社 説

 

5%ポイント還元「地方にも恩恵ある対策を」

2018/11/24 土曜日

 

 安倍晋三首相は消費税率を8%から10%へ引き上げるに当たり、消費の落ち込みを避けるため、中小の小売店でのキャッシュレス決済時を対象に、5%をポイント還元する対策を打ち出した。利用すれば消費者の負担が現行より下がり、実質的な「減税」とも指摘される。
 キャッシュレスにはクレジットカードや電子マネー、モバイルウォレットなどがある。日本の場合は持ち歩く現金を狙う犯罪が海外より少ないといった治安の良さに加え、ATM(現金自動預払機)が各所に設置されている利便性などもあり、現金決済を好む傾向にある。国内のキャッシュレス決済比率は、現在2割弱にとどまっている。
 海外先進国の多くは、日本よりキャッシュレス決済比率が高い。経済産業省が4月に公表した「キャッシュレス・ビジョン」によると、キャッシュレス経済比率は韓国が9割近く、中国は6割程度、米国は4割以上とされる。キャッシュレスに慣れた外国人が現状の日本を訪れ、不便を感じることもあるだろう。
 2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向け、海外から訪れる人が増えることを見込み、キャッシュレス化を推進する必要性が指摘されている。政府は2027年までには4割程度まで引き上げることを目指すとしている。
 一方で、現在2割弱とされる国内のキャッシュレス決済比率だが、首都圏に比べると地方でのキャッシュレス決済比率はさらに低いとみられる。クレジットカード対応を行うには、小売店がカード会社に一定の手数料を支払う必要があるが、その負担が苦しい―という小売店も地方には少なくない。また高齢者をはじめ、慣れない手続きを避けがちな層もいるだろう。
 本県は海外からの誘客を促進するインバウンド対策を進めており、キャッシュレス決済を今後普及させる必要性は指摘されている。本県は韓国、中国からの観光客も多く、経済効果を上げるにはキャッシュレス決済の普及が不可欠だ。
 だがキャッシュレス決済のポイント還元期間として想定されているのは、消費税率を引き上げる来年10月から、東京五輪・パラリンピックまでの9カ月間。この間に、地方でキャッシュレス決済がどの程度普及するかは不透明だ。
 安倍首相の経済対策「アベノミクス」の効果を、地方はなかなか感じにくい状況にある。その上、実質的な「減税」とされるポイント還元の恩恵も、地方は首都圏に比べるとあまり受けられない可能性がある。その場合は、地方を置き去りにした経済対策との批判は免れられないのではないか。
 地方も現状を変える努力は必要だが、消費税率引き上げに当たり、より地方の実情を見据えた経済対策についても併せて国に求めたい。

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慰安婦財団解散「矛先を間違えていないか」

2018/11/23 金曜日

 

 韓国で元慰安婦らへの支援事業を行ってきた「和解・癒やし財団」の解散と事業の終了が、同国女性家族省から発表された。
 財団は、慰安婦問題に関して「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった日韓政府間合意(慰安婦合意、2015年)に基づき設立されたばかり。日本は財団に10億円を出資し、元慰安婦らへ現金を支給してきた。しかし、合意に批判的な文在寅大統領の就任後、財団に対する韓国政府の予算支援が中断されるなど、事業継続に支障が生じていたという。
 支援事業は日韓合意の核心部分であり、韓国側による事実上の一方的な合意の破棄と受け取られても仕方あるまい。同国外務省は合意を破棄したり、再交渉を求めたりしないことを強調したが、説得力に乏しい。
 政府間合意はいったい何だったのかと首をかしげざるを得ない。一政権の恣意(しい)で簡単にほごにできるものなのか。
 同国最高裁は10月、日本企業に韓国人の元徴用工への賠償を命じる判決を出したばかり。1965年の日韓請求権協定では、日本が経済協力資金を支払う代わりに、両国と国民間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記、韓国政府もこれまで元徴用工の請求権問題は「解決済み」との見解だったが、最高裁判決では「個人請求権は消滅していない」と判断された。韓国政府は最高裁の判断を尊重する姿勢を示し、従来とは異なる対応の取りまとめに迫られている。
 いずれにせよ、こうした協定や合意が軽視される事態が続けば、国家間の信頼関係は成立し得ない。
 財団解散は、文政権が慰安婦合意について「国民の70%が受け入れていない」とされる世論を優先させた結果という。政権支持層の中心である若年層の支持率が下落傾向とも伝えられる。支持率のつなぎ留めや回復を狙ったのかもしれないが、国家間の約束事が政権支持率の道具にされてはたまらない。
 慰安婦合意は、過去の政権の弊害を正す文氏のスローガン「積弊清算」の対象にされた。だが、慰安婦合意にせよ請求権協定にせよ、「正す」ならば対象は当時の政権であり、国内の問題である。自国を省みず、すぐ他国へ矛先を向けるのは順序が異なる。請求権協定を例にすれば、日本が韓国に支払った経済協力資金計5億ドルの多くを当時の政権がインフラ整備などに投じ、個人補償に充てたのはうち無償分3億ドルの5・4%だった。
 韓国外務省は慰安婦財団の解散に関し、日本側に被害者の名誉と尊厳の回復、傷の癒やしに誠意ある姿勢で努力するよう求めたが、迷路を次々増設しては「早く出てこい」と叫んでいるようなものだ。日韓関係を複雑にしている原因は韓国側にあることを、いい加減自覚した方が良い。

