社 説

 

人口動態統計「全国最悪レベルから脱却を」

2018/6/5 火曜日

 

 厚生労働省が1日公表した2017年の人口動態統計(概数)で、本県の出生数が過去最少となったことが分かった。出生数8035人に対し、死亡数は1万7575人。死亡数が出生数を上回る自然減が19年連続で続いており、減少幅の9540人は過去最大となった。全国でも出生数は過去最少、2年連続で100万人を割り込んでおり、人口の減少傾向に歯止めがかからない厳しい現状だ。
 少子高齢化の時代、自然減は避けられないとはいえ、子どもを産み育てやすい環境づくりや平均寿命延伸など、各種事業に真剣に取り組むことが必要だろう。
 特に出生数の増加は将来の担い手確保につながる。本県の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの数)は1・43。全国と同率だが、人口維持に必要とされる「2・07」はおろか、安倍政権が掲げる「1・8」(25年度末まで)にも届かない。短期間で出生数を増やすことは難しいだけに、早くから対策を講じ、継続して取り組む姿勢が求められる。
 県は今年度新たに結婚支援に着手するほか、満足度の高い保育を提供する取り組み、結婚、子育ての希望がかなう「働き方改革」に取り組む企業を認証するなど、各種施策を展開する構え。未就学児対象の医療費助成など、経済的負担の軽減を考慮した事業も設定されている。
 雇用や労働面での改善対策、社会全体の理解や気運醸成を含め、人口減少時代に合った新たな働き方や暮らし方、社会の在り方を模索していくべきだろう。
 乳児や新生児、周産期の死亡率は5年単位で見ると改善傾向にあり、県立中央病院総合周産期母子医療センターを中心とした取り組みが成果を挙げていると言える。この傾向をぜひ維持してほしい。
 一方、死亡数に着目し、健康で長生きする県民を増やすための〝短命県返上〟の取り組みは、近年の重点的な施策展開が少しずつ浸透し、県民の意識も変わってきたと言える。ただ今回の人口動態統計では、がんと糖尿病の死亡率が全国ワースト2位となるなど、依然、本県の重要課題であることが浮かび上がった。
 がんの死亡率は年々上昇しており17年は過去最悪。がんに心疾患脳血管疾患肺炎を加えた4死因で全体の6割を占めるが、がんと糖尿病の死亡率は全国ワースト2位。脳血管疾患が同4位、肺炎が同8位、心疾患が同13位となるなど、いずれの死亡率も全国より高い傾向にある。自殺も県が対策に力を入れてきた分野で、今回は自殺者数が減り、ピークだった03年以降最少となったが、死亡率でみると全国ワースト3位とまだ高い。
 今年度もがん総合対策、包括的自殺対策、糖尿病対策として新たに県若手職員で構成される「高血糖ストッパーズ」によるキャンペーンなどの事業が予定されている。実効性の高い取り組みで、全国最悪レベルからの脱却を図ってほしい。

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農業者の相談窓口「就農者を呼び込む重要な要素」

2018/6/2 土曜日

 

 農業者の相談窓口を一元化した「県農業経営相談所」が5月30日に開設された。相談に個別に対応していた専門機関や専門家を集約し、農業者をより適切に、迅速に支援することを目指したものだ。農業経営が多様化、複雑化する今、大いに機能することを期待したい。
 相談所は、青森市のあおもり農林業支援センター内に事務局を置き、経営や農業法人の設立など幅広い相談に対応する。県の6地域県民局で受けた相談を基に経営を診断して戦略を策定。税理士や農業経営コンサルタントから成る支援チームが農業者に〝伴走〟して課題解決を目指すことが最大の特徴という。
 農業者は品質の高い野菜や果物を作っていればよい―という時代はとっくに終わっている。もちろん、農産物の品質は経営を安定させる上で不可欠な条件であるが、現在はそれらに付加価値を付け、販路を開拓することなどが求められる。さらに加工品を開発したり、レストランやカフェも経営して自ら料理を提供したりする農業者も珍しくなくなった。
 米の生産調整(減反)が廃止される時代だ。農業の分野には今後ますます競争原理が導入されていくはずである。農業経営について誰かが正解を示してくれることはなく、農業者各人が自ら切り開いていかなければならない。そこでより重要になってくることの一つが相談体制なのではないか。
 相談所では、法人化が見込まれる農業者を「重点指導農業者」として支援する方針のようだ。地域の中核となる農業者を確保することは重要なことであり、相談所の方針は納得できる。ただ、本県の農業を産業として持続させるためには、若くて意欲のある農業者の支援にも併せて力を注いでほしい。
 幸いなことに、県のまとめによると、ここ数年の県内の新規就農者数は200人規模で推移。農家出身のUターン者が増えているという。後継者不足が叫ばれている時代にあって、歓迎すべき傾向だ。とは言っても、親の時代と同じような経営方針で生き残っていけるとは限らず、新規就農者には初期投資に掛かる費用を支援するとともに、さまざまな相談に乗ってくれる機関が必要であろう。
 農家出身のUターン者が増えていることからもうかがえるが、移住促進の分野でも農業は重要なキーワードになっている。各地域は「新規就農フェア」や「農業体験セミナー」などをこぞって開催している。
 農産物の品種を開発してブランド化を競うことは大切だが、担い手を確保することにおいても競争が起きていることを忘れてはならない。関係機関が協力し合って、農業者からの相談に対応する体制を拡充することは就農者を呼び込む重要な要素であり、地元農業の足腰を強くすることにつながっているのではないか。

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柴崎選手が代表入り「W杯での躍動に期待」

2018/6/1 金曜日

 

 6月14日に開幕するサッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会の日本代表メンバーが31日、発表された。野辺地町出身で青森山田高校卒のMF柴崎岳選手(ヘタフェ)も選ばれ、本県出身で初のW杯日本代表選手となった。これまでに培った力を遺憾なく発揮し、W杯の舞台で躍動してもらいたい。
 柴崎選手はユース年代から日本代表に名を連ね、青森山田高校2年時には全国高校サッカー選手権で準優勝。卒業と同時にJ1の鹿島アントラーズに入団してからも、若くして主力として活躍してきた。2016年のクラブW杯では、名実ともに世界一と称された欧州王者レアル・マドリード(スペイン)から2得点を奪ってみせ、世界中にその名をとどろかせた。
 クラブW杯での活躍は多くの海外メディアや関係者からも絶賛され、17年1月にスペイン2部リーグのテネリフェへ移籍し、念願の海外進出を果たした。同年7月には1部昇格したヘタフェに移り、世界最高峰とされるスペイントップリーグにデビュー。9月には、レアル同様にビッグクラブのバルセロナから得点を挙げ、実力の高さを証明した。
 だが、そのバルサ戦で左足を骨折し戦線離脱に追い込まれた。それでも約3カ月後に復帰し、徐々に本来のプレーを取り戻しつつある。30日に行われた国際親善試合のガーナ戦では後半途中から出場し、惜しいシュートを放ったり、ゴール前に正確なクロスを供給したりと、特に攻撃面で存在感を示した。
 日本はこの試合、ガーナの速さと体の強さに屈して完敗。本番となるW杯ではグループリーグで、いずれも格上のコロンビア、セネガル、ポーランドと対戦することから苦戦が予想される。残された準備期間は短いが、万全のコンディションで大会に臨んでほしい。願わくば、柴崎選手には攻撃の要となり、得点不足に悩む日本の救世主になってもらいたい。
 柴崎選手が日本代表となったことで、別の効果も期待している。それは本県サッカー界のレベルの向上だ。柴崎選手は、高校時代は本県初の全国優勝にあと一歩まで迫り、Jリーグに入っても主力として活躍、クラブW杯で鮮烈な印象を世界に与え、スペインでプレーするまでに至った。本県に生まれ、育っても常に国内のトップレベルに立ち、世界レベルの選手になれるということを身をもって実証して見せた。
 そのことは、プロサッカー選手を夢見る県内の少年少女たちにとって誇りであり、自信にもつながったはずだ。柴崎選手のようになりたいと思う選手が一人でも多く生まれてほしいし、今後もW杯に出場する本県選手が続くことを願っている。そのためにも、柴崎選手が再び世界を驚かせるようなプレーを大舞台で見せることを心から期待している。

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アメフット処分「反した基本に当然の判断」

2018/5/31 木曜日

 

