社 説

 

将来推計人口「減少速度の緩和図れ」

2018/4/7 土曜日

 

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が2045年の地域別将来推計人口を発表した。15年には130万8265人だった本県人口は45年には82万3610人になる見通し。15年比の人口減少率は37・0%で、全国でも秋田県の41・2%に次ぐ高い減少率になるという。
 人口減少は全国共通の課題だが、中でも減少率の高い本県は深刻な状況にあると言っていい。45年時点の本県の65歳以上の割合(高齢化率)は46・8%で、こちらも秋田県に次ぐ全国2番目の高さ。高齢化に対応した社会づくりも急務だ。
 全国的にみると、一部の都道府県では15年以降も人口が増え続け、東京都や沖縄県では30年がピーク。ただ30年以降は全都道府県で人口が減少に転じ、45年の時点では東京以外の都道府県はすべて15年の人口を下回る計算になるという。
 明るい兆しがあるとすれば、全都道府県で人口が減る時期は前回13年3月の推計より10年遅くなっていることか。出生率の改善や人口移動の状況などが影響しているとみられる。0~14歳の人口割合も低下するものの、40都道府県と半数以上の市区町村で前回推計の40年時点を上回っており、さまざまな対策を適切に講じることで、人口減少のスピードを遅らせることは可能だと言えるだろう。
 日銀青森支店が4月、金融経済概況の参考資料として発表した考察「労働供給の増加余地について」は、こうした状況を背景に、特に労働力確保の側面から本県の今後の方向性を示唆する内容だ。
 本県は1954年の統計開始以来、一貫して転出者数が転入者数を上回る転出超過の状態。年齢階層別の転出入の状況をみると、15~24歳の新卒者の年代の県外流出が多いことがよく知られている。
 同支店は賃金水準が低いほど新規高卒者の県内就職希望率も低いというデータを提示、本県は実質的な所得格差に加えて就職難の時代も長く、就職や進学の節目で県外を選ぶことに抵抗感が少ないという見方を示した。ただ近年は担い手不足、労働力不足が重要課題として浮上しており、事業所側に積極的な採用や待遇改善などの動きがあるとして、こうした取り組みが労働力の県外流出に歯止めをかける一助になり得ると分析している。
 一方、転入面をみると、県外移動経験者に占めるUターン比率は全国平均並みで、低くはない。行政などが進めるさまざまなUIJターン就職支援の取り組みが成果を上げていると言える。同支店はこれらの取り組みを粘り強く続けていくことで県内に労働力を環流・係留する動きが一段と強まる―と期待を寄せた。
 県は2018年度の予算で、基幹産業の農業をはじめとする各分野での労働力不足への対応に本格的に取り組む姿勢を示している。民間を含めた地域全体で危機感を共有し、着実な取り組みを重ねることで減少スピードの緩和を図りたい。

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公文書問題「危機意識を持ち究明を」

2018/4/6 金曜日

 

 防衛省が国会に「存在しない」と説明していた陸上自衛隊イラク派遣の活動状況を記録した日報が、実は存在していた。「ない」はずの文書が見つかる、果ては文書を改ざんする。相次ぐ省庁の不手際の原因は何なのか。政府はもちろん、国会も危機意識を持って経緯や動機を究明すべきだ。
 防衛省をめぐっては昨年2月、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報をめぐる隠蔽(いんぺい)問題が発覚。当時の稲田朋美防衛相、事務次官、陸自トップが引責辞任に追い込まれる異例の事態に発展した。
 小野寺五典防衛相の説明では、隠蔽問題を受け改めて調査した結果、昨年3月にイラク派遣部隊の日報の存在を確認したが、報告されていなかった。この日報が存在していたことを発表した当初、防衛省は確認時期を今年1月と説明していた。しかし、数日後には約1年も前に見つかっていたことが判明した。事実をごまかす、隠そうとする意思が働いたとしか思えない。
 さすがに事態を重く見た与党は、幹事長・国対委員長会談で日報問題に関し、「防衛相への報告が遅れたのはシビリアンコントロール(文民統制)の観点から考えられない」との認識で一致。自民党の二階俊博幹事長も「とんでもないことだ」と防衛省を批判した。
 防衛相は調査チームを立ち上げて事実関係を調査する考えを示したが、与党は財務省の決裁文書改ざんに続き公文書管理の不手際が発覚しことに危機感を強めており、近くワーキングチームを発足させて再発防止策を検討する方針だ。
 国の活動や歴史的事実の正確な記録である「公文書」は、過去・歴史から教訓を学ぶとともに、未来に生きる国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な、国民の貴重な共有財産だ(公文書管理の在り方等に関する有識者会議の最終報告から抜粋)。
 財務省の文書改ざん、文部科学省と厚生労働省における「ない」はずの文書やデータが見つかった問題などは、国民の財産である公文書の価値をないがしろにするものであり、行政に対する国民の信頼は大きく揺らいでいる。国会は各省庁の調査に任せず、与野党を超えて自ら経緯や動機を明らかにしてもらいたい。
 与党からも批判の声が高まる中、くしくも安倍晋三首相は、新人官僚を対象とした合同初任研修の開講式で「国民の信頼を得て負託に応えるべく、高い倫理観の下、細心の心持ちで仕事に臨んでほしい」と訓示した。
 首相の言葉通り、国会議員は国民の負託を得てその職にあるのだから、“高い倫理観”を発揮し、原因を究明して再発防止策を取りまとめる役割を果たすべきである。政府も最大限協力し、行政への信頼回復に努めるべきだ。

