社 説

 

内閣改造「政権浮揚につながるか」

2017/8/4 金曜日

 

 安倍晋三首相が行った内閣改造と自民党人事は、果たして政権浮揚につながるのか。永田町で最大の関心事は、改造を受けて今週末に行われる世論調査の結果だ。与野党問わず「結果によっては政局となり、年内の解散・総選挙もありうる」との見方が広がっている。
 今年2月の時事通信の世論調査で、安倍内閣の支持率は53・4%だった。しかし、この高支持率を背景とした強引な政権運営に加え、加計・森友学園問題、相次ぐ閣僚の辞任、“魔の2回生”によるスキャンダルなどが相次ぎ、7月の調査では29・9%にまで急落した。
 内閣支持率は30%を割り込むと政権運営が極めて不安定になる「危険水域」とされる。さすがに危機感を抱いた首相は加計学園問題の集中審査に応じたが、疑惑を払(ふっ)拭(しょく)するどころか、国家戦略特区制度を活用した獣医学部新設計画について「今年1月20日まで知らなかった」と答弁するなど、新たな火種を抱え込んだ。
 さらに稲田朋美氏が南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報をめぐる問題の責任を取り防衛相を辞任。都議選での歴史的惨敗もあって厳しい立場の首相は、内閣改造を機に体制を刷新し、政権の立て直しを図ろうとした。
 しかし「人心一新」を掲げる一方で、早い段階で「骨格は維持する」との考えを示し、盟友の麻生太郎副総理兼財務相と腹心の菅義偉官房長官の留任が確実となったため、党内には「代わり映えがしない」との空気が漂う。
 党人事では岸田文雄前外相を政務調査会長に起用したが、二階俊博幹事長と高村正彦副総裁を留任させた。また、加計学園問題を抱える文科相、組織の立て直しが急務の防衛相に閣僚経験者を起用することが事前に報じられ、新内閣は発足前から新鮮味に欠ける格好となった。
 野田聖子元党総務会長を起用するなど自らと距離を置く人材も活用したが、“サプライズ”として取り沙汰された石破茂前地方創生担当相や小泉進次郎党農林部会長らの起用は見送った。首相は「安定した政治基盤をつくる」と意気込みをみせるが、政権浮揚につながるかは疑問だ。
 一方、週明けにも判明する最新の支持率によっては、来月半ばに臨時国会を召集し解散・総選挙に打って出るとの見方がある。10月22日投票の衆院ダブル補選では、愛媛3区での苦戦が予想されており、敗戦ショックを和らげようと、補選に日程を合わせるというのだ。
 さらには早期に解散できなければ、来年秋の任期満了ぎりぎりの“追い込まれ解散”になるとの予想もある。
 このような観測が党内外でささやかれるほど、首相の足元は揺らいでいる。わずか半年前まで高支持率を誇り、「安倍1強」とまで揶揄(やゆ)されていた政権だが、先行きは不透明さを増すばかりだ。

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森友学園問題「国有地格安売却こそ“本丸”」

2017/8/3 木曜日

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)が国や大阪府の補助金を不正に受給したとされる事件で、前理事長の籠池泰典容疑者夫妻が詐欺容疑で、大阪地検特捜部に逮捕された。同学園の国有地取得に端を発した一連の問題は、新たな段階を迎えたと言える。
 学園が豊中市の国有地に開設予定だった小学校の校舎建設工事をめぐり、国の補助金計約5600万円をだまし取った疑い。受給額を増やすため、実際には約15億5500万円だった工事費用を23億8400万円余と水増しした請負契約書を国に提出したとみられている。
 小学校の設置認可申請では、府に虚偽の寄付収入見込みを提出していた疑惑が浮上。学園が運営する幼稚園では、専従教員数や障害などで支援が必要な園児数を偽って申請し、府の補助金計約6200万円を詐取した疑いも持たれている。
 これらが事実とすれば、幼稚園の保護者に“清く正しく”を旨とする「熱心な教育者」と映った籠池容疑者の人物像は表裏の落差が甚だしい。国会の証人喚問や記者会見などで繰り広げた強烈な「籠池節」も相まって、その主張や証言をにわかに信じるのは難しい。
 一方で、問題の発端となった国有地の格安売却問題は、解明が進んでいるだろうか。国民の関心事はむしろ、売却に絡む政治家の関与の有無であり、国の「特別扱い」であろう。
 学園は国有地を土地評価額より約8億円安く購入した。近畿財務局は「地中のごみ撤去費を差し引いた」としたが、当初は定期借地としたこと、売却代金の分割払いを認めたことが判明。近畿財務局は不当に安く売却したとして背任容疑で告発され、受理した特捜部が職員の聴取などを進めている。だが、財務省は関連文書の存在を否定したままだ。
 一時、小学校の名誉校長に就いた安倍昭恵氏(安倍晋三首相夫人)と、昭恵氏付だった当時の職員は、学園側に国の予算措置方針をファクス送信した国家公務員法違反容疑で告発された。籠池容疑者は、首相側から100万円を受け取ったと主張していた。
 問題の大きさとしては、近畿財務局の背任容疑の捜査が先行しそうなものだが、実際に先行しているのは籠池容疑者に対する詐欺容疑のようだ。学園は財務が脆弱(ぜいじゃく)で、8億円の値引きがなければ土地を取得できなかったとの指摘もある。背任容疑の捜査につながる全容解明の“第一歩”かもしれないが、詐欺容疑の捜査の裏で背任容疑がうやむやなまま終わってしまう恐れはないか。
 背任容疑での立件や、近畿財務局と同じ国の機関である検察の捜査に、困難を指摘する声もある。しかしここで追及を緩めては、「これも忖度(そんたく)か」とのそしりは免れまい。中立な立場で解明してほしいものである。

