社 説

 

農業の労働力不足「担い手と経営体の多様化を」

2018/3/31 土曜日

 

 農業の労働力不足が深刻化することを踏まえ、県は従来以上に人手確保に重点を置く方針を示している。農業は本県の基幹産業であり、対策は急務。担い手と経営体の多様化を一層図りながら、現状を打開したい。
 産出額や販売額を見る限り、本県農業は好調だ。産出額は2016年産から2年連続で3000億円を突破。リンゴの年間販売額は14年産から3年連続で1000億円を超えた。喜ばしいことだが、これらを支える生産現場が厳しくなる一方とは、何とも皮肉な状況である。
 本県農業の担い手は急速に減少している。15年農林業センサスによると、県内の農業経営体は3万5914で、前回調査(10年)と比べて8753(19・6%)減。農業就業人口は6万4746人で、同1万5737人(19・6%)減。驚くべきスピードである。
 担い手の高齢化も指摘されて久しく、農業就業人口(15年時点)の約55%を65歳以上が占める。現在担い手の中心である「団塊の世代」も、数年後には後期高齢者の75歳。高齢を理由に離農する人たちも増えるはずで、就業人口の減少はますます加速するだろう。
 このままでは生産体制が崩壊しかねない。現場のみならず、行政も危機感を強く持っている。県はこれまで、機械導入による省力化や高生産技術の開発に努めてきたが、18年度は人手確保そのものに重点を置く。
 県民全体で農業を支える仕組みづくりを目指したい考えというが、それはいかにして可能か。求められることの一つは、担い手と経営体のさらなる多様化だろう。具体的には農業を本業とする就農者の確保を基本としつつ、「援農者」(補助労働者)の確保を本格化させるといったことが重要だ。
 県は、弘前市の相馬村農協をモデルケースとして援農者の確保に努めたり、援農者と生産者を結び付ける事業を展開したりしてきた。新年度は、農作業未経験者に実践講習を受けてもらい、即戦力になってもらう取り組みを行うほか、短時間勤務を希望する大学生や生協組合員らを対象に、労働力を確保するモデル構築を目指すという。
 担い手不足を踏まえ、国などは農地の集約・大規模化を推進し、コメなどを中心に生産者もそれに応えてきた。しかし、リンゴなどは手作業が多く、大規模化による効率化は難しい。実際、労働力不足は果樹分野でとりわけ深刻な状況にあり、援農者は今後ますます重要な役割を果たすことになるだろう。
 多様な担い手を受け入れる側も変化する必要があろう。経営形態は家族経営だけでなく、株式会社や農事組合といった法人が多数設立されるようになった。その形は作目や担い手の働き方などによってより多様であってよいのではないか。

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2025年問題「超高齢化時代へ備え急げ」

2018/3/30 金曜日

 

 団塊の世代が75歳を迎え、医療や介護など社会保障費の急増が懸念される2025年まであと7年。4人に1人が高齢者となる超高齢化時代への対応は遠い将来の問題ではなく、目前に迫った課題となっている。県は18年度の当初予算で、この「2025年問題」を見据えた地域づくりに本腰を入れる姿勢を示した。
 25年には本県の65歳以上の高齢者は全人口の35・8%、75歳以上は20・4%に達する見込み。人口減少には歯止めがかからず、さまざまな分野で担い手不足が懸念される中、高齢者はますます増えていく。社会の構造を根本から考え直す時期にきていると言えるだろう。
 そこで県が掲げるのが「青森県型地域共生社会」の実現だ。超高齢化時代にあっても、あらゆる世代が本県の住み慣れた地域で安心して暮らし、老後を迎えられる社会の実現を目指すとしている。
 18年度当初予算では、保健・医療・福祉体制の充実にとどまらず、買い物や交通など生活に関わる機能の維持確保、サービスを提供する担い手の育成も視野に、合計18事業を準備。所管部は健康福祉部だけでなく企画政策環境生活農林水産商工労働の5部にまたがり県民局も含めて全庁的に取り組むこととした。予算額として合計3億3857万4000円を計上18事業のうち10が新規事業で18年度予算の柱の一つとなっている。
 新規事業の一つが、暮らしに必要なサービスや担い手を県内6地域県民局単位で検証し、実証するモデル事業だ。地域によってニーズも課題も異なるという現実を踏まえ、各県民局ごとにモデル地域候補を選定、既存のサービスと連携したり、必要な担い手の育成を検討したりしながら、必要な生活サービスの実証を行う。実際にサービスを提供しながら、採算性はあるのか、長く続けていけるのかなど課題を検証。各地域に合ったモデルを構築し、横展開することで、各市町村の主体的な取り組みを促す構えだ。
 三村申吾知事は18年度予算案を発表する記者会見で「地域の存続に関わる危機が目前に迫っている。今から細やかに対応を段取りしておかないと持たない」と強い危機感を示した。確かに25年になってから考えるのでは遅すぎる。人口が集中し、さまざまな移動手段やサービスのある都市部と違って、地方での暮らしは必ずしも高齢者に便利とは言えない。
 18年度は県民局単位で市町村職員や住民、有識者も加えて必要なサービスなどを検討し、提供可能なものから順次実証に入るという。実証した成果の積み重ねが地域に合ったモデルの構築につながるとみられ、今後の推移に注目したい。
 同事業は県が主導でモデルを構築、市町村の主体的な取り組みを促すとされている。県事業にしばしば見られる手法だが、本県の重要課題への対応としてそれで十分か。併せて検討すべきと思う。

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文書改ざん「問題の幕引きは許されない」

2018/3/29 木曜日

 

 財務省決裁文書の改ざん問題で、27日に行われた佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問は消化不良の一言に尽きた。佐川氏は「誰の指示で」「誰が行ったのか」という核心について一切の証言を拒否した。政府・与党は「政治が関与した疑いは晴れた」としているが、国民の不信は解消されていない。問題の幕引きは到底許されず、徹底した真相究明が必要だ。
 佐川氏は核心部分への言及は避けながら、政治の関与については「まったくない」と明言。さらには理財局に関する質問にはよどみなく答え、その上で当時の国会答弁に丁寧さを欠いたと謝罪するなど、周到に準備した答弁が印象的だった。
 これに対し、議員側の質問の在り方には違和感を覚えた。与党側は持ち時間の大半を真相解明ではなく、政治の関与の有無を確認するような興ざめの質問を繰り返した。野党側も各党5分前後の短い時間の中で同じような質問が続いた。野党が協力し合い、持ち時間を確保する工夫が欲しかった。
 一夜明けた28日、野党6党は安倍晋三首相夫人の昭恵氏や森友学園への国有地売却交渉時に理財局長だった迫田英典元国税庁長官らの証人喚問と、衆院予算委員会での集中審議を求めていくことを申し合わせた。
 しかし、佐川氏喚問の実現で正常化した国会は、同日夜の参院本会議で2018年度予算案を採決し、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。ここでも野党側の戦術に疑問符が付く。
 改ざん発覚後、野党側は佐川氏の喚問を求めるだけでなく、麻生太郎副総理兼財務相の辞任、内閣総辞職を求めて参院での審議を拒否し、政府・与党は劣勢に立たされた。佐川氏の喚問が実現したのも事態を打開したい与党側が折れた結果で、支持率が急落した安倍内閣は窮地に陥っていた。
 ところが26日、自民、民進両党の参院国対委員長が28日に参院予算委員会で予算案の締めくくり質疑と採決を行うことで合意する。参院の存在意義が問われる自然成立を避けたい思惑が一致したものだが、証人喚問の結果にかかわらず、予算案が28日中に可決、成立する見通しが立ってしまった。
 ここは徹底抗戦すべきだったのではないか。予算が成立すれば、与党は改ざん問題の追及の場である予算委員会を開こうとしないだろう。いくら野党が昭恵氏や迫田氏の証人喚問を要求しても、与党が応じるはずもなく、論戦の場は所管案件の質疑に限られる委員会に移ってしまう。
 国民の不信感を高める一方で、追及の場をみすみす逃すようでは政治全体に対する不信感が増幅しかねない。野党は幕引きを絶対に許さず、機会を捉えて徹底的に追及すべきである。

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メバル膳5万食「新鮮さと驚きの目線で展開を」

2018/3/28 水曜日

 

