社 説

 

移住者の体験談「地域振興に向けたヒント」

2017/2/8 水曜日

 

 全国で移住を促す動きが活発化する中、移住希望者からは「移住の“先輩”から話を聞きたい」といった声が多数聞かれるという。
 昨年秋に東京都内に開設された弘前市のひろさき移住サポートセンター東京事務所にも、同じような要望が寄せられているという。そこで同事務所は先日、同市に移住した人を都内に招き、体験談を語ってもらった。
 一人は結婚を機に秋田市から移り住み、コーヒーショップを経営している女性。女性は店を構えるまでの経緯などを丁寧に説明した。
 弘前市は「珈琲の街」をうたっており、コーヒーショップがたくさんある。それだけに競争が激しいのではと思いきや、女性は逆のことを語った。
 コーヒーショップ経営者の間で交流があり、新たに開店する人がアドバイスを聞ける場があるという。女性もその場に参加しており、この日の来場者に「一緒に『珈琲の街』を盛り上げよう」と呼び掛けていた。
 移住を希望しても生業(なりわい)がなければ生活できない。現役世代が移住する上で最大の課題は「仕事の確保」。そうした中で、コーヒーショップの経営者の間にこのような絆があることは、移住希望者に勇気を与えるものではなかろうか。
 もう一人は岩手県宮古市出身の女性。弘前市内の大学を卒業後、草木染・こぎん刺し作家になった。その女性は「弘前にはもともと津軽塗、打刃物など伝統工芸品が身近にあるため作家を支援する土壌がある」と強調していた。
 東京事務所が2人を招いた理由は、コーヒーと伝統工芸品が弘前市の大きな特徴であると考えたからだという。全国の自治体が移住者の受け入れに躍起となる中、街の特徴を際立たせる必要があり、うまく弘前をアピールできた。
 加えて意義深かったと思えるのは、招いた女性2人が地域になじみ、生活の糧を得ていったプロセスが分かった点だ。地域に魅力があったとしても、実際にそこで生活するとなれば、多くの人と関わり、仕事もしていかなければならない。移住希望者が不安に思うのは、まさにこの点であろう。
 移住を決断するのは非常に勇気の要ることだ。慣れ親しんだ生活をやめ、全て一から築き直さなければならないのである。地方に住み、移住者を受け入れるわれわれは、彼らの不安にもっと寄り添う必要があろう。結局、それが地域の魅力になり、移住希望者を増やすことにもつながるはずだ。
 さらに、移住者の体験談には、地元で暮らす人たちが気付きにくい「地元の魅力」が詰まっているように思える。それらは地域を振興するためのヒントだ。これからも熱心に耳を傾けていくべきではないだろうか。

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イクボス宣言「大小問わず仕事と生活調和を」

2017/2/7 火曜日

 

 青森銀行(成田晋頭取)が県内民間では初めて、仕事と生活の調和を実現するワーク・ライフ・バランス向上に向けた「イクボス宣言」を行うとともに、イクボス育成に取り組む企業のネットワーク「イクボス企業同盟」に加盟した。同行は1月に始めた半日休暇、育児休業の5日間を有給とする制度をはじめ、定時退行日設定、定時前退行キャンペーンなどを実施。今回の宣言により、取り組みを促進させ、生産性向上や社会貢献推進を目指すことにしている。
 本県では昨年7月に県警本部が仕事と生活を両立できる職場環境を目指し、県内で初めてイクボスを宣言。全国的にも広島、滋賀、茨城、山梨各県警に続く5番目となった。このほか1月には、平川市が県内市町村で初めてイクボスを宣言し子どもを育てやすい、介護しやすい環境づくりを目指すこととしたばかりだ。公共機関にイクボスを宣言する動きが出る中で、ようやく民間でも名乗りが上がった形である。
 男性の育児休暇が注目されている昨今とはいえ、まだまだ同休暇を取得するには難しい状況である。この点は青銀のイクボス宣言に立ち会った「イクボス企業同盟」事務局のNPO法人ファザーリング・ジャパンの齊藤望東北支部理事の「制度を使う行員がいなければ絵に描いた餅。行員が気を使うことなく、育休、介護制度を使う体制ができれば」という言葉に如実に表れている。
 実際、「子育ては女性の役割」といった考えは依然多いのだろう。かつてのように大家族の3世帯同居が当たり前で、女性が家事と育児を全面的に担っていた時代とは現在、事情は異なる。核家族化が進み、女性の社会進出が当然となった中で、育児や日々の生活を営むには男性側の協力も不可欠だ。
 そうした中で、本県を代表する金融機関の一つである青銀がイクボスを宣言したことは、他の民間の範ともなろう。従来の取り組みはもちろん、率先した取り組みをアピールすることで、追随する企業などが名乗りを上げることに期待したい。
 とはいえ、民間は公共機関や一部大手のように潤沢に人がおり、互いに仕事をカバーし助け合えるような環境が整っている所ばかりではない。育児休暇に限って言えば、同僚や上司が理解し、全社的にカバーできることが大前提だ。少人数で日々の仕事に取り組む中小企業は一人ひとりの業務や行動がその社に与える影響は大きく、イクボス宣言には慎重にならざるを得ない場合もあろう。
 ただ、中小零細ながらも可能なイクボスの在り方を模索する動きもあると聞く。その社・団体によって、イクボスに対する意識の違いはあろうが、大小問わず仕事と生活の調和は実現されなければならない。