 アメリカンフットボールの悪質タックル問題で、関東学生アメフット連盟は、日本大学アメフット部の内田正人前監督と井上奨前コーチを規定の中で最も重い除名処分にした。内田氏らが主張した認識の乖(かい)離(り)については「信用できない」と断じた。フェアプレーというスポーツの根本を無視したのだから、連盟の判断は当然だ。
 この問題では、当該選手が記者会見し「コーチから伝えられた言葉は『つぶせ』。けがをさせるという認識で、そういう意味でしか捉えられなかった」と、指示に従わざるを得なかった胸の内を明かした。これに対し、内田氏らは反則行為を命じたことを否定。日大の大塚吉兵衛学長も「あってはならない危険行為。当該学生一人に記者会見させ、大学として追い込んでしまった」と責任と対応の遅れを認めた。ただ、けがした選手が所属する関西学院大側の抗議文に対する、日大側の回答書は、内田氏らの指示を明確に認めたものではないようだ。
 仮に悪質タックルが当該選手の自己判断だったとしても、チームプレーは連帯責任が基本。日大選手一同として「私たちの責任はとても重い」との声明文を発表したのも、連帯責任を感じているからではないか。当該選手を事後にも「追い込んだ」日大の姿勢に不信感が膨らむ。
 学連は両氏の発言を完全否定した。規律委員会によるヒアリングを踏まえ、内田氏らの話には虚偽や事実のねじ曲げがあるとの判断に至ったという。学連は森琢コーチに2番目に重い資格剥奪、当該選手と日大アメフット部も公式試合出場資格停止とした。
 負傷した関学大選手の父親は警察に被害届を提出する一方で、記者会見まで開いて謝罪し、経緯を説明した当該選手への寛大な処分を求める嘆願書への署名を募集。賛同者が28日時点で2万6000人を超えるなど、世論も当該選手擁護に傾いている。
 オリンピック憲章には「友情、連帯、フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる」(オリンピズムの根本原則)とある。悪質タックルはもちろん、内田氏らの発言が、これに反するのは明らか。世論に流されず、当該選手と日大アメフット部も処分した学連の判断は正しいと言える。
 学連による処分は一つの区切りであるが、これで終わりではない。再発防止策をどう講じるか。競技団体には内部通報制度もあるが、出場機会を失うことを恐れる選手が、チームという閉鎖的組織の中で、権力を持つ指導者らを容易に告発できるだろうか。通報者を保護できる仕組みづくりを急がなければならない。
 ただ、それ以前に重要なのが、フェアプレー精神の徹底。いまさら、こんな当たり前のことから始めなければならないとは情けない。

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強制不妊「救済要件は柔軟に」

2018/5/30 水曜日

 

 旧優生保護法に基づき障害者らが不妊手術を強制された問題で、国会では議員立法による被害者救済を目指し設立された超党派の議員連盟が法案作成のためのプロジェクトチームを設けるなど動きを本格化させ始めた。議連は来年の通常国会での法案提出を目指している。
 同法は1948年に制定。「優生上の見地」から障害者らに対して本人の同意なしに不妊手術を行えることなどを定め、差別的な規定を撤廃した「母体保護法」に改正される96年まで存続した。厚生労働省によると、同意が不要の不妊手術を受けたのは男女1万6475人。同意のあった遺伝性疾患やハンセン病などを理由とするケースを含めると2万5000人近くに上るという。ハンセン病患者ばかりか、これほど被害者が広範に及んでいたことに驚く。
 本県でも県優生保護審査会の84~88年度関連資料が見つかった。判断対象とした県内居住の11人のうち、少なくとも女性1人が手術を受けた可能性が高く、10人について手術を適当と判断していたことが記されていた。
 国連の委員会は98年と2016年の2回、強制不妊手術の対象者について補償を受ける権利を法律で規定するよう勧告していた。
 問題が顕在化した直接のきっかけは、宮城県の60代女性が今年1月に国家賠償請求訴訟を起こしたこと(現在審理中)だが、それまで全体像の把握や具体的な救済に向けた本格的な動きがなかったとすれば、大きな問題だ。
 法案化に当たっては検討課題も多い。その一つは、個人を特定できる記録の多くが廃棄されるなどした可能性が高いとみられること。手術の記録が残っていない被害者や、同意して手術を受けた障害者らを救済対象とするかが挙げられる。一定期間の経過後に権利が消滅する「除斥期間」も問題となるだろう。
 救済の要件は、可能な限り柔軟に設定すべきだ。前述の経緯を踏まえると、国の不作為が手術の立証を困難にさせた側面は否定し難い。要件を厳格にすれば救済の対象は大幅に限られ、法案の意義自体や姿勢が問われる。
 強制不妊手術に関する国家賠償訴訟は、宮城県の女性のほか、男女計3人が今月、札幌、仙台、東京の3地裁へ一斉に提訴し、被害者の代理人弁護士らが全国弁護団を結成した。弁護団の共同代表によると、6月下旬にも、被害者数人による3次提訴が予定されているという。この動きは今後さらに広がりを見せることも想定される。
 人権意識が高まる一方で見過ごされてきた同問題。遅きに失した感はあるが、早期の救済実現を望みたい。加計学園問題や森友学園問題などで政治や国への不信が募る中、政治への信頼を取り戻す姿勢が問われる。

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