社 説

 

深浦町ナイター「強烈な印象与え交流人口増を」

2018/3/17 土曜日

 

 世界自然遺産白神山地や県内一の水揚げ量を誇るマグロで知られる深浦町が、5月15日に仙台市の楽天生命パーク宮城(県営宮城球場)で行われるプロ野球・楽天イーグルス―ソフトバンクホークスの1軍公式戦で楽天に冠協賛、「白神山地とマグロの町・深浦町ナイター」を開催することが決まった。楽天球団と県内自治体との冠協賛は初。「深浦マグロステーキ丼」といった食、雄大な自然や多くの海水浴客を引き付ける長い海岸線を持つ深浦町。東北地方最大の都市で、しかも、約3万人を収容できる球場での町PRは絶大な効果が期待されるだけに、どんな反響があるか楽しみだ。
 15日に町役場内で会見した吉田満町長らによると、当日午後6時開始の試合に先駆け、同2時の開場から、球場内大型ビジョンでナイターのキャッチコピー「白神山地とマグロ」にちなんだ、ブナや青池、マグロ漁、夕日といった町を代表する名物を紹介する映像が流れる。このほか、試合中も攻守交代の合間などに映像が流れ、電光掲示板にも町に関する広告が数多く出る。球場正面には町の名物数千点を来場者に振る舞う町のPRブースも設置され、まさに“深浦尽くし”の一戦となるもようだ。
 今回のナイター開催に当たっては、白神山地が来年度に世界自然遺産登録25周年を迎えるという強みもある。深浦町のみならず本県や秋田県の近隣町村にまたがる雄大な自然の魅力をいま一度見直し、訴える機会ともしてもらいたい。
 町がこうした大々的なアピールに打って出る背景には、町の宿泊者数が減少傾向にあることがあるようだ。町観光課によると、2016年は8万2043人であったのに対し、17年は7万7747人と減少。大都市の仙台市周辺から新規観光客を掘り起こす目的があるという。
 人口減少への懸念もあろう。町人口ビジョンによると、10年時点では9691人だった町の人口は今年2月末現在では8421人、約40年後には2000~3000人程度という見通しとなった。このため「観光や移住・定住による交流人口の拡大」といった町総合戦略に掲げた基本目標に基づき、手を打っていかねばならない。
 そうした中での今回の大々的PRは観戦者にどのように映り、感じてもらえるのかは未知数だが、「どうしても行ってみたい深浦町」を訴えていかねばなるまい。ただし、“ライバル”は数多い。過疎化や少子高齢化の悩みを抱える全国の数多くの自治体が、交流人口や移住者の増加を目指し、あの手この手でPRに打って出る中、今回のナイターを「一の矢」とし、続く二の矢、三の矢を放ち、より多くの人に深く、町の魅力を認識してもらう必要がある。そのためには来場者に強烈な印象を植え付け、ナイターを成功させることを期待したい。

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春闘「賃上げしやすい環境整備を」

2018/3/16 金曜日

 

 2018年春闘の主要企業の集中回答日、各社は基本給を底上げするベースアップ(ベア)を5年連続で実施すると回答、前年を上回る上げ幅が相次いだ。「社会的要請を受け、経営者は積極的に対応した」(経団連の榊原定征会長)、「元気の出る内容」(連合の神津里季生会長)と、労使双方がその内容を評価した。基本的には中小や地方にもこの流れが波及することを期待したい。
 背景には堅調な企業業績もあるが、「3%以上の賃上げ」を労使交渉前に強く求めた安倍政権への配慮があったという。ただ、ベアと定期昇給を合わせた月収ベースの賃上げ率は2%前後が大勢だった。経団連の集計によると、3%を超えたのは、バブルの余韻が残っていた1994年(3・10%)が最後で、ハードル自体は高かった。経営側はもともとコスト増につながるベアに慎重だが、政権への配慮や人材確保の観点から、一段のベア拡大を受け入れた形であろう。
 特に自動車業界は異業種を巻き込んだ自動運転技術や電気自動車の開発競争、電機大手もIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)技術の開発競争にさらされ、将来の生き残りに危機感を強めている。これまで相場形成をけん引してきたトヨタ自動車の賃金水準が回答日の前日まで固まらなかったのも、こうした製造業を取り巻く産業構造の転換期にあることを強く意識したことが背景にあるという。
 脱デフレを目指す安倍政権が経営側に賃上げを求める「官製春闘」は5年目。大手の5年連続のベアも、景気浮揚効果はまだ限定的なようだ。少なくとも地方ではこれまでその実感に乏しかった。今後の中小の回答内容と賃上げの継続が脱デフレの鍵となるが、それ以上に、政府が賃上げできる環境を整えることが必要だろう。このままでは労働者の生活は向上せず、企業も人材確保と開発競争に疲弊するばかりではないか。
 18年春闘では、政府・与党が今国会での関連法成立を目指す「働き方改革」も焦点となった。
 長時間労働の是正をめぐっては、育児や介護を理由に1時間単位で有給休暇を取得可能とするなど、「休み方」を拡充する企業が多かった。不妊治療のための休職制度を設ける企業もあったと聞く。
 一方で、19年4月にも大企業を対象に施行される残業規制については、政府方針(年720時間の上限設定など)を先取りする形で求めた労組もあったが対応は分かれ、労使間の温度差も浮き彫りとなった。
 同法案のうち、裁量労働制の対象業務拡大は調査データの不備を受け削除された。経済界からは生産性向上の観点から期待される一方、長時間労働を助長するとの懸念は消えない。今後の動向を注意深く見守る必要がある。