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三内丸山に新施設「有効活用で縄文の魅力発信を」

2018/11/22 木曜日

 

 青森市の国特別史跡・三内丸山遺跡の縄文時遊館南側に展示収蔵施設が新設された。施設は空調設備を備えたことで同遺跡で発掘された重要文化財(重文)をすべて収蔵でき、他の遺跡の国宝や重文を借用した企画展などの開催も可能になった。
 日本最大級の縄文集落跡である同遺跡の魅力発信機能を強化すると同時に、三内丸山遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界文化遺産登録に向けた機運醸成を図り、一年でも早い登録実現への弾みとしたいものだ。
 三内丸山遺跡は縄文時代前期から中期(約5500~4000年前)の大規模な集落跡。発掘調査により、当時の自然環境や生活の様子などの解明が進められてきており、これまでの数多くの発見が縄文文化のイメージを大きく変えたことで知られる。2000年11月に国特別史跡に指定された。
 その後、02年に縄文時遊館がオープンした。ただ、遺跡で発掘された重文すべての保管場所がないため、多くが県立郷土館と県立美術館に保管されてきた。また、遺物収蔵庫として使用していたプレハブの老朽化が進み、展示・収蔵環境の強化が課題となっていた。
 新たに整備された施設は鉄筋コンクリート造りで、地下1階、地上1階建て。地下には縄文土器のかけら5120個をちりばめた高さ約6メートル、幅約18メートルの壁「縄文ビッグウォール」を設け、ガラス越しに閲覧可能な一般収蔵庫などを整備した。地上スペースには整理作業室と企画展示室を設置し、整理作業室は19年4月以降、ガラス越しに土器などの復元作業が見学できる。
 三内丸山遺跡は、本県など4道県から成る「北海道・北東北の縄文遺跡群」の17資産の一つ。文化審議会は今年7月、20年の世界文化遺産登録を目指す国内の推薦候補に同遺跡群を選んだ。しかし政府は今月2日、世界自然遺産登録を目指してきた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄両県)を、20年の遺産登録を目指し国連教育科学文化機関(ユネスコ)に再度推薦すると発表した。縄文遺跡群の推薦は来年度以降に見送られた格好だ。
 関係者は「次こそは」と口をそろえ、一年でも早い世界遺産登録の実現を期待する。三内丸山遺跡の新施設整備は、こうした動きを後押しし、登録実現に向けた機運の醸成に大きく役立つことだろう。
 三内丸山遺跡の近年の年間見学者数は30万人前後で推移している。来年度からは有料化されることが決まっており、それに伴い客足が鈍ることも懸念されるが、新施設を有効に活用し、より多くの人が足を運ぶ魅力ある施設づくりに努め、縄文文化の価値を国内外に一層広く発信してもらいたい。

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通常国会「来年の話は鬼が笑う」

2018/11/21 水曜日

 

