社 説

 

葛西市長が退任「躍動感とスピード感でけん引」

2018/4/14 土曜日

 

 8日に投開票が行われた弘前市長選で、市民の審判を受けた現職葛西憲之市長が13日、2期8年を締めくくる任期最後の訓示を市職員幹部に行い、市職員に見送られながら退庁した。躍動感ある市政を担い、鮮烈な印象を残す市長だったことは間違いない。
 県職員時代から「アイデアマン」として名をはせていた葛西市長。弘前市副市長時代を経て市長に就任して以降、最も評価されるべき部分は、数多くの課題へ果敢に挑戦し続けたところだろう。
 ソフト面では「観光面のピンチ」とされた弘前城石垣修理工事で、弘前城天守曳屋(ひきや)を市民参加型のイベントに転換し、市内外から集客を図った。今後も工事の様子を「今しか見られない貴重な姿」としてPRすることが可能だ。熊本地震で深刻な被害を受けた熊本城は今、修復中の姿を積極的に発信しており、弘前が先進事例になったとも考えられる。
 ハード面では施設改修など大型建設事業が相次ぎ、一部から「箱物行政」との批判を受けたが、弘前に残る文化的・芸術的施設を生かし、良い形で次世代へ残そうとする、葛西市長の思いの強さの表れだったといえよう。
 今月オープンした岩木地区の高岡の森弘前藩歴史館しかり、2020年春に芸術・文化施設へリニューアル予定の吉野町の赤煉瓦(れんが)倉庫も同様。葛西市長が就任するまで着手されなかった多くの課題が、国の有利な財源を組み合わせて事業化する得意の手腕で動いていった。
 国の補助を受けて現在進行中の市民中央広場整備事業にしても、弘前で活用しきれていない趣ある洋館や街並みを何とかしたい―といった思いを受けてのことだ。「モダニズム建築の旗手」と呼ばれる前川國男の手掛けた市役所庁舎、市民会館といった市内の前川建築についても、「前川らしさ」を損なわないよう意欲的に改修に取り組んだ。
 人々でにぎわう場所には必ず、「顔」となる街並みが必要だ。住む人々が地元を誇り、初めて訪れた人々にも感動を与える美しい弘前を目指してきた葛西市長は「まちと住まいする人々が共感共鳴し合える街」と表現してきた。
 葛西市長の任期は15日まで。市民の負託を受けて選ばれた新たな市長が今後の市政のかじ取りを担っていく。今回の市長選の結果は、3期目を目指した葛西市政の継続が市民から肯定的に受け入れられなかったことを意味するが、葛西市政だからこそ可能となった誇るべきことが多々あったことは忘れてはならない。
 今後も弘前のまちの至るところに、葛西市長が吹き込んだ思いが形となって残っていくことだろう。
 躍動感とスピード感のある市政をけん引し続けた葛西市長に、2期8年間お疲れさまでした、と紙面上ながら申し上げたい。

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日本代表新監督「サッカーW杯での活躍に期待」

2018/4/13 金曜日

 

 日本サッカー協会が日本代表監督のバヒド・ハリルホジッチ氏を解任し、後任に西野朗日本協会技術委員長を充てる人事を発表した。ワールドカップ(W杯)ロシア大会の開幕まで2カ月という残りわずかの期間で行われた異例の監督交代劇。西野新監督に与えられた準備期間は非常に短く、さまざまな困難が予想されるが、新監督はもちろん、選手、スタッフが一丸となって、目指す目標に向けて勝ち進むことを願っている。
 ハリルホジッチ氏は、前回W杯でアルジェリアを躍進させた手腕を買われ、3年前に代表監督に就任した。激戦のロシア大会予選では、一時は予選敗退の危機にも直面したが、最終的にロシアへの切符を手に入れた。
 ただ、監督が掲げる、縦に速さを求める戦術が、代表チームのプレースタイルと適合するかという疑問は常につきまとい、就任期間中に、ファンを納得させる内容と言える試合は決して多くはなかった。
 加えて問題とされたのが同氏のマネジメント手法だった。周囲の意見に耳を貸さない独裁ぶりが目立ったほか、ロシア大会出場決定後のベルギー遠征では、大会に出場しないマリに1―1、ウクライナに1―2と物足りない成績に終わり、選手からも戦術への疑問や采配批判とも受け取れる発言が噴出。事態を重く見た日本協会によって解任された。
 後任の西野氏の実績は十分だ。同氏が1996年アトランタ五輪で演じた「マイアミの奇跡」は日本サッカー史にさんぜんと輝く。23歳以下の日本代表を率いた1次リーグ初戦で、ブラジルを1―0で破る大金星を挙げた姿は、今も記憶に残る。J1リーグの監督としては柏を手始めに、G大阪では「超攻撃的姿勢」を植え付け、05年に初のJ1制覇。08年にはアジア王座に導くなど強豪クラブに押し上げた。ハリル氏解任を決断し、自ら後任に西野氏を抜てきした同協会の田嶋幸三会長は「W杯まで2カ月しかない。このタイミングだからこそ、内部で一番チームを見てきた西野さんになった」と同氏の就任の理由を説明している。
 W杯で日本代表を指揮する日本人監督は、98年フランス大会と2010年南アフリカ大会の岡田武史氏に次いで2人目。鋭い分析力と論理的な考え方で緻密な戦略を立てると評される西野氏。大舞台を前に停滞の感があった日本代表に良い意味での刺激を与えることを望む。
 世界で最も人気が高いスポーツと言われるサッカーの国別最高峰の戦いとなるW杯は、それゆえ国民の注目も非常に高い。「(日本サッカーは)技術的に世界に通用する部分はあるし、規律を守って組織的に戦える強みがある」と日本の良さを評価する西野氏の下、本番では世界の強豪を相手に「日本のサッカー」で大暴れしてもらいたい。