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献血「若年層の協力が不可欠」

2018/3/15 木曜日

 

 必要だということは理解しているが、どうにかなっているから大丈夫だろう―。そんなふうに思っている人も多いのではないだろうか。献血のことだ。
 県内の献血者数は1991年度の10万1526人をピークに減少傾向へ転じ、2016年度は4万9059人と6年連続で過去最少を更新した。17年度(昨年12月時点)の献血者数は3万3202人で、16年度同期と比べ3262人減となっている。
 全国的にも献血者数はここ数年減少傾向が続き、特に若年層で顕著。07年に全国で約283万人だった10~30代の献血者数は16年、31%減の約195万人となった。右肩下がりの状況は本県も同様で、11年度と比較すると、16年度は10代が約800人減の3531人、20代が約2400人減の7450人、30代が約4000人減の9436人となった。50、60代は逆に増加している。
 献血可能人口に占める献血者数を示す献血率で16年度を見ると、本県は5・5%で、全国平均の5・6%とほぼ変わらない。年代別で見ると、10代は6・9%、20代は6・6%、30代は6・4%で、いずれも全国平均を上回った。
 過去5年間、10~30代の献血率は総じて全国平均を上回っている。つまりは少子高齢化、人口減少が全国よりも速く進んでいるため、若年層の献血者数が減っているということなのではないか。県内の若年層は比較的献血に協力的だと言え、県赤十字血液センターなどが中心となった啓発活動といった取り組みが成果となって表れてきたとも考えられよう。
 ただ、少子高齢化と人口減少が進むにつれ、献血者数の確保は今よりも深刻な課題になっていくだろう。医療技術の進歩などにより輸血の需要量は減っていくのかもしれないが、血液製剤には有効期間もあり、献血の必要性が皆無となることは想定できない。
 そこで鍵を握るのは、将来にわたって協力を見込める若年層だろう。同センターによると、県内では17年度、高校生の献血者数が昨年12月末までに1716人となり、既に16年度の実績を上回った。同センターは17年度、県高校野球連盟を通じて野球部員に献血を要請し、聖愛高校や青森東高校などが協力に応じたことが要因の一つとみられる。
 昨年9月に献血した聖愛高校野球部の一人は「自分の血で助かる人がいるならと自主的に参加した。また協力したい」と語った。こうした思いが、さらに広がってくれればと切に願う。
 若年層の意識を高めるのは、親世代の務めでもあるだろう。命の大切さ、献血の重要性といった、当たり前のことを子どもたちに伝えることが、もっとあってもいいのではないかと思う。献血に対する関心と理解を、地域社会全体で深めていきたい。

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〝18歳成人〟法案「消費者被害防止の議論尽くせ」

2018/3/14 水曜日

 

