確保を意識した活動が必要だ。議場での議論をじかに聴いてもらう機会などを増やし、参加意識を促すべきだろう。その中で地元の重要課題を理解し、やがては議員として活動してみようと思う人が出てくる可能性も高まるのではないか。
 かつて栗山町議会事務局長として議会基本条例の制定に携わり、地方議会改革の先駆者となった中尾修氏は、少子高齢化や人口減少が進む厳しい時代こそ、地方議会は必要なのだ―といった趣旨の発言をしていた。議会改革はこれからが本当の正念場だ。

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大阪万博「観光と技術力発信の場に」

2018/11/27 火曜日

 

 2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決まった。同地での開催は1970年以来、55年ぶり2度目となる。日本では2020年の東京五輪に続く、国際的かつ大規模なイベントの開催。日本を訪れる訪日外国人客(インバウンド)は好調に推移しているだけに、今後も五輪、万博と、集客を見込むことができるイベントが相次いで開催されることになれば、さらなるインバウンドの拡大が期待できる。観光立国を目指す日本の強力な起爆剤の一つとして、果たす役割は大きなものになるだろう。
 今回の開催地は、大阪とアゼルバイジャンの首都バクー、ロシアのエカテリンブルクが争った。大阪はロシアとの決選投票で過半数を獲得し、開催地に決まった。日本以外の2カ国は、「万博初開催」を前面に打ち出したが、これまでの開催実績が評価された日本・大阪に軍配が上がった。
 日本での万博という点で言えば、やはり1970年の大阪万博(EXPO’70)が、特に印象に残る。日本で最初に開催された同万博は芸術家・岡本太郎作の太陽の塔をシンボルに、日本の高度成長期の姿を世界に発信する一大イベントとなった。大阪万博では、ファミリーレストランやワイヤレステレフォン、電気自動車、動く歩道などが登場し、世間の耳目を集めたという。
 いずれも実用化が進み、現代のわれわれの生活に普通に溶け込んでいるものばかりだが、その源流が大阪万博から始まったという話を聞くと感慨深いものがある。日本の未来を俯瞰(ふかん)し、想像する。そのような場として考えても、万博は意義深いものになるだろう。
 大阪万博は、健康・長寿をテーマに、仮想現実(VR)や人工知能(AI)の技術を駆使した新たな万博を目指すという。5月3日からの185日間で約2800万人の来場を見込む。政府は万博開催の経済効果を約2兆円と試算している。健康・長寿がテーマということであれば、世界有数の長寿国である日本の得意分野といえる。VRやAIといった分野も、今後さらに成長が見込まれる。日本の技術力と、さまざまな取り組み、未来に向けての展望を世界に発信する好機と言えるだろう。
 また会場に予定する夢洲には、大阪府・市がカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致も目指している。IRの実現に当たってはギャンブル等依存症の問題などもあり、国民の間でも賛否が分かれてはいるが、計画通りに進むとなれば、少なくとも経済面では相乗効果が期待できると言えるかもしれない。
 IRの件もそうだが、会場建設費などの事業費も膨張する可能性があるという。実現に向けての課題は多いだろうが、関係者の英知を結集し、大阪万博をより良いものにしてもらいたい。

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5%ポイント還元「地方にも恩恵ある対策を」

2018/11/24 土曜日

 

 安倍晋三首相は消費税率を8%から10%へ引き上げるに当たり、消費の落ち込みを避けるため、中小の小売店でのキャッシュレス決済時を対象に、5%をポイント還元する対策を打ち出した。利用すれば消費者の負担が現行より下がり、実質的な「減税」とも指摘される。
 キャッシュレスにはクレジットカードや電子マネー、モバイルウォレットなどがある。日本の場合は持ち歩く現金を狙う犯罪が海外より少ないといった治安の良さに加え、ATM(現金自動預払機)が各所に設置されている利便性などもあり、現金決済を好む傾向にある。国内のキャッシュレス決済比率は、現在2割弱にとどまっている。
 海外先進国の多くは、日本よりキャッシュレス決済比率が高い。経済産業省が4月に公表した「キャッシュレス・ビジョン」によると、キャッシュレス経済比率は韓国が9割近く、中国は6割程度、米国は4割以上とされる。キャッシュレスに慣れた外国人が現状の日本を訪れ、不便を感じることもあるだろう。
 2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向け、海外から訪れる人が増えることを見込み、キャッシュレス化を推進する必要性が指摘されている。政府は2027年までには4割程度まで引き上げることを目指すとしている。
 一方で、現在2割弱とされる国内のキャッシュレス決済比率だが、首都圏に比べると地方でのキャッシュレス決済比率はさらに低いとみられる。クレジットカード対応を行うには、小売店がカード会社に一定の手数料を支払う必要があるが、その負担が苦しい―という小売店も地方には少なくない。また高齢者をはじめ、慣れない手続きを避けがちな層もいるだろう。
 本県は海外からの誘客を促進するインバウンド対策を進めており、キャッシュレス決済を今後普及させる必要性は指摘されている。本県は韓国、中国からの観光客も多く、経済効果を上げるにはキャッシュレス決済の普及が不可欠だ。
 だがキャッシュレス決済のポイント還元期間として想定されているのは、消費税率を引き上げる来年10月から、東京五輪・パラリンピックまでの9カ月間。この間に、地方でキャッシュレス決済がどの程度普及するかは不透明だ。
 安倍首相の経済対策「アベノミクス」の効果を、地方はなかなか感じにくい状況にある。その上、実質的な「減税」とされるポイント還元の恩恵も、地方は首都圏に比べるとあまり受けられない可能性がある。その場合は、地方を置き去りにした経済対策との批判は免れられないのではないか。
 地方も現状を変える努力は必要だが、消費税率引き上げに当たり、より地方の実情を見据えた経済対策についても併せて国に求めたい。

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慰安婦財団解散「矛先を間違えていないか」

2018/11/23 金曜日

 

 韓国で元慰安婦らへの支援事業を行ってきた「和解・癒やし財団」の解散と事業の終了が、同国女性家族省から発表された。
 財団は、慰安婦問題に関して「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった日韓政府間合意(慰安婦合意、2015年)に基づき設立されたばかり。日本は財団に10億円を出資し、元慰安婦らへ現金を支給してきた。しかし、合意に批判的な文在寅大統領の就任後、財団に対する韓国政府の予算支援が中断されるなど、事業継続に支障が生じていたという。
 支援事業は日韓合意の核心部分であり、韓国側による事実上の一方的な合意の破棄と受け取られても仕方あるまい。同国外務省は合意を破棄したり、再交渉を求めたりしないことを強調したが、説得力に乏しい。
 政府間合意はいったい何だったのかと首をかしげざるを得ない。一政権の恣意(しい)で簡単にほごにできるものなのか。
 同国最高裁は10月、日本企業に韓国人の元徴用工への賠償を命じる判決を出したばかり。1965年の日韓請求権協定では、日本が経済協力資金を支払う代わりに、両国と国民間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記、韓国政府もこれまで元徴用工の請求権問題は「解決済み」との見解だったが、最高裁判決では「個人請求権は消滅していない」と判断された。韓国政府は最高裁の判断を尊重する姿勢を示し、従来とは異なる対応の取りまとめに迫られている。
 いずれにせよ、こうした協定や合意が軽視される事態が続けば、国家間の信頼関係は成立し得ない。
 財団解散は、文政権が慰安婦合意について「国民の70%が受け入れていない」とされる世論を優先させた結果という。政権支持層の中心である若年層の支持率が下落傾向とも伝えられる。支持率のつなぎ留めや回復を狙ったのかもしれないが、国家間の約束事が政権支持率の道具にされてはたまらない。
 慰安婦合意は、過去の政権の弊害を正す文氏のスローガン「積弊清算」の対象にされた。だが、慰安婦合意にせよ請求権協定にせよ、「正す」ならば対象は当時の政権であり、国内の問題である。自国を省みず、すぐ他国へ矛先を向けるのは順序が異なる。請求権協定を例にすれば、日本が韓国に支払った経済協力資金計5億ドルの多くを当時の政権がインフラ整備などに投じ、個人補償に充てたのはうち無償分3億ドルの5・4%だった。
 韓国外務省は慰安婦財団の解散に関し、日本側に被害者の名誉と尊厳の回復、傷の癒やしに誠意ある姿勢で努力するよう求めたが、迷路を次々増設しては「早く出てこい」と叫んでいるようなものだ。日韓関係を複雑にしている原因は韓国側にあることを、いい加減自覚した方が良い。

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