 来年の話をすると鬼が笑う―。ちまたではそうでも、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の永田町では臨時国会の会期中にもかかわらず、来年1月の通常国会召集日をめぐって関係者が気をもんでいる。
 その原因は急浮上した「来年1月4日召集説」だ。理由としては来年7月の参院選について、召集日を早めれば複数のスケジュールが設定できるという。
 現在、有力視されているのは「7月4日公示、同21日投開票」だが、1月4日に召集すれば、投開票日は公職選挙法の規定で最速6月30日となる。つまり7月7日、14日、21日と四つの投開票日が可能となる。
 一方、国会議員は通常であれば召集日前日まで選挙区に滞在し、自治体や企業、町会や支持者らが主催するものまで、さまざまな新年会に顔を出すことが“仕事”だ。
 ところが4日召集となれば、恒例のものや有力な支持者の集会に出席できない可能性がある。日程を管理する秘書にとって「今から胃が痛い」(自民党国会議員秘書)。新年のあいさつ回りをいつにするのか、自治体や企業にも余波が及ぶことになる。
 また、召集日の憶測とセットで広まっているのが「衆参ダブル選説」だ。政権が参院選日程でフリーハンドを確保したいのは、衆院選とのダブル選の可能性を残し、少しでも求心力を維持したいからだという。
 ここでも解散理由として浮上しているのが「北方領土2島先行返還など外交問題」を国民に問うというもの。安倍晋三首相が長期政権の遺産(レガシー)を残すため、2島の先行返還を争点にするという観測だ。交渉の行方は不透明であり外交問題を争点にするのは非現実的と思われるが、レガシーづくりと言われれば説得力もある。
 改造で初入閣した閣僚の資質が問われる事態が相次ぎながら、内閣支持率が40%台で横ばい状態なのは、日中関係改善など安倍外交の成果によるものという分析もある。今後の展開によって2島先行も可能性は否定できない。
 「消費税増税の三度延期」も消えていない。消費増税を見送る理由としては、米中の貿易戦争の余波で世界経済の先行きが危惧され、堅調な国内経済に影響が出かねないという、真偽は別として“いかにも”というものだ。
 もっとも、自民党内では参院選のたびにダブル選の憶測が広がる。狙いは野党の分断であり、与党にとって衆参問わず1人区での野党連携が最大の脅威。しかし複数区では野党も単独候補を擁立する方針で、これに衆院選も加われば野党の共闘もままならない。
 召集日をめぐっては、衆参ダブル選の可能性をはらみつつ今後の国会審議に影響を与える可能性もある。

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トラック業界「労働環境改善に努力を」

2018/11/20 火曜日

 

 トラック運転手の長時間労働改善を検討している「トラック輸送における取引環境・労働時間改善県協議会」は輸送途中に中継地点を設け、貨物を別のトラックに積み替えるという実証実験を行い、11月に結果を報告した。運送事業者から運転手の労働時間の短縮や負担軽減につながったといった声が上がったという。
 トラック運転手は総労働時間が長い仕事の一つ。全国的に働き方改革が進められる中、今後の人材確保の観点からも、労働時間の抑制に向けた環境整備が急務だが、運送事業者だけの努力では改善が難しく、荷主の協力が欠かせない。このため、国土交通省と厚生労働省が荷主や運送事業者、学識経験者らを集めたメンバーで構成する協議会を47都道府県に設置し、全国で取り組みを進めている。
 本県で行われた今回の実証実験では八戸市からさいたま市の青果市場まで運ぶ際、途中の仙台市で別の車両に荷物を積み替えて引き継ぐ「中継輸送」の試み。積み替える分、目的地への到着は遅くなったが、運送事業者からは、運転手の労働時間の短縮、肉体的負担の軽減につながったとの声が上がり、一定の成果を上げたようだ。ただあまりメリットが感じられない、中継せずに直接行った方が楽かもしれない、との声もあったようで、まだまだ改善の余地があると言える。
 会議では中継地点で運転手が入れ替わる方式やトラクター(けん引車)を交換する方式なども示され、年明けにもいずれかの実証実験に取り組む予定だとか。
 同協議会はこれまでも実証実験を重ねており、朝の荷積みの時間を前倒しして混雑ピーク前の到着を図ったり、配送先ごとに積み荷を仕分けしたりして繁忙期の拘束時間を1日2時間以上短縮したことも。市場では待つのが当たり前と思っていた運送事業者はもちろん、発荷主も運びやすい荷物形態について考えるなど、さまざまな実験が良い意味で意識の変化につながっているようだ。こうした取り組みの積み重ねが重要だろう。
 他の都道府県でも積み荷情報を事前提供してもらうことで手待ち時間を削減したり、自宅での休憩を促すことで運転手の休憩時間を増やしたりする取り組みが進められており、成果や課題も含めて情報共有できる仕組みとなっている。
 長時間労働が半ば常態化している職種はトラック業界以外にもさまざまあり、いずれも個々の事業所の努力だけでは簡単に解決できない課題を抱えている。試行錯誤を繰り返すのはある意味当然のことで、諦めず、改善の道を模索してもらいたい。これまでの業界の「当たり前」は新たな担い手となる若手には通用しない。建設業などでも国などが主導して労働環境改善とその先の人材確保をにらんだ取り組みが進められているが、より多くの業界で将来を見据えた労働環境改善の取り組みをスタートさせるべきだ。

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