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特殊詐欺「一層の高齢者被害防止策を」

2017/2/4 土曜日

 

 昨年1年間に全国で発生した振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の被害額が406億3000万円に上ることが、警察庁のまとめで分かった。被害額は2年連続で減少し、前年を75億7000万円(15・7%)下回ったとはいえ、依然として巨額。由々しき問題であることに変わりはない。
 認知件数は2011年以降、毎年増え続け、昨年は1万4151件(前年比2・4%増)だった。既遂1件当たりの被害額は減少した計算だが、被害の範囲は拡大したと考えていい。うち78%は65歳以上の高齢者。資産を比較的多く持っていたり、逆に今後の生活資金に不安を抱いていたりするなど、この世代ならではの特徴を突くのだろう。県内の特殊詐欺被害状況(県警まとめ)でも、認知件数68件のうち高齢の被害者が63・2%を占めた。
 全国の統計のうち昨年の手口で特徴的だったのは、医療費や税金の還付を名目とした還付金詐欺の急増。認知件数は3682件で、前年比55%増だった。これが全体の認知件数を押し上げたと指摘されている。被害額も42億6000万円で、前年を67・4%上回った。
 還付金詐欺は、自治体職員らを名乗る犯人側が還付手続きと称して商業施設、スーパー、コンビニにある無人の現金自動預払機(ATM)へ行くよう指示し、携帯電話を通じてATMを操作させる過程で送金させてしまう手口が特徴という。犯行に用いられたATMの96・5%が無人だった。
 金融機関の店舗に併設されたATMは職員らの目が厳しいため、比較的警戒が手薄な無人ATMを指定しているとされる。買い物先で現金を引き出せる手軽さが悪用されたとも言える。
 還付金詐欺の93%は高齢者。手口別で最も多かったおれおれ詐欺も高齢者が95・8%を占めた。架空請求詐欺や融資保証金詐欺では高齢者以外の層にも被害が見られるが、犯行グループの摘発と同様に、高齢者の被害防止対策は重要と言える。
 金融機関などでの声掛けや通報を通じて水際で阻止した被害は、昨年1年間で191億8000万円。件数1万3140件は最多という。一定の効果を上げてはいるが、被害の“高止まり”傾向を踏まえると、関係機関の連携を強化する必要がある。
 無人ATM対策も、設置商業施設などの店内放送や警備業者による見回りなどでは限界があろう。防犯協力団体に、定期的な巡回や声掛けを要請することはできないか。
 高齢者の家族や身近な人を通じた注意喚起も有効という。家族への働き掛けも重要だが、家族間で普段からこうした話題を共有できる環境が、見守りの目となって作用するかもしれない。

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パラリンピック「共生社会実現へ弾み」

2017/2/3 金曜日

 