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エネルギー戦略「将来の本県の立ち位置明確に」

2018/4/12 木曜日

 

 経済産業省が10日の有識者会議で、2050年までの長期的なエネルギー戦略に関する提言を取りまとめた。この中では、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を受け、50年に温室効果ガスを8割減らすとする日本の目標達成を目指し「脱炭素化」へエネルギー転換すると表明。太陽光や風力など再生可能エネルギーを主力電源とし、原発は「選択肢」と位置付けた。今夏にも改定、閣議決定する政府のエネルギー基本計画に反映するという。
 提言によると、再生可能エネルギーは「経済的に自立した主力電源化」を目指す方針であり、国際水準並みにコストを引き下げ、固定価格買い取り制度による補助からの早期自立を図るなどとした。一方で、原発については「可能な限り依存度低減」としつつ、脱炭素社会を実現するための選択肢とした上で「安全性、経済性、機動性に優れた炉の追求」と明記した。しかし、新設や建て替えの是非には直接触れなかった。
 将来的なエネルギーに関して、長期的な戦略を提言として、取りまとめたことは評価するが、温室効果ガスの8割減とするための道筋が見えない、各電源の比率目標などが示されていないことから、重点投資すべき対象の判断ができない、といった課題が残り、今後の不透明感が否めない。
 日本のエネルギー政策は手探りで続けてきた印象がある。戦後、中東の石油に依存してきた日本は1970年代の石油ショックをきっかけに電源の多様化を図ってきたほか、原発と使用済み核燃料再処理工場を軸とした核燃サイクル政策は、東日本大震災に伴う福島原発事故を契機に、原子力規制委員会の新規制基準に基づく事実上の仕切り直しが行われている状態となっている。再生可能エネルギーですら、そのエネルギー効率や景観、環境への影響が指摘されている分野がある。こうした不透明感とこれまでの経緯を踏まえ、どのように戦略を進めていくのか、早期に明らかにする必要があろう。
 このほか、国の核燃サイクル政策に基づき、原発など関連施設立地などに協力してきた本県に対して、将来的な立ち位置を明確にしてほしい。長期にわたる関連施設立地の結果、財政的な面を原子力に依存してきた本県の立地自治体は少なくない。原発を「選択肢」と位置付けるのであれば、将来的な本県の姿を明確化するのは当然のことであろう。本県だけではなく、原子力関連施設が立地する茨城県や福井県などにも同様の対応が求められよう。
 今回の提言に限らず、戦略や計画を打ち立てたはいいが、いつの間にか計画倒れとなることは避けたい。定期的に戦略に基づく取り組みがどう進んでいるのか、情報を開示することを求めたい。

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立佞武多の海外進出「国を代表する祭りへ飛躍を」

2018/4/11 水曜日

 

