社 説

 

県立高校再編計画「実施の中で地域の声を生かせ」

2017/7/21 金曜日

 

 県教育委員会が、県立高校再編の第1期実施計画(2018~22年)をまとめた。津軽地域の学校配置は、4月に公表された計画案通りとなった。計画案公表後、各地域で懇談会が開催され、パブリックコメントなども実施されたが、特に統合により閉校が予定される地域住民やPTAからは反発の声が相次ぎ、地元自治体や経済団体などからも計画の見直しを求める意見書や要望書が提出された。こうした反発の声を、いわば押し切る形で計画が策定されたことについて県教委の判断が適切だったか疑問が残る。
 計画で津軽地域は西北地域の板柳、鶴田、金木、五所川原工業の4高校が統合、中南地域では黒石高校と黒石商業高校が統合、弘前実業高校の農業経営科は募集停止し、柏木農業高校に集約するなどとした。少子化が続く中、子どもの教育環境を整えるために、ある程度の規模を持つ高校をつくるという県教委の狙いは理解できる面があり、現実味のある計画と言えなくもない。
 ただ、現在の高校は教育施設という側面だけで語られるものではなくなっている。地方の衰退、農林漁村の過疎化といった現実を抱える中で、県立高校は地域の存続、自立にとってなくてはならない施設として重みを増しており、そうした観点で見れば、県内都市部に高校を集約する志向が強い今回の計画は、町村地域の未来についての展望が欠けているのではないだろうか。地元の高校で学ぶことは、その後、地元で生計を立て、生活基盤を得るという人生サイクルの形の入り口に当たるものだろう。そうした入り口がなくなれば、地域に活力をもたらす若者が、県内都市圏、ひいては県外へと流出することにつながるのではないか。県教委はもっと大きな視点に立って計画を立案するべきではなかったかと思わずにいられない。
 閉校が予定される地域では、今後、通学費用の負担増など現実的な課題にも直面する。遠距離通学などで子どもたちの負担感も増すかもしれない。こうした課題にどのように対応するかは十分な議論が必要だろう。
 今回、町村部の中でも特に反対の声が強かった五戸町は、五戸高校の町立化などの検討を打ち出し、県教委もこれを受けた内容を計画に盛り込んだ。財源確保や生徒数減少への対応など実現には困難が予想されるが、地域の若者を地域で育てるという発想に基づけば、十分検討に値するものだろう。今後の進展を注視したい。
 今回の計画で県教委と統合対象地域の間には溝ができたように感じる。県立高校は、地域の支えがあってこそ、初めて良質な教育環境を得ることができる。県教委は今回、さまざまに出された地域の声を、計画実施の過程で十分取り入れるよう、最大限の努力を望みたい。

∆ページの先頭へ

日野原重明さん死去「さらに重み増す実践と言葉」

2017/7/20 木曜日

 

 生活習慣病の予防や終末期医療の充実などに尽力した、聖路加国際病院名誉院長で文化勲章受章者の日野原重明さんが、105歳で死去した。
 日野原さんは高齢者がいつまでも活躍できる社会づくりも提唱。自身が会長を務めた「新老人の会」は、シニア世代の自立した新しい生き方を示し、高齢者がこれまでの人生で培った知恵や経験を社会に還元する生き方の普及に努めていた。100歳を超えても現役医師として活躍し、講演や執筆を重ねた元気な姿は、高齢化社会におけるシニアの理想的な生き方の体現と言っていい。テレビなども通じておなじみの存在だった。
 病気の早期発見・治療の観点から、国内の民間病院では初めて人間ドックを導入し、独立した建物で終末期患者に緩和ケアを提供する日本初の独立型ホスピスを設立するなど、先進的な医療の導入を積極的に進めた。予防医療の重要性にもいち早く着目し、かつての「成人病」に代わる「生活習慣病」の概念を提唱したのも日野原さんだ。これらを列挙すると、改めてその先進性を感じずにはいられない。個々の患者に合わせて人格を十分尊重しながら、特定の部位に限定しない総合的な診断や治療を行う「全人医療」を目指していたという。
 これらに通底するのは、命の尊重と、健康でより良い納得できる生き方の追求であろう。患者主体の医療を訴えたのは、これらをバックボーンとし、生と真正面から向き合ってきた一医師としての良心の発露のように映る。近年訴えていた平和の大切さも、その一直線上にあったに違いない。
 日野原さんは全国の小学校で行っていた「いのちの授業」で、児童に命の大切さを訴え、「将来は人のために時間を使えるようになること」と説いた。人質として巻き込まれた日航機「よど号」ハイジャック事件(1970年)以降、「残りの人生を人のため、自分を捨てて生きた」という姿勢と重なる。
 昨年は「あと10年生きて、いろんなことがしたい」と話していたという。その旺盛な好奇心にも驚かされる。この気持ちが、健康長寿の一つの源泉だったのかもしれない。6年制の医学部と異なり、大学を卒業した人が学べるメディカルスクール(4年制)の構想も持っていた。
 進取の気性に富みながら、最期は延命治療を望まなかったという。自身の医療哲学や死生観とは相いれなかったのだろう。「死とは生き方の最後の挑戦」という日野原さんの言葉は深遠だ。
 日野原さんが残した数々の足跡は、同時に、医療関係者に限らず、今後いかに生きていくかというわれわれ一般市民に課せられた宿題でもあろう。日本の高齢化率が今後も上昇すると予測される中、日野原さんの実践と言葉は、ますます重みを増すに違いない。