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縄文遺跡群見送り 世界遺産推薦へ「全力」尽くせ

2017/8/2 水曜日

 

 2019年の世界文化遺産登録を目指してきた本県など4道県の「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、国の文化審議会は7月31日の会合で、ユネスコ(国際教育科学文化機関)への推薦を見送った。推薦見送りは5回目。ユネスコ世界遺産委員会審査の前段階である文化審の理解を得ることがいかに難しいかを、改めて痛感した。
 縄文遺跡群は青森市の国特別史跡「三内丸山遺跡」や弘前市の国史跡「大森勝山遺跡」など、北海道と北東北3県にある計17の資産で構成。約1万年にわたり発展し、大型集落や祭祀(さいし)道具に特異性がある「地域文化圏」と位置付け、同時代の他文化圏にも影響を与えたと主張した。前回(16年)の推薦見送りの際に文化審は「縄文文化の普遍的価値を説明する上で、17資産それぞれの位置付けが十分に精査されていない」としており、この指摘を踏まえて今回の推薦を目指した。
 しかし文化審は、縄文時代を代表するだけの優位性や特異性が十分に説明されていないことを理由に推薦を見送った。文化審世界文化遺産部会は「構成資産の説明が工夫され、明確になった」と、前回からの改善点を評価した半面、「さらなる努力が必要」と厳しい意見もあった。
 同部会の佐藤信部会長らは会合後の会見で、他の地域文化圏と比較検討し、共通点や相違点などをさらに説明する必要があると指摘。全国に縄文遺跡がある中で、北海道と北東北3県に限定して登録を目指すのだから、誰が見ても理解、納得できるものでなければならないのは当然。しかも世界文化遺産である。国内での価値のみならず、世界的価値を認めさせる必要がある。
 15年は縄文遺跡群全体の価値と構成遺跡の関係、16年は構成遺跡それぞれの位置付け、そして今回は縄文時代を代表するだけの優位性、特異性―の説明不足が指摘された。言葉は違えど、提出した推薦書素案が、縄文遺跡群の価値を裏付けるレベルに達していないという欠点を解消できていないことを示す。
 県世界文化遺産登録推進室は後日、詳細な理由を聞き取る予定で、現時点では「これまで示された課題については、推薦書素案でほぼ説明は尽くしており、一定の理解が得られた」と受け止めている。しかし、それでも推薦されないのだから、指摘部分を修正しただけで、文化審を納得させられないのは明らか。
 来年の推薦を目指す以上、文化審が求めるレベルを超えた内容にする必要があるのではないか。4道県で組織する縄文遺跡群世界遺産登録推進本部長の三村申吾青森県知事は「全力で取り組む」とした。推薦を得る難しさを心に刻み、言葉だけではない「全力」を尽くさなければならない。

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つがる市立図書館「開館1周年、愛される施設に」

2017/8/1 火曜日

 

 つがる市立図書館が開館から1周年を迎えた。大型商業施設のイオンモールつがる柏内に設置された同施設は、基幹産業の農業や郷土史料に特化したコーナーのほか、児童図書などを充実させ、蔵書数約8万冊でスタート。カフェも併設させるなど、幅広い年代に対応した図書館づくりが功を奏し、この1年間の入館者が30万人を数えるなど、好調な利用状況にある。市の知の拠点、市民の生涯学習の場としてのますますの発展を期待している。
 同図書館は、指定管理者制度を導入しており、案内カウンターには、自動貸出機を採用。タブレット端末を配備し、インターネット、データベース検索、デジタル教材として利用できるようにしている。5町村が合併した同市は郷土史料が豊富で、こうした強みを生かした郷土史料コーナーのほか、基幹産業の農業コーナー、縄文関連図書も充実させている。
 図書館本来の機能以外でユニークなのは、その立地や関連施設にあるだろう。図書館が入る大型商業施設のイオンモールつがる柏は、津軽地方でも有数の大規模ショッピングセンターであり、買い物客らでにぎわう。また入り口付近には「タリーズコーヒー」が併設され、ふた付きの飲み物を一部館内に持ち込めるなど従来の公設図書館にはない、利便性や使い勝手の良さを重視したコンセプトが同施設の特徴と言えるのではないか。
 人気は数字に表れている。入館者はわずか2カ月弱で10万人を達成。今年2月に年間目標の20万人に到達すると、7月17日には30万人を突破。1年間が経過した28日時点では31万793人となっている。年間目標を既に10万人以上上回る数字を残しているのは立派なものだ。
 図書館設置は、関連施設にも相乗効果をもたらしている。イオンモールつがる柏でも図書館オープン後の同モールへの来館者が設置前の年に比べ、年間で1割弱増えているという。買い物帰りに図書館に寄ったり、図書館に来たついでに買い物をしたりと、利用目的はさまざまだろうが、ともに「集客力のある」施設だけに相乗効果が生まれているのだろう。
 もちろん公設図書館である以上、単に利用者数が多ければ良いというものではない。つがる市に関連する文化・歴史などの資料収集や情報発信を行って同市の文化向上に寄与し、市民の文化活動を助ける役目が重要であることは間違いがない。
 ただ、インターネットの普及などにより、書籍類を手に取る機会が減少している現代にあって、紙の本にじかに触れることができ、さまざまな知識を総合的に得ることができる図書館の存在は非常に重要なものと言える。公設図書館としての機能をさらに充実させながら、誰もが気軽に訪れ、集い、親しまれる施設として続いていってもらいたい。

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PKO日報問題「稲田氏辞任で幕引き許されぬ」

2017/7/29 土曜日

 

 稲田朋美防衛相が、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題について責任を取り辞任した。PKO派遣部隊の日報を陸上自衛隊が廃棄したと説明しながら保管していたこの問題では、稲田氏が陸上自衛隊幹部から非公表とする方針について報告を受けていた疑いが浮上。防衛監察本部による特別防衛監察の結果が公表されたが、非公表の判断に稲田氏が関与していたかどうかについては「公表の是非に関する何らかの方針の決定や了承がなされた事実はない」と結論づけた。一方で稲田氏と防衛官僚、自衛隊制服組幹部との間で「日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できない」とも記載しており、問題の全容解明には程遠い内容だ。稲田氏の大臣辞任をもって幕引きとしてはならない問題であり、さらなる真相究明の努力を図るよう望む。
 日報問題では、事務方トップの事務次官と陸自トップの陸上幕僚長が協議し、非公表とすることを決めた。防衛省を構成するいわゆる背広組(防衛官僚)、制服組(自衛官)のトップ級の人間が隠蔽(いんぺい)行為を主導して行ったという前代未聞の不祥事だ。仮に稲田氏の関与があったとすれば、文民である政治家の防衛相を含めた、まさに省ぐるみの隠蔽行為であり、稲田氏の関与がなかった場合でも、文民トップの大臣の判断、指示を仰がないままの暴走行為と言える。
 いずれにせよ民主主義国家における大原則である文民統制(シビリアンコントロール)が防衛省・自衛隊できちんと機能していないことになり、自衛隊のような実力組織の統制を考える上で、危険この上ない状況といえる。組織のたがをしっかりと締め、国民の信頼回復に向けて全力を尽くすべきだ。
 日報問題の対応や先ごろの都議選応援演説で「防衛省、自衛隊としてもお願いする」と発言したことなどをめぐって、防衛大臣としての資質が問われ続けた稲田氏を登用した安倍晋三首相の任命責任も重い。安倍首相は、稲田氏の辞表提出を受けて「閣僚が辞任することになったことについて、国民の皆さまに心からおわび申し上げたい」と述べたが、数々の問題を抱えた稲田氏をかばい続け、大臣を続投させたことが、結果として事態をより深刻化させたとも言える。国の安全を担う防衛省・自衛隊の組織が今回の問題によって不安定化したことについての批判は免れ得ない。
 問題の日報は、南スーダンPKOへの自衛隊派遣延長や、安全保障関連法に基づく新任務「駆け付け警護」の付与の判断について、大きな影響を与える可能性のあったものである。国民に示されるべき情報が隠蔽され、国の安全保障に対する判断が「ゆがめられた」としたら|。政府は国会で疑惑解明に全力を尽くし、説明責任を果たす責務がある。

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