 五所川原市の誇る「立佞武多」が積極的に海外に打って出ようとしている。5月に台湾・台北市で展示されるほか、10月にはフランス・パリの祭典に参加する。昨年は運行20年目の大きな節目を迎えた。今年は、わが国を代表する祭りへと飛躍する年にしてほしい。
 途絶えていた立佞武多の伝統を地元の有志が復活させたのが1996年。2年後の98年には運行がスタートした。高さが20メートル以上もある姿は迫力十分。すぐに話題を呼び、今では青森市のねぶた、弘前市のねぷたと肩を並べ、本県を代表する夏祭りと言われるまでに成長した。
 知名度向上に伴い、県外のイベントへの参加要請も来るようになり、東京ドームで毎年開催される「ふるさと祭り東京」に3回出陣するなど、各会場でその威容を披露して好評を博している。昨年末にはNHKの紅白歌合戦にまで出演し、その存在を大いにアピールした。
 海外への進出も既に果たしている。2015年、ブラジル・サンパウロカーニバルに出陣して観衆を魅了した。立佞武多に感激したファッションデザイナーのコシノジュンコさんが、現地のサンバチームとの間を取り持つ形で実現したもので、ランタン(中国ちょうちん)などになじみのない現地では、骨組みと紙でできている山車が新鮮に映ったようだ。
 今年は5、6月、台北市の「大葉高島屋」に、大型立佞武多を5分の1に縮小した小型の「復興祈願・鹿嶋大明神と地震鯰(なまず)」を展示する。台湾からは本県や五所川原市に多くの観光客が訪れており、今回の展示を契機にさらに増えることを関係者は願っている。
 パリでは7月から来年2月まで、日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」が開かれることになっており、立佞武多は会期中の一企画「地方の魅力―祭りと文化」(10月17~27日)に参加する。
 出陣するのは、中型の「文武聖人 美髭公(びぜんこう)関羽」(高さ約12メートル)だが、囃子(はやし)方や踊り手ら20人以上とともにパレードに参加することになっている。「ヤッテマレ、ヤッテマレ」の掛け声が欧州に初めて響き渡り、地元・五所川原の祭りの熱気を伝えることだろう。
 サンパウロカーニバルに出陣した15年は、日本とブラジルの外交関係樹立120周年の節目であり、「ジャポニスム―」は日仏友好160周年を記念したものという。わが国と交流相手国の絆を確かめ合う場で、立佞武多が重要な役割を担うことは、津軽地方に住む者にとって誇らしいことだ。
 今後も海外でお披露目する機会を設けていけば、本県を代表する祭りから日本を代表する祭りに成長できるはず。訪日外国人客が増え続けている今、地元を振興させる意味でも、海外進出に積極的に取り組むことを期待したい。

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弘前市長に桜田氏「市民生活第一で市政運営を」

2018/4/9 月曜日

 

 任期満了に伴う弘前市長選は8日に投開票が行われ、新人で元市観光振興部長の桜田宏氏が3選を目指した現職の葛西憲之氏を破り、初当選を果たした。桜田氏が掲げた「市民生活を第一に」する市政運営に期待したい。
 まず真っ先に取り組んでもらいたいのは中核病院問題だ。津軽圏域8市町村の医療を支える中核病院構想については県が2016年10月、市立病院と国立病院機構弘前病院を統合し、機構が運営主体になる案を提示した。
 協議が難航する中、葛西氏は中核病院を地域包括ケアの拠点とする構想を唐突に打ち出し、市が運営主体となることを目指すと表明。関係機関や関係市町村の困惑を招く事態となった。
 市民の間にも戸惑いは広がっている。当社が実施した世論調査によると、「機構が主体になるべき」とする市民は32・4%で、「市が主体になるべき」の18・8%を大きく上回った。約半数となる残りの48・8%は「分からない」としており、市民にとっては非常に分かりづらい状況となっていることが分かった。
 中核病院構想に関し、葛西市政の方針決定に至る経緯が見えにくかったことなどが、調査結果につながったのではないか。現在は専門家らによる市地域包括ケア検討委員会で協議が進められているが、新市政の下で積極的に情報を開示、発信してもらいたい。
 桜田氏は選挙戦で、2次救急医療体制が「危機的状況にある」と指摘し、課題解決に向け、機構主体の整備・運営が「最も早く、市の負担を少なくする手法」と強調。機構を主体とした中核病院の早期実現を目指す考えに異論はないが、半数に及ぶ市民が理解できていないという状況にも意を用いてほしい。
 桜田氏のもう一つの大きな公約としては、家庭系ごみ指定袋制度の導入中止が挙げられよう。同氏は導入の目的と目標があいまいだとした上で「値段が2倍近くになり、家計を圧迫する」と訴えた。
 改善傾向にあるとはいえ、市内のごみ排出量は依然として多く、減量化は喫緊の課題。桜田氏は「リサイクルも含め、市民とじっくり取り組む。過去に12分別に対応できた市民力を生かせば、負担は強いずに減量化はできる」と力説した。市民に寄り添い、市民力に期待する姿勢が多くの市民の共感を得たのではないだろうか。
 桜田氏は中核病院問題の早期決着やごみ指定袋制度中止を含め、市民の「くらし」「いのち」「ひと」の3本柱に関わる14の取り組みなどを実現すると掲げた。そのための財源確保策として、整備中の施設や新しい施設の整備については市民の意見を聞いた上で慎重に結論を出すとしている。「市民生活に不可欠なものかどうかを第一の判断基準とする」、その姿勢を貫くことを期待している。

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