∆ページの先頭へ

核のごみ「国民的議論が必要だ」

2017/7/19 水曜日

 

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の“適性”を示す「科学的特性マップ」について、世耕弘成経済産業相が18日、月内にも公表する考えを明らかにした。再処理工場を抱える本県や原発の立地県は別として、最終処分問題に対する関心は高くない。マップの公表によって国民的な議論が広がることを期待したい。
 原発から出た使用済み燃料を再処理した後に発生する廃液と、溶かしたガラスを混ぜて冷やしたものがガラス固化体、いわゆる核のごみとなる。再処理を委託した海外から返還されたものは六ケ所村に一時貯蔵されている。
 処分方法をめぐっては「海底」と「南極の氷床」は国際条約で禁止され、「宇宙」は膨大な費用と技術への信頼性から除外された。地上での長期管理は何世代にもわたって人間が関与できるかという根本的な課題から困難とされ、地下深くに埋設する地層処分が最も現実的な方法として選ばれた。
 政府は2000年に成立した最終処分法で処分場の調査方法を定め、経産省の認可法人・原子力発電環境整備機構が調査を受け入れる自治体の公募を始めた。しかし手を挙げた自治体はあったものの調査開始前に頓挫し、1件も文献調査に入れない状態が続いている。
 遅きに失した感は否めないが、政府は事態打開に向け15年に新たな基本方針を閣議決定し、国が前面に立って取り組むと同時に、自治体や国民理解を促すためマップの作成を打ち出した。
 資源エネルギー庁によると、マップ作成に当たっては▽火山や活断層、開発の可能性がある鉱物資源から遠い▽海岸からの陸上輸送が容易―などの技術的な観点から、全国地図を色分けして“適性”を表す方針だ。
 昨年からはマップ提示に向けた自治体説明会やシンポジウムを全国で開き、理解を得るための取り組みを進めている。またマップ提示後も全国説明会などを通じ、環境づくりに努めるという。
 失った安全性への信頼とは別に、温室ガス削減やエネルギー確保という異なる視点からも、原子力の存否は議論すべきだ。それとは別に、現役世代には享受した分の、核のごみの処分場を決める責任があるはずだ。もっと国民の関心が高まり、議論が深まることを期待したい。
 また、政府側が丁寧な説明に努めているのか、引き続きその姿勢を注視していかなくてはなるまい。
 一方、本県を最終処分地にしないという政府との確約について、エネ庁側は今年5月に青森市で開いた説明会で「順守する立場に変わりはない」と強調した。ただ、本県との確約など“社会科学的観点”についてはマップ提示後に議論するとした。こちらも注意深く見守っていく必要がある。
核のごみ「国民的議論が必要だ」

∆ページの先頭へ

田んぼアート25年「発想力生かし村内経済活性化を」

2017/7/15 土曜日

 

