社 説

 

東照宮400年「節目を郷土活性化の出発点に」

2017/6/2 金曜日

 

 黒石市にある黒石神社が、弘前東照宮(弘前市)の宗教法人破産を受けて摂社「東照宮」を建立してから間もなく2年。前身は日光東照宮に次ぎ1617年に弘前城内に建てられた東照宮で、そこから数えると今年はちょうど400年に当たる。この節目に古里を振り返ってみたい。郷土愛が膨らむのではないか。
 東照宮の歩みが記されている各種資料によると全国に先駆けて弘前城内に東照宮を勧請できたのは満天姫の功績という。満天姫は東照宮に祭られる徳川家康の養女で、弘前藩2代藩主津軽信牧(枚)の正室。そして黒石分知で初代領主に就いた津軽信英の母親。信英を祭る黒石神社は、東照宮建立に際し、満天姫を新たに神格化し相殿神とした。
 弘前東照宮の本殿などは国の重要文化財で、宗教法人の破産により弘前市が取得した。ただ政教分離の原則から、本殿内にご神体を安置できなくなった。表現は適切でないかもしれないが、居場所を失ったご神体を黒石神社が受け入れた形である。
 これにより弘前東照宮は建物としての価値はあるが、信仰対象としての役目を完全に失った。つまり摂社東照宮こそが、弘前城内にあった東照宮の現在の姿なのだ。しかも同じ神域に家康、満天姫、信英の親子3代が鎮まることで、将軍家と黒石の関係を身近に感じる場となった。社殿は小ぶりだが、見た目で判断できない重みが詰まっている。
 満天姫の功績は東照宮勧請だけにとどまらない。津軽家が幕府から命じられた国替えを免れることができたのは、家康の養女の願い出であったためという。もし満天姫が津軽家に嫁いでなければ、この地を「津軽地方」と呼ぶことはなかったかもしれない。満天姫は信英の母であるとともに、現在の津軽地方の母と言っても過言ではない。
 一方で弘前藩初代藩主津軽為信に滅ぼされた千徳家の居城があった黒石市浅瀬石地区はちょっと違う。為信が城主千徳政氏の死後も追討をやめなかったため、千徳家の菩(ぼ)提(だい)寺の和尚が抗議し、川に身を投げたといい、この悲劇が津軽じょんから節の起源と伝えられる。落城390年に当たる1987年から、千徳家と和尚を供養する灯籠流しを続けているほか、地区を挙げた防災訓練などにも積極的。住民の結束力がこの地区の強みになっている。滅ぼされたはずの浅瀬石城が、今も息づいているようだ。
 津軽家、千徳家の歴史とも諸説が存在するが、黒石よされや旧正マッコ市など、本家弘前をしのぐほどの活気を生み出す力を持っていることや、滅ぼされた側の浅瀬石地区が黒石津軽家に負けじと多彩な取り組みを展開しているのは確か。東照宮400年をきっかけに郷土を再認識し、地域再興を競い合う“平和な戦国時代”につなげたい。

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大相撲「阿武咲らの活躍で活況を」

2017/6/1 木曜日

 

 「大関の名に恥じぬよう正々堂々精進します」。日本相撲協会は31日午前、大相撲名古屋場所の番付編成会議と臨時理事会を開き、関脇高安=本名高安晃、茨城県出身、田子ノ浦部屋=の大関昇進を満場一致で決めた。伝達式に臨んだ高安は、常々、好きな言葉として語っていた「正々堂々」という言葉を口上で述べ、決意のほどを披露した。
 初土俵から大関昇進まで73場所を要したのは、歴代9位の遅さ。苦労人らしく、大関昇進に初めて挑んだ昨年の九州場所では負け越しを喫した。それでも小結で迎えた今年の初場所で白鵬、鶴竜らを倒す殊勲を重ね、11勝を挙げると、春場所も関脇で12勝と連続して勝ち星を2桁に乗せた。夏場所は、全勝優勝を果たした白鵬には敗れたものの、日馬富士を破るなど11勝を挙げ、大関昇進の目安とされる三役・直近3場所での33勝を上回る、計34勝の成績を残した。
 夏場所は、白鵬が完全復活を印象付ける1年ぶり38度目の優勝を、全勝優勝で飾った。その一方で、高安の兄弟子となる横綱稀勢の里をはじめとする日本人勢も近年、勢いを増しており、角界は長らく続いたモンゴル勢優位の状況からの変化が見え始めている。
 こうした状況の中、この夏場所で今後に向けて、大いに活躍が期待できる力士が現れた。言わずと知れた中泊町出身の阿武咲だ。夏場所は新入幕ながら10勝5敗の好成績を収め、敢闘賞を獲得した。「2桁は勝つ」と言った場所前の公約を見事に果たしての堂々たる成績だ。2日目から5連勝するなど、得意の突き押しを生かした前に出る相撲でファンを大いに沸かせ、互いにライバルと認め合う貴景勝との千秋楽の相撲も敗れたもののなかなか見応えがあるものだった。
 阿武咲は5歳から相撲を始め、中里小学校、中里中学校時代に全国優勝を幾度も経験。三本木農業高校に進学した2012年には1年生ながら国体少年の部で優勝するなどその実力は群を抜いていた。高校を中退して角界入りすると、13年初場所で初土俵を踏み、15年初場所に18歳で新十両に昇進。一度は幕下に陥落したが1場所で返り咲き、この夏場所では2桁、敢闘賞と目覚ましい活躍を見せた。31日には地元、中泊町でパーティーが開かれ、多くの町民や関係者から激励を受けた阿武咲。郷土の熱い思いと励ましを受け、一気に上昇気流に乗ってもらいたいものだ。
 高安は、平成生まれの大関としては、15年夏場所後に誕生したモンゴル出身の照ノ富士以来、2人目で日本出身では初めてとなるそうだ。阿武咲もまだ20歳。伸び盛りの力士だ。7月の名古屋場所は00年の春場所以来の4横綱、3大関となる。若い世代の躍進、とりわけ県人力士の活躍で、活気のある場所になるよう期待している。