 2020年の東京パラリンピックに向け、弘前市はブラジル視覚障がい者スポーツ連盟と同市でブラジル柔道チームが事前合宿を行うための覚書を交わした。今後、条件面などについて本格的な協議を進め、正式な協定締結となる運びだ。
 市は東京五輪での台湾ソフトボールチームの事前合宿誘致を既に決めており、実現すれば2チーム目。パラリンピック競技に絡む事前合宿の誘致は県内初となる。選手団の来弘を歓迎したい。
 事前合宿の誘致は受け入れる自治体を選手団や観光客が訪れることで国際交流や地域振興が期待されるほか、地方の住民にも東京五輪・パラリンピックが身近に感じられるというメリットがある。
 市側は競技施設や宿泊場所を準備し、国内での施設使用経費や宿泊費、移動費などを負担することになるが、選手団は本番にベストコンディションで臨めるよう、20年を待たず毎年来弘して合宿するというから、交流も単発ではなく、じっくりと深めていくことが可能だ。
 何よりも市側が合宿誘致の目的に掲げたように、パラリンピック出場選手との交流や一流の障害者スポーツに触れることは共生社会実現に向けたきっかけとなり得る。その意義は大きい。ブラジルにはリオパラリンピック柔道女子70キロ級で銀メダルを獲得したアラナ・マルドナド選手がおり、20年の東京では金メダル獲得を宣言している。彼女の活躍は市民にパラリンピック競技に注目する楽しみを与えてくれるだろう。
 また今回交渉相手となったブラジルの視覚障害者柔道チームとは縁がある。両者をつないだのは弘前市船沢地区(旧船沢村)出身で、ブラジルに柔術を伝えた「コンデ・コマ」こと前田光世。前田は柔道を広めるため20代で渡米、欧州や中南米諸国を経てブラジルにたどり着き、柔道着を着用した異種格闘技戦で無敗と言われる強さを誇った。今回来弘したブラジル視覚障がい者連盟のサンドロ・ライナ会長は「ブラジルの柔道選手に大きな影響を与えた。知らない人はいない」と敬意を表し「(弘前とは)深い関係がある。現時点で他での事前合宿は考えていない」と深い縁を強調した。
 前田はブラジルで最強の格闘技とされるグレイシー柔術を生んだグレイシー一家に柔術を教え、世界的に知名度を上げたが、地元の知名度はそれほど高くない。弘前公園内に石碑があり、船沢地区には出生の地の碑や船沢中学校にコンデ・コマの名を冠した武道場があるが、近年はその名を知らない人が増えており、今回の交流を機に地元の偉人に再び光が当たることも大いに期待したいと思う。
 五輪・パラリンピックの国内開催は56年ぶり。この好機に台湾やブラジルとの間に友好関係を育み、文化や観光、産業などさまざまな分野で波及効果をもたらすよう取り組みを進めてほしい。

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求人倍率年間1倍超「質のさらなる向上必要」

2017/2/2 木曜日

 

 青森労働局によると、本県の2016年の有効求人倍率(原数値)は1・08倍となり、1963年の統計開始以来初めて年平均で1倍を超えた。7年連続で前年を上回り、4年連続で過去最高を更新。昨年12月も1・18倍(季節調整値)で過去最高を更新、都道府県別の順位も過去最高位となり、県内での雇用情勢が上向いていることはおよそ間違いないのだろう。
 ただ、手放しで喜ぶわけにもいかない。同労働局は有効求人倍率の上昇について、人口減少による求職者数の減少に加え、人手不足による求人の増加が影響していると分析する。いわゆる現役世代が減少しているから、自然と倍率も上がったという側面は否めない。都道府県の順位も最高位とはいえ、まだまだ下位にとどまっている。
 産業別の偏りも改善はされていないようだ。年間の求人数は建設業が前年比10・5%増の1万4653人、サービス業が同8・8%増の1万5261人、医療・福祉は同5・6%増の2万8049人などとなっている。全業種で人手不足傾向にある中でも、特に仕事内容がきついとされる業種は希望者が少なく、慢性的な人手不足に悩まされているという話も聞かれる。
 地域間の格差も解消されていない。昨年12月の有効求人倍率(原数値)は県全体で1・07倍となったが、職業安定所別に見ると、五所川原0・55倍、黒石0・73倍、弘前0・91倍と、津軽地方は軒並み1倍を切っている。県都の青森は県内最高の1・33倍で、八戸1・31倍、野辺地1・17倍、十和田1・14倍、三沢0・94倍、むつ0・90倍と続く。
 以前から見られる傾向だが、やはり津軽地方の落ち込みが目立つ。いずれの管内も前年から伸びてはいるものの、弘前は0・09ポイント増と最も鈍い。野辺地の0・35ポイント増、八戸の0・31ポイント増などと比べると物足りないし、県平均の0・20ポイント増の半分にとどまる。津軽地方はまだまだ底上げが必要だ。
 求人数の増加だけでなく、質の向上にも取り組まなければならない。雇用環境を改善しない限り、大都市圏への人材流出には歯止めをかけられないだろうし、人材を呼び戻すことも困難だ。そういった意味では、これからが正念場と言えよう。
 北海道新幹線開業による交流人口の拡大やリンゴの販売、輸出の好調さなど、明るい材料は整いつつある。青森県で生まれ、働き、安んじて暮らしていけるようになるまで、もうひと頑張りというところまできているのではないか。
 これまで産学官金が一体となり、求人の掘り起こしや早期提出など、地道な努力を積み重ねてきた結果が今につながっているはず。もうしばらく、息の長い取り組みを続けていってもらいたい。

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