 中泊町の新・ご当地グルメ「中泊メバルの刺身と煮付け膳(略称・中泊メバル膳)」の提供食数が22日で5万食を突破した。2015年7月3日のデビューから989日目の実績であり、人気が定着し広く知れ渡ったことの証しでもあろう。これまでの経済波及効果は約2億8000万円に上るといい、今後も「メバル膳」と併せて町の知名度アップ、地域活性化を図ってほしい。
 メバル膳は、県内漁獲量が約6割(10~13年の平均)でトップを誇る中泊町の「ウスメバル」を使い、奥津軽の魅力発信と地域活性化につなげようと、「深浦マグロステーキ丼(マグステ丼)」など新・ご当地グルメのプロデュースを手掛けてきたヒロ中田さんの指導の下、誕生した。メバルの刺し身姿盛りと熱々煮付け、イカの刺し身、提供店舗こだわりの海鮮汁、刻みのりが載ったつがるロマンのご飯という内容で、町内5店舗で提供している。
 中泊町で水揚げされるメバルは、津軽海峡の速い潮の流れで育ち、適度な運動量と豊富な餌を食べていることもあって肉質が良く、「津軽海峡メバル」の名で全国出荷されている。東京の築地市場では高級魚として扱われているほどだ。そうしたメバルを使ったメバル膳はまたたく間に人気のグルメとなり、15年10月に1万食、16年6月に2万食、同年9月に3万食、17年7月に4万食をそれぞれ達成、順調に歩みを重ねてきた。電子レンジにかけるだけで簡単に「メバルの煮付け」が食べられる、「中泊メバルでチン!」という関連商品も誕生した。
 メバル膳は、豊富な農林水産物がありながら、地場食材を通年で提供できる店舗がなかった中泊町で、「食」で人を呼び込み、観光のまちづくりを図ろうと関係者が苦心を重ねて誕生したグルメだ。現在の好調が継続することは関係者誰もが願うところだ。そのためには、さらなる広がりと常に新鮮さと驚きの目線で見られるような仕掛けが必要であろう。
 現在、冬場やしけでメバルを提供できない場合に備え、安定供給を目指し急速冷凍機などの導入による「中泊メバ活プロジェクト事業」を展開。さらにはメバルを使った各種新商品による販路拡大も目指していくという。実際、「マグステ丼」の提供地である深浦町では、地元産天然本マグロ入りのカレーを販売しており、メバルに関しても今後、どのような商品展開がなされるのか期待されるところだ。
 26日でデビュー3年目を迎えた北海道新幹線との関係も重視したい。新幹線駅「奥津軽いまべつ駅」(今別町)から2次交通を活用してメバル膳を食べに来る仕掛けと相乗効果が必要だ。乗客数がいまひとつ伸び悩む北海道新幹線だけに、メバル膳を起死回生策の一つとして、もっと売り込んでみてはどうか。

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ヘルプマーク「普及に地道な努力を」

2018/3/27 火曜日

 

 義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病の人、または妊娠初期の人といった、外見からは判断がつかなくても援助や配慮を必要としている人が、周囲に配慮を必要としていることを知らせることができる「ヘルプマーク」。全国的に導入する自治体などが増えているが、本県では導入から1年余りが経過した。これからも利用と周知の輪が広がるよう期待しているが、県が実施したウェブアンケートでは、マーク・カードについて「知っている」と回答した人が4割弱にとどまっているという。
 ヘルプマークは赤いゴム製のストラップ。必要な援助を書き込み、かばんなどに取り付ける。2012年に東京都が初めて作り、本県は16年秋から全国5番目に導入。緊急連絡先やかかりつけ医などを記入する「ヘルプカード」も併せて配布した。
 県内での配布は、市町村の担当窓口などを通じて行われ、その数は昨年12月末時点で、ヘルプマーク2108個、ヘルプカード1597枚に上るという。
 配布枚数はともかく、周知の方は、思うほど広がっていないのが現状だ。
 ヘルプマークを「知っている」と回答したのは37%、「見たことはあるが意味は知らない」は7・3%、「知らない」は55・7%。知らないと回答した人の95・3%がヘルプカードも知らなかった。また90%以上がヘルプマーク、ヘルプカードを携帯した人を見たことがないと回答している。
 ヘルプマーク・カードそのものの認知度を高めることが、最も重要なのは間違いない。一方で「見たことはあるが意味は知らない」という回答も多く、自由意見では「ヘルプマークを見掛けても、どう支援してよいか分からない」との声も聞かれる。最初の周知から内容の理解、そして実際に支援を行う環境づくりまでを考えれば、普及の道は、まだ緒に就いたばかりと言えるだろう。
 周知の拡大について、方法はさまざまあるだろうが、利用者そのものを増やすのも効果が高い取り組みになるのではないか。支援を必要とする人といえば、どうしても体が不自由な人といった先入観を持ちがちだが、冒頭でも紹介したように、難病の人や妊娠初期段階の人ら、想定の範囲は大変広いものがある。こうした人にヘルプマークやカードを身に着けてもらえれば、県民の間で自然と目に触れる機会が増え、おのずと内容の理解なども深まっていくだろう。
 県はポスターやチラシなどで周知をしていく方針だが、こうした頒布物に支援の具体的な事例なども掲載すれば、支援の意志はあるが、いま一歩踏み出せないという人の背中を押してあげることができるかもしれない。マーク・カードを見たら「困ったことはないですか」と自然に言えるような県民風土を目指したい。

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