社 説

 

民泊新法施行「民泊普及で地域活性化へ」

2018/6/13 水曜日

 

 住宅を宿泊施設として提供する「民泊」のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が、15日に施行される。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、政府は訪日外国人旅行者を4000万人に増やす目標を掲げており、宿泊の受け皿づくりとして期待されている。
 首都圏などでは、正式な許可を申請してしない「ヤミ民泊」が横行していたほか、民泊の利用客による騒音やごみ出しなどの近隣トラブルの増加、宿泊ニーズの多様化を踏まえ、一定のルールを定めることで健全な民泊サービスの普及を図ることを目的としている。
 住宅宿泊事業を行う場合は都道府県知事などに届け出を実施。要件は「既存の住宅を1日単位で利用者に貸し出すもので、1年間で180日を超えない範囲内で、有償かつ反復継続するもの」としており、ホテルや旅館は除外される。
 「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋」が対象で、住宅の空き室や空き家が主な対象。増加する空き家は県内でも問題となっており、民泊を通して有効活用につながることも想定される。
 本県では、国際定期便就航や大型クルーズ船寄港の影響もあり、外国人観光客は増加傾向にある。弘前市は17年、外国人宿泊者数が過去最高の3万8132人を記録するなど、インバウンド対応は重要な課題だ。東京五輪・パラリンピック効果が本県のインバウンドにどの程度波及するかは分からないが、外国人客も視野に入れた民泊の在り方は、将来的に重要性を増すのではないか。
 そもそも本県は、宿泊施設が十分といえない状況にある。特に津軽地域は桜のシーズンのほか、ねぷた・ねぶたなどの夏祭り、紅葉シーズンに観光客が集中。特定の時期は宿泊先が不足するものの、それ以外の時期を考慮すると、単純にホテルや旅館を増やすのが正解とは言い難い環境だ。
 このため県内では観光客が集中する時期の「イベント民泊」をはじめ、通年観光にもつながる農家民泊「グリーン・ツーリズム」の普及に取り組んできた。観光客のニーズは多様化し、地元住民との交流や地域文化の体験を希望する層も少なくない点も見逃せない。
 三村申吾知事は5月31日の定例記者会見で、県内における民泊の事業実施について、事前届け出(同30日現在)は弘前、八戸、五戸の3市町の事業者から3件あったことを明かした。
 首都圏で目指す民泊の在り方と、県内で展開すべき民泊の方向性が必ずしも一致する必要性はないが、県内で民泊普及が一つのチャンスとなり、交流人口拡大や地域活性化へとつながっていくことを期待したい。

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秋葉原殺傷10年 振り返り再発防止に生かせ

2018/6/9 土曜日

 

 多くの人でにぎわう東京・秋葉原の歩行者天国を、パニックに陥れた無差別殺傷事件から8日で10年となった。街は平穏を取り戻し、事件の風化は確実に進んでいる。同様の事件が繰り返されないことを祈る被害者らからは、事件が忘れ去られることに懸念の声が聞かれる。
 2008年6月8日午後0時33分ごろ、歩行者天国が行われていたJR秋葉原駅近くの交差点に突っ込んだトラックが、通行人を次々とはねた。さらにトラックから降りた加藤智大死刑囚(35)=青森市出身=が、ダガーナイフで無差別に刺すなどし、19~74歳の男女7人の命を奪い、10人に重軽傷を負わせた。加藤死刑囚は1、2審で、精神障害は認められないとして死刑判決を受けたが、これを不服として上告。最高裁は15年2月、上告を棄却し死刑が確定した。
 事件から10年。事件後に一時中止されていた歩行者天国は11年に再開され、現在は何もなかったように買い物客や海外からの観光客らでにぎわう。この日、現場付近に献花台が設けられたが、普段の風景からは17人が無差別に襲われた事件が起きたことを想像できない。
 タクシー運転手として現場に居合わせ、右脇腹を刺された男性は、いまだに後遺症に苦しみながら、事件のことを少しでも考えてもらおうと、各地の学校で講演するなどの活動を続けている。このような事件を二度と繰り返してはならない、という強い思いが男性を突き動かしているようだ。
 ただ、残念ながら人の記憶は時とともに薄れていく。さらに10年後、20年後にはどうなっているだろうか。現場を行き交う人たちは、事件を知らない世代が中心になる。街が平穏を取り戻すのも当然であるし、決して悪いことではない。しかし、今後も絶対に同様の事件が起きないとは言い切れない。加害者も被害者もつくらないためには、男性のような被害者らの言葉を、後世に語り継ぐ仕組みづくりが急務だ。
 日本アニメは海外でも評価が高く、秋葉原は京都などとは違う〝日本らしさ〟を楽しめる人気観光地になった。政府は訪日観光客を増やそうと、各種施策を展開しており、売りの一つが治安の良さだ。20年の東京五輪・パラリンピックを控えて東京、日本に対する注目が一層高まる中、関係機関は鉄柵による「見せる警備」と、景観を損なわない安全対策との両立を探っている。物々しい雰囲気を避けつつ安全を確保することは、訪れる人たちに安心感を与える。
 このように秋葉原の事件で学んだことを生かすのも、風化させない取り組みと言える。五輪に向けて強化が必要なテロ対策、当事者にならない人づくりなど、事件を振り返ることで、安全確保のために何をすべきかが、見えてくるのではないか。