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古典書籍デジタル化「幅広い波及効果に期待したい」

2018/4/5 木曜日

 

 弘前市教育委員会は、弘前市立弘前図書館と郷土文学館が所蔵する古典書籍のデジタル公開の運用を開始した。
 今回公開されたのは「新編弘前市史」の一部や「弘前古御絵図」「本丸御絵図」など102点。主要な絵図や市史引用史資料の高精細デジタル画像化・市史のフルテキスト化を実現し、大型の古地図もより見やすくなったのが特徴だ。
 これらはインターネットを使うことで、いつでもどこでも無料で見ることができる。利便性の向上で、弘前にまつわる歴史に触れる機会が増え、歴史をより身近に感じ、また興味を持ちやすくなることだろう。
 同時に、デジタル化により貴重な資料の管理・保存能力が向上する。デジタル化の過程で資料の再評価が行われ、学術的価値がさらに高まるケースもあるかもしれない。国内ばかりか海外にも情報発信することになるため、その波及効果も期待される。
 弘前図書館が所蔵する貴重資料は江戸時代から明治、大正期を含めて約6万9000点。今回デジタル化された資料はそのわずか一部にすぎないが、長期的視点に立って、地道ではあっても着実に進められることを期待したい。
 古典書籍のデジタル化事業は2017年度から、市直営部門である生涯学習課図書館・郷土文学館運営推進室が担ってきた。事業実施に当たって市教委は、所蔵する古典書籍などの学術的価値を明らかにしデジタル公開するための覚書を弘前大学人文社会科学部と締結している。地元大学との連携も「学都弘前」らしい取り組みといえる。
 その弘前大学では、附属図書館所蔵資料のデジタルアーカイブ化に一足早く着手しており、巨大で展示スペースがなかった「津軽領元禄国絵図写」を皮切りに「阿仁鉱山関係絵図」「太宰治自筆ノート」などを次々と公開している。
 このデジタル化のきっかけになったのが、2011年3月の東日本大震災だったという。多くの貴重な歴史資料が被害を受け滅失・焼亡するのを目の当たりにし、管理・保存の必要性から事業に着手した。中でも、全国的にファンが多い太宰の自筆ノートはアクセス数も多いようだ。デジタル化資料の閲覧をきっかけに、太宰生誕の地である本県を訪れるファンも少なくないことを想定すれば、その波及効果も計り知れない。
 歴史資料のデジタル化は、資料の調査態勢や事業費の確保といった課題から、自治体が取り組む例は全国的にもまだ少ない。そうした中で、弘前市が着手したことは「歴史の町・弘前」の魅力を高めることにつながることだろう。
 歴史資料のデジタル化が教育、文化のみならず産業、観光、暮らしといった幅広い分野に波及し、地域振興に結び付くことを期待したい。

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カジノ法案「賛否両論の中でどう進める」

2018/4/4 水曜日

 

 カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の実施法案について自民、公明両党が整備箇所数を全国3カ所とすることなどで合意した。全国で10程度の地方が誘致に名乗りを上げており、狭き門となったことで激しい誘致合戦が繰り広げられると予想される。
 自民党は誘致を希望する地方への配慮から「4、5カ所」を主張していたが、公明党が推す「2、3カ所」に歩み寄る形での合意となった。箇所数の上限を見直す時期について「最初の認可から10年後」とした当初案を「7年後」に前倒ししたことが、譲歩の背景にある。
 これで大阪市や横浜市、北海道苫小牧市、長崎県佐世保市などが名乗りを上げる誘致合戦が本格化することになるが、2カ所は首都圏と関西圏になるとの見方があることから、「4、5カ所」を熱望していた地方からは「大都市に取られてしまう」と落胆の声が聞かれた。業界関係者も残り1カ所をめぐる「地方同士の相打ち」を懸念する。
 経済活性化などを期待しての誘致だが、自分の住まいの近くに整備されることに関しては、反対と考える人が66・8%と多数を占め、賛成派は2割ほどにとどまる。時事通信社が昨年7月に行った世論調査の結果で、反対理由は治安の悪化(68・2%)を筆頭に、青少年への悪影響、ギャンブル依存症の増加、犯罪利用、騒音や交通渋滞、反社会的勢力の資金源になる―など。一方の賛成派は観光客の増加や税収増、地域活性化、雇用創出などを理由に挙げるが、世論調査からは、こうした利点より、悪影響を心配する声が目立った。
 野党陣営では誘致を目指す大阪を地盤とする日本維新の会が法案推進の立場だが、立憲民主と共産両党が反対、民進党も「外国人観光客がカジノを目的に日本に来るとは思えない」と慎重。与党公明党内にもギャンブル依存症に対する懸念が根強い。
 「世界中から観光客を集める滞在型観光を推進する観点から法案を提出する」(菅義偉官房長官)と、今国会での実施法案成立を目指す政府。しかし「森友学園」をめぐる財務省文書改ざん問題に加え、これまで存在しないとされた陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報について、小野寺五典防衛相が存在していたと発表したことも野党に格好の攻撃材料を与えることになった。
 法案提出は大型連休明けになる公算。審議日程がタイトになることもあり、6月20日の会期末までの成立は不透明。とはいえ、議案が提出されれば議論のテーブルには乗る。活性化を図りたい地方の期待感と、ギャンブル依存や治安悪化に対する国民の不安感。どちらも理解できるだけに、双方を納得させられる法案でなければ、仮に成立したとしても実現への道のりは平たんではない。

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弘前市長選スタート「政策見極め投票を」

2018/4/3 火曜日

 

 任期満了に伴う弘前市長選が1日告示され、7日間にわたる舌戦がスタートした。2日からは期日前投票も行われている。
 立候補したのは元市議で新人の畑山聡候補(63)、元市観光振興部長で新人の桜田宏候補(58)、3選を目指す現職の葛西憲之候補(71)=いずれも無所属=の3氏。選挙戦の主軸は桜田、葛西両候補による保守分裂の争いとなっている。
 現市政の継続か刷新かを問う重要な選挙。各候補が掲げる主張や政策に耳を傾けて投票行動につなげるとともに、有権者として市の将来を考えるきっかけにもしたい。
 加えて、選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられてから初めて行われる市長選でもある。生涯住む地、掛け替えのない古里のこれからの方向付けに直接参加できる貴重な機会を大切にしてほしい。
 逆に、立候補者には、在るべき将来のビジョンと、それに基づく提言・公約をより分かりやすく提示することが求められる。将来を担う若年層へのメッセージがもっと込められていい。
 第一声で、畑山候補は積極的な企業誘致による市民所得の増大、桜田候補は指定ごみ袋制度の導入中止、葛西候補は各分野の担い手不足解消に向けた緊急対策プログラムなどをそれぞれ掲げ、支持を訴えた。
 今回の大きな争点の一つは、中核病院構想である。
 津軽圏域8市町村の医療を支える同構想については、県が2016年、弘前市立病院と国立病院機構弘前病院を統合し、機構が運営主体になる案を提示。しかし事務レベルの事前協議が難航したことを受け、葛西候補は、市が運営主体となり地域包括ケアの拠点として一体的に整備する構想を打ち出し、諮問している検討委員会の結論を待ちたい―とするが、桜田候補は県の構想を支持し「市の負担も最小限に抑えられる」と主張、対決姿勢を鮮明にしている。畑山候補も県構想を支持している。
 高齢化社会への対応、財源や医師の確保も絡む案件であり、有権者の審判が注目される。告示前に開かれた公開討論会では、それぞれの主張を聞いた市民から「いずれも主張が弱い」「これまでの経緯や今後の展望が不明確」といった声が上がり、告示日に街頭演説を聞いた有権者の間でも意見はさまざまだった。3氏には選挙戦を通じて、判断材料を分かりやすく提示する必要がある。
 有権者からは景気・雇用対策、基幹産業である農業や“日本一の桜”などを核とした観光産業の振興、周辺市町村との連携などを求める声も上がる。弘前は津軽地方の中核となる都市。弘前の動向が周辺自治体に与える影響は大きい。市長選は弘前のみならず、津軽の将来をも左右する。

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