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いじめ対策審委員「新体制発足後は早期対応期待」

2017/5/31 水曜日

 

 いじめを訴え、自殺した青森市の浪岡中学校2年葛西りまさん(13)=当時=に関する報告書を取りまとめている市いじめ防止対策審議会委員が5月末で任期を終える。現委員は葛西さんが昨年8月下旬に死亡して間もなく、同9月からこの問題に対応してきた。
 しかし、小野寺晃彦市長は遺族側の意向を踏まえ、審議会委員は7人全員を交代させた上で再調査を行う方針を示しており、28日に開かれた審議会今年度第1回臨時会が現委員最後の会合となった。会合では、葛西さんに関して中学1年の夏ごろから1年間にわたり計4件のいじめがあったと指摘した。一方で、市教育委員会による報告書の取り扱いは明らかにされていない。
 委員全員交代の背景には、現審議会がまとめた報告書の「最終形」で、葛西さんの自殺の原因に「思春期うつ」の可能性があると指摘したことがある。「可能性がある」ということは、決して断言したわけではないが、遺族側の「(委員が葛西さんに)会ったこともないのに勝手にうつにされ、しっかりした説明がなかった。うつで自殺したと言っているように感じた」とする怒りももっともである。確かに亡くなってしまった人に対する指摘としては、説明不足であったことは否めない。
 専門的見地から指摘したり、考えを提示したりしたことは委員の責務として行ったことなのだろうが、もっと遺族の気持ちに寄り添って検討することが必要だったのではないだろうか。現委員最後の審議の場となった臨時会で「きちんと説明したつもりだが、抽象的な部分もあったと思うので、より詳しい説明を行う」との発言があったが、委員の顔触れが全員変わることが既に決まっている場での発言ではなく、もっと早い段階での対応が必要であったかとも思われる。
 この問題に対応する審議会新委員に関する人選は、県外在住者を選任することを念頭に行われているが30日現在、まだ明らかにされていない。審議会の櫛引素夫会長は第三者性を保つこと、遺族に寄り添うことの両立が「難しかった」としているが、本来両立できることが望ましいのではないか。新たに選ばれた委員には両立をどうするかを考えた上で、対応することを望みたい。
 一方で、批判を数多く受けてきたであろうが、これまで長期間にわたり、いじめ問題の報告書作成に当たってきた現委員の労苦も評価すべきだろう。これまで取り組んできたことが下地となって、今後報告書の取りまとめが進むのであろうから。
 しかし、葛西さんが死亡してから半年余が経過している。報告書をまとめるために慎重な対応が求められるのは当然だが、新体制発足後は早期対応にも期待したい。

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組織犯罪処罰法案「“良識の府”らしい議論を」

2017/5/30 火曜日

 

 「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が参議院で審議入りした。本当に一般市民は処罰対象にならないのか、「内心の自由」は確保されるのか。いまだ多くの疑問が残る中、「良識の府」である参院には、真摯(しんし)な議論に努め国民の理解を深めてもらいたい。
 衆院審議で政府はテロ等準備罪が計画に加えて実行準備行為が要件とされていることを挙げ、内心や思想などを犯す恐れはないと説明している。しかし参考人質疑では普通の団体でも性質が一変すれば適用対象になるとの法務省の見解を踏まえ、「一般人の通常の団体も除外できないことになる」との指摘や、「市民が萎縮して民主主義が健全に成り立たなくなる」との批判もあった。
 まさに国民の不安を代弁したものだ。例えば原発再稼働や基地移転に対する反対運動が威力業務妨害罪に該当するとして規制されるなら、“言いたいことを言えない社会”が現実になってしまう。
 そういった法案への懸念や不安は、政府が国会審議で払拭(ふっしょく)すべきだ。ところが政府側の答弁は丁寧な説明とは程遠く、果てはその答弁も二転三転するお粗末ぶりだった。
 一方、法案を支持する声があるのも事実。適正なルールに基づく通信・会話の傍受と、その事実に基づく捜査によって犯罪が防止される仕組みづくりなら、国民の理解も広がるだろう。つまりルールを明確にして捜査権に縛りをかけないと、時の権力側に都合よく運用されるのではないか、言うなれば戦前に逆行しないか疑問が残るのだ。
 当初は参院で十分な審議時間を確保するため、来月18日までの会期を大幅に延長するとの見込みが大勢だったが、「加計学園」問題で情勢は極めて不透明だ。
 同学園による獣医学部新設計画をめぐり、安倍晋三首相への忖度(そんたく)があったのかが焦点で、野党は行政が首相側の意向を過度に推し量り、計画に特別な便宜が図られたと主張している。
 さらに文部科学省の前事務次官が、内閣府が早期開学を「総理のご意向」として文科省に求めたとする文書について、「確実に存在していた」と証言。野党はこの前次官を国会に呼んで集中審議するよう攻勢を強めている。
 このため政府・与党内には「国会を開いていても、ろくなことはない」(政府関係者)との声も上がっており、組織犯罪処罰法改正案の会期内成立を急ぐ構えだ。延長せざるを得ない場合でも、5日間程度にとどめる案が浮上している。
 ただ、国民の理解を得ず数の力で押し切ることは許されない。与党議員でさえ政権に物を言いにくい雰囲気が指摘される中、国民の代表である政治家には、有権者の声に耳を傾け、議論を尽くそうとする覚悟が求められている。

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加計学園問題「政府は主張の真正性明らかに」

2017/5/27 土曜日

 

 政府の国家戦略特区制度を活用した「加計学園」(岡山市)による獣医学部新設計画をめぐり、内閣府が「総理のご意向」などと設置認可を急ぐよう文部科学省に伝えていたとする文書が「確実に存在していた」と、文科省前事務次官の前川喜平氏が記者会見で明言した。文書は省内で作成され、幹部の間で共有されていたという。
 安倍晋三首相は国会答弁で、働き掛けなどの関与を全面否定している。松野博一文科相は省内調査の結果として、該当文書の存在を「確認できなかった」と発表していた。現時点で再調査する考えはないという。菅義偉官房長官も文書が出所不明で信ぴょう性を疑問視する姿勢を崩していない。
 加計学園の理事長は安倍首相の知人。同学園をめぐる文書問題は、同じく学校法人の「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をほうふつとさせ、「またか」との思いを禁じ得ない。
 前川氏は、文科省の組織的な天下りあっせんに関与した責任を取り、今年1月に依願退職した人物。菅長官は記者会見で退職までの経緯に触れ「当初は地位に恋々としがみついていた」などと非難した。しかし、今回の問題とは直接関係ないと思われる事項を引き合いに出すのは筋違いだ。
 何より、前川氏の証言により、その信ぴょう性、逆に言えば政権側主張の真正さが焦点となった。前川氏が異例の証言に踏み切った背景には不明な部分もあるが、当時現職の事務次官だった人物の証言は軽んじられるべきではない。政権側は改めて主張の真正さを明らかにする必要があろう。自民党は野党による前川氏の証人喚問要求を拒否したが、この姿勢を続けると“不都合な真実”を隠しているのでは―との疑念を生じさせる。
 前川氏は、文書問題について「公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」と指摘した。獣医師の将来の人材需要などが示されないまま「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた」と主張。文書では2018(平成30)年4月開学を大前提とし、「官邸の最高レベルが言っていること」とされている。
 文書が「本物」だったとして、安倍首相の関与を示すものなのか、森友学園の問題でも注目された官僚たちの「忖度(そんたく)」なのか、その双方なのかは、必ずしも判然としない。ただ、いずれにせよ由々しき問題であることに変わりはない。
 国家戦略特区制度は、安倍政権が成長戦略の柱の一つとしてスタートさせた。既存の特区制度のような地域による「手挙げ方式」とは異なり、政府と地域がともに制度設計を行う。国主導の面が強いとされ、それが今回の問題の背景にあったのかもしれない。規制緩和とはいえ、疑いのない公平、公正さの確保が重要である。

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