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所有者不明土地・発生抑制へ次の一手を

2018/6/8 金曜日

 

 長年にわたり相続登記されていないなどの理由で、所有者が分からなかったり、判明しても連絡が取れなくなったりしている「所有者不明土地」の有効利用を図る特別措置法が可決、成立した。来年6月までに施行されるという。
 公園や広場、駐車場をはじめ目的に一定の公共性が認められれば、利用を希望する市町村や民間企業、NPOなどに対して、都道府県知事がその土地に最長10年間の利用権を設定できる内容。所有者が現れた場合でも、異議がなければ延長が可能。国や自治体による公共事業で不明地の所有権を強制的に取得する収用手続きの簡素化も盛り込んだ。
 個人の財産権に絡む事案であり、恣意(しい)的な運用を避けなければならないのは当然である。しかし、現状では自治体の都市計画や農地集約を進める上で支障となる「厄介な土地」でもあった。農林業の生産性を含む経済面で足かせとなる上、所有者を探す過程で金銭や時間といったコストがかかるためだ。東日本大震災の復興事業でも問題となり、今後の災害時も同様の事態が懸念される。身近にも該当する土地があるかもしれない。
 増田寛也元総務相ら有識者でつくる民間研究会の推計によると、所有者不明土地の面積は2016年時点で九州より広い約410万ヘクタール。高齢化と人口減少が続けば、今後、不明地が加速度的に増加し、40年には約720万ヘクタールに達することも想定されている。税の滞納額などを含めた経済的損失は16年だけで約1800億円、17~40年の累計では約6兆円に上ると試算されている。
 狭い国土の有効活用や縮小する人的資源、国・自治体の財政を勘案すると、特措法は現状打開に一定の効果が期待される。
 所有者不明土地の発生を抑制する方策も、同時に求められる。
 不明地が発生した一因として、相続登記が適切に行われていなかった実情が挙げられている。法務省の研究会は、相続登記の義務化の検討、土地所有権を放棄する制度の創設を柱とした抜本的な対策に関する中間報告を発表した。長期間放置されている土地を、所有者が放棄したとみなすことができる制度の是非も検討する。政府を挙げて対策を進める構えで、20年までに関連法案の国会提出を目指すという。
 検討すべき課題は多い。所有権の放棄を無制限に認めると、納税義務逃れにつながりかねない。放棄された土地をどこに帰属させるべきかといった問題もある。相続登記の義務化に当たっては、登記を促す“呼び水”も求められよう。
 登記簿の基礎となる地籍調査の進捗(しんちょく)率(14年3月末時点)は全国で51%。本県は93%と高いが、都市部や山村部では低い。調査の迅速化に当たっては、実施主体の市町村への配慮も必要だろう。

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柏農生商品の輸出「海外で愛される品に」

2018/6/7 木曜日

 

 本県の実学系高校生の活躍が目覚ましい。五所川原農林高校の農産物の国際認証規格「グローバルGAP」取得に伴う一連の活動や弘前実業高校、黒石商業高校を中心とした商業系高校の商品開発の数々など、生徒たちのさまざまな取り組みを紙面で目にする機会が、本当に増えた。
 平川市の柏木農業高校も活発な取り組みが目立つ高校だが、6日付の本紙紙面で同校の生徒たちが加工したジャムが、台湾の日本食販売会社で取り扱われることが決まったことが報じられた。自らが作り出した製品が、国内はおろか、海外に進出する。それも他者任せではなく、自らが現地の業者と直接交渉し、取り扱いを実現したというのだから、その行動力には驚くばかりだ。台湾の消費者に、柏農生の熱意が伝わり、商品がヒットすることを心から願っている。
 同校は2015年度の県の事業で、県産リンゴ最大の輸入国である台湾で生果・加工品などの市場調査を実施。さらに16年度からは、生徒たちに販売動向の学習を通じて広い視野や経営感覚を身に付け、社会で活躍できる人になってもらいたいと、台湾の視察・調査を学校独自で行っている。
 今回、取り扱いを決めた日本食販売会社は、柏農高の視察を受け入れているところで、生徒らが土産として持参した同校生産のリンゴジュースを気に入り、輸入販売するなどの付き合いがあるという。今回も食品科学科の生徒5人が、市場調査のため、台湾を訪問した際に、持参した同校生産のジャムを、商品として同社に扱ってもらえないか直接交渉したのがきっかけだという。その後、商談がまとまり、マーマレードジャムやリンゴジャム、アップルカシスジャムが台湾に輸出されることが決まった。
 5日には同校で加工品輸出出発式が行われたが、遠藤剛校長が本紙取材に「自分たちで生産、加工し、交渉して売るという6次産業の流れを生徒たちが体験できたのは良いこと」と語っていた。まさに正鵠(せいこく)を得ていると思う。農業を含む1次産業を取り巻く環境は、価格競争の激化や担い手・労働力の確保など、厳しい課題に直面している。6次産業化は、こうした課題の打開策の一つとして官民挙げて取り組みが進んでいる考え方であり、農業分野を学ぶ高校生たちが、自らの体験を持って学ぶことは意義深い。
 輸出した商品は検査などを経て、7月ごろに台湾の台中市と台北市にある同社販売店で取り扱う予定だそうだ。同社は反響次第で、今後も同校のジャムを輸入販売するという。本県の高校生が作った商品が、海外で多くの人に愛され、人気商品となる。そんな夢と希望を県民に与えてくれるいい話題だった。これからも実学系高校生のさまざまな取り組みを応援していきたい。

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「弘前市民アンケート」結果生かしまちの魅力向上を

2018/6/6 水曜日

 

 弘前市は、市民を対象に2017年度に実施した地域経営アンケートの結果を公表した。満足度から不満度を差し引いた全体の「満足度スコア」は前年度からやや低下し、依然として雪対策への不満が目立った一方、子育て支援への満足度は上昇した。
 調査は17年4月20日~5月22日に、無作為抽出した16歳以上の男女2400人を対象に実施し、2102人が回答した。全体の満足度スコアは15・8ポイントで前年度の16・1ポイントを下回った。経営計画に掲げた地域づくり5分野は「ひとづくり」「くらしづくり」「なりわいづくり」の満足度がいずれも上昇したが、「まちづくり」「仕組みづくり」は低下した。
 この中でも「まちづくり」に関する設問で「弘前市の住みよさ」の満足度スコアが前年度比10・2ポイントの大幅な低下となった。これは16年度の降雪量の多さが影響したとみられる。住みにくいと回答した人が最も多く挙げた理由は「雪対策、除雪が不十分」だった。
 市は新たな取り組みとして道路融雪などを積極的に行ってきたが、いまだ住民の満足度を高めるには至っていないようだ。アンケートは政策評価のために毎年行われているが、雪対策は常に不満の割合が高い傾向にある。短期で満足度を上げるのは難しい課題だが、「住みよいまち」の実現に向け、改善を図らなければならない重要施策の一つとして取り組んでもらいたい。
 もう一つ不満が目立ったのが、通勤や買い物などに利用する交通手段だ。「どちらかといえば不満」「不満」と回答した人の割合は34・1%で前年度に比べ5ポイントほど増えており、公共交通機関を利用しづらい環境が影響したようだ。
 移動手段は7割以上が自動車と回答している。車社会が浸透する中で、公共交通機関を維持し、採算性に配慮しながら利便性を高めることは容易ではないが、高齢化社会の進展を踏まえ、より良い交通手段の在り方を模索する必要がある。
 他方で改善傾向が見られたものも少なくない。その一つが子育て支援への満足度だ。「ひとづくり」分野は満足度が上昇し、中でも「子育てしやすいまち」としての満足度が高まった。「子育てに係る負担が軽減されているか」との設問に対し「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」とする否定的な回答は減り、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の理由は「医療費の軽減に関する取り組みがなされている」が6割近くを占めた。子育て世帯支援策として、子どもの医療費負担軽減が重要視されていることが分かる。
 弘前市のまちの魅力を高めるためにも、アンケート結果からうかがえる市民のさまざまな声を今後の市政運営に反映させ、満足度をより一層高めるための努力を続けてもらいたい。

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