 政府は13日、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を閣議決定した。今国会で成立すれば、2022年4月1日に施行される。若者の社会参加促進を期待する声がある一方、消費者被害の増加を懸念する声もあり、その防止策を含めて議論を尽くしてほしい。
 成人年齢引き下げは、選挙権年齢が18歳以上とされたことに合わせた措置。法制審議会(法相の諮問機関)は08年に検討を始め、民法成年年齢部会での議論を経て、09年に「引き下げが適当」と答申した。
 「18歳成人」が世界的な潮流となっていることに加え、少子高齢化がますます加速するわが国にあっては、若者の社会参加が強く求められており、成人年齢引き下げが議論されることはおかしなことではない。
 国によっては、成人年齢引き下げによって若者が活躍の場を広げ、幅広い分野の担い手となっているケースも見られる。民法成年年齢部会の議論などでも、成人年齢引き下げが、「若者が将来の国づくりの中心である」という国の決意を示すことにつながり、若者に大人としての自覚を促すことができる―といった意見が出された。
 一方で、成人年齢引き下げにより、18、19歳であっても親らの同意なしでローンなどの契約締結が可能となることで、消費者被害の増加を懸念する声も目立った。実際、国民生活センターの調査によると、契約に関する20歳の相談件数は18、19歳の2倍以上に上るという。
 民法は未成年者が親の同意なしで結んだ契約は取り消すことができる―と規定している。しかし、20歳になるとその権利がなくなり、悪質な業者に狙われる場合が増えるからのようだ。
 負の面だけを強調するつもりはないが、経済的な自立は社会人として活動する上で最も大事な基盤の一つだ。その基盤を壊すような消費者被害が多発しては、若者の社会参加は思うように進むはずがなかろう。
 成人年齢引き下げに伴い、政府は消費者契約法を改正し、不安をあおって商品を売り付ける「不安商法」などによる契約は、成人であっても取り消すことができる規定を新設する考えという。ただ、これで対応は十分とは言えまい。
 社会的経験の乏しい若者を守り、合理的に判断できる力を付けてもらうためには、消費者保護や金融経済に関する教育システムを充実させたり、悪徳商法の被害に遭った際の相談体制を拡充したりすることが必要なのではないか。
 社会はできるだけ幅広い世代によって支えられるべきだ。そのためには、若者が精神的にも経済的にも早くから自立できる環境の整備が必要不可欠。成人年齢引き下げによって彼らの将来が閉ざされることがあってはならない。

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震災の遺構「保存、活用に一層の力を」

2018/3/13 火曜日

 

 東日本大震災から7年の月日がたった。今年もまた、忘れられない日、忘れてはいけない日・3月11日を迎え、死者への鎮魂と、後世へこの惨禍を伝えていこうとする気持ちを込めた催しが各地で行われた。被災県の一つである本県でも大きな被害を受けた八戸市などで追悼の催しが行われ、7年前とその後の生活にそれぞれ思いを寄せた。今でも震災当日の記憶は残っているが、一方で年々、その記憶のあちこちがあいまいに、そして薄れていくことにもどかしさを感じている。人知を超えた未曽有の大災害に立ち向かう時、私たちにとって力となるのは、平素からの備えと過去からの教訓だろう。震災の記憶の風化は、その力をそぐことにつながる。
 あの惨禍を記憶にとどめ、後世に伝える役割を持つものの一つに震災の「遺構」がある。震災と東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島各県の計42市町村のうち、こうした「遺構」が半数超の23市町村に少なくとも41件現存しているという。
 一口に遺構といっても復興交付金の支給対象となる「震災遺構」、対象外でも積極的に保存している物、「壊す予算がない」といった消極的な理由で残っている物など、内容は多岐にわたる。
 種別では学校の8件が最多で、防潮堤の一部や庁舎など公共施設が大半を占めるが、ホテル(岩手県宮古市)や駅の一部(宮城県東松島市)といった民間施設を公費で保存するケースもある。
 震災の記憶を伝える品々を追悼施設に展示する予定の自治体や建物の残存状況などの調査を始めた自治体、「遺構」として存続させるかどうか、議論の途上にある自治体、そして震災の恐ろしさを語り継ぐため、民間人が維持している「遺構」。経緯はさまざまだが「町民の心のよりどころに」「(惨事を伝える建物や風景がほとんどなくなった今、)せめて自分の代は」と使命感や強い思いを持って維持しているところが多い。
 一方で「遺構」の保存に当たっては課題も多い。手を加えない方が脅威は伝わりやすい半面、安全確保の観点から見た場合は、相応の配慮や対策が求められる。せっかく整備したとしても来訪者が見込めるかは分からず、将来の維持管理費をどのように賄うか、しっかりした担保があるわけでもなく、不安に思う自治体や所有者は多い。
 課題に対応するため、自治体間で情報交換する動きも出始めている。こうした動きを広めるとともに、公的支援の拡充なども検討されるべきだ。
 11日の本紙に津波が押し寄せてきた当時のまま保存されている宮城県内の学校の写真が掲載された。あの震災が人々に何をもたらしたのか、たとえ100万回言葉を尽くしても伝わらないものが、そこにはあった。

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