 田舎館村の名を国内に知らせるだけでなく、国内外の賞も受けている田んぼアートは、1993年に「稲文字」としてスタートしてから、今年でちょうど25回目となる。役場隣にあるメインの第1会場では今年の題材「ヤマタノオロチとスサノオノミコト」がくっきりと浮かび上がり、夏の行楽シーズンを前に見頃を迎えた。
 もともと国の史跡に指定される弥生時代の水田跡「垂柳遺跡」があり、わが国の稲作文化を考える上で重要な地域であることから、村が「北方稲作繁栄の地」を掲げて始めたのが田んぼアートだ。当初は単色の岩木山と「稲文化のむら いなかだて」の文字を配した単純な図柄だったが、農作物というイメージしかない稲で田んぼに絵や文字を記そうという発想の斬新さは大きな注目を浴びた。
 2001年まで同じ図柄を続けてきたが、転機になったのは10年目を記念した「モナリザ」。有名なレオナルド・ダビンチの名画をモチーフにしたことで「田んぼアート」と呼ばれるようになった。以降は色の異なる稲の数を増やしたり、図柄も展望所からの見え方を考慮して遠近法を用いたりと、年々完成度を高めてきた。今年の第1会場も7色13種の稲を使って、繊細で躍動感のある作品に仕上げられている。
 いまや田んぼアートは全国各地で制作されるようになった。これまで「名所や名物なんて何もない」と思っていた地域にとって、どこにでもある田んぼに絵を描く取り組みは、目からうろこが落ちるようなものだっただろう。田舎館村もかつては、垂柳遺跡はあると言っても、弘前城を有する弘前市などの周辺市町村と比較し、観光名所に乏しかった。
 主産業の農業を観光に活用しようとしても、観光果樹園や体験型ファームステイなどが一般的。そういう中で田んぼを鑑賞してもらおうという画期的な発想を形にした。知名度は年々上昇し、人口8000人ほどの村は、田んぼアートだけで村民の4倍以上の観光客を受け入れるまでになった。
 観光の活性化には現有資源の磨き上げや新たに作りだす手法などがあるが、田舎館村は弥生時代から稲作文化を受け継いできた誇りを資源と捉えた。その結果、米どころとして認知されるだけでなく、村内外から多くの人が参加する田植え体験ツアーを通じて農業に関心を持たせる機会になるほか、植物を使った巨大な芸術は国際観光振興にも有効だろう。
 着実に進化する田んぼアート。しかし、民間企業による関連商品の開発や田んぼアート商店街設置などはあるが、インバウンド対策などを考えると、まだまだ不十分。四半世紀を機に経済活性化に向けた新たな施策を打ち出したい。田んぼアートを成功させた村民たちには、豊かな発想力と行動力があるはずだ。

∆ページの先頭へ

夏の高校野球開幕「球児の全力プレーに期待」

2017/7/14 金曜日

 

 第99回全国高校野球選手権青森大会が13日、開幕した。開会式で五所川原の小田桐圭吾主将は「私たちの勝利への執念は奇跡を起こすことができる。甲子園出場を目指して正々堂々、熱戦を繰り広げる」と選手宣誓。26日の決勝までに、数多くの奇跡やドラマがきっと生まれることだろう。
 今大会には連合2チームを含む63チームが出場。優勝争いの中心は、昨大会優勝の光星、春季県大会を制した青森山田、準優勝の聖愛、強豪の八工大一の私立4強となろう。昨秋の県大会で3位となった弘前東の躍進にも期待したい。
 県内では長い間、私立4強の強さが際立っているが、一昨年の大会では公立の三沢商が下馬評を覆して優勝を果たした。私立4強に対抗心を燃やす公立も多く、白熱した戦いが繰り広げられそうだ。
 サッカーやバスケットボール、ラグビーなどの人気も県内では高まっているが、球技の中ではやはり野球はまだまだ特別な存在のようだ。そのことを再認識させられたのが、6月28日に行われたプロ野球1軍戦だ。
 弘前市のはるか夢球場には1万3000人を超えるファンが訪れ、想像をはるかに上回る盛り上がりを見せた。29年ぶりの1軍戦だったということを差し引いても、市民、県民の野球に対する情熱が高いことをうかがわせた。
 そのはるか夢球場で、今大会は準々決勝以降が行われる。おそらく大勢の人が訪れることだろう。願わくば、来年以降も同球場で決勝が行われ、県内高校球児の「聖地」となってもらいたい。
 一方で高校野球を取り巻く環境は厳しさを増していると言えよう。人口減少、少子化の進行に伴い、野球部員も減少し、各大会で連合チームでの出場が増えてきている。今大会では、鯵ケ沢と木造深浦校舎、金木の3高校が連合で出場する。3校連合は大会初だ。
 さまざまなハンディキャップがあっても、大会出場に向かって努力するのは、仲間や支えてくれた保護者、母校への思いがあるからなのだろう。3年生にとっては「最後の夏」でもある。金木の宮越詞也主将は「最後の夏の1勝は格別」、木村千一郎監督は「最後の大会の勝利は重みが違う」と口をそろえる。
 3校とも、夏の勝利からは遠ざかっているだけに思い入れは強い。連合チームで勝利すれば、それは1勝以上の価値になることだろう。勝利を目指して最後まで諦めず、悔いのないよう全力でプレーしてもらいたい。
 3校以外もそれぞれの目標を持って大会に臨む。甲子園出場、そして日本一を目指すチームがあれば、まずはベスト4、初戦必勝を掲げるチームもある。それぞれの夢に向かって、仲間と力を合わせて戦い抜いてほしいと願う。

∆ページの先頭へ

Page: 1 ... 107 108 109 110 111 112 113 114 115 ... 138

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード